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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】反射板および光学部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20220802BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20220802BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B5/08 A
G02F1/1335 520
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020192827
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081339
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2021-11-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 和房
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/198762(WO,A1)
【文献】特表2008-517139(JP,A)
【文献】特表2015-514600(JP,A)
【文献】特開2011-161871(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113892045(CN,A)
【文献】国際公開第2020/234801(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006388(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0196948(US,A1)
【文献】特開2021-162622(JP,A)
【文献】特開2021-162623(JP,A)
【文献】特表2017-521700(JP,A)
【文献】特表2020-522752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/08
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高屈折率層と低屈折率層とを交互に繰り返し積層した積層体を備える反射板であって、
前記高屈折率層の屈折率は、前記低屈折率層の屈折率よりも高く、
前記高屈折率層を構成する主材料のガラス転移点をTg1とし、前記低屈折率層を構成する主材料のガラス転移点をTg2としたとき、Tg1,Tg2≧105℃であり、
前記高屈折率層の波長1100nmでの屈折率をN1とし、前記低屈折率層の波長1100nmでの屈折率をN2としたときの屈折率差(N1-N2)は、0.05以上0.25以下であり、
前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度で、前記積層体を曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状をなす湾曲積層体としたときの該湾曲積層体の波長1100nmの光の反射率をR1[%]とし、
前記湾曲積層体を、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管した後において、前記湾曲積層体の波長1100nmの光の反射率をR2[%]としたとき、R2/R1×100[%]で求められる反射率保持性が80%以上であることを特徴とする反射板。
【請求項2】
前記湾曲積層体は、その波長1100nmの光の前記反射率R1が40%以上である請求項に記載の反射板。
【請求項3】
前記積層体において、前記高屈折率層と前記低屈折率層とが交互に繰り返して積層される繰り返し数は、50回以上750回以下である請求項1または2に記載の反射板。
【請求項4】
前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とは、0℃≦|Tg1-Tg2|<60℃なる関係を満足する請求項1ないしのいずれか1項に記載の反射板。
【請求項5】
前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とのうち低い方のガラス転移点は、110℃以上250℃以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の反射板。
【請求項6】
前記高屈折率層は、波長1100nmでの屈折率N1が1.55以上1.85以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の反射板。
【請求項7】
前記低屈折率層は、波長1100nmでの屈折率N2が1.45以上1.67以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の反射板。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の反射板を備えることを特徴とする光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射板および光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイのような表示装置等が備えるカバーフィルム、サングラス、眼鏡のようなアイウエア等が備えるレンズ、バイク、車のような移動手段が備える窓部材として樹脂製をなす透光性カバー部材が用いられ、さらに、この透光性カバー部材に対して、特定の波長領域を有する光として、赤外領域における光を選択的に反射するミラーフィルムを貼付して用いることが知られている。
