IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

特許7115424評価装置、評価方法、及び評価プログラム
<>
  • 特許-評価装置、評価方法、及び評価プログラム 図1
  • 特許-評価装置、評価方法、及び評価プログラム 図2
  • 特許-評価装置、評価方法、及び評価プログラム 図3
  • 特許-評価装置、評価方法、及び評価プログラム 図4
  • 特許-評価装置、評価方法、及び評価プログラム 図5
  • 特許-評価装置、評価方法、及び評価プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】評価装置、評価方法、及び評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220802BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B3/113 ZDM
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019114539
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021000200
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 勝行
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 誠
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098173(WO,A1)
【文献】特開2017-217051(JP,A)
【文献】特開2018-140007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00
A61B 3/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部上における被験者の注視点の位置を検出する注視点検出部と、
被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示する表示制御部と、
前記誘発領域に対応した特定領域を前記表示部に設定する領域設定部と、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域に存在するか否かの判定を行う判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、注視点データを算出する演算部と、
前記注視点データに基づいて、前記被験者の評価データを求める評価部と
を備え
前記誘発領域は、前記目標領域に比べて、鮮鋭度、輝度、コントラスト及び彩度のうち少なくとも1つの値が低い
評価装置。
【請求項2】
表示部と、
前記表示部上における被験者の注視点の位置を検出する注視点検出部と、
被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示する表示制御部と、
前記誘発領域に対応した特定領域を前記表示部に設定する領域設定部と、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域に存在するか否かの判定を行う判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、注視点データを算出する演算部と、
前記注視点データに基づいて、前記被験者の評価データを求める評価部と
を備え、
前記画像は、奥行方向の手前側に前記目標領域の対象物が存在し、前記奥行方向の奥側に前記誘発領域の対象物が存在するものであり、前記目標領域の対象物を焦点位置として撮影した写真画像または作画・制作した画像である
評価装置。
【請求項3】
表示部と、
前記表示部上における被験者の注視点の位置を検出する注視点検出部と、
被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示する表示制御部と、
前記誘発領域に対応した特定領域及び前記目標領域に対応した比較領域を前記表示部に設定する領域設定部と、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域及び前記比較領域に存在するか否かの判定を行う判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、注視点データを算出する演算部と、
前記注視点データに基づいて、前記被験者の評価データを求める評価部と
を備え、
前記注視点データは、前記注視点が前記特定領域に最初に到達した到達時点までの時間を示す到達時間データと、前記注視点が最初に前記特定領域に到達するまでに前記比較領域との間で前記注視点の位置が移動する回数を示す移動回数データと、前記注視点が前記特定領域及び前記比較領域に存在した存在時間を示す存在時間データのうち少なくとも1つのデータと、前記特定領域及び前記比較領域のうち表示時間において前記注視点が最後に存在していた領域を示す最終領域データと、を含み、
前記評価部は、前記到達時間データ、前記移動回数データ、前記存在時間データ及び前記最終領域データの間で重み付けをして前記評価データを求める
評価装置。
【請求項4】
表示部上における被験者の注視点の位置を検出することと、
被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示することと、
前記誘発領域に対応した特定領域を前記表示部に設定することと、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域に存在するか否かの判定を行うことと、
判定結果に基づいて、注視点データを算出することと、
前記注視点データに基づいて、前記表示部に表示される前記目標領域及び前記誘発領域を前記被験者が注視できているかを評価する評価データを求めることと
行い、
前記誘発領域は、前記目標領域に比べて、鮮鋭度、輝度、コントラスト及び彩度のうち少なくとも1つの値が低い
評価方法。
【請求項5】
表示部上における被験者の注視点の位置を検出することと、
被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示することと、
前記誘発領域に対応した特定領域を前記表示部に設定することと、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域に存在するか否かの判定を行うことと、
判定結果に基づいて、注視点データを算出することと、
前記注視点データに基づいて、前記表示部に表示される前記目標領域及び前記誘発領域を前記被験者が注視できているかを評価する評価データを求めることと
を行い、
前記画像は、奥行方向の手前側に前記目標領域の対象物が存在し、前記奥行方向の奥側に前記誘発領域の対象物が存在するものであり、前記目標領域の対象物を焦点位置として撮影した写真画像または作画・制作した画像である
評価方法。
【請求項6】
表示部上における被験者の注視点の位置を検出することと、
被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示することと、
