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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】新規な使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/05 20060101AFI20220802BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220802BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20220802BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20220802BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220802BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220802BHJP
   C07K 5/06 20060101ALI20220802BHJP
   A61P 17/02 20060101ALN20220802BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20220802BHJP
   A61P 37/08 20060101ALN20220802BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
A61K38/05
A61K8/06
A61K8/64
A61K9/107
A61K47/24
A61P17/08
A61P17/10
A61P43/00 105
A61Q19/00
C07K5/06 ZNA
A61P17/02
A61P29/00
A61P37/08
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N9/99
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018527770
(86)(22)【出願日】2016-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2016080469
(87)【国際公開番号】W WO2017102591
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-11-13
(31)【優先権主張番号】15200516.1
(32)【優先日】2015-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16159702.6
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16168111.9
(32)【優先日】2016-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】シャンピチェ, レモ
(72)【発明者】
【氏名】イムフェルド, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン, エイリーン
(72)【発明者】
【氏名】ワンダラー, エリアーヌ, ウルスラ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/154020(WO,A1)
【文献】特表2008-518978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0215726(US,A1)
【文献】国際公開第2010/003828(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/065832(WO,A1)
【文献】特開2007-039424(JP,A)
【文献】国際公開第2008/066070(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/133031(WO,A1)
【文献】特開2015-124188(JP,A)
【文献】特表2008-518988(JP,A)
【文献】特表2012-518606(JP,A)
【文献】特開2012-140404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61P 17/00
A61P 29/00
A61P 37/08
A61K 38/07
A61K 8/64
C07K 5/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮脂腺における皮脂分泌の低下において使用するための、少なくとも1つの式(I)のDPP4阻害
