IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】光学構造体
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/60 20200101AFI20220802BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20220802BHJP
   G09F 19/12 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
G02B30/60
G02B5/08 Z
G02B5/08 A
G09F19/12 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019523954
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2018021768
(87)【国際公開番号】W WO2018225801
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2017111731
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】田代 智子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】杉原 啓太郎
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/084960(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/075928(WO,A1)
【文献】特開2015-043317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0319395(US,A1)
【文献】国際公開第2016/177470(WO,A1)
【文献】特表2017-505926(JP,A)
【文献】特開2009-080205(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02946942(EP,A1)
【文献】特許第5361741(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0045024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00 - 30/60
G02B 5/08
G09F 19/12
B42D 25/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体感を有するフレームイメージを構造形成面上に表示するための光学構造体において、
前記フレームイメージを表示するフレームモチーフが前記構造形成面に形成され、
前記フレームモチーフは複数の有孔反射セグメントで構成され、
前記各有孔反射セグメントはそれぞれ、前記構造形成面に対する一様な傾斜角の反射層を備えた第1の反射ミラーを1つまたは複数備え、
前記第1の反射ミラーの前記傾斜角は、隣接する前記複数の有孔反射セグメントにわたって徐々に変化するように、前記隣接する前記有孔反射セグメント同士で異なり、
前記複数の有孔反射セグメントのうち少なくとも1つの有孔反射セグメントは、前記第1の反射ミラーが備えられていない開口部を囲
前記光学構造体が傾けられた場合、前記有孔反射セグメント上を移動するグレアの動きが視覚的に連続して見える、光学構造体。
【請求項2】
前記フレームモチーフを構成する前記複数の有孔反射セグメントにおける、隣接する各有孔反射セグメント間の傾斜角の差の平均が0度よりも大きく、10度以下である、請求項1に記載の光学構造体。
【請求項3】
前記有孔反射セグメントが、前記第1の反射ミラーによって複数の線形状に形成されている、請求項1または2に記載の光学構造体。
【請求項4】
前記線形状の幅が100μm以上である、請求項3に記載の光学構造体。
【請求項5】
2つの線形状が互いに平行に形成され、前記平行に形成された線形状のうち、隣接する線形状間の離間距離が100μm以上、1000μm以下である、請求項3または4に記載の光学構造体。
【請求項6】
前記第1の反射ミラーの前記傾斜角、方位角の一方または両方を、前記フレームイメージの元データにおける、前記第1の反射ミラーが有する反射面に対応する部位における光の反射方向に応じて決定する、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の光学構造体。
【請求項7】
前記開口部を囲う前記有孔反射セグメントにおける、前記開口部の面積割合は、10%以上、80%以下である、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の光学構造体。
【請求項8】
前記開口部の面積割合を、該開口部を囲う有孔反射セグメントの前記第1の反射ミラーの傾斜角に基づいて決定する、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の光学構造体。
【請求項9】
前記開口部の大きさを、該開口部を囲う有孔反射セグメントの前記第1の反射ミラーの傾斜角に基づいて決定する、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の光学構造体。
【請求項10】
前記開口部の大きさを、該開口部を囲う有孔反射セグメントの表示するフレームイメージの面の大きさに追従させる、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の光学構造体。
【請求項11】
複数の前記開口部の大きさを、それぞれ個別に設定する、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の光学構造体。
【請求項12】
立体像を表示する多面体モチーフを構成する複数の多面体反射セグメントを、前記開口部の内部に配置する、請求項1乃至11のうち何れか1項に記載の光学構造体。
【請求項13】
前記各多面体反射セグメントはそれぞれ、前記構造形成面に対する一様な傾斜角の1つまたは複数の反射層を備えた第2の反射ミラーを備え、
前記第2の反射ミラーの前記傾斜角は、隣接する前記複数の多面体反射セグメントにわたって徐々に変化するように、前記隣接する前記多面体反射セグメント同士で異なる、請求項12に記載の光学構造体。
【請求項14】
前記複数の有孔反射セグメントにおける、隣接する前記有孔反射セグメント同士の傾斜角の差の平均よりも、前記複数の多面体反射セグメントにおける、隣接する前記多面体反射セグメント同士の傾斜角の差の平均の方が大きい、請求項13に記載の光学構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光の反射によって像を立体的に表示する光学構造体が記載されている。
【背景技術】
【0002】
従来、認証書類、有価証券類、および紙幣等の各種印刷物は、偽造の困難性が要求される。この種の印刷物の偽造を困難にするために、例えば、偽造が困難な光学構造体を印刷物に付すことがなされている(例えば、特表2008-547040号公報参照)。
【0003】
偽造が困難な光学構造体の一例に、像を立体的に表示する光学構造体がある。像を立体的に表示するために、実際の3D形状の奥行きが表示媒体(例えばフィルム)の厚みよりも大きい場合には、例えば、フレネルレンズのように、奥行き方向に直交する面で3D形状を分割し、元の反射情報を保持した複数の鋸歯構造に変換されている。このような表示方法を適用する光学構造体によれば、実際の3D形状のデータさえあれば、後は単純に分割するだけで良いため、非常に簡単に像を立体的に表示することができる。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、このような従来の光学構造体では、以下のような問題がある。
【0005】
すなわち、例えば鳥かごのように、実際には複数のポールが奥行きを持って配置されている3D形状の場合、上記の表示方法に従う光学構造体によれば、各ポール自体は立体的に表示されるが、ポール間の奥行き情報は失われる。このため、立体的なポールが横一列に並んでいるかのように、実際の3D形状とは異なって見えてしまうという問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、3D形状の奥行き情報が失われることなく、イメージをよりリアルに立体的に表示することが可能な光学構造体のモチーフを提供することを目標とする。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0008】
本発明の第1の側面は、立体感を有するフレームイメージを構造形成面上に表示するための光学構造体において、フレームイメージを表示するフレームモチーフが構造形成面上に形成され、フレームモチーフは複数の有孔反射セグメントで構成され、各有孔反射セグメントはそれぞれ、構造形成面に対する一様な傾斜角の反射層を備えた第1の反射ミラーを1つまたは複数備え、第1の反射ミラーの傾斜角は、隣接する複数の有孔反射セグメントにわたって徐々に変化するように、隣接する有孔反射セグメント同士で異なり、複数の有孔反射セグメントのうち少なくとも1つの有孔反射セグメントは、第1の反射ミラーが備えられていない開口部を囲光学構造体が傾けられた場合、有孔反射セグメント上を移動するグレアの動きが視覚的に連続して見える
