(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】インダクタ機能を有する配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20220802BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20220802BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20220802BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H01F17/00 C
H05K1/16 B
H05K1/11 H
H01F41/04 C
(21)【出願番号】P 2019182431
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2021-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】萩原 千尋
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0279806(US,A1)
【文献】特開2014-116465(JP,A)
【文献】特開2016-039256(JP,A)
【文献】特開2003-209331(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H05K 1/16
H05K 1/11
H01F 41/04
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通する開口が形成された内層基板と、
該開口の内部に設けられた磁性体層であって、その第1及び第2の主面を貫通する
複数の第1スルーホールが形成された磁性体層と、
該第1スルーホールの
各々の内部に設けられた絶縁体であって、該絶縁体を貫通する第2スルーホールが形成された絶縁体と、
前記磁性体層の第1の主面上に形成された第1導体パターンと、前記磁性体層の第2の主面上に形成された第2導体パターンと、前記第2スルーホールの内部に設けられており、第1導体パターンと第2導体パターンとを接続するスルーホール導体とからなる
ソレノイド状の導体パターンと、
を含
む配線基板であって、
第1導体パターン及び第2導体パターンが、磁性体層の第1の主面及び第2の主面にそれぞれ接合して設けられて
おり、
該配線基板の主面に垂直な方向からみて磁性体層の領域内部にソレノイド状の導体パターンを備える、インダクタ機能を有する配線基板。
【請求項2】
内層基板が絶縁基板である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
内層基板が回路基板である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
下記工程(A)~(G)を含む、請求項1~3の何れか1項に記載のインダクタ機能を有する配線基板の製造方法。
(A)第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通する開口が形成された内層基板を準備する工程、
(B)該開口の内部に磁性体ペーストを充填し、該磁性体ペーストを熱硬化させて磁性体層を設ける工程、
(C)磁性体層の第1及び第2の主面間を貫通する第1スルーホールを形成する工程、
(D)第1スルーホールの内部に絶縁体を設ける工程、
(E)絶縁体を貫通する第2スルーホールを形成する工程、
(F)第2スルーホールの内部にスルーホール導体を形成する工程、及び
(G)磁性体層の第1及び第2の主面上にそれぞれ第1導体パターン及び第2導体パターンを、第1導体パターンと第2導体パターンがスルーホール導体によりソレノイド状に接続されるように形成する工程。
【請求項5】
磁性体ペーストの粘度(25℃)が20~250Pa・sである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
下記工程(A)~(G):
(A)第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通する開口が形成された内層基板を準備する工程、
(B)該開口の内部に磁性体ペーストを充填し、該磁性体ペーストを熱硬化させて磁性体層を設ける工程、
(C)磁性体層の第1及び第2の主面間を貫通する第1スルーホールを形成する工程、
(D)第1スルーホールの内部に絶縁体を設ける工程、
(E)絶縁体を貫通する第2スルーホールを形成する工程、
(F)第2スルーホールの内部にスルーホール導体を形成する工程、及び
(G)磁性体層の第1及び第2の主面上にそれぞれ第1導体パターン及び第2導体パターンを、第1導体パターンと第2導体パターンがスルーホール導体によりソレノイド状に接続されるように形成する工程
を含む、インダクタ機能を有する配線基板の製造方法であって、工程(D)の後、
(D-1)内層基板の第1の主面及び磁性体層の第1の主面に接合して絶縁層を設ける工程、及び
(D-2)内層基板の第2の主面及び磁性体層の第2の主面に接合して絶縁層を設ける工程
の少なくとも一方をさらに含む、方法。
【請求項7】
工程(E)において、絶縁層と絶縁体を貫通する第2スルーホールを形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
内層基板の第1及び第2の主面の少なくとも一方の主面上において絶縁層の表面に導体層を設ける工程をさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
内層基板が絶縁基板である、請求項6~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
内層基板が回路基板である、請求項6~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
磁性体ペーストの粘度(25℃)が20~250Pa・sである、請求項6~10の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ機能を有する配線基板及びその製造方法に関する。詳細には、内部にインダクタ構造を造り込んだ配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタは、携帯電話機、スマートフォン、タブレットPCなどの高機能電子機器に数多く搭載されている。配線基板にインダクタ部品を実装又は埋め込んで内蔵させる場合、例えば特許文献1及び2に記載されるインダクタ部品を使用することができる。
【0003】
近年、電子機器の小型化が進んでおり、こうした小型の電子機器に用いられる配線基板のさらなる高機能化、小型化が求められている。インダクタに関しても、独立したインダクタ部品を使用する技術に代えて/加えて、配線基板にインダクタ構造を造り込む技術が期待されている。
【0004】
配線基板にインダクタ構造を造り込む技術として、例えば特許文献2のインダクタ部品の製造方法に基づいて、磁性シートを内層基板として用い、該磁性シートにソレノイド状の導体パターンを形成してインダクタ構造を形成する方法が考えられる。また、特許文献3で提案されるように、絶縁基板の一部領域に磁性体を収納して、該磁性体の周囲の絶縁基板にスルーホール導体を設けるなどしてソレノイド状の導体パターンを形成してインダクタ構造を形成する方法も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-197624号公報
【文献】特開2014-116465号公報
【文献】特開2016-39256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし磁性シートを内層基板として用い、該磁性シートにソレノイド状の導体パターンを形成する方法では、平面方向(基板の主面方向)の絶縁性に乏しく、所期のインダクタンス特性が得られ難い。
【0007】
また、絶縁基板の一部領域に磁性体を収納して、該磁性体の周囲の絶縁基板にスルーホール導体を設けるなどしてソレノイド状の導体パターンを形成する方法では、ソレノイド状の導体パターン(導体コイル)内側には磁性体が存在するものの、該導体コイル外側には磁性体が存在しないことから、所期のインダクタンス特性が得られ難い。
【0008】
本発明は、平面方向の絶縁性に優れ、導体コイル内側のみならず導体コイル外側にも磁性体が存在することにより優れたインダクタンス特性をもたらす、インダクタ構造を造り込んだ配線基板及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の内容を含む。
[1]第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通する開口が形成された内層基板と、
該開口の内部に設けられた磁性体層であって、その第1及び第2の主面を貫通する第1スルーホールが形成された磁性体層と、
該第1スルーホールの内部に設けられた絶縁体であって、該絶縁体を貫通する第2スルーホールが形成された絶縁体と、
前記磁性体層の第1の主面上に形成された第1導体パターンと、前記磁性体層の第2の主面上に形成された第2導体パターンと、前記第2スルーホールの内部に設けられており、第1導体パターンと第2導体パターンとを接続するスルーホール導体とからなるインダクタと、
を含むインダクタ機能を有する配線基板。
[2]内層基板の第1の主面及び磁性体層の第1の主面に接合して設けられた絶縁層をさらに含み、第1導体パターンが、前記磁性体層の第1の主面上において絶縁層の表面に接合して設けられている、[1]に記載の配線基板。
[3]内層基板の第2の主面及び磁性体層の第2の主面に接合して設けられた絶縁層をさらに含み、第2導体パターンが、前記磁性体層の第2の主面上において絶縁層の表面に接合して設けられている、[1]又は[2]に記載の配線基板。
[4]内層基板の第1及び第2の主面の少なくとも一方の主面上において絶縁層の表面に接合して設けられた導体層を含む、[2]又は[3]に記載の配線基板。
[5]内層基板が絶縁基板である、[1]~[4]の何れかに記載の配線基板。
[6]内層基板が回路基板である、[1]~[4]の何れかに記載の配線基板。
[7]下記工程(A)~(G)を含む、インダクタ機能を有する配線基板の製造方法。
(A)第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通する開口が形成された内層基板を準備する工程、
(B)該開口の内部に磁性体ペーストを充填し、該磁性体ペーストを熱硬化させて磁性体層を設ける工程、
(C)磁性体層の第1及び第2の主面間を貫通する第1スルーホールを形成する工程、
(D)第1スルーホールの内部に絶縁体を設ける工程、
(E)絶縁体を貫通する第2スルーホールを形成する工程、
(F)第2スルーホールの内部にスルーホール導体を形成する工程、及び
(G)磁性体層の第1及び第2の主面上にそれぞれ第1導体パターン及び第2導体パターンを、第1導体パターンと第2導体パターンがスルーホール導体によりソレノイド状に接続されるように形成する工程。
[8]磁性体ペーストの粘度(25℃)が20~250Pa・sである、[7]に記載の方法。
[9]工程(D)の後、
(D-1)内層基板の第1の主面及び磁性体層の第1の主面に接合して絶縁層を設ける工程、及び
