(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
B65G 49/00 20060101AFI20220802BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20220802BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B65G49/00 A
B65G49/07 C
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2019031804
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 貴史
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-165239(JP,A)
【文献】特開平09-323652(JP,A)
【文献】特開平09-260226(JP,A)
【文献】特開2008-168982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 49/00
B65G 49/07
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム内を走行する第1物品搬送車と第2物品搬送車とを備えた物品搬送設備であって、
前記第1物品搬送車は、第1物品を収容する第1収容室と、前記第1物品搬送車の外部の気体を前記第1収容室に吸気する第1吸気部と、前記第1収容室の気体を前記第1物品搬送車の外部に排気する第1排気部と、を備え、
前記第1吸気部は、前記第1物品搬送車の外部から前記第1収容室に向けて送風する第1送風部を備え、
前記第2物品搬送車は、前記第1物品よりも塵埃の発生量が多い第2物品を収容する第2収容室と、前記第2物品搬送車の外部の気体を前記第2収容室に吸気する第2吸気部と、前記第2収容室の気体を前記第2物品搬送車の外部に排気する第2排気部と、を備え、
前記第2吸気部は、前記第2物品搬送車の外部から前記第2収容室に向けて送風する第2送風部を備え、
前記第2排気部は、前記第2収容室から前記第2物品搬送車の外部に向けて送風する第3送風部と、前記第2排気部を通過する気体から塵埃を減少させる排気用フィルター部と、を備え、
前記第3送風部の単位時間当たりの送風量が、前記第2送風部の単位時間当たりの送風量より多い、物品搬送設備。
【請求項2】
前記第1吸気部は、前記第1送風部に加えて、前記第1吸気部を通過する気体から塵埃を減少させる第1フィルター部を更に備えている、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記第2吸気部は、前記第2送風部に加えて、前記第2吸気部を通過する気体から塵埃を減少させる第2フィルター部を更に備えている、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記第1物品搬送車が走行する走行経路を囲む囲み壁体と、前記囲み壁体によって囲まれている内部空間に上方から下方に向かう気流を生成する気流生成部と、を更に備え、
前記気流生成部は、前記内部空間の下部から前記囲み壁体の外部に向けて下方に気体を送風する壁体用送風部を備え、
前記第1排気部は、前記第1物品搬送車の下方に向けて気体を排気する、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記第1物品は、上下方向に連通する連通部を備え、
前記第1排気部は、前記第1収容室に収容されている前記第1物品に対して上下方向に沿う上下方向視で重なる領域に形成されている、請求項4に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記第2吸気部は、前記第2物品搬送車の前方から気体を吸気し、