【0003】
このミラーフィルムとして、近年、特定の波長領域を有する光に対して、屈折率が高い高屈折率層と、屈折率が低い低屈折率層とが交互に繰り返して積層された積層体で構成される繰り返し部を備えることで、特定の波長領域を有する光を選択的に反射する多層積層フィルムすなわち多層積層反射板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、このミラーフィルムは、例えば、車載用の表示装置およびソーラパネルや、スポーツ用のアイウエアが備えるものに適用した場合には、過酷な条件下で使用されることが想定されるため、優れた耐熱性を備えることが求められる。
【0005】
しかしながら、このような過酷な条件下でミラーフィルムを使用すると、特に、ガラス転移点が低い方の屈折率層における膜厚が変化することに起因して、多層積層反射板としての機能が低下すると言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-86456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高屈折率層と低屈折率層とが交互に繰り返して積層された積層体で構成される繰り返し部を備え、赤外領域における光を選択的に反射する反射板において、過酷な条件下で使用されたとしても、優れた耐熱性を発揮することができる反射板、および、かかる反射板を備える、信頼性に優れた光学部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) 高屈折率層と低屈折率層とを交互に繰り返し積層した積層体を備える反射板であって、
前記高屈折率層の屈折率は、前記低屈折率層の屈折率よりも高く、
前記高屈折率層を構成する主材料のガラス転移点をTg1とし、前記低屈折率層を構成する主材料のガラス転移点をTg2としたとき、Tg1,Tg2≧105℃であり、
前記高屈折率層の波長1100nmでの屈折率をN1とし、前記低屈折率層の波長1100nmでの屈折率をN2としたときの屈折率差(N1-N2)は、0.05以上0.25以下であり、
前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度で、前記積層体を曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状をなす湾曲積層体としたときの該湾曲積層体の波長1100nmの光の反射率をR1[%]とし、
前記湾曲積層体を、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管した後において、前記湾曲積層体の波長1100nmの光の反射率をR2[%]としたとき、R2/R1×100[%]で求められる反射率保持性が80%以上であることを特徴とする反射板。
【0010】
) 前記湾曲積層体は、その波長1100nmの光の前記反射率R1が40%以上である上記()に記載の反射板。
【0011】
) 前記積層体において、前記高屈折率層と前記低屈折率層とが交互に繰り返して積層される繰り返し数は、50回以上750回以下である上記(1)または(2)に記載の反射板。
【0012】
) 前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とは、0℃≦|Tg1-Tg2|<60℃なる関係を満足する上記(1)ないし()のいずれかに記載の反射板。
【0013】
) 前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とのうち低い方のガラス転移点は、110℃以上250℃以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の反射板。
【0014】
) 前記高屈折率層は、波長1100nmでの屈折率N1が1.55以上1.85以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の反射板。
【0015】
) 前記低屈折率層は、波長1100nmでの屈折率N2が1.45以上1.67以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の反射板。
【0016】
) 上記(1)ないし()のいずれかに記載の反射板を備えることを特徴とする光学部品。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高屈折率層と低屈折率層とが交互に繰り返して積層された積層体で構成される繰り返し部を備え、赤外領域における光を選択的に反射する反射板が、過酷な条件下で使用されたとしても、反射板が備える低屈折率層および高屈折率層のうちガラス転移点が低い方の屈折率層における膜厚が変化するのを的確に抑制または防止することができる。そのため、この反射板は、優れた耐熱性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の反射板が適用されたミラーフィルムの実施形態を示す縦断面図である。
図2図1中の一点鎖線で囲まれた領域[B]に位置する、ミラーフィルムが備える反射板の一部を拡大した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の反射板を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、本発明の反射板が適用されたミラーフィルムを一例として説明する。
【0020】
<ミラーフィルム>
