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  • 特許-加飾成型用粘着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】加飾成型用粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/24 20180101AFI20220802BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220802BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20220802BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20220802BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220802BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220802BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J7/38
C09J133/04
C09J133/10
C09J11/08
B32B27/00 M
B32B27/30 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019512539
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2018015155
(87)【国際公開番号】W WO2018190355
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2020-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2017080094
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴迪
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
(72)【発明者】
【氏名】塩野 順
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213894(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199787(WO,A1)
【文献】特開平08-027450(JP,A)
【文献】特開2007-186577(JP,A)
【文献】特開2013-231901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材及び粘着剤層が積層された積層体を備え、
前記基材はポリメタクリル酸メチルを含有し、
前記粘着剤層は、ポリメタクリル酸メチルを含む粘着付与剤を含有し、
前記粘着付与剤に含まれるポリメタクリル酸メチルの含有割合は、粘着付与剤の全質量に対して90質量%以上であり、
前記粘着剤層は、ポリメタクリル酸メチル以外のベースポリマー(A)の架橋構造体を含み、
前記ベースポリマー(A)の構成単位は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)及び架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)を含有する、加飾成型用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着付与剤に含まれるポリメタクリル酸メチルの重量平均分子量(Mw)が500~50000である、請求項1に記載の加飾成型用粘着シート。
【請求項3】
前記基材の粘着剤層側と逆の面の水接触角が40°~95°である、請求項1又は2に記載の加飾成型用粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層の前記基材側と逆の面には、セパレータが貼り合わされている、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾成型用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾成型に用いることができる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元表面加飾成型(3D加飾成型)は、三次元形状の部材に、加飾フィルム等のフィルムを貼り合せることで、基材の表面を加飾させる成型技術であり、近年、電子機材等に対して広く利用されている。3D加飾成型では、例えば、粘着シートが貼り合わされた加飾フィルム(3D加飾用粘着シート)を、球面形状又は凹凸形状等の曲面を有する部材に貼り合わせて、140℃程度に加熱しながら両者を接着する。この場合、R(曲面の度合い)の大きい曲面部等に対しては、3D加飾用粘着シート自体に高い絞り性が要求されることから、粘着シートを形成するための材料の選定も重要となる。
【0003】
3D加飾用粘着シートは、主に、基材と粘着剤層とで形成されており、従来はポリ塩化ビニル(PVC)が基材として用いられていた。最近では、環境への負担を低減することを考慮して、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)基材が使用されることが多い。しかし、PE又はPP基材は、透明性及び耐候性に劣り、粘着剤との密着性が悪かったことから、この点を改良すべく、柔軟性及び透明性に優れるフッ化ビニリデン樹脂を3D加飾用粘着シートの基材として使用することが提案されている(特許文献1等を参照)。また、PE又はPP基材と粘着剤との密着性を改善するために、イソシアネート架橋型の粘着剤にモノアルコールを配合して形成した粘着シートも提案されている(特許文献2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-236998号公報
