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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/38 20060101AFI20220802BHJP
   H01H 50/54 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H01H50/38 A
H01H50/54 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018246969
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020107546
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】川口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
(72)【発明者】
【氏名】林田 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】森 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大塚 航平
(72)【発明者】
【氏名】岩坂 博之
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/060090(WO,A1)
【文献】特開2011-204473(JP,A)
【文献】特開2014-110094(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/38
H01H 50/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を含む1対の固定端子と、
前記固定接点に対向して配置された可動接点を含み、前記可動接点が前記固定接点に接触する第1方向と、前記可動接点が前記固定接点から開離する第2方向とに移動可能な可動接触片と、
前記固定接点と前記可動接触片を収容する収容空間を含む収容部と、
前記収容部の周囲で前記可動接触片の長手方向に互いに対向するように配置され前記収容空間よりも前記第2方向に延びている1対の磁石を含み、前記固定接点と前記可動接点との間に前記長手方向と平行な方向に流れる磁束を発生させる磁石部と、
を備え
前記収容空間は、少なくとも一部が前記可動接触片よりも前記第2方向側に配置され前記固定接点と前記可動接点との間で生じたアークを伸長させるためのアーク伸長空間を含み、
前記アーク伸長空間内において、前記可動接触片から前記第2方向に最も離れた位置における磁界の磁束線と前記長手方向に平行な直線とのなす角度は、45°以内である、
電磁継電器。
【請求項2】
固定接点を含む1対の固定端子と、
前記固定接点に対向して配置された可動接点を含み、前記可動接点が前記固定接点に接触する第1方向と、前記可動接点が前記固定接点から開離する第2方向とに移動可能な可動接触片と、
前記固定接点と前記可動接触片を収容する収容空間を含む収容部と、
前記収容部の周囲で前記可動接触片の長手方向に互いに対向するように配置され前記収容空間よりも前記第2方向に延びている1対の磁石を含み、前記固定接点と前記可動接点との間に前記長手方向と平行な方向に流れる磁束を発生させる磁石部と、
を備え、
前記可動接触片の短手方向における前記1対の磁石の寸法は、前記短手方向における前記収容空間の寸法よりも大きい、
磁継電器。
【請求項3】
固定接点を含む1対の固定端子と、
前記固定接点に対向して配置された可動接点を含み、前記可動接点が前記固定接点に接触する第1方向と、前記可動接点が前記固定接点から開離する第2方向とに移動可能な可動接触片と、
前記固定接点と前記可動接触片を収容する収容空間を含む収容部と、
前記収容部の周囲で前記可動接触片の長手方向に互いに対向するように配置され前記収容空間よりも前記第2方向に延びている1対の磁石を含み、前記固定接点と前記可動接点との間に前記長手方向と平行な方向に流れる磁束を発生させる磁石部と、
を備え、
前記磁石部は、前記収容部の周囲で前記可動接触片の短手方向に互いに対向するように配置され前記収容空間よりも前記第2方向に延びている1対の第2の磁石をさらに含む、
磁継電器。
【請求項4】
前記1対の磁石及び前記1対の第2の磁石は、前記収容空間よりも前記第1方向に延びている、
請求項に記載の電磁継電器。
【請求項5】
固定接点を含む1対の固定端子と、
