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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ジャイロスコープの連続セルフテスト
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5776 20120101AFI20220802BHJP
【FI】
G01C19/5776
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020082830
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021006807
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】20195537
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】ラッセ・アールトネン
(72)【発明者】
【氏名】ヨウニ・エルッキラ
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0192226(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00-19/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に振動一次運動するように励振される駆動素子であって、前記駆動素子の動きを検出して第1電気信号に変換する駆動検出トランスデューサを含む駆動素子、および
前記駆動検出トランスデューサから、前記駆動素子の位置に対応する直交位相検出信号を生成するための前記第1電気信号を受信する駆動ループ回路であって、前記直交位相検出信号から、少なくとも1つのテストクロック信号と、角速度位相復調信号と、直交位相復調信号とを生成するクロック生成回路を含む駆動ループ回路を含む
駆動ループと、
前記第1方向に垂直な方向に振動センス運動するように駆動されるセンス素子であって、前記センス素子の動きを検出して第2電気信号に変換するセンス検出トランスデューサを含むセンス素子、および
前記センス検出トランスデューサから、前記センス素子の位置または速度に対応する前記第2電気信号を受信し、前記第2電気信号に基づいてフォースフィードバック信号を生成するセンスループ回路を含む
センスループと、
前記駆動ループ回路から、直交位相キャリア信号として用いられる前記直交位相検出信号と、少なくとも2つの特有の基本テスト周波数を有する少なくとも2つのテスト周波数信号を搬送する前記少なくとも1つのテストクロック信号とを受信し、前記直交位相キャリア信号を前記少なくとも1つのテストクロック信号によって搬送される前記少なくとも2つのテスト周波数信号で変調することによって直交位相のテスト信号を生成するテスト信号生成器と、
フィードバックトランスデューサによって前記センス素子の前記二次振動運動を制限する力を制御するセンスフィードバック信号を形成するために、前記テスト信号を前記フォースフィードバック信号に加算する加算素子と、
前記センスループから受信されたセンス信号を前記角速度位相復調信号で復調することによって、角速度情報を含む速度信号を生成する速度位相復調器と、
前記センスループから受信された前記センス信号を前記直交位相復調信号で復調することによって、セルフテスト情報を含む直交位相出力信号を生成する直交位相復調器とを備え
前記センス素子の前記振動センス運動は、前記第1方向における前記駆動素子の前記振動一次運動で、または前記振動一次運動により動いているマスに作用するコリオリ力によって引き起こされ、
前記少なくとも1つのテストクロック信号によって搬送される少なくとも2つのテスト周波数信号ごとの特有の基本テスト周波数は、前記直交位相キャリア信号の周波数を整数値で割ることによって求められ、前記テストクロック信号は、その状態を前記直交位相キャリア信号のゼロクロスで切り替える、
微小電気機械(MEMS)ジャイロスコープ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのテストクロック信号は、直交位相にある
請求項1に記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項3】
前記センスループ回路は、前記第2電気信号を受信し、センスループ出力信号を生成するフロントエンド回路と、前記フォースフィードバック信号を減衰させる減衰回路、および前記センス信号を生成するために前記センスループ出力信号を増幅する増幅器のうちの少なくとも一方を含むバックエンド回路とを含む
請求項1または2に記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項4】
前記少なくとも2つの特有の基本テスト周波数は、変調された前記少なくとも2つのテスト周波数信号が前記センスループの信号帯域内にあるように選択される
請求項1~3のいずれか1項に記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項5】
さらに、