【化1】

中、
nは、1を示し、
、R、RおよびRは、Hであり、
は、ベンジルである
またはその皮膚科学的に許容され得る塩を含む組成物
【請求項2】
脂性のおよび/もしくはてかてかする皮膚、傷の予防もしくは処置ならびに/または皮膚の毛穴のサイズの低下において使用するための、式(I)のDPP4阻害
【化2】

中、
nは、1を示し、
、R、RおよびRは、Hであり、
は、ベンジルである
またはその皮膚科学的に許容され得る塩を含む美容組成物
【請求項3】
前記組成物における少なくとも1つの式(I)のDPP4阻害剤の量が、前記組成物の総重量に基づいて、0.5ppm~5’000ppmの範囲で、好ましくは2.5ppm~250ppmの範囲で、最も好ましくは25ppm~100ppmの範囲で選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
皮膚につけられる前記組成物の量が、0.1~3mg/cm皮膚の範囲で、好ましくは0.1~2mg/cm皮膚の範囲で、最も好ましくは0.5~2mg/cm皮膚の範囲で選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記美容組成物が、スキンケア調製物である、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、O/W乳化剤の存在下において水性相中に分散した油性相を含むO/Wエマルションである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記O/W乳化剤が、セチルリン酸カリウムである、請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、皮脂腺の変化、損傷、または機能不全に関連する皮膚の状態の予防および/または処置のためのプロリン含有ジペプチドの新規な使用に関する。
【0002】
皮脂腺は、皮膚の健康に不可欠な構成要素である。皮脂腺は、皮脂を産生し、かつ分泌し、皮脂は、皮膚および毛の加湿および保護を担う。しかしながら、皮脂腺の損傷または機能不全は、脂性でてかてかする皮膚、毛穴のサイズの拡大、脂腺増殖症、および尋常性座瘡などのような多くの望まれない皮膚の状態において中心的な役割を果たす。
【0003】
皮脂腺は、にきびの発症の一因となり得、発症には幾通りかある。にきび罹患者が直面する最も一般的な問題の1つは、活動し過ぎる皮脂腺および/または脂腺増殖症(大きくなった皮脂腺)を含む。これらの状態は、皮脂の過剰産生をもたらす。過剰な皮脂は、しかしながら、脂性の/てかてかする皮膚をもたらすだけではなく、アクネ菌(Propionibacterium acnes)のようなにきび症状の一因となる細菌の増殖をも促進する。さらに、過剰な皮脂はまた、毛包をブロックし、炎症性病変の発症に拍車をかける角栓の一因にもなり得る。
【0004】
DPP4(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害剤は、脂腺細胞(すなわち皮脂腺細胞)の増殖を抑制する、それらの最終分化を増強する、および全体的な中性脂質の産生を減少させることが記載されている。したがって、DPP4阻害剤は、脂腺増殖症、毛包の過角化、および炎症などのようなにきびの主な発症因子に影響を及ぼす能力を有すると言われている(Thielitz et al.JID(2007),127;1042-1051)。
【0005】
したがって、皮脂腺の変化、損傷、または機能不全に関連する皮膚の状態の予防または処置に使用することができる皮膚につけるのに適しているDPP4阻害剤の必要性が今なおある。
【0006】
驚いたことに、あるプロリン含有ジペプチドが、非常に有効なDPP4阻害剤であり、皮脂産生および皮膚の毛穴のサイズを低下させることができることが分かった。
【0007】
したがって、本発明の第1の目的は、特に脂腺増殖症、過剰脂漏症、にきび(特に尋常性座瘡)、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、および酒さなどのような皮脂腺の障害の予防または処置において使用するための、式(I)の少なくとも1つのDPP4阻害剤
【化1】

式中、
nは、0、1、または2を示し、
およびRは、互いに独立して、H、C~Cアルキル、アミジノ、またはテトラ-C~Cアルキルアミジニウムからなる群から選択され、
は、HもしくはC~Cアルキルであり、またはRおよびRは、それらが結合する残基と一緒に、5~7員飽和環を形成し、
は、C~Cアルキル、arC~Cアルキル、およびヘテロアリールC~Cアルキルからなる群から選択され、
は、Hであるもしくはnが1である場合、NHでもある、またはRおよびRは、それらが結合する残基と一緒に、5~7員飽和環を形成する