【文献】特開2016-180019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術のように、フッ化ビニリデン樹脂を用いる方法では、フッ化ビニリデンが燃焼したときに有毒ガスが発生する問題があり、安全性の観点で課題を残すものであった。また、特許文献2等に開示の技術であっても、基材にPP又はPEを用いる以上は、透明性や耐候性が劣るという課題は解決できていなかった。特に、3D加飾成型では、三次元形状の部材の曲面部に密着する粘着剤層に対しても大きな応力及び負荷がかかるので、十分な粘着性がない場合は、粘着シートの浮きが発生するという問題もある。また、粘着シートの基材がPETのような材料である場合は、粘着シートの絞り性が十分でないため、粘着シートに皺及び割れが発生する問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、密着性に優れ、貼り合わせ後に皺及び割れが発生しにくく、しかも、浮き及び剥がれも起こりにくい加飾成型用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリメタクリル酸メチルを含む基材と、ポリメタクリル酸メチルを含む粘着付与剤を含有する粘着剤層とを用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の発明を包含する。
項1.基材及び粘着剤層が積層された積層体を備え、
前記基材はポリメタクリル酸メチルを含有し、
前記粘着剤層は、ポリメタクリル酸メチルを含む粘着付与剤を含有する、加飾成型用粘着シート。
項2.前記粘着付与剤に含まれるポリメタクリル酸メチルの重量平均分子量(Mw)が500~50000である、項1に記載の加飾成型用粘着シート。
項3.前記粘着剤層は、ポリメタクリル酸メチル以外のベースポリマー(A)の架橋構造体を含み、
前記ベースポリマー(A)の構成単位は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)及び架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)を含有する、項1又は2に記載の加飾成型用粘着シート。
項4.前記基材の粘着剤層側と逆の面の水接触角が40°~95°である、項1~3のいずれか1項に記載の加飾成型用粘着シート。
項5.前記粘着剤層の前記基材側と逆の面には、セパレータが貼り合わされている、項1~4のいずれか1項に記載の加飾成型用粘着シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加飾成型用粘着シートは、密着性に優れ、貼り合わせ後に皺及び割れが発生しにくく、しかも、浮き及び剥がれも起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)~(d)はそれぞれ本発明に係る加飾成型用粘着シートの実施形態の一例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
本発明の加飾成型用粘着シートは、基材及び粘着剤層が積層された積層体を備え、前記基材はポリメタクリル酸メチルを含有し、前記粘着剤層は、ポリメタクリル酸メチルを含む粘着付与剤を含有する。なお、以下、本発明の加飾成型用粘着シートを「粘着シート」と略記することがある。
【0013】
基材は、粘着剤層を支持するための部材である。
【0014】
なお、以下においては、基材に含まれるポリメタクリル酸メチル(PMMA)と、粘着付与剤に含まれるPMMAとを区別するために、基材に含まれるPMMAを「PMMA1」、粘着付与剤に含まれるPMMAを「PMMA2」と表記する。
【0015】
図1(a)~(d)は、本発明の加飾成型用粘着シートの基材及び粘着剤層の積層構造の一例を示す断面図である。図1(a)の形態のように、基材は、3D加飾性を損なわない限り、PMMA1のみで構成されてもよいし、PMMA1と他の材料との共重合体もしくはブレンドであってもよい。該共重合体もしくはブレンド基材における他の材料としては、フィルム基材として使用される公知の材料を広く使用でき、例えば、PMMA以外のアクリル樹脂、ポリスチレン、PE、PP、PET、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリカーボネート(PC)、スチレンゴム、イソプレンゴム、イソブチレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、アクリルゴム等が例示される。また、図1(b)に示すように、基材は、PMMA1と他の材料との積層基材であってもよい。該積層基材における他の材料としては、フィルムの基材として使用されている公知の材料を広く使用でき、例えば、PMMA以外のアクリル樹脂、ポリスチレン、PE、PP、PET、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリカーボネート(PC)等が例示される。
【0016】
PMMA1と他の材料とを共重合もしくはブレンドする場合、PMMA1の含有量は、基材の全質量に対して、70質量%以上であり、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0017】
基材がPMMA1と他の材料との積層基材である場合、PMMA1と他の材料との厚み比は、積層基材全体に対しPMMA1が10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。なお、積層基材に用いられるPMMA1は、PMMA1のみで構成されてもよいし、PMMA1と他の材料との共重合体であってもよい。
【0018】
基材は、粘着剤層が貼合される面とは逆側の面、つまり加飾成型される面の水接触角が40°~95°、好ましくは50°~90°である。水接触角が前記範囲内であれば、優れた印刷適性を付与できる。基材の水接触角を上記範囲にする方法としては、上記水接触角の範囲に入る所望の樹脂を積層する方法、上記接触角の範囲に入る所望の易接着層を設ける方法、上記接触角の範囲に入るようにコロナ照射をする方法等があげられる。
【0019】
図1(c)は、単層の基材(PMMA1)に易接着層が設けられた場合の加飾成型用粘着シートであり、この場合、易接着層は、基材の粘着剤層側とは逆側の面に設けられる。図1(d)は、基材が前記積層基材である場合の加飾成型用粘着シートであり、この場合も易接着層は、積層基材の粘着剤層側とは逆側の面に設けられる。易接着層の種類は特に限定されず、例えば、粘着シートとして適用され得る公知の易接着層や印刷適性を付与するための易接着層を広く適用することができる。