前記直交位相出力信号から直交フィードバック信号を生成し、前記直交フィードバック信号を前記センス素子に向けて供給する直交補正回路を備え、
変調された前記少なくとも2つのテスト周波数信号の周波数は、前記直交補正回路の信号帯域外にあり、かつ/または1以上の直交補正電極は、前記直交補正フィードバック信号を前記センス素子に向けて入力する
請求項1~4のいずれか1項に記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項6】
前記MEMSジャイロスコープは、前記駆動素子の駆動、検出およびフィードバックのための、ならびに前記センス素子の検出およびフォースフィードバックのための容量性電極または圧電抵抗電極を備える
請求項1~5のいずれか1項に記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項7】
前記直交位相検出信号は、前記駆動ループ回路の電荷感応増幅器の出力部で得られる
請求項1~6のいずれか1項に記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項8】
微小電気機械(MEMS)ジャイロスコープを連続セルフテストする方法であって、
前記ジャイロスコープの駆動ループ回路の検出トランスデューサから、前記ジャイロスコープの駆動素子の位置に対応する直交位相検出信号を受信するステップと、
前記直交位相検出信号から、少なくとも2つの特有の基本テスト周波数を有する少なくとも2つのテスト周波数信号を搬送する少なくとも1つのテストクロック信号と、速度位相復調信号と、直交位相キャリア信号として用いられる直交位相復調信号とを生成するステップと、
前記直交位相キャリア信号を前記少なくとも2つのテスト周波数信号で変調することによって、直交位相のテスト信号を生成するステップと、
前記ジャイロスコープのセンス素子の位置または速度に対応する第2電気信号を受信するステップと、
前記第2電気信号に基づいて、前記ジャイロスコープのセンスループ内にフォースフィードバック信号を生成するステップと、
センスフィードバック信号を生成するために、前記テスト信号を前記フォースフィードバック信号に加算するステップと、
前記センスフィードバック信号を前記ジャイロスコープの前記センス素子に向けて供給するステップと、
前記センスループから受信されたセンス信号を前記速度位相復調信号で復調することによって、角速度情報を含む速度信号を生成するステップと、
前記センスループから受信された前記センス信号を前記直交位相復調信号で復調することによって、セルフテスト情報を含む直交位相出力信号を生成するステップとを含み、
前記少なくとも1つのテストクロック信号によって搬送される前記少なくとも2つのテスト周波数信号ごとの前記特有の基本テスト周波数は、前記直交位相キャリア信号の周波数を整数値で割ることによって求められ、前記テストクロック信号は、その状態を前記直交位相キャリア信号のゼロクロスで切り替える
方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのテストクロック信号は、直交位相にある
請求項に記載の方法。
【請求項10】
さらに、
前記第2電気信号に基づいてセンスループ出力信号を生成するステップと、
前記加算するステップの前に前記フォースフィードバック信号を減衰させるステップ、および
前記センス信号を生成するために前記センスループ出力信号を増幅するステップのうちの少なくとも一方とを含む
請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つの特有の基本テスト周波数は、変調された前記少なくとも2つのテスト周波数信号が前記センスループの信号帯域内にあるように選択される
請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
さらに、
前記直交位相出力信号から直交フィードバック信号を生成するステップと、
前記直交フィードバック信号を前記センス素子に向けて供給するステップとを含み、
変調された前記少なくとも2つのテスト周波数信号の周波数は、前記直交補正回路の信号帯域外にあり、かつ/または1以上の直交補正電極は、前記直交補正フィードバック信号を前記センス素子に向けて入力する
請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電気機械装置、より具体的には、連続セルフテスト機能を備えた慣性センサおよび慣性センサの連続セルフテスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(Micro-Electro-Mechanical System)、すなわちMEMSは、少なくともいくつかの要素が機械的機能を有する微小の機械および電気機械システムとして定義することができる。MEMS構造体は、物理的特性の非常に小さな変化を迅速かつ正確に検出するために適用することができる。
【0003】
動きには、6つの自由度、すなわち、3つの直交方向における平行移動および3つの直交軸を中心とする回転があると考えることができる。後者の3つは、ジャイロスコープとしても知られている角速度センサによって測定されてもよい。MEMSジャイロスコープは、コリオリの効果を利用して、角速度を測定する。マスは、一方向に動いて回転角速度が加わると、コリオリ力によって直交方向の力を受ける。次いで、コリオリ力の結果として生じた物理的変位が、例えば、容量型、圧電型、または圧電抵抗型の感知構造体から読み取られてもよい。
