(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】情報記録媒体、ラベル、カード、および真贋判定方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/328 20140101AFI20220802BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20220802BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20220802BHJP
B42D 25/41 20140101ALI20220802BHJP
【FI】
B42D25/328 120
G02B5/18
G09F3/02 W
B42D25/41
(21)【出願番号】P 2019520333
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2018020213
(87)【国際公開番号】W WO2018216810
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2017103231
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】井出 英誉
(72)【発明者】
【氏名】南川 直樹
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-047555(JP,A)
【文献】特開2005-158115(JP,A)
【文献】特開平07-271279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/328
G02B 5/18
G09F 3/02
B42D 25/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明保護層と、レーザ発色性を有する基材とが積層されてなる情報記録媒体であって、
前記透明保護層と前記基材との間に配置された中間層を備え、
前記中間層は、回折構造を有する回折構造層と、レーザを照射されると消失し、可視光を反射する第1の反射層とを含み、
前記透明保護層側から光が入射すると、前記回折構造層において、前記透明保護層側から視認可能な回折光パターンが発現し、
前記透明保護層側からレーザが入射すると、前記レーザは、前記回折構造層を透過し、前記第1の反射層が、前記レーザによって消失され、前記基材が、前記レーザによって発色
し、
前記中間層はさらに、第1の波長域の光を透過させ、前記第1の波長域以外の可視光を反射させる第2の反射層を含む、情報記録媒体。
【請求項2】
前記回折構造層と前記第2の反射層との屈折率差が、0.2以上、1.3以下である、請求項
1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記基材と前記中間層との間に、可視光のうち第2の波長域の光を透過させ、前記可視光のうち前記第2の波長域以外の波長の光を反射させる着色層を配置する、請求項1
または2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記着色層は、レーザによって照射されると発色し、前記レーザの照射条件によって発色強度が変化する発色剤を含む、請求項
3に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記着色層は、前記基材と前記中間層との間に、前記着色層の形状が外観から視認できないように内包され、前記着色層の形状は、任意の形状であり、
前記透明保護層側から前記レーザが入射すると、前記着色層がある領域では、前記着色層は着色され、前記着色層がない領域では、着色されないことによって、前記着色層の形状に対応するように、着色された領域が観察される、請求項
4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
透明保護層と、レーザ発色性を有する基材とが積層されてなる情報記録媒体であって、
前記透明保護層と前記基材との間の一部に配置された中間層を備え、
前記中間層は、回折構造を有する回折構造層と、レーザを照射されると消失し、可視光を反射する第1の反射層と、前記レーザを照射されても消失せず、第1の波長域の光を透過させ、前記可視光のうち前記第1の波長域以外の波長域の光を反射させる第2の反射層とを含み、
前記透明保護層側から前記レーザが、前記中間層が配置された領域と、前記中間層が配置されていない領域との両方に係るように移動しながら連続的に入射した場合、前記透明保護層を介して前記中間層に入射した前記レーザが、前記回折構造層を透過し、前記第1の反射層を消失させ、前記第2の反射層を透過して、前記基材を発色させるが、これによって発色された基材は、前記第2の反射層によって遮られることによって、前記透明保護層側から視認されず、前記透明保護層を介して前記中間層を介さずに前記基材に入射した前記レーザが、前記基材を発色させ、これによって発色された基材は、前記透明保護層側から視認可能であることによって、前記中間層の配置によって決定される形状の割印がなされた発色パターンが実現される、情報記録媒体。
【請求項7】
前記中間層が、前記基材または前記透明保護層の中に完全に覆われて内包され、積層一体物として構成された、請求項
6に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
個人認証情報の内容に応じた発色パターンで前記基材を発色させる、請求項1または
6に記載の情報記録媒体。
【請求項9】
請求項1または
6に記載の情報記録媒体が貼り付けられたラベル。
【請求項10】
請求項1または
6に記載の情報記録媒体が貼り付けられたカード。
【請求項11】
透明保護層と、レーザ発色性を有する基材とが積層されてなる情報記録媒体に適用される真贋判定方法であって、
前記情報記録媒体は、前記透明保護層と前記基材との間に配置された中間層を備え、
前記中間層は、回折構造を有する回折構造層と、レーザを照射されると消失し、可視光を反射する第1の反射層とを含み、
前記情報記録媒体はさらに、前記基材と前記中間層との間の一部に、レーザを照射されると発色する着色層を備え、
前記情報記録媒体の前記透明保護層側からレーザが入射した場合に実現される着色された発色パターンが、前記着色層の配置に対応している場合、前記情報記録媒体は真正であると判定され、対応していない場合、真正ではないと判定される、方法。
【請求項12】
透明保護層と、レーザ発色性を有する基材とが積層されてなる情報記録媒体に適用される真贋判定方法であって、
前記情報記録媒体は、前記透明保護層と前記基材との間の一部に配置された中間層を備え、
前記中間層は、回折構造を有する回折構造層と、レーザを照射されると消失し、可視光を反射する第1の反射層と、前記レーザを照射されても消失せず、第1の波長域の光を透過させ、前記可視光のうち前記第1の波長域以外の波長の光を反射させる第2の反射層とを含み、
前記透明保護層側から前記レーザが、前記中間層が配置された領域と、前記中間層が配置されていない領域との両方に係るように移動しながら連続的に入射した場合、前記中間層の配置によって決定される形状の割印がなされた発色パターンが、前記基材の発色によって実現されるのであれば、前記情報記録媒体は真正であり、実現されないのであれば、前記情報記録媒体は真正ではないと判定される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ID証、パスポート、運転免許証等の認証用の情報記録媒体、また、情報記録媒体が貼り付けられたラベルやカード、さらには、情報記録媒体の真贋判定方法が記載されている。
【背景技術】
【0002】
ID証、パスポート、運転免許証等の認証用の情報が記録された情報記録媒体は、回折構造や回折構造の一種であるホログラムが内包されて積層一体化され製造される。この種の情報記録媒体は、回折構造が転写箔等で作製された後に媒体の表面に転写されて配置されるような他の形態と比較した場合に、化学薬品や磨耗および直接的な変造に対して非常に強く、基材と一体化されていることによって不正な手段によって取り外され難いという利点を有する。