またはその皮膚科学的に許容され得る塩を含む組成物に関する。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、脂性のおよび/もしくはてかてかする皮膚、傷、斑の予防もしくは処置ならびに/または皮膚の毛穴のサイズの低下のための式(I)のDPP4阻害剤の美容のための(非治療的)使用に関する。
【0009】
式(I)の化合物が非常に活性なDPP4阻害剤であるように、本発明はまた、たとえば、これらに限定されないが、毛包の過角化、炎症、および過剰増殖障害(たとえば乾癬)などのような、DPP4活性の増加と関係のある、またはDPP-IV活性を低下させることによって予防するもしくは軽減することができる疾病または状態を予防するまたは処置するためのその使用にも関する。
【0010】
本明細書において使用される用語「C~Cアルキル」は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、1-メチルエチル基、n-ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、および1-エチル-2-メチルプロピル基などのような非分岐C~Cアルキル基または分岐C~Cアルキル基である。
【0011】
本明細書において使用される用語「arC~Cアルキル」は、a-C~Cアルキル-アリールを指し、用語「アリール」は、たとえばフェニル、インダニル、またはナフチル基である。
【0012】
本明細書において使用される用語「ヘテロアリールC~Cアルキル」は、a-C~Cアルキル-ヘテロアリールを指し、用語「ヘテロアリール」は、1つ以上のヘテロ原子、すなわちN、O、またはSを含有する5または6員芳香環を指し、これらのヘテロ芳香族環は、他の芳香族系に融合されてもよい。
【0013】
およびRまたはRおよびRがそれぞれそれらが結合する残基と一緒に形成してもよい5~7員飽和環の例は、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、アゼピニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、および1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリニルである。
【0014】
本発明は、たとえば純粋な鏡像異性体または立体異性体としてなどのように光学的に純粋な異性体としておよびたとえばラセミ化合物としてなどのように異なる異性体の混合物としてまたはジアステレオ異性体の混合物として、式(I)の化合物を包含することが十分に理解される。
【0015】
用語「またはその皮膚科学的に許容され得る塩」は、塩化物塩、酢酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩の形態をしたなどのような酸付加塩の形態をした式(I)の化合物を指す。その代わりに、塩は、特にそれぞれのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、またはカルシウム塩などのようなそれぞれのアルカリ塩またはアルカリ土類塩をもたらす、アルカリ塩基またはアルカリ土類塩基との反応によって形成されてもよい。本発明のすべての実施形態において、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩の形態をした式(I)の化合物が最も好ましい。そのような塩は、当業者によって容易に調製される。
【0016】
本明細書において使用される用語「予防」は、絶対的な用語として意図されない。むしろ、たとえばにきびの予防は、それぞれの皮膚の状態に関連する発症の遅延、症状の頻度の低下、または症状の重症度の低下を指す。そのため、予防は、当業者らによって理解される広範囲の予防策を指す。同様に、用語「処置」は、絶対的な用語と意図されない。いくつかの状況では、本発明のDPP4阻害剤は、たとえばにきびの症状をもたらすかもしれない皮脂産生を低下させようとするものである。いくつかの状況では、本発明のDPP4阻害剤による処置は、症状の頻度または重症度の低下をもたらす。
【0017】
本発明のすべての実施形態において、R、R、およびRは、好ましくはHである。
【0018】
本発明のすべての実施形態において、Rは、好ましくはHおよびメチル、最も好ましくはHである。
【0019】
本発明のすべての実施形態において、Rは、好ましくはarC~Cアルキル、最も好ましくはベンジルである。
【0020】
本発明のすべての実施形態において、nは、好ましくは0または1、最も好ましくは1である。
【0021】
本発明のすべての実施形態において、R、R、R、およびRがHであり、Rがベンジルであり、nが1である式(I)の化合物が、最も好ましい。
【0022】
式(I)の化合物は、たとえば米国特許出願公開第2009/0111731号明細書に開示されるように調製することができる。
【0023】
