(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】パーティクル計数方法及びパーティクル計数装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/06 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
G01N15/06 C
G01N15/06 D
(21)【出願番号】P 2019079244
(22)【出願日】2019-04-18
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 彰
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/146429(WO,A1)
【文献】特開2010-151810(JP,A)
【文献】特開2006-189337(JP,A)
【文献】特開平8-122252(JP,A)
【文献】特開2017-102068(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0160178(US,A1)
【文献】特開2013-170872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象領域を通過するパーティクルを計数するパーティクル計数装置であって、
前記測定対象領域に光を照射する光源部と、
前記測定対象領域に面した、前記光源
部からの光を直接受光しない位置に設けられた光検出部と、
前記光源部を点灯させて前記光検出部からの出力信号を受信し、該出力信号の大きさが予め決められた閾値を超えていることに基づいてパーティクルを検出して計数する測定実行部と、
前記光源部を消灯して前記出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定する判定部と
を備えるパーティクル計数装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記測定実行部による測定開始後、前記光源部を点灯させた状態で、前記閾値を超える大きさの出力信号が所定時間、検出された場合に動作する、請求項1に記載のパーティクル計数装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記測定実行部による測定開始後、前記光源部を点灯させた状態で、前記閾値以下の前記出力信号の大きさが所定時間、検出された場合に、前記光源部を消灯し、前記光源部を消灯したあとの前記出力信号の大きさが、該光源部の点灯時の前記出力信号の大きさから低下したか否かを判定する、請求項2に記載のパーティクル計数装置。
【請求項4】
前記判定部により、前記光源部を消灯したあとの前記出力信号の大きさが、該光源部の点灯時の前記出力信号の大きさから低下した、と判定された場合に、該光源部の点灯時の前記出力信号の大きさをバックグラウンド信号として保存する、請求項3に記載のパーティクル計数装置。
【請求項5】
さらに、
前記判定部により、前記出力信号の大きさが前記閾値を超えている、と判定された場合に、異常情報を通知する異常通知部
を備える、請求項1から4のいずれかに記載のパーティクル計数装置。
【請求項6】
測定対象領域に光を照射しつつ、該光を直接受光しない位置に配置された光検出器からの出力信号を受信し、該出力信号の大きさが予め決められた閾値を超えていることに基づいてパーティクルを検出して計数するパーティクル計数方法であって、
前記測定対象領域に光を照射することなく、前記光検出器からの出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定する工程
を含むパーティクル計数方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティクル計数方法及びパーティクル計数装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の処理工程で発生し、処理室内を浮遊する粉塵などのパーティクルは、半導体製品の性能を低下させる要因となる。そこで、半導体処理装置では、パーティクルの発生を抑えるためにウエハの処理室(チャンバ)内を高真空状態にするとともに、処理室内を浮遊するパーティクルをリアルタイムで計数するパーティクル計数装置が設置される(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のパーティクル計数装置は、円筒形の筐体と、該筐体の周面に互いに対向するように形成された一対の開口と、該筐体の一端(基端)に設けられたレーザ光源と、該筐体内部の、前記レーザ光を直接受光しない位置に設けられた光検出部を備えている。このパーティクル計数装置では、前記一対の開口を通じて筐体内に進入したパーティクルにレーザ光が照射されることにより生じる散乱光が光検出部に入射して、該光検出部からの出力信号の大きさが予め決められた閾値を超えたことに基づいて、パーティクルが検出され、計数される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/146429号