前記固定接点に対向して配置された可動接点を含み、前記可動接点が前記固定接点に接触する第1方向と、前記可動接点が前記固定接点から開離する第2方向とに移動可能な可動接触片と、
前記固定接点と前記可動接触片を収容する収容空間を含む収容部と、
前記収容部の周囲で前記可動接触片の短手方向に互いに対向するように配置され前記収容空間よりも前記第2方向に延びている1対の磁石を含み、前記固定接点と前記可動接点との間に前記短手方向と平行な方向に流れる磁束を発生させる磁石部と、
を備え
前記収容空間は、少なくとも一部が前記可動接触片よりも前記第2方向側に配置され前記固定接点と前記可動接点との間で生じたアークを伸長させるためのアーク伸長空間を含み、
前記アーク伸長空間内において、前記可動接触片から前記第2方向に最も離れた位置における磁界の磁束線と前記短手方向に平行な直線とのなす角度は、45°以内である、
電磁継電器。
【請求項6】
固定接点を含む1対の固定端子と、
前記固定接点に対向して配置された可動接点を含み、前記可動接点が前記固定接点に接触する第1方向と、前記可動接点が前記固定接点から開離する第2方向とに移動可能な可動接触片と、
前記固定接点と前記可動接触片を収容する収容空間を含む収容部と、
前記収容部の周囲で前記可動接触片の短手方向に互いに対向するように配置され前記収容空間よりも前記第2方向に延びている1対の磁石を含み、前記固定接点と前記可動接点との間に前記短手方向と平行な方向に流れる磁束を発生させる磁石部と、
を備え、
前記可動接触片の長手方向における前記1対の磁石の寸法は、前記長手方向における前記収容空間の寸法よりも大きい、
磁継電器。
【請求項7】
前記1対の磁石は、前記収容空間よりも前記第1方向に延びている、
請求項1からのいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記1対の固定端子は、前記可動接触片の長手方向に延びる板状の端子である、
請求項1からのいずれか1項に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁継電器において、磁石の磁力を利用して接点に生じるアークを伸長させて消弧する電磁継電器が知られている。例えば、特許文献1では、1対の磁石が可動接触片の長手方向に互いに異極が対向するように配置されており、接点に対して磁束が可動接触片の長手方向に流れている。接点に生じるアークには、1対の磁石の磁力によるローレンツ力が作用して、アークがアーク消弧空間に向けて伸長される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-110094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11は、1対の磁石の間を流れる磁束を模式的に示した図である。詳細には、1対の磁石101,102を可動接触片103の長手方向(図11の左右方向)に互いに異極が対向するように配置したときの1対の磁石101,102の間を流れる磁束を模式的に示した図である。なお、図11における可動接触片103の短手方向は、図11の紙面と直交する方向である。図11に示すように、1対の磁石101,102の間を流れる磁束は、磁石101,102の中心付近、すなわち接点104,105付近において可動接触片103の長手方向に平行な方向に流れる。一方、接点104,105から上下方向(図15の上下方向)に離れた位置では、1対の磁石101,102の間の磁束は、上下方向に広がるように湾曲する。このため、アークが上下方向に伸長されるときに、アークに作用するローレンツ力の方向が変化する。したがって、接点104,105から上下方向に離れた位置では、アークの伸長方向を意図する方向に制御することが難しい。
【0005】
また、磁石の端部付近は、磁界が強く磁束の向きも変化するので、アークを伸長させる空間が磁石の端部に近い場合も、アークの伸長方向を意図する方向に制御することが難しい。
【0006】
本発明の課題は、電磁継電器において、アークの伸長方向の制御を容易にできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、1対の固定端子と、可動接触片と、収容部と、磁石部と、を備える。1対の固定端子は、固定接点を含む。可動接触片は、固定接点に対向して配置された可動接点を含み、可動接点が固定接点に接触する第1方向と、可動接点が固定接点から開離する第2方向とに移動可能である。収容部は、固定接点と可動接触片を収容する収容空間を含む。磁石部は、収容部の周囲で可動接触片の長手方向に互いに対向するように配置され収容空間よりも第2方向に延びている1対の磁石を含む。磁石部は、固定接点と可動接点との間に長手方向と平行な方向に流れる磁束を発生させる。