前記誘発領域に対応した特定領域及び前記目標領域に対応した比較領域を前記表示部に設定することと、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域及び前記比較領域に存在するか否かの判定を行うことと、
判定結果に基づいて、注視点データを算出することと、
前記注視点データに基づいて、前記表示部に表示される前記目標領域及び前記誘発領域を前記被験者が注視できているかを評価する評価データを求めることと
を行い、
前記注視点データは、前記注視点が前記特定領域に最初に到達した到達時点までの時間を示す到達時間データと、前記注視点が最初に前記特定領域に到達するまでに前記比較領域との間で前記注視点の位置が移動する回数を示す移動回数データと、前記注視点が前記特定領域及び前記比較領域に存在した存在時間を示す存在時間データのうち少なくとも1つのデータと、前記特定領域及び前記比較領域のうち表示時間において前記注視点が最後に存在していた領域を示す最終領域データと、を含み、
前記到達時間データ、前記移動回数データ、前記存在時間データ及び前記最終領域データの間で重み付けをして前記評価データを求める
評価方法。
【請求項7】
表示部上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、
被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示する処理と、
前記誘発領域に対応した特定領域を前記表示部に設定する処理と、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域に存在するか否かの判定を行う処理と、
判定結果に基づいて、注視点データを算出する処理と、
前記注視点データに基づいて、前記被験者の評価データを求める処理と
をコンピュータに実行させ
前記誘発領域は、前記目標領域に比べて、鮮鋭度、輝度、コントラスト及び彩度のうち少なくとも1つの値が低い
評価プログラム。
【請求項8】
表示部上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、
被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示する処理と、
前記誘発領域に対応した特定領域を前記表示部に設定する処理と、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域に存在するか否かの判定を行う処理と、
判定結果に基づいて、注視点データを算出する処理と、
前記注視点データに基づいて、前記被験者の評価データを求める処理と
をコンピュータに実行させ、
前記画像は、奥行方向の手前側に前記目標領域の対象物が存在し、前記奥行方向の奥側に前記誘発領域の対象物が存在するものであり、前記目標領域の対象物を焦点位置として撮影した写真画像または作画・制作した画像である
評価プログラム。
【請求項9】
表示部上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、
被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示する処理と、
前記誘発領域に対応した特定領域及び前記目標領域に対応した比較領域を前記表示部に設定する処理と、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域及び前記比較領域に存在するか否かの判定を行う処理と、
判定結果に基づいて、注視点データを算出する処理と、
前記注視点データに基づいて、前記被験者の評価データを求める処理と
をコンピュータに実行させ、
前記注視点データは、前記注視点が前記特定領域に最初に到達した到達時点までの時間を示す到達時間データと、前記注視点が最初に前記特定領域に到達するまでに前記比較領域との間で前記注視点の位置が移動する回数を示す移動回数データと、前記注視点が前記特定領域及び前記比較領域に存在した存在時間を示す存在時間データのうち少なくとも1つのデータと、前記特定領域及び前記比較領域のうち表示時間において前記注視点が最後に存在していた領域を示す最終領域データと、を含み、
前記評価データを求める処理では、前記到達時間データ、前記移動回数データ、前記存在時間データ及び前記最終領域データの間で重み付けをして前記評価データを求める
評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価装置、評価方法、及び評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、認知機能障害および脳機能障害が増加傾向にあるといわれており、このような認知機能障害および脳機能障害を早期に発見し、症状の重さを定量的に評価することが求められている。このような認知機能障害および脳機能障害のうち、例えば、レビー小体型認知症の評価を行う場合、被験者に幻視の有無を質問し、被検者に答えさせる方法について開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-217051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、被検者の主観に依存するため客観性が低く、高精度の評価を得ることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、精度よく認知機能障害および脳機能障害の評価を行うことが可能な評価装置、評価方法、及び評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る評価装置は、表示部と、前記表示部上における被験者の注視点の位置を検出する注視点検出部と、被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示する表示制御部と、前記誘発領域に対応した特定領域を前記表示部に設定する領域設定部と、前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域に存在するか否かの判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、注視点データを算出する演算部と、前記注視点データに基づいて、前記被験者の評価データを求める評価部とを備える。
【0007】
本発明に係る評価方法は、表示部上における被験者の注視点の位置を検出することと、被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示することと、前記誘発領域に対応した特定領域を前記表示部に設定することと、前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域に存在するか否かの判定を行うことと、判定結果に基づいて、注視点データを算出することと、前記注視点データに基づいて、前記被験者の評価データを求めることとを含む。
【0008】