【0004】
MEMSジャイロスコープでは、適切なベアリングがないために、一次運動は、通常、従来のジャイロスコープのような連続回転ではない。その代わりに、機械振動が一次運動として用いられてもよい。振動ジャイロスコープが角運動を受けると、波状のコリオリ力が生じる。これにより、一次運動と、角運動の軸とに直交する二次振動が、一次振動の周波数で生じる。この連成振動の振幅は、角速度の尺度として用いることができる。二次振動は、二次運動、検出運動またはセンス運動と呼ばれ得る。
【0005】
MEMSセンサは、多くの消費者向け装置の一部になっており、さらに、電子安定性制御(ESC)などの様々なセーフティクリティカル用途にも使用されている。特に安全関連の用途では、センサの機械的または電気的な信号経路における潜在的不具合を特定することは重要である。MEMSジャイロスコープは、例えば、自動運転用途において、外部ナビゲーションデータがない間の慣性ナビゲーションを可能にするため、引き続きより重要な構成要素となっている。角速度信号が車両のナビゲーション目的に使用される場合、センサが高速かつ信頼性のある自己診断を行い得ることが非常に重要になる。このことは、ESCシステムにおいてもやや言われるようになったが、今後、例えば、検出時間要件に関してより厳しくなる。理想的には、構成要素は、それ自体の誤動作を極めて迅速に特定し得るべきである。一方、システムユーザに不必要な不便をもたらす誤報は、有効に回避されるべきである。したがって、センサは、それが誤動作しているかどうかを伝える必要があると同時に、外乱によるセルフテスト機能のトリガに対してほぼ完全に無影響でもあるべきである。
【0006】
ある種の高度な振動ジャイロスコープは、性能向上のために振動センス運動がフィードバック制御される閉ループシステムを適用している。しかしながら、閉ループ構成では、従来のセルフテスト方法で対処することができない態様も生じる。
【0007】
[関連技術の説明]
特許文献1には、MEMSジャイロスコープの動作をモニタリングするシステムおよび方法が開示されており、テスト信号生成器がテスト信号を生成し、このテスト信号をジャイロスコープの角速度フィードバックループに印加する。テスト信号検出器は、直交フィードバックループに結合されている。センスループは、角速度位相および直交位相の両方における復調および変調を含むため、変調前に信号から、一次周波数以上の信号成分を除去するための二次的な追加のフィルタリングが閉ループ内に必要である。したがって、フィードバックループの速度および角速度センサの帯域幅は制限される。
【0008】
特許文献2には、振動ジャイロスコープを備えた回転速度センサをモニタリングする方法が開示されている。この解決策でも、閉センスループは、角速度位相および直交位相の両方における復調および変調の両方を含み、変調前に信号から、一次周波数の信号成分を除去するための追加のフィルタが必要であり、これにより、フィードバックループの速度および角速度センサの帯域幅は制限される。
【0009】
特許文献3は、誤トリガを回避するための高いテスト信号強度を必要とし、また、セルフテストのロバスト性か、達成可能なエラー検出時間かの選択を必要とするジャイロスコープの連続セルフテストのための方法および装置。
【0010】
したがって、先行技術における相反する関係を回避する、改善された連続セルフテスト方法およびシステムが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第9109901号明細書
【文献】米国特許第7127932号明細書
【文献】米国特許第9846037号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
目的は、高いテスト信号レベルを必要とせずに、ロバストで高速の連続セルフテストを提供するという課題を解決するために方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、請求項1の特徴部分に記載の装置を用いて達成される。本発明の目的は、さらに、請求項8の特徴部分に記載の方法を用いて達成される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態を従属クレームに開示する。
【0015】
第1の態様によれば、微小電気機械(MEMS)ジャイロスコープが提供される。MEMSジャイロスコープは、第1方向に振動一次運動するように励振される駆動素子と、駆動素子に関連付けられた検出トランスデューサから、駆動素子の位置に対応する直交位相検出信号を生成するための第1電気信号を受信する駆動ループ回路とを含む駆動ループを備える。駆動ループ回路は、直交位相検出信号から、少なくとも1つのテストクロック信号と、角速度位相復調信号と、直交位相復調信号とを生成するクロック生成回路を含む。MEMSジャイロスコープは、さらに、第1方向に垂直な方向に振動センス運動するように駆動されるセンス素子と、センス素子に関連付けられた検出トランスデューサから、センス素子の位置または速度に対応する第2電気信号を受信し、その第2電気信号に基づいてフォースフィードバック信号を生成するセンスループ回路とを含むセンスループを備える。MEMSジャイロスコープは、また、駆動ループ回路から、直交位相キャリア信号として用いられる直交位相検出信号と、少なくとも2つの特有の基本テスト周波数を有する少なくとも2つのテスト周波数信号を搬送する少なくとも1つのテストクロック信号とを受信し、直交位相キャリア信号を少なくとも2つのテスト周波数信号で変調することによって直交位相のテスト信号を生成するテスト信号生成器を備える。