【0003】
この種の情報記録媒体を不正な改竄や偽造から守るための方法として、特許文献1(特許第6107137号明細書)には、レーザ印字が開示されている。レーザ印字は、情報記録媒体内に、特定波長のレーザ光を吸収すると変色する特性を持った発色層を導入し、情報記録媒体に向けて適当な強度、周期、サイズに調整されたレーザ光を照射することによって、発色層を黒色に変色させて情報を記録する。
【0004】
レーザ印字は、情報記録媒体個々に対して各々異なる情報を書き込むことが可能であることから、所有者の顔やサイン、住所等の個人情報を印字することができる。
【発明の概要】
【0005】
このような従来の情報記録媒体では、以下のような問題がある。
【0006】
情報記録媒体に内包されている回折構造は、同一の凹凸版から同一の絵柄を複製することによって作製される。このため、個々に異なる絵柄を作製することは困難であり、共通の絵柄として使用される。
【0007】
共通の絵柄であるので、不正に取り出して個人情報だけを改竄したり、改竄した個人情報の上に予め取り出した回折構造を再度貼り付ける偽造が行われる危険性が高いという問題がある。改竄や偽造が行われたことを認識することも困難である。
【0008】
したがって、情報記録媒体の回折構造や、回折構造の一種であるホログラムや、個人情報が印字された印字部に対する改竄や偽造を防止するために、さらに高度な改竄および偽造防止対策が講じられた情報記録媒体が求められている。
【0009】
さらには、改竄や偽造が行われた場合であっても、それを容易に判定できる真贋判定方法も求められている。
【0010】
このような背景から、回折構造や印字部に対する改竄や偽造が困難な情報記録媒体、およびこの情報記録媒体が貼り付けられたカードおよびラベルを提供する。
【0011】
また、情報記録媒体に対して、改竄や偽造が行われた場合であっても、改竄や偽造を容易に判定することができる真贋判定方法を提供する。
【0012】
以下のような手段を講じる。
【0013】
本発明の第1の側面は、透明保護層と、レーザ発色性を有する基材とが積層されてなる情報記録媒体であって、透明保護層と基材との間に配置された中間層を備える。中間層は、回折構造を有する回折構造層と、レーザを照射されると消失し、可視光を反射する第1の反射層とを含む。透明保護層側から光が入射すると、回折構造層において、透明保護層側から視認可能な回折光パターンが発現する。透明保護層側からレーザが入射すると、レーザは、回折構造層を透過し、第1の反射層が、レーザによって消失され、基材が、レーザによって発色する。
【0014】
中間層はさらに、第1の波長域の光を透過させ、第1の波長域以外の可視光を反射させる第2の反射層を含む。
【0015】
本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面の情報記録媒体において、回折構造層と第2の反射層との屈折率差が、0.2以上、1.3以下である。
【0016】
本発明の第3の側面は、本発明の第1または2の側面のうち何れかの情報記録媒体において、基材と中間層との間に、可視光のうち第2の波長の光を透過させ、可視光のうち第2の波長域以外の波長域の光を反射させる着色層を配置する。
【0017】
本発明の第4の側面は、本発明の第3の側面の情報記録媒体において、着色層は、レーザによって照射されると発色し、レーザの照射条件によって発色強度が変化する発色剤を含む。
【0018】
本発明の第5の側面は、本発明の第4の側面の情報記録媒体において、着色層は、基材と中間層との間に、着色層の形状が外観からは視認できないように内包される。着色層の形状は、任意の形状であり、透明保護層側からレーザが入射すると、着色層がある領域では、着色層は着色され、着色層がない領域では、着色されない。これによって、着色層の形状に対応するように、着色された領域が観察される。
【0019】
本発明の第6の側面は、透明保護層と、レーザ発色性を有する基材とが積層されてなる情報記録媒体であって、透明保護層と基材との間の一部に配置された中間層を備える。中間層は、回折構造を有する回折構造層と、レーザを照射されると消失し、可視光を反射する第1の反射層と、レーザを照射されても消失せず、第1の波長域の光を透過させ、可視光のうち第1の波長域以外の波長域の光を反射させる第2の反射層とを含む。透明保護層側からレーザが、中間層が配置された領域と、中間層が配置されていない領域との両方に係るように移動しながら連続的に入射した場合、透明保護層を介して中間層に入射したレーザが、回折構造層を透過し、第1の反射層を消失させ、第2の反射層を透過して、基材を発色させる。発色された基材は、第2の反射層によって遮られ、透明保護層側から視認されない。透明保護層を介して中間層を介さずに基材に入射したレーザが、基材を発色させる。発色された基材は、透明保護層側から視認可能である。これによって、中間層の配置によって決定される形状の割印がなされた発色パターンが実現される。
【0020】
本発明の第7の側面は、本発明の第7の側面の情報記録媒体において、中間層が、基材または透明保護層の中に完全に覆われて内包され、積層一体物として構成される。
【0021】
本発明の第8の側面は、本発明の第1または6の側面の情報記録媒体において、個人認証情報の内容に応じた発色パターンで基材を発色させる。
【0022】
本発明の第9の側面は、本発明の第1または6の側面の情報記録媒体が貼り付けられたラベルである。
【0023】
本発明の第10の側面は、本発明の第1または6の側面の情報記録媒体が貼り付けられたカードである。
【0024】
また、以下のような手段を講じる。
【0025】
本発明の第11の側面は、透明保護層と、レーザ発色性を有する基材とが積層されてなる情報記録媒体に適用される真贋判定方法である。情報記録媒体は、透明保護層と基材との間に配置された中間層を備える。中間層は、回折構造を有する回折構造層と、レーザを照射されると消失し、可視光を反射する第1の反射層とを含む。情報記録媒体はさらに、基材と中間層との間の一部に、レーザを照射されると発色する着色層を備える。情報記録媒体の透明保護層側からレーザが入射した場合に実現される着色された発色パターンが、着色層の配置に対応している場合、情報記録媒体は真正であると判定され、対応していない場合、真正ではないと判定される。
【0026】
本発明の第12の側面は、透明保護層と、レーザ発色性を有する基材とが積層されてなる情報記録媒体に適用される真贋判定方法である。情報記録媒体は、透明保護層と基材との間の一部に配置された中間層を備える。中間層は、回折構造を有する回折構造層と、レーザを照射されると消失し、可視光を反射する第1の反射層と、レーザを照射されても消失せず、第1の波長域の光を透過させ、可視光のうち第1の波長域以外の波長の光を反射させる第2の反射層とを含む。透明保護層側からレーザが、中間層が配置された領域と、中間層が配置されていない領域との両方に係るように移動しながら連続的に入射した場合、中間層の配置によって決定される形状の割印がなされた発色パターンが、基材の発色によって実現されるのであれば、情報記録媒体は真正であり、実現されないのであれば、情報記録媒体は真正ではないと判定される。
【0027】
本発明の第1の側面の情報記録媒体によれば、透明保護層側から回折構造に光が入射すると、回折構造層において、ある一定の角度範囲において視認可能な文字や絵柄等の任意のパターン状に回折光が発現する。観察者は、これを観察することができる。
【0028】
さらに、透明保護層側から基材に対して中間層越しにレーザが照射されると、レーザは回折構造を透過し、光透過性を持たない第1の反射層はレーザによって瞬時に消失する。その後、レーザは基材に到達して基材を発色させることで印字(engraving)が可能となる。
【0029】
このように、情報記録媒体は、任意の印字が可能となり、印字後、発色した基材を、中間層、透明保護層越しに観察することが可能となる。したがって、観察角度を変えることで、回折構造による回折光と、発色した基材である印字との両方を、同じ面から観察することが可能となる。