(D-2)内層基板の第2の主面及び磁性体層の第2の主面に接合して絶縁層を設ける工程
の少なくとも一方をさらに含む、[7]又は[8]に記載の方法。
[10]工程(E)において、絶縁層と絶縁体を貫通する第2スルーホールを形成する、[9]に記載の方法。
[11]内層基板の第1及び第2の主面の少なくとも一方の主面上において絶縁層の表面に導体層を設ける工程をさらに含む、[9]又は[10]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平面方向の絶縁性に優れ、導体コイル内側のみならず導体コイル外側にも磁性体が存在することにより優れたインダクタンス特性をもたらす、インダクタ構造を造り込んだ配線基板及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における配線基板のインダクタ構造部を示す概略平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(1)である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(2)である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(3)である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(4)である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(5)である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(6)である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(7)である。
図8はまた、本発明の一実施形態に係る配線基板100の概略断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(8)である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(9)である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(10)である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(11)である。
図12はまた、本発明の一実施形態に係る配線基板200の概略断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(12)である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(13)である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態の製造方法を説明するための模式図(14)である。
図15はまた、本発明の一実施形態に係る配線基板300の概略断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の一実施形態における配線基板のインダクタ構造部を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさおよび配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置により、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
【0013】
[インダクタ機能を有する配線基板]
本発明の配線基板は、内部にインダクタ構造が造り込まれており、インダクタ機能を有する。
【0014】
本発明の配線基板において、インダクタ構造は、絶縁体を貫通するスルーホールの内部に設けられたスルーホール導体を、ソレノイド状の導体パターン(導体コイル)の一部として含むことを特徴とする。本発明の配線基板においてはまた、基板の主面方向(すなわち、基板の主面に平行な方向)において、絶縁体の周囲に磁性体層が設けられており、その結果、導体コイルの外側にも磁性体が存在することとなる。本発明の配線基板においてはさらに、基板の主面方向において、磁性体層を取り囲むように内層基板が設けられており、その結果、磁性体層は基板の主面方向において分断された領域に存在することとなる。なお、スルーホール導体と共に導体コイルを形成する導体パターンは、基板の主面に垂直な方向からみて、斯かる磁性体層の領域内部に設けられており、その結果、基板の主面に垂直な方向からみると、導体コイルは全体として、磁性体層の領域内部に存在することとなる。基板の主面方向において分断された領域に磁性体層を有することから、本発明の配線基板は、平面方向の絶縁性に優れる。また、基板の主面に垂直な方向からみて磁性体層の領域内部に導体コイルを備えることから、本発明の配線基板は、導体コイルの内側のみならず該導体コイルの外側にも磁性体が存在し、優れたインダクタンス特性を呈する。なお、本発明において、ソレノイド状の導体パターン(導体コイル)と磁性体との位置関係についていう「導体コイルの内側」とは、導体コイルが画定する筒構造の内側を意味し、また、「導体コイルの外側」とは、導体コイルが画定する筒構造の外側を意味する。
【0015】
斯かる本発明の配線基板の構造的特徴について、
図8(
図12及び
図15)と
図1を参照して説明する。なお、各図に示す構成要素の詳細に関しては後述し、本欄においては特に注目すべき構造的特徴に関し説明する点につき留意されたい。
図8は、本発明の一実施形態に係る配線基板100の概略断面図である。
図8に示す配線基板100は、開口が形成された内層基板20と、該開口の内部に設けられた磁性体層であって第1スルーホールが形成された磁性体層22と、該第1スルーホールの内部に設けられた絶縁体であって第2スルーホールが形成された絶縁体24と、該第2スルーホールの内部に設けられたスルーホール導体26とを備えており、絶縁体24を貫通する第2スルーホールの内部に設けられたスルーホール導体26を、導体コイルの一部として含むことを特徴とする。そして配線基板100は、該基板の主面方向において分断された領域(
図8中の領域A;内層基板の領域Bにより分断されている)に磁性体層を有する。
図12及び
図15には、内層基板20の両主面に接合して絶縁層34が設けられている本発明の他の実施形態に係る配線基板200及び300の概略断面図をそれぞれ示すが、
図8に示す配線基板100と同様に、絶縁体を貫通する第2スルーホールの内部に設けられたスルーホール導体36、46を、導体コイルの一部として含むと共に、該基板の主面方向において分断された領域(
図12及び15中の領域A;内層基板の領域Bにより分断されている)に磁性体層を有する。
また、
図1は、本発明の一実施形態に係る配線基板のインダクタ構造部10(すなわち、配線基板に造り込まれたインダクタ構造部10)を示す概略平面図である。
図1中の符号A及びBは、
図8(
図12及び
図15)に示す領域A及びBに対応する。なお、
図1のX1-X1一点鎖線で示した位置で配線基板を切断した際の断面が
図8(
図12及び
図15)の概略断面図に対応する。
図1に示すインダクタ構造部10は、磁性体層の領域Aの内部に、スルーホールランド28aと接続パターン28bからなる第1導体パターン(
図8、12及び15中の「28」、「38」及び「48」)と、スルーホールランド29a(
図1に示さず)と接続パターン29bからなる第2導体パターン(
図8、12及び15中の「29」、「39」及び「49」)と、スルーホール導体(
図1に示さず;
図8、12及び15中の「26」、「36」及び「46」)とから構成されるソレノイド状の導体パターン(導体コイル)を備える。先述のとおり、スルーホール導体は、絶縁体を貫通する第2スルーホールの内部に設けられている。
図1から把握されるように、インダクタ構造部10において、導体コイルの内側のみならず該導体コイルの外側にも磁性体が存在する。
図1に示す導体コイルのコイル軸は
図1の上下方向に延在しているが、導体コイルが画定する筒構造の軸方向外側領域にも側面方向外側領域にも磁性体が存在することに留意されたい。
【0016】
本発明においては、内層基板に開口(第1開口)を形成し、該第1開口の内部に磁性体層を設け、その磁性体層にスルーホール(第2開口)を形成し、該第2開口の内部に絶縁体を設け、さらに該絶縁体にスルーホール(第3開口)を形成しスルーホール導体を設けて所期の導体コイルを形成するという新規な方法により、上記構造的特徴を有する配線基板を実現するに至ったものである。
【0017】
一実施形態において、本発明の配線基板は、
第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通する開口が形成された内層基板と、
該開口の内部に設けられた磁性体層であって、その第1及び第2の主面を貫通する第1スルーホールが形成された磁性体層と、
該第1スルーホールの内部に設けられた絶縁体であって、該絶縁体を貫通する第2スルーホールが形成された絶縁体と、
前記磁性体層の第1の主面上に形成された第1導体パターンと、前記磁性体層の第2の主面上に形成された第2導体パターンと、前記第2スルーホールの内部に設けられており、第1導体パターンと第2導体パターンとを接続するスルーホール導体とからなるインダクタと、
を含む。
【0018】
以下、
図8、
図12及び
図15をはじめとする図面を適宜参照して、本発明の配線基板の実施形態を説明する。なお、配線基板を構成する各構成要素の詳細は、後述する[インダクタ構造を有する配線基板の製造方法]欄の記載も併せて考慮することにより、より一層明確に理解されよう。
【0019】
以下の説明においては、便宜的に、内層基板又は磁性体層の第1の主面とは、図示する内層基板又は磁性体層の上側主面を表し、内層基板又は磁性体層の第2の主面とは、図示する内層基板又は磁性体層の下側主面を表すこととする。また、「磁性体層の第1(第2)の主面」とは、磁性体層の領域(
図1、
図8等における領域A)内の主面を意味し、「内層基板の第1(第2)の主面」とは、内層基板の領域(
図1、
図8等における領域B)内の主面を意味する。
【0020】
-内層基板-
本発明の配線基板において、内層基板としては、配線基板を製造するに際して使用し得る公知の内層基板を用いてよく、絶縁基板であっても回路基板であってもよい。
【0021】
絶縁基板とは、対向する第1及び第2の主面を有し、電気絶縁性を示す板状の基板をいう。絶縁基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板、ガラス基板、セラミック基板等が挙げられる。絶縁基板としてはまた、硬化プリプレグを用いてよい。硬化プリプレグとは、プリプレグの硬化物をいう。プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物とシート状繊維基材とを含むシート状材料であり、例えば、熱硬化性樹脂組成物をシート状繊維基材に含浸させて形成することができる。
【0022】