【0016】
MEMSジャイロスコープは、また、センス素子に向けてフィードバックされるセンスフィードバック信号を形成するために、テスト信号をフォースフィードバック信号に加算する加算素子を備える。MEMSジャイロスコープは、さらに、センスループから受信されたセンス信号を角速度位相復調信号で復調することによって、角速度情報を含む速度信号を生成する速度位相復調器と、センスループから受信されたセンス信号を直交位相復調信号で復調することによって、直交位相出力信号を生成する直交位相復調器とを備える。直交位相出力信号は、セルフテスト情報を含む。
【0017】
第2の態様によれば、少なくとも1つのテストクロック信号は、直交位相にある。
【0018】
第3の態様によれば、センスループ回路は、第2電気信号を受信し、センスループ出力信号を生成するフロントエンド回路と、フォースフィードバック信号を減衰させる減衰回路、およびセンス信号を生成するためにセンスループ出力信号を増幅する増幅器のうちの少なくとも一方を含むバックエンド回路とを含む。
【0019】
第4の態様によれば、少なくとも2つの特有の基本テスト周波数は、変調された少なくとも2つのテスト周波数信号がセンスループの信号帯域内にあるように選択される。
【0020】
第5の態様によれば、MEMSジャイロスコープは、さらに、直交位相出力信号から直交フィードバック信号を生成し、その直交フィードバック信号をセンス素子に向けて供給する直交補正回路を備える。変調された少なくとも2つのテスト周波数信号の周波数は、直交補正回路の信号帯域外にあり、かつ/または1以上の直交補正電極は、直交補正フィードバック信号をセンス素子に向けて入力する。
【0021】
第6の態様によれば、MEMSジャイロスコープは、駆動素子の駆動、検出およびフィードバックのための、ならびにセンス素子の検出およびフォースフィードバックのための容量性電極または圧電抵抗電極を備える。
【0022】
第7の態様によれば、直交位相検出信号は、駆動ループ回路の電荷感応増幅器の出力部で得られる。
【0023】
第8の態様によれば、所望のテストクロック信号周波数は、直交位相キャリア信号の周波数を整数値で割ることによって求められ、テストクロック信号は、その状態を直交位相キャリア信号のゼロクロスで切り替える。
【0024】
第1の方法態様によれば、微小電気機械(MEMS)ジャイロスコープを連続セルフテストする方法が提供される。方法は、ジャイロスコープの駆動ループ回路の検出トランスデューサから、ジャイロスコープの駆動素子の位置に対応する直交位相検出信号を受信するステップと、直交位相検出信号から、少なくとも2つの特有の基本テスト周波数を有する少なくとも2つのテスト周波数信号を搬送する少なくとも1つのテストクロック信号と、速度位相復調信号と、直交位相キャリア信号として用いられる直交位相復調信号とを生成するステップと、直交位相キャリア信号を少なくとも2つのテスト周波数信号で変調することによって、直交位相のテスト信号を生成するステップとを含む。方法は、また、ジャイロスコープのセンス素子の位置または速度に対応する第2電気信号を受信するステップと、第2電気信号に基づいて、ジャイロスコープのセンスループ内にフォースフィードバック信号を生成するステップと、センスフィードバック信号を生成するために、テスト信号をフォースフィードバック信号に加算するステップと、センスフィードバック信号をジャイロスコープのセンス素子に向けて供給するステップとを含む。方法は、さらに、センスループから受信されたセンス信号を速度位相復調信号で復調することによって、角速度情報を含む速度信号を生成するステップと、センスループから受信されたセンス信号を直交位相復調信号で復調することによって、セルフテスト情報を含む直交位相出力信号を生成するステップとを含む。
【0025】
第2の方法態様によれば、少なくとも1つのテストクロック信号は、直交位相にある。
【0026】
第3の方法態様によれば、方法は、さらに、第2電気信号に基づいてセンスループ出力信号を生成するステップと、当該加算するステップの前にフォースフィードバック信号を減衰させるステップ、およびセンス信号を生成するためにセンスループ出力信号を増幅するステップのうちの少なくとも一方とを含む。
【0027】
第4の方法態様によれば、少なくとも2つの特有の基本テスト周波数は、変調された少なくとも2つのテスト周波数信号がセンスループの信号帯域内にあるように選択される。
【0028】