前記第2排気部は、前記第2物品搬送車の後方に向けて気体を排気する、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム内を走行する物品搬送車を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備として、例えば、特開2008-168982号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。以下、背景技術の説明において、かっこ書きの符号又は名称は、先行技術文献における符号又は名称とする。この特許文献1に記載の物品搬送設備の物品搬送車(板状体搬送車1)は、物品(物品保持体11)を収容する収容室(収容空間12)と、物品搬送車の外部の気体を収容室に吸気する吸気部と、収容室の気体を物品搬送車の外部に排気する排気部と、を備えている。吸気部に、物品搬送車の外部から収容室に向けて送風するファンフィルタユニットを備えて、浄化された空気が収容室を通気するようにし、物品(詳しくは、容器に収容している板状物品)に塵埃が付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した物品搬送車が、上述した物品(以下、第1物品と称する)より塵埃の発生量が多い物品(以下、第2物品と称する)を搬送する場合、この第2物品から発生した塵埃が排気部から物品搬送車の外部に排気されるため、クリーンルームが汚損される可能性がある。そこで、排気部に、この排気部を通過する気体から塵埃を減少させるフィルター部を備えて、排気部から物品搬送車の外部に塵埃が排出される量を減少させることが考えられる。しかし、物品搬送設備を走行する全ての物品搬送車における排気部にフィルター部を備えると、物品搬送設備の製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
そこで、製造コストを低く抑えながらクリーンルームが汚損されることを抑制できる物品搬送設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、物品搬送設備の特徴構成は、クリーンルーム内を走行する第1物品搬送車と第2物品搬送車とを備え、
前記第1物品搬送車は、第1物品を収容する第1収容室と、前記第1物品搬送車の外部の気体を前記第1収容室に吸気する第1吸気部と、前記第1収容室の気体を前記第1物品搬送車の外部に排気する第1排気部と、を備え、前記第1吸気部は、前記第1物品搬送車の外部から前記第1収容室に向けて送風する第1送風部を備え、前記第2物品搬送車は、前記第1物品よりも塵埃の発生量が多い第2物品を収容する第2収容室と、前記第2物品搬送車の外部の気体を前記第2収容室に吸気する第2吸気部と、前記第2収容室の気体を前記第2物品搬送車の外部に排気する第2排気部と、を備え、前記第2吸気部は、前記第2物品搬送車の外部から前記第2収容室に向けて送風する第2送風部を備え、前記第2排気部は、前記第2収容室から前記第2物品搬送車の外部に向けて送風する第3送風部と、前記第2排気部を通過する気体から塵埃を減少させる排気用フィルター部と、を備え、前記第3送風部の単位時間当たりの送風量が、前記第2送風部の単位時間当たりの送風量より多い点にある。
【0007】
この特徴構成によれば、第1物品搬送車では、第1吸気部によって第1収容室に吸気した気体が第1排気部から排気される。これにより、第1収容室を気体が通気し、第1収容室に収容されている第1物品の周囲を気体が流動することで、第1物品に塵埃が付着することを抑制できる。そして、第1物品は塵埃の発生量が比較的少ないため、第1収容室の気体をそのまま第1物品搬送車の外部に排気したとしてもクリーンルームのクリーン度は低下し難い。そのため、第1物品搬送車の第1排気部にフィルター部を備えなくてもよく、第1物品搬送車の製造コストを低く抑えることができる。
【0008】
また、第2物品搬送車では、第2吸気部によって第2収容室に吸気した気体が第2排気部から排気される。これにより、第2収容室を気体が通気し、第2収容室に収容されている第2物品の周囲に気体が流動することで、第2物品に塵埃が付着することを抑制できる。ところで、第2物品は塵埃の発生量が比較的多いため、第2収容室の気体をそのまま第2物品搬送車の外部に排気した場合にクリーンルームのクリーン度が低下し易い。そこで、第2物品搬送車の第2排気部に排気用フィルター部を備えることで、クリーンルームに排出される塵埃を抑えることができ、クリーンルームのクリーン度が低下することを抑制できる。
【0009】
このように、塵埃の発生が比較的少ない第1物品を搬送する第1物品搬送車については、第1排気部にフィルター部を備えず、塵埃の発生が比較的多い第2物品を搬送する第2物品搬送車については、第2排気部に排気用フィルター部を備えることで、製造コストを低く抑えながらクリーンルームのクリーン度が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