【0030】
さらには、情報記録媒体は、回折構造が基材と透明保護層との間に積層されて一体化されている。よって、回折構造の改竄や偽造を物理的に困難とするのみならず、印字された基材だけを貼り替えても、第1の反射層は先に印字した時の印字と同じパターンの消失部があるだけで、改竄または偽造が試みられた印字では第1の反射層によって遮られてしまい観察できない。このため、改竄や偽造は極めて困難である。
【0031】
また、第2の反射層に光が入射すると、その反射光はある特定の色が現れ、観察する角度によって、基材が発色した印字と、回折構造による回折光と、特定の色からなる反射光との3種類の光が現れる。このように、情報記録媒体は、極めて複雑な光を発光するので、再現することは容易ではない。仮に改竄や偽造が試みられても、異なる光が発光され、容易に発見されることから、改竄や偽造は極めて困難である。
【0032】
本発明の第2の側面の情報記録媒体によれば、透明保護層側からレーザが入射し、レーザによって第1の反射層が除去されると、回折構造層と第2の反射層との屈折率差によって、レーザ印字された区域では、第2の反射層が透明性を保持しながら、ある観察角度においては回折構造による回折光も現れる。このように、情報記録媒体は、極めて複雑な回折光を発光するので、再現することは容易ではない。仮に改竄や偽造が試みられても、異なる回折光が発光され、容易に発見されることから、改竄や偽造は極めて困難である。
【0033】
本発明の第3の側面の情報記録媒体によれば、透明保護層側からレーザ照射による書き込みを行うと、最下層に位置する変色した基材の印字部上に着色層が設けられている。よって、基材への印字自体も着色されて現れるようになる。これを再現することは容易ではない。仮に改竄や偽造が試みられても、印字が異なって観察され、容易に発見される。したがって、改竄や偽造は極めて困難である。
【0034】
本発明の第4の側面の情報記録媒体によれば、レーザの照射条件によって発色強度が変化する。このため、同一の色彩で任意の印字濃度を得ることができる。これを再現することは容易ではない。仮に改竄や偽造が試みられても、異なって観察され、容易に発見される。よって、改竄や偽造は極めて困難である。
【0035】
本発明の第5の側面の情報記録媒体によれば、透明保護層側から中間層へ向けてレーザが照射されて書き込みがなされると、着色層がある領域は着色され、着色層が無い領域は着色されない。この発色パターンの真贋は、着色層の形状を予め知っている者だけが判定できる。したがって、第三者による改竄や偽造によって、正しい発色パターンを再現することは不可能である。よって、情報記録媒体の改竄や偽造もまた不可能となる。
【0036】
本発明の第6の側面の情報記録媒体によれば、中間層を基材上の一部にのみ形成し、レーザを、中間層が設けられている領域と無い領域との両方に係るように移動させながら照射することによって、中間層の配置によって決定される形状の割印がなされた発色パターンが得られるようになる。この割印付きの発色パターンの真贋は、中間層の配置を予め知っている者だけが判定できる。したがって、第三者による改竄や偽造によって、正しい割印付きの発色パターンを再現することは不可能である。よって、情報記録媒体の改竄や偽造もまた不可能となる。
【0037】
本発明の第7の側面の情報記録媒体によれば、中間層が、基材と透明保護層の中に完全に覆われて内包されている。したがって、基材を剥がして別の基材を貼り付ける等の改竄や偽造を、物理的に困難にすることが可能となる。
【0038】
本発明の第8の側面の情報記録媒体によれば、改竄や偽造が困難な本発明の第1または6の側面の情報記録媒体を適用することによって、個人認証情報の改竄や偽造をより困難にすることが可能となる。
【0039】
本発明の第9の側面のラベルおよび本発明の第10の側面のカードによれば、本発明の第1または6の側面の情報記録媒体が貼り付けられることによって、従来よりも、改竄や偽造をより困難にすることが可能となる。
【0040】
本発明の第11の側面の真贋判定方法によれば、透明保護層側から中間層へ向けてレーザが照射されて書き込みがなされると、着色層がある領域は基着色され一方、着色層が無い領域は着色されない。この着色パターンによって、情報記録媒体の真贋判定を容易に行うことができる。
【0041】
本発明の第12の側面の真贋判定方法によれば、中間層を基材上の一部にのみ形成し、レーザを、中間層が設けられている領域と無い領域との両方に係るように移動させながら照射することによって、中間層の配置によって決定される形状の割印がなされた発色パターンが得られる。この割印付きの発色パターンによって、情報記録媒体の真贋判定を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報記録媒体を概略的に図示する平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る情報記録媒体を概略的に図示する断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る情報記録媒体を概略的に図示する断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る情報記録媒体を概略的に図示する断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る情報記録媒体を概略的に図示する断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る情報記録媒体を概略的に図示する断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第5の実施形態に係る情報記録媒体を概略的に図示する断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施例1に係る情報記録媒体を概略的に図示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を実現する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
(本発明の第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報記録媒体10を概略的に図示する平面図である。
【0045】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る情報記録媒体10aを概略的に図示する断面図である。
図2は、
図1に示す情報記録媒体10のA-A断面における断面図である。
【0046】
情報記録媒体10aは、偽造防止媒体に適用でき、基材20の少なくとも片面上に、中間層30と透明保護シート40がこの順に積層されている。中間層30は、その全面または一部に、光学変化模様を発現させるための回折構造34が形成されている回折構造層32と、レーザを照射されると消失する、可視光を反射する第1反射層36とを備えている。
【0047】
なお、
図1に図示されている印刷層42は、
図2には図示されていないが、印刷層42の配置場所としては、観察時に観察可能な位置であれば、特に制限されないが、耐性の面から、透明保護シート40と中間層30の間、または、中間層30と基材20との間とできる。
【0048】
基材20は、ポリカーボネート材料にレーザ波長を吸収するエネルギ吸収体が添加されたレーザ発色性ポリカーボネートとすることができる。基材20の厚さは50μm以上、800μm以下の範囲とできる。厚さが50μmより薄いと、基材20としての物理的強度が不十分となり、取り扱い難くなり、印刷層42等を設ける際にもシワ等が発生し易くなる。800μmより厚いと、加工の際の、基材20自体が有する厚みのバラツキやたわみの影響が大きくなり易くなる。
【0049】
透明保護シート40の材質は、レーザ、可視光を透過する透明なプラスチックである。透明なプラスチックとして、ポリカーボネートとすることができる。透明保護シート40の厚さは50μm以上、800μm以下の範囲とできる。厚さが50μmより薄いと、基材20としての物理的強度が不十分となり、取り扱い難くなり、印刷層42等を設ける際にもシワ等が発生し易くなる。800μmより厚いと、加工の際の、基材20自体が有する厚みのバラツキやたわみの影響が大きくなり易くなる。