本発明に係る評価プログラムは、表示部上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、前記被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を前記目標領域とは異なる位置に含む画像を前記表示部に表示する処理と、前記誘発領域に対応した特定領域を前記表示部に設定する処理と、前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が前記特定領域に存在するか否かの判定を行う処理と、判定結果に基づいて、注視点データを算出する処理と、前記注視点データに基づいて、前記被験者の評価データを求める処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、精度よく認知機能障害および脳機能障害の評価を行うことが可能な評価装置、評価方法、及び評価プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る評価装置の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、評価装置の一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、表示部に表示する評価用画像の一例を示す図である。
図4図4は、表示部に表示する評価用画像の他の例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る評価方法の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、本実施形態に係る評価方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る評価装置、評価方法、及び評価プログラムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
以下の説明においては、三次元グローバル座標系を設定して各部の位置関係について説明する。所定面の第1軸と平行な方向をX軸方向とし、第1軸と直交する所定面の第2軸と平行な方向をY軸方向とし、第1軸及び第2軸のそれぞれと直交する第3軸と平行な方向をZ軸方向とする。所定面はXY平面を含む。
【0013】
[評価装置]
図1は、本実施形態に係る評価装置100の一例を模式的に示す図である。本実施形態に係る評価装置100は、被験者の視線を検出し、検出結果を用いることで認知機能障害および脳機能障害の評価を行う。評価装置100としては、例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する装置、又は被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線を検出する装置等、被験者の視線を検出可能な各種の装置を用いることができる。
【0014】
図1に示すように、評価装置100は、表示装置10と、画像取得装置20と、コンピュータシステム30と、出力装置40と、入力装置50と、入出力インターフェース装置60とを備える。表示装置10、画像取得装置20、コンピュータシステム30、出力装置40及び入力装置50は、入出力インターフェース装置60を介してデータ通信を行う。表示装置10及び画像取得装置20は、それぞれ不図示の駆動回路を有する。
【0015】
表示装置10は、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)又は有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display:OLED)のようなフラットパネルディスプレイを含む。本実施形態において、表示装置10は、表示部11を有する。表示部11は、画像等の情報を表示する。表示部11は、XY平面と実質的に平行である。X軸方向は表示部11の左右方向であり、Y軸方向は表示部11の上下方向であり、Z軸方向は表示部11と直交する奥行方向である。表示装置10は、ヘッドマウント型ディスプレイ装置であってもよい。ヘッドマウント型ディスプレイの場合、ヘッドマウントモジュール内に画像取得装置20のような構成が配置されることになる。
【0016】
画像取得装置20は、被験者の左右の眼球EBの画像データを取得し、取得した画像データをコンピュータシステム30に送信する。画像取得装置20は、撮影装置21を有する。撮影装置21は、被験者の左右の眼球EBを撮影することで画像データを取得する。撮影装置21は、被験者の視線を検出する方法に応じた各種カメラを有する。例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、撮影装置21は、赤外線カメラを有し、例えば波長850[nm]の近赤外光を透過可能な光学系と、その近赤外光を受光可能な撮像素子とを有する。また、例えば被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、撮影装置21は、可視光カメラを有する。撮影装置21は、フレーム同期信号を出力する。フレーム同期信号の周期は、例えば20[msec]とすることができるが、これに限定されない。撮影装置21は、例えば第1カメラ21A及び第2カメラ21Bを有するステレオカメラの構成とすることができるが、これに限定されない。
【0017】
また、例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、画像取得装置20は、被験者の眼球EBを照明する照明装置22を有する。照明装置22は、LED(light emitting diode)光源を含み、例えば波長850[nm]の近赤外光を射出可能である。なお、例えば被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線ベクトルを検出する方式の場合、照明装置22は設けられなくてもよい。照明装置22は、撮影装置21のフレーム同期信号に同期するように検出光を射出する。照明装置22は、例えば第1光源22A及び第2光源22Bを有する構成とすることができるが、これに限定されない。
【0018】
コンピュータシステム30は、評価装置100の動作を統括的に制御する。コンピュータシステム30は、演算処理装置30A及び記憶装置30Bを含む。演算処理装置30Aは、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを含む。記憶装置30Bは、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)のようなメモリ又はストレージを含む。演算処理装置30Aは、記憶装置30Bに記憶されているコンピュータプログラム30Cに従って演算処理を実施する。
【0019】
出力装置40は、フラットパネルディスプレイのような表示装置を含む。なお、出力装置40は、印刷装置を含んでもよい。入力装置50は、操作されることにより入力データを生成する。入力装置50は、コンピュータシステム用のキーボード又はマウスを含む。なお、入力装置50が表示装置である出力装置40の表示部に設けられたタッチセンサを含んでもよい。
【0020】
本実施形態に係る評価装置100は、表示装置10とコンピュータシステム30とが別々の装置である。なお、表示装置10とコンピュータシステム30とが一体でもよい。例えば評価装置100がタブレット型パーソナルコンピュータを含んでもよい。この場合、当該タブレット型パーソナルコンピュータに、表示装置、画像取得装置、コンピュータシステム、入力装置、出力装置等が搭載されてもよい。