物品搬送設備の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、物品搬送設備100は、第1物品搬送車1と第2物品搬送車2と自動倉庫3と処理装置4と洗浄装置5と移載装置6とを備えている。第1物品搬送車1は、第1物品W1を搬送し、第2物品搬送車2は、第1物品W1より塵埃の発生量が多い第2物品W2を搬送する。本実施形態では、第2物品搬送車2は、第1物品搬送車1が走行する走行経路Lを走行する。つまり、第1物品搬送車1と第2物品搬送車2とは同じ走行経路Lを走行する。
【0012】
図2に示すように、物品搬送設備100が設置されるクリーンルームRの天井部には、除塵送風装置8が設置されている。本実施形態では、除塵送風装置8は、ファンとフィルター部とを筐体に組込んでユニット化されたファンフィルタユニット(以下、FFUと略称する)を複数設置して構成されている。また、物品搬送設備100が設置されるクリーンルームRの床部には、上下方向Zに貫通する通気孔が複数形成されたグレーチング床9が設置されている。そして、除塵送風装置8によってクリーンルームRに吸気された清浄された空気は、天井側から床側に流動してグレーチング床9から排気される。このように、クリーンルームRには、天井側から床側に向けて空気が下向きに流動するダウンフローが形成されている。第1物品搬送車1及び第2物品搬送車2が走行する走行経路LはクリーンルームR内に設定されており、第1物品搬送車1及び第2物品搬送車2は、クリーンルームR内を走行する。
【0013】
図3に示すように、本実施形態では、複数枚の板状体Wを収容した容器Cを第1物品W1及び第2物品W2としている。詳しくは、複数枚のフォトマスクを収容した容器Cを第1物品W1及び第2物品W2としている。処理装置4は、板状体Wを使用して処理を行う装置である。洗浄装置5は、容器C及び板状体Wを洗浄する装置である。本実施形態では、洗浄装置5で洗浄した後、処理装置4で使用する前の物品を第1物品W1とし、処理装置4で使用した後、洗浄装置5で洗浄する前の物品を第2物品W2としている。第1物品W1は、洗浄装置5で洗浄されることで付着している塵埃が減少している。これに対して、第2物品W2は、処理装置4で使用されることで塵埃が付着しており、付着している塵埃の数が比較的多い。そのため、第2物品W2を、第1物品W1よりも塵埃の発生量が多い物品、としている。
【0014】
次に、第1物品W1について説明する。尚、第1物品W1を説明するにあたり、
図5に示すように、第1物品W1が第1物品搬送車1や第2物品搬送車2に収容されている状態に基づいて説明する。尚、第1物品W1は、状況の変化により第2物品W2になるものであり、第1物品W1と第2物品W2とは同様に構成されているため、第2物品W2についての説明は省略する。
【0015】
図3に示すように、第1物品W1の容器Cは、板状の天板11と、複数の板状の底板12と、複数の連結体13と、板状体Wを支持する複数の支持体14と、で形成されている。天板11及び底板12の夫々には、上下方向Zに貫通する貫通孔15が形成されている。複数の連結体13は、天板11と底板12とを連結する状態で備えられており、容器Cの側壁を形成している。容器Cは、前後方向Xに互いに間隔を空けた状態で備えられた一対の支持体14に支持した状態で板状体Wを収容する。容器Cは、一対の支持体14を上下方向Zに並ぶ状態で複数組備えることで、複数枚の板状体Wを上下方向Zに互いに間隔を空けた状態で収容可能に構成されている。また、図示は省略するが、板状体Wは上下方向Zに貫通する部分を有する形状に形成されている。
【0016】
容器Cの天板11及び底板12に貫通孔15が形成されていると共に、板状体Wが上下方向Zに貫通する部分を有する形状に形成されていることで、第1物品W1には、上下方向Zに連通する上下連通部17が形成されている。このように、第1物品W1は、上下連通部17を備えており、空気を上下方向Zに通気可能に構成されている。尚、上下連通部17は、上下方向Zに連通する連通部に相当する。
【0017】