【0020】
基材は、例えば、PMMA1を含む原料を成型することで形成することができる。あるいは、市販のPMMAフィルムを基材として使用することができる。PMMA1を含む原料を用いて基材を成型する場合、その成型方法は特に限定されず、公知の成型方法を採用することができる。PMMA1を含む原料の種類も特に限定されない。PMMA1を含む原料は、PMMAのみであってもよいし、あるいは、PMMAに加えて前述の他の材料を含むことができる。
【0021】
PMMA1の重量平均分子量(Mw)は特に限定されず、例えば、一般のPMMAフィルムと同様とすることができる。
【0022】
基材の厚みは特に限定されず、例えば、5~100μmである。
【0023】
基材は、シート状又はフィルム状に形成される。基材の表面は平坦とすることができ、また、凹凸を有することもできる。基材は、単層構造及び多層構造のいずれの構造を有していてもよい。
【0024】
粘着剤層は、基材上に形成される層であり、粘着性を発揮させるための層である。粘着剤層は、基材上に直接形成することができ、また、本発明の効果が阻害されない限りは、基材と粘着剤層との間に他の層を介在させることができる。
【0025】
粘着剤層は後記粘着剤組成物を用いて形成することができる。該粘着剤組成物は、PMMA2を含む粘着付与剤を含有する。本発明でいう粘着付与剤は、粘着剤層に対して粘着性を付与するための助剤として作用することができる成分であり、一般的にタッキファイヤと称される成分である。粘着剤層において、粘着付与剤の含有量は、後記ベースポリマー(A)100質量部あたり、1~35質量部、好ましくは5~30質量部、さらに好ましくは10~25質量部とすることができる。この場合、粘着剤層に対して優れた粘着性を付与でき、また、3D加飾成型させる部材に粘着シートを貼り合わせ後においても皺及び割れがより発生しにくく、しかも、浮き及び剥がれもより起こりにくい。
【0026】
粘着付与剤に含まれるPMMA2の含有割合は、粘着付与剤の全質量に対して、50質量%以上であり、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。粘着付与剤に含まれるPMMA2の含有割合は、100質量%とすることができる。
【0027】
粘着付与剤に含まれるポリメタクリル酸メチル(PMMA2)の種類は、ベースポリマーとの相溶性を阻害しない限り、特に限定されず、例えば、公知のPMMAを広く採用することができる。PMMA2は、例えば、市販されている材料を使用することができ、あるいは、公知の重合法、例えば、ラジカル重合によって製造することもできる。
【0028】
PMMA2は、ポリメタクリル酸メチルのホモポリマーであってもよいし、あるいは、粘着付与剤としての効果が阻害されない限りは、メタクリル酸メチルと他のアクリル単量体との共重合体であってもよい。他のアクリル単量体としては、例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)等のN-アルキル置換アミノ基含有メタクリル酸エステルを挙げることができる。
【0029】
PMMA2がメタクリル酸メチルと他のアクリル単量体との共重合体である場合、メタクリル酸メチルの含有量は、メタクリル酸メチル及び他のアクリル単量体の全質量に対して、70質量%以上とすることができ、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0030】
PMMA2の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば、500~50000とすることができる。この場合、粘着シートの粘着性能がさらに優れ、また、粘着シートを3D加飾成型させる部材に貼り合わせ後でも、皺及び割れがより発生しにくく、しかも、浮き及び剥がれもより起こりにくい。
【0031】
粘着付与剤は、本発明の効果が阻害されない限りは、PMMA2以外の他の成分を含むことができる。他の成分としては、粘着用のシートに適用されている公知の粘着付与樹脂等を広く使用でき、例えば、スチレン樹脂、テルペン樹脂、ロジンエステル等が挙げられる。
【0032】
粘着剤層には、粘着付与剤以外の成分が含まれる。例えば、粘着剤層には、粘着付与剤以外に、粘着剤層のマトリックス成分となるポリマーが含まれ得る。
【0033】
具体的に粘着剤層は、ポリメタクリル酸メチル以外のベースポリマー(A)の架橋構造体を含むことができる。前記ベースポリマー(A)の構成単位は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)及び架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)を含有することができる。ベースポリマー(A)の架橋構造は、粘着剤層のマトリックス成分となり得る。
【0034】
ベースポリマー(A)の架橋構造体は、例えば、PMMA以外のベースポリマー(A)と、後記する架橋剤(B)との反応で形成される。架橋剤(B)は、ベースポリマー(A)と反応することができる架橋剤である。
【0035】
ここでいう「PMMA以外のベースポリマー(A)」とは、ベースポリマー(A)がPMMAホモポリマーでないことを意味する。つまり、ベースポリマー(A)が共重合体である場合は、共重合体の構成成分としてPMMA成分を含むことができる。
【0036】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体が重合された場合に形成される繰り返し構造単位を示し、単量体そのものを示すわけではない。同様に、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)とは、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体が重合された場合に形成される繰り返し構造単位を示し、単量体そのものを示すわけではない。
【0037】