【文献】特開2013-88198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体処理装置の場合、ウエハの処理状況を確認するためにチャンバ内に照明が設けられることがある。このような場合には、光検出器に照明光が直接入射しないようにパーティクル計数装置が配置されるものの、チャンバ内での照明光の散乱等により生じる、予期しない迷光がパーティクル計数装置に入り込むのを完全に防ぐことは困難である。そのため、パーティクルが計数されているときに、それがパーティクルによる散乱光が検出されたことによるものであるか、閾値を超える強度の迷光を検出したことによるものであるかを判別することが難しい場合があった。
【0006】
ここでは、半導体処理装置のチャンバ内で使用されるパーティクル計数装置を例に説明したが、半導体装置以外で使用される場合にも上記同様の問題があった。なお、上記のパーティクル計数装置は筐体を備えたものとしたが、配管を流れるパーティクルを計数する場合などには、該配管内の測定対象領域に光を照射する光源と、その光を直接受光しない位置に設けられた光検出部のみで構成されたパーティクル計数装置を用いる場合もある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、パーティクルによる散乱光の検出と、閾値を超える強度の迷光の検出を判別することができるパーティクル計数方法及びパーティクル計数装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明の一態様は、測定対象領域に光を照射しつつ、該光を直接受光しない位置に配置された光検出器からの出力信号を受信し、該出力信号の大きさが予め決められた閾値を超えていることに基づいてパーティクルを検出して計数するパーティクル計数方法において、
前記測定対象領域に光を照射することなく、前記光検出器からの出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定する工程
を含む。
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明の別の態様は、測定対象領域を通過するパーティクルを計数するパーティクル計数装置であって、
前記測定対象領域に光を照射する光源部と、
前記測定対象領域に面した、前記光源部からの光を直接受光しない位置に設けられた光検出部と、
前記光源部を点灯させて前記光検出部からの出力信号を受信し、該出力信号の大きさが予め決められた閾値を超えていることに基づいてパーティクルを検出して計数する測定実行部と、
前記光源部を消灯して前記出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定する判定部と
を備える。
【発明の効果】
【0010】
前記閾値は、パーティクルが存在しない状態での光検出器からの出力信号よりも大きく、かつ、パーティクルによる散乱光が光検出器で検出されたときの該光検出器からの出力信号よりも小さい値に、予め(例えばパーティクル計数装置の製造段階で)設定される。
【0011】
本発明に係るパーティクル計数装置は、半導体製造装置のチャンバなどの測定対象部位に取り付けて用いられる。また、本発明に係るパーティクル計数方法は、該チャンバ内等の測定対象領域を通過するパーティクルを計数するために用いられる。このパーティクル計数方法及び装置では、測定対象領域に光を照射した状態で、光検出部からの出力信号の大きさが予め決められた閾値を超えていることに基づいてパーティクルを検出して計数する。また、測定対象領域に光を照射することなく、光検出器からの出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定する。この判定は、例えば、パーティクル計数装置を測定対象部位に取り付けた時点で行う。あるいは、測定対象領域を通過するパーティクルの計数を開始した後、所定の時間間隔で行うようにしてもよい。測定対象領域に光を照射していない状態でパーティクルによる散乱光が発生することはなく、本来、光検出部からの出力信号が前記閾値を超えることはない。つまり、測定対象領域に光を照射していないにもかかわらず光検出器からの出力信号が前記閾値を超えている場合には、装置外部から進入した光(迷光)が検出されていることになる。従って、測定対象領域に光を照射していない状態で光検出器からの出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定することにより、検出されている光がパーティクルによる散乱光であるか、装置外部から進入した光であるかを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るパーティクル計数装置の一実施例の要部構成を説明する図。