また、容器Cの連結体13が互いに離間する状態で設置されると共に、板状体Wを上下方向Zに互いに離間する状態で収容することで、第1物品W1には、前後方向Xに連通する前後連通部16が形成されている。このように、第1物品W1は、前後連通部16を備えており、空気を前後方向Xに通気可能に構成されている。尚、前後連通部16と上下連通部17とは互いに連通している。
【0018】
図1に示すように、自動倉庫3は、第1物品W1又は第2物品W2を搬送するスタッカークレーン21と、第1物品W1又は第2物品W2を収容する収容部を複数備えた物品収容棚22と、自動倉庫3に入庫する第2物品W2や自動倉庫3から出庫する第1物品W1を搬送する入出庫装置23と、を備えている。スタッカークレーン21は、入出庫装置23の設定位置P1から物品収容棚22に第2物品W2を搬送すると共に、物品収容棚22から洗浄装置5に第2物品W2を搬送する。また、スタッカークレーン21は、洗浄装置5から物品収容棚22に第1物品W1を搬送すると共に、物品収容棚22から入出庫装置23の設定位置P1に第1物品W1を搬送する。入出庫装置23は、入出庫装置23に対応する位置に停止している第2物品搬送車2から設定位置P1に第2物品W2を搬送し、設定位置P1から入出庫装置23に対応する位置に停止している第1物品搬送車1に第1物品W1を搬送する。
【0019】
移載装置6は、移載装置6に対応する位置に停止している第1物品搬送車1から処理装置4に第1物品W1を移載し、処理装置4から移載装置6に対応する位置に停止している第2物品搬送車2に第2物品W2を移載する。また、
図2に示すように、移載装置6が第1物品W1や第2物品W2を移載可能な位置に、第1物品W1を収容する第1収容部24と第2物品W2を収容する第2収容部25とが備えられている。本実施形態では、第1収容部24及び第2収容部25は、上下方向Zに沿う上下方向視で、走行経路Lを囲む囲み壁体31と重なる位置に設置されている。これら第1収容部24及び第2収容部25は、囲み壁体31に対して下方側に間隔を空けた状態で設置されている。これら第1収容部24や第2収容部25はバッファ用の収容部として用いている。なお、本実施形態において、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重なる」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0020】
物品搬送設備100では、洗浄装置5によって洗浄された第1物品W1は、自動倉庫3、第1物品搬送車1、及び移載装置6によって処理装置4に搬送され、処理装置4によって使用された第2物品W2は、移載装置6、第2物品搬送車2、及び自動倉庫3によって、洗浄装置5に搬送される。
【0021】
図4に示すように、物品搬送設備100は、走行経路Lを囲む囲み壁体31と、囲み壁体31によって囲まれている内部空間Sに上方から下方に向かう気流を生成する気流生成部32と、を更に備えている。尚、走行経路Lが設定されている領域(第1物品搬送車1や第2物品搬送車2が走行する領域)と自動倉庫3が設置されている領域と移載装置6が設置されている領域とは囲み壁体31等の壁体によって区画されており、各領域での空気の流動が規制されている。
【0022】
気流生成部32は、囲み壁体31の上部に設置された壁体吸気部33と、囲み壁体31の下部に設置された壁体排気部34と、を備えている。壁体吸気部33は、内部空間Sを走行する第1物品搬送車1や第2物品搬送車2に対して上方側に設置されている。壁体排気部34は、内部空間Sを走行する第1物品搬送車1や第2物品搬送車2に対して下方側及び左右方向Yの両側に設置されている。
【0023】
壁体吸気部33は、内部空間Sの上部において、囲み壁体31の外部の空気を吸気する。本実施形態では、壁体吸気部33は、囲み壁体31の外部から内部空間Sの上部に向けて下方に空気を送風する上部送風部35と、壁体吸気部33を通気する空気から塵埃を減少させる上部フィルター部36と、を備えている。本実施形態では、壁体吸気部33は、囲み壁体31の上部に設置された複数のFFUによって構成されており、この囲み壁体31の上部に設置された複数のFFUが、上部送風部35及び上部フィルター部36を備えている。
【0024】