第5の方法態様によれば、方法は、さらに、直交位相出力信号から直交フィードバック信号を生成するステップと、直交フィードバック信号をセンス素子に向けて供給するステップとを含む。変調された少なくとも2つのテスト周波数信号の周波数は、直交補正回路の信号帯域外にあり、かつ/または1以上の直交補正電極は、直交補正フィードバック信号をセンス素子に向けて入力する。
【0029】
第6の方法態様によれば、方法は、さらに、直交位相キャリア信号の周波数を整数値で割ることによって、所望のテストクロック信号周波数を求めるステップを含み、テストクロック信号は、その状態を直交位相キャリア信号のゼロクロスで切り替える。
【0030】
本発明は、一次ループ電荷感応増幅器の出力部から、MEMSジャイロスコープの一次素子の位置と同相である、セルフテスト信号生成のためのキャリア信号を取り出し、直交位相のセルフテスト信号を、センス素子に向けてフィードバックされるフォースフィードバック信号に加算するという発想に基づくものである。適切なテスト周波数を選択し、MEMSジャイロスコープの様々な信号ループの応答関数を適切に設計することによって、ジャイロスコープ信号経路における主要部分の適切な機能を検出するためのセルフテスト信号が、その正常なアクティブ動作に影響を与えることなく、MEMSジャイロスコープに連続的に供給され得る。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、外部慣性信号が、MEMSジャイロスコープ内に望ましくない機械的接点を与えるほど、言いかえれば、MEMSジャイロスコープの定義された動作範囲を超えるほど強くない限り、いずれの外部慣性信号に対しても有効な耐性を有するロバストな連続セルフテストを提供するという利点を有する。本発明は、また、通常5ms未満の速いエラー検出時間を可能にする。さらに、本発明は、良好な検出範囲を提供しつつロバストな動作であるにもかかわらず、適度なテスト信号レベルしか必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
以下に、添付図面を参照しながら、好ましい実施形態に関連付けて本発明をより詳細に説明する。
図1図1は、ジャイロスコープのトップレベルのブロック図である。
図2図2は、ジャイロスコープの別のトップレベルのブロック図である。
図3図3は、テスト信号変調器の構成要素を示す図である。
図4A図4Aは、時間領域における例示的テスト信号を示す図である。
図4B図4Bは、周波数領域における例示的テスト信号を示す図である。
図5A図5Aは、時間領域における例示的テスト信号を示す図である。
図5B図5Bは、周波数領域における例示的テスト信号を示す図である。
図6図6は、フォースフィードバックループの強度伝達関数および位相伝達関数に対するテストトーン周波数を示す図である。
図7図7は、強度復調された出力を周波数の関数として示すプロットである。
図8図8は、直交位相トーンのI/Qリークの相対量を周波数の関数として示す図である。
図9図9は、テストトーンの位相シフトを周波数の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、閉ループタイプである、第1の実施形態に係るジャイロスコープのトップレベルのブロック図を示す。
【0034】
ジャイロスコープセンサ素子(100)は、駆動素子(101)およびセンス素子(102)を含む。駆動素子(101)およびセンス素子(102)の両方は、素子の動きを検出し、それを電気信号に変換する、容量性トランスデューサ、圧電トランスデューサまたは圧電抵抗トランスデューサなどの検出手段と、それぞれの素子(101;102)の振動を制御するために使用され得るフィードバック手段とを含む。
【0035】
一次ループまたは駆動ループと呼ばれる第1閉ループシステムは、駆動素子(101)を一次周波数fprimで安定して機械振動させる駆動を制御する。駆動運動の制御は、フィードバックにより可能になる。センサ素子(100)が容量性センサ素子である場合、駆動ループ電子機器(110)は、電荷感応増幅器、例えば、駆動素子(101)の検出手段から受信された電気駆動検出信号(Dd)を増幅する電荷感応増幅器(CSA)を含み得る駆動ループフロントエンド(111)と、駆動素子(101)の安定した一次振動を維持するために駆動フィードバック信号(Dfb)レベルを制御する自動ゲイン制御(AGC)を含む駆動ループバックエンド(112)とを含んでもよい。駆動ループフロントエンド(111)または駆動ループ電子機器(110)は、さらに、フィルタ、例えば、CSAを備えたピーキング・ローパス・フィルタまたはTRAを備えた帯域パスフィルタを含んでもよい。駆動ループ電子機器(110)は、さらに、一次検出信号、言いかえれば、駆動ループフロントエンド(111)から受信された振動一次素子の位置を表す検出信号に基づいて、クロック信号を生成するクロック信号生成器回路(113)を含んでもよい。
【0036】
