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特許7115545医用X線画像処理装置およびX線画像撮影装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】医用X線画像処理装置およびX線画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
A61B6/00 350A
A61B6/00 390A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020529847
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2018025842
(87)【国際公開番号】W WO2020012520
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳也
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-142719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0266190(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線の吸収係数が異なる複数の基準部を含むファントムの前記複数の基準部のそれぞれに対応する複数の吸収係数を記憶するファントム情報記憶部と、
前記ファントム情報記憶部に記憶された前記複数の基準部のそれぞれの前記複数の吸収係数と、前記ファントムとともに被写体が撮影されたX線画像中の前記複数の基準部のそれぞれの複数の画素値とを対応させるX線画像処理部とを備え
前記X線画像処理部は、前記複数の吸収係数と、前記複数の吸収係数のそれぞれに対応させて予め設定された複数の目標画素値とに基づいて目標画素値関数を設定し、前記複数の吸収係数と、前記複数の吸収係数のそれぞれに対応する前記複数の画素値とに基づいて、前記複数の吸収係数以外の他の吸収係数に対応する他の画素値を推定した推定画素値情報を取得し、前記目標画素値関数および前記推定画素値情報に基づいて、前記X線画像中の前記被写体の画素値を補正するように構成されている、医用X線画像処理装置。
【請求項2】
前記X線画像処理部は、前記複数の吸収係数に対応させた前記複数の画素値を、それぞれ、前記複数の目標画素値に補正するように構成されている、請求項1に記載の医用X線画像処理装置。
【請求項3】
前記X線画像処理部は、前記ファントムの前記複数の基準部に対応した前記複数の吸収係数と、前記目標画素値関数に基づいて、前記X線画像中の前記複数の基準部のそれぞれの前記複数の画素値を前記目標画素値関数上の対応する目標画素値に補正するように構成されている、請求項1または2に記載の医用X線画像処理装置。
【請求項4】
前記X線画像処理部は、前記ファントムとともに前記被写体が撮影された前記X線画像を取得するごとに、前記複数の吸収係数に対応させた前記複数の画素値を、それぞれ、前記目標画素値関数上の前記複数の目標画素値に補正する画素値補正テーブルを取得するように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の医用X線画像処理装置。
【請求項5】
前記X線画像処理部は、複数回のX線撮影により前記X線画像を複数取得する場合において、前記複数のX線画像の各々が得られるごとに、前記画素値補正テーブルを取得し、前記複数のX線画像の各々に対応する前記画素値補正テーブルに基づいて、前記複数のX線画像の各々を補正するように構成されている、請求項4に記載の医用X線画像処理装置。
【請求項6】
前記X線画像処理部は、前記目標画素値関数および前記推定画素値情報に基づいて、前記画素値補正テーブルを取得するように構成されている、請求項4または5に記載の医用X線画像処理装置。
【請求項7】
表示部をさらに備え、
前記X線画像処理部は、前記目標画素値関数と前記推定画素値情報との両方を前記表示部に表示させるように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の医用X線画像処理装置。
【請求項8】
前記X線画像処理部は、前記ファントム情報記憶部に記憶された前記複数の基準部のそれぞれの前記複数の吸収係数と、前記X線画像中の前記複数の基準部のそれぞれの前記複数の画素値とを対応させた対応情報に基づいて、前記複数の画素値を前記複数の目標画素値に補正した前記X線画像に対して行う画像処理の設定を変更する、または、補正前の前記X線画像に対して行う画像処理の設定を変更するように構成されている、請求項~7のいずれか1項に記載の医用X線画像処理装置。
【請求項9】
X線源と、
前記X線源から照射されたX線を検出する検出器と、
前記検出器により検出されたX線の強度分布からX線画像を取得する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、X線の吸収係数が異なる複数の基準部を含むファントムの前記複数の基準部のそれぞれに対応する複数の吸収係数を記憶するファントム情報記憶部と、前記ファントム情報記憶部に記憶された前記複数の基準部のそれぞれの前記複数の吸収係数と、前記ファントムとともに被写体が撮影されたX線画像中の前記複数の基準部のそれぞれの複数の画素値とを対応させるX線画像処理部とを含み、