壁体排気部34は、内部空間Sの下部の空気を囲み壁体31の外部に排気する。本実施形態では、壁体排気部34は、内部空間Sの下部から囲み壁体31の外部に向けて下方に送風する下部送風部37と、壁体排気部34を通気する空気から塵埃を減少させる下部フィルター部38と、を備えている。本実施形態では、壁体排気部34は、囲み壁体31の下部に設置された複数のFFUを備えており、この囲み壁体31の下部に設置されたFFUが、下部送風部37及び下部フィルター部38を備えている。更に本実施形態では、壁体排気部34は、内部空間Sの下部と囲み壁体31の外部とを連通する連通孔39を備えている。そして、上部送風部35の単位時間当たりの送風量は、下部送風部37の単位時間当たりの送風量より多い。そのため、内部空間Sは、囲み壁体31の外部に対して陽圧となっており、囲み壁体31の下部に設置されたFFUを通って囲み壁体31の外部に向けて排気されることに加えて、内部空間Sの下部の空気が連通孔39を通って囲み壁体31の外部に向けて排気されるようになっている。このように、気流生成部32は、内部空間Sの下部から囲み壁体31の外部に向けて下方に空気を送風する下部送風部37を備えている。この下部送風部37は、壁体用送風部に相当する。
【0025】
次に、第1物品搬送車1及び第2物品搬送車2について説明する。
図5に示すように、第1物品搬送車1は、第1物品W1を収容する第1収容室41と、第1物品搬送車1の外部の空気を第1収容室41に吸気する第1吸気部42と、第1収容室41の空気を第1物品搬送車1の外部に排気する第1排気部43と、第1収容室41を囲む第1筐体47と、を備えている。
【0026】
第1吸気部42は、第1物品搬送車1の外部から第1収容室41に向けて送風する第1送風部44と、第1吸気部42を通過する空気から塵埃を減少させる第1フィルター部45と、を備えている。本実施形態では、第1吸気部42は、第1筐体47の前部に設置されたFFUによって構成されており、この第1筐体47の前部に設置されたFFUが、第1送風部44及び第1フィルター部45を備えている。第1吸気部42は、第1収容室41に収容されている第1物品W1の前端より前方側X1に設置されており、第1物品搬送車1の前方から空気を吸気する。第1吸気部42は、第1収容室41に収容されている第1物品W1に対して前後方向Xに沿って見た前後方向視で重なる領域に形成されている。本実施形態では、第1送風部44及び第1フィルター部45の双方が、第1収容室41に収容されている第1物品W1に対して前後方向視で重なるように設置されている。
【0027】
第1排気部43は、第1収容室41の下部と第1筐体47の外部とを連通する多孔状の第1連通部46を備えている。第1排気部43は、第1収容室41に収容されている第1物品W1の下端より下方側に設置されており、第1物品搬送車1の下方に向けて空気を排気する。尚、本実施形態では、第1排気部43は、送風部やフィルター部を備えていない。第1排気部43は、第1収容室41に収容されている第1物品W1に対して上下方向視で重なる領域に形成されている。本実施形態では、第1連通部46を構成する複数の孔の少なくとも一部が、第1収容室41に収容されている第1物品W1に対して上下方向視で重なるように設置されている。
【0028】
第1物品搬送車1は、第1吸気部42によって第1収容室41に空気を吸気することで、第1収容室41は第1物品搬送車1の外部に対して陽圧となっている。そのため、第1収容室41を囲む第1筐体47に隙間があった場合でも、この隙間からは第1収容室41から第1物品搬送車1の外部に空気が排気されることになるため、第1物品搬送車1の外部の空気が第1フィルター部45を通さずに第1収容室41に入ることを抑制できる。従って、第1収容室41のクリーン度を高く維持し易い。
【0029】
第2物品搬送車2は、第2物品W2を収容する第2収容室51と、第2物品搬送車2の外部の空気を第2収容室51に吸気する第2吸気部52と、第2収容室51の空気を第2物品搬送車2の外部に排気する第2排気部53と、第2収容室51を囲む第2筐体58と、を備えている。
【0030】
第2吸気部52は、第2物品搬送車2の外部から第2収容室51に向けて送風する第2送風部54と、第2吸気部52を通過する空気から塵埃を減少させる第2フィルター部55と、を備えている。本実施形態では、第2吸気部52は、第2筐体58の前部に設置されたFFUによって構成されており、この第2筐体58の前部に設置されたFFUが、第2送風部54及び第2フィルター部55を備えている。第2吸気部52は、第2収容室51に収容されている第2物品W2の前端より前方側X1に設置されており、第2物品搬送車2の前方から空気を吸気する。第2吸気部52は、第2収容室51に収容されている第2物品W2に対して前後方向視で重なる領域に形成されている。本実施形態では、第2送風部54及び第2フィルター部55の双方が、第2収容室51に収容されている第2物品W2に対して前後方向視で重なるように設置されている。