【0050】
中間層30における回折構造層32および第1反射層36は、透明保護シート40上に、次のような方法で形成される。
【0051】
回折構造層32は、回折構造34を形成するために設けられる層である。回折構造層32の材料は、透明性を有することができる。この材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、紫外線あるいは電子線硬化樹脂とすることができる。熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート樹脂とすることができる。回折構造層32は、0.5μm以上、25μm以下とすることができる。
【0052】
回折構造層32は、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させた樹脂とすることができる。この樹脂は、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂とすることができる。紫外線あるいは電子線硬化樹脂としては、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等とすることができる。
【0053】
本実施形態では、透明な樹脂によって所望の形状に作製できれば、前述した樹脂に限定されず、さらに加工適性を向上させるための添加剤が含有することも可能である。
【0054】
回折構造層32に形成される回折構造34は、回折構造体とすることができる。回折構造体は、レリーフ型回折格子や体積型回折格子等とすることができる。
【0055】
レリーフ型回折格子は、その表面に微細な凹凸パターンの形態で回折格子を記録する。レリーフ型回折格子は、二光束干渉法により感光性樹脂の表面に互いに可干渉の2本の光線を照射してこの感光性樹脂表面に干渉縞を生成させ、この干渉縞を凹凸の形態で感光性樹脂に記録することで形成される。なお、二光束性干渉法によって形成された干渉縞も回折格子であり、前述した2本の光線の選択によって任意の立体画像を回折格子パターンとして記録しても良い。また、観察する角度に応じて異なる画像(以降、「チェンジング画像」と称する)が見られるように記録しても良い。
【0056】
本実施形態において、回折格子構造物となる画像パターンの記録のために、二光束干渉法のように、従来から知られているホログラムの製造方法を適用することができる。従来から知られているホログラムは、イメージホログラムやリップマンホログラム、レインボーホログラム、インテグラルホログラム等である。
【0057】
レリーフ型回折格子では、電子線硬化型樹脂の表面に電子線を照射して、回折格子となる縞状パターンに露光することによって、回折構造物からなる凹凸パターンを形成することができる。この場合、干渉縞を1本ごとに制御することができるため、ホログラムと同様に任意の立体画像やチェンジング画像を記録することが可能となる。画像をドット状のセルに分割し、このセル毎に異なる回折格子を記録し、これら画素の集合で全体の画像を表現するようにしても良い。セルは円形のドットの他、星形のドットでも良い。
【0058】
誘起表面レリーフ形成法によって、前述した凹凸パターンを形成しても良い。アゾベンゼンを鎖側に持つポリマーのアモルファス薄膜に対して、青色~緑色に渡る波長範囲における或る波長を有する数10mW/cm2程度の比較的弱い光を照射することによって、数μmスケールでポリマー分子の移動を起こし、薄膜表面に凹凸によるレリーフを形成することができる。
【0059】
形成された凹凸パターンを有するレリーフ型のマスター版の表面に電気メッキ法で金属膜を形成することによって、レリーフ型マスター版の凹凸パターンを複製し、これをプレス版とする。このプレス版を、キャリア上に積層される樹脂層に熱圧着し、樹脂層の表面に微細な凹凸パターンを転写することにより、回折構造層32を形成する。
【0060】
第1反射層36は、金属薄膜とすることができる。第1反射層36は、微細凹凸構造の凹凸を埋めることなく回折構造形成層の表層に薄膜を形成するために真空製膜法を利用して金属薄膜を形成することができる。この金属薄膜は、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、真鍮等とすることができる。真空製膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等とすることができる。第1反射層36の厚みは、5以上、100nm以下の範囲とでき、本実施形態では可視光の透過率の観点から、10nm以上、80nm以下の範囲とできる。
【0061】
第1反射層36が微細凹凸構造の一部に形成された場合、より高度な加工技術が要求され、より精緻な意匠となる為、情報記録媒体10aはより高い偽造防止効果を有することができる。第1反射層36を、微細凹凸構造の一部に形成するためには、レジストのような図示しない被覆層を、第1反射層36となる金属層上の一部に印刷、塗布、堆積し、被覆する。被覆されたパターンに応じて、金属層を選択的に除去することによって、第1反射層36を、微細凹凸構造の一部に設けることができる。
【0062】
第1反射層36となる金属層上の一部に被覆層を設ける方法として、例えば、以下に示す4つの方法がある。
【0063】
第1の方法は、被覆層を印刷で部分的に設けることである。第2の方法は、紫外線露光によって溶解する樹脂材料、または、溶解し難くなる樹脂材料を塗布し、パターン状に紫外線を露光した後、被覆層を現像することである。第3の方法は、溶解性樹脂を部分的に形成した後に被覆層を形成し、溶解性樹脂および被覆層を溶剤で部分的に除去することである。第4の方法は、エッチング液の透過性の異なる被覆層を、第1反射層36となる金属層上に堆積させ、被覆層と第1反射層36とを、エッチング液の透過性の差により選択的にエッチングすることである。
【0064】
回折構造層32および第1反射層36を含む中間層30を形成する方法としては、上記説明した方法以外にも、予め中間層30を含む中間転写箔を作製し、透明保護シート40や基材20に転写する方法がある。
【0065】
キャリアは、プラスチックフィルムとできる。プラスチックフィルムの厚さは12μm以上、50μm以下とできる。プラスチックフィルムはPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)等とできる。キャリア上に剥離層を積層し、剥離層上に、回折構造層32、第1反射層36をこの順に積層する。さらに、接着層を積層して中間層30を含む中間転写箔を予め作製する。接着層は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂または塩化ビニル樹脂等を主成分とする。その後、ロールを熱して転写する熱ロール転写機や、熱した金属版を押し当てるホットスタンプ機等により、中間転写箔を透明保護シート40または基材20に貼り合わせ、キャリアを剥離して中間層30を設ける。所定の形状の金属版を作製し、ホットスタンプ機により熱と圧力をかけながら透明保護シート40や基材20の任意の位置に中間転写箔を転写してキャリアを剥離する。これによって、所定の位置や大きさ、形状で中間層30を設ける。予めキャリア上に所定の形状で剥離層、中間層30、接着層を形成し、コールドラミネート転写法、または前述した熱ロール転写法等の方法で転写してキャリアを剥離する。なお、中間層30を形成する方法は上記に限定されない。
【0066】
印刷層42は、任意の色彩やパターン、文字や記号、絵柄等を、全面または部分的に設けた層である。印刷層42は、色彩やパターン、文字や記号、絵柄等で、伝えるべき情報や意匠を付与する。
【0067】
印刷層42は、インキによる印刷法で形成できる。印刷法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等、公知の印刷法を含む。
【0068】