【0008】
この電磁継電器では、1対の磁石が収容空間よりも第2方向に延びているので、収容空間内において可動接触片の長手方向と平行な方向に流れる磁束の範囲が第2方向に広くなる。これにより、例えば、固定接点及び可動接点から第2方向に離れた位置であっても、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することを抑制できる。このため、例えば、アークが第2方向に伸長するときに、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することがないので、アークの伸長方向の制御が容易にできるようになる。また、収容空間から第2方向に離れた位置に磁石の端部を配置することができるので、磁束の向きが変化してアークに作用するローレンツ力の方向が変化することを抑制できる。
【0009】
好ましくは、収容空間は、少なくとも一部が可動接触片よりも第2方向側に配置され固定接点と可動接点との間で生じたアークを伸長させるためのアーク伸長空間を含む。アーク伸長空間内において、可動接触片から第2方向に最も離れた位置における磁界の磁束線と長手方向に平行な直線とのなす角度は、45°以内である。この場合は、固定接点及び可動接点から第2方向に離れた位置であってもアークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することを効果的に抑制できる。
【0010】
好ましくは、可動接触片の短手方向における1対の磁石の寸法は、短手方向における収容空間の寸法よりも大きい。この場合は、収容空間内において長手方向と平行な方向に流れる磁束の範囲が短手方向に広くなるので、固定接点及び可動接点から短手方向外側に離れた位置であっても、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することを抑制できる。
【0011】
好ましくは、磁石部は、収容部の周囲で可動接触片の短手方向に互いに対向するように配置され収容空間よりも第2方向に延びている1対の第2の磁石をさらに含む。この場合は、1対の第2の磁石を配置した場合において、収容空間内における可動接触片の長手方向と平行な方向に流れる磁束の範囲を第2方向に広くすることができる。
【0012】
好ましくは、1対の磁石及び1対の第2の磁石は、収容空間よりも第1方向に延びている。この場合は、収容空間内において可動接触片の長手方向と平行な方向に流れる磁束の範囲が第1方向に広くなるので、アークが第1方向に伸長するときに、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化ことを抑制できる。また、収容空間から第1方向に離れた位置に磁石の端部を配置することができるので、磁束の向きが変化してアークに作用するローレンツ力の方向が変化することを抑制できる。
【0013】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、1対の固定端子と、可動接触片と、収容部と、磁石部と、を備える。1対の固定端子は、固定接点を含む。可動接触片は、固定接点に対向して配置された可動接点を含み、可動接点が固定接点に接触する第1方向と、可動接点が固定接点から開離する第2方向とに移動可能である。収容部は、固定接点と可動接触片を収容する収容空間を含む。磁石部は、収容部の周囲で可動接触片の短手方向に互いに対向するように配置され収容空間よりも第2方向に延びている1対の磁石を含む。磁石部は、固定接点と可動接点との間に短手方向と平行な方向に流れる磁束を発生させる。
【0014】
この電磁継電器では、1対の磁石が収容空間よりも第2方向に延びているので、収容空間内において可動接触片の短手方向と平行な方向に流れる磁束の範囲が第2方向に広くなる。これにより、例えば、固定接点及び可動接点から第2方向に離れた位置であっても、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することを抑制できる。このため、例えば、アークが第2方向に伸長するときに、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することがないので、アークの伸長方向の制御が容易にできるようになる。また、収容空間から第2方向に離れた位置に磁石の端部を配置することができるので、磁束の向きが変化してアークに作用するローレンツ力の方向が変化することを抑制できる。
【0015】