【
図2】本実施例のパーティクル計数装置の本体部の矢視断面図。
【
図3】本実施例のパーティクル計数装置における光検出部からの出力信号の一例
【
図4】本発明に係るパーティクル計数方法を、パーティクル計数装置の取り付け時に行う一実施例のフローチャート。
【
図5】本発明に係るパーティクル計数方法を、パーティクルの測定(計数)中に行う一実施例のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るパーティクル計数装置及びパーティクル計数方法の一実施例について、以下、図面を参照して説明する。本実施例のパーティクル計数装置及びパーティクル計数方法は、例えば、半導体製造装置のウエハの処理室(チャンバ)内を浮遊するパーティクルをリアルタイムで計数するために用いられる。もちろん、本実施例のパーティクル計数装置及びパーティクル計数方法は、この用途に限らず、他の装置等において測定対象領域を浮遊するパーティクルを計数するためにも使用されうる。
【0014】
本実施例のパーティクル計数装置1の要部構成を
図1及び
図2に示す。本実施例のパーティクル計数装置1は、大別して本体部2と制御・処理部4から構成される。
図1はパーティクル計数装置1の本体部2の上面図、及び該本体部2に接続される制御・処理部4の構成を示す図である。
図2は
図1のパーティクル計数装置1の本体部2のA’-A’矢視断面図である。本実施例のパーティクル計数装置1は、円筒形の筐体10と、筐体10の周面に互いに対向するように形成された一対の開口部11a、11bと、筐体10の一端(基端)に設けられたレーザ光源12と、レーザ光を集光及び成形するためのレンズ13と、筐体10の他端(先端)に設けられたビームストッパ14と、筐体10の内部に設けられた一対の光検出部20a、20bとを含んでいる。光検出部20a、20bは、それぞれフォトダイオード21a、21bと該フォトダイオード21a、21bを保護するためのカバーガラス22a、22bを備えており、レーザ光の光路Cを挟んで互いに対向するように配置されている。
【0015】
このパーティクル計数装置1において、いずれかの開口部11a、11bから筐体10の内部に進入したパーティクルは、レーザ光源12から照射されたレーザ光を散乱させる。この散乱光が光検出部20a、20bに入射してフォトダイオード21a、21bにより検出される。フォトダイオード21a、21bからの出力信号は、制御・処理部4に送出され、該制御・処理部4のパーティクル計数部421によりパーティクルが計数される。以下の説明では、2つの光検出部20a、20bをまとめて光検出部20と呼ぶ。
【0016】
制御・処理部4は、記憶部41を備えている。記憶部41には、パーティクルを計数する際に用いられる閾値Vthが予め保存されている。また、記憶部41には、光検出部20からの出力信号が順次、保存される。制御・処理部4は、また、機能ブロックとして、測定制御部42を備えている。測定制御部42は、光検出部20からの出力信号に基づいてパーティクルを計数するパーティクル計数部421、パーティクル計数装置1の本体部2の取り付け状態を判定する取り付け状態判定部422、測定実行部423、測定状態判定部424、及び異常通知部425を含む。制御・処理部4の実体は一般的なコンピュータであり、使用者が各種の指示を入力するための入力部5、及びパーティクル計数装置1の状態や測定結果などを表示するための表示部6が接続されている。測定制御部42の各機能ブロックは、コンピュータのプロセッサにより予め該コンピュータにインストールされているパーティクル計数プログラムを実行することで具現化される。
【0017】
パーティクル計数部421によるパーティクルの計数について説明する。
図3は、光検出部20による出力信号の一例である。パーティクル計数部421は、こうした出力信号を所定のサンプリング間隔で光検出部20から受信し、これを予め定められた閾値と比較して、出力信号が閾値を超えた部分をパーティクル由来の信号ピークと判定してパーティクルの計数を行う。本実施例における光検出部20の出力信号は電圧値であり、閾値としても電圧値が設定されている。この閾値は、パーティクルが存在しない状態での光検出器20からの出力信号よりも大きく、かつ、パーティクルによる散乱光が光検出器20で検出されたときの該光検出器20からの出力信号よりも小さい値に、予め(例えばパーティクル計数装置の製造段階で)設定されている。