図1は、本発明の反射板が適用されたミラーフィルムの実施形態を示す縦断面図、図2は、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[B]に位置する、ミラーフィルムが備える反射板の一部を拡大した拡大断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1図2中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図1図2中では、理解を容易にするため、ミラーフィルムを平坦な状態で図示するとともに、厚さ方向を誇張して模式的に図示している。
【0021】
ミラーフィルム1は、本実施形態では、図1に示すように、特定の波長領域を有する光を選択的に反射する反射層3と、この反射層3の上面および下面(一方の面および他方の面)の双方に積層されたハードコート層5とを備える積層板で構成されている。
【0022】
ミラーフィルム1において、このものが備える反射層3が本発明の反射板で構成されるが、以下、ミラーフィルム1を構成する各層について説明する。
【0023】
反射層3は、ミラーフィルム1の厚さ方向の中央に位置する中間層であり、本発明では、特定の波長領域(特定波長領域)を有する光として、赤外領域における光を選択的に反射し、この反射により反射されない光を選択的に透過する。この反射層3が本発明の反射板で構成される。
【0024】
反射層3は、図2に示す通り、赤外領域における光に対して、屈折率が高い高屈折率層31と、屈折率が低い低屈折率層32とが交互に繰り返して積層された積層体で構成される繰り返し部33を備える多層積層フィルム(多層積層反射板)である。すなわち、反射層3は、繰り返し部33を複数回繰り返して積層した積層体で構成することにより、1つの高屈折率層31を、2つの低屈折率層32で挟み込んだ構成を繰り返して有するものである。
【0025】
この反射層3において、高屈折率層31を、赤外領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料を含有し、低屈折率層32を、赤外領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料を含有する構成とすることで、高屈折率層31と低屈折率層32との層間において、赤外領域における光に対する屈折率差を大きく、反射されない光に対する屈折率差を小さくすることができる。これにより、赤外領域における光を選択的に反射して、反射されない光を透過光として透過する多層積層フィルムすなわち多層積層反射板としての機能を、反射層3に付与することができる。換言すれば、反射層3は、赤外領域における光が反射層3に入射光として入射すると、その透過光が、最大限でブロック(反射)すなわち最小限で透過し、これに対して、反射されない光が反射層3に入射光として入射すると、その透過光が最小限でブロックすなわち最大限で透過する多層積層反射板としての機能を発揮する。
【0026】
ここで、本発明では、具体的に、反射層3において、高屈折率層31の波長1100nmでの屈折率をN1とし、低屈折率層32の波長1100nmでの屈折率をN2としたとき、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下に設定されている。波長1100nmにおける屈折率差(N1-N2)を前記範囲内に設定することにより、高屈折率層31と低屈折率層32との層間において、赤外領域における光に対する屈折率差が大きく設定されていると言うことができ、赤外領域における光を、確実に最大限でブロック(反射)することができる。
【0027】
なお、赤外領域における光を最大限でブロック(反射)し、反射されない光を最小限でブロックする赤外光(赤外線)の波長領域は、高屈折率層31および低屈折率層32にそれぞれ含まれる樹脂材料の種類、反射層3(繰り返し部33)における高屈折率層31と低屈折率層32との繰り返し数、ならびに、反射層3(繰り返し部33)の厚さ等を適宜設定することで、所望の大きさ(範囲内)に調整される。
【0028】
したがって、この反射層3を備えるミラーフィルム1を、例えば、車載用の表示装置が備える表示部が有する透光性カバー部材に貼付した場合には、表示装置の外部から照射される外光、すなわち、太陽光(自然光)は、ミラーフィルム1を透過する際に、赤外領域における光がミラーフィルム1で反射され、残りの光すなわち反射されない光が減衰された光として表示部の内部にまで到達することとなる。これにより、太陽光の表示部内への侵入が抑制され、よって、表示部内が太陽光(反射された赤外線)によって経時的に劣化するのをできる限り防止することができる。また、ミラーフィルム1を、例えば、スポーツ用のアイウエアが備えるレンズに貼付した場合には、アイウエアの外部から照射される外光、すなわち、太陽光の直接光や、その反射光は、ミラーフィルム1を透過する際に、赤外領域における光がミラーフィルム1で反射され、残りの光すなわち反射されない光が減衰された光がアイウエアの装着者の眼にまで到達することとなる。これにより、太陽光の直接光や反射光に含まれる赤外線の眼への侵入が抑制され、よって、装着者のストレスの低減や、装着者の眼における炎症の抑制を図ることができる。このようにミラーフィルム1は、反射板としての機能を発揮する。なお、前記透光性カバー部材またはレンズと、これらに貼付された反射層3とにより、光学部品(本発明の光学部品)が構成される。
【0029】
この反射層3(多層積層フィルム)は、前述の通り、高屈折率層31と低屈折率層32とが交互に繰り返して積層された繰り返し部33(積層体)を形成することにより得られるが、より具体的には、例えば、以下のようにして製造し得る。
【0030】
