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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20220802BHJP
   H04B 17/318 20150101ALI20220802BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20220802BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20220802BHJP
【FI】
H04B1/16 Z
H04B17/318
H04W4/40
H04W84/10 110
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019121534
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021010055
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】南田 将哉
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和也
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204588(JP,A)
【文献】特開2017-135541(JP,A)
【文献】特開平10-041899(JP,A)
【文献】特開2018-014647(JP,A)
【文献】特開2009-141566(JP,A)
【文献】特開2016-015652(JP,A)
【文献】特表2017-536736(JP,A)
【文献】特開2011-066851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/06
H04B 1/16
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機から定期的に無線送信され前記送信機の識別情報を含む識別データ信号を受信する通信部を備えるとともに、前記送信機と前記通信部との間で相互通信を行うことで通信接続状態を取り得る通信装置であって、
前記通信部での前記識別データ信号の受信電波強度を測定する測定部と、
同じ値の前記受信電波強度が連続した回数を取得回数として計測する計測部と、
前記計測部によって計測された前記取得回数が判定用閾値以上の場合に前記送信機と前記通信部との無線通信が途絶していると判定する判定部と、を備える通信装置。
【請求項2】
強度閾値以上の前記受信電波強度が前記測定部によって測定された場合には、前記計測部は、前記強度閾値以上の前記受信電波強度が連続する回数についての計測を行わない請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信機からは、前記通信装置が搭載された可動体の動作指令を含む遠隔操作信号が送信されるとともに、当該遠隔操作信号は前記通信装置の記憶部に一時的に記憶され、
前記判定用閾値は、前記記憶部に記憶された前記遠隔操作信号に含まれる動作指令によって前記可動体を動作させたときの最大の動作量に到達するまでに前記計測部が行う計測回数より小さく、かつ前記送信機の製造誤差を原因として生じる前記受信電波強度の値が連続する可能性のある最大の回数よりも多い回数に設定されている請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、送信機から送信された遠隔操作信号によってフォークリフトを遠隔操作する技術が提案されている。送信機とフォークリフトの通信部との無線通信形式は例えばBluetooth(登録商標)がある。送信機とフォークリフトの通信部とは、相互通信可能な状態を確立させる、所謂ペアリングを行うことで通信接続状態を取る(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-157896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、無線通信において、送信機のバッテリ切れや、送信機と通信部との間に遮蔽物が位置したりすると、送信機から送信される信号を通信部で受信できなくなる。