本発明のすべての実施形態において、特に二酢酸塩として、配列H-(ベータ-Ala)-Pro-Dab-NH-ベンジルを有するジペプチドが特に有利である。この化合物は、二酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミド(INCI)[CAS 823202-99-9]としても知られており、DSM Nutritional products Ltd.のSYN(登録商標)-AKEとして市販で入手可能である。
【0024】
別の目的では、本発明は、特に脂腺増殖症、過剰脂漏症、にきび、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、および酒さなどのような皮脂腺の障害の予防または処置のための方法であって、そのような処置を必要とする人の適切な皮膚のエリアに、少なくとも1つの式(I)のDPP4阻害剤を含む有効量の医薬組成物を局所的に投与することおよび任意選択で、効果を判断することを含む方法に関する。
【0025】
さらなる目的では、本発明は、脂性のおよび/もしくはてかてかする皮膚、傷、ならびに/または斑の予防または処置ならびに/または皮膚の毛穴のサイズの低下のための方法であって、そのような処置を必要とする人の適切な皮膚のエリアに、少なくとも1つの式(I)のDPP4阻害剤を含む有効量の美容組成物を局所的に投与することおよび任意選択で、効果を判断することを含む方法に関する。
【0026】
本発明によるそれぞれの組成物における少なくとも1つの式(I)の化合物の量は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて、0.5ppm~5’000ppmの範囲で、好ましくは2.5ppm~250ppmで、最も好ましくは25ppm~100ppmの範囲で選択される。
【0027】
用語「有効量」は、生理学的効果を得るのに必要な量を指す。生理学的効果は、1回つける用量または繰り返しつけることによって実現されてもよい。投与される投薬量は、当然、少なくとも1つの式(I)の化合物を含む特定の組成物の生理学的特徴ならびにその投与のモードおよびルート;レシピエントの年齢、健康状態、および体重;症状の性質および程度;併用されている処置の種類;処置の頻度;ならびに所望される効果などのような既知の因子に依存して変わってもよく、当業者によって調整することができる。好ましくは、皮膚につけられる組成物の量は、好ましくは0.1~2mg/cm皮膚の範囲で、最も好ましくは0.5~2mg/cm皮膚の範囲でなどのように、0.1~3mg/cm皮膚の範囲で選択される。
【0028】
本明細書における使用は、別段の定めがなければ、好ましくは美容組成物を介し、好ましくは、皮膚に本発明による化合物を局所的につけることによって、皮膚を美しくすることが意図される、美容のための、非治療上の使用を特に指すものとすることが十分に理解される。
【0029】
本明細書において使用される用語「美容組成物」は、皮膚および/または頭皮を処置する、ケアする、またはそれらの外見を改善するために使用される組成物を指す。特定の有利な美容組成物は、スキンケア調製物である。
【0030】
本明細書において使用される用語「医薬組成物」は、組成物を指し、これは、皮脂腺の皮膚障害を処置するために使用される。特定の有利な医薬組成物は、皮膚処置調製物である。
【0031】
本発明による組成物は、好ましくは、局所的に塗布することが意図され、これは、特に皮膚などのような、角質性のものに対して外部から塗布するものであることが理解される。
【0032】
本発明による組成物は、局所的につけることが意図されるように、それらは、生理学的に許容され得る媒体、すなわち皮膚、粘膜、および角質性の線維などのような角質性のものと適合性の媒体を含む。特に、生理学的に許容され得る媒体は、それぞれ、美容的に、薬学的に許容され得るキャリヤである。
【0033】
本明細書において使用される用語「美容的に許容され得るキャリヤ」、「薬学的に許容され得るキャリヤ」はそれぞれ、角質性のものと適合性の生理学的に許容され得る媒体を指す。適したキャリヤは、当技術分野においてよく知られており、一般の利用者が塗布することに基づいて選択される。好ましくは、本発明のキャリヤは、皮膚に塗布するのに適している(たとえば日焼け止め、クリーム、ミルク、ローション、マスク、セラム、ハイドロディスパージョン、ファンデーション、クリーム、クリームゲル、またはゲルなど)。そのようなキャリヤは、当業者によく知られており、皮膚に塗布するのに適している、1つ以上の適合性の液体または固体の増量希釈剤(filler diluent)、賦形剤、添加剤、またはビヒクルを含むことができる。キャリヤの厳密な量は、式(I)の化合物および当業者がそのキャリヤとは別のものとして分類するであろうあらゆる他の任意選択の成分(たとえば他の活性な構成成分)のレベルに依存するであろう。本発明の組成物は、好ましくは、組成物の重量の約75%~約99.999%、より好ましくは約85%~約99.99%、より好ましくは90%~約99%、最も好ましくは約93%~約98%のキャリヤを含む。