すなわち、まず、高屈折率層31および低屈折率層32を形成するための樹脂組成物として、それぞれ、赤外領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料、および、赤外領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料を主材料として含有するものを用意し、これらを交互に積層することで、高屈折率層31と低屈折率層32とが交互に繰り返して積層された繰り返し部33(積層体)を得る(積層工程)。
【0031】
この繰り返し部33を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、数台の押出機により、原料となる前記樹脂材料を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法などの共押出Tダイ法、空冷式または水冷式共押出インフレーション法が挙げられ、なかでも、特に、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法は、成膜する各層の厚さ制御に優れることから好ましく用いられる。
【0032】
次いで、高屈折率層31と低屈折率層32とが交互に繰り返して積層された繰り返し部33(積層体)を、冷却させて、乾燥・固化させる(冷却工程)。これにより、赤外領域における光を選択的に反射して、反射されない光を透過光として透過する多層積層フィルム(多層積層反射板)として機能する反射層3が得られる。
【0033】
ここで、ミラーフィルム1を、車載用の表示装置や、スポーツ用のアイウエアが備えるものに適用した場合、過酷な条件下で使用されることが想定される。そのため、ミラーフィルム1が有する反射層3は、優れた耐熱性を備えることが求められる。
【0034】
反射層3は、前述の通り、赤外領域における光を最大限で反射し、これに対して、反射されない光を最大限で透過する特性を発揮するものである。したがって、反射層3が優れた耐熱性を発揮するとは、過酷な条件下に晒されたとしても、かかる反射層3の特性が好適に維持されていることであると言うことができる。
【0035】
そこで、本発明では、反射層3を構成する、高屈折率層31の主材料および低屈折率層32の主材料において、高屈折率層31に含まれる赤外領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料のガラス転移点をTg1とし、低屈折率層32に含まれる赤外領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料のガラス転移点をTg2としたとき、Tg1,Tg2≧105℃なる関係を満足している。このように、Tg1とTg2との双方が105℃以上であるものを選択することで、高屈折率層31と低屈折率層32との双方を優れた耐熱性を有するものとし得る。したがって、低屈折率層32および高屈折率層31のうちガラス転移点が低い方の屈折率層における膜厚が変化するのを的確に抑制または防止することができる。よって、ミラーフィルム1が有する反射層3は、反射板としての機能が低下するのが的確に抑制または防止されることから、優れた耐熱性を発揮する。なお、低屈折率層32において屈折率が低い樹脂材料は、一般的に、高屈折率層31の主材料として含まれる屈折率が高い樹脂材料よりも、ガラス転移点が低いものが選択される傾向が高い。そのため、屈折率が低い樹脂材料として、ガラス転移点Tg2が105℃以上のものを用いることにより、前記効果を確実に発揮させることができる。
【0036】
この反射層3は、高屈折率層31を構成する主材料のガラス転移点Tg1と、低屈折率層32を構成する主材料のガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度で、金属型に押し当てることで、繰り返し部33(積層体)を曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状をなす湾曲積層体としたときの湾曲積層体の波長1100nmの光の反射率をR1[%]とし、この湾曲積層体を、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管した後において、湾曲積層体の波長1100nmの光の反射率をR2[%]としたとき、R2/R1×100[%]で求められる反射率保持性が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0037】
上記の通り、曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状とされた繰り返し部33(湾曲積層体)が105℃の温度環境下で1000hr保管するという過酷な条件下に晒されたとしても、前記反射率保持性が前記下限値以上であることを維持している。このように、前記反射率保持性が前記下限値以上の割合で維持されていることから、この反射層3を、優れた耐熱性を発揮するものであると言うことができる。また、湾曲積層体の波長1100nmの光の反射率R1は、40%以上であることが好ましく、45%以上65%以下であることがより好ましい。このような湾曲積層体を、赤外領域における光を優れた反射率で反射しているものであると言うことができる。
【0038】
なお、前述の通り、繰り返し部33(積層体)では、赤外領域における光を最大限でブロック(反射)し、反射されない光を最小限でブロックする赤外光(赤外線)の波長領域は、高屈折率層31および低屈折率層32にそれぞれ含まれる樹脂材料の種類、反射層3(繰り返し部33)における高屈折率層31と低屈折率層32との繰り返し数、ならびに、反射層3(繰り返し部33)の厚さ等を適宜設定することで、所望の大きさ(範囲内)に調整される。
【0039】
このような反射層3(繰り返し部33)において、具体的に、本発明では、赤外光の代表値として、屈折率計を用いて層における屈折率を容易に測定することができる1100nmを選択し、波長1100nmにおける高屈折率層31の屈折率N1と低屈折率層32の屈折率N2との屈折率差(N1-N2)の大きさを0.05以上0.25以下に規定することにより、反射層3(繰り返し部33)すなわち反射偏光板を、赤外領域における光、具体的には、波長領域700nm以上1100nm以下の赤外光を最大限で反射するものとすることができる。