回路基板とは、対向する第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面の片方又は両方にパターン加工された回路配線(ビア配線、スルーホール配線等の層間配線、及び表面配線など;本明細書の図面に示さず)を有する板状の基板をいう。配線基板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「回路基板」に含まれる。回路基板に用いられる基板(ベース基板)は、上記の絶縁基板であってよい。
【0023】
内層基板の厚さは、特に限定されず、製造する配線基板の具体的設計に応じて決定してよい。例えば、内層基板の厚さは、配線基板の薄型化の観点から、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下、1.0mm以下又は0.8mm以下である。内層基板の厚さの下限は特に限定されないが、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、80μm以上又は100μm以上である。内層基板として回路基板を用いる場合、回路基板のベース基板の厚さが上記範囲にあることが好適である。
【0024】
内層基板として回路基板を用いる場合、回路基板の備える回路配線の寸法は、製造する配線基板の具体的設計に応じて決定してよい。例えば、表面配線の厚さは、配線基板の薄型化の観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、30μm以下又は25μm以下である。表面配線の厚さの下限は特に限定されないが、通常、1μm以上、3μm以上、5μm以上などである。
【0025】
内層基板には、その第1及び第2の主面を貫通する開口(第1開口)が形成されている(
図8、
図12及び
図15中、領域Aが内層基板20の開口に相当)。開口の形状は特に限定されず、矩形、円形、略矩形、略円形等の任意の形状としてよい。また、開口の寸法は、インダクタ構造部の設計にもよるが、例えば、開口の形状が矩形の場合、5mm×5mm以下が好ましく、3mm×3mm以下又は2mm×2mm以下がより好ましい。また、開口の形状が円形の場合、直径5mm以下が好ましく、3mm以下又は2mm以下がより好ましい。当該開口の寸法の下限は、造り込むインダクタ構造の寸法にもよるが、矩形の開口の場合は、通常、0.5mm×0.5mm以上であってよく、円形の開口の場合は、通常、直径0.5mm以上であってよい。内層基板として回路基板を用いる場合、開口は、回路基板において回路配線が形成されていない領域に形成される。
【0026】
図8、
図12及び
図15には、1つの開口のみを有する内層基板20を示しているが、開口は、互いに所定の間隔をあけて複数形成されていてもよい。内層基板が複数の開口を有する場合、それらの形状や寸法は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0027】
-磁性体層-
本発明の配線基板は、内層基板20の開口の内部に設けられた磁性体層22を備える。
【0028】
磁性体層22は、基板の主面に垂直な方向(基板の厚さ方向)において、その第1及び第2の主面が、それぞれ、内層基板20の第1及び第2の主面と実質的に対応するように、内層基板20の開口の内部に設けられている。すなわち、磁性体層は、内層基板から突出したり凹んだりしておらず、実質的に内層基板と同じ厚さにて設けられている。磁性体層22はまた、内層基板20の開口の内部において、内層基板20と接合して設けられている。
【0029】
磁性体層22は、磁性体からなる層である限りにおいて、その組成は特に限定されない。例えば、磁性体層は、磁性粉体とバインダー樹脂とを含む磁性体組成物(「磁性体ペースト」ともいう。)を硬化して得られた硬化物層であってよい。磁性体ペーストの詳細は、後述の[インダクタ機能を有する配線基板の製造方法]欄において説明する。
【0030】
磁性体層22は、その第1及び第2の主面を貫通する第1スルーホールを備える。該第1スルーホールは、内層基板20の開口(第1開口)との関係において、「第2開口」とも称する。
【0031】
第1スルーホールは、所期の導体コイルを実現すべく、磁性体層22に複数形成されている。例えば、導体コイルの巻き数Nが1である場合、
図1に示すように、4つのスルーホールを設ければよく、巻き数Nが2である場合、
図16に示すように、6つのスルーホールを設ければよい。第1スルーホールの数は、導体コイルの所望の設計に応じて適宜決定してよい。なお、
図8、
図12及び
図15に示す概略断面図は、
図1のX1-X1一点鎖線で示した位置で配線基板を切断した際の断面に対応しており、第1スルーホールは2つのみ示されていることに留意されたい。
【0032】
第1スルーホールの形状は特に限定されず、矩形、円形、略矩形、略円形等の任意の形状としてよい。また、第1スルーホール(第2開口)の寸法や第1スルーホール同士のピッチは、第1開口の寸法との関係において所望の導体コイルの設計を達成し得る限り特に限定されない。
【0033】
インダクタンス特性により一層優れる配線基板を実現する観点から、ソレノイド状の導体パターン(導体コイル)が画定する筒構造を考慮し、その軸方向外側領域にも側面方向外側領域にも十分な磁性体が存在するように第1スルーホールの位置を決定することが好ましい。例えば、第1スルーホールの直径をD1としたとき、導体コイルの筒軸方向(
図1、
図16では図面の上下方向)において、第1スルーホールの中心位置と内層基板との距離が、0.7D1以上であることが好ましく、0.8D1以上、0.9D1以上又はD1以上であることがより好ましい。また、導体コイルの筒側面方向(導体コイルの筒軸方向に垂直な方向;
図1、
図16では図面の左右方向)において、第1スルーホールの中心位置と内層基板との距離が、0.7D1以上であることが好ましく、0.8D1以上、0.9D1以上又はD1以上であることがより好ましい。
【0034】
-絶縁体-
本発明の配線基板は、磁性体層22の第1スルーホールの内部に設けられた絶縁体24を備える。
【0035】
絶縁体24は、基板の主面に垂直な方向(基板の厚さ方向)において、その第1及び第2の主面が、それぞれ、磁性体層22(及び内層基板20)の第1及び第2の主面と実質的に対応するように、磁性体層22の第1スルーホールの内部に設けられていることが好ましい。すなわち、絶縁体は、磁性体層から突出したり凹んだりしておらず、実質的に磁性体層と同じ厚さにて設けられていることが好ましい。絶縁体24はまた、磁性体層の第1スルーホールの内部において、磁性体層22と接合して設けられている。なお、内層基板20の両主面に接合して絶縁層34が設けられている実施形態に係る
図12及び
図15の配線基板では、磁性体層22の第1スルーホールに設けられた絶縁体24由来の絶縁部材と、絶縁層34とを区別せずに示しているが、後述のとおり、絶縁体24の組成と絶縁層34の組成は、互いに同じであっても、相異なっていてもよい。
【0036】
絶縁体24は、電気絶縁性を呈する限りにおいて、その組成は特に限定されない。例えば、絶縁体は、絶縁樹脂を含む樹脂組成物(「絶縁穴埋めペースト」ともいう。)を硬化して得られた硬化物層であってよい。絶縁穴埋めペーストの詳細は、後述の[インダクタ機能を有する配線基板の製造方法]欄において説明する。
【0037】
第2スルーホールは、磁性体層22の第1スルーホールに設けられた絶縁体24に形成されている。したがって、第2スルーホールの数は、通常、第1スルーホールの数と同じとしてよい。例えば、導体コイルの巻き数Nが1である場合、
図1に示すように、4つの第1スルーホールを形成し、その各々に絶縁体を設け第2スルーホールを形成すればよく、巻き数Nが2である場合、
図16に示すように、6つの第1スルーホールを形成し、その各々に絶縁体を設け第2スルーホールを形成すればよい。なお、
図8、
図12及び
図15に示す概略断面図は、
図1のX1-X1一点鎖線で示した位置で配線基板を切断した際の断面に対応しており、第2スルーホールは2つのみ示されていることに留意されたい。
【0038】
第2スルーホールの形状は特に限定されず、矩形、円形、略矩形、略円形等の任意の形状としてよい。また、第2スルーホールの寸法や第2スルーホール同士のピッチは、第1開口の寸法との関係において所望の導体コイルの設計を達成し得る限り特に限定されない。例えば、第1スルーホールの直径をD1としたとき、第2スルーホールの直径D2は、好ましくは0.8D1以下、より好ましくは0.7D1以下、0.6D1以下又は0.5D1以下であり、好ましくは0.2D1以上、より好ましくは0.3D1以上である。第2スルーホールの直径D2が斯かる範囲にあると、スルーホール導体の周囲の絶縁体が十分な厚さを有し、より一層インダクタンス特性に優れる配線基板を実現し得る。また、第2スルーホール同士のピッチは、第1スルーホール同士のピッチと実質的に同じとなるように、第2スルーホールの位置を決定することが好適である。
【0039】
本発明においては、磁性体層に第1スルーホールを形成し、該第1スルーホールの内部に絶縁体を設け、さらに該絶縁体に第2スルーホールを形成しスルーホール導体を設けてソレノイド状の導体パターン(導体コイル)を形成することにより、先述の構造的特徴を有する配線基板を実現したものである。
【0040】
-インダクタ-
本発明の配線基板は、磁性体層22の第1の主面上に形成された第1導体パターン28、38、48と、該磁性体層22の第2の主面上に形成された第2導体パターン29、39、49と、第2スルーホールの内部に設けられており、第1導体パターンと第2導体パターンとを接続するスルーホール導体26、36、46とからなるインダクタを備える。
【0041】
本発明において、第1導体パターンが「磁性体層の第1の主面上に形成され」ているとは、第1導体パターンが磁性体層の第1の主面に接合して(直に)設けられている場合のほか、第1導体パターンが磁性体層の第1の主面上において他の層を介して設けられている場合も含む。第2導体パターンが「磁性体層の第2の主面上に形成され」ているに関しても同様であり、第2導体パターンが磁性体層の第2の主面に接合して(直に)設けられている場合のほか、第2導体パターンが磁性体層の第2の主面上において他の層を介して設けられている場合も含む。ここで、他の層としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、例えば、絶縁層が挙げられる。よって、一実施形態において、本発明の配線基板は、内層基板20の第1の主面及び磁性体層22の第1の主面に接合して設けられた絶縁層34をさらに含み、第1導体パターン38、48が、磁性体層22の第1の主面上において絶縁層34の表面に接合して設けられている。また他の一実施形態において、本発明の配線基板は、内層基板20の第2の主面及び磁性体層22の第2の主面に接合して設けられた絶縁層34をさらに含み、第2導体パターン39、49が、磁性体層22の第2の主面上において絶縁層34の表面に接合して設けられている。
【0042】
図8に示す配線基板100では、第1導体パターン28及び第2導体パターン29が、磁性体層22の第1の主面及び第2の主面にそれぞれ接合して設けられている。他方、
図12及び
図15に示す配線基板200、300では、第1導体パターン38、48は、磁性体層22の第1の主面上において絶縁層34の表面に接合して設けられており、また、第2導体パターン39、49は、磁性体層22の第2の主面上において絶縁層34の表面に接合して設けられている。
【0043】