【0034】
本発明の組成物は、クリーム、ワックス、ペースト、ローション、ミルク、ムース、ゲル、オイル、ヘアトニック、およびスプレーを含む種々様々のタイプの産物に製剤することができる。好ましくは、式(I)の化合物は、ローション、クリーム、ゲル、およびトニックに製剤される。これらの産物の形態は、ハンドローションおよびボディーローション、美顔用モイスチャーライザー、アンチエイジング製品、ファンデーションを含む化粧品、ならびにその他同種のものを含むが、これらに限定されない多くの用途に使用されてもよい。そのような産物を製剤するために必要とされる任意のさらなる構成成分は、産物タイプに応じて変わり、当業者によって機械的に選ぶことができる。
【0035】
本発明の組成物が、エアロゾルとして製剤され、スプレー式の産物として皮膚に塗布される場合、噴射剤が、組成物に追加される。
【0036】
本発明による美容組成物は、たとえば、定義および選択はすべて本明細書に示される式(I)の化合物を美容的に許容され得るキャリヤと混合することによってなどのように、当技術分野の従来の方法によって調製することができる。
【0037】
本発明の美容組成物(キャリヤを含む)は、さらに、保存剤/酸化防止剤、脂肪性の物質/オイル、水、有機溶媒、シリコーン、増粘剤、軟化剤、乳化剤、消泡剤、フレグランスなどのような美的な構成成分、界面活性剤、増量剤、アニオン、カチオン、非イオン性、もしくは両性ポリマーまたはその混合物、噴射剤、酸性化作用物質または塩基性化作用物質、染料、着色剤/着色剤、研磨材、吸収剤、キレート剤および/または金属イオン遮閉剤、精油、スキンセンサート(skin sensate)、収れん剤、顔料、またはそのような組成物の中に通常製剤される任意の他の成分などのような、従来の美容のための補助剤および添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
本発明に従って、本発明による美容組成物はまた、美容および/または医薬組成物において従来使用される美容的活性成分をさらに含んでいてもよい。例示的な活性成分は、皮膚を明るくする作用物質;UVフィルタ、色素沈着過度の処置のための作用物質;炎症の予防または低下のための作用物質;安定剤、加湿剤、鎮静効果のある作用物質、および/またはエネルギーを与える作用物質ならびに弾性および皮膚バリアを改善するための作用物質を包含する。
【0039】
本発明の美容組成物において使用するのに適している美容のための賦形剤、希釈剤、補助剤、添加剤、およびスキンケア産業界においてよく使用される活性成分の例は、たとえば、online INFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)からアクセス可能なInternational Cosmetic Ingredient Dictionary&Handbook by Personal Care Product Council(http://www.personalcarecouncil.org/)において記載されるが、これらに限定されない。
【0040】
活性成分および美容のための賦形剤、希釈剤、補助剤、添加剤などの必要な量は、所望の産物の形態および用途に基づいて、当業者によって容易に決定することができる。さらなる成分は、適切であると考えられるとおりに、油性相、水性相に、または別々に追加することができる。
【0041】
本明細書において有用な美容的活性成分は、いくつかの場合において、1つを超える有益性を提供することができるまたは1つを超える作用様式を介して働くことができる。
【0042】
当然、当業者は、本発明に従う組み合わせと本質的に関連する有利な特性が、想定される追加によって悪影響を与えられないまたは実質的に悪影響を与えられないように、上記に言及される任意選択のさらなる成分、補助剤、希釈剤、および添加剤ならびに/またはそれらの量を選択するように注意するであろう。
【0043】
本発明による美容組成物は、溶媒もしくは脂肪性の物質において懸濁液もしくは分散液の形態をしていてもよいまたはその代わりにエマルションもしくはマイクロエマルション(特に水中油型(O/W)もしくは油中水型(W/O)のタイプ、水中シリコーン型(Si/W)もしくはシリコーン中水型(W/Si)のタイプ、PITエマルション、多重エマルション(たとえば油中水中油型(O/W/O)もしくは水中油中水型(W/O/W)のタイプ)、ピカリングのエマルション、ヒドロゲル、アルコール含有ゲル、リポゲル(lipogel)、一相もしくは多相溶液または気泡分散液の形態またはペンによって、マスクとして、もしくはスプレーとして塗布することができる他の通常の形態をしていてもよい。
【0044】