【0040】
さらに、本発明では、高屈折率層31の主材料および低屈折率層32の主材料として、高屈折率層31に含まれる赤外領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料のガラス転移点Tg1と、低屈折率層32に含まれる赤外領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料のガラス転移点Tg2とがTg1,Tg2≧105℃なる関係を満足しているものを選択することで、反射層3(繰り返し部33)すなわち反射板(多層積層反射板)を優れた耐熱性を発揮するものとすることができる。
【0041】
以上のように、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であり、かつ、Tg1,Tg2≧105℃であることを満足する、高屈折率層31の主材料すなわち赤外領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料、および、低屈折率層32の主材料すなわち赤外領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料としては、それぞれ、非結晶性を有するポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびアクリル系樹脂のうちの少なくとも1種であることが好ましく、ポリカーボネート系樹脂およびポリエステル系樹脂のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。これらのものから高屈折率層31および低屈折率層32の主材料を適宜選択することで、高屈折率層31および低屈折率層32を備える反射層3を、比較的容易に、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であることと、Tg1,Tg2≧105℃であることとの双方を満足するものとすることができる。
【0042】
以上のような点を考慮して、高屈折率層31の主材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル系樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)およびポリアリレート(PAR)のうちの少なくとも1種が好適に選択される。
【0043】
また、低屈折率層32の主材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)のようなスチレン系樹脂およびポリアリレート(PAR)のうちの少なくとも1種が好適に選択される。
【0044】
このような樹脂材料を用いる場合、高屈折率層31と低屈折率層32とに、それぞれ含まれる主材料の組み合わせとしては、具体的には、ポリカーボネート(PC)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との組み合わせ、ポリアリレート(PAR)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との組み合わせ、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との組み合わせ、ポリエーテルサルフォン(PES)とポリアリレート(PAR)との組み合わせ、ポリエチレンナフタレート(PEN)とアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)との組み合わせ、ポリエチレンナフタレート(PEN)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との組み合わせ、等が挙げられる。このような組み合わせによれば、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であることと、Tg1,Tg2≧105℃であることとの双方を確実に満足するものとすることができる。
【0045】
なお、高屈折率層31および低屈折率層32には、それぞれ、前記主材料の他に、充填材のような添加剤が含まれていてもよい。これにより、高屈折率層31および低屈折率層32を備える反射層3を、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であることと、Tg1,Tg2≧105℃であることとの双方をより確実に満足するものとし得る。
【0046】
また、この充填剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルク、スメクタイトのような無機充填材、架橋ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体のような有機充填材が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、炭酸ストロンチウムおよびスメクタイトのうちの少なくとも1種であることが好ましく、炭酸ストロンチウムであることがより好ましい。
【0047】
また、充填剤は、球状、扁平状のような粒子状、顆粒状、ペレット状および鱗片状のいずれの形状をなしていてもよいが、粒子状をなして含まれることが好ましい。
【0048】