通信部では、送信機からの信号を一定期間受信できなくなると通信途絶と判定して、通信接続状態を解除するが、通信途絶を判定するまでの時間の短縮が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、無線通信の途絶を判定するのに要する時間を短縮できる通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための通信装置は、送信機から定期的に無線送信され前記送信機の識別情報を含む識別データ信号を受信する通信部を備えるとともに、前記送信機と前記通信部との間で相互通信を行うことで通信接続状態を取り得る通信装置であって、前記通信部での前記識別データ信号の受信電波強度を測定する測定部と、同じ値の前記受信電波強度が連続した回数を取得回数として計測する計測部と、前記計測部によって計測された前記取得回数が判定用閾値以上の場合に前記送信機と前記通信部との無線通信が途絶していると判定する判定部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
これによれば、無線通信が途絶していない通信接続状態では、通信部は識別データ信号を受信し、受信した識別データ信号の受信電波強度は測定部によって測定される。通信接続状態では、計測部によって計測される取得回数は数回に亘って同じ値となりやすいが、長期に亘って同じ値の受信電波強度になることはない。しかし、無線通信が途絶すると、識別データ信号が通信部に受信されないため、受信電波強度の値は、更新されることなく、無線通信の途絶前の値のままとなり、計測部によって計測される取得回数は増加し続けることになる。したがって、無線通信が途絶したときの取得回数を判定用閾値として設定しておき、判定部によって取得回数と判定用閾値とを比較することで無線通信が途絶したか否かを判定できる。
【0008】
判定部による判定は、計測部によって計測された取得回数を判定用閾値と比較するだけで行うことができる。例えば、通信部が識別データ信号を受信できない時間が一定期間経過した場合に無線通信が途絶されたと判定する場合と比べると、判定部が無線通信の途絶と判定するまでに要する時間を短縮できる。
【0009】
また、通信装置について、強度閾値以上の前記受信電波強度が前記測定部によって測定された場合には、前記計測部は、前記強度閾値以上の前記受信電波強度が連続する回数についての計測を行わないようにしてもよい。
【0010】
これによれば、無線通信において、送信機と通信部とが近接している場合は、受信電波強度の値が大きく、しかも連続して同じ値の受信電波強度が測定されることになり、計測部で計測される取得回数は多くなる。送信機と通信部が近接している場合は、無線通信を行う必要がない場合が多い。このため、強度閾値以上の受信電波強度を受信した場合は、計測部による計測を行わないようにすることで、送信機と通信部が近接している状態を排除する。よって、送信機と通信部が近接していない状態での無線通信の途絶か否かの判定を行うことができる。
【0011】
また、通信装置について、前記送信機からは、前記通信装置が搭載された可動体の動作指令を含む遠隔操作信号が送信されるとともに、当該遠隔操作信号は前記通信装置の記憶部に一時的に記憶され、前記判定用閾値は、前記記憶部に記憶された前記遠隔操作信号に含まれる動作指令によって前記可動体を動作させたときの最大の動作量に到達するまでに前記計測部が行う計測回数より小さく、かつ前記送信機の製造誤差を原因として生じる前記受信電波強度の値が連続する可能性のある最大の回数よりも多い回数に設定されていてもよい。
【0012】
これによれば、送信機の製造誤差を原因として、同じ電波強度で識別データ信号を送信する場合があるが、この場合は、計測部で計測される取得回数が増加する。判定用閾値に、この製造誤差を加味することで、送信機の製造誤差によって取得回数が連続してしまう場合を、無線通信の途絶と判定してしまうことを抑制できる。さらに、遠隔操作信号に含まれる動作指令が完了する前に、無線通信の途絶か否かを判定できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無線通信の途絶を判定するのに要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の送信機及び通信装置を模式的に示すブロック図。
図2】取得回数と時間との関係を示すグラフ。
図3】判定用閾値と計測回数との関係を示す図。