前記X線画像処理部は、前記複数の吸収係数と、前記複数の吸収係数のそれぞれに対応させて予め設定された複数の目標画素値とに基づいて目標画素値関数を設定し、前記複数の吸収係数と、前記複数の吸収係数のそれぞれに対応する前記複数の画素値とに基づいて、前記複数の吸収係数以外の他の吸収係数に対応する他の画素値を推定した推定画素値情報を取得し、前記目標画素値関数および前記推定画素値情報に基づいて、前記X線画像中の前記被写体の画素値を補正するように構成されている、X線画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用X線画像処理装置およびX線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体を撮影したX線画像を取得する医用X線画像処理装置およびX線画像撮影装置が知られている。このような医用X線画像処理装置およびX線画像撮影装置は、たとえば、特開2006-311922号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2006-311922号公報に記載のX線撮影装置は、被写体に照射するX線を発生させるX線発生装置と、X線発生装置に対して対向配置され、被写体を透過したX線を検出して画像データに変換するX線検出部とを備えている。X線撮影装置は、画像データに各種補正処理を行うことにより補正画像データを取得する補正処理部と、補正画像データを自動的に階調変換して出力画像データを取得する自動階調処理部とを含む画像処理装置を備えている。ここで、自動階調処理部は、望ましい階調変換関数である基本階調変換特性を複数記憶した記憶部を有している。
【0004】
上記特開2006-311922号公報に記載のX線撮影装置における自動階調処理部は、記憶部に記憶されている複数の基本階調変換特性のうちから、補正画像データに対して適切な基本階調変換特性を取得するように構成されている。具体的には、自動階調処理部は、補正画像データ内に設定された特徴領域における画素値の最大値、最小値および平均値をといった特徴量を取得し、特徴量との誤差が最小となる基本階調変換特性を取得するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-311922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特開2006-311922号公報に記載のX線撮影装置では、補正画像データ内の特徴領域の画素値に基づいて、基本階調変換特性を取得しているので、X線の線量が変化したり、X線発生装置の位置が変化したりすると、基本階調変換特性を取得する際の、補正画像データ(X線画像)内の特徴量(基準)が変更されるという問題点がある。この結果、撮影した複数の画像間での基準が異なることに起因して、たとえば複数画像を再構成する場合などに、精度の高い再構成画像を取得することができない。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、X線の線量が変化したり、X線発生装置の位置が変化したりしても、X線画像内の基準が変更されないようにすることが可能な医用X線画像処理装置およびX線画像撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における医用X線画像処理装置は、X線の吸収係数が異なる複数の基準部を含むファントムの複数の基準部のそれぞれに対応する複数の吸収係数を記憶するファントム情報記憶部と、ファントム情報記憶部に記憶された複数の基準部のそれぞれの複数の吸収係数と、ファントムとともに被写体が撮影されたX線画像中の複数の基準部のそれぞれの複数の画素値とを対応させるX線画像処理部とを備え、X線画像処理部は、複数の吸収係数と、複数の吸収係数のそれぞれに対応させて予め設定された複数の目標画素値とに基づいて目標画素値関数を設定し、複数の吸収係数と、複数の吸収係数のそれぞれに対応する複数の画素値とに基づいて、複数の吸収係数以外の他の吸収係数に対応する他の画素値を推定した推定画素値情報を取得し、目標画素値関数および推定画素値情報に基づいて、X線画像中の被写体の画素値を補正するように構成されている。なお、本発明における画素値とは、一般的な画素値だけでなく、log変換による変換を行った画素値、および、シグモイド曲線状などの変換係数による変換を行った画素値を含む広い概念である。
【0009】
この発明の第1の局面による医用X線画像処理装置では、上記のように、X線画像処理部が、ファントム情報記憶部に記憶されたX線画像中の複数の基準部のそれぞれの複数の吸収係数と、ファントムとともに被写体が撮影されたX線画像中のファントムの複数の基準部のそれぞれの複数の画素値とを対応させるように構成されている。これにより、X線画像内のファントムの複数の基準部のそれぞれの吸収係数と複数の画素値とが対応するので、X線の線量が変化したり、X線発生装置の位置が変化したりしても、たとえばX線画像内の画素値の補正を行う際の、X線画像内の基準が変更されないようにすることができる。その結果、複数の画像間での基準が異なることに起因して、たとえば複数画像を再構成する場合などに、精度の高い再構成画像を取得することができる。
【0010】
上記第1の局面における医用X線画像処理装置において、好ましくは、X線画像処理部は、複数の吸収係数に対応させた複数の画素値を、それぞれ、複数の目標画素値に補正するように構成されている。このように構成すれば、ファントムの複数の基準部のそれぞれに対して設定された複数の目標画素値同士の互いの関係を利用して、X線画像内の画素値を目標画素値に補正する際に、複数の吸収係数に対応させた複数の目標画素値だけでなく、X線画像内の画素値の目標画素値を設定することができる。
【0011】
上記第1の局面における医用X線画像処理装置において、好ましくは、X線画像処理部は、ファントムの複数の基準部に対応した複数の吸収係数と、目標画素値関数に基づいて、X線画像中の複数の基準部のそれぞれの複数の画素値を目標画素値関数上の対応する目標画素値に補正するように構成されている。このように構成すれば、複数の目標画素値を複数の吸収係数に対応付けた目標画素値関数として扱うことができるので、複数の目標画素値の情報を容易に取得することができる。
【0012】
上記第1の局面による医用X線画像処理装置において、好ましくは、X線画像処理部は、ファントムとともに被写体が撮影されたX線画像を取得するごとに、複数の吸収係数に対応させた複数の画素値を、それぞれ、目標画素値関数上の複数の目標画素値に補正する画素値補正テーブルを取得するように構成されている。このように構成すれば、X線画像を取得するごとに対応するX線画像の画素値補正テーブルを取得することにより、同じ基準の画素値の補正が行なわれた複数のX線画像を取得することができるので、複数のX線画像を再構成する場合に、精度の高い再構成画像を容易に得ることができる。