以上のような樹脂材料の組み合わせで得られる高屈折率層31および低屈折率層32において、赤外領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料のガラス転移点Tg1と、赤外領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料のガラス転移点Tg2とは、Tg1,Tg2≧105℃なる関係、換言すればTg1とTg2の温度が低い方が105℃以上なる関係を満足すればよいが、Tg1とTg2の温度が低い方が110℃以上250℃以下なる関係を満足するのが好ましく、Tg1とTg2の温度が低い方が110℃以上200℃以下なる関係を満足するのがより好ましい。さらに、0℃≦|Tg1-Tg2|≦60℃なる関係を満足するのが好ましく、25℃≦|Tg1-Tg2|≦60℃なる関係を満足するのがより好ましい。このように、Tg1とTg2との双方が前記範囲内であり、さらに、双方の差が前記上限値以下であるものを選択することで、高屈折率層31と低屈折率層32との双方を優れた耐熱性を有するものとし得ることから、反射層3を、確実に優れた耐熱性を発揮するものとすることができる。
【0049】
さらに、高屈折率層31の波長1100nmでの屈折率N1と、低屈折率層32の波長1100nmでの屈折率N2との関係式である屈折率差(N1-N2)は、0.05以上0.25以下であればよいが、0.08以上0.25以下であるのが好ましい。また、高屈折率層31は、波長1100nmでの屈折率N1が1.55以上1.85以下であるのが好ましく、低屈折率層32は、波長1100nmでの屈折率N2が1.45以上1.67以下であるのが好ましい。これにより、赤外領域における光を、より確実に反射させることができる。
【0050】
さらに、高屈折率層31および低屈折率層32は、それぞれ、その平均厚さが50nm以上300nm以下であることが好ましく、その平均厚さが70nm以上200nm以下であることがより好ましい。かかる範囲内の平均厚さにおいて、高屈折率層31および低屈折率層32の光学厚み(層の平均厚さ×層の屈折率)を、選択的に反射すべき赤外領域における光の波長に対して4分の1の大きさに設定する。これにより、界面反射した光を、互いに強め合うことができるため、反射層3により、赤外領域における光を選択的に反射させることができる。
【0051】
また、高屈折率層31と低屈折率層32とが積層された繰り返し部33は、その積層された数が50回以上750回以下であることが好ましく、100回以上600回以下であることがより好ましい。
【0052】
高屈折率層31および低屈折率層32の平均厚さ、ならびに、高屈折率層31と低屈折率層32とが積層された繰り返し部33の数を前記範囲内に設定することにより、赤外領域において最大限でブロックする光の波長(波長領域)を、所望の大きさ(範囲内)のものに調整することができる。
【0053】
ハードコート層5は、図1に示すように、反射層3の上面および下面の双方に形成され、紫外線硬化性樹脂で構成されるものであり、反射層3を保護することで、ミラーフィルム1に優れた耐候性、耐久性、耐擦傷性、熱成形性を付与するために設けられる。なお、このハードコート層5を備えるミラーフィルム1は、例えば、湾曲させた湾曲状態で、収納体が備える窓部等に装着することができる。
【0054】
ハードコート層5を構成する紫外線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂、ウレタンアクリレートオリゴマーまたはポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする紫外線硬化性樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルフェノール系樹脂等のうちの少なくとも1種を主成分とする紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。そして、これらの中でもアクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂が好ましい。これにより、反射層3との密着性の向上を図ることができる。
【0055】
ハードコート層5の平均厚さとしては、特に限定されず、例えば、2.0μm以上20μm以下であるのが好ましく、3.0μm以上15μm以下であるのがより好ましい。これにより、反射層3を保護するコート層としての機能を確実に付与することができる。
【0056】
ハードコート層5の屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.40以上1.60以下であるのが好ましく、1.450以上1.595以下であるのがより好ましい。
【0057】
このハードコート層5は、例えば、ワニス状の紫外線硬化性樹脂組成物を反射層3上に塗布して液状被膜を形成し、この液状被膜に紫外線を照射することで液状被膜を硬化させることで形成される。
【0058】
なお、ミラーフィルム1は、このハードコート層5の形成が省略されたもの、すなわち、反射層3(本発明の反射板)単独で構成されるものであってもよい。
【0059】
以上のような構成のミラーフィルム1は、その総厚が例えば、15μ以上300μm以下であるのが好ましく、30μm以上210μm以下がより好ましい。これにより、ミラーフィルム1をできる限り薄いものとすることができるとともに、ミラーフィルム1として通常の使用に耐え得る程度の剛性を有するものとすることができる。
【0060】
また、ミラーフィルム1は、その平面視で長方形をなすものであり、縦が50mm以上200mm以下であるのが好ましく、60mm以上190mm以下であるのがより好ましく、横が100mm以上400mm以下であるのが好ましく、130mm以上380mm以下であるのがより好ましい。
【0061】