図4】通信途絶の判定を行うときの処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、通信装置を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、通信装置10は、可動体として、産業車両の一種であるフォークリフト11に搭載されている。フォークリフト11は作業場に配置される。そして、送信機12を用いて作業場のフォークリフト11を遠隔操作することができるようになっている。例えば、操作者は、送信機12を用いてフォークリフト11を遠隔操作して、フォークリフト11の走行・停止、フォークの昇降、マストの傾動といった動作を行わせる。
【0016】
送信機12は、無線通信機能を有する操作端末である。送信機12は、例えばリモートコントローラである。送信機12は、リモート通信部13と、操作部14と、リモートCPU15と、リモートメモリ16と、バッテリ17とを備える。
【0017】
操作部14は、操作者によって操作される部位であり、フォークリフト11の動作を入力操作するものである。リモートCPU15は、リモートメモリ16に記憶されている各種プログラムを用いて各種処理を実行するものである。
【0018】
フォークリフト11に搭載された通信装置10は、車両通信部20と、車両CPU30とを備える。
通信装置10の車両通信部20は、送信機12のリモート通信部13と無線通信を行う通信部である。送信機12のリモート通信部13、及びフォークリフト11の車両通信部20は、無線通信を行う通信インターフェースであり、例えば1つ以上の専用のハードウェア回路、及び、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサの少なくとも一方によって実現されている。
【0019】
車両通信部20は、通信範囲内に登録済みの送信機12が存在する場合には、当該送信機12との通信接続を確立する。これにより、送信機12と車両通信部20との間で信号のやり取りが可能となり、相互通信が可能となる。
【0020】
ここで、上記のように車両通信部20とリモート通信部13との間で信号のやり取りが可能となった状態を通信接続状態という。この通信接続状態は、所謂ペアリングである。通信接続状態とは、リモート通信部13と車両通信部20とが無線通信によって接続された状態とも言え、両通信部13,20が互いに情報のやり取りを行ってもよいと認証した状態とも言える。この通信接続状態では、送信機12は、送信機12を識別するための識別データ信号Dを定期的に送信し、車両通信部20は、識別データ信号Dを定期的に受信している。
【0021】
一方、リモート通信部13と車両通信部20との間に遮蔽物が介在したり、送信機12のバッテリ17切れが発生したりすると、車両通信部20は、送信機12からの識別データ信号Dが受信できなくなる。所謂、リモート通信部13と車両通信部20との無線通信が途絶した状態である。車両通信部20は、識別データ信号Dを受信できない時間を計測し、識別データ信号Dが受信できない時間が一定期間経過すると、通信途絶と判定する。車両通信部20が通信途絶と判定するまでに要する時間をペアリング解消時間とする。本実施形態では、リモート通信部13及び車両通信部20間の無線通信形式はBluetooth(登録商標)である。
【0022】
また、送信機12のリモートCPU15は、リモート通信部13と電気的に接続されている。リモートCPU15は、送信機12を用いてフォークリフト11の遠隔操作を行う場合には、フォークリフト11の遠隔操作に用いられる遠隔操作信号Gを操作部14の入力操作に応じて生成する。リモート通信部13は、リモートCPU15によって生成された遠隔操作信号Gを車両通信部20に向けて順次送信する。換言すれば、リモートCPU15は、リモート通信部13を用いて遠隔操作信号Gを送信するように構成されている。遠隔操作信号Gは、遠隔操作による動作指令が設定された信号であり、詳細には遠隔操作に関するデータ信号を含む。
【0023】
また、リモートCPU15は、遠隔操作信号Gとは別に、送信機12を識別するための識別データ信号Dを定期的に生成する。リモート通信部13は、リモートCPU15によって生成された識別データ信号Dを車両通信部20に向けて定期的に送信する。識別データ信号Dには、送信機12を識別するためのIDコードが含まれている。送信機12が識別データ信号Dを定期的に送信し、車両通信部20が定期的に受信することにより、通信接続状態が維持されているとも言える。
【0024】