なお、本明細書では「(メタ)アクリル」とは「アクリルもしくはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリ」は、「アクリもしくはメタクリ」を意味する。例えば、「(メタ)アクリル酸」との記載は「アクリル酸もしくはメタクリル酸」との記載と同義である。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体で形成することができる。ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、架橋剤(B)と反応する官能基を有していない単量体である。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類は特に限定されず、例えば、公知の(メタ)アクリル酸エステル単量体を使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部位の炭素数が1~20である炭化水素基である化合物を挙げることができる。炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状及び籠状のいずれの構造であってもよい。また、炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれの基であってもよい。さらに炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル単量体のより詳しい具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル等を挙げることができる。
【0041】
ベースポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)を1種のみ含むことができるし、あるいは、2種以上を含むことができる。
【0042】
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)は、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体で形成することができる。ここでいう架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体は、架橋剤(B)と反応する官能基を有する(メタ)アクリル単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体とは異なる単量体である。
【0043】
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体における架橋性官能基としては、架橋剤(B)と反応する官能基である限りは、特に限定されず、架橋剤(B)の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、架橋性官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、スルホ基、スルホン酸、エポキシ基、クロロ基、フルオロ基等を挙げることができる。
【0044】
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体は、1分子中に架橋性官能基を一つ有することができ、また、架橋性官能基を二つ以上有することもできる。架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体は、1分子中に架橋性官能基を二つ以上有する場合、架橋性官能基は同種及び異種のいずれであってもよい。
【0045】
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体のより詳しい具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、(メタ)アクリル酸カルボキシルエチル、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0046】
前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0047】
ベースポリマー(A)は、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)を1種のみ含むことができるし、あるいは、2種以上を含むことができる。
【0048】
なお、以下では(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)を単に「単量体単位(a1)」と略記する。また、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)を単に「単量体単位(a2)」と略記する。
【0049】
ベースポリマー(A)は、本発明の効果が阻害されない限りは、単量体単位(a1)及び単量体単位(a2)以外のその他単量体単位を含有することができる。
【0050】
ベースポリマー(A)を形成する全構成単位あたり、単量体単位(a1)の含有割合を50~99.9質量%とすることができ、好ましくは60~99.5質量%、さらに好ましくは70~99.0質量%とすることができる。
【0051】
ベースポリマー(A)は、単量体単位(a1)、単量体単位(a2)及び前記その他単量体単位がランダムに配列したいわゆるランダム共重合体とすることができる。あるいは、ベースポリマー(A)は、ブロックポリマー等、その他の構造を有することもできる。
【0052】
架橋剤(B)は、ベースポリマー(A)を架橋させるための成分である。特に、架橋剤(B)は、ベースポリマー(A)中の単量体単位(a2)の架橋性官能基と反応することができる成分である。
【0053】
架橋剤(B)は、単量体単位(a2)の架橋性官能基と反応することができる限りは、その種類は特に限定されず、公知の架橋剤を広く用いることができる。
【0054】
架橋剤(B)としては、例えば、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤等を挙げることができる。
【0055】
イソシアネート架橋剤の種類は特に限定されず、公知の化合物を広く使用できる。このようなイソシアネート架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;が例示される。イソシアネート架橋剤は、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。また、上述したジイソシアネートから得られるアダクト体、ヌレート体、ビュレット体等の3官能の誘導体をイソシアネート架橋剤として用いることがより好ましい。