【0013】
上記画素値補正テーブルを取得するX線画像処理部を備える医用X線画像処理装置において、好ましくは、X線画像処理部は、複数回のX線撮影によりX線画像を複数取得する場合において、複数のX線画像の各々が得られるごとに、画素値補正テーブルを取得し、複数のX線画像の各々に対応する画素値補正テーブルに基づいて、複数のX線画像の各々を補正するように構成されている。このように構成すれば、複数のX線画像の各々が得られるごとに取得される画素値補正テーブルにより複数のX線画像の各々が補正されたとしても、画素値補正テーブルが、ファントムの複数の基準部の各々の複数の吸収係数に対応付けられた画素値により取得されているので、同じ基準の補正が行なわれた複数のX線画像を取得することができる。これにより、たとえば、複数のX線画像を再構成して再構成画像を取得する場合であっても、再構成画像にアーチファクト(虚像)が生じることを抑制することができる。
【0014】
上記複数の吸収係数のそれぞれに対応した複数の目標画素値との関係を目標画素値関数として設定するX線画像処理部を備える医用X線画像処理装置において、好ましくは、X線画像処理部は、目標画素値関数および推定画素値情報に基づいて、画素値補正テーブルを取得するように構成されている。このように構成すれば、推定画素値情報により、正確な画素値補正テーブルを取得することができるので、画素値補正テーブルによるX線画像中の画素値を精度よく補正することができる。
【0015】
上記第1の局面による医用X線画像処理装置において、好ましくは、表示部をさらに備え、X線画像処理部は、目標画素値関数と推定画素値情報との両方を表示部に表示させるように構成されている。このように構成すれば、目標画素値関数と推定画素値情報との違いを容易にユーザーが視覚的に認識することができる。
【0016】
上記第1の局面による医用X線画像処理装置において、好ましくは、X線画像処理部は、ファントム情報記憶部に記憶された複数の基準部のそれぞれの複数の吸収係数と、X線画像中の複数の基準部のそれぞれの複数の画素値とを対応させた対応情報に基づいて、複数の画素値を複数の目標画素値に補正したX線画像に対して行う画像処理の設定を変更する、または、補正前のX線画像に対して行う画像処理の設定を変更するように構成されている。このように構成すれば、X線画像に対して行われる補正前または補正後の画像処理の設定を適切に行うことができる。
【0017】
この発明の第2の局面におけるX線画像撮影装置は、X線源と、X線源から照射されたX線を検出する検出器と、検出器により検出されたX線の強度分布からX線画像を取得する画像処理部とを備え、画像処理部は、X線の吸収係数が異なる複数の基準部を含むファントムの複数の基準部のそれぞれに対応する複数の吸収係数を記憶するファントム情報記憶部と、ファントム情報記憶部に記憶された複数の基準部のそれぞれの複数の吸収係数と、ファントムとともに被写体が撮影されたX線画像中の複数の基準部のそれぞれの複数の画素値とを対応させるX線画像処理部とを含み、X線画像処理部は、複数の吸収係数と、複数の吸収係数のそれぞれに対応させて予め設定された複数の目標画素値とに基づいて目標画素値関数を設定し、複数の吸収係数と、複数の吸収係数のそれぞれに対応する複数の画素値とに基づいて、複数の吸収係数以外の他の吸収係数に対応する他の画素値を推定した推定画素値情報を取得し、目標画素値関数および推定画素値情報に基づいて、X線画像中の被写体の画素値を補正するように構成されている。
【0018】
この発明の第2の局面によるX線画像撮影装置では、上記のように、X線画像処理部が、ファントム情報記憶部に記憶されたX線画像中の複数の基準部のそれぞれの複数の吸収係数と、ファントムとともに被写体が撮影されたX線画像中のファントムの複数の基準部のそれぞれの複数の画素値とを対応させるように構成されている。これにより、X線画像内のファントムの複数の基準部のそれぞれの吸収係数と複数の画素値とが対応するので、X線の線量が変化したり、X線発生装置の位置が変化したりしても、たとえばX線画像内の画素値の補正を行う際の、X線画像内の基準が変更されないようにすることができる。その結果、複数の画像間での基準が異なることに起因して、たとえば複数画像を再構成する場合などに、精度の高い再構成画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、X線の線量が変化したり、X線発生装置の位置が変化したりしても、X線画像内の基準が変更されないようにすることが可能な医用X線画像処理装置およびX線画像撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態によるX線画像撮影装置および画像閲覧装置の全体構成を示した模式図である。
図2】本実施形態による医用X線画像処理装置および画像閲覧装置の全体構成を示したブロック図である。
図3図3(A)は、特徴部分A、B、Cを含むファントムを示した斜視図である。図3(B)は、ファントム構造データの吸収係数およびサイズを示した表である。
図4図4(A)は、ファントムの特徴部分A、B、Cの吸収係数と目標画素値を示した表である。図4(B)は、目標画素値関数を示したグラフである。
図5】本実施形態によるX線画像撮影装置において撮影されたX線画像を示した模式図である。
図6図6(A)は、X線画像における特徴部分A、B、Cの画素値情報を示した表である。図6(B)は、X線画像における特徴部分A、B、Cの推定画素値を示した表である。図6(C)は、X線画像における推定画素値情報を示したグラフである。
図7】本実施形態による画像閲覧装置において生成された目標画素値関数および推定画素値情報を示したグラフである。
図8図8(A)は、画素値補正テーブルを示した表である。図8(B)は、画素値補正テーブルを表したグラフである。