【0021】
図2は、評価装置100の一例を示す機能ブロック図である。図2に示すように、コンピュータシステム30は、表示制御部31と、注視点検出部32と、領域設定部33と、判定部34と、演算部35と、評価部36と、入出力制御部37と、記憶部38とを有する。コンピュータシステム30の機能は、演算処理装置30A及び記憶装置30B(図1参照)によって発揮される。なお、コンピュータシステム30は、一部の機能が評価装置100の外部に設けられてもよい。
【0022】
表示制御部31は、被験者に注視させる目標となる目標領域を含み、被験者のうちレビー小体型認知症である被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域を目標領域とは異なる位置に含む評価用画像(画像)を表示部に表示する。評価用画像において、誘発領域は、目標領域に比べて、鮮鋭度、輝度、コントラスト及び彩度のうち少なくとも1つの値が低い。また、評価用画像において、目標領域は、鮮鋭度、輝度、コントラスト及び彩度のうち少なくとも1つの値が周辺よりも高い。評価用画像は、例えば、奥行方向の手前側に目標領域の対象物が存在し、奥行方向の奥側に誘発領域の対象物が存在する風景を、目標領域の対象物を焦点位置として撮影した写真画像である。評価用画像の表示形態については、静止画及び動画のいずれであってもよい。
【0023】
注視点検出部32は、被験者の注視点の位置データを検出する。本実施形態において、注視点検出部32は、画像取得装置20によって取得される被験者の左右の眼球EBの画像データに基づいて、三次元グローバル座標系で規定される被験者の視線ベクトルを検出する。注視点検出部32は、検出した被験者の視線ベクトルと表示装置10の表示部11との交点の位置データを、被験者の注視点の位置データとして検出する。つまり、本実施形態において、注視点の位置データは、三次元グローバル座標系で規定される被験者の視線ベクトルと、表示装置10の表示部11との交点の位置データである。本実施形態において、注視点は、被験者に注視されることで指定される表示部11上の指定点である。注視点検出部32は、規定のサンプリング周期毎に被験者の注視点の位置データを検出する。このサンプリング周期は、例えば撮影装置21から出力されるフレーム同期信号の周期(例えば20[msec]毎)とすることができる。
【0024】
領域設定部33は、表示部11において、誘発領域に対応した特定領域と、目標領域に対応した比較領域とを表示部11に設定する。本実施形態では、誘発領域及び目標領域の配置が異なる。したがって、領域設定部33は、特定領域及び比較領域をそれぞれ設定する。
【0025】
判定部34は、領域設定部33によって特定領域及び比較領域が設定される期間に、注視点の位置データに基づいて、注視点が特定領域及び比較領域に存在するか否かをそれぞれ判定し、判定データを出力する。判定部34は、規定の判定周期毎に注視点が特定領域及び比較領域に存在するか否かを判定する。判定周期としては、例えば撮影装置21から出力されるフレーム同期信号の周期(例えば20[msec]毎)と同一の周期とすることができる。この場合、判定部34の判定周期は、注視点検出部32のサンプリング周期と同一である。
【0026】
演算部35は、判定部34の判定データに基づいて、上記の特定領域及び比較領域が設定される期間における注視点の移動の経過を示す注視点データを算出する。演算部35は、注視点データとして、例えば到達時間データ、移動回数データ及び存在時間データのうち少なくとも1つのデータと、最終領域データとを算出する。到達時間データは、注視点が特定領域に最初に到達した到達時点までの時間を示す。移動回数データは、注視点が最初に特定領域に到達するまでに比較領域の間で注視点の位置が移動する回数を示す。存在時間データは、参照画像の表示期間に注視点が特定領域に存在した存在時間を示す。最終領域データは、特定領域及び比較領域のうち表示時間において注視点が最後に存在していた領域を示す。演算部35は、表示部11に評価用画像が表示されてからの経過時間を検出するタイマと、判定部34により特定領域及び比較領域に注視点が存在すると判定された判定回数をカウントするカウンタとを有する。
【0027】
評価部36は、注視点データに基づいて、被験者の評価データを求める。評価データは、表示部11に表示される特定対象物及び比較対象物を被験者が注視できているかを評価するデータを含む。
【0028】
入出力制御部37は、画像取得装置20及び入力装置50の少なくとも一方からのデータ(眼球EBの画像データ、入力データ等)を取得する。また、入出力制御部37は、表示装置10及び出力装置40の少なくとも一方にデータを出力する。
【0029】
記憶部38は、上記の判定データ、注視点データ(存在時間データ)、及び評価データを記憶する。また、記憶部38は、表示部11上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、被験者に注視させる目標となる目標領域M1を含み、被験者のうちレビー小体型認知症である被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域C1、C2を目標領域M1とは異なる位置に含む評価用画像IM1を表示部11に表示する処理と、誘発領域C1、C2に対応した特定領域A1、A2と、目標領域M1に対応した比較領域Bとを表示部11に設定する処理と、注視点の位置データに基づいて、注視点が特定領域A1、A2及び比較領域Bに存在するか否かの判定を行う処理と、判定結果に基づいて、注視点データを算出する処理と、注視点データに基づいて、被験者の評価データを求める処理とをコンピュータに実行させる評価プログラムを記憶する。
【0030】
[評価方法]
次に、本実施形態に係る評価方法について説明する。本実施形態に係る評価方法では、上記の評価装置100を用いることにより、被験者の認知機能障害および脳機能障害を評価する。本実施形態では、認知機能障害および脳機能障害として、例えば、レビー小体型認知症の評価を行う場合について説明する。
【0031】
図3は、表示部11に表示する評価用画像の一例を示す図である。図3に示すように、表示制御部31は、評価用画像IM1として、写真画像を表示部11に表示させる。評価用画像IM1は、図中の下側に花が映っており、図中の上側に木立が映っている写真画像である。評価用画像IM1は、奥行方向の手前側に花が存在し、奥行方向の奥側に木立が存在する風景を、花を焦点位置として撮影した写真画像である。このため、評価用画像IM1は、花が映っている領域については、周辺の領域よりも鮮鋭度、輝度、コントラストが高い。本実施形態において、評価用画像IM1は、花が対象物として映っている領域を目標領域M1として含んでいる。目標領域M1は、被験者に注視させる目標となる領域である。
【0032】
レビー小体型認知症の症状の一つとして、幻視を誘発する症状が知られている。レビー小体型認知症である被験者は、例えば画像を注視する際に幻視が誘発された場合、幻視の対象となる領域を注視する傾向にある。このようなレビー小体型認知症を評価する際、被験者に幻視を誘発させる領域を含む画像を見せるようにする。