【0009】
従って、本発明の第1の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、観察者が、フレームモチーフが表示するフレームイメージを見た場合、有孔反射セグメント毎に第1の反射ミラーにおける反射光の反射方向が変わり、反射光の強弱が異なるので立体感が発現される。また、上記構造によれば、少なくとも1つの有孔反射セグメントが、開口部を囲っていることから、フレームモチーフの内側が空洞であるようなフレームイメージを表示することができる。この場合であっても、有孔反射セグメント内に配置される第1の反射ミラーの傾斜角は一様であるため、1つの面としての表現することが可能である。
【0010】
本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面の光学構造体において、フレームモチーフを構成する複数の有孔反射セグメントにおける、隣接する各有孔反射セグメント間の傾斜角の差の平均が0度よりも大きく、10度以下である。
【0011】
従って、本発明の第2の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、隣接する有孔反射セグメントの反射強度が異なることから、イメージに陰影ができ、また、光学構造体を傾けながら観察したとき、光学構造体から反射される光が、隣接する有孔反射セグメント上を離散的に移動する場合においても、視覚的には連続した動きとして認識されるため、フレームモチーフの表示するイメージが立体に見える。特に、フレームモチーフに含まれる複数の有孔反射セグメントを対象とした場合、隣接する有孔反射セグメントにおける傾斜角の差の平均を1度以下とすれば、光学構造体を傾けながら観察したとき、フレームモチーフの表示するイメージは滑らかな曲面として認識される。この曲面の度合いは、隣接する有孔反射セグメントの傾斜角の差が小さいほど高くなる。
【0012】
本発明の第3の側面は、本発明の第1または第2の側面の光学構造体において、有孔反射セグメントが、第1の反射ミラーによって複数の線形状に形成されている。
【0013】
従って、本発明の第3の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、光学構造体を傾けた場合、複数の線形状のうちの少なくとも一部において光が連続的に流れるので、多面体として認識されるようになる。
【0014】
本発明の第4の側面は、本発明の第3の側面の光学構造体において、線形状の幅が100μm以上である。
【0015】
従って、本発明の第4の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、観察者が、光学構造体を観察した場合、線形状のイメージを視認することができる。
【0016】
本発明の第5の側面は、本発明の第3または第4の側面の光学構造体において、2つの線形状が互いに平行に形成され、平行に形成された線形状のうち、隣接する線形状間の離間距離が100μm以上、1000μm以下である。
【0017】
従って、本発明の第5の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、光学構造体を観察したときに視認される線形状同士、特に平行に並んでいる線形状同士が物理的に離れすぎないため、個々に独立したモチーフとして認識される可能性を抑制できる。さらに、光学構造体を傾けると光が線形状上を移動することで、立体感を保持することが可能となる。
【0018】
本発明の第6の側面は、本発明の第1乃至5のうち何れかの側面の光学構造体において、第1の反射ミラーの傾斜角、方位角の一方または両方を、フレームイメージの元データにおける、第1の反射ミラーが有する反射面に対応する部位における光の反射方向に応じて決定する。
【0019】
従って、本発明の第6の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、フレームモチーフの表示するイメージの元となる多面体上の各点における光の反射方向に基づいて第1の反射ミラーの傾斜角と方位角とを設定するため、実際の多面体と同様のグレアを再現でき、実際の多面体に近い立体表現が可能となる。
【0020】
本発明の第7の側面は、本発明の第1乃至6のうち何れかの側面の光学構造体において、開口部を囲う有孔反射セグメントにおける、開口部の面積割合は、10%以上、80%以下である。
【0021】
従って、本発明の第7の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、フレームモチーフが開口部を有する場合であっても、フレームモチーフの表示するイメージの立体感を損なわないようにすることが可能となる。
【0022】
本発明の第8の側面は、本発明の第1乃至7のうち何れかの側面の光学構造体において、開口部の面積割合を、該開口部を囲う有孔反射セグメントの第1の反射ミラーの傾斜角に基づいて決定する。
【0023】
従って、本発明の第8の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、開口部の面積割合を、該開口部を囲う有孔反射セグメントの第1の反射ミラーの傾斜角と関連して変調させることができる。これにより、立体感がより増した光学構造体を実現することが可能となる。
【0024】
本発明の第9の側面は、本発明の第1乃至7のうち何れかの側面の光学構造体において、開口部の大きさを、該開口部を囲う有孔反射セグメントの第1の反射ミラーの傾斜角に基づいて決定する。
【0025】
従って、本発明の第9の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、開口部の大きさを、該開口部を囲う有孔反射セグメントの第1の反射ミラーの傾斜角と関連して変調させることできる。これにより、立体感がより増した光学構造体を実現することが可能となる。
【0026】
本発明の第10の側面は、本発明の第1乃至7のうち何れかの側面の光学構造体において、開口部の大きさを、該開口部を囲う有孔反射セグメントの表示するフレームイメージの面の大きさに追従させる。
【0027】
従って、本発明の第10の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、開口部の大きさを、該開口部を囲う有孔反射セグメントに対応する多面体における面の大きさと関連して変調させることができる。これにより、立体感がより増した光学構造体を実現することが可能となる。
【0028】
本発明の第11の側面は、本発明の第1乃至7のうち何れかの側面の光学構造体において、複数の開口部の大きさを、それぞれ個別に設定する。
【0029】
従って、本発明の第11の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、任意の大きさの開口部を、自由に設定することが可能となる。
【0030】
本発明の第12の側面は、本発明の第1乃至11のうち何れかの側面の光学構造体において、立体像を表示する多面体モチーフを構成する複数の多面体反射セグメントを、開口部の内部に配置する。
【0031】
従って、本発明の第12の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、開口部の内部に、立体像が存在するように見せることができ、複数の多面体が重なったような意匠性の高い表現を実現することが可能となる。
【0032】
本発明の第13の側面は、本発明の第12の側面の光学構造体において、各多面体反射セグメントはそれぞれ、構造形成面に対する一様な傾斜角の1つまたは複数の反射層を備えた第2の反射ミラーを備え、第2の反射ミラーの傾斜角は、隣接する複数の多面体反射セグメントにわたって徐々に変化するように、隣接する多面体反射セグメント同士で異なる。
【0033】
従って、本発明の第13の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、フレームモチーフの表示するイメージと同様に、立体像にも立体感を持たせることができる。それにより、第1の多面体の中に第2の多面体が入っているような意匠性の高い表現を実現することが可能となる。
【0034】
本発明の第14の側面は、本発明の第13の側面の光学構造体において、複数の有孔反射セグメントにおける、隣接する有孔反射セグメント同士の傾斜角の差の平均よりも、複数の多面体反射セグメントにおける、隣接する多面体反射セグメント同士の傾斜角の差の平均の方が大きい。
【0035】
従って、本発明の第14の側面の光学構造体においては、以上のような手段を講じることにより、光学構造体を傾けたときに、フレームモチーフの表示するイメージと多面体モチーフの立体像との両方に立体感を持たせることができ、さらに、フレームモチーフの表示するイメージと多面体モチーフの立体像とで反射光の移動する滑らかさや速さが異なるようになるために、それぞれを異なる印象の多面体として認識し易くすることが可能となる。
【0036】