好ましくは、収容空間は、少なくとも一部が可動接触片よりも第2方向側に配置され固定接点と可動接点との間で生じたアークを伸長させるためのアーク伸長空間を含み、アーク伸長空間内において、可動接触片から第2方向に最も離れた位置における磁界の磁束線と短手方向に平行な直線とのなす角度は、45°以内である。この場合は、固定接点及び可動接点から第2方向に離れた位置であってもアークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することを効果的に抑制できる。
【0016】
好ましくは、可動接触片の長手方向における1対の磁石の寸法は、長手方向における収容空間の寸法よりも大きい。この場合は、収容空間内において短手方向と平行な方向に流れる磁束の範囲が短手方向に広くなるので、固定接点及び可動接点から短手方向外側に離れた位置であっても、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することを抑制できる。
【0017】
好ましくは、1対の磁石は、収容空間よりも第1方向に延びている。この場合は、アークが第1方向に伸長するときに、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することがないので、アークの伸長方向の制御が容易にできるようになる。また、収容空間から第1方向に離れた位置に磁石の端部を配置することができるので、磁束の向きが変化してアークに作用するローレンツ力の方向が変化することを抑制できる。
【0018】
好ましくは、1対の固定端子は、前記可動接触片の長手方向に延びる板状の端子である。この場合は、板状の固定端子を用いた電磁継電器において、アークの伸長方向の制御が容易にできるようになる。
【0019】
本発明によれば、電磁継電器において、アークの伸長方向の制御が容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電磁継電器の断面模式図である。
図2】磁石部及び収容部の構成を示す模式図である。
図3】収容部周辺の断面を後方から見た模式図である。
図4(A)】収容空間内の磁束の流れを模式的に示した図である。
図4(B)】図4(A)の部分拡大図である。
図5】電磁継電器の断面模式図である。
図6】磁石部の第1変形例を示す模式図である。
図7】磁石部の第2変形例を示す模式図である。
図8】磁石部の第2変形例を示す模式図である。
図9】磁石部の第3変形例を示す模式図である。
図10】磁石部の第3変形例を示す模式図である。
図11】1対の磁石の間における磁束の流れを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は電磁継電器100の断面模式図である。図1に示すように、電磁継電器100は、ハウジング2と、接点装置3と、駆動軸4と、電磁駆動装置5と、磁石部6と、を備えている。
【0022】
なお、図面を参照するときにおいて、説明を分かり易くするために図1における上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明する。また、図1の紙面と直交する方向を前後方向として説明する。なお、本実施形態では、図1における上方は、接触方向Z1である。また、図1における下方は、開離方向Z2である。接触方向Z1及び開離方向Z2の詳細については後述する。
【0023】
ハウジング2は、略四角形の箱型であり、絶縁性を有する材料で形成されている。ハウジング2の内部には、接点装置3、駆動軸4、電磁駆動装置5、及び磁石部6が収容されている。
【0024】
ハウジング2は、収容部11を含む。収容部11は、例えば、ハウジング2内に配置される略直方体形状のケース部材によって構成されている。収容部11は、絶縁性を有する材料で形成されている。
【0025】
図2は、磁石部6及び収容部11の構成を示す模式図であり、収容部11の周辺の断面を上方から見た模式図である。収容部11は、第1内壁面11aと、第2内壁面11bと、第3内壁面11cと、第4内壁面11dと、を含む。第1~第4内壁面11a~11dのそれぞれは、収容部11の前後左右の内側面である。第1内壁面11a及び第2内壁面11bは、上下方向かつ左右方向に延びている。第1内壁面11a及び第2内壁面11bは、前後方向に互いに対向して配置されている。第3内壁面11c及び第4内壁面11dは、上下方向かつ前後方向に延びている。第3内壁面11c及び第4内壁面11dは、左右方向に互いに対向して配置されている。第1内壁面11a及び第2内壁面11bの左右方向の寸法は、第3内壁面11c及び第4内壁面11dの上下方向の寸法よりも長い。