第1導体パターンと第2導体パターンは、絶縁体の第2スルーホールの内部に設けられたスルーホール導体により接続され、ソレノイド状の導体パターン(導体コイル)を形成する。これにより、インダクタ機能が発現する。
【0044】
第1導体パターンは、スルーホール導体及び第2導体パターンと共に導体コイルを形成し得る限り、その構造は限定されない。例えば、第1導体パターンは、スルーホールランド28aと、該スルーホールランド同士を接続する接続パターン28bとからなってよい(
図1)。第2導体パターンも同様であり、例えば、スルーホールランド29aと、該スルーホールランド同士を接続する接続パターン29bとからなってよい(
図1;スルーホールランド29aは図示せず)。
【0045】
スルーホール導体は、第1導体パターン及び第2導体パターンと共に導体コイルを形成し得る限り、その構造は限定されない。例えば、スルーホール導体は、スルーホール壁にめっき形成した中空円筒状の導体(コンフォーマル・スルーホール導体)であってよく、スルーホール内を導体で充填した円柱状の導体(フィルド・スルーホール導体)であってもよい。スルーホール導体がコンフォーマル・スルーホール導体である場合、中空円筒状の導体の内部は、絶縁体27、37、47で充填してよい。
【0046】
-その他の構造-
本発明の配線基板は、内層基板20の第1及び第2の主面の少なくとも一方の主面に接合して設けられた絶縁層34を備える場合(
図12及び
図15)、その絶縁層の表面に接合して設けられた導体層(配線層;図示せず)を含んでもよい。
【0047】
本発明の配線基板は、内層基板20(及び磁性体層22)の第1及び第2の主面の少なくとも一方の主面に、絶縁層と導体層(配線層)を交互に設けて、多層配線を形成していてもよい。絶縁層や配線層、多層配線の具体的設計に関しては、配線基板を製造するにあたり公知の層構成や設計を利用してよい。例えば、
図8、
図12及び
図15に示す配線基板を内層回路基板として用い、該内層回路基板上に絶縁層と導体層を交互に設けることにより、インダクタ構造が造り込まれた、多層配線を備える配線基板を製造することが可能である。
【0048】
本発明の配線基板を用いて、種々の態様の半導体装置を製造することができる。かかる配線基板を含む半導体装置は、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラおよびテレビ等)および乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶および航空機等)等に好適に用いることができる。
【0049】
[インダクタ機能を有する配線基板の製造方法]
本発明は、インダクタ機能を有する配線基板の新規な製造方法も提供する。
【0050】
本発明の方法は、
開口が形成された内層基板を準備すること、
該開口の内部に磁性体層を設けること、
該磁性体層に第1スルーホールを設けること、
該第1スルーホールの内部に絶縁体を設けること、
該絶縁体に第2スルーホールを設けること、及び
該磁性体層の両主面上に導体パターンを、該第2スルーホールの内部にスルーホール導体を、それらが接続してソレノイド状の導体パターンを形成するように設けること
を包含する。これにより、基板の主面方向において分断された領域に磁性体層を有し、基板の主面に垂直な方向からみて磁性体層の領域内部にソレノイド状の導体パターン(導体コイル)を備えるという先述の構造的特徴を有する配線基板を実現することができる。
【0051】
以下、
図8、
図12及び
図15に示す配線基板を製造する実施形態に即して、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0052】
一実施形態において、本発明の、インダクタ機能を有する配線基板の製造方法は、下記工程(A)~(G)を含む。
(A)第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通する開口が形成された内層基板を準備する工程、
(B)該開口の内部に磁性体ペーストを充填し、該磁性体ペーストを熱硬化させて磁性体層を設ける工程、
(C)磁性体層の第1及び第2の主面間を貫通する第1スルーホールを形成する工程、
(D)第1スルーホールの内部に絶縁体を設ける工程、
(E)絶縁体を貫通する第2スルーホールを形成する工程、
(F)第2スルーホールの内部にスルーホール導体を形成する工程、及び
(G)磁性体層の第1及び第2の主面上にそれぞれ第1導体パターン及び第2導体パターンを、第1導体パターンと第2導体パターンがスルーホール導体によりソレノイド状に接続されるように形成する工程。
【0053】
-工程(A)-
工程(A)において、第1の主面及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通する開口が形成された内層基板を準備する。
【0054】
第一に、内層基板を用意する(
図2)。内層基板20は、第1の主面20aと、第2の主面20bを有する。内層基板20は、配線基板を製造するに際して使用し得る公知の内層基板を用いてよく、絶縁基板であっても回路基板であってもよい。内層基板20の詳細は、先述のとおりである。なお、内層基板20が回路基板である場合、図示はないものの、その第1及び第2の主面の片方又は両方にパターン加工された回路配線(ビア配線、スルーホール配線等の層間配線、及び表面配線など)を備えることに留意されたい。
【0055】
第二に、内層基板に、その第1及び第2の主面間を貫通する開口を形成する(
図3)。
図3に模式的に示すように、内層基板20の所定の位置に、内層基板の第1及び第2の主面間を貫通する開口21を形成することができる。内層基板20が回路基板である場合、回路配線のないベース基板の領域に開口21を形成すればよい。開口21は、内層基板20の特性や開口21の寸法を考慮して、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ、エッチング媒体等を用いる公知の方法により形成することができる。なお、開口21の形状や寸法は、先述のとおりである。
【0056】
図3には、1つの開口21のみを示しているが、開口21は、互いに所定の間隔をあけて複数設けることができる。複数の開口21を設けることにより、配線基板に複数のインダクタ構造を造り込むことが可能である。
【0057】
-工程(B)-
工程(B)において、開口の内部に磁性体ペーストを充填し、該磁性体ペーストを熱硬化させて磁性体層を設ける。
【0058】
磁性体ペーストは、(a)磁性粉体と(b)バインダー樹脂を含み、必要に応じて、さらに(c)分散剤、(d)硬化促進剤、及び(e)その他の添加剤を含んでよい。
【0059】
(a)磁性粉体
磁性粉体としては、例えば、純鉄粉末;Mg-Zn系フェライト、Fe-Mn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Mg-Mn-Sr系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Ba-Zn系フェライト、Ba-Mg系フェライト、Ba-Ni系フェライト、Ba-Co系フェライト、Ba-Ni-Co系フェライト、Y系フェライト、酸化鉄粉(III)、四酸化三鉄などの酸化鉄粉;Fe-Si系合金粉末、Fe-Si-Al系合金粉末、Fe-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Si系合金粉末、Fe-Ni-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Al系合金粉末、Fe-Ni系合金粉末、Fe-Ni-Mo系合金粉末、Fe-Ni-Mo-Cu系合金粉末、Fe-Co系合金粉末、あるいはFe-Ni-Co系合金粉末などの鉄合金系金属粉;Co基アモルファスなどのアモルファス合金類、が挙げられる。
【0060】
中でも、磁性粉体としては、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。酸化鉄粉としては、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトを含むことが好ましい。また、鉄合金系金属粉としては、Si、Cr、Al、Ni、及びCoから選ばれる少なくとも1種を含む鉄合金系金属粉を含むことが好ましい。
【0061】
磁性粉体としては、市販の磁性粉体を用いることができる。市販の磁性粉体の具体例としては、パウダーテック社製「M05S」;山陽特殊製鋼社製「PST-S」;エプソンアトミックス社製「AW2-08」、「AW2-08PF20F」、「AW2-08PF10F」、「AW2-08PF3F」、「Fe-3.5Si-4.5CrPF20F」、「Fe-50NiPF20F」、「Fe-80Ni-4MoPF20F」;JFEケミカル社製「LD-M」、「LD-MH」、「KNI-106」、「KNI-106GSM」、「KNI-106GS」、「KNI-109」、「KNI-109GSM」、「KNI-109GS」;戸田工業社製「KNS-415」、「BSF-547」、「BSF-029」、「BSN-125」、「BSN-125」、「BSN-714」、「BSN-828」、「S-1281」、「S-1641」、「S-1651」、「S-1470」、「S-1511」、「S-2430」;日本重化学工業社製「JR09P2」;CIKナノテック社製「Nanotek」;キンセイマテック社製「JEMK-S」、「JEMK-H」:ALDRICH社製「Yttrium iron oxide」等が挙げられる。磁性粉体は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0062】
磁性粉体は、球状であることが好ましい。磁性粉体の長軸の長さを短軸の長さで除した値(アスペクト比)としては、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。一般に、磁性粉体は球状ではない扁平な形状であるほうが、比透磁率を向上させやすい。しかし、特に球状の磁性粉体を用いる方が、通常、磁気損失を低くでき、また好ましい粘度を有するペーストを得る観点から好ましい。
【0063】
磁性粉体の平均粒径は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。また、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。
【0064】
磁性粉体の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、磁性粉体の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、磁性粉体を超音波により水に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0065】
磁性粉体の比表面積は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.05m2/g以上、より好ましくは0.1m2/g以上、さらに好ましくは0.3m2/g以上である。また、好ましくは10m2/g以下、より好ましくは8m2/g以下、さらに好ましくは5m2/g以下である。磁性粉体の比表面積は、BET法によって測定できる。
【0066】