【0031】
第2排気部53は、第2収容室51から第2物品搬送車2の外部に向けて送風する第3送風部56と、第2排気部53を通過する空気から塵埃を減少させる第3フィルター部57と、を備えている。本実施形態では、第2排気部53は、第2物品搬送車2の後部に設置されたFFUによって構成されており、この第2物品搬送車2の後部に設置されたFFUが、第3送風部56及び第3フィルター部57を備えている。第2排気部53は、第2収容室51に収容されている第2物品W2より後端より後方側X2に設置されており、第2物品搬送車2の後方に向けて空気を排気する。第2排気部53は、第2収容室51に収容されている第2物品W2に対して前後方向視で重なる領域に形成されている。本実施形態では、第3送風部56及び第3フィルター部57の双方が、第2収容室51に収容されている第2物品W2に対して前後方向視で重なるように設置されている。
【0032】
第3送風部56の単位時間当たりの送風量は、第2送風部54の単位時間当たりの送風量より多い。本実施形態では、第3送風部56のファンの回転速度を、第2送風部54のファンの回転速度より速くすることで、第3送風部56の単位時間当たりの送風量を、第2送風部54の単位時間当たりの送風量より多くしている。これにより、第2収容室51は第2物品搬送車2の外部に対して陰圧となっている。そのため、第2収容室51を囲む第2筐体58に隙間があった場合でも、この隙間からは第2物品搬送車2の外部から第2収容室51に空気が吸気されることになるため、第2収容室51の空気が第3フィルター部57を通さずに第2物品搬送車2の外部に出ることを抑制できる。従って、第2物品搬送車2の外部が汚損され難い。
【0033】
2.その他の実施形態
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0034】
(1)上記の実施形態では、第1吸気部42は、第1物品搬送車1の前方から空気を吸気する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されない。例えば、第1吸気部42を、第1物品搬送車1の上方から空気を吸気する構成としてもよい。或いは、第1吸気部42を、横側方等、前方及び上方以外から空気を吸気する構成としてもよい。
【0035】
(2)上記の実施形態では、第1排気部43は、送風部やフィルター部を備えず、第1物品搬送車1の下方に空気を排気する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されない。例えば、第1排気部43に、送風部とフィルター部とのうちの何れか一方のみを備える、又は、送風部とフィルター部との双方を備える構成としてもよい。また、第1排気部43を、第1物品搬送車1の後方に空気を排気する構成としてもよい。或いは、第1排気部43を、横側方等、下方及び後方以外に空気を排気する構成としてもよい。
【0036】
(3)上記の実施形態では、第2吸気部52は、第2送風部54と第2フィルター部55とを備え、第2物品搬送車2の前方から空気を吸気する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されない。例えば、第2吸気部52を、第2送風部54と第2フィルター部55とのうちの第2送風部54のみを備える構成としてもよい。また、第2吸気部52を、第2物品搬送車2の上方から空気を吸気する構成としてもよい。或いは、第2吸気部52を、横側方等、前方及び上方以外から空気を吸気する構成としてもよい。
【0037】
(4)上記の実施形態では、第2排気部53は、第2物品搬送車2の後方に向けて空気を排気する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されない。例えば、第2排気部53を、第2物品搬送車2の下方に空気を排気する構成としてもよい。或いは、第2排気部53を、横側方等、後方及び下方以外に空気を排気する構成としてもよい。
【0038】