【0026】
収容部11は、接点装置3を収容する収容空間12を含む。収容空間12は、本実施形態では、外部から遮断された略直方体形状の空間で構成されている。収容空間12の側方は、第1~第4内壁面11a~11dによって囲まれている。
【0027】
接点装置3は、図1に示すように、第1固定端子14と、第2固定端子15と、可動接触片16と、接触片保持部17と、を含む。第1固定端子14、第2固定端子15、及び可動接触片16は、導電性を有する材料で形成されている。
【0028】
第1固定端子14及び第2固定端子15は、円柱状の端子であり、上下方向に延びている。第1固定端子14及び第2固定端子15は、左右方向に互いに間隔を隔ててハウジング2の上部に固定されている。第1固定端子14及び第2固定端子15は、1対の固定端子の一例である。
【0029】
第1固定端子14は、第1固定接点14aと、第1外部接続部14bと、を含む。第1固定接点14aは、収容空間12内に配置されている。第1外部接続部14bは、ハウジング2から上方に突出して外部に露出している。第2固定端子15は、第2固定接点15aと、第2外部接続部15bと、を含む。第2固定接点15aは、収容空間12内に配置されている。第2外部接続部15bは、ハウジング2から上方に突出して外部に露出している。
【0030】
可動接触片16は、図1及び図2に示すように、一方向に長い板状部材であり、収容空間12内で左右方向に延びている。可動接触片16は、収容空間12内で第1内壁面11a及び第2内壁面11bと前後方向に間隔を隔てて配置されている。可動接触片16と第1内壁面11aとの間、及び可動接触片16と第2内壁面11bとの間には、アークを伸長させるためのアーク伸長空間12a,12bが設けられている。アーク伸長空間12a,12bは、第1固定接点14aと後述する第1可動接点16a、又は第2固定接点15aと後述する第2可動接点16bに近接した位置に配置されている。アーク伸長空間12a,12bは、少なくとも一部が可動接触片16よりも開離方向Z2側に配置される。
【0031】
可動接触片16は、収容空間12内で第3内壁面11c及び第4内壁面11dと左右方向に間隔を隔てて配置されている。可動接触片16は、第1固定端子14及び第2固定端子15の下方に配置されている。なお、本実施形態において、可動接触片16の長手方向は、左右方向と一致する。また、可動接触片16の短手方向は、前後方向と一致する。
【0032】
可動接触片16は、第1可動接点16aと、第2可動接点16bと、を含む。第1可動接点16aは、第1固定接点14aに対向して配置され、第1固定接点14aに接触可能である。第2可動接点16bは、第1可動接点16aと左右方向に間隔を隔てて配置されている。第2可動接点16bは、第2固定接点15aに対向して配置され、第2固定接点15aに接触可能である。
【0033】
可動接触片16は、第1固定接点14a及び第2固定接点15aに接触する接触方向Z1及び第1固定接点14a及び第2固定接点15aから開離する開離方向Z2に移動可能である。接触方向Z1は、第1方向の一例であり、開離方向Z2は、第2方向の一例である。
【0034】
接触方向Z1は、第1可動接点16a及び第2可動接点16bが第1固定接点14a及び第2固定接点15aに対して接触する方向(図1における上方)である。開離方向Z2は、第1可動接点16a及び第2可動接点16bが第1固定接点14a及び第2固定接点15aから開離する方向(図1における下方)である。
【0035】
接触片保持部17は、図1に示すように、駆動軸4を介して可動接触片16を保持する。接触片保持部17は、可動接触片16と駆動軸4とを連結する。接触片保持部17は、ホルダ24と、接点バネ25と、を含む。接点バネ25は、駆動軸4及び可動接触片16を接触方向Z1側に向けて付勢する。
【0036】
駆動軸4は、接触方向Z1及び開離方向Z2に沿って延びている。駆動軸4は、可動接触片16とともに接触方向Z1及び開離方向Z2に移動可能である。
【0037】
電磁駆動装置5は、接点装置3を駆動する。電磁駆動装置5は、電磁力によって駆動軸4とともに可動接触片16を接触方向Z1及び開離方向Z2に移動させる。電磁駆動装置5は、ハウジング2内において、収容部11の下方に配置されている。
【0038】
電磁駆動装置5は、可動鉄心31と、固定鉄心32と、ヨーク33と、を含む。また、電磁駆動装置5は、図示しないコイル、スプール、及びコイルバネを含む。なお、電磁駆動装置5は、従来と同様の構成であるため詳細な説明を省略する。
【0039】