【0018】
次に、本実施例のパーティクル計数装置1を用いたパーティクル計数方法について説明する。
図4は、パーティクル計数装置1の本体部2の取り付け状態を判定する手順に関するフローチャートである。
図5は、パーティクル計数装置1を用いて測定対象領域を通過するパーティクルを実際に測定(計数)する際の手順に関するフローチャートである。
【0019】
測定対象領域を通過するパーティクルを測定する際、まず、パーティクル計数装置1の本体部2が測定対象部位(例えばウエハの処理チャンバ内の所定位置)に取り付けられる(ステップ1)。
【0020】
使用者がパーティクル計数装置1の本体部2を測定対象部位に取り付けた後、取り付け状態の確認を指示すると、取り付け状態判定部422は、レーザ光源12が消灯している状態で(レーザ光源12が点灯している場合には該レーザ光源を消灯して)、光検出部20からの出力信号Voutを受信し(ステップ2)、その値を記憶部41に保存されている閾値Vthと比較する。レーザ光源12が消灯しているため、この状態でパーティクルによる散乱光が光検出部20で検出されることはなく、本来、出力信号Voutが閾値Vthを上回ることはない。従って、出力信号Voutが閾値Vthを上回っている場合には、パーティクル計数装置1の本体部2の外の光が該本体部2内に進入して光検出部20で検出されていることになる。そこで、出力信号Voutが閾値Vthを上回っている場合には(ステップ3でYES)、異常通知部425が、外部光が本体部2内に進入しており該本体部2の取り付け状態が適切でないこと(異常)を通知する(ステップ4)。この通知は、例えば表示部6の画面に取り付け状態が適切でないことを表示したり、本体部2に設けられたランプに所定の色(例えば赤色)を点灯あるいは点滅したりすることにより行われる。この通知を見た使用者は、本体部2の取り付け状態を確認し(ステップ5)、再度、取り付け状態の確認を指示する。
【0021】
一方、出力信号Voutが閾値Vth以下である場合には(ステップ3でNO)、取り付け状態判定部422は、本体部2が適切に取り付けられていると判断し、取り付け完了(本体部2が正常に取り付けられていること)を通知する(ステップ6)。この通知も、例えば表示部6の画面に本体部2が適切に取り付けられたことを表示したり、本体部2に設けられたランプに所定の色(例えば緑色)を点灯したりすることにより行うことができる。こうして、パーティクルを計測する前の準備が完了する。
【0022】
本体部2が測定対象部位に適切に取り付けられたあと、使用者が、パーティクルの計数開始を指示すると、測定実行部423は、レーザ光源12を点灯させ、光検出部20からの出力信号の受信、及び記憶部41への保存を開始する。記憶部41には光検出部20からの出力信号が時系列で保存される。
【0023】
測定開始後、測定状態判定部424は、所定時間t0が経過したかを確認する(ステップ11)。所定時間t0が経過していれば(ステップ11でYES)、次に、受信した出力信号Voutが閾値Vthを超えているかを確認する(ステップ12)。出力信号Voutが閾値Vthを超えている場合には(ステップ12でYES)、その状態が所定時間t1継続しているかを確認する(ステップ13)。所定時間t1が経過するまでに出力信号Voutが閾値Vth以下となった場合には(ステップ13でNO)、ステップ11に戻る。所定時間t0は、例えば24時間であり、また、所定時間t1は、例えば10秒である。これらの具体的な数値は一例に過ぎず、測定対象のパーティクルや測定環境に応じて適宜に変更される。
【0024】
一方、出力信号Voutが閾値Vthを超えている状態が所定時間t1継続した場合には(ステップ13でYES)、測定状態判定部424はレーザ光源12を消灯する(ステップ14)。そして、レーザ光源12が消灯した状態で、光検出部20からの出力信号Voutが閾値Vthを超えているかを確認する(ステップ15)。
【0025】
パーティクル計数装置1の本体部2の取り付け状態を判定したときと同様に、レーザ光源12が消灯した状態ではパーティクルによる散乱光は発生せず、従って、本来、この状態で光検出部20からの出力信号V
outが閾値V
thを上回ることはない。レーザ光源12が消灯した状態でも、依然、光検出部20からの出力信号V
outが閾値V
thを上回っている場合には(ステップ15でYES)、本体部2の外の光が該本体部2内に入射し、光検出部20で検出されていることになる。そこで、異常通知部425は、外部光が本体部2内に進入していること(異常)を通知する。この通知も、本体部2の取り付け状態を判定したときと同様に、例えば表示部6の画面に取り付け状態が適切でないことを表示したり、本体部2に設けられたランプに所定の色(例えば赤色)を点灯あるいは点滅したりすることにより行われる。この通知を見た使用者は、パーティクルの計数をいったん中止し、本体部2の取り付け状態を確認し、再度、取り付け状態の確認を指示する(