磁性粉体の含有量(体積%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、磁性体ペースト中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは40体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは60体積%以上である。該含有量(体積%)の上限は、特に限定されないが、好ましくは、95体積%以下、90体積%以下などとし得る。
【0067】
磁性粉体の含有量(質量%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。該含有量(質量%)の上限は、特に限定されないが、好ましくは、99質量%以下、98質量%以下などとし得る。
【0068】
(b)バインダー樹脂
バインダー樹脂は、磁性粉体を磁性体ペースト中に分散・結合させ、磁性体層を形成し得る樹脂であれば特に限定されない。
【0069】
バインダー樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等の熱硬化性樹脂;フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。バインダー樹脂としては、配線基板の絶縁層を形成する際に使用される熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、中でもエポキシ樹脂が好ましい。バインダー樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、及び酸無水物系樹脂のように、エポキシ樹脂と反応して磁性体ペーストを硬化させる成分をまとめて「硬化剤」ということがある。
【0070】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい磁性体層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0071】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0072】
バインダー樹脂としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.5~1:3がより好ましく、1:1~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、磁性体ペースト中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、磁性体ペースト中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。
【0073】
バインダー樹脂の含有量は、磁性粉体を磁性体ペースト中に分散・結合させ、磁性体層を形成し得る観点から、磁性体ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは25質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下である。
【0074】
(c)分散剤
磁性体ペーストは、さらに分散剤を含んでいてもよい。分散剤を用いることにより、磁性粉体の分散性を向上させることができる。
【0075】
分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等のリン酸エステル系分散剤;ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性分散剤;オルガノシロキサン系分散剤、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性分散剤等が挙げられる。これらの中でも、アニオン性分散剤が好ましい。分散剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0076】
分散剤の含有量は、磁性体ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.4質量%以上であり、上限は、好ましくは5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下である。
【0077】
(d)硬化促進剤
磁性体ペーストは、さらに硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤を用いることにより、バインダー樹脂の硬化を効果的に進行させて、硬化物の機械的強度を高めることができる。硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、適度な粘度を呈する磁性体ペーストを得る観点から、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化剤がより好ましい。硬化促進剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
硬化促進剤の含有量は、適度な粘度を呈する磁性体ペーストを得る観点から、磁性体ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上である。上限は、好ましくは3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下である。
【0079】
(e)その他の添加剤
磁性体ペーストは、さらに必要に応じて、その他の添加剤を含んでいてもよい。斯かるその他の添加剤としては、例えば、ホウ酸トリエチル等の硬化遅延剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、無機充填材(磁性粉体除く)、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0080】
内層基板の開口に十分に充填し得る(ひいては所望の磁性体層を形成し得る)観点から、磁性体ペーストの粘度(25℃)は、好ましくは20Pa・s以上、より好ましくは30Pa・s以上、さらに好ましくは40Pa・s以上であり、通常250Pa・s以下、好ましくは220Pa・s以下、より好ましくは200Pa・s以下である。粘度は、磁性体ペーストの温度を25±2℃に保ち、E型粘度計を用いて測定することができる。
【0081】
内層基板の開口への磁性体ペーストの充填は、例えば、スキージを介して開口へ磁性体ペーストを充填する方法、カートリッジを介して開口へ磁性体ペーストを充填する方法、マスク印刷して磁性体ペーストを充填する方法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。磁性体ペーストの充填は、ボイドレスで充填し得る観点から、減圧下、真空下で実施することが好適である。
【0082】
内層基板の開口に磁性体ペーストを充填後、磁性体ペーストを熱硬化させて磁性体層を形成する。磁性体ペーストの熱硬化条件は、磁性体ペーストの組成や種類によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上又は140℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下又は200℃以下である。硬化時間は、好ましくは5分間以上、より好ましくは10分間以上又は15分間以上であり、好ましくは120分間以下、より好ましくは100分間以下又は90分間以下である。
【0083】
磁性体ペーストを熱硬化させる前に、磁性体ペーストに対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、磁性体ペーストを熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上150℃未満(好ましくは60℃以上140℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下)の温度にて、磁性体ペーストを、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0084】
こうして内層基板20の開口21に磁性体層22が形成される(
図4)。なお、磁性体層22は、内層基板20から突出するように形成し、次いで、内層基板20から突出又は付着している余剰の磁性体層22を研磨により除去し、平坦化・平滑化することが好適である。これにより、
図4に模式的に示すように、基板の主面に垂直な方向(基板の厚さ方向)において、その第1及び第2の主面が、それぞれ、内層基板20の第1及び第2の主面に実質的に対応するように、内層基板20の開口21の内部に磁性体層22を形成することができる。このような研磨方法としては、例えば、バフ研磨、ベルト研磨、ロール研磨等が挙げられる。市販されている研磨装置としては石井表記社製のバフ研磨装置NT-700IM、セラミックロール研磨装置#1500等が挙げられる。
【0085】
-工程(C)-
工程(C)において、磁性体層の第1及び第2の主面間を貫通する第1スルーホールを形成する。
【0086】
所期の導体コイルを形成すべく、磁性体層22に複数の第1スルーホール23を形成する(
図5)。例えば、導体コイルの巻き数Nが1である場合、
図1に示すように、4つのスルーホールを設ければよく、巻き数Nが2である場合、
図16に示すように、6つのスルーホールを設ければよい。第1スルーホールの数は、導体コイルの所望の設計に応じて適宜決定してよい。なお、
図5に示す概略断面図は、
図1のX1-X1一点鎖線で示した位置で配線基板を切断した際の断面に対応しており、第1スルーホール23は2つのみ示されていることに留意されたい。
【0087】
第1スルーホール23は、磁性体層22の特性や第1スルーホール23の寸法を考慮して、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ、エッチング媒体等を用いる公知の方法により形成することができる。なお、第1スルーホール23の形状は、先述のとおりであり、第1スルーホールの寸法や第1スルーホール同士のピッチは、内層基板20の開口21の寸法(磁性体層22の寸法に対応)との関係において所望の導体コイルの設計を達成し得る限り特に限定されない。
【0088】
インダクタンス特性により一層優れる配線基板を実現する観点から、後述の工程(G)で形成するソレノイド状の導体パターン(導体コイル)が画定する筒構造を考慮し、その軸方向外側領域にも側面方向外側領域にも十分な磁性体が存在するように第1スルーホールの位置を決定することが好ましい。例えば、第1スルーホールの直径をD1としたとき、導体コイルの筒軸方向(
図1、
図16では図面の上下方向)において、第1スルーホールの中心位置と内層基板との距離が、0.7D1以上であることが好ましく、0.8D1以上、0.9D1以上又はD1以上であることがより好ましい。また、導体コイルの筒側面方向(導体コイルの筒軸方向に垂直な方向;
図1、
図16では図面の左右方向)において、第1スルーホールの中心位置と内層基板との距離が、0.7D1以上であることが好ましく、0.8D1以上、0.9D1以上又はD1以上であることがより好ましい。
【0089】
-工程(D)-
工程(D)において、第1スルーホールの内部に絶縁体を設ける。
【0090】
工程(D)は、第1スルーホールの内部に絶縁体を設けることができる限りにおいて特に限定されない。例えば、絶縁樹脂を含む絶縁穴埋めペーストを第1スルーホールに充填し、該絶縁穴埋めペーストを熱硬化させて絶縁体を設けてよい。