本発明の光学構造体によれば、3D形状の奥行き情報が失われることなく、像をよりリアルに立体的に表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学構造体の構造を概念的に図示する平面図である。
図2図2は、光学構造体によって表示される対象となる多面体の胴部の手前半分を概念的に図示する斜視図である。
図3図3は、図2に示す多面体の断面図および正面図である。
図4図4は、反射セグメントイメージと構造形成面上の反射セグメントとの関係を概念的に図示する断面図である。
図5A図5Aは、反射ミラーを概念的に図示する斜視図である。
図5B図5Bは、反射ミラーを概念的に図示する斜視図である。
図6A図6Aは、別の反射ミラーを概念的に図示する斜視図である。
図6B図6Bは、別の反射ミラーを概念的に図示する斜視図である。
図7図7は、多面体の反射セグメントイメージと、構造形成面上の反射セグメントとの関係の別の例を概念的に図示する断面図である。
図8図8は、反射ミラーの反射面における光の入射および反射の原理を説明するための概念図である。
図9A図9Aは、反射セグメントの形状を例示する概念図である。
図9B図9Bは、反射セグメントの形状を例示する概念図である。
図9C図9Cは、反射セグメントの形状を例示する概念図である。
図9D図9Dは、反射セグメントの形状を例示する概念図である。
図10図10は、開口部の内部に別のモチーフが配置された光学構造体を概念的に図示する平面図である。
図11図11は、開口部の内部に配置される対象となる多面体イメージを概念的に図示している。
図12図12は、図11に示す多面体イメージを構成する反射セグメントイメージに対応する反射セグメントを概念的に図示する斜視図である。
図13A図13Aは、2つのモチーフを含む反射セグメントにおける断面構造の一例を概念的に図示する断面図である。
図13B図13Bは、2つのモチーフを含む反射セグメントにおける断面構造の別の例を概念的に図示する断面図である。
図13C図13Cは、2つのモチーフを含む反射セグメントにおける断面構造のさらに別の例を概念的に図示する断面図である。
図13D図13Dは、2つのモチーフを含む反射セグメントにおける断面構造のさらにまた別の例を概念的に図示する断面図である。
図14A図14Aは、開口率の異なるいくつかの反射セグメントの構造を概念的に図示する正面図である。
図14B図14Bは、開口率の異なるいくつかの反射セグメントの構造を概念的に図示する正面図である。
図14C図14Cは、開口率の異なるいくつかの反射セグメントの構造を概念的に図示する正面図である。
図15図15は、反射ミラーの変形例を概念的に図示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明の各実施形態に係る光学構造体を、図面を参照して説明する。
【0039】
[本発明の第1の実施形態]
図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る光学構造体について説明する。以下では、光学構造体の構造、光学構造体が含む反射セグメントの構造、および光学構造体の機能について順に説明する。
【0040】
(光学構造体の説明)
本発明の実施形態に係る光学構造体について説明する。
【0041】
図1は、本発明の実施形態に係る光学構造体10を概念的に例示する平面図である。
【0042】
光学構造体10は、光学構造体10によって立体的に表示されるフレームモチーフ21を備える構造形成面11を備えている。フレームモチーフ21は、z方向に対する奥行き感、すなわち、立体感を有するように表示されるフレームイメージを表示する。
【0043】
構造形成面11は、図1に例示される例では、1つのフレームモチーフ21しか備えていないが、同一もしくは異なるフレームモチーフ21を複数備えることができる。
【0044】
図1におけるフレームモチーフ21は、一例として、鳥かごを立体的に示すためのモチーフである。しかしながら、フレームモチーフ21は、鳥かごに限定されるものではなく、任意の像、胸像、文字、シンボル、または、ランドマーク等とできる。また、フレームモチーフ21は、これらの組合せとすることもできる。
【0045】
図2は、光学構造体10によって表示されるフレームイメージ21’を示す斜視図である。
【0046】
図1に示すフレームモチーフ21は、図2に示すような立体的なフレームイメージ21’を、2次元の構造形成面11上に表示する。
【0047】
フレームイメージ21’は、複数の有孔反射セグメントイメージ31’で構成される。図1におけるモチーフ21を構成する反射セグメント31は、図2に示す反射セグメントイメージ31’を正面から見た状態に対応する。
【0048】
図1および図2では、反射セグメント31および反射セグメントイメージ31’が長方形の例を示している。しかしながら、反射セグメント31および反射セグメントイメージ31’の形状は、長方形に限定されるものではなく、三角形、五角形等のような多角形状とすることができる。また、これらの同種または異種の組合せからなる形状とすることもできる。
【0049】
図1に示すようなフレームモチーフ21は、図2に示すような3次元のフレームイメージ21’を、任意の角度から構造形成面11に投影した2次元形状とすることもできる。フレームイメージ21’を平面視で表示する場合には、フレームイメージ21’を平面視した形状でフレームモチーフ21を形成する。このとき、図2におけるフレームイメージ21’の各有孔反射セグメントイメージ31’は、図1の平面図に示す有孔反射セグメント31に対応する。
【0050】
有孔反射セグメント31の大きさは、フレームイメージ21’を平面視したときの反射セグメントイメージ31’の空間的配置に従って決定される。図1に示されるような光学構造体10が表示するモチーフ21の元データは、ベクトルによって表現された領域の集合によって画像を表現するベクトル画像である。また反射セグメント31は、反射ミラーが1つまたは複数配置される複数の反射セルで構成されていても良い。
【0051】
反射セルは視認されない程度のサイズとすることができる。複数の反射セルは、それぞれ反射光の方向や反射光の強度を変えてもよい。これにより、反射セグメント31で構成されるモチーフ21は、より複雑なイメージを表示可能となる。
【0052】
(反射セグメントイメージ)
本発明の実施形態における反射セグメントイメージ31’について説明する。
【0053】
図3(a)および図3(b)は、図2に示すフレームイメージ21’の断面図および正面図である。
【0054】
図1においてモチーフ21を構成する各反射セグメント31は、図2のように各反射セグメントイメージ31’がxy平面に対して為す角度に等しい傾斜角を、構造形成面11に対してそれぞれ有する。尚、構造形成面11は、xy平面に含まれる。
【0055】
図3(a)および図3(b)に示すように、フレームイメージ21’は3種類の格子状の反射セグメントイメージ31’α、31’β、31’γから構成されている。反射セグメントイメージ31’α、31’β、31’γの傾斜角はそれぞれ、xy平面に対して傾斜角α、β、0である。これら傾斜角は0<α<βの関係を有している。傾斜角は、隣接する複数の反射セグメントイメージ31’にわたって徐々に変化する。すなわち、β→α→0→α→βと変化するように、隣接する反射セグメントイメージ31’ の傾斜角は、互いに連続的に変化する。
【0056】
図4(a)は、フレームイメージ21’の有孔反射セグメントイメージ31’と構造形成面11上の反射セグメント31との関係の一例を示す断面図である。
【0057】
図4(a)に示す反射セグメントイメージ31’α、31’βにそれぞれ対応する図4(b)に示す反射セグメント31α、31βは、反射セグメントイメージ31’ α、31’βがそれぞれxy平面に対する傾斜角α、βに等しい傾斜角α、βの反射ミラー41α、41βから構成される。
【0058】
なお、反射セグメントイメージ31’γは、xy平面に対する傾斜角が0(ゼロ)であるので、反射セグメント31γは平面となる。反射セグメント31αおよび31βの詳細構成を、図5A図5B図6A、および図6Bを用いて説明する。
【0059】
反射セグメント31の反射ミラー41は、反射面51を有する。反射セグメント31は、1つまたは複数の反射ミラー41を含む。各反射ミラー41は反射面51を備える。
【0060】
反射セグメント31の構造形成面11に対する反射ミラー41の傾斜角は、一定である。すなわち、各反射ミラー41の反射面51と、構造形成面11とのなす角である傾斜角は、同一の反射セグメント31内では同一である。傾斜角は、隣接する反射セグメント31毎に互いに異なる。
【0061】
反射セグメント31に、複数の反射ミラー41が存在する場合、これら反射ミラー41は直列的に配置できる。
【0062】
図5A図5B図6A、および図6Bは、反射セグメント31α、31βを構成する反射ミラー41α、41βの例を示す斜視図である。
【0063】