図4参照)。
【0026】
一方、レーザ光源12を消灯した状態で、光検出部20からの出力信号Voutが閾値Vth
以下である場合には(ステップ15でNO)、測定状態判定部424は、レーザ光源12の点灯時に、パーティクルによる散乱光が光検出部20により検出されたことによって出力信号Voutが閾値Vthを上回った、即ち、正常にパーティクルの計数が行われていると判定する。その場合には、使用者により測定の終了が指示されたか(あるいは事前に設定された測定時間が経過したか)を確認する(ステップ32)。測定が終了していない場合には(ステップ32でNO)、レーザ光源12を点灯させて(ステップ33)、ステップ11に戻る。測定が終了した場合には(ステップ32でYES)、一連の処理を完了する。
【0027】
ステップ12(測定開始後、所定時間t0が経過した時点)において、出力信号Voutが閾値Vth以下である場合には(ステップ12でNO)、その状態が所定時間t2継続するかを確認する(ステップ21)。所定時間t2が経過する前に、出力信号Voutが閾値Vthを上回った場合には(ステップ21でNO)、ステップ11に戻る。所定時間t2は、例えば10秒である。この具体的な数値も一例に過ぎず、測定対象のパーティクルや測定環境に応じて適宜に変更される。また、時間t1とt2は同じ時間であってもよく、あるいは時間t1とt2が異なる時間であってもよい。
【0028】
一方、出力信号Voutが閾値Vth以下である状態が所定時間t2継続した場合には(ステップ21でYES)、レーザ光源12を消灯する(ステップ22)。
【0029】
そして、レーザ光源12を消灯した状態で、出力信号Voutが、レーザ光源12の点灯時よりも低下したかを判定する(ステップ23)。レーザ光源12の点灯時には、パーティクルが測定対象領域に流入していない場合であっても、光検出部20からの出力信号にはバックグラウンド信号が含まれている。例えば、レーザ光源12から発せられ、測定対象領域(2つの開口部11a、11bの間の空間)を通過したレーザ光はビームストッパ14により吸収されるが、必ずしも完全に吸収されるわけではなく、その一部はビームストッパ14で散乱し、光検出部20で検出されうる。しかし、そうしたバックグラウンド信号も、レーザ光源12を消灯すれば消失する。つまり、レーザ光源12を消灯した状態での光検出部20からの出力信号Voutは、本来、レーザ光源12の点灯時よりも低くなるはずである。
【0030】
レーザ光源12を消灯しても光検出部20からの出力信号Voutが低下しない場合には(ステップ23でNO)、レーザ光源12が点灯していない、あるいは光検出部20が光を正常に検出していないことが考えられる。そこで、レーザ光源12を消灯しても光検出部20からの出力信号Voutが低下しない場合には、異常通知部425が、レーザ光源12や光検出部20といった機器に異常が発生していることを通知して(ステップ24)、測定実行部423によるパーティクルの計数を終了する。この通知は、例えば表示部6の画面に取り付け状態が適切でないことを表示したり、本体部2に設けられたランプに所定の色(例えば赤色)を点灯あるいは点滅したりすることにより行われる。この通知を見た使用者は、パーティクルの計数をいったん中止し、光源部12や光検出器20の動作を確認した上で、パーティクルの計数を再開する(ステップ11に戻る)。
【0031】
一方、レーザ光源12の消灯により、光検出部20からの出力信号Voutが低下している場合には、レーザ光源12や光検出部20といった機器が正常に動作している。そこで、レーザ光源12の消灯前の光検出部20からの出力信号Voutを、その時点でのバックグラウンド信号の値V0として(ステップ31)、記憶部41に保存する。記憶部41には、ステップ31を経る毎に、その時点でのバックグラウンド信号V0の値が時系列で保存される。これらバックグラウンド信号V0の値は、光検出部20からの出力信号Voutに基づいてパーティクルを計数する処理に用いられる。パーティクルの計数処理には、従来知られている適宜のアルゴリズム(例えば特許文献2に記載のもの)が用いられる。光検出部20からの出力信号Voutからバックグラウンド信号V0の値を差し引いてパーティクルの計数処理を行うことにより、出力信号のS/N比を高め、パーティクルをより正確に計数することが可能となる。
【0032】
バックグラウンド信号の値V0を保存すると、使用者により測定の終了が指示されたか(あるいは事前に設定された測定時間が経過したか)を確認する(ステップ32)。測定が終了した場合には(ステップ32でYES)、一連の処理を完了する。測定が終了していない場合には(ステップ32でNO)、レーザ光源12を点灯させて(ステップ33)、最初のステップ11に戻る。