【0091】
絶縁穴埋めペーストは、第1スルーホールに充填可能であり且つ熱硬化させることで絶縁体を形成可能である限りその組成は特に限定されない。例えば、絶縁穴埋めペーストは、絶縁樹脂を含み、必要に応じて、さらに無機充填材(磁性粉体除く)、硬化促進剤、及びその他の添加剤を含んでよい。
【0092】
絶縁樹脂としては、先述の磁性体ペーストについて説明したバインダー樹脂を用いてよく、好適な種類や性状も該バインダー樹脂と同様である。絶縁樹脂の含有量は、絶縁穴埋めペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上である。該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下である。
【0093】
無機充填材(磁性粉体除く)としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等のシリカが特に好適である。またシリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
無機充填材の平均粒径は、十分な充填性を実現する観点から、0.01μm~4μmの範囲が好ましく、0.05μm~2μmの範囲がより好ましく、0.1μm~1μmの範囲がさらに好ましく、0.3μm~0.8μmの範囲がさらにより好ましい。無機充填材の平均粒径は、磁性粉体の平均粒径について説明した方法と同様にして測定することができる。
【0095】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。
【0096】
無機充填材の含有量は、絶縁穴埋めペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下である。
【0097】
硬化促進剤、及びその他の添加剤に関しては、磁性体ペーストに関連して説明したものと同じものを用いてよい。
【0098】
第1スルーホールへの絶縁穴埋めペーストの充填や絶縁穴埋めペーストの熱硬化は、工程(B)と同様の方法・条件により実施してよい。
【0099】
こうして磁性体層22の第1スルーホール23に絶縁体24が形成される(
図6)。なお、絶縁体24は、磁性体層22から突出するように形成し、次いで、磁性体層22から突出又は付着している余剰の絶縁体24を研磨により除去し、平坦化・平滑化することが好適である。これにより、
図6に模式的に示すように、基板の主面に垂直な方向(基板の厚さ方向)において、その第1及び第2の主面が、それぞれ、磁性体層22の第1及び第2の主面に実質的に対応するように、磁性体層22の第1スルーホール23の内部に絶縁体24を形成することができる。研磨は、工程(B)に関連して説明したものと同様の方法により実施してよい。
【0100】
-工程(E)-
工程(E)において、絶縁体を貫通する第2スルーホールを形成する。
【0101】
第2スルーホール25は、磁性体層22の第1スルーホール23に設けられた絶縁体24に形成される(
図7;
図5、
図6も参照)。したがって、第2スルーホール25の数は、通常、第1スルーホール23の数と同じとしてよい。例えば、導体コイルの巻き数Nが1である場合、
図1に示すように、4つの第1スルーホールを設け、その各々に絶縁体を形成し第2スルーホールを設ければよく、巻き数Nが2である場合、
図16に示すように、6つの第1スルーホールを設け、その各々に絶縁体を形成し第2スルーホールを設ければよい。なお、
図7に示す概略断面図は、
図1のX1-X1一点鎖線で示した位置で配線基板を切断した際の断面に対応しており、第2スルーホール25は2つのみ示されていることに留意されたい。
【0102】
第2スルーホール25は、絶縁体24の特性や第2スルーホール25の寸法を考慮して、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ、エッチング媒体等を用いる公知の方法により形成することができる。なお、第2スルーホール25の形状は、先述のとおりであり、また、第2スルーホールの寸法や第2スルーホール同士のピッチは、第1開口の寸法との関係において所望の導体コイルの設計を達成し得る限り特に限定されない。例えば、第1スルーホールの直径をD1としたとき、第2スルーホールの直径D2は、好ましくは0.8D1以下、より好ましくは0.7D1以下、0.6D1以下又は0.5D1以下であり、好ましくは0.2D1以上、より好ましくは0.3D1以上である。第2スルーホールの直径D2が斯かる範囲にあると、磁性体層とスルーホール導体との間に十分な厚さの絶縁体が存在し、インダクタンス特性の更なる向上に寄与する。また、第2スルーホール同士のピッチが、第1スルーホール同士のピッチと実質的に同じとなるように、第2スルーホールの位置を決定することが好適である。
【0103】
-工程(F)-
工程(F)において、第2スルーホールの内部にスルーホール導体を形成する。
【0104】
スルーホール導体の形成に先立ち、第2スルーホールの内部や基板の表面をデスミア処理することが好ましい。デスミア処理としては、配線基板の製造において層間導体を形成するに際して使用し得る公知のデスミア処理を実施してよく、乾式及び湿式のいずれのデスミア処理を実施してよい。乾式のデスミア処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式のデスミア処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0105】
スルーホール導体は、第2スルーホールをめっき処理することにより形成してよい。例えば、無電解めっきによりめっきシード層を形成し、次いで電解めっきによりめっきシード層上に金属層を形成してスルーホール導体を形成してよい。
【0106】
スルーホール導体は、後述する第1導体パターン及び第2導体パターンと共に導体コイルを形成し得る限り、その構造は限定されない。例えば、スルーホール導体は、スルーホール壁にめっき形成した中空円筒状の導体(コンフォーマル・スルーホール導体)であってよく、スルーホール内を導体で充填した円柱状の導体(フィルド・スルーホール導体)であってもよい。
【0107】
スルーホール導体としてコンフォーマル・スルーホール導体を形成する場合、中空円筒状の導体の内部は、絶縁体で充填してよい。絶縁体の充填は、工程(D)と同様に実施してよく、例えば、絶縁穴埋めペーストを充填し、該絶縁穴埋めペーストを熱硬化させて絶縁体を形成してよい。なお、絶縁体は、第2スルーホールから突出するように形成し、次いで、第2スルーホールから突出又は付着している余剰の絶縁体を研磨により除去し、平坦化・平滑化することが好適である。研磨は、工程(B)に関連して説明したものと同様の方法により実施してよい。
【0108】
スルーホール導体を構成する導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズおよびインジウムからなる群から選択される1種以上の金属が挙げられる。スルーホール導体は、単金属により構成されていても合金により構成されていてもよく、合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケルクロム合金、銅ニッケル合金および銅チタン合金)が挙げられる。
【0109】
-工程(G)-
工程(G)において、磁性体層の第1及び第2の主面上にそれぞれ第1導体パターン及び第2導体パターンを、第1導体パターンと第2導体パターンがスルーホール導体によりソレノイド状に接続されるように形成する。
【0110】
第1導体パターン及び第2導体パターンの形成に先立ち、基板の表面をデスミア処理することが好ましい。デスミア処理としては、配線基板の製造において回路導体を形成するに際して使用し得る公知のデスミア処理を実施してよく、乾式及び湿式のいずれのデスミア処理を実施してよい。デスミア処理の例は、工程(F)にて説明したとおりである。
【0111】
第1導体パターン及び第2導体パターンは、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等の公知の導体パターン(回路導体)形成技術を用いて形成してよい。
【0112】
例えば、サブトラクティブ法においては、めっき導体層の不要部分(非回路形成部)をエッチング等によって選択的に除去して、導体パターンを形成する。サブトラクティブ法による導体パターン形成は公知の手順に従って実施してよい。例えば、サブトラクティブ法による導体パターン形成は、i)基板の表面に無電解めっきによりめっきシード層を設けること、ii)電解めっきによりめっきシード層上に金属層を設け導体層を形成すること、iii)導体層の表面にエッチングレジスト(ドライフィルム)を設けること、iv)エッチングレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、v)露出した導体層をエッチングして除去すること、vi)エッチングレジストを除去すること、を含む方法により実施することができる。
【0113】
また、セミアディティブ法においては、めっきシード層の非回路形成部をめっきレジストにより保護し、電解めっきにより回路形成部に銅等の金属を厚付けした後、めっきレジストを除去し、回路形成部以外のめっきシード層をエッチングで除去して、導体パターンを形成する。セミアディティブ法による導体パターン形成は公知の手順に従って実施してよい。例えば、セミアディティブ法による導体パターン形成は、i)基板の表面に無電解めっきによりめっきシード層を設けること、ii)めっきシード層の表面にめっきレジスト(ドライフィルム)を設けること、iii)めっきレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iv)めっきレジストを介して電解めっきすること、v)めっきレジストを除去すること、vi)回路形成部以外のめっきシード層をエッチングして除去すること、を含む方法により実施することができる。
【0114】
第1導体パターンは、スルーホール導体及び第2導体パターンと共に導体コイルを形成し得る限り、その構造(パターン)は限定されない。例えば、第1導体パターンは、スルーホールランド28aと、該スルーホールランド同士を接続する接続パターン28bとからなってよい(
図1)。第2導体パターンも同様であり、例えば、スルーホールランド29aと、該スルーホールランド同士を接続する接続パターン29bとからなってよい(
図1;スルーホールランド29aは図示せず)。
【0115】
第1導体パターンと第2導体パターンは、スルーホール導体により接続され、ソレノイド状の導体パターン(導体コイル)を形成する。これにより、インダクタ機能が発現する。
【0116】
先述のとおり、第1導体パターンが「磁性体層の第1の主面上に」形成されているとは、第1導体パターンが磁性体層の第1の主面に接合して(直に)設けられている場合のほか、第1導体パターンが磁性体層の第1の主面上において他の層を介して設けられている場合も含む。第2導体パターンが「磁性体層の第2の主面上に」形成されているに関しても同様であり、第2導体パターンが磁性体層の第2の主面に接合して(直に)設けられている場合のほか、第2導体パターンが磁性体層の第2の主面上において他の層を介して設けられている場合も含む。