【0033】
本実施形態の評価用画像IM1において、奥側の木立の領域は、目標領域M1と比較して、下記の点で異なっている。
1.ピントが花に合っており、木立がぼやけている。つまり、木立の領域は、目標領域M1と比較して、鮮鋭度が低い。
2.木立の領域は、目標領域M1と比較して、輝度が低い(暗い)。
3.木立の領域は、目標領域M1と比較して、コントラストが低い。
なお、評価用画像IM1がカラー画像である場合、木立の領域の彩度が目標領域M1の彩度と比較して低い画像を採用する。
【0034】
この結果、評価用画像IM1において、木立の領域は、レビー小体型認知症である被験者に対して幻視を誘発しやすい領域を含むこととなる。例えば、木立の領域の一部である領域C1は、レビー小体型認知症である被験者に対して、人影等を幻視として誘発させる領域となる。以下、領域C1を誘発領域C1と表記する。また、例えば木立の領域の一部である領域C2は、レビー小体型認知症である被験者に対して、人の顔等を幻視として誘発させる領域となる。以下、領域C2を誘発領域C2と表記する。
【0035】
一方、誘発領域C1、C2は、レビー小体型認知症ではない被験者に対しては、鮮鋭度、輝度、コントラスト(又は彩度)が低い単なる木立の領域の一部であり、人影、人の顔等の幻視を誘発しにくい領域となる。したがって、被験者がレビー小体型認知症ではない場合には、表示部11に評価用画像IM1が表示された際、鮮鋭度、輝度、コントラストが高い目標領域M1を注視する可能性が高い。
【0036】
本実施形態では、例えば複数の被験者に対して評価を行った上で、レビー小体型認知症ではない被験者と、レビー小体型認知症である被験者との間で有意差が見られた画像を用いることができる。つまり、レビー小体型認知症ではない被験者が注視する傾向が強い目標領域と、レビー小体型認知症ではない被験者が注視しない傾向が強く、かつレビー小体型認知症である被験者が注視する傾向が強い誘発領域と、を含む画像を用いることができる。
【0037】
また、評価用画像IM1として上記の写真画像を用いることにより、レビー小体型認知症ではない被験者に対して手前側の目標領域M1の対象物をより確実に注視させることができる。また、レビー小体型認知症ではない被験者にとって違和感が少なく自然な状態の誘発領域C1、C2が評価用画像IM1に含まれることになる。したがって、レビー小体型認知症ではない被験者が誘発領域C1、C2を注視することが抑制される。
【0038】
上記のように評価用画像IM1が表示される期間において、領域設定部33は、誘発領域C1、C2に対応した特定領域A1、A2をそれぞれ設定する。また、領域設定部33は、目標領域M1に対した比較領域Bを設定する。領域設定部33は、誘発領域C1、C2の少なくとも一部を含む領域に、それぞれ特定領域A1、A2を設定することができる。また、領域設定部33は、目標領域M1の少なくとも一部を含む領域に比較領域Bを設定することができる。本実施形態において、領域設定部33は、誘発領域C1を含む矩形の領域に特定領域A1を設定し、誘発領域C2を含む円形の領域に特定領域A2を設定する。また、領域設定部33は、目標領域M1を含む矩形の領域に比較領域Bを設定する。
【0039】
注視点検出部32は、評価用画像IM1が表示される期間において、規定のサンプリング周期(例えば20[msec])毎に、被験者の注視点Pの位置データを検出する。判定部34は、被験者の注視点Pの位置データが検出された場合、被験者の注視点が特定領域A1、A2及び比較領域Bに存在するかを判定し、判定データを出力する。したがって、判定部34は、上記のサンプリング周期と同一の判定周期毎に判定データを出力する。
【0040】
演算部35は、判定データに基づいて、表示期間における注視点Pの移動の経過を示す注視点データを算出する。演算部35は、注視点データとして、例えば存在時間データと、移動回数データと、最終領域データと、到達時間データとを算出する。
【0041】
存在時間データは、注視点Pが特定領域A1、A2に存在した存在時間を示す。本実施形態では、判定部34により注視点が特定領域A1、A2に存在すると判定された回数が多いほど、特定領域A1、A2に注視点Pが存在した存在時間が長いと推定することができる。したがって、存在時間データは、特定領域A1、A2又は比較領域Bに注視点が存在すると判定部34に判定された回数とすることができる。つまり、演算部35は、カウンタにおけるカウント値CNTA1、CNTA2、CNTBを存在時間データとすることができる。なお、カウント値CNTA1は、注視点が特定領域A1に存在すると判定された回数である。また、カウント値CNTA2は、注視点が特定領域A2に存在すると判定された回数である。また、カウント値CNTBは、注視点が比較領域Bに存在すると判定された回数である。
【0042】
移動回数データは、注視点Pが最初に特定領域A1又は特定領域A2に到達するまでに比較領域Bとの間で注視点Pの位置が移動する移動回数を示す。したがって、演算部35は、特定領域A1、A2及び比較領域Bの領域間で注視点Pが何回移動したかをカウントし、注視点Pが特定領域A1、A2に到達するまでのカウント結果を移動回数データとすることができる。
【0043】
最終領域データは、特定領域A1、A2及び比較領域Bのうち注視点Pが最後に存在していた領域、つまり被験者が回答として最後に注視していた領域を示す。演算部35は、注視点Pが存在する領域を当該注視点Pの検出毎に更新することにより、評価用画像IM1の表示が終了した時点における検出結果を最終領域データとすることができる。
【0044】
到達時間データは、評価用画像IM1の表示開始の時点から注視点Pが特定領域A1、A2に最初に到達した到達時点までの時間を示す。したがって、演算部35は、表示開始からの経過時間をタイマT1によって測定し、注視点が最初に特定領域A1又は特定領域A2に到達した時点でフラグ値FA1又はフラグ値FA2を1としてタイマT1の測定値を検出することで、当該タイマT1の検出結果を到達時間データとすることができる。
【0045】
評価部36は、存在時間データ、移動回数データ、最終領域データ、及び到達時間データに基づいて評価値を求め、評価値に基づいて評価データを求める。例えば、最終領域データのデータ値をD1、存在時間データのデータ値をD2~D4、到達時間データのデータ値をD5、移動回数データのデータ値をD6とする。ただし、最終領域データのデータ値D1は、被験者の最終的な注視点Pが特定領域A1に存在していれば1、特定領域A2に存在していれば0.8、比較領域Bに存在していれば0とする。また、存在時間データのデータ値D2~D4は、特定領域A1、A2及び比較領域Bそれぞれに注視点Pが存在した秒数とする。なお、データ値D2~D4は、評価用画像IM1の表示期間よりも短い秒数の上限値が設けられてもよい。また、到達時間データのデータ値D5は、到達時間の逆数(例えば、1/(到達時間)÷10)(10:到達時間の最小値を0.1秒として到達時間評価値を1以下とするための係数)とする。また、移動回数データのデータ値D6は、カウント値をそのまま用いることとする。なお、データ値D6は、適宜上限値が設けられてもよい。
【0046】
この場合、評価値ANSは、例えば、
ANS=D1・K1+D2・K2+D3・K3-D4・K4+D5・K5-D6・K6