これら印刷のインキは、印刷法に応じたインキやインクとすることができる。これら印刷のインキは、オフセットインキ、活版インキ、グラビアインキ、凸版インキ、凹版インキ、インクジェットインク等を含むことができる。また、組成や機能に応じて、樹脂インキ、油性インキ、水性インキとすることができる。また、乾燥方式の違いに応じて、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ、紫外線硬化型インキとすることもできる。また、印刷層42は、光の照明角度または観察角度に応じて色が変化する機能性インキで形成されてもよい。このような機能性インキとしては、光学的変化インキ、カラーシフトインキ、パールインキ等とすることができる。
【0069】
あるいは、印刷層42は、トナーによる電子写真法で形成してもよい。この場合、帯電性を持ったプラスチック粒子に黒鉛、顔料等の色粒子を付着させたトナーを準備し、帯電による静電気を利用して、トナーを被印刷体に転写させ、加熱し定着させることで印刷層42を形成することができる。
【0070】
画像22や印字(engraving)24は、適切なエネルギ量や焦点距離、周波数に調整されたレーザを、情報記録媒体10上に照射することによって形成される。
【0071】
レーザの波長は、355nm以上10.6μm以下とできる。レーザとして、CO2レーザ(波長10.6μm)、YAGレーザ(波長1064nm、532nm、355nm)、YVO4レーザ(波長1064nm)、アルゴンレーザ(488~514nm)、Ybレーザ(1090nm)等を適用することができる。印字品質や調整の容易さ、コスト面等から、YAGレーザを適用できる。レーザとしては、CWレーザや、パルスレーザを適用することができる。また、パルスレーザのパルス幅は、100フェムト秒以上1ミリ秒以下とすることができる。
【0072】
本実施形態では、このようなレーザを、対象の位置や範囲において、パターン状に照射することで、基材20を発色させ、絵柄等の画像22や文字等の印字24等を形成する。
【0073】
なお、本実施形態では、前述したようにレーザを適用した市販のレーザ印字機を適用することが可能である。レーザの種類や印字手法についてはこれらに限定されず、使用する基材20の発色特性に適合したレーザを照射できる機種を選択すれば良い。
【0074】
このような構成の情報記録媒体10によれば、透明保護シート40側から回折構造34に光が入射すると、回折構造層32において、ある一定の角度範囲において視認可能な文字や絵柄等の任意のパターン状に回折光が発現し、観察者は、これを観察することが可能となる。
【0075】
さらに、透明保護シート40側から基材20に対して中間層30越しにレーザが照射されると、レーザは回折構造34を透過し、光透過性を持たない第1反射層36はレーザによって消失する。その後、レーザは基材20に到達してポリカーボネートを発色させる。これによって印字が可能となる。
【0076】
このように、情報記録媒体10aは、任意の印字が可能であると同時に、印字後、発色した基材20を、中間層30、透明保護シート40越しに観察することも可能となる。従って、観察角度を変えることで、回折構造34による回折光と、発色した基材20である印字との両方を、同じ面から観察することが可能となる。
【0077】
情報記録媒体10aは、回折構造34が基材20と透明保護シート40との間に積層されて一体化されている。従って、回折構造34の改竄や偽造を物理的に困難とするのみならず、印字された基材20だけを貼り替えても、第1反射層36は先に印字した時の印字と同パターンの消失部があるだけである。つまり、改竄または偽造された印字では、第1反射層36によって遮られてしまい観察できない。よって、改竄や偽造は極めて困難である。
【0078】
仮に改竄や偽造がなされても、異なる光が観察されることから、改竄や偽造がなされたことが容易に判定される。よって、高い真贋判定性を備えることも可能となる。
【0079】
(本発明の第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る情報記録媒体10bを概略的に図示する断面図である。
図3はまた、
図1に示す情報記録媒体10のA-A断面における断面図に相当する。
【0080】
情報記録媒体10bは、中間層30がさらに第2反射層38を備えている点が、情報記録媒体10aと異なる。第2反射層38は、金属光沢を有している。第2反射層38は、中間層30において、第1反射層36よりも基材20側に配置され、レーザを照射されても消失せず、第1の波長(例えば、380~500nm)の光を透過させ、可視光のうち第1の波長以外の波長の光を反射させる。第1の波長は、照射するレーザの波長とできる。
【0081】
第2反射層38には、高屈折率の透明薄膜を適用する。透明薄膜としては、回折構造層32の屈折率よりも0.2以上、1.3以下の屈折率を有する材料を適用する。例えば、回折構造層32が屈折率1.6以下の樹脂であった場合、第2反射層38には、屈折率が1.8以上、2.9以下の透明材料から構成される薄膜を適用できる。
【0082】
このような透明材料を、無機化合物とすることができる。無機化合物を、金属、半金属の化合物とすることができる。金属、半金属の化合物として、Fe2O3(n=2.7)、TiO2(n=2.6)、CdS(n=2.6)、CeO2(n=2.3)、ZnS(n=2.3)、PbCl2(n=2.3)、CdO(n=2.2)、WO3(n=2.0)、SiO(n=2.0)、Si2O3(n=2.5)、In2O3(n=2.0)、PbO(n=2.6)、Ta2O3(n=2.4)、ZnO(n=2.1)、ZrO2(n=2.0)等とすることができる。nは、屈折率である。真空製膜法を利用してこれら透明材料の薄膜を形成することができる。薄膜の厚みは5nm以上、100nm以下とできる。
【0083】
このような構成の情報記録媒体10bによれば、光源60、61から第2反射層38に入射光70、71が入射すると、その反射光から、ある特定の色が観察される。これによって、観察する角度によって、基材20が発色した印字からの反射光70aと、回折構造34による回折光70bと、特定の色からなる反射光71aとの3種類の光の変化が、観察者80によって観察される。
【0084】
また、透明保護シート40側からレーザが入射し、レーザによって第1反射層36が除去されると、回折構造層32と第2反射層38との屈折率差によって、レーザ印字された区域では、第2反射層38が透明性を保持しながら、ある観察角度においては回折構造34による回折光が、観察者80によって観察されるようになる。
【0085】
このように、情報記録媒体10bによれば、光源や、観察角度に応じて変化する、極めて複雑な反射光や回折光が観察される。これを再現することは容易ではないので、改竄や偽造は極めて困難である。仮に改竄や偽造が試みられても、異なる光が発光されるために、容易に真贋判定がなされる。
【0086】
(本発明の第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係る情報記録媒体10cを概略的に図示する断面図である。
図4はまた、
図1に示す情報記録媒体10のA-A断面における断面図に相当する。
【0087】
情報記録媒体10cは、中間層30が、基材20と透明保護シート40との間の一部にしか配置されていない点が、情報記録媒体10bと異なる。
【0088】
また、
図5は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る情報記録媒体10dを概略的に図示する断面図である。
図5はまた、
図1に示す情報記録媒体10のA-A断面における断面図に相当する。
【0089】
図5に係る情報記録媒体10dでは、
図4と同様に、中間層30は、基材20と透明保護シート40との間の一部にしか配置されていないが、中間層30は、基材20と透明保護シート40との中に完全に覆われ、外部に露出しないように内包されている。
【0090】
これによって、基材20を剥がして別の基材を貼り付けるといった物理的な改竄や偽造は、困難となる。
【0091】