【0117】
第1導体パターン及び第2導体パターンが、磁性体層の第1及び第2の主面にそれぞれ接合して(直に)設けられるように、上記工程(A)乃至(G)を実施する実施形態(「第1実施形態」ともいう。)では、
図8に示す配線基板100を製造することができる。
図8に示す配線基板100では、第1導体パターン28及び第2導体パターン29が、磁性体層22の第1の主面及び第2の主面にそれぞれ接合して設けられている。
【0118】
他方、第1導体パターン及び第2導体パターンが、それぞれ磁性体層の第1及び第2の主面上において他の層を介して設けられるように、上記工程(A)乃至(G)を実施してもよい。以下、斯かる実施形態を「第2実施形態」ともいう。他の層としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、例えば、絶縁層が挙げられる。
【0119】
以下、第2実施形態につき、他の層として絶縁層を用いる好適な態様に即して説明する。
【0120】
第2実施形態において、本発明の配線基板の製造方法は、工程(D)の後に、
(D-1)内層基板の第1の主面及び磁性体層の第1の主面に接合して絶縁層を設ける工程、及び
(D-2)内層基板の第2の主面及び磁性体層の第2の主面に接合して絶縁層を設ける工程
の少なくとも一方をさらに含む。
【0121】
工程(D-1)及び/又は工程(D-2)は、基板の主面に接合して絶縁層を設けることができる限り特に限定されず、配線基板の絶縁層を形成するに際して使用し得る公知の方法により実施してよい。例えば、絶縁接着層を有する絶縁接着フィルムを用いて、絶縁接着層を基板の主面に接合して積層し、該絶縁接着層を熱硬化させて絶縁層を設けてよい。
【0122】
例えば、
図9に示すように、絶縁接着フィルムを用いて、工程(D-1)及び工程(D-2)の両方を実施してよい。
図9では、工程(D)で得られた基板(
図6に示す、磁性体層22の第1スルーホールに絶縁体24が設けられた基板)の両主面に、絶縁接着フィルム50を積層している。絶縁接着フィルム50は、支持体51と、該支持体に接合して設けられた絶縁接着層52とを含み、絶縁接着層52が基板の主面と接合するように、基板の両主面に積層される。
【0123】
支持体51としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0124】
プラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。
【0125】
金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0126】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。
【0127】
絶縁接着層52の組成は、特に限定されず、その硬化物が十分な絶縁性を有するものであればよい。絶縁接着層52は、例えば、熱硬化性樹脂を含み、必要に応じて、硬化剤、無機充填材、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、有機充填材、難燃剤等の成分をさらに含む樹脂組成物から構成されていてよい。熱硬化性樹脂、硬化剤、無機充填材、硬化促進剤、熱可塑性樹脂に関しては、磁性体ペーストや絶縁穴埋めペーストに関連して説明したものと同じものを用いてよい。配線基板の絶縁層を形成するための絶縁接着層に関しては、例えば特開2018-100421号公報、特開2017-171925号公報、特開2016-20480号公報など、多数の報告があり、本発明においては、所望する特性に応じて、これら公知の絶縁接着層を選択して用いてよい。
【0128】
絶縁接着層52の厚さは、配線基板の具体的設計にもよるが、薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下又は50μm以下である。絶縁接着層52の厚さの下限は、通常、5μm以上、10μm以上などとし得る。
【0129】
絶縁接着フィルム50と基板との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0130】
積層の後、絶縁接着層52を熱硬化させて絶縁層を形成する。絶縁接着層52の熱硬化の条件は、磁性体ペーストや絶縁穴埋めペーストの熱硬化の条件と同様としてよい。
【0131】
支持体51は、絶縁接着層の熱硬化の前に剥離してもよく、絶縁接着層の熱硬化の後に剥離してもよい。あるいはまた、支持体51として金属箔を用いる場合、該金属箔を剥離除去することなく該金属箔を使用して第1導体パターン及び第2導体パターンを形成してもよい。以下、支持体を剥離する実施形態と、支持体金属箔を使用して導体パターンを形成する実施形態とに分けて、説明する。
【0132】
-支持体を剥離する実施形態-
支持体51を剥離する場合、
図10に示す基板が得られる。
図10に示す基板では、内層基板20及び磁性体層22の第1及び第2の主面に接合して絶縁層34が設けられている。なお、
図10では、磁性体層22の第1スルーホールに設けられた絶縁体24(
図9)由来の絶縁部材と、絶縁樹脂層52の熱硬化により得られた絶縁層34とを区別せずに示しているが、絶縁体24の組成と絶縁層34の組成は、互いに同じであっても、相異なっていてもよい。
【0133】
絶縁層34を形成した後、工程(E)を実施すればよい。本実施形態では、工程(E)において、絶縁体24のみならず絶縁層34も貫通する第2スルーホール35を形成する(
図11;
図9、
図10も参照)。第2スルーホールの数や寸法、第2スルーホール同士のピッチは、先に説明したとおりである。
【0134】
第2スルーホールの形成後、工程(F)を実施することにより、第2スルーホール35の内部にスルーホール導体36を形成することができる。その後、工程(G)を実施することにより、第1導体パターン38、第2導体パターン39及びスルーホール導体36を接続してソレノイド状の導体パターン(導体コイル)を形成することができる。こうして
図12に示す配線基板200が得られる。配線基板200では、第1導体パターン38は、磁性体層22の第1の主面上において絶縁層34の表面に接合して設けられており、また、第2導体パターン39は、磁性体層22の第2の主面上において絶縁層34の表面に接合して設けられている。
【0135】
-支持体金属箔を使用して導体パターンを形成する実施形態-
支持体51として金属箔を用いる場合、該金属箔を剥離除去することなく該金属箔を使用して第1導体パターン及び第2導体パターンを形成してもよい。
【0136】
斯かる実施形態では、
図13に示す基板が得られる。
図13に示す基板では、内層基板20及び磁性体層22の第1及び第2の主面に接合して絶縁層34が設けられており、さらに絶縁層34に接合して支持体金属箔51が設けられている。なお、
図13においても、
図10と同様、磁性体層22の第1スルーホールに設けられた絶縁体24(
図9)由来の絶縁部材と、絶縁樹脂層52の熱硬化により得られた絶縁層34とを区別せずに示しているが、絶縁体24の組成と絶縁層34の組成は、互いに同じであっても、相異なっていてもよい。
【0137】
斯かる基板について工程(E)を実施すればよい。本実施形態では、工程(E)において、絶縁体24のみならず絶縁層34及び支持体金属箔51も貫通する第2スルーホール45を形成する(
図14;
図9、
図13も参照)。第2スルーホールの数や寸法、第2スルーホール同士のピッチは、先に説明したとおりである。
【0138】
第2スルーホールの形成後、工程(F)を実施することにより、第2スルーホール45の内部にスルーホール導体46を形成することができる。その後、工程(G)を実施することにより、第1導体パターン48、第2導体パターン49及びスルーホール導体46を接続してソレノイド状の導体パターン(導体コイル)を形成することができる。工程(G)において、第1導体パターン48及び第2導体パターン49は、支持体金属箔51を利用してサブトラクティブ法、セミアディティブ法(モディファイドセミアディティブ法)等の導体パターン形成技術を用いて形成してよい。例えば、サブトラクティブ法においては、支持体金属箔の不要部分(非回路形成部)をエッチング等によって選択的に除去して、導体パターンを形成する。例えば、サブトラクティブ法による導体パターン形成は、i)支持体金属箔の表面にエッチングレジスト(ドライフィルム)を設けること、ii)エッチングレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iii)露出した支持体金属箔をエッチングして除去すること、iv)エッチングレジストを除去すること、を含む方法により実施することができる。また、セミアディティブ法においては、支持体金属箔をめっきシード層として利用し、導体パターンを形成してよい。例えば、セミアディティブ法による導体パターン形成は、i)支持体金属箔(めっきシード層)の表面にめっきレジスト(ドライフィルム)を設けること、ii)めっきレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iii)めっきレジストを介して電解めっきすること、iv)めっきレジストを除去すること、v)回路形成部以外の支持体金属箔をエッチングして除去すること、を含む方法により実施することができる。
【0139】
こうして
図15に示す配線基板300が得られる。配線基板300では、第1導体パターン48は、磁性体層22の第1の主面上において絶縁層34の表面に接合して設けられており、また、第2導体パターン49は、磁性体層22の第2の主面上において絶縁層34の表面に接合して設けられている。
【0140】
本発明の配線基板の製造方法は、内層基板20の第1及び第2の主面の少なくとも一方の主面に接合して絶縁層34を設ける場合(
図12及び
図15)、その絶縁層の表面に接合して導体層を設ける工程をさらに含んでもよい。したがって一実施形態において、本発明の配線基板の製造方法は、内層基板の第1及び第2の主面の少なくとも一方の主面上において絶縁層の表面に導体層を設ける工程をさらに含む。
【0141】
本発明の配線基板の製造方法はまた、内層基板20(及び磁性体層22)の第1及び第2の主面の少なくとも一方の主面に、絶縁層と導体層(配線層)を交互に設けて、多層配線を形成する工程をさらに含んでもよい。絶縁層や配線層、多層配線の具体的設計に関しては、配線基板を製造するにあたり公知の層構成や設計を利用してよい。例えば、
図8、
図12及び
図15に示す配線基板を内層回路基板として用い、該内層回路基板上に絶縁層と導体層を交互に設けることにより、インダクタ構造が造り込まれた、多層配線を備える配線基板を製造することが可能である。
【実施例】
【0142】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0143】
[実施例1]
1-A.開口の形成された内層基板の準備
厚さ0.8mmの内層基板(「MCL-E-705GL」、銅箔エッチアウト品、日立化成社製)を用意した。この内層基板にドリルで1.4mm径の円形開口を形成した。開口は、ユニオンツール社製ドリル「ST」を用いて、回転数46000rpmの条件で形成した。
【0144】
1-B.磁性体層の形成