【0033】
従来のパーティクル計数装置やパーティクル計数方法では、装置を測定対象部位に取り付けたあと、測定開始前や測定中にパーティクルが計数されているときに、それがパーティクルによる散乱光が検出されたことによるものであるか、閾値を超える強度の迷光を検出したことによるものであるかを判別することが難しい場合があった。そのため、実際には、測定対象領域をパーティクルが通過していないにもかかわらず、パーティクルが誤って計数されてしまう場合があった。また、測定開始後に、レーザ光源12や光検出部20に異常が発生していたとしても、それを発見することが困難であった。
【0034】
これに対し、本実施例のパーティクル計数装置1及びパーティクル計数方法では、パーティクル計数装置1を測定対象部位に取り付けた時点で、光検出器20の出力信号が閾値を超える強度の(パーティクルが計数される強度の)光が装置外部から進入していないかを確認することができ、さらに、パーティクルの測定(計数)開始後にも、定期的に、検出器20の出力信号が閾値を超える強度の光が外部からパーティクル計数装置1に進入していないか(即ち光検出部20で検出されていないか)を確認することができる。また、レーザ光源12や光検出部20に異常が発生していないかを確認することもできる。これにより、測定対象領域を通過するパーティクルを正確に計数することができる。
【0035】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。
上記実施例では、測定開始後に測定環境の光が定常的に入射する場合を想定して、ステップ13において、光検出部20からの出力信号Voutが閾値Vthを上回っている状態が、所定時間t1継続しているかを判定した。しかし、測定開始後に測定環境の光が間欠的に入射する(例えば、ウエハの処理チャンバや、処理中のウエハを撮影するカメラに設けられ、それらが動作中であることを示すランプの点滅光などが入射する)可能性がある場合には、上記実施例のステップ13において、所定時間t1の間に予め決められた回数以上、光検出部20からの出力信号Voutが、閾値Vthを上回ったか(即ち、予め決められた以上の頻度で光検出部20からの出力信号Voutが閾値Vthを上回ったか)を確認するようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施例では、光検出部20にフォトダイオード21a、21bを用いたが、光を検出して信号を出力することが可能なものであればよく、光電子増倍管やCCD検出器など、様々な種類のものを用いることが可能である。
【0037】
さらに、上記実施例では予め設定された1つの閾値のみを使用する場合を説明したが、閾値は、パーティクルが存在しない状態での光検出器からの出力信号よりも大きく、かつ、パーティクルによる散乱光が光検出器で検出されたときの該光検出器からの出力信号よりも小さい値であればよく、パーティクル計数装置を測定対象部位に取り付けたあと、該装置の外部から進入しうる光の強度に応じて、予め用意された複数の閾値候補の中から選択可能に(あるいは任意の閾値を設定可能に)してもよい。
【0038】
その他、上記実施例では、筐体10を有する本体部2を備えたパーティクル計数装置について説明したが、配管を流れるパーティクルを計数する場合などには、該配管内の測定対象領域に光を照射する光源と、その光を直接受光しない位置に設けられた光検出部で構成された、筐体を有しないパーティクル計数装置を用いることもできる。
【0039】
以上、図面を参照して本発明における種々の実施形態を詳細に説明したが、最後に、本発明の種々の態様について説明する。
【0040】
本発明の第1態様は、測定対象領域を通過するパーティクルを計数するパーティクル計数装置であって、
前記測定対象領域に光を照射する光源部と、
前記測定対象領域に面した、前記光源からの光を直接受光しない位置に設けられた光検出部と、
前記光源部を点灯させて前記光検出部からの出力信号を受信し、該出力信号の大きさが予め決められた閾値を超えていることに基づいてパーティクルを検出して計数する測定実行部と、
前記光源部を消灯して前記出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定する判定部と
を備える。
【0041】
また、本発明の第6態様は、測定対象領域に光を照射しつつ、該光を直接受光しない位置に配置された光検出器からの出力信号を受信し、該出力信号の大きさが予め決められた閾値を超えていることに基づいてパーティクルを検出して計数するパーティクル計数方法であって、
前記測定対象領域に光を照射することなく、前記光検出器からの出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定する工程