次に電磁継電器100の動作について説明する。なお、電磁継電器100の動作は、従来と同様であるため簡略に説明する。
【0040】
図1は、コイルに電圧が印加された状態を示している。コイルに電圧が印加されると、可動鉄心31がコイルバネの弾性力に抗して接触方向Z1に移動する。可動鉄心31の接触方向Z1の移動に伴い、駆動軸4及び可動接触片16は接触方向Z1に移動して、第1可動接点16a及び第2可動接点16bが、第1固定接点14a及び第2固定接点15aに接触する。コイルへの電圧の印加が停止されると、可動鉄心31がコイルバネの弾性力によって可動接触片16とともに開離方向Z2に移動する。これにより、第1可動接点16a及び第2可動接点16bは、第1固定接点14a及び第2固定接点15aから開離した状態になる。この第1可動接点16a及び第2可動接点16bが、第1固定接点14a及び第2固定接点15aから開離するときに、第1可動接点16aと第1固定接点14aとの間、及び第2可動接点16bと第2固定接点15aとの間でアークが発生する。
【0041】
図3は、収容部11の周辺の断面を後方から見た模式図である。図3では、収容空間12内の磁束Mの流れを模式的に示している。なお、図3では、接触片保持部17の構成を省略して示している。
【0042】
磁石部6は、収容空間12に磁界を発生させる。詳細には、磁石部6は、第1固定接点14aと第1可動接点16aとの間、及び第2固定接点15aと第2可動接点16bとの間において、可動接触片16の長手方向と平行な方向に流れる磁束を発生させる。
【0043】
磁石部6は、第1磁石6a、第2磁石6bと、を含む。第1磁石6aと第2磁石6bは、1対の磁石の一例である。第1磁石6a及び第2磁石6bは、永久磁石である。第1磁石6a及び第2磁石6bは、前後方向かつ上下方向に延びている。第1磁石6a及び第2磁石6bは、収容部11の周囲で可動接触片16の長手方向に互いに対向するように配置されている。第1磁石6a及び第2磁石6bは、異極が互いに対向するように配置されている。詳細には、第1磁石6aは、収容部11の左側に配置され、N極が収容部11に面して配置されている。第2磁石6bは、収容部11の右側に配置され、S極が収容部11に面して配置されている。第1磁石6a及び第2磁石6bは、本実施形態では収容部11の外周に固定されている
【0044】
第1磁石6a及び第2磁石6bは、収容空間12よりも開離方向Z2に延びている。詳細には、図3に示すように、第1磁石6aの開離方向Z2側の端部36a、及び第2磁石6bの開離方向Z2側の端部37aは、収容空間12よりも開離方向Z2側に位置している。これにより、収容空間12内において可動接触片16の長手方向と平行な方向に流れる磁束の範囲が開離方向Z2に広くなる。
【0045】
詳細には、図3に示すように、第1磁石6aから第2磁石6bに向かって流れる磁束Mは、収容空間12内において、可動接触片16から開離方向Z2に離れた位置においても可動接触片16の長手方向に平行な方向に流れる。このため、アークが開離方向Z2に伸長するときに、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することがないので、アークの伸長方向の制御が容易にできるようになる。また、収容空間12から開離方向Z2に離れた位置に第1磁石6aの端部36a及び第2磁石6bの端部37aを配置することができるので、アークが開離方向Z2に伸長するときに、磁束の向きが変化してアークに作用するローレンツ力の方向が変化することを抑制できる。
【0046】
なお、本実施形態では、第1磁石6a及び第2磁石6bは、収容空間12よりも接触方向Z1に延びている。詳細には、第1磁石6aの接触方向Z1側の端部36b、及び第2磁石6bの接触方向Z1側の端部37bは、収容空間12よりも接触方向Z1側に位置している。このため、収容空間12内において可動接触片16の長手方向と平行な方向に流れる磁束の範囲が接触方向Z1にも広くなる。このため、アークが接触方向Z1に伸長するときにおいても、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、図2に示すように、可動接触片16の短手方向における第1磁石6a及び第2磁石6bの寸法D1は、可動接触片16の短手方向における収容空間12の寸法D2よりも大きいことが好ましい。詳細には、可動接触片16の短手方向における第1磁石6aの両端は、収容空間12よりも可動接触片16の短手方向外側に延びている。本実施形態では、可動接触片16の短手方向における第1磁石6aの両端は、収容部11よりも可動接触片16の短手方向外側に延びている。同様に、可動接触片16の短手方向における第2磁石6bの両端は、収容空間12よりも可動接触片16の短手方向外側に延びている。本実施形態では、可動接触片16の短手方向における第2磁石6bの両端は、収容部11よりも可動接触片16の短手方向外側に延びている。