図9】本実施形態による画像閲覧装置におけるX線画像処理フローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、図1図9を参照して、X線画像撮影装置1および画像閲覧装置9の構成について説明する。
【0023】
(X線画像撮影装置の構成)
図1に示すように、X線画像撮影装置1は、撮影台3に横臥した被写体20およびファントム30にX線を照射し、被写体20を透過したX線を検出することにより被写体20およびファントム30を撮影するように構成されている。X線画像撮影装置1は、撮影台3と、X線源4と、検出器5と、撮影系位置変更機構6と、撮影装置制御部7と、医用X線画像処理装置8とを含む。なお、X線画像撮影装置1において、撮影台3の長さ方向をX方向とし、その一方をX1方向とし、他方をX2方向とする。また、水平方向においてX方向に垂直な方向をY方向とし、その一方をY1方向とし、他方をY2方向とする。また、X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向(上下方向)とし、その一方をZ1方向(上方向)とし、他方をZ2方向(下方向)とする。
【0024】
X線源4は、高電圧が印加されることにより発生させたX線を、検出器5に向けて照射するように構成されている。
【0025】
検出器5は、X線を検出するとともに、検出されたX線を電気信号に変換し、変換された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。検出器5は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器5は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とを有する。複数の変換素子は、所定の周期(画素ピッチ)で、画素の配列方向がY方向およびX方向に一致するように配置されている。複数の画素電極は、所定の周期(画素ピッチ)で、画素の配列方向がY方向およびX方向に一致するように配置されている。また、検出器5は、取得した画像信号を、医用X線画像処理装置8に出力するように構成されている。
【0026】
撮影系位置変更機構6は、撮影装置制御部7からの信号に基づいて、X線源4と検出器5との相対位置およびX線源4の角度を変更するように構成されている。撮影系位置変更機構6は、X線源4を回動可能に保持するX線源保持部6aを含む。また、撮影系位置変更機構6は、X線源保持部6aをX方向に移動させるX線源移動部6bを含む。X線源保持部6aは、一端部でX線源4を回動可能に保持し、他端部がX線源移動部6bに移動可能に保持されている。X線源保持部6aは、一端部において、X線源4をX方向の軸線周りに回動可能に構成されている。つまり、X線源保持部6aは、撮影装置制御部7からの信号により、X線源4の照射角度を変更可能に構成されている。また、X線源保持部6aは、Z方向に伸縮可能に構成されている。したがって、X線源保持部6aは、X線源4のZ方向の位置を変更可能に構成されている。また、X線源移動部6bは、撮影装置制御部7からの信号によりX線源保持部6aをX方向に移動させるように構成されている。
【0027】
撮影装置制御部7は、X線源4から検出器5に向けてX線を照射させることにより、X線撮影を行うように構成されている。また、撮影装置制御部7は、撮影系位置変更機構6を介してX線源4を移動させることにより、撮影系の被写体20に対する相対位置を変化させるように構成されている。撮影装置制御部7は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含む。なお、撮影系は、X線源4と、検出器5と、X線源4と検出器5との相対位置を変更する撮影系位置変更機構6とを含む。
【0028】
医用X線画像処理装置8は、検出器5から出力された画像信号に基づいて、X線画像R(図5参照)を生成するように構成されている。また、医用X線画像処理装置8は、複数のX線画像R中に写る特徴部分A、B、C(図5参照)の位置情報を取得するように構成されている。また、医用X線画像処理装置8は、複数のX線画像Rを1つの画像に再構成した再構成画像を生成するように構成されている。ここで、医用X線画像処理装置8は、たとえば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、または、画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサを含む。なお、特徴部分A、B、Cは、特許請求の範囲の「基準部」の一例である。
【0029】
具体的には、医用X線画像処理装置8は、図2に示すように、画像取得部8aと、X線画像生成部8bと、位置情報取得部8cと、再構成画像生成部8dと、制御部8eとを備える。画像取得部8a、X線画像生成部8b、位置情報取得部8c、再構成画像生成部8dおよび制御部8eは、各々、医用X線画像処理装置8のFPGA等のプロセッサにおける処理モジュール(処理プロセッサ)として構成されている。
【0030】
画像取得部8aは、検出器5において検出された被写体20およびファントム30の画像信号を取得し、取得した被写体20およびファントム30の画像信号をX線画像生成部8bに出力するように構成されている。すなわち、画像取得部8aは、入出力装置としての機能を有する。
【0031】
X線画像生成部8bは、画像取得部8aから出力された被写体20およびファントム30の画像信号の強度分布に基づいて、被写体20およびファントム30のX線原画像を生成するように構成されている。また、X線画像生成部8bは、X線原画像に対してlog変換などによりX線原画像の画素値を補正しX線画像Rを生成する。そして、X線画像生成部8bは、X線画像Rの画像化に伴う公知の画像処理(たとえば、オフセット補正、ゲイン補正、階調補正など)を行った上で、X線画像Rのウィンドウレベルおよびウィンドウ幅を調整するように構成されている。
【0032】