と表すことができる。なお、K1~K6は、重みづけのための定数である。定数K1~K6については、適宜設定することができる。また、K4=0としてもよい。つまり、比較領域Bの存在時間データのデータ値D4については、評価に含めなくてもよい。
【0047】
上記式で示される評価値ANSは、最終領域データのデータ値D1が1又は0.8である場合、存在時間データのデータ値D2、D3が大きい場合、存在時間データのデータ値D4が小さい場合、到達時間データのデータ値D5が大きい場合、移動回数データのデータ値D6の値が小さい場合に、値が大きくなる。つまり、最終的な注視点Pが特定領域A1、A2に存在し、特定領域A1、A2における注視点Pの存在時間が長く、比較領域Bにおける注視点Pの存在時間が短く、表示期間の開始時点から特定領域A1、A2に注視点Pが到達する到達時間が短く、注視点Pが各領域を移動する移動回数が少ないほど、評価値ANSが大きくなる。
【0048】
また、評価値ANSは、最終領域データのデータ値D1が0である場合、存在時間データのデータ値D2、D3が小さい場合、存在時間データのデータ値D4が大きい場合、到達時間データのデータ値D5が小さい場合、移動回数データのデータ値D6の値が大きい場合に、値が小さくなる。つまり、最終的な注視点Pが比較領域Bに存在し、特定領域A1、A2における注視点Pの存在時間が短く、比較領域Bにおける注視点Pの存在時間が長く、表示期間の開始時点から特定領域A1、A2に注視点Pが到達する到達時間が長く又は到達せず、注視点Pが各領域を移動する移動回数が多いほど、評価値ANSが小さくなる。
【0049】
したがって、評価部36は、評価値ANSが所定値以上か否かを判断することで評価データを求めることができる。例えば評価値ANSが所定値未満である場合、被験者がレビー小体型認知症である可能性は低いと評価することができる。また、評価値ANSが所定値以上である場合、被験者がレビー小体型認知症である可能性は高いと評価することができる。
【0050】
また、評価部36は、評価値ANSの値を記憶部38に記憶させておくことができる。例えば、同一の被験者についての評価値ANSを累積的に記憶し、過去の評価値と比較した場合の評価を行ってもよい。例えば、評価値ANSが過去の評価値よりも低い値となった場合、脳機能が前回の評価に比べて改善されている旨の評価を行うことができる。また、評価値ANSの累積値が徐々に低くなっている場合等には、脳機能が徐々に改善されている旨の評価を行うことができる。
【0051】
また、評価部36は、存在時間データ、移動回数データ、最終領域データ、及び到達時間データを個別又は複数組み合わせて評価を行ってもよい。例えば、多くの対象物を見ている間に、偶発的に比較領域Bに注視点Pが到達した場合には、移動回数データのデータ値D6は大きくなる。この場合には、上述した存在時間データのデータ値D4と併せて評価を行うことができる。例えば、移動回数が少ない場合であっても存在時間が長い場合には、比較領域Bを注視できていると評価することができる。また、移動回数が少ない場合であって存在時間も短い場合、偶発的に注視点Pが比較領域Bを通過したものがあると評価することができる。
【0052】
また、移動回数が少ない場合において、最終領域が比較領域Bであれば、例えば比較領域Bに注視点移動が少なくて到達したと評価することができる。一方、上述した移動回数が少ない場合において、最終領域が比較領域Bでなければ、例えば偶発的に注視点Pが比較領域Bを通過したものあると評価することができる。したがって、注視点データを用いて評価を行うことにより、注視点の移動の経過に基づいて評価データを求めることができるため、偶然性の影響を低減することができる。
【0053】
本実施形態において、入出力制御部37は、評価部36が評価データを出力した場合、評価データに応じて、例えば「被験者はレビー小体型認知症である可能性が低いと思われます」の文字データや、「被験者はレビー小体型認知症である可能性が高いと思われます」の文字データ等を出力装置40に出力させることができる。また、入出力制御部37は、同一の被験者についての評価値ANSが過去の評価値ANSに比べて低くなっている場合、「脳機能が改善されています」等の文字データ等を出力装置40に出力させることができる。
【0054】
図4は、表示部11に表示する評価用画像の他の例を示す図である。図4に示すように、表示制御部31は、評価用画像IM2として、写真画像を表示部11に表示させる。評価用画像IM2は、図中の右下側に自転車が映っており、図中の上側に木立が映っている写真画像である。評価用画像IM2は、奥行方向の手前側に自転車が存在し、奥行方向の奥側に木立が存在する風景を、自転車を焦点位置として撮影した写真画像である。このため、評価用画像IM2は、自転車が映っている領域については、周辺の領域よりも鮮鋭度、輝度、コントラストが高い。本実施形態において、評価用画像IM2は、自転車が対象物として映っている領域を目標領域M2として含んでいる。目標領域M2は、被験者に注視させる目標となる領域である。
【0055】
一方、評価用画像IM2において、奥側の木立の領域は、目標領域M2と比較して、下記の点で異なっている。
4.ピントが自転車に合っており、木立がぼやけている。つまり、木立の領域は、目標領域M2と比較して、鮮鋭度が低い。
5.木立の領域は、目標領域M2と比較して、輝度が低い(暗い)。
6.木立の領域は、目標領域M2と比較して、コントラストが低い。
なお、評価用画像IM2がカラー画像である場合、木立の領域の彩度が目標領域M2の彩度と比較して低い画像を採用する。
【0056】
この結果、評価用画像IM2には、レビー小体型認知症である被験者に対して、幻視を誘発しやすい領域が存在することになる。例えば、木立の領域の一部である領域C3は、レビー小体型認知症である被験者に対して、人影を幻視として誘発させる領域となる。以下、領域C3を誘発領域C3と表記する。また、木立の領域の一部である領域C4は、レビー小体型認知症である被験者に対して、人の顔を幻視として誘発させる領域となる。以下、領域C4を誘発領域C4と表記する。
【0057】
領域設定部33は、評価用画像IM2が表示される期間、誘発領域C3、C4に対応した特定領域A1、A2をそれぞれ設定する。また、領域設定部33は、目標領域M2に対した比較領域Bを設定する。領域設定部33は、誘発領域C3、C4の少なくとも一部を含む領域に、それぞれ特定領域A1、A2を設定することができる。また、領域設定部33は、目標領域M2の少なくとも一部を含む領域に比較領域Bを設定することができる。本実施形態において、領域設定部33は、誘発領域C3を含む矩形の領域に特定領域A1を設定し、誘発領域C4を含む円形の領域に特定領域A2を設定する。また、領域設定部33は、目標領域M2を含む矩形の領域に比較領域Bを設定する。
【0058】
表示制御部31は、例えば図3に示す評価用画像IM1を所定時間表示した後に、図4に示す評価用画像IM2を表示部11に所定時間表示することができる。このように、表示部11に複数種類の評価用画像IM1、IM2を表示させることにより、被験者を高精度に評価することが可能となる。
【0059】