を含む。
【0042】
前記閾値は、パーティクルが存在せず、また装置外部からの光が光検出部に入射していない状態での光検出器からの出力信号よりも大きく、かつ、パーティクルによる散乱光が光検出器で検出されているときの該光検出器からの出力信号よりも小さい値に、予め(例えばパーティクル計数装置の製造段階で)設定される。
【0043】
上記第1態様のパーティクル計数装置は、半導体製造装置のチャンバなどの測定対象部位に取り付けて用いられる。また、上記第6態様のパーティクル計数方法は、該チャンバ内等の測定対象領域を通過するパーティクルを計数するために用いられる。このパーティクル計数方法及び装置では、測定対象領域に光を照射した状態で、光検出部からの出力信号の大きさが予め決められた閾値を超えていることに基づいてパーティクルを検出して計数する。また、測定対象領域に光を照射することなく、光検出器からの出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定する。
【0044】
測定対象領域に光を照射していない状態でパーティクルによる散乱光が発生することはなく、本来、光検出部からの出力信号が前記閾値を超えることはない。つまり、光検出器からの出力信号が前記閾値を超えている場合には、装置外部から進入した光が検出されていることになる。従って、測定対象領域に光を照射していない状態で光検出器からの出力信号の大きさが前記閾値を超えているか否かを判定することにより、検出されている光がパーティクルによる散乱光であるか、装置外部から進入した光であるかを判別することができる。
【0045】
本発明の第2態様に係るパーティクル計数装置は、第1態様のパーティクル計数装置において、
前記判定部は、前記測定実行部による測定開始後、前記光源部を点灯させた状態で、前記閾値を超える大きさの出力信号が所定時間、検出された場合に動作する。
【0046】
上記第2態様に係るパーティクル計数装置では、測定開始後に、装置外部の光が進入した場合でも、検出されている光がパーティクルによる散乱光であるか、装置外部から進入した光であるかを判別することができる。なお、上記の、閾値を超える大きさの出力信号が所定時間、検出されるとは、必ずしも上記所定時間の間に光検出器から出力される信号の大きさが全て閾値を上回っている場合のみに限らず、所定時間の間に光検出器から出力される信号のうち、所定の割合以上の出力信号の大きさが閾値を上回っている場合を含みうる。
【0047】
本発明の第3態様に係るパーティクル計数装置は、第2態様のパーティクル計数装置において、
前記判定部は、前記測定実行部による測定開始後、前記光源部を点灯させた状態で、前記閾値以下の前記出力信号の大きさが所定時間、検出された場合に、前記光源部を消灯し、前記光源部を消灯したあとの前記出力信号の大きさが、該光源部の点灯時の前記出力信号の大きさから低下したか否かを判定する。
【0048】
上記第3態様に係るパーティクル計数装置では、光源部や光検出器などの機器の動作の異常を発見することができる。
【0049】
本発明の第4態様に係るパーティクル計数装置は、第3態様のパーティクル計数装置において、
前記判定部により、前記光源部を消灯したあとの前記出力信号の大きさが、該光源部の点灯時の前記出力信号の大きさから低下した、と判定された場合に、該光源部の点灯時の前記出力信号の大きさをバックグラウンド信号として保存する。
【0050】
上記第4態様に係るパーティクル計数装置では、光検出部からの出力信号からバックグラウンド信号を差し引く処理を行う等により、出力信号のS/N比を高め、パーティクルをより正確に計数することができる。
【0051】
本発明の第5態様に係るパーティクル計数装置は、第1態様から第4態様のいずれかのパーティクル計数装置において、
さらに、
前記判定部により、前記出力信号の大きさが前記閾値を超えている、と判定された場合に、異常情報を通知する異常通知部
を備える。
【0052】
上記第5態様に係るパーティクル計数装置では、異常通知部により通知された異常情報を使用者が見ることにより、装置に異常が生じていることを簡便に把握することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…パーティクル計数装置
2…本体部
10…筐体
11a、11b…開口部
12…レーザ光源
13…レンズ
14…ビームストッパ
20(20a、20b)…光検出部
21a、21b…フォトダイオード
22a、22b…カバーガラス
4…制御・処理部
41…記憶部
42…測定制御部
421…パーティクル計数部
422…取り付け状態判定部
423…測定実行部
424…測定状態判定部
425…異常通知部
5…入力部
6…表示部
C…光路