【0056】
エポキシ架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサノン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0057】
中でも4官能であるN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサノンは少量の添加量で架橋効果が発現するため好ましい。
【0058】
粘着剤層に含まれるベースポリマー(A)の架橋構造体、及び、粘着付与剤として含まれるPMMA2の含有量は特に限定されない。例えば、粘着剤層中の前記架橋構造体100質量部あたり、粘着付与剤として含まれるPMMA2を1~35質量部、好ましくは5~30質量部、さらに好ましくは10~25質量部である。この場合、粘着剤層に対して優れた粘着性を付与でき、また、3D加飾成型させる部材に粘着シートを貼り合わせ後においても皺及び割れがより発生しにくく、しかも、浮き及び剥がれもより起こりにくい。
【0059】
粘着剤層の厚みは5~50μm、好ましくは8~45μm、より好ましくは10~35μmである。
【0060】
粘着剤層は、基材の全面に形成され得るが、本発明の効果が阻害されない程度であれば、基材の全面に形成されていなくてもよい。
【0061】
粘着剤層の形成方法は特に限定されない。例えば、粘着剤組成物を使用して、粘着剤層を形成する工程(以下、「粘着剤層形成工程」という)を具備する方法によって形成することができる。粘着剤層形成工程では、例えば、粘着剤組成物を基材上に塗布し、硬化させることで、基材上に粘着剤層が形成される。これにより、基材及び粘着剤層で形成される積層体が得られる。
【0062】
粘着剤組成物を使用して粘着剤層を形成する場合は、粘着剤組成物は、PMMA2を含む粘着付与剤を必須成分として含む。粘着剤組成物としては、例えば、前記ベースポリマー(A)と、前記架橋剤(B)と、前記粘着付与剤とを含有する材料を使用することができる。
【0063】
ベースポリマー(A)は、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体及び前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体を含む原料の重合反応により得ることができる。この原料は、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体の総量に対して、(メタ)アクリル酸エステル単量体(すなわち、単量体単位(a1)を形成するための単量体)を50~99.9質量%、好ましくは60~99.5質量%、さらに好ましくは70~99.0質量%含有することができる。
【0064】
前記重合反応では、例えば、公知の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム、光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)シリーズ等)等が挙げられる。重合開始剤の使用量も限定されず、公知の重合方法の条件と同様とすることができる。
【0065】
前記重合反応では、必要に応じて溶媒を使用することができる。溶媒の種類は特に限定されず、例えば、重合で使用されている公知の有機溶媒を広く使用することができる。例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族化合物;を挙げることができる。前記重合反応で使用する溶媒の使用量は特に限定されない。
【0066】
前記重合反応は、公知の重合方法によって得ることができる。この重合方法としては、例えば、溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合等を採用できる。
【0067】
前記重合反応では、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下で重合反応を行うことができる。
【0068】
重合反応の反応時間及び反応温度も限定されず、使用する単量体の種類及び使用量に応じて、適宜設定することができる。例えば、20~100℃、1~24時間の条件で重合反応を行うことができる。
【0069】
粘着剤組成物の調製方法は特に限定されず、前記ベースポリマー(A)と、前記架橋剤(B)と、前記粘着付与剤とを所定の配合割合で混合することで調製することができる。混合方法も特に限定されず、例えば、市販の混合機を使用できる。
【0070】
粘着剤組成物は、ベースポリマー(A)100質量部あたり、前記架橋剤(B)を0.001~5質量部、好ましくは0.005~3質量部、より好ましくは0.01~1質量部含有することができる。
【0071】
粘着剤組成物は、前記ベースポリマー(A)、前記架橋剤(B)、前記粘着付与剤の他、必要に応じてその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、架橋促進剤、帯電防止剤、光安定(吸収)剤、分散安定剤、防腐剤、粘度調整剤、金属腐食防止剤、溶剤等が挙げられる。
【0072】
粘着剤層形成工程において、粘着剤組成物を基材上に塗布する方法は特に限定されず、例えば、公知の塗布方法を広く採用することができる。粘着剤組成物を塗布し形成される塗膜の厚みも限定されず、目的の粘着シートの粘着剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。
【0073】
粘着剤層形成工程において、粘着剤組成物を基材上に塗布した後、粘着剤組成物の塗膜を硬化することで、粘着剤層が形成される。硬化方法は特に限定されず、例えば、従来から行われている粘着剤組成物の硬化方法を広く採用することができる。例えば、塗膜を加熱して硬化する方法を挙げることができる。加熱する場合の温度は、例えば、50~200℃、好ましくは80℃~150℃とすることができる。加熱時間は溶剤が揮発し、粘着剤層の残留溶剤濃度が1000ppm以下になるように設定すればよく、粘着剤組成物の濃度、所望する粘着剤層の厚み等から上記温度範囲で1~30分程度の時間内で適宜設定することが好ましい。
【0074】
前記硬化によって、粘着剤組成物中の架橋剤(B)が、ベースポリマー(A)中の単量体単位(a2)の架橋性官能基と反応し、ベースポリマー(A)の架橋反応が進行する。これにより、ベースポリマー(A)の架橋構造体を含む粘着剤層が形成される。この粘着剤層には、粘着付与剤としてのPMMA2も含まれる。