次に、本実施形態に係る評価方法の一例について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5及び図6は、本実施形態に係る評価方法の一例を示すフローチャートである。以下の例では、評価用画像IM1を映像(評価用映像)として再生する場合を例に挙げて説明する。図5に示すように、表示制御部31は、評価用映像の再生(評価用画像IM1の表示)を開始させる(ステップS101)。なお、評価用画像IM1は、例えば被験者に対して他の評価を行うための画像を表示する合間に表示させてもよい。評価用画像IM1の再生を開始した後、タイマT1をリセットし(ステップS102)、カウンタのカウント値CNTA1、CNTA2、CNTBをリセットする(ステップS103)。また、表示制御部31は、フラグ値FA1、FA2を0にし、最終領域及び経路数をクリアする(ステップS104)。
【0060】
次に、図6に示すように、注視点検出部32は、表示部11に表示された映像を被験者に見せた状態で、規定のサンプリング周期(例えば20[msec])毎に、表示部11における被験者の注視点の位置データを検出する(ステップS105)。位置データが検出された場合(ステップS106のNo)、判定部34は、位置データに基づいて注視点Pが存在する領域を判定する(ステップS107)。また、位置データが検出されない場合(ステップS106のYes)、後述するステップS131以降の処理を行う。
【0061】
注視点Pが特定領域A1に存在すると判定された場合(ステップS108のYes)、演算部35は、フラグ値FA1が1であるか否か、つまり、注視点Pが特定領域A1に到達したのが最初か否か(1:到達済み、0:未到達)を判定する(ステップS109)。フラグ値FA1が1である場合(ステップS109のYes)、演算部35は、以下のステップS110からステップS112を飛ばして後述するステップS113の処理を行う。
【0062】
また、フラグ値FA1が1ではない場合、つまり、特定領域A1に注視点Pが到達したのが最初である場合(ステップS109のNo)、演算部35は、タイマT1の計測結果を到達時間データとして抽出し(ステップS110)、注視点Pが特定領域A1に到達するまでに領域間で何回移動したかを示す積算回数を保存する(ステップS111)。その後、演算部35は、フラグ値を1に変更する(ステップS112)。
【0063】
次に、演算部35は、直近の検出において注視点Pが存在した領域、つまり最終領域が特定領域A1であるか否かを判定する(ステップS113)。演算部35は、最終領域が特定領域A1であると判定した場合(ステップS113のYes)、以下のステップS114及びステップS115を飛ばして後述するステップS116の処理を行う。また、最終領域が特定領域A1ではないと判定した場合(ステップS113のNo)、演算部35は、注視点Pが領域間で何回移動したかを示す積算回数を+1とし(ステップS114)、最終領域を特定領域A1とし(ステップS115)、特定領域A1での存在時間データを示すカウント値CNTA1を+1とする(ステップS116)。その後、演算部35は、後述するステップS131以降の処理を行う。
【0064】
また、注視点Pが特定領域A1に存在しないと判定された場合(ステップS108のNo)、演算部35は、注視点Pが特定領域A2に存在するか否かを判定する(ステップS117)。注視点Pが特定領域A2に存在すると判定された場合(ステップS117のYes)、演算部35は、フラグ値FA2が1であるか否か、つまり、注視点Pが特定領域A2に到達したのが最初か否か(1:到達済み、0:未到達)を判定する(ステップS118)。フラグ値FA2が1である場合(ステップS118のYes)、演算部35は、以下のステップS119からステップS121を飛ばして後述するステップS122の処理を行う。
【0065】
また、フラグ値FA2が1ではない場合、つまり、特定領域A2に注視点Pが到達したのが最初である場合(ステップS118のNo)、演算部35は、タイマT1の計測結果を到達時間データとして抽出し(ステップS119)、注視点Pが特定領域A2に到達するまでに領域間で何回移動したかを示す積算回数を保存する(ステップS120)。その後、演算部35は、フラグ値を1に変更する(ステップS121)。
【0066】
次に、演算部35は、直近の検出において注視点Pが存在した領域、つまり最終領域が特定領域A2であるか否かを判定する(ステップS122)。演算部35は、最終領域が特定領域A2であると判定した場合(ステップS122のYes)、以下のステップS123及びステップS124を飛ばして後述するステップS125の処理を行う。また、最終領域が特定領域A2ではないと判定した場合(ステップS122のNo)、演算部35は、注視点Pが領域間で何回移動したかを示す積算回数を+1とし(ステップS123)、最終領域を特定領域A2とし(ステップS124)、特定領域A2での存在時間データを示すカウント値CNTA2を+1とする(ステップS125)。その後、演算部35は、後述するステップS131以降の処理を行う。
【0067】
また、注視点Pが特定領域A2に存在しないと判定された場合(ステップS117のNo)、演算部35は、注視点Pが比較領域Bに存在するか否かを判定する(ステップS126)。注視点Pが比較領域Bに存在すると判定された場合(ステップS126のYes)、演算部35は、直近の検出において注視点Pが存在した領域、つまり最終領域が比較領域Bであるか否かを判定する(ステップS127)。演算部35は、最終領域が比較領域Bであると判定した場合(ステップS127のYes)、以下のステップS128及びステップS129を飛ばして後述するステップS130の処理を行う。また、最終領域が比較領域Bではないと判定した場合(ステップS127のNo)、演算部35は、注視点Pが領域間で何回移動したかを示す積算回数を+1とし(ステップS128)、最終領域を比較領域Bとし(ステップS129)、比較領域Bでの存在時間データを示すカウント値CNTBを+1とする(ステップS130)。ステップS130の後、及びステップS126において注視点Pが比較領域Bに存在しないと判定された場合(ステップS126のNo)、演算部35は、後述するステップS131以降の処理を行う。
【0068】
その後、演算部35は、検出タイマT1の検出結果に基づいて、評価用画像の再生が完了する時刻に到達したか否かを判断する(ステップS131)。演算部35により評価用画像の再生が完了する時刻に到達していないと判断された場合(ステップS131のNo)、上記のステップS105以降の処理を繰り返し行う。
【0069】
演算部35により映像の再生が完了する時刻に到達したと判断された場合(ステップS131のYes)、図5に示すように、表示制御部31は、指示表示動作に関する映像の再生を停止させる(ステップS132)。映像の再生が停止された後、評価部36は、上記の処理結果から得られる存在時間データと、移動回数データと、到達時間データと、最終領域データとに基づいて、評価値ANSを算出し(ステップS133)、評価値ANSに基づいて評価データを求める。その後、入出力制御部37は、評価部36で求められた評価データを出力する(ステップS134)。
【0070】