図5Aに示すように、反射セグメント31αには、構造形成面11に対して傾斜角αで、高さHの複数の楔形状の反射ミラー41αが、ピッチPで直列的に配置されている。反射ミラー41αの上面は、光を反射するための反射面51αである。高さHは、反射面51の最も高い位置と、最も低い位置との間の距離に相当する。反射ミラー41は、構造形成面11の水平方向に対して傾斜角αで配置されている。図5Aでは、反射ミラー41は、モチーフ21の手前に飛び出すような形状(凸形状)をしており、あたかも出窓を外側から眺めたようになり、空間を感じさせることができる。同様に、モチーフ21の奥に引っ込む形状(凹形状)でも同様に、出窓を内側から眺めたようになり、空間を感じさせることができる。
【0064】
図5Aでは、反射ミラー41αが水平方向に対して傾斜角αで配置され、かつ複数の反射ミラー41αは柱状である。しかしながら、反射ミラー41αの傾斜角αを、モチーフ21に対して上下方向にも持たせることで、手前に飛び出すような形状(凸曲面状)とすることもできる。この場合にも、内部からの圧で面を押し広げたようになり、空間を感じさせることができる。逆に、モチーフ21の奥に引っ込む形状(凹形状)でも同様に、圧で面を押し広げたようになり空間を感じさせることができる。なお、モチーフ21に対する垂直方向にだけ傾斜角を持たせた場合にも、同様に空間を感じさせることができる。
【0065】
また、図5Bに示すように、反射セグメント31αには、1つの反射ミラー41αのみを配置できる。
【0066】
反射セグメント31βには、図6Aに示すように、構造形成面11に対する傾斜角βで、高さHの複数の楔形状の反射ミラー41βが、ピッチPで直列的に配置されている。反射ミラー41βの上面は、光を反射するための反射面51βである。
【0067】
図6Aに示す反射ミラー41βについても、上述したように、反射ミラー41αと同様に配置できる。また、同様に、図6Bに示すように、反射セグメント31βには、1つの反射ミラー41βのみを配置できる。
【0068】
なお、図4(a)および図4(b)では、簡略のために3種類の反射セグメントイメージ31’α、31’β、31’γ、および3種類の反射セグメント31α、31β、31γしか例示していない。しかしながら、反射セグメントイメージ31’および対応する反射セグメント31の種類は3種類に限定されるものではなく、それよりも多くすることも、また、少なくすることもできる。
【0069】
同じモチーフ21に含まれる反射セグメント31において、傾斜角は、隣接する反射セグメント31毎に互いに少しずつ異なる。傾斜角は、隣接する複数の反射セグメント31にわたって徐々に変化してもよい。言い換えれば、隣接する反射セグメント31の傾斜角は、同士で互いに少しずつ異なり、連続的に変化しても良い。同じモチーフ21に含まれるすべての反射セグメント31を対象とした場合、隣接する反射セグメント31における傾斜角の差の平均を、10度以下とすることができる。
【0070】
図7(a)および図7(b)は、有孔反射セグメントイメージ31’と、構造形成面11上の反射セグメント31との関係の別の例を示す断面図である。
【0071】
例えば、図7(a)に示すように、フレームイメージ21’が5つの反射セグメントイメージ31’α、31’β、31’γ、31’δ、31’εを有し、これに対応して図7(b)に示すように、モチーフ21が5つの反射セグメント31α、31β、31γ、31δ、31εにより構成される場合を例に説明する。モチーフ21は光学構造体の構造形成面11に形成されている。反射セグメント31α、31β、31γ、31δ、31εそれぞれに備えられた反射ミラー41α、41β、41γ、41δ、41εの傾斜角は、構造形成面11に対してそれぞれ傾斜角α、β、γ、δ、0である。これら傾斜角は0<α<β<γ<δの関係を有している。このように、隣接する反射セグメント31毎に傾斜角は互いに少しずつ異なる。
【0072】
隣接する反射セグメント31における傾斜角の差は、それぞれ(α-0)、(β-α)、(γ-β)、(δ-γ)である。従って、その平均は、{(α-0)+(β-α)+(γ-β)+(δ-γ)}/4=δ/4である。この値が、10度以下であれば、観察者が光学構造体10を傾けたときに、反射セグメント31上を移動するグレアの動きが視覚的に連続して見えるため、観察者は、モチーフ21を立体的に感じることができる。
【0073】
特に、同じモチーフ21を構成する反射セグメント31が、隣接する反射セグメント31の傾斜角の差の平均が0度よりも大きく、1度以下(この場合、1度≧δ/4>0)であれば、光学構造体10を傾けたとき反射セグメント31上を移動するグレアの動きが滑らかになるため、フレームモチーフ21のイメージは滑らかな曲面的なフレームイメージとして視認される。尚、フレームモチーフ21のグレアの挙動は、フレームイメージ21’のグレアの挙動と同一である。これによりフレームモチーフ21は立体的な像を表示する。
【0074】
図8は、反射ミラー41の反射面51における光の入射および反射の原理を説明するための概念図である。
【0075】
図8に示すように、反射面51の法線方向DNと、反射面51に入射する入射光Linの入射方向との為す角度θinが、入射光Linの入射角θinである。反射面51は、入射光Linを傾斜角αに基づく方向へ正反射させる。
【0076】
ピッチPは、反射セグメント31内では一定または規則的とできる。一定のピッチPまたは規則的なピッチPの平均は、5μm以上、300μm以下とでき、さらには、5μm以上、100μm以下とすることができる。ピッチPを5μm以上とすることにより、複数の反射ミラー41がピッチPで一定間隔に直列的に並んでいても、各反射ミラー41の各反射面51から回折光が射出されることはない。さらに、複数の反射ミラー41のピッチPを規則的ではあるが、一定間隔でなくすることで回折光の射出を防止できる。そのため、光学構造体10が表示するイメージは、各反射面51から射出される光となり、上述した正反射に基づく白色光によって再生される。
【0077】
光学構造体10を約30cm離して観察した場合の人の目の分解能は100μm程度と言われている。従って、ピッチPを100μm以下にすることにより、各反射面51が、光学構造体10の観察者Kによって視認されにくい。このため、観察者Kは、反射セグメント31を各反射ミラー41の一体として認識する。
【0078】
反射ミラー41の高さHは、反射セグメント31内で一定とできる。また、図4(b)および図7(b)に示すように、同じモチーフ21に含まれる反射セグメント31において一定とできる。同じモチーフ21に含まれる反射セグメント31の高さHを一定とすることで、異なる反射セグメント31において高さHが異なる光学構造体10と比べて、反射ミラー41を精度良く形成することが容易となる。
【0079】
図5A図5B図6A、および図6Bでは、例として凸形状の反射ミラー41を示しているが、反射ミラー41は、凹形状とすることもできる。反射ミラー41の傾斜角αの凹凸は、フレームイメージ21’の凹凸に対応して決定する。反射ミラー41の方位角は、反射ミラー41の反射面51に対応するフレームイメージ21’上の部位における光の反射方向に応じて決定する。
【0080】
反射ミラー41の反射面51は、多層干渉層の表面を有することができる。多層干渉層は、複数の誘電体層が堆積され、複数の誘電体層の堆積方向において、互いに接する誘電体層間での屈折率が互いに異なることによって、所定の波長の光が反射する。これにより、光学構造体10は、多層干渉層が反射する光の波長に応じた色を有するイメージを表示できる。
【0081】
多層干渉層では、互いに隣接する誘電体層間での屈折率が互いに異なることによって、誘電体層の各界面において、多層干渉層に入射した光が反射する。そして、各界面において反射した光の干渉によって、所定の波長の光が強めあったり、弱めあったりする。これにより、多層干渉層は、所定の波長の光を射出する。
【0082】
このような多層干渉層は、高屈折率層と低屈折率層とが堆積された積層単位を複数備えても良い。高屈折率層の形成材料は、酸化チタン等であり、低屈折率層の形成材料は、酸化ケイ素等である。
【0083】
次に、図9A図9B図9C、および図9Dを参照して、有孔反射セグメント31の形状について説明する。
【0084】
図9A図9B図9C、および図9Dは、有孔反射セグメント31の形状を例示する概念図である。セグメント形状60の有孔反射セグメント31の領域に、反射ミラー41は配置されている。
【0085】
上述したように、各反射セグメント31はそれぞれ一様な傾斜角(例えば、傾斜角α)を有する反射ミラー41を有する。各反射面51は、入射光Linを、この場合、傾斜角αに基づく方向に正反射する。この反射光Loutによってフレームイメージは、セグメント形状60に沿って表示される。
【0086】
図9A図9B図9C、および図9Dはそれぞれ、反射セグメント31A、31B、31C、31Dにおいて表示されるセグメント形状60の例として、セグメント形状60A、60B、60C、60Dを示す。
【0087】
図9Aに示すセグメント形状60Aは、複数の直線形状が平行に配置されてなるストライプ形状である。図9Bに示すセグメント形状60Bは、複数の曲線形状が規則的に配置されてなる形状である。図9Cに示すセグメント形状60Cは、複数の直線形状によって構成された幾何学形状である。図9Dに示すセグメント形状60Dは、ドットが配置されてなる形状である。ドットは、周期的、規則的、ランダムに配置できる。
【0088】