ここで、Bluetoothについて説明する。Bluetoothは、数mから数十m程度の距離の通信機器間で、電波を使って情報のやりとりを行うのに使用される。規格名はIEEE802.15.1である。Bluetoothは、2.4GHz帯を使用して比較的低速度のデジタル情報の無線通信を行う用途に採用されている。車両通信部20では、識別データ信号Dの受信電波強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)が測定されるが、Bluetoothにおいては、受信電波強度は、変動しやすく、同じ値の受信電波強度が長期間に亘って連続することがほとんどない。
【0025】
通信装置10の車両通信部20は、受信された遠隔操作信号Gや識別データ信号Dを、車内通信用規格に対応した制御信号に変換する。車両通信部20は、車両CPU30と電気的に接続されており、両者の間で信号のやり取りが可能となっている。車両通信部20は、遠隔操作信号Gを受信した場合には、遠隔操作信号Gを制御信号に変換し、当該制御信号を車両通信部20に設けられた記憶部21に一時的に記憶しておく。車両CPU30は、記憶部21に記憶されている遠隔操作信号Gの制御信号に対応した態様でフォークリフト11を動作させる。
【0026】
また、車両通信部20は、識別データ信号Dの受信電波強度を測定する測定部22を備える。測定部22によって測定された識別データ信号Dの受信電波強度は、記憶部21に記憶される。また、車両通信部20は、計測部23を備える。計測部23は、記憶部21に記憶されている最新の受信電波強度を定期的に取得し、1回前に記憶部21に記憶された受信電波強度と比較する。そして、計測部23は、同じ値の受信電波強度が連続する回数を計測する。例えば、同じ値の受信電波強度が5回連続する場合、計測部23は取得回数「5」を計測する。計測部23による計測は、定期的に行われる。記憶部21は、計測部23によって計測された取得回数Nを記憶する。その後、異なる値の受信電波強度の識別データ信号Dを受信すると、取得回数Nはリセットされ、異なる値の受信電波強度の識別データ信号Dを取得した回数に書き換えられる。
【0027】
車両CPU30は、送信機12と車両通信部20との無線通信が途絶しているか否かの判定を定期的に行っている。車両CPU30は、送信機12との無線通信が途絶している場合には、遠隔操作信号Gの指示を受け付けなくする処理を行う。
【0028】
図2に示すように、送信機12との無線通信が途絶していない状態、つまり通信接続状態では、識別データ信号Dの受信電波強度の値は短期間に変動しやすく、取得回数Nは少ない値がほとんどである。このため、取得回数Nは僅かな変動範囲の間で変動し続けている。また、受信電波強度の値も変動はするが、大幅な変動はない。
【0029】
しかし、無線通信が途絶し、車両通信部20が識別データ信号Dを受信できなくなると、記憶部21に記憶される受信電波強度は更新されなくなり、無線通信の途絶前に記憶された受信電波強度が記憶されたままとなる。その結果、計測部23は、同じ受信電波強度の値を計測し続けることになり、取得回数Nは連続的に増加し続ける。
【0030】
そこで、取得回数Nに判定用閾値を設定し、取得回数Nが判定用閾値以上の場合には、車両CPU30は無線通信が途絶していると判定する。つまり、車両CPU30は、計測部23によって計測された取得回数Nが判定用閾値以上の場合には、送信機12と車両通信部20との無線通信が途絶していると判定する。したがって、本実施形態では、車両CPU30は判定部として機能する。車両CPU30の車両メモリ31には、判定用閾値が予め記憶されている。
【0031】
上記したように遠隔操作信号Gは、フォークリフト11の動作を指令する信号である。送信機12と通信装置10との無線通信が途絶すると、車両CPU30が無線通信の途絶を検知するまでは、車両CPU30は途絶前に記憶部21に記憶された遠隔操作信号Gに応じてフォークリフト11を動作させる。このため、無線通信の途絶前と途絶後とで、異なる動作の遠隔操作信号Gが送信機12から送信されていても、フォークリフト11は、途絶後と異なる動作を行うことになる。
【0032】
無線通信の途絶前後で異なる動作は、可能な限り速やかに停止させるのが好ましい。そこで、判定用閾値は、無線通信の途絶前に記憶部21に記憶された遠隔操作信号Gに応じた動作が終了する前に、車両CPU30によってフォークリフト11の動作を停止させる値に設定される。
【0033】
ここで、図3に示すように、無線通信の途絶前において、最新の遠隔操作信号Gが記憶部21に記憶された時点を記憶時点t1とする。この記憶時点t1から遠隔操作信号Gの動作が完了する完了時点t2までに要する時間を動作時間T1とする。この動作時間T1の間には、計測部23は複数回に亘って計測を行う。