【0048】
これにより、収容空間12内において可動接触片16の長手方向に平行な方向に流れる磁束の範囲を広くすることができる。すなわち、図2に示すように、第1磁石6aから第2磁石6bに向かって流れる磁束Mは、第1内壁面11a及び第2内壁面11bに近接した範囲においても可動接触片16の長手方向に平行な方向に流れる。このため、アークが第1内壁面11a或いは第2内壁面11bに向かって伸長されるときにおいて、アークが第1内壁面11a又は第2内壁面11bに当たるまで可動接触片16の短手方向と平行な方向にローレンツ力が作用するので、アークの伸長方向を意図する方向に容易に制御することができる。
【0049】
図4(A)は、収容空間12を前後方向から見たときの収容空間12内の磁束の流れを模式的に示した図である。詳細には、図4(A)は、磁石部6a及び磁石6bの前後方向における中心付近の磁束の流れを前後方向から見た模式図である。図4(B)は、図4(A)の部分拡大図であり、アーク伸長空間12a,12bを流れる磁束線と可動接触片16の長手方向に平行な直線とのなす角度の関係を説明する図である。アーク伸長空間12a,12b内における磁界の磁束線と可動接触片16の長手方向に平行な直線とのなす角度は、45°以内であることが好ましい。より詳細には、アーク伸長空間12a,12b内において、可動接触片16から開離方向Z2に最も離れた位置における磁界の磁束線と可動接触片16の長手方向に平行な直線とのなす角度は、45°以内であることが好ましい。
【0050】
具体的には、図4(B)に示すように、アーク伸長空間12a,12b内において、可動接触片16の長手方向に平行な直線(X軸)と磁束線の接線とのなす鋭角θは、45°以内であることが好ましい。言い換えると、可動接触片16の長手方向に平行な直線(X軸)と磁束線の接線とのなす鋭角θが45°以内の範囲に、アーク伸長空間12a,12bを配置することが好ましい。より詳細には、アーク伸長空間12a,12bの底部を流れる磁界の磁束線と可動接触片16の長手方向に平行な直線(X軸)とのなす角度θは、45°以内であることが好ましい。これにより、アークがアーク伸長空間12a,12bで伸長されるときにおいて、アークに作用するローレンツ力の方向が大きく変化することを抑制できるので、アークの伸長方向を意図する方向に容易に制御することができる。
【0051】
以上、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ハウジング2、接点装置3、電磁駆動装置5、或いは収容部11の形状、或いは配置が変更されてもよい。
【0052】
例えば、磁石部6は、アークが第1内壁面11a又は第2内壁面11bに当たるように、かつアークが第3内壁面11c及び第4内壁面11dに当たらないような磁界を収容空間12に発生させてもよい。具体的には、第1磁石6a及び第2磁石6bは、アークが第1内壁面11a又は第2内壁面11bに当たるように、かつアークが第3内壁面11c及び第4内壁面11dに当たらないような磁界を収容空間11eに発生させる大きさで構成されてもよい。
【0053】
例えば、前記実施形態では、第1固定端子14及び第2固定端子15は、円柱状の端子であったが、図5に示すように、第1固定端子14及び第2固定端子15は可動接触片16の長手方向に延びる板状の端子であってもよい。この場合、第1固定端子14及び第2固定端子15は、ハウジング2内で略L字状に折れ曲がる形状であってもよい。また、第1固定端子14及び第2固定端子15を可動接触片16の下方に配置して、電磁駆動装置5によって可動接触片16を第1固定端子14及び第2固定端子15に向けて引き込むように動作させてもよい。
【0054】
図6は、磁石部6の第1変形例を示す模式図であり、収容部11の周辺の断面を上方から見た模式図である。磁石部6は、第1磁石6a及び第2磁石6bの少なくとも一方に接続されるヨーク40をさらに含む。詳細にはヨーク40は、第1ヨーク41と、第2ヨーク42と、を含む。第1ヨーク41及び第2ヨーク42は、第1磁石6a及び第2磁石6bに接続されている。
【0055】