セグメント形状60はこれらに限定されるものではなく、任意の直線形状、曲線形状、自由形状等を組み合わせることによって、網柄、格子柄、レース柄、幾何学柄、植物柄、花柄、ダマスク柄、アラベスク柄、文字柄、または、シンボル状柄等を形成できる。また、セグメント形状60は、これらの同種、異種の組合せの柄等を形成できる。
【0089】
セグメント形状60は、光学構造体10を傾けたときに反射セグメント31内において光が移動する方向に連続した柄、例えばセグメント形状60A、60B、60Cのような柄とすることができ、セグメント形状60Dのような離散的な柄とすることもできる。
【0090】
セグメント形状60は、網形状、格子形状、レース状形状、幾何学形状、植物状形状、花状形状、ダマスク状形状、アラベスク状形状、文字形状、またはシンボル形状とできる。また、セグメント形状60は、これらの同種または異種の組み合わせとできる。これにより、意匠性の高いイメージを表示できる。
【0091】
図9Aおよび図9Bのように、線形状が互いに交点を持たないセグメント形状の場合、隣接する線形状との間隔を1000μm以下とすることができる。これにより、各線形状が離れすぎないため、観察者Kが各線形状を独立した物体として見ることなく、線形状の一体で構成された面として反射セグメント31を認識する。
【0092】
図9A図9B、および図9Cのような線形状の幅は、100μm以上とすることができる。図9Dのような円形の直径は、100μm以上とすることができる。上述したように、光学構造体10を約30cm離して観察した場合の人の目の分解能は100μm程度と言われている。従って、図9A図9B、および図9Cのような線形状の幅、および図9Dのような円形の直径が100μm以上であれば、観察者Kは、セグメント形状60を視認することができる。
【0093】
このように、図9A図9B図9C、および図9Dにそれぞれ示す各有孔反射セグメント31A、31B、31C、31Dは、図中において黒色で示すセグメント形状60A、60B、60C、60Dの箇所にしか反射ミラー41が配置されていない。換言すると、有孔反射セグメント31A、31B、31C、31D内には、反射ミラー41が配置されていない部位も存在する。この部位は、開口部となる。開口部は、有孔反射セグメント31に囲われている。
【0094】
光学構造体10では、複数の反射セグメント31のうち少なくとも1つは、開口部を囲う。また、反射ミラー41は透光性、または遮光性の反射層を備え、開口部は反射層を備えないこともできる。あるいは、反射ミラー41は遮光性の反射層を備え、開口部は透光性の反射層を備えることもできる。これにより、反射ミラー41、反射セグメント31で光を反射し、開口部は光を透過するため、開口部が、絵柄を透過することができる。これにより、光学構造体10は、豊かで複雑なイメージを表現できる。また、光学構造体10は、印刷体に適用することができる。
【0095】
光学構造体10を、接着層を介して印刷体に貼ることで、光学構造体10を、印刷体に適用できる。印刷体は、フィルム、シート、カード、または紙に印刷されたものとできる。反射ミラー41は透光性もしくは遮光性の反射層を備え、開口部に反射層を備えない構成は、反射層上の一部に被覆層を設け、被覆層以外を除去する方法で形成できる。反射層上の一部に被覆層を設ける方法、また反射層を部分的に除去する方法は、以下に示す4つの方法がある。
【0096】
第1の方法は、被覆層を印刷で部分的に設けることである。第2の方法は、紫外線露光によって溶解する樹脂材料、または、溶解し難くなる樹脂材料を塗布し、パターン状に紫外線を露光した後、被覆層を現像することである。第3の方法は、溶解性樹脂を部分的に形成した後に被覆層を形成し、溶解性樹脂および被覆層を溶剤で部分的に除去することである。第4の方法は、エッチング液の透過性の異なる被覆層を、第1反射層36となる反射層上に堆積させ、被覆層と第1反射層とを、エッチング液の透過性の差により選択的にエッチングすることである。
【0097】
図10は、開口部の内部に別のモチーフが配置された光学構造体を概念的に図示する平面図である。
【0098】
反射セグメント31において表示されるセグメント形状60の柄は、図10に示すように、セグメント形状60を備えたすべての反射セグメント31において同一もしくは類似のものとすることができる。これにより、光学構造体100を傾けたときにグレアが、連続的かつ一貫性を持って移動するので、自然な立体感を表現できる。
【0099】
一方、反射セグメント31において表示されるセグメント形状60の柄は、必ずしもセグメント形状60を備えたすべての反射セグメント31で同一もしくは類似のものではなくてもよい。このような光学構造体100は、セグメント形状60を備えたすべての反射セグメント31において同一もしくは類似のパターンとした場合より複雑なイメージを表示する。モチーフ21の立体感は、セグメント形状60の柄に関係なく、各反射セグメント31を構成する反射ミラー41の傾斜角の制御によって実現できる。そのため、反射セグメント31に異なるセグメント形状60を設けることで、一定の立体感を保持しつつ意匠性を高めることができる。
【0100】
次に、以上のような本発明の第1の実施形態に係る光学構造体の機能について説明する。
【0101】
モチーフ21は、複数の反射セグメント31によって構成される。反射セグメント31に配置される反射ミラー41の傾斜角は、元となるフレームイメージ21’の反射セグメントイメージ31’のxy平面に対する傾斜角である。反射ミラー41の方位は、該反射面51に対応するフレームイメージ21’上の部位における光の反射方向に応じて決定される。このように、モチーフ21は、傾斜角や方位角が様々である反射ミラー41から構成される。そのため、光学構造体10に所定の方向から光が入射したときの反射光の方向や、観察者Kの目に入ってくる光の強度は様々である。
【0102】
図8を用いて説明したように、傾斜角αの反射ミラー41に、所定の方向から入射光Linが入射した場合、反射ミラー41の反射面51の法線方向DNは、反射ミラー41の傾斜角αによって決定される。隣接する反射セグメント31(図示せず)において法線方向DNは、互いに少しずつ異なる。これにより、光学構造体10に形成されるモチーフ21は、立体感を有するイメージとして認識される。
【0103】
入射光Linの入射角θinと、反射光Loutの反射角θoutは、法線方向DNを基準とした角度であり、両者は法線方向DNに対して対称である。観察者Kが光学構造体10を見るときの観察方向DOが、反射光Loutの射出方向と同じであるとき、観察者Kは反射セグメント31を最も明るく視認できる。
【0104】
一般に、光学構造体10は、太陽光や室内の蛍光灯等で観察されることが想定される。反射光Loutは、空間的、強度的に分布をもって射出される。したがって、観察方向DOが反射光Loutの射出方向と一致しない場合においても、反射光Loutのうち、観察方向DOに射出される反射光成分である観察光Lobは観察者Kの目に入る。反射光Loutと観察光Lobとの角度差θが小さいほど、観察光Lobの強度は大きく、観察者Kは反射セグメント31を明るく感じる。
【0105】
このように、各反射セグメント31はそれぞれに固有の傾斜角および法線方向DNを有しており、反射光Loutと観察光Lobの角度差θが異なる値を取る。その結果、観察者Kは、モチーフ21を、光の強度が互いに異なる複数の反射セグメント31によって立体感を備えたイメージとして認識できる。
【0106】
また、反射セグメント31の面積を大きくすると、隣接する傾斜角の差が大きくなり、ゴツゴツした模様になる。逆に、反射セグメント31の面積を小さくすると、隣接する傾斜角の差が小さくなり、滑らかに見える。
【0107】
また、フレームモチーフ21の表示するイメージは、反射ミラー41が配置されない領域、すなわち開口部を囲った反射セグメント31を1つ以上有している。したがって、図10に示すように、開口部の内部に、別のモチーフ22を配置することによって、例えば、鳥かごであるモチーフ21の中に、鳥のようなモチーフ22を配置することができる。さらに、各反射セグメント31が異なる傾斜角であることによって、反射セグメント31毎に表示される反射方向が制御される。したがって、反射セグメント31は、一部が開口部であっても、1つの反射セグメント31として機能する。このため、モチーフ21は、立体感を損なわれることはない。
【0108】
さらに、反射セグメント31に形成されるセグメント形状60の柄や配置間隔を、上述したような光学特性を考慮し、適切に決定することにより、反射セグメント31を1つの面として認識させつつ、隣接する反射セグメント31とは異なり、かつ光学構造体10を傾けたときに連続的に光が移動する効果を付与できる。上述したように、所定の観察角度から光学構造体10を観察したときに、各反射セグメント31の明るさの違いによって立体感が表現される。実際の立体物がそうであるように、光学構造体10を傾けたときにモチーフ21上を光が連続的に移動する様子によっても立体感を付与できる。
【0109】