二次ループまたはセンスループと呼ばれる別の閉ループシステムは、センス素子(102)のコリオリ力駆動運動に基づく検出結果を提供し、駆動共振周波数およびセンス共振周波数が等しい、またはほぼ等しいMEMSジャイロスコープの帯域幅および線形性を改善するために、センス素子(102)に向かって戻るフォースフィードバックを実行する。センスループフロントエンド回路(121)は、センス素子トランスデューサから、センス素子の検出されたコリオリ運動に対応するセンス検出信号(Sd)を受信し、センスループ出力信号(Ssl)を生成する。センスループフロントエンド回路(121)は、有利には、少なくとも静電容量-電圧コンバータまたは電流-電圧コンバータと、1以上のゲイン段と、振幅制御素子とを含む。センスループは、さらに、一次共振器の目標固有周波数(fprim)と等しい目標固有周波数を有する二次のローパスフィルタを含むことが好ましい。センスループのQ値は、0~10の範囲にあることが好ましく、図6に示す例示的伝達関数は、Qが5の場合に得られる。センスループ信号をアナログセンスループ出力信号(Ssl)として用いる場合、さらなるスケーリング、例えば、増幅または減衰を、復調前の信号経路に設ける必要があってもよい。このスケーリングは、便宜上、センスループバックエンド回路(122)によってもたらされてもよく、センスループバックエンド回路(122)は、センス素子の検出された角速度、言いかえれば回転速度と相関する角速度信号(Rate)を出力部において供給する角速度復調器(125)に、センスループ信号(Ssl’)を供給する。フィードバック経路において、センスループ出力信号は、有利には、信号スケーリングのためにセンスループバックエンド回路(122)に入力される。図1の例示的構成では、センスループバックエンド回路(122)は、また、センスフィードバック信号(Sfb)を生成し、そのセンスフィードバック信号(Sfb)に応じて、センス素子(102)の二次振動運動を制限する力が制御される。センスループバックエンド回路(122)は、センスループ出力信号(Ssl)を減衰させることによってSfb信号を生成する減衰回路と、復調のためのセンスループ信号(Ssl’)を生成するためにセンスループ出力信号(Ssl)を増幅する増幅器とを含んでもよい。
【0037】
図1は、さらに、連続セルフテスト構成の主要な要素を示す。テスト信号生成器(130)は、テスト信号(Ts)を生成するために一次ループ(110)から、直交位相キャリア信号(Qsc)および少なくとも1つのテストクロック信号(Sct)を含む少なくとも2つの入力信号を受信する。直交位相キャリア信号(Qsc)の周波数および位相は、直交位相キャリア信号の周波数が一次検出信号と等しく、直交位相キャリア信号(Qsc)の位相が駆動素子(101)の位置と同相であり、ひいては、コリオリ力信号に対して直交位相でもあるように、一次フロントエンド出力部から直接取り出されることが好ましい。テスト信号生成器(130)は、さらに、直交位相キャリア信号(Qsc)の位相を用いて生成されることが好ましい少なくとも1つのテストクロック信号(Sct)を受信し、その結果、少なくとも1つのテストクロック信号(Sct)は、常に、その状態を直交位相キャリア信号(Qsc)のゼロクロスで切り替える。しかしながら、少なくとも1つのテストクロック信号(Sct)は、代替的に、同相信号と同相であってもよく、言いかえれば、駆動素子(101)の速度と同相、およびコリオリ力信号と同相であってもよい。しかしながら、同相テストクロック信号(Sct)は、そのピーク値で極性を切り替えると考えられ、これにより、問題を引き起こし得る大きな信号過渡が生じる。駆動素子の一次振動周波数(fprim)と等しい直交位相キャリア信号(Qsc)より両方とも低い少なくとも2つのテスト周波数を有する単一のテストクロック信号(Sct)が供給されることが好ましい。例えば、少なくとも1つのテストクロック信号によって搬送されるテスト周波数は、f(Sct)=fprim/16およびf(Sct)=fprim/20として算出されてもよいが、2以上の任意の整数が除数として用いられてもよい。別の実施形態では、1つを超えるテストクロック信号(Sct)がテスト信号生成器(130)に向けて供給されてもよい。そのような場合、1つを超えるテストクロック信号(Sct)の各々は、異なるテスト周波数のうちの1つを搬送してもよい。当技術分野で知られているように、整数値による周波数の除算は、例えば、カウンタで行われてもよい。
【0038】
典型的な先行技術システムでは、センスループユニティゲイン周波数の一次周波数との差funity_gain_deltaを一次周波数fprimの10%~30%にまで高くすることができる。例えば、funity_gain_delta=0.15*fprimの場合、絶対フォースフィードバックループユニティゲイン周波数は、funity_gain=(fprim±funity_gain_delta)=(fprim±0.15*fprim)の範囲内で変化してもよい。2つのユニティゲイン周波数間のこの周波数範囲は、ユニティゲイン帯域幅と呼ばれ得る。センスループ帯域幅が広いことから、要求される角速度信号(Rate)周波数帯を上回るが、ユニティゲイン周波数をなお下回る、直交位相キャリア信号を変調するためのテスト信号周波数を選択することができるため、ユニティゲイン周波数の変化に起因する強度および位相の感度が低下する。例えば、角速度(Rate)信号帯域幅が500Hzである必要がある場合、テストトーンの変調周波数は2kHzであってもよく、一方、funity_gain_deltaは、例えば、5kHzにすることができる。
【0039】