(5)上記の実施形態では、第1物品搬送車1と第2物品搬送車2とが同じ走行経路Lを走行する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されない。例えば、第1物品搬送車1と第2物品搬送車2とが異なる走行経路Lを走行する構成としてもよい。
【0039】
(6)上記の実施形態では、走行経路Lを囲む囲み壁体31を備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されない。例えば、走行経路Lが囲み壁体31で囲まれていない構成としてもよい。
【0040】
(7)上記の実施形態では、第1物品W1や第2物品W2を、フォトマスクを収容した容器Cとする構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されない。例えば、第1物品W1及び第2物品W2の一方又は双方を、ウェハを収容したFOUPとする構成としてもよく、また、液晶用のガラス基板を収容した容器Cとする構成としてもよい。
【0041】
(8)上記の実施形態では、第1物品W1が処理装置4で使用する前の物品であり、第2物品W2が処理装置4で使用した後の物品である場合の例について説明した。しかし、そのような構成に限定されない。例えば、第1物品W1が物品搬送設備内のみで搬送される物品であり、第2物品W2が物品搬送設備の外部から物品搬送設備に搬送されてきた物品であってもよい。或いは、第1物品W1と第2物品W2とが異なる材質で構成された部材を備え、第2物品W2が、第1物品W1が備える部材よりも塵埃を発生させ易い材質の部材を含むものであってもよい。
【0042】
(9)上記した実施形態では、気体を、空気とする構成を例に説明した。しかし、そのような構成に限定されない。例えば、気体を、窒素の含有率が高い不活性気体等としてもよい。
【0043】
(10)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0044】
3.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した物品搬送設備の概要について説明する。
【0045】
物品搬送設備は、クリーンルーム内を走行する第1物品搬送車と第2物品搬送車とを備え、
前記第1物品搬送車は、第1物品を収容する第1収容室と、前記第1物品搬送車の外部の気体を前記第1収容室に吸気する第1吸気部と、前記第1収容室の気体を前記第1物品搬送車の外部に排気する第1排気部と、を備え、前記第1吸気部は、前記第1物品搬送車の外部から前記第1収容室に向けて送風する第1送風部を備え、前記第2物品搬送車は、前記第1物品よりも塵埃の発生量が多い第2物品を収容する第2収容室と、前記第2物品搬送車の外部の気体を前記第2収容室に吸気する第2吸気部と、前記第2収容室の気体を前記第2物品搬送車の外部に排気する第2排気部と、を備え、前記第2吸気部は、前記第2物品搬送車の外部から前記第2収容室に向けて送風する第2送風部を備え、前記第2排気部は、前記第2収容室から前記第2物品搬送車の外部に向けて送風する第3送風部と、前記第2排気部を通過する気体から塵埃を減少させる排気用フィルター部と、を備え、前記第3送風部の単位時間当たりの送風量が、前記第2送風部の単位時間当たりの送風量より多い。
【0046】
本構成によれば、
第1物品搬送車では、第1吸気部によって第1収容室に吸気した気体が第1排気部から排気される。これにより、第1収容室を気体が通気し、第1収容室に収容されている第1物品の周囲を気体が流動することで、第1物品に塵埃が付着することを抑制できる。そして、第1物品は塵埃の発生量が比較的少ないため、第1収容室の気体をそのまま第1物品搬送車の外部に排気したとしてもクリーンルームのクリーン度は低下し難い。そのため、第1物品搬送車の第1排気部にフィルター部を備えなくてもよく、第1物品搬送車の製造コストを低く抑えることができる。
【0047】
また、第2物品搬送車では、第2吸気部によって第2収容室に吸気した気体が第2排気部から排気される。これにより、第2収容室を気体が通気し、第2収容室に収容されている第2物品の周囲に気体が流動することで、第2物品に塵埃が付着することを抑制できる。ところで、第2物品は塵埃の発生量が比較的多いため、第2収容室の気体をそのまま第2物品搬送車の外部に排気した場合にクリーンルームのクリーン度が低下し易い。そこで、第2物品搬送車の第2排気部に排気用フィルター部を備えることで、クリーンルームに排出される塵埃を抑えることができ、クリーンルームのクリーン度が低下することを抑制できる。