情報記録媒体10c、10dによれば、透明保護シート40側からレーザ90、92を、中間層30が配置された領域と、中間層30が配置されていない領域との両方に係るように移動しながら連続的に入射した場合、中間層30が配置された領域に入射したレーザ90は、回折構造層32を透過し、第1反射層36を消失させ、第2反射層38を透過して、基材20を発色させる。しかしながら、発色された基材20の部位は、第2反射層38によって遮られるので、透明保護シート40側から視認できない。
【0092】
一方、中間層30が配置されていない領域に入射したレーザ92は、基材20を発色させる。発色された基材20の部位は、透明保護シート40側から視認可能である。これによって、中間層30の配置によって決定される形状の割印がなされた発色パターンが実現されるようになる。
【0093】
このように、情報記録媒体10c、10dは、容易に再現できない極めて複雑な発色パターンを実現できるので、偽造や改竄を困難にすることが可能となる。さらに、
図5に示すように、中間層30を、内包するように備えることによって、改竄や偽造を物理的に困難にすることも可能となる。
【0094】
また、発色パターンは、中間層30の配置によって決定される形状の割印がなされて表示される。中間層30の配置形状を知っているのは、製造者や製造者から予め知らされている者に限られる。
【0095】
したがって、第三者による改竄や偽造によって、正しい割印付きの発色パターンを再現することは不可能であるので、情報記録媒体10c、10dを改竄や偽造することは不可能である。
【0096】
また、仮に改竄や偽造が試みられても、製造者や製造者から予め知らされている者が、その発色パターンを見ることによって、真贋を容易に判定することができる。
【0097】
(本発明の第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態に係る情報記録媒体10eを概略的に図示する断面図である。
図6はまた、
図1に示す情報記録媒体10のA-A断面における断面図に相当する。
【0098】
情報記録媒体10eは、中間層30と基材20との間に、着色層50を備えている点が、情報記録媒体10bと異なる。
【0099】
着色層50は、可視光(例えば、380nm以上、650nm以下)のうち第2の波長域の光を透過させ、可視光のうち第2の波長域以外の波長の光を反射させることができる。
【0100】
着色層50は、印刷層42のインキの主剤である透明な樹脂バインダーに、色付きの染料や顔料を、光透過性を保持した状態となるように配合した印刷インキや、可視光の特定波長を反射、吸収する特性を持った機能性材料を配合したものとすることができる。着色層50は、公知の印刷法によって形成可能である。
【0101】
着色層50は、レーザによって照射されると発色し、レーザの照射条件によって発色強度が変化する発色剤を含んでいる。発色剤の色は、目視で色彩を観察可能であれば特に限定されず、シアン、マゼンダ、イエローの単体色、あるいはこれらを混合して作られる任意の混合色とすることができる。
【0102】
発色剤の含有量は、目視で色彩を確認できる濃度で、かつ層間の密着性に問題を引き起こさない値とする。着色層50の樹脂分を1とした場合には0.01~30重量%であれば良く、さらには0.5~5重量%の範囲として良い。添加量が0.01重量%以下の場合には目視による色彩の確認が困難となる一方、30重量%を超える場合には層間密着性に問題が生じる恐れがある。
【0103】
発色剤の材料としては、染料または顔料のどちらでも良い。具体的には、シアンとしては、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー等の顔料やビクトリアブルー等の染料がある。マゼンダとしては、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントカーミンFB、リソールレッド、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ等の顔料やローダミン等の染料がある。イエローとしては、ジンクエロージンククロメート(亜鉛黄)、レモンイエロー(クロム酸バリウム)、ナフトーエローS、ハンザエロー5G、ハンザエロー3G、ハンザエローG、ハンザエローGR、ハンザエローA、ハンザエローRN、ハンザエローR、ベンジンエロー、ベンジンエローG、ベンジンエローGR、パーマネントエローNCG、キノリンエローレーキ等の顔料やオーラミン等の染料がある。これらを1種類または2種類以上を組み合わせることもできる。
【0104】
このような構成の情報記録媒体10eによれば、透明保護シート40側の光源62からの入射光72が反射してなる反射光72aが、観察者80によって観察される。
【0105】
透明保護シート40側のレーザ光源63からのレーザによる入射光73によって書き込みを行うと、最下層に位置する変色した基材20の印字部上に着色層50が設けられていることから、基材20への印字区域も着色される。
【0106】
レーザによる入射光73の照射条件によって発色強度が変化するため、同一の色彩で任意の印字濃度を得ることもできる。
【0107】
このように、条件に応じて印字が異なって観察されることを再現することは容易ではなく、改竄や偽造をすることは困難である。仮に改竄や偽造が試みられても、印字が正しく観察されるか否かを確認することによって、真贋判定をより容易に行うことが可能となる。
【0108】
(本発明の第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態に係る情報記録媒体10fを概略的に図示する断面図である。
図7はまた、
図1に示す情報記録媒体10のA-A断面における断面図に相当する。
【0109】
情報記録媒体10fは、着色層50が全面に配置されているのではなく、着色層50の形状が外観から視認できないように、基材20と中間層30との間に内包された状態で形成されている点が、情報記録媒体10eと異なる。着色層50の形状は、規則的な形状とできる。
【0110】
このような構成の情報記録媒体10fによれば、透明保護シート40側のレーザ光源64から、入射光74が、着色層50のある領域に入射した領域では、着色された反射光74aが、観察者80によって観察される。
【0111】
一方、透明保護シート40側のレーザ光源65から、入射光75が、着色層50がない領域に入射した印字区域では、着色されない反射光75aが、観察者80によって観察される。
【0112】
レーザ光源64からのレーザが入射した場合、着色層50がある領域では、第1反射層36が除去されながらも第2反射層38と赤色の着色層50が残っており、その下層の基材20が任意の濃度に発色している。レーザで印字されていない区域の全面には第1反射層36があり、第2反射層38やそれよりもさらに下層の着色層50や基材20は観察することができない。
【0113】
このような構成により、情報記録媒体10fでは、顔の画像22がレーザで印字されている箇所で、かつ、着色層50が形成されている領域では、入射光74に対する反射光74aは、顔の画像22が赤く着色されて見える。着色層50が形成されていない領域では、入射光75に対する反射光75aは、情報記録媒体10aの印字24と同様に、印字24本来の色で観察することができる。
【0114】
すなわち、着色層50がある領域では、レーザで印字した区域が赤色に着色され、着色層50形成されていない領域では、本来の印字色となる。したがって、着色層50の配置パターンに対応するように、基材20が発色する。
【0115】
レーザ印字前にどのような形状で着色層50が設けられているのかは、情報記録媒体10の製造者と、製造者から予め知らされている者に限られ、また、着色層50の形状は、公知の印刷法によって所望される任意の形状に自由に設けられる。したがって、第三者による改竄や偽造によって、正しい発色パターンを再現することは不可能であり、情報記録媒体10fの改竄や偽造は不可能となる。
【0116】
また、光学変化効果については、顔の画像22や印字24等のレーザ描画部で、かつ、回折構造34と第2反射層38が設けられている箇所では、ある一定の角度範囲内において回折光が観察可能となっており、別の角度範囲では顔の画像22や印字24が観察できる。