位置情報取得部8cは、被写体20の関心領域ROI(図1参照)とともに写る位置に配置されたファントム30に設けられた複数の特徴部分A、B、CのX線画像R中における位置情報を取得するように構成されている。位置情報取得部8cは、画像認識処理により複数の特徴部分A、B、Cの位置情報を取得するように構成されている。
【0033】
再構成画像生成部8dは、複数のX線画像Rを1つの画像に再構成した再構成画像を生成するように構成されている。具体的には、X線画像撮影装置1では、被写体20に対して複数の異なる角度からX線を照射することにより取得された複数のX線画像Rを再構成(たとえば、シフト加算法など)することにより再構成画像が取得される。
【0034】
制御部8eは、撮影装置制御部7がX線撮影を行うための信号を送信するように構成されている。
【0035】
ファントム30は、図3に示すように、複数の吸収係数が異なる特徴部分A、B、Cを有している。ここで、特徴部分B、Cは、特徴部分Aの内部に配置されている。特徴部分Aの吸収係数A1は、特徴部分B、Cよりも吸収係数が小さい値(たとえば、100)を有する樹脂などで構成されている。特徴部分Bの吸収係数B1は、特徴部分Aよりも吸収係数が大きく、かつ、特徴部分Cよりも吸収係数が小さい値(たとえば、800)を有する重金属(金、鉛、タングステン、鉄、銅など)で構成されている。特徴部分Cの吸収係数C1は、特徴部分Bよりも吸収係数が大きい値(たとえば、1000)を有する重金属(たとえば、金、鉛、タングステン、鉄、銅)などで構成されている。また、特徴部分Aは、特徴部分B、Cよりも大きいサイズ(たとえば、50[cm])を有している。特徴部分Bおよび特徴部分Cは、同じサイズ(たとえば、4[cm])を有している。
【0036】
このように、特徴部分A、B、Cは、X線を吸収する吸収係数A1、B1、C1が異なるX線吸収体で構成されている。これにより、ファントム30を撮影した際に、特徴部分A、B、Cにより吸収されるX線の線量が異なるので、X線画像Rにおいて特徴部分A、B、Cを検出することが可能となる。ファントム30において、上記した特徴部分A、B、Cの各々の吸収係数A1、B1、C1の値、および、サイズは、ファントム構造データ12aとして画像閲覧装置9に記憶されている。
【0037】
(画像閲覧装置)
また、図1および図2に示すように、X線画像撮影装置1は、X線撮影室とは別室に設けられ、X線画像Rおよび再構成画像を閲覧するための画像閲覧装置9を備えている。画像閲覧装置9は、X線画像Rを生成し再構成画像を構成する点で、上記した医用X線画像処理装置8と同様の機能を有している。画像閲覧装置9は、複数のX線画像R中に写る特徴部分A、B、Cの画素値情報を取得するように構成されている。また、画像閲覧装置9は、複数のX線画像Rを1つの画像に再構成した再構成画像を生成するように構成されている。画像閲覧装置9は、たとえば、CPU、GPU、または、画像処理用に構成されたFPGAなどのプロセッサを含む。画像閲覧装置9は、画像取得部9aと、位置情報取得部9bと、再構成画像生成部9cと、ファントム情報記憶部9dと、X線画像処理部9eと、表示部9fとを備える。画像取得部9a、位置情報取得部9bおよび再構成画像生成部9cは、各々、画像閲覧装置9のFPGA等のプロセッサにおける処理モジュール(処理プロセッサ)として構成されている。なお、画像閲覧装置9は、特許請求の範囲の「医用X線画像処理装置」の一例である。
【0038】
画像閲覧装置9は、医用X線画像処理装置8と通信可能に接続されている。これにより、画像閲覧装置9では、医用X線画像処理装置8において生成されたX線画像Rが取得される。
【0039】
そして、本実施形態の画像閲覧装置9は、X線画像R中の被写体20の画素値情報を、所望の画素値情報に画素値補正テーブルにより変換するように構成されている。なお、画像閲覧装置9において、画像取得部9a、位置情報取得部9bおよび再構成画像生成部9cは上記した医用X線画像処理装置8の構成と同様であるので、医用X線画像処理装置8とは異なる構成について、以下に詳細に説明する。
【0040】
具体的には、画像閲覧装置9は、ファントム情報記憶部9dと、X線画像処理部9eと、表示部9fとを含んでいる。
【0041】
〈ファントム情報記憶部〉
ファントム情報記憶部9dは、CPU11などのプロセッサと、HDD(Hard Disc Drive)およびメモリなどの記憶部12とを主として含んでいる。ファントム情報記憶部9dでは、記憶部12にファントム構造データ12aが記憶されている。すなわち、ファントム情報記憶部9dは、ファントム30の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれに対応する複数の吸収係数A1、B1、C1を記憶部12に記憶している。ここで、複数の吸収係数A1、B1、C1は、ユーザーが入力することにより、ファントム情報記憶部9dの記憶部12に記憶される。また、ファントム情報記憶部9dは、ファントム30の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれに対応する複数のサイズを記憶部12に記憶している。ここで、複数のサイズは、ユーザーが入力することにより、ファントム情報記憶部9dの記憶部12に記憶される。なお、吸収係数A1、B1、C1は、設定値としてあらかじめ記憶されていてもよい。また、複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれに対応する複数のサイズは、設定値としてあらかじめ記憶されていてもよい。
【0042】
〈X線画像処理部〉
X線画像処理部9eは、CPU13などのプロセッサと、HDD(Hard Disc Drive)およびメモリなどの記憶部14とを主として含んでいる。X線画像処理部9eの記憶部14には、目標画素値関数データ14aと、X線画像処理データ14bとが記憶されている。
【0043】
〈目標画素値関数データ〉