美容組成物が、特にO/W、W/O、Si/W、W/Si、O/W/O、W/O/W多重エマルション、またはピカリングのエマルションなどのようなエマルションである場合、そのような美容エマルション中に存在する油性相の量は、美容組成物の総重量に基づいて、10~60重量%の範囲、好ましくは15~50重量%の範囲、最も好ましくは15~40重量%の範囲などのように、好ましくは少なくとも10重量%である。
【0045】
一実施形態では、本発明による美容組成物は、好都合に、O/W乳化剤の存在下において水性相中に分散した油性相を含む水中油型(O/W)エマルションの形態をしている。そのようなO/Wエマルションの製品は、当業者によく知られている。
【0046】
本発明による美容組成物が、O/Wエマルションである場合、それは、好都合に、クエン酸ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリルSE(自己乳化性(self-emulsifying))、ステアリン酸、ステアリン酸の塩、ポリグルセリル-3-メチルグリコースジステアレートのリストから選択される少なくとも1つのO/WまたはSi/W乳化剤を含有する。さらに適した乳化剤は、セチルリン酸(たとえばDSM Nutritional Products Ltd.のAmphisol(登録商標) A)、セチルリン酸ジエタノールアミン(たとえばDSM Nutritional Products Ltd.のAmphisol(登録商標) DEA)、セチルリン酸カリウム(たとえばDSM Nutritional Products Ltd.のAmphisol(登録商標) K)、セテアリル硫酸ナトリウム、オレイン酸グリセリルリン酸ナトリウム、硬化植物グリセリドリン酸、およびその混合物などのようなリン酸エステルおよびその塩である。さらに適した乳化剤は、ソルビタンオレイン酸、ソルビタンセスキオレイン酸、ソルビタンイソステアリン酸、ソルビタントリオレイン酸、セテアリルグルコシド、ラウリルグルコシド、デシルグルコシド、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ポリステアリン酸スクロース、および水和ポリイソブテンである。さらに、1つ以上の合成ポリマーが、乳化剤として使用されてもよい。たとえば、PVPエイコサエンコポリマー、アクリル酸/C10~30アクリル酸アルキルクロスポリマー、およびその混合物。
【0047】
少なくとも1つのO/W、Si/W乳化剤は、それぞれ、好ましくは、美容組成物の総重量に基づいて、0.5~10重量%の量で、特に0.5~6重量%の範囲で、より詳細には0.5~5重量%の範囲などで、最も詳細には1~4重量%の範囲などで使用される。
【0048】
本発明による美容組成物において使用される特定の適したO/W乳化剤は、好都合に、8~10アルキルエチルリン酸、C9~15アルキルリン酸、セテアレス-2リン酸、セテアレス-5リン酸、セテス-8リン酸、セテス-10リン酸、セチルリン酸、C6~10パレス-4リン酸、C12~15パレス-2リン酸、C12~15パレス-3リン酸、DEA-セテアレス-2リン酸、DEA-セチルリン酸、DEA-オレス-3リン酸、セチルリン酸カリウム、デセス-4リン酸、デセス-6リン酸、およびトリラウレス-4リン酸などのようなリン酸エステル乳化剤を包含する。
【0049】
本発明による美容組成物において使用される特定の適したO/W乳化剤は、たとえばDSM Nutritional Products Ltd KaiseraugstのAmphisol(登録商標) Kとして市販で入手可能であるセチルリン酸カリウムである。
【0050】
別の特定の適した分類のO/W乳化剤は、たとえば、商標OLIVEM 1000で販売されている、(INCI名称)オリーブ油脂肪酸セテアリルおよびオリーブ油脂肪酸ソルビタン(化学組成:オリーブオイル脂肪酸のソルビタンエステルおよびセテアリルエステル)として知られている、オリーブオイルに由来する非イオン性自己乳化系である。
【0051】
特定の一実施形態では、本発明は、O/W乳化剤の存在下において水性相中に分散した油性相を含むO/Wエマルションの形態をした、定義および選択はすべて本明細書に示される美容組成物に関し、O/W乳化剤は、セチルリン酸カリウムである。そのようなO/Wエマルションにおける油性相の量は、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは10~60重量%の範囲、最も好ましくは、15~40重量%の範囲などのように15~50重量%の範囲にある。
【0052】
本発明による美容組成物は、通常、3~10の範囲のpH、好ましくは4~8の範囲のpH、および最も好ましくは4~7.5の範囲のpHを有する。pHは、当技術分野の標準的な方法によって、たとえばクエン酸などのような適した酸または水酸化ナトリウム(たとえば水溶液としての)、トリエタノールアミン(TEA Care)、トロメタミン(Trizma Base)、およびアミノメチルプロパノール(AMP-Ultra PC 2000)などのような塩基により所望されるように容易に調整することができる。