【0048】
このように、塵埃の発生が比較的少ない第1物品を搬送する第1物品搬送車については、第1排気部にフィルター部を備えず、塵埃の発生が比較的多い第2物品を搬送する第2物品搬送車については、第2排気部に排気用フィルター部を備えることで、製造コストを低く抑えながらクリーンルームのクリーン度が低下することを抑制できる。
【0049】
ここで、前記第1吸気部は、前記第1送風部に加えて、前記第1吸気部を通過する気体から塵埃を減少させる第1フィルター部を更に備えていると好適である。
【0050】
本構成によれば、第1物品搬送車の外部から第1収容室に進入する塵埃が減少するため、第1収容室に収容されている第1物品が塵埃によって汚損され難い。また、第1吸気部によって第1収容室に気体を吸気することで、第1収容室は第1物品搬送車1の外部に対して陽圧となる。そのため、第1収容室を囲む第1物品搬送車の筐体に隙間があった場合でも、この隙間からは第1収容室から第1物品搬送車の外部に空気が排気されることになるため、第1物品搬送車の外部の空気が第1フィルター部を通さずに第1収容室に入ることを抑制できる。
【0051】
また、前記第2吸気部は、前記第2送風部に加えて、前記第2吸気部を通過する気体から塵埃を減少させる第2フィルター部を更に備えていると好適である。
【0052】
本構成によれば、第2物品搬送車の外部から第2収容室に進入する塵埃が減少するため、第2収容室に収容されている第2物品が塵埃によって汚損され難い。また、第2吸気部と同様に、第1吸気部に、第1送風部に加えて第1フィルター部を備えた場合には、第2物品搬送車の第2吸気部を、第1物品搬送車の第1吸気部に流用することも可能となり、第1物品搬送車の製造コストを低く抑えることができる。
【0053】
また、前記第1物品搬送車が走行する走行経路を囲む囲み壁体と、前記囲み壁体によって囲まれている内部空間に上方から下方に向かう気流を生成する気流生成部と、を更に備え、前記気流生成部は、前記内部空間の下部から前記囲み壁体の外部に向けて下方に気体を送風する壁体用送風部を備え、前記第1排気部は、前記第1物品搬送車の下方に向けて気体を排気すると好適である。
【0054】
本構成によれば、第1排気部から内部空間に排気した気体は、その内部空間に生成されている気流によって下方に流れ、壁体用送風部によって囲み壁体の外部に排気される。そのため、第1排気部から排気した気体が内部空間に留まり難く、内部空間のクリーン度が低下することを抑制できる。
【0055】
また、前記第1物品は、上下方向に連通する連通部を備え、前記第1排気部は、前記第1収容室に収容されている前記第1物品に対して上下方向に沿う上下方向視で重なる領域に形成されていると好適である。
【0056】
本構成によれば、第1収容室の気体は、第1物品の連通部を上方から下方に通気した後、第1排気部から排気され易くなる。よって、第1収容室に収容されている第1物品の周囲を気体が流動し易くなり、第1物品に塵埃が付着することを更に抑制できる。
【0057】
また、前記第2吸気部は、前記第2物品搬送車の前方から気体を吸気し、前記第2排気部は、前記第2物品搬送車の後方に向けて気体を排気すると好適である。
【0058】
本構成によれば、第2吸気部によって第2物品搬送車の前方から第2収容室に吸気された気体は、そのまま後側に流動し、第2排気部によって第2収容室から第2物品搬送車の後方に向けて排気される。このように、気体を前方から吸気して後方に排気させることで、第2吸気部から第2排気部に向けて第2収容室内で気体を流動させ易くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示に係る技術は、物品搬送車を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:第1物品搬送車
2:第2物品搬送車
17:上下連通部(連通部)
31:囲み壁体
32:気流生成部
37:下部送風部(壁体用送風部)
41:第1収容室
42:第1吸気部
43:第1排気部
44:第1送風部
45:第1フィルター部
51:第2収容室
52:第2吸気部
53:第2排気部
54:第2送風部
55:第2フィルター部
56:第3送風部
57:第3フィルター部(排気用フィルター部)
100:物品搬送設備
R:クリーンルーム
W1:第1物品
W2:第2物品