さらにまた、隣接する反射セグメント31の傾斜角の差が大きい場合は、光学構造体10を傾けたときに、各反射セグメント31が個々に独立して光るため連続性が感じられなくなる。しかしながら、前述したように、隣接する反射セグメント31における傾斜角の差の平均を10度以下とすれば、隣接する反射セグメント31上を反射光が離散的に移動する場合においても、視覚的に連続した動きとして認識されるため、モチーフ21を立体的に視認できる。特に、隣接する反射セグメント31における傾斜角の差の平均が1度以下になると、反射光の動きが連続的になるため、モチーフ21を滑らかな曲面からなる多面体状に視認できる。このように、各反射セグメント31の傾斜角を調整することによって、光が移動する速さ、別の表現をすると、光の移動の細かさや粗密さを制御し、所定のフレームイメージ21’の曲面度合いを実現することができる。
【0110】
このように、本発明の実施形態に係る光学構造体によれば、3D形状の奥行き情報が失われることなく、モチーフのイメージをよりリアルに立体的に表示することが可能となる。
【0111】
[本発明の第2の実施形態]
図面を参照して、本発明の第2の実施形態に係る光学構造体について説明する。以下では、光学構造体の構造、光学構造体が含む反射セグメントの構造、光学構造体の機能について順に説明する。なお、以下の説明に用いる図中の符号は、本発明の第1の実施形態で説明した部分と同一部分については同一符号を付して示し、重複説明を避ける。
【0112】
(光学構造体の説明)
本発明の実施形態に係る光学構造体を、図10を用いて説明する。
【0113】
図10は、開口部の内部に別のモチーフが配置された光学構造体を概念的に図示する平面図である。
【0114】
光学構造体100は、図10に示す立体的なイメージを表示するモチーフとして、フレームモチーフ21と多面体モチーフ22とを備える構造形成面11を備えている。図10では、フレームモチーフ21が鳥かごを示し、多面体モチーフ22が鳥かごの中の鳥を示している。
【0115】
フレームモチーフ21は、図1と同様に、複数の反射セグメント31から構成されている。反射セグメント31には、図9Cに示すような幾何学形状のセグメント形状に対応して反射ミラー41が配置されている。
【0116】
また、鳥かごの中に鳥がいるように表示するために、フレームモチーフ21の有孔反射セグメント31の第1の反射ミラー41が配置されていない領域、すなわち、開口部に多面体モチーフ22の多面体反射セグメント31の第2の反射ミラーが配置されている。尚、第1の反射ミラーと第2の反射ミラーは同様の反射ミラーとできる。
【0117】
図10に示す光学構造体100では、構造形成面11が、2つのモチーフ21、22を備えている例を示しているが、構造形成面11は、3つ以上のモチーフを備えることもできる。さらに、これら複数のモチーフは、すべてを異なるモチーフとすることも、すべてを同一のモチーフとすることも、一部のみを同一のモチーフとすることもできる。
【0118】
多面体モチーフ22は、鳥に限定されず、他に胸像、ランドマーク、像、文字、シンボル等とすることもでき、これらを組み合わせこともできる。
【0119】
図11は、開口部に配置される対象となる多面体イメージの例を示す図である。
【0120】
図11は、の多面体モチーフ22によって表示される鳥を示す多面体イメージ22’の図である。図10に示す多面体モチーフ22は、図11に示すように、3次元形状を有する多面体イメージ22’を、2次元の構造形成面11上に表示する。
【0121】
フレームイメージ21’と同様に、多面体イメージ22’もまた複数の多面体反射セグメントイメージ32’から構成されている。多面体反射セグメントイメージ32’ の輪郭は多角形状である。図11において、多面体反射セグメントイメージ32’は三角形状であるが、多面体反射セグメントイメージ32’の形状は三角形状に限らず、三角形状、五角形状等のような多角形状とすることもできる。円形状、楕円形状等の曲線によって区画される形状とすることもできる。あるいは、これらの同種または異種の組合せからなる形状とすることもできる。光学構造体10が表示するフレームモチーフ21および多面体モチーフ22の元データは、ベクトルによって定められた領域の集合によって画像を表現するベクトル画像である。また、多面体反射セグメント32は三角形状、五角形状等のような多角形状とできる。多面体反射セグメント32は円形状、楕円形状等の曲線によって区画される形状とすることもできる。あるいは、これらの同種または異種の組合せからなる形状とすることもできる。また多面体反射セグメント32は、反射ミラーが1つまたは複数配置される複数の反射セルで構成されていても良い。反射セルは視認されない程度のサイズとすることができる。複数の反射セルは、それぞれ反射光の方向や反射光の強度を変えてもよい。これにより、多面体反射セグメント32で構成されるモチーフ21は、より複雑なイメージを表示可能となる。
【0122】
(反射セグメントイメージ)
本発明の実施形態における反射セグメントイメージを説明する。
【0123】
図12は、図11に示す多面体イメージ22’を構成する立体反射セグメントイメージ32’に対応する多面体反射セグメント32を示す斜視図である。
【0124】
反射セグメント32の反射ミラー42は、反射面52を有する。反射セグメント32は、1つまたは複数の反射ミラー42を含む。各反射ミラー42は反射面52を備える。
【0125】
各反射ミラー42の反射面52と、構造形成面11とのなす角である傾斜角は、同一の反射セグメント32内では同一である。傾斜角は、隣接する反射セグメント32毎に互いに異なる。
【0126】
図12に示すように、同一の反射セグメント32に、複数の反射ミラー42が存在する場合、これら反射ミラー42は直列的に配置できる。この反射ミラー42は一定または規則的な高さH、ピッチPとできる。一定のピッチPまたは規則的なピッチPの平均は、5μm以上、300μm以下とでき、さらには、5μm以上、100μm以下とすることができる。ピッチPを5μm以上とすることにより、複数の反射ミラー41がピッチPで一定等間隔に直列的に並んでいても、各反射ミラー41の各反射面51から回折光が射出されることはない。さらに、複数の反射ミラー41のピッチPを規則的ではあるが、一定間隔でなくすることで回折光の射出を防止できる。そのため、光学構造体10が表示するイメージは、各反射面51から射出される光となり、上述した正反射に基づく白色光によって再生される。
【0127】
多面体モチーフ22を形成するすべての反射セグメント32を対象とした場合において、隣接する反射セグメント32における傾斜角の平均の角度差は、フレームモチーフ21を形成するすべての反射セグメント32を対象とした場合において、隣接する反射セグメント32における傾斜角の平均の角度差よりも大きくすることができる。
【0128】
隣接する反射セグメントの反射強度が異なることから、モチーフに陰影ができ、また観察者Kが光学構造体100を傾けたときに反射セグメント31、32上を移動するグレアの動きが視覚的に連続して見えるため、モチーフ21、22がともに立体的に感じられる。さらに、モチーフ21の反射セグメント31上を移動するグレアの動きが、モチーフ22の反射セグメント32上を移動するグレアの動きよりも速く滑らかになり、2つのモチーフが異なる反射特性を示すため、両者を異なるモチーフとして認識することができる。
【0129】
反射セグメント32についても、図8を用いて説明したように、反射面52の法線方向DNと、反射面52に入射する入射光Linの進行方向とが為す角度θinが、入射光Linの入射角θinであり、入射角θinは、観察者Kが光学構造体10を観察する角度と観察時の光源の位置によって決定される。反射面52は、入射光Linを傾斜角に基づく方向に正反射させる。
【0130】
ピッチPもまた、反射セグメント31の場合と同様、同一の反射セグメント32内では一定であり、反射セグメント31について説明したものと同様の理由で、5μm以上、300μm以下とすることができる。さらには、5μm以上、100μm以下とすることができる。これによって、各反射ミラー42が光学構造体10の観察者Kによって視認されることが抑えられる。従って、観察者Kは、反射セグメント32を各反射ミラー42の一体として認識できる。
【0131】
反射セグメントのピッチPを5μm以上とした場合、複数の反射ミラー42が等間隔に並んでいても、各反射面52から回折光が射出されない。そのため、光学構造体10が表示するイメージは、各反射面52から射出される光であって、上述した正反射に基づく白色光によって再生される。
【0132】
一方、反射セグメントのピッチPを5μm未満の光学構造体とした場合、等間隔に並んだ複数の反射面から回折光が射出され、モチーフ22は観察角度に応じて異なる色を呈したイメージとして視認される。光学構造体のピッチPが5μm以上の場合は、反射面52にピッチ5μm未満の格子構造を重畳することもできる。
【0133】
光学構造体のピッチPが0.8~5μmの回折格子の場合には回折光による虹色を、ピッチPが0.8μm未満のサブ波長格子の場合には正反射方向にピッチPに応じた波長の色を呈する。
【0134】
回折格子構造を一部の反射面52に重畳したり、反射面52の一部の領域に重畳したりすると、濃淡表現もできる。さらに、格子構造のピッチを反射セグメントごと、あるいは反射セグメント内の隣接する反射面52で変えることで、反射単位ごとに異なる色を表示させたり、混色を表示させたりすることができる。
【0135】