【0053】
下記の実施例は、本発明の組成物および効果をさらに示すために提供される。これらの実施例は、例証にすぎず、本発明の範囲を限定するようには決して意図されない。
【0054】
[実験の部]
1.ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)プロテアーゼアッセイ法
H-(ベータ-Ala)-Pro-Dab-NH-ベンジル[CAS823202-99-9]、N-Pal-Gly-His-Lys[147732-56-7]/N-Pal-Gly-Gln-Pro-Arg[221227-05-0](2:1)がそれぞれDPP4を阻害する可能性について、Enzo Life SciencesのDPP4 Drug Discovery Kitを使用して試験した。手短に言えば、DPP4を、阻害剤と共に10分間あらかじめインキュベートし、次いで、消光蛍光原基質(H-Gly-Pro-AMC)に追加する。DPP4によるペプチド基質のc-末端からのAMC成分の切断により、460nmでのその蛍光強度が増加する。次いで、AMCシグナルを、総時間20分間、毎分、Ex/Em=380/460で蛍光マイクロプレート読み取り装置を使用して記録する。「ベストフィット」ラインは、最初の10~20分間のデータポイントにより生成し、傾きを計算する。阻害剤の存在下における残存活性を以下のように計算した:残存する活性%(阻害剤あり)=(阻害剤サンプルの傾き/コントロールサンプルの傾き)*100。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1および2から分かるように、本発明によるジペプチドだけが、DPP4を阻害することができ、参照は、DPP4活性を刺激すらした。
【0058】
[2.皮脂腺(SG)によるエクスビボアッセイ]
ヒト皮脂腺の器官培養は、皮脂分泌に対するH-(ベータ-Ala)-Pro-Dab-NH-ベンジルの調節活性を検証するために実行した。生死判別試験を並行して実行した。小陰唇の皮膚サンプルのヒト皮脂腺を使用した(ドナー:37歳女性)。全層サンプルの表皮を注意深くはがし、皮脂腺を顕微解剖した。皮脂腺を8つのグループにプールし、6日目まで培養した。SGを24ウェルプレート中で培養し、500μlのSG培地(改変Williams’E培地)中に浸漬した。24時間後、培養培地を交換し、試験する物質を含有する培地と置き換えた。培地は、培養の3および5日目に新しくした。6日目に、腺を収集し、脂質およびタンパク質の定量化に使用した。手短に言えば、脂質を抽出し、タンパク質が溶解しないようにするためにSGをイソプロピルアルコール(IPOH)中でホモジナイズした。一定分量のIPOHを、脂質を測定するために取り出し、残りは、真空遠心分離機において蒸発させた。残った乾燥ペレットは、タンパク質溶解バッファーの存在下においてもう一度細かく切った。IPOH中に溶解した脂質および溶解バッファー中に溶解したタンパク質は、赤外分光法(Millipore Direct Detect)によって定量化した。総脂質量は、定量化したタンパク質に対して定量化した脂質を標準化することによって得た(すなわち脂質mg/タンパク質mg)。
【0059】
【表3】
【0060】
結論:H-(ベータ-Ala)-Pro-Dab-NH-ベンジル(10μM)は、未処置に対して皮脂腺においてエクスビボで皮脂分泌を19%低下させた。
【0061】
[3.臨床研究]
二重盲検並行群研究を40~55歳のコーカサス人の女性ボランティアで実行した。30人のボランティア(平均年齢46+/-1歳)は、プラセボ製剤を受け、29人のボランティア(平均年齢48+/-1歳)は、SYN(登録商標)-AKEを含有するverum製剤を受けた。プラセボ、verum製剤は、それぞれ、顔に28日間毎日二回つけた。研究の終わりに、毛穴のコンピューターによる分析のために写真を撮った。顔全体の1枚の写真を(90°)、毛穴のサイズの分析のためにNewtone(登録商標) Color faceにより撮った。さらに、ボランティアは、質問票に記入した。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
表4から分かるように、毛穴のサイズは、本発明のDPP4阻害剤を含有するverum製剤による処置によって有効に低下した。
【0065】
【表6】
【0066】
表5から分かるように、てかり(皮膚の脂性/光沢を反映する)は、verum製剤によって有効に低下した。
【0067】
【表7】
【0068】
表6から分かるように、認知可能な毛穴のサイズの低下および脂性の/てかてかする皮膚の有効な低下が、ボランティアによって観察された。