【0075】
前記塗膜を硬化した後は、必要に応じて、硬化物を所定の環境下で熟成処理を行うことができる。
【0076】
以上の粘着剤層形成工程によって、粘着剤層が形成される。粘着剤層形成工程において、粘着剤層を基材上に形成することにより、粘着剤層形成工程によって、粘着シートに含まれる積層体を直接得ることができる。
【0077】
粘着シートはセパレータを備えることもできる。
【0078】
例えば、粘着シートは、前記粘着剤層の前記基材側と逆の面には、セパレータが貼り合わされていてもよい。このセパレータは、粘着シートの粘着剤層を保護するための部材である。
【0079】
セパレータの種類は特に限定されず、従来から粘着シートのセパレータとして使用されている公知のフィルムを広く採用できる。例えば、公知の剥離処理されたポリエステルフィルムを粘着シートのセパレータとして採用できる。
【0080】
粘着シートがセパレータを備える場合、基材、粘着剤層及びセパレータがこの順に積層することで粘着シートが形成される。
【0081】
粘着シートは、基材及び粘着剤層(つまり、積層体)のみで形成されていてもよいし、積層体と前記セパレータからなる層のみで形成されていてもよいし、あるいは、積層体と前記セパレータ以外の層をさらに有することもできる。
【0082】
粘着シートの製造方法は特に限定されない。例えば、前記粘着剤層形成工程を備える方法を採用することができる。この粘着剤層形成工程によって積層体が形成され、これを粘着シートとして得ることができる。粘着剤層形成工程の条件は前記と同様であり、使用する粘着剤組成物も前記のとおりである。
【0083】
また、粘着シートがセパレータを備える場合は、例えば、あらかじめ積層体を粘着剤層形成工程によって形成し、この積層体の粘着剤層側の面とセパレータとを貼り合わせることで、セパレータで粘着剤層が保護された粘着シートを得ることができる。積層体の粘着剤層側の面とセパレータとを張り合わせる方法は特に限定されず、例えば公知の方法を広く採用することができる。
【0084】
また、別の態様として、粘着シートがセパレータを備える場合は、まずセパレータに、前記粘着剤層形成工程によって粘着剤層を形成し、次いで、該粘着剤層上に基材を貼り合わせることで、セパレータで粘着剤層が保護された粘着シートを得ることができる。粘着剤層と基材とを張り合わせる方法は特に限定されず、例えば公知の方法を広く採用することができる。
【0085】
本発明の粘着シートは、三次元表面加飾成型(3D加飾成型)のための粘着シートとして使用することができ、例えば、本発明の粘着シートは、基材面(粘着剤層と逆側の面)に加飾印刷をして、加飾フィルムとして使用することができる。
【0086】
加飾印刷の種類は特に限定されず、公知の印刷方法を採用できる。例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、塗装、真空製膜、めっき、加飾フィルムの転写及び貼合、インサート成型金属柄等に印刷されたフィルムと、黒色等のカラー印刷されたフィルムとが積層された意匠フィルム等が挙げられる。
【0087】
本発明の粘着シートを備える加飾フィルムは、3D加飾成型用のフィルムとして使用できる。加飾フィルムの粘着剤層側の面が、3D加飾成型させる三次元形状の部材に貼り合わされ、これにより、三次元形状部材に意匠性が付与される。粘着シートがセパレータを備える場合は、セパレータを粘着剤層から剥離して粘着剤層を露出させ、この粘着剤層の面を前記三次元形状の部材に貼り合わせる。
【0088】
本発明の粘着シートは、基材にPMMAが含まれることから、絞り性に優れるため、三次元形状の部材に対して密着性が優れ、貼り合わせ後に皺及び割れも発生しにくく、その上、印刷適性にも優れる。
【0089】
しかも、本発明の粘着シートは、粘着剤層中にも粘着付与剤としてPMMA(PMMA2)が含まれることから、粘着剤層と基材との親和性も高く、また、粘着剤層全体のガラス転移温度も高く成り得る。これにより、高温であっても高い粘着性を維持することが可能となり、本発明の粘着シートを備える加飾フィルムで3D加飾成型をしたとしても、粘着シートの浮き及び剥がれの発生も起こりにくく、高い信頼性を有する。
【実施例
【0090】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。また、特に断りが無い場合、溶液又は分散液の配合部数は固形配合量(質量部)を意味する。
【0091】
(製造例1)
攪拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル80質量部及びアクリル酸メチル17質量部からなる単量体(a1)と、アクリル酸3質量部からなる単量体(a2)と、酢酸エチル(EtAc)150質量部と、メチルエチルケトン(MEK)20質量部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.05質量部加え、窒素雰囲気下、70℃で8時間重合反応を行った。反応終了後、固形分濃度が25質量%になるよう酢酸エチル(EtAc)にて希釈し、ベースポリマー(A)の溶液を得た。
【0092】
一方、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応容器に、トルエン100質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90℃に昇温した。次いで、メタクリル酸メチル(MMA)99質量部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)1質量部、アゾビスイソブチロニトリル1質量部を滴下ロートより、2時間かけて滴下し、さらにアゾビスイソブチロニトリル1質量部を追加して還流させながら5時間重合反応を行った。反応終了後、固形分濃度が45質量%になるようトルエンにて希釈し、重量平均分子量2万の低分子量ポリマー(PMMA2)の溶液を得た。この低分子量ポリマー(PMMA2)を(C-1)と表記した。
【0093】