【0034】
無線通信の途絶時は、完了時点t2に到達する前に、フォークリフト11の動作を停止させるのが好ましい。つまり、記憶部21に記憶された最新の遠隔操作信号Gに含まれる動作指令によってフォークリフト11を動作させたときの最大の動作量に到達するまでに、取得回数Nを判定用閾値と比較して判定を行うのが好ましい。したがって、判定用閾値は、動作時間T1の間に計測部23が行う計測回数より少ないのが好ましい。
【0035】
また、フォークリフト11の動作を停止させるには、車両CPU30から停止指令が出力されてから動作が停止するまでに停止必要時間T2を要する。この停止必要時間T2の間にも、計測部23は複数回に亘って計測を行う。この停止必要時間T2の間に行われる計測回数は、実験等によって予め測定される。
【0036】
そして、判定用閾値は、停止必要時間T2に行われる計測回数と、送信機12の製品誤差を加味して設定される。送信機12の製品誤差とは、送信機12固有の特性であり、識別データ信号Dの送信時に同じ識別データ信号Dを複数回に亘って連続して送信してしまうことである。同じ識別データ信号Dを送信することを貼り付きと記載し、その回数のうちの最大の回数を貼り付き回数と記載する。この貼り付き回数は実験によって予め測定することができ、送信機12毎に異なる。
【0037】
判定用閾値は、送信機12の貼り付き回数と、停止必要時間T2の間に行われる計測部23による計測回数とを加算して設定される。そして、判定用閾値は、動作時間T1の間に計測部23が行う計測回数より少なく、かつ貼り付き回数よりも多い回数に設定されている。また、設定される判定用閾値と同じ計測回数が行われるまでに要する時間は、ペアリング解消時間よりも短い時間である。
【0038】
また、車両通信部20と送信機12との距離が近ければ、測定部22によって測定される受信電波強度の値は変動しにくく、車両通信部20と送信機12との距離が遠くなるほど、変動しやすく、受信電波強度の値も弱まりやすい。このため、車両通信部20と送信機12とが近接した状態であれば、通信接続状態では、受信電波強度の値が高いまま、同じ値が連続して取得されやすい。つまり、取得回数Nが判定用閾値以上になる可能性が高い。
【0039】
このように、送信機12と車両通信部20とが近接する場合は、フォークリフト11の作業場においてはほとんど無く、近接した場合に、無線通信の途絶の判定を行う必要はない。そこで、送信機12と車両通信部20とが近接している場合を排除するため、受信電波強度が強度閾値以上の場合は、受信電波強度は記憶部21には記憶されないとともに、計測部23は、同じ値の受信電波強度が連続する回数についての計測を行わない。なお、強度閾値は、フォークリフト11と送信機12との距離が作業場では実現し得ない距離の最大値において、実際に受信電波強度を測定したときの値に対し、若干にマージンを加味して設定されている。
【0040】
次に、車両CPU30が行う処理を作用とともに説明する。
無線通信が途絶していない通信接続状態では、送信機12から識別データ信号Dが送信される度に、測定部22によって受信電波強度が測定される。強度閾値より小さい受信電波強度の識別データ信号Dを車両通信部20が受信した場合は、測定部22によって測定された受信電波強度の値が、記憶部21に一時的に記憶される。計測部23は、記憶部21に記憶された受信電波強度の値を定期的に取得し、記憶部21に記憶されている受信電波強度の値と比較し、値が同じ場合に取得回数Nを「1」加算し、値が異なる場合は、取得回数Nを「0」にリセットしている。
【0041】
さて、車両CPU30は、記憶部21に記憶されている取得回数Nを定期的に取得し、取得回数Nを用いて無線通信の途絶か否かの判定を行っている。図4に示すように、ステップS1において、車両CPU30は、記憶部21から取得した取得回数Nについて、判定用閾値以上か否かを判定する。取得回数Nが判定用閾値以上の場合、すなわち、ステップS1でYESの場合、車両CPU30は、ステップS2において、送信機12との無線通信が途絶していると判定し、処理を終了する。一方、車両CPU30は、取得回数Nが判定用閾値未満の場合、すなわち、ステップS1でNOの場合、処理を終了する。