1.4mm径の開口に磁性体ペーストを真空印刷した。磁性体ペーストは、磁性粉体の含有量90質量%、粘度60Pa・sec(E型粘度計、25℃、5rpmの測定環境)、比透磁率7@100MHzである材料を用いた。真空印刷後、130℃で30分間加熱し、さらに145℃で30分間加熱することにより、磁性体ペーストを熱硬化させて開口の内部に磁性体層を設けた。次いで、内層基板及び磁性体層の表面を研磨し、平滑化した。研磨は、石井表記社製セラミック研磨ロール#1500を用いて実施した。
【0145】
1-C.第1スルーホールの形成
1.4mm径の磁性体層にドリルで0.3mm径の第1スルーホールを形成した。第1スルーホールは、
図1に示すように、4つ形成した(左右ピッチ0.6mm;上下ピッチ0.5mm)。第1スルーホールは、ユニオンツール社製ドリル「UV」を用いて、回転数60000rpmの条件で形成した。
【0146】
1-D.絶縁体の形成
0.3mm径の第1スルーホールの各々に絶縁穴埋めペースト(「IR-10F」、山栄化学社製)を真空印刷した。真空印刷後、110℃で30分間加熱し、さらに150℃で60分間加熱することにより、絶縁穴埋めペーストを熱硬化させて第1スルーホールの内部に絶縁体を得た。次いで、絶縁体の表面を研磨し、平滑化した。研磨は、石井表記社製セラミック研磨ロール#1500を用いて実施した。
【0147】
1-D’.絶縁層の形成
次いで、絶縁接着フィルム(「ABF-GX92R」、絶縁樹脂層厚30μm、支持体PET、味の素ファインテクノ社製)を、その絶縁樹脂層が基板の表面と接合するように、基板の両面に真空ラミネートにより積層した。真空ラミネート後、100℃で30分間加熱し、さらに180℃で30分間加熱することにより、絶縁樹脂層を熱硬化させて絶縁層を得た。
【0148】
1-E.第2スルーホールの形成
0.3mm径の絶縁体の各々にドリルで0.15mm径の第2スルーホールを形成した(n=4)。第2スルーホールは、その中心が第1スルーホール(0.3mm径の絶縁体)の中心と一致するように位置合わせした。第2スルーホールは、ユニオンツール社製ドリル「NEU」を用いて、回転数80000rpmの条件で形成した。
【0149】
1-F.スルーホール導体の形成
第2スルーホール内部及び基板表面をデスミア処理した後、無電解めっき(厚さ0.7μm)、電解めっき(厚さ22μm)を施し、第2スルーホールの各々にスルーホール導体(コンフォーマル型)を形成した。
スルーホール導体形成後の第2スルーホールの各々に絶縁穴埋めペースト(「IR-10F」、山栄化学社製)を真空印刷した。真空印刷後、110℃で30分間加熱し、さらに150℃で60分間加熱することにより、絶縁穴埋めペーストを熱硬化させて絶縁体を設けた。次いで、絶縁体の表面を研磨し、平滑化した。研磨は、石井表記社製セラミック研磨ロール#1500を用いて実施した。
【0150】
1-G.ソレノイド状の導体パターンの形成
基板表面をデスミア処理した後、無電解めっき(厚さ0.7μm)、電解めっき(厚さ22μm)を施し、導体層を形成した。該導体層上にドライフィルムを積層し、露光、現像し、ドライフィルムをパターニングした。次いで、塩化鉄エッチング液を用いて、サブトラクティブ法にて導体パターンを形成した後、ドライフィルムを剥離した。導体パターンは、
図1に示すように基板の両面に形成した。すなわち、基板の表面導体パターンとスルーホール導体とがソレノイド状に接続されるように形成して、インダクタ構造を配線基板に造り込んだ。
【0151】
[実施例2]
2-A.開口の形成された内層基板の準備
厚さ0.8mmの内層基板(「MCL-E-705GL」、銅箔エッチアウト品、日立化成社製)を用意した。この内層基板にドリルで1.4mm径の円形開口を形成した。開口は、ユニオンツール社製ドリル「ST」を用いて、回転数46000rpmの条件で形成した。
【0152】
2-B.磁性体層の形成
1.4mm径の開口に磁性体ペーストを真空印刷した。磁性体ペーストは、磁性粉体の含有量90質量%、粘度60Pa・sec(E型粘度計、25℃、5rpmの測定環境)、比透磁率7@100MHzである材料を用いた。真空印刷後、130℃で30分間加熱し、さらに145℃で30分間加熱することにより、磁性体ペーストを熱硬化させて開口の内部に磁性体層を設けた。次いで、内層基板及び磁性体層の表面を研磨し、平滑化した。研磨は、石井表記社製セラミック研磨ロール#1500を用いて実施した。
【0153】
2-C.第1スルーホールの形成
1.4mm径の磁性体層にドリルで0.3mm径の第1スルーホールを形成した。第1スルーホールは、
図1に示すように、4つ形成した(左右ピッチ0.6mm;上下ピッチ0.5mm)。第1スルーホールは、ユニオンツール社製ドリル「UV」を用いて、回転数60000rpmの条件で形成した。
【0154】
2-D.絶縁体の形成
0.3mm径の第1スルーホールの各々に絶縁穴埋めペースト(「IR-10F」、山栄化学社製)を真空印刷した。真空印刷後、110℃で30分間加熱し、さらに150℃で60分間加熱することにより、絶縁穴埋めペーストを熱硬化させて第1スルーホールの内部に絶縁体を得た。次いで、絶縁体の表面を研磨し、平滑化した。研磨は、石井表記社製セラミック研磨ロール#1500を用いて実施した。
【0155】
2-D’.絶縁層の形成
次いで、絶縁接着フィルム(「ABF-GX92-RCC」、絶縁樹脂層厚30μm、支持体銅箔、味の素ファインテクノ社製)を、その絶縁樹脂層が基板の表面と接合するように、基板の両面に真空ラミネートにより積層した。真空ラミネート後、100℃で30分間加熱し、さらに180℃で30分間加熱することにより、絶縁樹脂層を熱硬化させて絶縁層を得た。
【0156】
2-E.第2スルーホールの形成
0.3mm径の絶縁体の各々にドリルで0.15mm径の第2スルーホールを形成した(n=4)。第2スルーホールは、その中心が第1スルーホール(0.3mm径の絶縁体)の中心と一致するように位置合わせした。第2スルーホールは、ユニオンツール社製ドリル「NEU」を用いて、回転数80000rpmの条件で形成した。
【0157】
2-F.スルーホール導体の形成
第2スルーホール内部及び基板表面をデスミア処理した後、無電解めっき(厚さ0.7μm)、電解めっき(厚さ22μm)を施し、第2スルーホールの各々にスルーホール導体(コンフォーマル型)を形成した。
スルーホール導体形成後の第2スルーホールの各々に絶縁穴埋めペースト(「IR-10F」、山栄化学社製)を真空印刷した。真空印刷後、110℃で30分間加熱し、さらに150℃で60分間加熱することにより、絶縁穴埋めペーストを熱硬化させて絶縁体を設けた。次いで、絶縁体の表面を研磨し、平滑化した。研磨は、石井表記社製セラミック研磨ロール#1500を用いて実施した。
【0158】
2-G.ソレノイド状の導体パターンの形成
基板表面をデスミア処理した後、無電解めっき(厚さ0.7μm)、電解めっき(厚さ22μm)を施し、支持体銅箔と共に導体層を形成した。該導体層上にドライフィルムを積層し、露光、現像し、ドライフィルムをパターニングした。次いで、塩化鉄エッチング液を用いて、サブトラクティブ法にて導体パターンを形成した後、ドライフィルムを剥離した。導体パターンは、
図1に示すように基板の両面に形成した。すなわち、基板の表面導体パターンとスルーホール導体とがソレノイド状に接続されるように形成して、インダクタ構造を配線基板に造り込んだ。
【0159】
[実施例3]
3-A.開口の形成された内層基板の準備
厚さ0.8mmの内層基板(「MCL-E-705GL」、銅箔エッチアウト品、日立化成社製)を用意した。この内層基板にドリルで1.4mm径の円形開口を形成した。開口は、ユニオンツール社製ドリル「ST」を用いて、回転数46000rpmの条件で形成した。
【0160】
3-B.磁性体層の形成
1.4mm径の開口に磁性体ペーストを真空印刷した。磁性体ペーストは、磁性粉体の含有量90質量%、粘度60Pa・sec(E型粘度計、25℃、5rpmの測定環境)、比透磁率7@100MHzである材料を用いた。真空印刷後、130℃で30分間加熱し、さらに145℃で30分間加熱することにより、磁性体ペーストを熱硬化させて開口の内部に磁性体層を設けた。次いで、内層基板及び磁性体層の表面を研磨し、平滑化した。研磨は、石井表記社製セラミック研磨ロール#1500を用いて実施した。
【0161】
3-C.第1スルーホールの形成
1.4mm径の磁性体層にドリルで0.3mm径の第1スルーホールを形成した。第1スルーホールは、
図1に示すように、4つ形成した(左右ピッチ0.6mm;上下ピッチ0.5mm)。第1スルーホールは、ユニオンツール社製ドリル「UV」を用いて、回転数60000rpmの条件で形成した。
【0162】
3-D.絶縁体の形成
0.3mm径の第1スルーホールの各々に絶縁穴埋めペースト(「IR-10F」、山栄化学社製)を真空印刷した。真空印刷後、110℃で30分間加熱し、さらに150℃で60分間加熱することにより、絶縁穴埋めペーストを熱硬化させて第1スルーホールの内部に絶縁体を得た。次いで、絶縁体の表面を研磨し、平滑化した。研磨は、石井表記社製セラミック研磨ロール#1500を用いて実施した。
【0163】
3-E.第2スルーホールの形成
0.3mm径の絶縁体の各々にドリルで0.15mm径の第2スルーホールを形成した(n=4)。第2スルーホールは、その中心が第1スルーホール(0.3mm径の絶縁体)の中心と一致するように位置合わせした。第2スルーホールは、ユニオンツール社製ドリル「NEU」を用いて、回転数80000rpmの条件で形成した。
【0164】
3-F.スルーホール導体の形成
第2スルーホール内部及び基板表面をデスミア処理した後、無電解めっき(厚さ0.7μm)、電解めっき(厚さ22μm)を施し、第2スルーホールの各々にスルーホール導体(コンフォーマル型)を形成した。
スルーホール導体形成後の第2スルーホールの各々に絶縁穴埋めペースト(「IR-10F」、山栄化学社製)を真空印刷した。真空印刷後、110℃で30分間加熱し、さらに150℃で60分間加熱することにより、絶縁穴埋めペーストを熱硬化させて絶縁体を設けた。次いで、絶縁体の表面を研磨し、平滑化した。研磨は、石井表記社製セラミック研磨ロール#1500を用いて実施した。
【0165】
3-G.ソレノイド状の導体パターンの形成
基板表面をデスミア処理した後、無電解めっき(厚さ0.7μm)、電解めっき(厚さ22μm)を施し、導体層を形成した。該導体層上にドライフィルムを積層し、露光、現像し、ドライフィルムをパターニングした。次いで、塩化鉄エッチング液を用いて、サブトラクティブ法にて導体パターンを形成した後、ドライフィルムを剥離した。導体パターンは、
図1に示すように基板の両面に形成した。すなわち、基板の表面導体パターンとスルーホール導体とがソレノイド状に接続されるように形成して、インダクタ構造を配線基板に造り込んだ。
【符号の説明】
【0166】
10、10’:インダクタ構造部
20:内層基板
20a:第1の主面
20b:第2の主面
21:開口(第1開口)
22:磁性体層
23:第1スルーホール(第2開口)
24:絶縁体
25、35、45:第2スルーホール(第3開口)
26、36、46:スルーホール導体
27、37、47:絶縁体(コンフォーマル・スルーホール導体の内部)
28、38、48:第1導体パターン
28a:スルーホールランド
28b:接続パターン
29、39、49:第2導体パターン
29a:スルーホールランド(図示せず)
29b:接続パターン
34:絶縁層
50:絶縁接着フィルム
51:支持体
52:絶縁樹脂層
100、200、300:配線基板