以上、本発明の反射板および光学部品について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、反射板を反射層3として備えるミラーフィルム1を構成する各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、ミラーフィルム1は、中間層等の他の層をさらに備えるものであってもよい。
【0062】
さらに、前記実施形態では、本発明の反射板を、反射層3(多層積層反射板)として備えるミラーフィルム1に適用する場合について説明したが、このミラーフィルム1は、例えば、液晶ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイのような表示装置等が備えるカバーフィルム、サングラス、眼鏡のようなアイウエア等が備えるレンズに貼付して使用することができる他、本発明の反射板は、バイク、車、航空機、鉄道のような移動手段、工作機械、建築物が備える窓部材、ヘッドライト、フォグランプが備えるカバー部材、ヘッドアップディスプレイが備える光源内に設けられる輝度向上フィルムやコールドミラー、赤外線センサーのような車載センサーが備える反射板等に貼付して使用することができる。本発明の反射板は、前述のように屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であることと、Tg1,Tg2≧105℃であることとの双方を満足し、優れた耐熱性を発揮するため、各種光学部材が備える反射板として好適に用いることができ、各種光学部材は、優れた信頼性を発揮する。
【実施例
【0063】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0064】
1.原材料の準備
<ポリカーボネート(PC1)>
ポリカーボネート(PC1)として、ユーピロンE2000(三菱エンジニアプラスチックス社製)を用意した。
【0065】
<ポリメタクリル酸メチル(耐熱PMMA1)>
ポリメタクリル酸メチル(耐熱PMMA1)として、デルペットPM120N(旭化成社製)を用意した。
【0066】
<ポリエチレンテレフタレート(耐熱PETG1)>
耐熱非晶性ポリエチレンテレフタレート(耐熱PETG1)として、トライタンTX2001(イーストマンケミカル社製、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)を用意した。
【0067】
<ポリエチレンテレフタレート(PETG2)>
非晶性ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG2)として、スカイグリーンK2012(SKケミカル社製)を用意した。
【0068】
<ポリアリレート(PAR1)>
ポリアリレート(PAR1)として、UポリマーP-5001(ユニチカ社製)を用意した。
【0069】
<ポリエーテルサルフォン(PES)>
ポリエーテルサルフォン(PES)として、スミカエクセル3600G(住友化学社製)を用意した。
【0070】
<ポリエチレンナフタレート(PEN1)>
ポリエチレンナフタレート(PEN1)として、テオネックスTN8065S(帝人社製)を用意した。
【0071】
<ポリエチレンテレフタレート(APET1)>
ポリエチレンテレフタレート(APET1)として、ノバペックスGM700Z(三菱ケミカル社製、結晶性ポリエチレンテレフタレート)を用意した。
【0072】
<アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS1)>
アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS1)として、デンカAS-XGS(デンカ社製)を用意した。
【0073】
<スチレン-N-フェニルマレイミド-無水マレイン酸共重合体(IP1)>
スチレン-N-フェニルマレイミド-無水マレイン酸共重合体(IP1)として、デンカIP-ND(デンカ社製)を用意した。
【0074】
2.多層積層反射板の製造
(実施例1)
[1]まず、高屈折率層31を形成するための樹脂材料としてポリカーボネート(PC1)を、低屈折率層32を形成するための樹脂材料としてポリメタクリル酸メチル(耐熱PMMA1)を、それぞれ、用意した。
【0075】
[2]次に、ポリカーボネート(PC1、Tg150℃)およびポリメタクリル酸メチル(耐熱PMMA1、Tg123℃)を、それぞれ、押出機(サン・エヌ・ティー社製、「SNT40-28」)で、270℃の溶融状態とし、フィードブロックおよびダイを用いて共押出しして、フィルム形成した後、このものを冷却することで、高屈折率層31と低屈折率層32とが交互に繰り返して積層された、合計1023層(繰り返し数511回)の積層体で構成される実施例1の反射板(多層積層反射板)を得た。ここで、積層厚み比が高屈折率層31:低屈折率層32=1:1になるように吐出量を調整した。
【0076】
なお、得られた反射板(積層体)において、低屈折率層32の波長1100nmにおける屈折率を、アッペ屈折率計(ATAGO社製、「DR-M2/1550」)を用いて測定したところ1.502であった。また、高屈折率層31の波長1100nmにおける屈折率を、アッペ屈折率計(ATAGO社製、「DR-M2/1550」)を用いて測定したところ1.569であった。さらに、反射板の平均厚さは、180μmであった。
【0077】
(実施例2~6、比較例1~3)
前記工程[1]において、高屈折率層31および低屈折率層32を形成するための樹脂材料として、それぞれ、表1に示すものを用意したこと以外は前記実施例1と同様にして、実施例2~6、比較例1~3の多層積層反射板を得た。
【0078】
3.評価
各実施例および各比較例の反射板を、以下の方法で評価した。
【0079】
<1A>加熱前の反射板の反射率R1(%)の測定