テスト信号(Ts)は、加算素子(131)によってセンスループに加算されてもよい。直交位相キャリア信号(Qsc)を用いて生成されるテスト信号(Ts)は、センスループを介して供給される場合、信号がセンスループを横断する際、センスループが信号位相に著しく影響を与えないため、直交位相のままである。したがって、直交位相キャリア信号(Qsc)と等しい周波数および位相を有する直交位相復調信号(Qsd)を用いて直交位相復調器(135)でセンス信号を復調することによって、直交位相信号(Qs)を利用可能にすることができる。直交位相復調信号(Qsd)は、デジタルまたは正弦波信号であってもよい。したがって、直交位相復調器(135)の出力部で受信された直交信号(Qs)は、速度位相復調信号(Rd)を用いて復調される角速度信号復調器(125)が復調した角速度信号(Rate)に対して、直交位相で復調されている。直交信号(Qs)は、セルフテスト情報および直交誤差についての情報を含む。当業者によって理解されるように、直交位相復調信号(Qsd)は、わずかな角速度位相復調信号成分を含んでもよく、速度位相復調信号(Rd)は、その範囲から逸脱することなく、わずかな直交速度位相復調信号成分を含んでもよい。
【0040】
テスト信号(Ts)は、フォースフィードバックのためにセンス素子(102)に供給される状態のセンスフィードバック信号(Sfb)に加算されることが好ましい。したがって、テスト信号(Ts)は、センスフィードバック信号(Sfb)の一部である。
【0041】
図2は、図1の実施形態と同様の第2の実施形態を示すが、第2の実施形態には、さらに、センサ素子の二次共振器に向けて供給され得る直交フィードバック信号(Qfb)を生成する直交補正回路(140)が設けられている。直交補正回路(140)、および/またはセンス素子(102)に向けて戻るように直交フィードバック信号(Qfb)を供給する直交フィードバック電極によって、直交フィードバックループ周波数帯からテスト信号周波数帯が有効に除外されるように、直交フィードバックループの周波数応答関数は、所望の速度信号周波数帯以下に制限されることが好ましい。直交補正回路および直交フィードバックは、当技術分野でよく知られている。
【0042】
両方の実施形態において、直交信号(Qs)から排他的に得られるセルフテスト情報と、角速度位相信号(Rate)のみに影響を与える外部角速度信号とは、通常、目標平均がゼロであるわずか数度の復調位相誤差によってテスト信号周波数に影響を与え得るだけである。例えば、2度の復調位相誤差は、依然として、角速度位相信号を用いて行われる連続セルフテストと比較して、25倍を上回る減衰を外部慣性トーンにもたらす。
【0043】
位相誤差により、依然として、外部信号が連続セルフテストトーンにリークし得るため、少なくとも2つのセルフテストトーンが必要である。テストトーンは、特有の基本周波数(f1、f2)、言いかえれば、互いの高調波倍数でない2つの周波数を有するべきである。セルフテストは、少なくとも2つのセルフテストトーンが同時に失敗した場合のみにエラーを示すと考えられる。第1テストトーン(Ts_f1)は周波数f1を有してもよく、第2テストトーン(Ts_f2)は周波数f2を有してもよい。セルフテスト出力信号の復調は、アナログ領域またはデジタル領域で行うことができる。
【0044】
テスト信号の変調周波数は、図2に示す直交フィードバックループの帯域幅より高い(例えば、2kHz)ことが好ましい。直交制御ループでは、復調された直交信号(Qs)が直交制御回路(140)に供給され、直交制御回路(140)はその信号を処理して、直交フィードバック信号(Qfb)を生成する。直交フィードバックループの信号帯域は、一次周波数fprimの帯域外の信号が減衰するように、比較的狭く設計されることが好ましい。これは、テスト信号(Ts)がセンスループに供給されるにもかかわらず、直交フィードバック電圧に軽微な影響を与えることを意味する。当技術分野で知られているように、直交フィードバックループは、駆動素子(101)の運動での直交誤差によって引き起こされたセンス素子(102)の望ましくない直交位相運動を補償する、言いかえれば、キャンセルする、または低減するために、直交フィードバック信号(Qfb)をセンス素子(102)に向けてフィードバックする。直交フィードバックループによって補償されないセンス素子(102)の直交位相運動はいずれも、センスフィードバック信号(Sfb)に基づいてフォースフィードバック機能で減衰する。センスループは、センスループ周波数帯内の交流信号の位相同士を区別せず、すべての信号をそれらの周波数特性に応じて同様に減衰させる。これは、センスループがいずれの周波数変換も含まず、センスループは一次周波数において本質的に連続時間であることによるものである。例えば、センスループが時間離散またはデジタルとして実施されても、サンプリング周波数は、一次周波数の少なくとも10倍であるべきであり、これにより、実際には連続時間性能に近い性能が提供される。
【0045】
直交フィードバックループ周波数帯内にないテスト信号(Ts)は、センスフィードバック信号(Sfb)の一部としてMEMSセンス素子(102)に供給される。したがって、そのテスト信号は、コリオリの力によって引き起こされたセンス信号と同じ信号経路をたどるが、周波数帯の差により直交フィードバック機能に影響を与えない。
【0046】