目標画素値関数データ14aは、図4(A)および図4(B)に示すように、ファントム30の複数の特徴部分A、B、Cに設定された複数の吸収係数A1、B1、C1と、複数の吸収係数A1、B1、C1のそれぞれに対応させて設定された複数の目標画素値Ta、Tb、Tcとの関係を示した関数(目標画素値関数)である。目標画素値関数は、特徴部分Aの吸収係数A1の値とユーザーが設定した特徴部分Aの目標画素値Taとにより示される座標Ax1を通る。目標画素値関数は、特徴部分Bの吸収係数B1の値とユーザーが設定した特徴部分Bの目標画素値Tbとにより示される座標Ax2を通る。目標画素値関数は、特徴部分Cの吸収係数C1の値とユーザーが設定した特徴部分Cの目標画素値Tcとにより示される座標Ax3を通る。このように、目標画素値関数は、座標Ax1、Ax2、Ax3を通る関数であり、図4に示す例では座標Ax1、Ax2、Ax3を通る一次関数となっている。
【0044】
〈X線画像処理データ〉
X線画像処理部9eは、X線画像処理データ14bにより、図5に示す特徴部分A、B、Cを含むファントム30と被写体(たとえば、右手)20とを含むX線画像Rの画素値を、目標画素値関数上の目標画素値に補正する処理を行うように構成されている。ここで、X線画像処理部9eは、医用X線画像処理装置8において生成されたX線画像Rを画像取得部8aを介して取得する。
【0045】
X線画像処理部9eは、X線画像処理データ14bにより、図6に示すように、X線画像R中の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの複数の吸収係数A1、B1、C1と、X線画像R中の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの複数の画素値X、Y、Zとを対応させるように構成されている。具体的には、X線画像処理部9eは、位置情報取得部8cにより、X線画像R中の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの位置を特定した上で、X線画像R中の特定された箇所の画素値を取得するように構成されている。これにより、X線画像処理部9eは、X線画像R中の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの複数の画素値X、Y、Zを取得する。ここで、複数の画素値X、Y、Zは、それぞれ、たとえば、90、120、130である。
【0046】
また、図6(B)に示すように、X線画像処理部9eは、X線画像処理データ14bにより、複数の吸収係数A1、B1、C1と、複数の吸収係数A1、B1、C1のそれぞれに対応する複数の画素値X、Y、Zとに基づいて推定される推定画素値情報を取得するように構成されている。具体的には、X線画像処理部9eは、X線画像処理データ14bにより公知の推定処理を行うことによって、複数の吸収係数A1、B1、C1以外の他の吸収係数に対応する他の画素値を推定する。そして、複数の吸収係数A1、B1、C1および他の吸収係数と、複数の吸収係数A1、B1、C1および他の吸収係数のそれぞれに対応する複数の画素値X、Y、Zおよび他の画素値とを対応付けたテーブルが、推定画素値情報(推定画素値テーブル)である。すなわち、推定画素値情報は、吸収係数と吸収係数に対応する画素値とを示したルックアップテーブルである。
【0047】
ここで、吸収係数を横軸とし、画素値を縦軸としたグラフ上に表示した推定画素値情報は、図6(C)に示す曲線となるような、吸収係数および画素値の値であると仮定する。なお、推定画素値情報は、図6(C)に示すような曲線を示す吸収係数および画素値の値であるとは限らない。
【0048】
X線画像処理部9eは、図7および図8に示すように、複数の特徴部分A、B、Cに対応させた複数の画素値X、Y、Zのそれぞれを複数の目標画素値Ta、Tb、Tcに補正するように構成されている。具体的には、X線画像処理部9eは、X線画像Rを医用X線画像処理装置8から取得するごとに、複数の吸収係数A1、B1、C1に対応させた複数の画素値X、Y、Zが、それぞれ、複数の目標画素値Ta、Tb、Tcに補正される画素値補正テーブルを取得するように構成されている。
【0049】
画素値補正テーブルは、図8(A)に示すように、推定画素値情報の複数の推定画素値と、推定画素値情報の複数の推定画素値に対応する目標画素値関数上の複数の目標画素値とを有している。たとえば、画素値補正テーブルは、特徴部分Aにおいて、推定画素値として90を有し、その推定画素値に対応する目標画素値として50を有している。たとえば、画素値補正テーブルは、特徴部分Bにおいて、推定画素値として120を有し、その推定画素値に対応する目標画素値として115を有している。たとえば、画素値補正テーブルは、特徴部分Cにおいて、推定画素値として130を有し、その推定画素値に対応する目標画素値として130を有している。
【0050】
また、X線画像処理部9eは、X線画像処理データ14bにより、推定画素値情報に含まれる複数の推定画素値と、目標画素値関数上の複数の目標画素値とを対応させるように構成されている。具体的には、X線画像処理部9eは、画素値補正テーブルにより、複数の吸収係数A1、B1、C1以外の他の画素値を、それぞれ、目標画素値に対応させるように構成されている。これにより、X線画像処理部9eは、画素値補正テーブルに基づいて、X線画像Rにおける被写体20に対応する推定画素値を目標画素値に補正することが可能となる。たとえば、画素値補正テーブルは、被写体20の部分Dにおいて、推定画素値として110を有し、その推定画素値に対応する目標画素値として80を有している。
【0051】
このように、画素値補正テーブルは、複数の画素値M、X、Y、Zおよび他の推定画素値と、複数の画素値N、Ta、Tb、TCおよび他の目標画素値とを対応付けたテーブルである。すなわち、画素値補正テーブルは、推定画素値と推定画素値に対応する目標画素値とを示したルックアップテーブルである。これにより、X線画像処理部9eでは、X線画像処理データ14bにより、推定画素値情報に含まれる推定画素値を目標画素値関数上の目標画素値に補正することが可能である。
【0052】