まず、各実施例および各比較例の反射板を、それぞれ、ガラス転移点Tg1とガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度で、金属型に押し当てることで、前記反射板(積層体)を曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状をなす湾曲積層体とした。
【0080】
次いで、湾曲形状とした反射板(湾曲積層体)を、1100nmの光を発する光源と、受光部との間に、反射板の上面と、光源と受光部とを結ぶ直線とのなす角度が90°となるように配置した。
【0081】
次いで、湾曲形状とした反射板を透過した、光源から発光された発光光(透過光)を、受光部において受光し、この透過光の透過率(%)を測定することで、初期(加熱前)の反射率R1(%)を求めた。
【0082】
<2A>加熱後の反射板の反射率R2(%)の測定
まず、各実施例および各比較例の反射板を、それぞれ、ガラス転移点Tg1とガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度で、金属型に押し当てることで、前記反射板(積層体)を曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状をなす湾曲積層体とした。
【0083】
次いで、湾曲形状とした反射板(湾曲積層体)を、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管し、その後、1100nmの光を発する光源と、受光部との間に、反射板の上面と、光源と受光部とを結ぶ直線とのなす角度が90°となるように配置した。
【0084】
次いで、湾曲形状とした反射板を透過した、光源から発光された発光光(透過光)を、受光部において受光し、この透過光の透過率(%)を測定することで、加熱後の反射率R2(%)を求めた。
【0085】
そして、ここで得られた、加熱後の反射率R2(%)と、前記<1A>で得られた、初期(加熱前)の反射率R1(%)とを用いて、反射率保持性(R2/R1×100[%])を求めた。
【0086】
<3A>反射板の赤外領域における耐熱性の確認
まず、各実施例および各比較例の反射板について、1100nmの波長での反射率を測定した。その後、耐久試験(105℃×1000hr)を行い、試験後のサンプル(反射板)についても同様に反射率を測定した。
【0087】
そして、耐久試験前後における反射率を、それぞれ、R3、R4としたとき、これらに基づいて、以下に示すようにすることで、反射率の変化率を求めた。
反射率の変化率:R4/R3×100(%)
その後、得られた反射率の変化率について、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
【0088】
[評価基準]
◎: R4/R3×100が85%以上
〇: R4/R3×100が80%以上85%未満
×: R4/R3×100が80%未満
【0089】
<4A>反射板の可視光領域における透過性および耐熱性の確認
まず、各実施例および各比較例の反射板について、589nmの波長での透過率を測定した。その後、耐久試験(105℃×1000hr)を行い、試験後のサンプル(反射板)についても同様に透過率を測定した。
【0090】
そして、耐久試験前後における透過率を、それぞれ、T3、T4としたとき、これらに基づいて、以下に示すようにすることで、透過率の変化率を求めた。
透過率の変化率:T4/T3×100(%)
その後、得られた透過率の変化率について、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
【0091】
[評価基準]
◎: T4/T3×100が85%以上
〇: T4/T3×100が80%以上85%未満
×: T4/T3×100が80%未満
【0092】
<5A>反射板の熱曲げ性の確認
まず、各実施例および各比較例の反射板について、それぞれ、ガラス転移点Tg1とガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度に加熱した状態で、曲率半径60mmの金属型に押し当てることで、熱曲げ加工を施した。
そして、熱曲げされた反射板について、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
【0093】
[評価基準]
◎: 熱曲げした反射板の曲率半径が55mm以上60mm以下
〇: 熱曲げした反射板の曲率半径が50mm以上55mm未満
×: 熱曲げした反射板の曲率半径が50mm未満
【0094】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の反射板における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示したように、各実施例における反射板では、Tg1,Tg2≧105℃であり、かつ、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であることを満足していることから、耐熱性試験前において、赤外領域における優れた反射性を示し、さらに、耐熱性試験の前後において、可視光領域における透過性を保持しつつ、赤外領域における反射性を保持し得る結果、すなわち、耐熱性を有していると言える結果を示した。
【0097】
これに対して、各比較例における反射板では、Tg1,Tg2≧105℃であることと、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であることとの少なくとも一方を満足しておらず、これにより、赤外領域における優れた反射性と、耐熱性との一方または双方を有しているとは言えない結果を示した。
【符号の説明】
【0098】
1 ミラーフィルム
3 反射層
5 ハードコート層
31 高屈折率層
32 低屈折率層
33 繰り返し部
図1
図2