センス素子(102)に戻るように直交フィードバック信号(Qfb)を供給する直交フィードバック電極の機能パラメータは、センサの寿命にわたって変化し得るが、これらの変化がテスト信号に現れるのは望ましくない場合がある。直交フィードバック電極は、センサの寿命中に多少変わったとしても、なお、直交フィードバック目的のために上手く機能し得、感度またはオフセットなどのセンサデバイスの重要な特性のいずれも変わらない。このことは、テスト信号周波数が直交制御ループの帯域幅より高いために実現される。
【0047】
本発明は、直交フィードバックを適用するジャイロスコープに特定の技術的利点を提供するが、直交フィードバックを備えたデバイスに限定されない。
【0048】
限定されない例として、図3は、正弦波直交位相キャリア信号(Qsc)の変調に適したテスト信号変調器の構成要素を示す。図3では、入力部QscnおよびQscpが差動直交位相キャリア信号(Qsc)の信号入力部であり、テスト周波数入力部(Tmf1、Tmf2)は、2つの異なるテスト周波数、別名、テストトーンを入力するために使用される。変調器回路は、その差動出力ノード(Tsp、Tsn)で、2つのテストトーン(f1、f2)で変調された直交位相キャリア信号を含む1つの差動テスト信号(Ts)を出力する。信号の変調は当技術分野でよく知られており、当業者であれば、この作業を行うために、この種類または他の適切な種類の変調器回路を選択することができる。
【0049】
図4Aおよび図4Bは、異なる基本周波数を有する2つの矩形波テスト周波数信号で10kHzのキャリア信号を変調することによって生成される例示的テスト信号(Ts)のテスト信号変調の例を示す。図4Aは、時間領域のテスト信号を示し、図4Bは、周波数領域のテスト信号を示す。図5Aおよび図5Bは、異なる基本周波数を有する2つの正弦波テスト周波数信号でキャリア信号を変調することによって生成される別の例示的テスト信号(Ts)を示す。図5Aは、時間領域のテスト信号(Ts)を示し、図5Bは、周波数領域のテスト信号(Ts)を示す。テストにより、回転速度の実測へのオフセットが生成されないように、テスト信号(Ts)は、例示的共振周波数10kHzの信号成分を含まないことが好ましい。
【0050】
図6は、フォースフィードバックループの強度伝達関数(201)および位相伝達関数(202)に対する2つのテストトーン周波数(f1、f2)の例を示す。テストトーン周波数(f1、f2)を、キャリア周波数として用いられる直交位相一次角速度信号周波数(fprim)に加算/から減算することによって生じたテストトーン周波数(fprim-f1、fprim-f2、fprim+f1、fprim+f2)をプロットに示す。ここで、センスループの広い信号帯域を見ることができ、共振の適度なQ値は、著しい位相シフトなしでテスト信号(Ts)の直交位相テストトーン成分(Ts_f1、Ts_f2)を角速度信号の帯域(fprim)外に設定するのに役立っている。適度なQ値とは、0から10の間のQ値を指す。図6に示す伝達関数は、例示的Q値、5を用いて生成される。2つのユニティゲイン周波数funity_gain1およびfunity_gain2図6に表示されており、センスループゲインが0dbである周波数を示している。
【0051】
図7は、強度変調されたQs出力を相対的周波数の関数として示すプロットを示す。ここで、図1の例示的システムにおけるテスト信号(Ts)のキャリア信号の一次周波数(fprim)と比較したテストトーン信号の周波数の関係として表したテストトーン信号の周波数範囲にわたって、リークした直交位相テストトーン信号(302)を同相復調された信号(301)と比較して示すが、図1は、図2に示したようなセンスループ伝達関数を有する。このプロットにおける一次周波数(fprim)と等しいキャリア信号周波数は、相対スケールで10=1に表示される。プロットは、この例では図に示した例示的伝達関数における一次周波数の約0.15倍(0.15*fprim)であるセンスループのユニティゲイン帯域幅付近でI/Qリークが急増する様子を示している。
【0052】
図8は、図6に示した例示的伝達関数における一次周波数(fprim)と比較した周波数関係として表した直交位相トーン信号の周波数範囲にわたって、同相キャリア信号に対するテストトーンなどの直交位相トーンのI/Qリーク相対量(401)を示すプロットを示す。直交位相トーンは、直交位相テストトーンに相当する。この例示的システムでは、テストトーン周波数が約0.085*fprim未満である場合、相対I/Qリークは、表示された5%ライン(405)を下回る。
【0053】
図9は、図1または図2の例示的システムのキャリア信号周波数(fprim)と比較したテストトーンの周波数の関数として、テストトーンの位相シフトを示す。図7および図8のように、このプロットにおける一次周波数(fprim)と等しいキャリア信号周波数は、相対スケールで10=1に表示される。
【0054】
技術の進歩に伴い、本発明の基本的な考えを様々な方法で実施できることは当業者に明らかである。したがって、本発明およびその実施形態は、上記例に限定されず、特許請求の範囲内において異なってもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9