ここで、推定画素値を横軸とし、目標画素値を縦軸としたグラフ上に表示した画素値補正テーブルは、図8(B)に示す直線となるような、推定画素値および目標画素値の値であると仮定する。なお、画素値補正テーブルは、図8(B)に示すような直線を示す推定画素値および目標画素値の値であるとは限らない。
【0053】
また、X線画像処理部9eは、推定画素値が目標画素値に補正されたX線画像Rに対して、X線画像Rの画像化に伴う公知の画像処理(たとえば、階調補正など)を行った上で、X線画像Rのウィンドウレベルおよびウィンドウ幅を調整するように構成されている。このとき、X線画像処理部9eは、複数の吸収係数A1、B1、C1と、X線画像R中の画素値X、Y、Zとを対応させた対応情報に基づいて、画素値X、Y、Zを目標画素値Ta、Tb、Tcに補正した補正後のX線画像Rに対して行う画像処理の設定を変更するように構成されている。具体的には、X線画像処理部9eでは、補正したX線画像Rに対して、適切なコントラストに調整されるように階調補正の設定値などが対応情報に則して変更される。
【0054】
〈表示部〉
表示部9fは、たとえば液晶モニタなどの画像表示装置からなり、X線画像処理部9eの画像出力に基づき画面表示を行うように構成されている。具体的には、表示部9fには、X線画像Rおよび再構成画像が表示される。また、表示部9fには、図7に示すような状態で、目標画素値関数と推定画素値情報との両方が表示される。すなわち、表示部9fでは、グラフ上に、目標画素値関数が実線として表示されるとともに、推定画素値情報が点線として表示される。また、表示部9fでは、グラフ上に、吸収係数A1、B1、C1、D1および目標画素値Ta、Tb、Tcが文字データとして表示される。表示部9fでは、グラフ上に、推定画素値情報に含まれる画素値X、Y、Zが文字データとして表示される。表示部9fでは、推定画素値情報に含まれる補正前の画素値M、および、補正後の画素値Nが文字データとして表示される。
【0055】
なお、表示部9fでは、目標画素値関数および推定画素値情報などが、グラフ上に表示されているが、目標画素値関数および推定画素値情報を画面上に直線と曲線だけで表示する態様であってもよい。また、表示部9fでは、目標画素値関数を直線で表示するとともに推定画素値情報を曲線で表示しているが、目標画素値関数を直線で表示するとともに推定画素値情報をヒストグラムで表示してもよい。
【0056】
(再構成画像の生成)
画像閲覧装置9は、医用X線画像処理装置8とは異なり、画素値補正テーブルにより補正された複数のX線画像Rに基づいて、再構成画像を取得するように構成されている。ここで、画像閲覧装置9では、再構成画像生成部9cにより複数のX線画像Rを1つの画像に再構成した再構成画像を生成するために、複数のX線画像Rが必要となる。この場合、X線画像処理部9eは、複数のX線画像Rの各々の画素値が目標画素値に則した画素値になるように、複数のX線画像Rの各々に最適な画素値補正テーブルを適用するように構成されている。具体的には、X線画像処理部9eは、ファントム30および被写体20に対して複数の異なる角度からX線を照射することにより複数のX線画像Rの各々が取得されるごとに、複数のX線画像Rの各々に対応する画素値補正テーブルを取得するように構成されている。そして、X線画像処理部9eは、複数のX線画像Rの各々に対応する画素値補正テーブルに基づいて、複数のX線画像Rの各々を補正するように構成されている。
【0057】
すなわち、X線画像処理部9eでは、複数のX線画像Rごとに、複数の特徴部分A、B、Cの複数の吸収係数A1、B1、C1に、目標画素値Ta、Tb、Tcを対応させて目標画素値関数が取得される。X線画像処理部9eでは、複数のX線画像Rごとに、複数の特徴部分A、B、Cの複数の吸収係数A1、B1、C1に、X線画像R中の画素値X、Y、Zを対応させて推定画素値情報が取得される。X線画像処理部9eでは、複数のX線画像Rごとに、推定画素値情報に含まれる推定画素値を目標画素値関数上の目標画素値に補正する画素値補正テーブルが取得される。X線画像処理部9eでは、複数のX線画像Rごとに、推定画素値情報に含まれる全ての推定画素値を画素値補正テーブルにより補正することによって、一定の目標画素値(基準)に則したX線画像Rが取得される。
【0058】
これにより、一定の目標画素値に則した複数のX線画像Rを再構成することにより再構成画像を取得することが可能となるので、再構成画像中に複数のX線画像R同士における画素値の変化に起因するアーチファクトの発生を抑制することが可能である。
【0059】
(X線画像処理フローのフローチャート)
次に、図9を参照して、本実施形態のX線画像処理部9eによるX線画像処理フローのフローチャートについて説明する。なお、フローチャートでは、X線画像RをX線画像処理部9eが取得するまでの処理フローに関しても記載している。したがって、フローチャートの各処理は、医用X線画像処理装置8のX線画像生成部8bおよび画像閲覧装置9におけるX線画像処理部9eにおいて行われる。
【0060】
ステップS1~ステップS5は、医用X線画像処理装置8において行われる処理である。
【0061】
ステップS1において、X線画像生成部8bで、画像取得部8aを介して、X線検出によりファントム30と被写体20のX線原画像が取得される。ステップS2において、X線画像生成部8bでは、X線原画像に対してlog変換が行われる。ステップS3において、X線画像生成部8bでは、X線画像生成部8bにおける画像処理により、X線画像Rが取得される。X線画像生成部8bでは、画像処理として、たとえばゲイン補正、オフセット補正および階調補正などが行なわれる。ステップS4において、X線画像処理部9eでは、X線画像Rのウィンドウレベルとウィンドウ幅とが設定される。ステップS5において、X線画像生成部8bでは、X線画像生成部8bにより生成されたX線画像Rが画像閲覧装置9に出力される。
【0062】
ステップS6~ステップS18は、画像閲覧装置9において行われる処理である。
【0063】