モチーフ21、22を構成する反射ミラー41、42は、ともにピッチPが5μm以上、300μm以下もしくは5μm未満とすることも、一方をピッチ5μm未満とすることもできる。前者の場合は、モチーフ21、22が白色もしくは有彩色(虹色)の同じ属性の色で表示されるため、光学構造体10が全体として統一感のある見た目となる。後者の場合には、モチーフ21、22が白色と有彩色という属性の異なる色で表示されるため、それぞれ異なるモチーフとして認識しやすくなるとともに、意匠性が高くなる。
【0136】
高さHは、反射セグメント31の場合と同様、反射セグメント32においても、全ての反射セグメント32で等しくすることができる。これにより、異なる反射セグメント32において高さHが互いに異なる場合と比べて、反射ミラー42を形成する工程において、反射ミラー42の形状を精度良く形成することができる。
【0137】
なお、反射ミラー42の傾斜角は、フレームイメージ21’の凹凸に対応した傾斜角とすることができる。また、反射ミラー42の形状は、構造形成面11において三角柱状とできる。反射ミラー42は、凸部とすることも、凹部とすることもできる。
【0138】
反射ミラー42の反射面52は、多層干渉層の表面を有することができる。多層干渉層は、複数の誘電体層が堆積され、複数の誘電体層の堆積方向において、互いに接する誘電体層間での屈折率が互いに異なることによって、所定の波長の光を反射する。
【0139】
これにより、光学構造体100は、多層干渉層が反射する光の波長に応じた色を有するイメージを表示することができる。
【0140】
図13Aは、フレームモチーフ21と多面体モチーフ22が隣接して表示される領域における断面構造の一例を示している。フレームモチーフ21の反射セグメント31は、セグメント形状60を表示する領域A、Cに反射ミラー41を備えている。セグメント形状60の開口部Bには、モチーフ22の反射セグメント32の反射ミラー42を備えている。
【0141】
図13Aに例示する断面図は、図10のように、構造形成面11に有孔反射セグメント31内に多面体反射セグメント32を備えた構造を概念的に図示する。従って、領域A、Cに配置される反射ミラー41の傾斜角αは等しい。しかしながら、領域Cがモチーフ21を構成する複数の反射セグメント31を含んでいる場合には、各反射セグメント31に固有の傾斜角の反射ミラー41が配置される。
【0142】
反射セグメント31のセグメント形状60の開口部Bのように、モチーフ21が表示されない領域では、反射セグメント31がないため、図13Aに示すように反射ミラー41が配置されていない。このように、構造形成面11上には、各モチーフを表示する反射セグメント31、32の配置に対応して反射ミラー41、42が形成される。
【0143】
図13Bは、フレームモチーフ21と多面体モチーフ22が隣接して表示される領域における断面構造の別の例を示している。
【0144】
図13Bに示す断面構造は、図13Aに示す反射ミラー41、42の表面を、反射層54で覆った構造となっている。反射層は、透光性、遮光性とすることができる。透光性の反射層は誘電体層とでき、遮光性の反射層としては金属層とできる。反射層の金属はアルミニウムのようなものである。
【0145】
反射ミラー41、42の表面を反射層54で覆うことによって、フレームモチーフ21と多面体モチーフ22との両方の光沢性を高めて表示することができる。
【0146】
図13Cは、フレームモチーフ21と多面体モチーフ22が隣接して表示される領域における断面構造のさらに別の例を示している。
【0147】
図13Cに示す断面構造は、図13Bに示す領域Aと領域Bとが離れており、領域Aと領域Bとの間は、反射ミラーも反射層もない領域Dとなっている。
【0148】
図13Bにおいて説明したように、領域A、B、Cの表面は、反射層54で覆われていることにより、光沢表示される。一方、領域Dの表面は、反射ミラーも反射層もなく、光は反射されないことから、暗く表示される。領域Dのように暗く表示される領域を有することによって、領域Dに隣接する領域A、Bの明るさをより強調して表示することができる。また反射層54の無い領域には、別の絵柄を設けることができる。絵柄は印刷等で形成できる。
【0149】
図13Dは、フレームモチーフ21と多面体モチーフ22が隣接して表示される領域における断面構造のさらにまた別の例を示している。
【0150】
図13Dに示す断面構造は、図13Aに示す反射ミラー41、42の表面を透過性反射層55および/または遮光性反射層56で覆った構造となっている。領域A、B、Cでは、反射ミラー41の表面を、透光性反射層55が覆っている。領域A、Cではさらに、透光性反射層55の表面を、遮光性反射層56が覆っている。すなわち、第1の反射ミラーは、透光性反射層55と遮光性反射層56で覆われている。一方で、第2の反射ミラーは、透光性反射層55で覆われている。反射層は、透光性、遮光性とすることができる。透光性の反射層は誘電体層とでき、遮光性の反射層としては金属層とできる。反射層の金属はアルミニウムのようなものである。反射層の誘電体は、酸化チタンのようなものである。
【0151】
表面が遮光性反射層56で覆われている領域A、Cは、光が反射するために、明るく表示される。一方、表面が透光性反射層55で覆われている領域Bは、入射した光の一部が反射するものの、入射した光の一部が透過し、反射ミラー42によって反射される。これによって、フレームモチーフ21は明るく表示され、多面体モチーフ22は相対的に暗く表示される。
【0152】
このように、反射ミラー41、42の配置、反射層の有無、および、反射層の特性を適宜選択することによって、フレームモチーフ21および多面体モチーフ22の見え方を様々に変化させることができる。
【0153】
図14A図14B、および図14Cは、開口率の異なるいくつかの反射セグメントの構造を示す正面図である。
【0154】
図14A図14B、および図14Cを参照して、反射セグメント31に形成するセグメント形状60の領域について説明する。図14A図14B、および図14Cは、例として縦ストライプ柄のセグメント形状60を示す。反射セグメント31a、31b、31cは、それぞれセグメント形状60a、60b、60cを備えている。しかしながら、これら反射セグメント31a、31b、31cは、セグメント形状60が表示されない領域、すなわち反射セグメント31における開口部70の大きさが異なる。
【0155】
開口部は、図14A図14B、および図14Cにおける開口部70a、70b、70c、70dのように、有孔反射セグメント31が形成されない領域である。有孔反射セグメント31の面積に対する開口部の合計面積(70a+70b+70c+70d)の割合を、反射セグメント31における開口率とする。
【0156】
図10のように、フレームモチーフ21の内側にモチーフ22が存在する光学構造体100において、フレームモチーフ21を構成する反射セグメント31の開口率は10%以上、80%以下とすることができる。これにより、セグメント形状60の開口部70を通して観察されるモチーフ22を、外形を認識できる程度に表示することができる。
【0157】
開口部70を囲う反射セグメント31すべてが同じ柄のセグメント形状60である必要はない。また、開口部70の開口率は、反射セグメント31毎に変えることができる。モチーフ22の一部は、モチーフ21に覆われて表示されなくなるが、光学構造体100を観察したときに、モチーフ22が本来の面積の50%以上表示されるような構成であれば、観察者Kは、表示されている情報からモチーフ22の全体のイメージを補完し、認識することができる。
【0158】
なお、セグメント形状60は、図14A図14B、および図14Cに示す縦ストライプ柄のセグメント形状60a、60b、60cのような例に限定されず、開口率が10%以上、80%以下であれば、図9A図9B図9C、および図9Dに示すセグメント形状60A、60B、60C、60Dのような柄とすることができる。
【0159】
なお、開口部70の面積割合を、該開口部70を囲う有孔反射セグメント31の第1の反射ミラー41の傾斜角に基づいて決定することもできる。また、開口部70の大きさを、該開口部70を囲う有孔反射セグメント31の第1の反射ミラー41の傾斜角に基づいて決定することもできる。さらに、開口部70の大きさを、該開口部70が備えられている反射セグメント31に対応する反射セグメントイメージ31’の大きさに追従させることもできる。さらにまた、複数の開口部70それぞれの大きさを、それぞれ個別に設定することもできる。これによって、立体感がより増した光学構造体10を実現する。
【0160】
次に、以上のような本発明の第2の実施形態に係る光学構造体の機能について記載する。
【0161】
本発明の実施形態に係る光学構造体では、フレームモチーフ21を構成する有孔反射セグメント31のうち、図13に示すように、セグメント形状60を表示する領域A、Cに第1の反射ミラー41を配置し、セグメント形状60の開口部Bに多面体モチーフ22を構成する第2の反射ミラー42を配置する。このように、モチーフ22を構成する反射ミラー42を、モチーフ21を構成する反射ミラー41が配置されていない領域に配置することにより、モチーフ22をモチーフ21の内側に存在するように見せることができる。
【0162】
さらに、モチーフ21およびモチーフ22はともに複数の反射セグメント31、32で構成されており、どちらも立体感を表現することができる。従って、観察者Kは、例えば鳥かごのような立体物の中に、例えば鳥のような別の立体物が入っているように認識することができる。