【0117】
仮に、基材20の透明保護シート40が無い側の面から基材20だけが削り出され、不正な情報を印字した基材20を貼り合わせるような改竄が試みられても、第1反射層36があるために、不正な情報を保護シート40側の面から観察することができない。
【0118】
さらに、透明保護シート40側から顔の画像22までが削り取られ、不正な顔写真画像が貼り合わされるような偽造が試みられても、どのような観察角度からも顔の画像上で回折光を観察することができない。
【0119】
したがって、仮に改竄や偽造が試みられても、真正ではないことを容易に判定することができる。
【0120】
(その他の変形例)
上記各実施形態では図示していないが、情報記録媒体には、必要に応じて、透明保護シート40、基材20、中間層30等の各層間を密着させるために、層間における一部、また全面に、接着層を設けるようにしても良い。
【0121】
接着層は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、または塩化ビニル樹脂等を主成分とする接着剤により形成することができる。必要に応じて接着性付与剤、充填剤、軟化剤、熱光安定剤、酸化防止剤等を配合しても良い。接着性付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等とすることができる。
【0122】
充填剤としては、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等とすることができる。軟化剤としては、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤等とすることができる。熱光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系等とすることができる。酸化防止剤としては、アニリド系、フェノール系、ホスファイト系、チオエステル系等とすることができる。接着層の厚さは、用途に応じて選択されるが、通常0.1μm以上、10μm以下、さらには1μm以上、5μm以下とできる。接着層は、公知の印刷、コーティングによって形成できる。
【0123】
以下、本発明を具体的な実施例によって詳細に説明する。なお、以下の例において、「部」は、質量部を意味する。
【0124】
[実施例1]
実施例1として、
図8に示すような断面構成を有する情報記録媒体10gを作製した。
図8に示す情報記録媒体10gの構成は、
図3に示す情報記録媒体10bの構成と同一である。
【0125】
情報記録媒体10gを作製するために、透明保護シート40として、厚さ100μmの透明ポリカーボネート(通称PC)フィルムを使用した。
【0126】
次に、透明保護シート40の片面に、下記組成物からなる印刷層インキをグラビア印刷法にて文字形状に印刷、乾燥し、膜厚1μmの印刷層42を形成した。
【0127】
(印刷層インキ)
白色顔料 15部、
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 25部、
トルエン 20部、
メチルエチルケトン 40部。
【0128】
次に、透明保護シート40の印刷層42が形成されている面に、下記組成物からなる回折構造層インキをグラビア印刷法にて塗布、乾燥し、膜厚1.5μmの回折構造層32を形成した。
【0129】
(回折構造層インキ)
ウレタン樹脂 20部、
酢酸エチル 30部、
メチルエチルケトン 50部。
【0130】
次に、回折構造34の逆形状となる母型が形成されたプレス版を熱し、ロールエンボス法によって熱圧して回折構造層32上の表面に回折構造34を形成した。
【0131】
次に、回折構造34の第1反射層36として、予め真空蒸着法によりアルミニウムの薄膜を膜厚40nmで形成し、続いて酸化チタンの薄膜を膜厚60nmで形成し、透明保護シート40上に中間層30を設けた。
【0132】
次に、厚さ600μmのレーザ発色性ポリカーボネートからなる基材20の片面に、中間層30を設けた透明保護シート40を、中間層30が内側となるように重ねて置き、温度185℃、圧力が約0.9MPaの条件でプレス機によって熱圧プレス加工を行い、透明保護シート40と中間層30と基材20を一体化した後、カード形状に抜き加工を行った。
【0133】
最後に、1枚1枚のカードに、個別情報として予め顔写真画像と本人データの文字情報を準備し、波長1064nmのYAGレーザを内蔵したレーザマーキング装置に透明保護シート40が表面となるようセットし、透明保護シート40越しに、基材20に向けてレーザを照射することで顔の画像22と文字の印字24を形成し、偽造防止媒体として適用される情報記録媒体10gを作製した。
【0134】
こうして作製された情報記録媒体10gは、レーザで印字された区域には第1反射層36が除去されながらも第2反射層38が残っており、その下層の基材20が任意の濃度に発色している。また、レーザで印字されていない区域の全面には第1反射層36があり、第2反射層38やそれよりもさらに下層の基材20は観察することができない。
【0135】
このため、観察者80は、ある観察角度では、光源66からの入射光76に対する反射光76aが見えるが、別の観察角度では回折構造34による回折光76bを観察できる。また、反射光76aや回折光76bが見えない垂直付近の観察角度では印刷層42が透明保護シート40の直下に形成されているため、観察者80は、印刷層42を観察することができ、さらにレーザで印字した箇所においては、第2反射層38上に回折構造34が形成されている箇所で、ある観察角度において回折光76bを観察することができる。このように、情報記録媒体10gは、観察角度によって多岐に渡る光学変化を有している。
【0136】
また、情報記録媒体10gは、基材20の透明保護シート40が無い側の面から基材20だけを削り出し、不正な情報を印字した基材20を貼り合わせる不正な改竄を試みても、第1反射層36があるために不正な情報を観察することはできない。別の方法として、透明保護シート40側から顔の画像22までを削り取り、不正な顔写真画像を貼り合わせる偽造を試みても、どの観察角度からも顔画像上で回折光が観察される。このように、偽物であることが容易に判別可能である。
【0137】
[実施例2]
実施例2として、
図7に示すような断面構成を有する情報記録媒体10fを作製した。
【0138】
情報記録媒体10fを作製するために、まず、透明保護シート40として、厚さ100μmの透明ポリカーボネート(通称PC)フィルムを使用した。
【0139】
次に、透明保護シート40の片面に、下記組成物からなる印刷層インキにてオフセット印刷法で文字を印刷し、膜厚1μmの印刷層42を形成した。
【0140】
(印刷層インキ)
炭酸カルシウム 20部、
ロジン変性フェノール樹脂 25部、
植物油 20部、
工業用揮発油 35部。
【0141】
次に、透明保護シート40の印刷層42が形成されている面に、下記組成物からなる回折構造層インキをグラビア印刷法にて塗布、乾燥し、膜厚1.5μmの回折構造層32を形成した。さらに、回折構造34の逆形状となる母型が形成されたプレス版を熱し、ロールエンボス法によって熱圧して回折構造層32上の表面に回折構造34を形成した。
【0142】
(回折構造層インキ)
ウレタン樹脂 20部、
酢酸エチル 30部、
メチルエチルケトン 50部。
【0143】
また、回折構造34の第1反射層36として、予め真空蒸着法によりアルミニウムの薄膜を膜厚40nmで形成し、さらに第2反射層38も真空蒸着法により硫化亜鉛の薄膜を膜厚70nmで形成し、透明保護シート40上に中間層30を設けた。
【0144】
次に、厚さ600μmのレーザ発色性ポリカーボネート基材20の片面の一部分に、下記着色層インキをグラビア印刷法にて任意の形状で塗布、乾燥し、厚さ1μmの着色層50を設けた。
【0145】
(着色層インキ)
ローダミン染料 3部、
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 25部、
トルエン 30部、
メチルエチルケトン 40部、
添加剤等その他 2部。