得られたベースポリマー(A)100質量部と、架橋剤(B)としてエポキシ系架橋剤であるN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(三菱ガス化学(株)製:テトラッドX)を0.06質量部と、粘着付与剤(タッキファイヤ)として前記低分子量ポリマー(C-1)を15質量部とを混合し、酢酸エチルにて固形分濃度が20%の溶液となるように希釈撹拌して、粘着剤組成物(ベースポリマー(A)100質量部に対して粘着付与剤であるPMMA2成分を15質量部含有)を調製した。
【0094】
(製造例2)
粘着付与剤を使用しなかったこと以外は製造例1と同様の方法で粘着剤組成物(ベースポリマー(A)100質量部に対して粘着付与剤であるPMMA2成分を0質量部含有)を調製した。
【0095】
(製造例3)
C-1(PMMA2)の配合量を15質量部から10質量部に変更した以外は製造例1と同様の方法で粘着剤組成物(ベースポリマー(A)100質量部に対して粘着付与剤であるPMMA2成分を10質量部含有)を調製した。
【0096】
(製造例4)
C-1(PMMA2)の配合量を15質量部から25質量部に変更した以外は製造例1と同様の方法で粘着剤組成物(ベースポリマー(A)100質量部に対して粘着付与剤であるPMMA2成分を25質量部含有)を調製した。
【0097】
(製造例5)
粘着付与剤(PMMA2)として重量平均分子量1000の低分子量ポリマー(C-2と表記)を使用した以外は製造例1と同様の方法で粘着剤組成物を調製した。
【0098】
(製造例6)
粘着付与剤(PMMA2)として重量平均分子量4.5万の低分子量ポリマー(C-3と表記)を使用した以外は製造例1と同様の方法で粘着剤組成物を調製した。
【0099】
(製造例7)
粘着付与剤(PMMA2)として重量平均分子量6万の低分子量ポリマー(C-4と表記)を使用した以外は製造例1と同様の方法で粘着剤組成物を調製した。
【0100】
(実施例1)
セパレータとして、厚み100μmのPETフィルム(王子エフテックス社製:100RL-07(2))を準備した。このセパレータ上に、製造例1で得られた粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工して塗膜を形成し、これを100℃で3分間乾燥して塗膜を硬化させ、セパレータ上に粘着剤層を形成した。次いで、該粘着剤層の表面に、基材としてPMMA1で形成される厚み75μmのPMMAフィルム(クラレ社製:パラピュアITグレード#75)を貼合した。これにより、粘着シートが得られた。得られた粘着シートについて、曲面部貼合適性、つまり、3D加飾性についての評価及び信頼性評価、耐候性評価、水接触角並びに印刷適性評価を行った。
【0101】
(実施例2)
製造例1で得られた粘着剤組成物を使用する代わりに、製造例3で得られた粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0102】
(実施例3)
製造例1で得られた粘着剤組成物を使用する代わりに、製造例4で得られた粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0103】
(実施例4)
製造例1で得られた粘着剤組成物を使用する代わりに、製造例5で得られた粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0104】
(実施例5)
製造例1で得られた粘着剤組成物を使用する代わりに、製造例6で得られた粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0105】
(実施例6)
製造例1で得られた粘着剤組成物を使用する代わりに、製造例7で得られた粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0106】
(比較例1)
得られた粘着シートについて、基材をPETフィルム(東洋紡社製:コスモシャインA4300#75)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0107】
(比較例2)
製造例1で得られた粘着剤組成物を使用する代わりに、製造例2で得られた粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0108】
(比較例3)
得られた粘着シートについて、基材をPPフィルムに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0109】
<評価方法>
(重量平均分子量)
GPC測定装置として、東ソー株式会社製示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機「HLC-8121GPC-HT」を使用し、東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR-H(20)HT」を3本連結させたGPCカラムを使用して、重量平均分子量を測定した。カラム温度は140℃、溶離液としてトリクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分にて測定した。測定には、標準ポリスチレンを用いて検量線を作製した。
【0110】
(曲面部貼合適性)
セパレータを剥離した後、粘着シートをR=3.6の曲面部を有するガラス(以下、3Dガラスと記載)に140℃で真空圧着させた。その後、ガラス貼合サンプルを23℃50RH%で1時間放置し、曲面部を観察し、下記評価基準で皺、割、浮き及び剥がれ、並びに、気泡の状態を判定した。
<皺>
◎:3Dガラス曲面部にフィルムの皺が全くない。
○:3Dガラス曲面部にフィルムの皺が、拡大すれば確認できるものの、目視では確認できない。
×:3Dガラス曲面部にフィルムの皺が目視で確認できる。
<割>
◎:3Dガラス曲面部にフィルムの割れが全くない。
○:3Dガラス曲面部にフィルムの割れが、拡大すれば確認できるものの、目視では確認できない。
×:3Dガラス曲面部にフィルムの割れが目視で確認できる。
<浮き及び剥がれ>
◎:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き及び剥がれが全くない。
○:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き及び剥がれが、拡大すれば確認できるものの、目視では確認できない。
△:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き及び剥がれが目視でわずかに確認できる。
×:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き及び剥がれが目視で確認できる。
<気泡>
◎:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に気泡が全くない。
○:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に気泡が、拡大すれば確認できるものの、目視では確認できない。
△:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に気泡が目視でわずかに確認できる。
×:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に気泡が目視で確認できる。
【0111】
(信頼性)
3Dガラス貼合サンプルを85℃dry環境下に100時間放置し、その後の曲面部を観察した。
◎:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き・気泡、剥がれが全くない
○:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き・気泡、剥がれが、拡大すれば確認できるものの、目視では確認できない。
△:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き及び剥がれが目視でわずかに確認できる。
×:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き・気泡、剥がれが目視で確認できる。
【0112】
(HAZE及び透明性)
実施例及び比較例で得た粘着シートの一方の粘着面を松浪ガラス社製のスライドガラス(品番:S9112)に貼合してサンプルを作製し、続いて、貼合時に混入した微細な空気等の影響を排除するために、前記サンプルに対し、0.5MPa、40℃の条件で30分間オートクレーブ(加圧脱泡)処理を実施した。その後、光の照射方向から見て基材、粘着剤層及びガラスの順になるように日本電色工業(株)製のNDH4000に前記サンプルを設置し、ヘイズを測定した。測定したHAZE値(%)が1.5未満であった場合の透明性を合格、1.5以上であった場合の透明性を不合格とした。特に、測定したHAZE値が1.0未満であった場合の透明性を「◎」、測定したHAZE値が1.0以上1.5未満であった場合の透明性を「○」とし、測定したHAZE値が1.5以上であった場合の透明性を「×」と表記した。
【0113】
(耐候性)
実施例及び比較例で得た粘着シートの一方の粘着面を松浪ガラス社製のスライドガラス(品番:S9112)に貼合してサンプルを作製し、続いて、貼合時に混入した微細な空気等の影響を排除するために、前記サンプルに対し、0.5MPa、40℃の条件で30分間オートクレーブ(加圧脱泡)処理を実施した。その後、光の照射方向から見て基材、粘着剤層及びガラスの順になるように、スガ試験機(株)製のサンシャイン・キセノンウェザーメーターS80-X75に前記サンプルを設置し、100時間処理し(処理条件:BPT温度=63℃、照射量:162[W/m])、その後、取り出したサンプルの外観を観察、下記判定基準で評価した。
◎:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き及び気泡、剥がれが全くない。○:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き及び気泡、剥がれが、拡大すれば確認できるものの、目視では確認できない。
×:3Dガラス曲面部にフィルムと粘着剤層の界面に浮き及び剥がれが目視で確認できる。
【0114】
(水接触角)
実施例及び比較例で得た粘着シートを、基材面(粘着剤層と逆側の面)側が表面側を向くように、かつ、地面に対し平行になるよう協和界面化学(株)製の自動接触角計DM-501にセットした。セットした基材面にイオン交換水を0.2μL滴下し、0.5秒放置した。その後、基材と滴下した水滴との角度を測定した。
【0115】
(印刷適性)
インキ(商品名MRX HF-919墨、帝国インキ社製)100質量部と、硬化剤(商品名210硬化剤、帝国インキ社製)5質量部とを混合し、インキAを調製した。
【0116】
別途、インキ(商品名MRX HF-619白、帝国インキ社製)100質量部と、硬化剤(商品名210硬化剤、帝国インキ社製)5質量部とを混合し、インキBを調製した。
【0117】
インキA及びインキBをそれぞれ用いて、実施例及び比較例で得た粘着シートの基材表面(粘着剤層と逆側の面)にスクリーン印刷し、80℃で1時間乾燥させて粘着シートの基材表面上に膜厚15μmの印刷層を形成した。JIS K 5600-5-6に準拠し、以下のようにして碁盤目密着試験を行った。
【0118】
セロハンテープ(商品名CT28、ニチバン社製)を、指で上から押し付けるようにして印刷層に密着させた後に剥離した。100マスの内、印刷層が全てのマス目で剥離していない場合を100/100、全てのマス目で剥離している場合を0/100とし、印刷層が剥離していないマス目を数え、以下の評価基準にてインキの密着性を評価し、「◎」、又は「○」を印刷適性として満足できる水準とした。
◎:96/100~100/100
○:75/100~95/100
×:0/100~74/100
【0119】
【表1】
【0120】
表1に示す結果から、実施例で得た粘着シートは、基材がPMMA1であり、かつ、粘着剤層が粘着付与剤としてPMMA2を含有することから、曲面部貼合適性に優れていることがわかる。実施例6ではPMMA2の分子量が大きいので透明性及び信頼性が実施例1~5よりも劣るものの、曲面部貼合適性は実用上問題ない水準であった。これに対し、比較例1では、基材がPMMA1ではなくPETであることから、皺及び割れが観察され、しかも、浮き及び剥がれも見られた。また、比較例2では、粘着付与剤としてPMMAを含有しないことから、顕著な浮き及び剥がれが見られた。比較例3では、基材がPMMA1ではなくPPであることから、浮き、剥がれ及び気泡の発生が観察され、しかも、信頼性及び耐候性、並びに印刷適性が悪かった。
【0121】
以上より、本発明の粘着シートは、密着性に優れ、貼り合わせ後に皺及び割れが発生しにくく、しかも、浮き及び剥がれも起こりにくいことが示された。
図1