【0163】
また、フレームモチーフ21を形成する反射ミラー41と、多面体モチーフ22を形成する反射ミラー42とは、それぞれが隣接する反射セグメント31、32に備えられた反射ミラーとは異なる傾斜角とできる。さらに、同じ多面体モチーフ22に含まれるすべての反射セグメント32を対象とした場合、隣接する反射セグメント32における傾斜角の差の平均は、同じフレームモチーフ21に含まれるすべての反射セグメント31を対象とした場合、隣接する反射セグメント31における傾斜角の差の平均よりも大きい。
【0164】
同じモチーフに含まれるすべての反射セグメントを対象とした場合、隣接する反射セグメントにおける反射ミラーの傾斜角の差は、光学構造体10を傾けたときに観察者Kの目に入ってくる各反射セグメントからの反射光の動きに関係しており、この差が小さいほど滑らかに動く、つまり滑らかな曲面として認識される。この角度差をフレームモチーフ21と多面体モチーフ22とで大きく異ならせることにより、フレームモチーフ21と多面体モチーフ22とは異なるイメージとして認識されやすい。また、両者の位置関係に奥行き感を付与することも可能となる。
【0165】
[光学構造体の製造方法、構成および材料]
上述した光学構造体10、100を製造する方法は、凹凸構造層を形成する工程と、凹凸構造層の表面に反射層を形成する工程とを含む。凹凸構造層を形成する工程は、原版から凹凸構造層を複製工程等とできる。
【0166】
原版は、平板状の基板が有する一方の面に感光性レジストを塗布した後、感光性レジストにビームを照射して感光性レジストの一部を露光し、次いで、感光性レジストを現像することによって得られる。そして、電気めっき等によって、金属製のスタンパを原版から製造し、この金属製スタンパを母型として用いて、凹凸構造層を形成する。なお、金属製のスタンパは、旋盤技術を用いた金属基板の切削加工等によっても得られる。
【0167】
凹凸構造層は、例えば、熱エンボス法、キャスト法、または、フォトポリマー法によって形成することができる。フォトポリマー法では、プラスチックフィルム等の平坦なキャリアと、金属製のスタンパとの間に、硬化性ポリマー樹脂を流し込む。そして、放射線の照射によって硬化性ポリマー樹脂を硬化させた後、硬化されたポリマー樹脂層をキャリアごと金属製のスタンパから剥離する。フォトポリマー法では、熱可塑性樹脂を利用するプレス法やキャスト法に比べて、反射ミラー41、42の構造の形成精度が高く、耐熱性や耐薬品性にも優れた反射ミラー41、42を得ることができる。
【0168】
凹凸構造層の形成材料は、ポリマー樹脂等である。ポリマー樹脂は熱可塑ポリマー樹脂、硬化ポリマー樹脂とできる。硬化ポリマー樹脂は、熱硬化ポリマー樹脂または放射線硬化ポリマー樹脂、熱・放射線硬化ポリマー樹脂とできる。凹凸構造層の材料は、さらに、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等を単体または混合して含むことができる。
【0169】
上述したポリマー樹脂は、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル-(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、リエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の単体または共重合樹脂、混合樹脂、複合樹脂を母剤とすることができる。凹凸構造層の材料には、これらの樹脂を単体で適用することも、2つ以上を混合して適用することもできる。凹凸構造層の厚みは、0.5μm以上、20μm以下の範囲とできる。
【0170】
反射層は、堆積法で形成できる。反射層を形成する堆積法は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法や、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、または、光化学気相製造法等の化学気相成長法を適用することもできる。またこれらのいずれかを適用するか組合せて適用して多層干渉層の反射層を堆積できる。
【0171】
これらの方法の中でも、真空蒸着法およびイオンプレーティング法は、他の方法よりも生産性が高く、良質な反射層を形成することができる。物理気相成長法および化学気相成長法における成膜条件は、反射層の形成材料に応じて選択される。
【0172】
遮光性の反射層は、金属層とできる。金属は、純金属、合金とできる。反射層の材料は、特に、アルミニウム、金、銀、プラチナ、ニッケル、スズ、クロム、ジルコニウム等の純金属またはこれら金属の合金とできる。また、反射層が上述した多層干渉層であるときには、反射層の誘電体層の材料は、無機化合物とできる。また、反射層が透光性の場合にも、反射層の材料を無機化合物とできる。透光性の反射層は、誘電体層とできる。無機化合物は、シリカまたは金属化合物とできる。金属化合物は、金属酸化物、金属硫化物、金属フッ化物、金属窒化物等とできる。また金属化合物の金属は、アルミニウム、亜鉛、チタン、カルシウム、マグネシウム、ジルコニウム、タンタルとできる。金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化チタン等とできる。金属硫化物は硫化亜鉛等とできる。なお、反射層の材料は、他の材料に比べて可視光領域での反射率が高い点で、アルミニウムおよび銀の何れかとすることができる。反射層の厚みは、10nm以上、1000nm以下の範囲とできる。
【0173】
[変形例1]
なお、上述した本発明の実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
【0174】
構造形成面11は複数の画素を備え、各反射セグメント31を単一の画素とすることもできる。複数の画素は、例えば構造形成面11においてマトリックス状に配置することもできる。すなわち、光学構造体10、100が表示するイメージの元データは、ベクトル画像に限らず、単位領域である画素の繰り返しによって画像を表現するラスター画像とすることもできる。
【0175】
上述によれば、ラスター画像に基づき各反射セグメントを形成できる。
【0176】
[変形例2]
反射セグメント31、32の形状は、上述した多角形状に限らず、例えば円形状、または、楕円形状等の曲線によって区画される形状とすることもできる。また、半円形状、または、半楕円形状等の曲線と直線とによって区画される形状とすることもできる。また、複数の反射セグメント31、32には、多角形状の輪郭の反射セグメントに加えて、曲線によって区画される輪郭の反射セグメントと、曲線と直線とによって区画される輪郭の反射セグメントとの一方または両方を含めることができる。また、複数の反射セグメント31、32は、曲線によって区画される輪郭の反射セグメントと、曲線と直線とによって区画される輪郭の反射セグメントとの両方とすることもできる。
【0177】
このような構造であっても、各反射セグメント31、32が1つずつイメージを形成し、構造形成面11が、複数の反射セグメント31、32によって光学構造体10、100に固有のイメージを観察方向に形成できるのであれば、各反射セグメント31、32における反射面51の法線方向DNに応じた光の強度を有した複数のイメージのうち、1つのイメージを観察方向に表示することができる。
【0178】
[変形例3]
各反射セグメント31、32において、各反射ミラー41、42の高さHは、他の全ての反射ミラー41、42の高さと等しくなくてもよい。こうした構造であっても、各反射セグメント31、32が1つずつのイメージを形成し、光学構造体10、100は、複数の画像によって光学構造体10、100に固有のモチーフ21、22のイメージを観察方向に表示できればよい。
【0179】
反射ミラー41、42は、1つの反射面51、52を備える構造に限らず、2つの反射面を備える構造とすることができる。
【0180】
例えば、図15に示されるように、反射ミラー41は、第1の反射面51S1と第2の反射面51S2とを備えることができる。第1の反射面51S1と第2の反射面51S2とは、各反射面を区画する1つの辺80を共有している。第1の反射面51S1と構造形成面11とが形成する角度が第1の傾斜角αであり、第2の反射面51S2と構造形成面11とが形成する角度が第2の傾斜角βである。第1の傾斜角αは第2の傾斜角βよりも小さいが、第1の傾斜角αは第2の傾斜角βよりも大きくすることもでき、第1の傾斜角αと第2の傾斜角βとを等しくすることもできる。
【0181】
このような構造であっても、複数の反射ミラー41を備える1つの反射セグメント31が、互いに同じ方向を向く複数の第1の反射面51S1、または、互いに同じ方向を向く複数の第2の反射面51S2によって、各反射セグメント31に1つずつのイメージを観察方向に表示できればよい。
【0182】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記の本発明の実施形態には種々観点の本発明の側面が含まれている。開示される複数の構成の組み合わせにより種々の発明の側面を抽出できる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図15