【0042】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)送信機12と車両通信部20との無線通信が途絶し、識別データ信号Dが車両通信部20で受信できないと、記憶部21に記憶される受信電波強度の値が更新されず、計測部23によって計測される取得回数Nが増加し続ける。車両CPU30は、計測部23によって計測された取得回数Nが判定用閾値以上の場合に、送信機12と車両通信部20との間での無線通信が途絶している、と判定する。したがって、車両CPU30は、取得回数Nを取得し、取得回数Nを判定用閾値と比較するだけで、無線通信が途絶しているか否かを判定できる。例えば、無線通信が途絶しているか否かの判定を行うにあたり、車両通信部20が識別データ信号Dを受信できない時間が一定期間経過するまで待つ場合と比べて、車両CPU30が無線通信の途絶と判定するまでに要する時間を短縮できる。
【0043】
(2)Bluetoothは、識別データ信号Dの電波強度自体が弱く、送信機12と車両通信部20との間に遮蔽物が存在するだけでも受信電波強度が低下するため、受信電波強度が一時的に低下しても通信途絶と判定しない。このため、通信途絶の判定までには長い時間を要してしまう。しかし、本実施形態では、識別データ信号Dを受信できない時間を判定の対象とするのではなく、同じ受信電波強度の識別データ信号Dを取得した取得回数Nを判定の対象としている。そして、判定のタイミングは、記憶部21に記憶されている取得回数Nを取得した時点であるため、一定時間待つ必要がないため、より短時間で通信途絶の有無を判定できる。
【0044】
(3)計測部23は、強度閾値以上の受信電波強度の識別データ信号Dを受信した場合には、計測部23による計測を行わない。無線通信において、送信機12と車両通信部20とが近接している場合は、受信電波強度の値が大きく、しかも連続して同じ値の受信電波強度が測定されることになり、計測部23で計測される取得回数Nは多くなる。送信機12と車両通信部20が近接している場合は、無線通信を行う必要がない場合が多い。このため、強度閾値以上の受信電波強度を受信した場合は、計測部23による計測を行わないようにすることで、送信機12と車両通信部20が近接している状態を排除する。よって、送信機12と車両通信部20が近接していない状態での無線通信の途絶か否かの判定を行うことができる。
【0045】
(4)判定用閾値は、遠隔操作信号Gに含まれる動作指令によってフォークリフト11を動作させたときの最大の動作量に到達するまでに計測部23が行う計測回数より少なく、かつ送信機12の製造誤差を原因として生じる貼り付き回数よりも多い回数に設定されている。このため、貼り付き回数の間に無線通信の途絶と判定することを抑制できるとともに、遠隔操作信号Gに含まれる動作指令が完了する前に、無線通信の途絶か否かを判定できる。
【0046】
(5)無線通信が途絶しているか否かの判定を行うにあたり、車両通信部20が識別データ信号Dを受信できない時間が一定期間経過するまで待つ場合と比べて、車両CPU30が無線通信の途絶と判定するまでに要する時間を短縮できる。このため、フォークリフト11において、無線通信の途絶からフォークリフト11の動作を停止させるまでに要する時間を短くできる。
【0047】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 無線通信形式は、Zigbee(登録商標)等であってもよい。
【0048】
○ 判定用閾値は、送信機12の貼り付き回数を加味せず設定してもよい。
○ 識別データ信号Dの受信電波強度と強度閾値とを比較する処理は行わなくてもよい。この場合、強度閾値以上の受信電波強度が測定部22によって測定された場合であっても、計測部23は、受信電波強度が連続する回数についての計測を行う。
【0049】
○ 通信装置10が搭載される可動体は、産業車両の一種であるフォークリフト11に限られず任意であり、他の種類の産業車両や、自動車であってもよいし、無線通信によって動作させることができるものであれば適宜変更してもよい。
【0050】
○ 通信装置10の車両CPU30は、車両メモリ31を備えていなくてもよく、この場合、車両CPU30に、無線通信の途絶を判定するためのプログラム等が記憶されている。
【0051】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記送信機と前記通信部との無線通信規格はBluetoothである。
(2)前記可動体は産業車両である。
【符号の説明】
【0052】
D…識別データ信号、G…遠隔操作信号、10…通信装置、12…送信機、20…通信部としての車両通信部、22…測定部、21…記憶部、23…計測部、30…判定部としての車両CPU。
図1
図2
図3
図4