【0146】
次に、中間層30を設けた透明保護シート40と着色層50を設けた基材20とを、中間層30と着色層50とが各々接するように重ねて置き、プレス機によって温度185℃、圧力約0.9MPaの条件で熱圧プレス加工を行い、透明保護シート40と中間層30、着色層50、基材20を全て一体化した。さらに、着色層50が完全に内側に内包されるように、カード形状に抜き加工を行った。
【0147】
最後に、1枚1枚のカードに、個別情報として予め顔写真画像と本人データの文字情報を準備し、波長1064nmのYAGレーザを内蔵したレーザマーキング装置に透明保護シート40が表面となるようセットし、透明保護シート40越しに、基材20に向けてレーザを照射して顔の画像22と文字の印字24を形成し、偽造防止媒体として適用される情報記録媒体10fを作製した。
【0148】
こうして作製された情報記録媒体10fは、レーザで印字された区域には第1反射層36が除去されながらも第2反射層38と赤色の着色層50が残っており、その下層の基材20が任意の濃度に発色している。また、レーザで印字されていない区域の全面には第1反射層36があり、第2反射層38やそれよりもさらに下層の着色層50や基材20は観察することができない。
【0149】
顔の画像22がレーザで印字されている箇所で、かつ、着色層50が形成されている領域では、光源64からの入射光74が反射してなる反射光74aは、顔の画像22が赤く着色されて見える。一方、着色層50が形成されていない領域では、入射光75が反射してなる反射光75aは、印字24本来の色で観察される。即ち、着色層50がある領域では、レーザで印字した区域が赤色に着色されて観察されるが、着色層50が形成されていない領域では、本来の印字色が観察される。
【0150】
レーザ印字前にはどのような形状の着色層50が設けられているかは、情報記録媒体10fの製造者と、製造者から予め知らされている者に限られる。また、着色層50の形状は、公知の印刷法によって任意の所望の形状に自由に設けられる。特に、レーザ印字面積が多い場合には、着色層50の形状を真贋判定に適用することが可能である。
【0151】
なお、光学変化効果については、顔の画像22や印字24等のレーザ描画部で、かつ、回折構造34と第2反射層38が設けられている箇所では、ある一定の角度範囲内において回折光が観察可能であり、別の角度範囲では顔の画像22や印字24が観察可能である。
【0152】
また、情報記録媒体10fは、基材20の透明保護シート40が無い側の面から基材20だけを削り出し、不正な情報を印字した基材20を貼り合わせる改竄を試みても、第1反射層36があるために不正な情報を保護シート40側の面から観察することができない。別の方法として、透明保護シート40側から顔の画像22までを削り取り、不正な顔写真画像を貼り合わせる偽造を試みても、どのような観察角度からも顔画像上で回折光を観察することができないので、偽物であることを容易に判別することができる。
【0153】
[実施例3]
実施例3として、
図5に示す情報記録媒体10dを作製した。
【0154】
情報記録媒体10dを作製するために、透明保護シート40として、厚さ100μmの透明ポリカーボネート(通称PC)フィルムを使用した。
【0155】
透明保護シート40の片面に、下記組成物からなる印刷層インキにてオフセット印刷法にて所望の文字形状に印刷し、膜厚1μmの印刷層42を形成した。
【0156】
(印刷層インキ)
白色顔料 20部、
ロジン変性フェノール樹脂 25部、
植物油 20部、
工業用揮発油 35部。
【0157】
次に、中間層30を透明保護シート40上に、所望の場所および形状で形成するために、中間層30を含む中間層転写箔を作製した。
【0158】
中間層転写箔のキャリアとして25μmのポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した。
【0159】
キャリアの片面上に、下記組成物からなる剥離層インキをグラビア印刷法にて塗布・乾燥し、膜厚1μmの剥離層を形成した。
【0160】
(剥離層インキ)
ポリアミドイミド樹脂 19部、
ポリエチレンパウダー 1部、
ジメチルアセトアミド 45部、
トルエン 35部。
【0161】
次に、剥離層上に下記組成物からなる回折構造層インキを、グラビア印刷法にて塗布、乾燥し、膜厚1.5μmの回折構造層32を形成した。
【0162】
(回折構造層インキ)
ウレタン樹脂 20部、
酢酸エチル 30部、
メチルエチルケトン 50部。
【0163】
次に、回折構造34の逆形状となる母型が形成されたプレス版を熱し、ロールエンボス法によって熱圧して回折構造層32上の表面に回折構造34を形成した。
【0164】
次に、回折構造34の第1反射層36として、予め真空蒸着法によりアルミニウムの薄膜を膜厚40nmで形成し、さらに第2反射層38も真空蒸着法により硫化亜鉛の薄膜を膜厚70nmで形成した。
【0165】
次に、接着層として下記組成物からなる接着層インキをグラビア印刷法にて塗布・乾燥して膜厚3μmの接着層を形成し、中間層30を含む中間層転写箔とした。
【0166】
(接着層インキ)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 15部、
アクリル樹脂 10部、
メチルエチルケトン 45部、
トルエン 30部。
【0167】
次に、所望の形状に作製した金属製のスタンパーと連続転写が可能なホットスタンプ機を使用し、透明保護シート40を被転写基材、中間層転写箔を転写材として、転写される中間層30が、回折構造34を含むようにスタンパーの位置合わせを行い、熱と圧力を掛けながら転写加工を行い、透明保護シート40上に中間層30を形成した。
【0168】
次に、厚さ600μmのレーザ発色性ポリカーボネート基材20の片面に、中間層30を設けた透明保護シート40を、中間層30が内側となるように重ねて置き、温度185℃、圧力が約0.9MPaの条件でプレス機によって熱圧プレス加工を行い、透明保護シート40と中間層30と基材20とを一体化した。その後、中間層30が内包されるよう所望の位置でカード形状に抜き加工を行った。
【0169】
最後に、1枚1枚のカードに、個別情報として予め顔写真画像と本人データの文字情報を準備し、波長1064nmのYAGレーザを内蔵したレーザマーキング装置に透明保護シート40が表面となるようセットし、透明保護シート40越しに、基材20に向けてレーザを照射することで顔の画像22と文字の印字24を形成し、偽造防止媒体として適用される情報記録媒体10dを作製した。
【0170】
こうして作製された情報記録媒体10dは、レーザで印字された区域には第1反射層36が除去されながらも第2反射層38が残っており、その下層の基材20が任意の濃度に発色している。また、レーザで印字されていない区域の全面には第1反射層36があり、第2反射層38やそれよりもさらに下層の基材20は観察することができない。
【0171】
また、情報記録媒体10dは、中間層30が基材20と透明保護シート40とて完全に覆われて内包されている。基材20と透明保護シート40は互いに同系の樹脂のため完全に溶融接着している。よって、レーザで印字された画像22や印字24を剥がすことが困難である。さらに中間層30が無い面側から基材20だけを削り出し、不正な情報を印字した基材20を貼り合わせる改竄を試みても、第1反射層36があるために不正に情報を観察することはできない。別の方法として、透明保護シート40側から顔の画像22までを削り取り、不正な顔写真画像を貼り合わせる偽造を試みても、どのような観察角度からも顔画像上で回折光を観察することができず、偽物であることを容易に判別することができる。
【0172】
本発明の情報記録媒体、ラベル、およびカードは、特にID証、パスポート、運転免許証のように、回折構造を有し、レーザ印字情報が施された個人認証用媒体の改竄や偽造を防止するために適用することが可能である。また、本発明の真贋判定方法は、このような情報記録媒体の真贋判定を行うために適用することが可能である。
【0173】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。