第1ヨーク41は、上下方向に延びるとともに、収容空間11eの前方で可動接触片16の長手方向に延びている。第1ヨーク41及び第2ヨーク42の上下方向の長さは、第1磁石6a及び第2磁石6bの上下方向の長さと同じある。なお、第1ヨーク41及び第2ヨーク42の上下方向の長さは、第1磁石6a及び第2磁石6bの上下方向の長さよりも大きくてもよい。第1ヨーク41は、一端が第1磁石6aに接続され、他端が第2磁石6bに接続されている。第1ヨーク41の両端は、第1磁石6a及び第2磁石6bを外側から囲むように可動接触片16の短手方向に延びている。第2ヨーク42は、第1ヨーク41と前後方向において対称な形状であり、一端が第1磁石6aに接続され、他端が第2磁石6bに接続されている。なお、ヨーク40の形状或いは配置等は、第1磁石6a及び第2磁石6bの配置に応じて適宜変更してもよい。
【0056】
図7及び図8は、磁石部6の第2変形例を示す模式図である。図7は、収容部11の周辺の断面を後方から見た模式図である。図8は、収容部11の周辺の断面を上方から見た模式図である。
【0057】
第2変形例に係る磁石部6は、第1固定接点14aと第1可動接点16aとの間、及び第2固定接点15aと第2可動接点16bとの間に可動接触片16の短手方向と平行な方向に流れる磁束を発生させる。詳細には、第1磁石部6a及び第2磁石6bは、収容部11の周囲で可動接触片16の短手方向に互いに異極が対向するように配置され、収容空間12よりも第2方向に延びている。第1磁石6aは、収容部11の前側に配置されている。第2磁石6bは、収容部11の後側に配置されている。
【0058】
また、図8に示すように、可動接触片16の長手方向における第1磁石6a及び第2磁石6bの寸法D3は、可動接触片16の短手方向における収容空間12の寸法D4よりも大きいことが好ましい。詳細には、可動接触片16の長手方向における第1磁石6aの両端は、収容空間12よりも可動接触片16の長手方向外側に延びている。可動接触片16の長手方向における第2磁石6bの両端は、収容空間12よりも可動接触片16の長手方向外側に延びている。なお、第2変形例では、アーク伸長空間12a,12b内における磁界の磁束線と可動接触片16の短手方向に平行な直線とのなす角度は、45°以内であることが好ましい。より詳細には、アーク伸長空間12a,12b内において、可動接触片16から開離方向Z2に最も離れた位置における磁界の磁束線と可動接触片16の短手方向に平行な直線とのなす角度は、45°以内であることが好ましい。
【0059】
図9及び図10は、磁石部6の第3変形例を示す模式図である。図9は、収容部11の周辺の断面を後向から見た模式図である。図10は、収容部11の周辺の断面を上方から見た模式図である。
【0060】
第3変形例に係る磁石部6は、第3磁石40aと、第4磁石40bと、をさらに含む。第3磁石40a及び第4磁石40bは、1対の第2の磁石の一例である。第3磁石40a及び第4磁石40bは、図10に示すように、収容部11の周囲で可動接触片16の短手方向に互いに同極(ここではN極)が対向するように配置されている。第3磁石40a及び第4磁石40bは、図9に示すように、収容空間12よりも開離方向Z2に延びている。また、第3磁石40a及び第4磁石40bは、収容空間12よりも接触方向Z1に延びている。第3磁石40a及び第4磁石40bは、可動接触片16の長手方向の中央付近に配置されている。第3磁石40a及び第4磁石40bの左右方向の寸法は、可動接触片16の左右方向の寸法よりも小さい。
【0061】
第1磁石6a及び第2磁石6bは、収容部11の周囲で可動接触片16の長手方向に互いに同極(ここではS極)が対向するように配置されている。第1磁石6a及び第2磁石6bの前後方向の寸法は、収容空間12の前後方向の寸法と同程度である。
【0062】
上記のように配置された第1~第4磁石6a,6b,40a,40bによって、第1固定接点14aと第1可動接点16aとの間、及び第2固定接点15aと第2可動接点16bとの間には、図10に示すように、可動接触片16の長手方向と平行な方向に磁束Mが流れる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、本発明によれば、電磁継電器において、アークの伸長方向の制御が容易にできるようになる。
【符号の説明】
【0064】
6 磁石部
6a 第1磁石
6b 第2磁石
11 収容部
12 収容空間
12a,12b アーク伸長空間
14 第1固定端子
14a 第1固定接点(固定接点の一例)
15 第2固定端子
15a 第2固定接点(固定接点の一例)
16 可動接触片
16a 第1可動接点(可動接点の一例)
16b 第2可動接点(可動接点の一例)
40a 第3磁石
40b 第4磁石
100 電磁継電器
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11