本実施形態に係る評価装置100は、表示部11と、表示部11上における被験者の注視点の位置を検出する注視点検出部32と、被験者に注視させる目標となる目標領域M1を含み、被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域C1、C2を目標領域M1とは異なる位置に含む評価用画像IM1を表示部11に表示する表示制御部31と、誘発領域C1、C2に対応した特定領域A1、A2を表示部11に設定する領域設定部33と、注視点の位置データに基づいて、注視点が特定領域A1、A2に存在するか否かの判定を行う判定部34と、判定部34の判定結果に基づいて、注視点データを算出する演算部35と、注視点データに基づいて、被験者の評価データを求める評価部36とを備える。
【0071】
本実施形態に係る評価方法は、表示部11上における被験者の注視点の位置を検出することと、被験者に注視させる目標となる目標領域M1を含み、被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域C1、C2を目標領域M1とは異なる位置に含む評価用画像IM1を表示部11に表示することと、誘発領域C1、C2に対応した特定領域A1、A2を表示部11に設定することと、注視点の位置データに基づいて、注視点が特定領域A1、A2に存在するか否かの判定を行うことと、判定結果に基づいて、注視点データを算出することと、注視点データに基づいて、被験者の評価データを求めることとを含む。
【0072】
本実施形態に係る評価プログラムは、表示部11上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、被験者に注視させる目標となる目標領域M1を含み、被験者に対して幻視を誘発させるための誘発領域C1、C2を目標領域M1とは異なる位置に含む評価用画像IM1を表示部11に表示する処理と、誘発領域C1、C2に対応した特定領域A1、A2を表示部11に設定する処理と、注視点の位置データに基づいて、注視点が特定領域A1、A2に存在するか否かの判定を行う処理と、判定結果に基づいて、注視点データを算出する処理と、注視点データに基づいて、被験者の評価データを求める処理とをコンピュータに実行させる。
【0073】
被験者がレビー小体型認知症ではない場合、表示部11に評価用画像IM1が表示された際、鮮鋭度、輝度、コントラストが高い目標領域M1を注視する可能性が高い。また、被験者がレビー小体型認知症である場合、評価用画像IM1が表示部11に表示された際、幻視を誘発する誘発領域C1、C2を注視する可能性が高い。上記構成によれば、レビー小体型認知症である被験者に対して幻視を誘発しやすい領域が存在する評価用画像IM1を被験者に注視させるため、被験者の主観によらずに評価を行うことができる。また、被験者の注視点データに基づいて評価データを求めることができるため、偶然性の影響を低減することができる。
【0074】
本実施形態に係る評価装置100において、領域設定部33は、目標領域M1に対応した比較領域Bを表示部11に更に設定し、判定部34は、特定領域A1、A2及び比較領域Bにおいて、注視点が存在するか否かの判定を行う。これにより、被験者をより高精度に評価することができる。
【0075】
本実施形態に係る評価装置100において、誘発領域C1、C2は、目標領域M1に比べて、鮮鋭度、輝度、コントラスト及び彩度のうち少なくとも1つの値が低い。これにより、レビー小体型認知症である被験者に対して、幻視を誘発しやすい領域を効率的に含ませることができる。
【0076】
本実施形態に係る評価装置100において、目標領域M1は、鮮鋭度、輝度、コントラスト及び彩度のうち少なくとも1つの値が周辺よりも高い。これにより、レビー小体型認知症ではない被験者が目標領域M1を注視しようとするため、高精度の評価を行うことができる。
【0077】
本実施形態に係る評価装置100において、評価用画像IM1は、奥行方向の手前側に目標領域M1の対象物が存在し、奥行方向の奥側に誘発領域C1、C2の対象物が存在するものであり、目標領域M1の対象物を焦点位置として撮影した写真画像である。これにより、レビー小体型認知症ではない被験者に対して手前側の目標領域M1の対象物をより確実に注視させることができる。また、わざとらしさが少なく自然な状態の誘発領域C1、C2を評価用画像IM1に含ませることができる。このため、レビー小体型認知症ではない被験者が誘発領域C1、C2を注視することを抑制でき、高精度の評価を行うことができる。
【0078】
本実施形態に係る評価装置100において、注視点データは、注視点が特定領域A1、A2に最初に到達した到達時点までの時間を示す到達時間データと、注視点が最初に特定領域A1、A2に到達するまでに複数の比較領域Bとの間で注視点の位置が移動する回数を示す移動回数データと、特定領域A1、A2に存在した存在時間を示す存在時間データのうち少なくとも1つのデータと、特定領域A1、A2及び比較領域Bのうち表示時間において注視点が最後に存在していた領域を示す最終領域データと、を含み、評価部36は、到達時間データ、移動回数データ、存在時間データ及び最終領域データの間で異なる重み付けをして評価データを求める。これにより、偶然性の影響をより確実に低減することができる。
【0079】
本実施形態に係る評価装置100において、評価用画像IM1、IM2として、評価部36による評価の結果、レビー小体型認知症ではない被験者と、レビー小体型認知症である被験者との間で有意差が見られた画像が用いられる。したがって、被験者がレビー小体型認知症である可能性について高精度に評価することができる。
【0080】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、人影又は人の顔を幻視として誘発させる誘発領域C1~C4が評価用画像IM1、IM2に含まれた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、小動物、虫等、人以外の動物を幻視として誘発させる誘発領域が評価用画像に含まれてもよい。
【0081】
上記実施形態では特定領域A1、A2及び比較領域Bについての注視点データによって評価値を算出する例を説明したが、これに限定されない。例えば、比較領域Bについての注視点データを用いずに、特定領域A1、A2の注視点データのみに基づいて評価値を算出してもよい。この場合、例えば領域設定部33は、特定領域A1、A2のみを設定し、比較領域Bについては設定しないようにすることができる。
【0082】
上記実施形態では、評価用画像として写真画像を表示させる例を説明したが、評価用画像は写真画像に限定せず、作画・製作した画像を用いても良い。
【符号の説明】
【0083】
A1,A2…特定領域、B…比較領域、C1~C4…誘発領域、IM1,IM2…評価用画像、M1,M2…目標領域、P…注視点、T1…タイマ、10…表示装置、11…表示部、20…画像取得装置、21…撮影装置、21A…第1カメラ、21B…第2カメラ、22…照明装置、22A…第1光源、22B…第2光源、30…コンピュータシステム、30A…演算処理装置、30B…記憶装置、30C…コンピュータプログラム、31…表示制御部、32…注視点検出部、33…領域設定部、34…判定部、35…演算部、36…評価部、37…入出力制御部、38…記憶部、40…出力装置、50…入力装置、60…入出力インターフェース装置、100…評価装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6