ステップS6において、X線画像処理部9eでは、取得したX線画像Rからファントム30の複数の特徴部分A、B、Cの画素値が取得される。ステップS7において、X線画像処理部9eでは、ファントム情報記憶部9dからファントム30の複数の特徴部分A、B、Cの吸収係数A1、B1、C1が取得される。ステップS8において、X線画像処理部9eでは、ファントム30の吸収係数に対応する目標画素値情報を取得される。すなわち、X線画像処理部9eでは、ファントム30の複数の特徴部分A、B、Cの吸収係数A1、B1、C1のそれぞれに、所望の目標画素値情報が設定される。ステップS9において、X線画像処理部9eでは、吸収係数A1、B1、C1および吸収係数A1、B1、C1に対応する目標画素値Ta、Tb、Tcに基づいて目標画素値関数が取得される。
【0064】
ステップS10において、X線画像処理部9eでは、ファントム30の吸収係数A1、B1、C1とX線画像R中の画素値X、Y、Zとを対応させた対応情報が取得される。なお、対応情報は、ファントム30の特徴部分A、B、Cのそれぞれの吸収係数A1、B1、C1とX線画像R中のファントム30の特徴部分A、B、Cのそれぞれの画素値X、Y、Zとが対応したデータである。ステップS11において、X線画像処理部9eでは、吸収係数A1、B1、C1と吸収係数A1、B1、C1に対応するX線画像R中の画素値X、Y、ZとからX線画像R中全ての画素値を推定した推定画素値情報が取得される。つまり、推定画素値情報は、公知の推定処理を行うことにより、吸収係数A1、B1、C1に対応するX線画像R中の画素値X、Y、Zから推定される画素値である。ステップS12において、X線画像処理部9eでは、X線画像処理部9eにより、推定画素値情報に含まれる画素値を目標画素値関数上の画素値に補正する画素値補正テーブルが取得される。
【0065】
ステップS13において、X線画像処理部9eでは、推定画素値情報および目標画素値関数が表示部9fに表示される。これにより、ユーザーが、推定画素値情報と目標画素値関数とを比較することにより、画素値補正テーブルによるX線画像R中の画素値の補正の必要性を判断しやすくなる。ステップS14において、X線画像処理部9eでは、画素値補正テーブルにより被写体20の画素値が補正される。
【0066】
ステップS15において、X線画像処理部9eでは、上記した対応情報に基づいて、X線画像処理部9eにおける画像処理の設定が変更される。たとえば、X線画像処理部9eでは、補正したX線画像Rに対して、適切なコントラストに調整されるように階調補正の設定値などが対応情報に則して変更される。ステップS16において、X線画像処理部9eでは、X線画像処理部9eにおける画像処理により、X線画像Rを補正する。ステップS17において、X線画像処理部9eでは、X線画像Rのウィンドウレベルとウィンドウ幅とが設定されて、X線画像処理フローが終了する。
【0067】
(本実施形態の効果)
本発明の本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0068】
本実施形態では、上記のように、X線画像処理部9eが、ファントム情報記憶部9dに記憶されたX線画像R中の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの複数の吸収係数A1、B1、C1と、ファントム30とともに被写体20が撮影されたX線画像R中の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの複数の画素値X、Y、Zとを対応させるように構成されている。これにより、X線画像R内の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの吸収係数A1、B1、C1と複数の画素値X、Y、Zとが対応するので、X線の線量が変化したり、X線源4の位置が変化したりしても、たとえばX線画像R内の画素値の補正を行う際の、X線画像R内の基準が変更されないようにすることができる。この結果、複数の画像間での基準が異なることに起因して、たとえば複数画像を再構成する場合などに、精度の高い再構成画像を取得することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、X線画像処理部9eは、複数の吸収係数に対応させた複数の画素値を、それぞれ、複数の目標画素値に補正するように構成されている。これにより、ファントム30の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれに対して設定された複数の目標画素値Ta、Tb、Tc同士の互いの関係を利用して、X線画像R内の画素値を目標画素値に補正する際に、複数の吸収係数A1、B1、C1に対応させた複数の目標画素値Ta、Tb、Tcだけでなく、X線画像R内の画素値の目標画素値を設定することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、X線画像処理部9eは、ファントム30の複数の特徴部分A、B、Cに対応した複数の吸収係数A1、B1、C1と、複数の特徴部分A、B、Cに対応した複数の目標画素値Ta、Tb、Tcとの関係により目標画素値関数が設定されるように構成されている。X線画像処理部9eは、設定された目標画素値関数に基づいて、X線画像R中の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの複数の画素値X、Y、Zを目標画素値関数上の対応する目標画素値Ta、Tb、Tcに補正するように構成されている。これにより、複数の目標画素値Ta、Tb、Tcを複数の吸収係数A1、B1、C1に対応付けた目標画素値関数として扱うことができるので、複数の目標画素値Ta、Tb、Tcの情報を容易に取得することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、X線画像処理部9eは、ファントム30とともに被写体20が撮影されたX線画像Rを取得するごとに、複数の吸収係数A1、B1、C1に対応させた複数の画素値X、Y、Zを、それぞれ、目標画素値関数上の複数の目標画素値Ta、Tb、Tcに補正する画素値補正テーブルを取得するように構成されている。これにより、X線画像Rを取得するごとに対応するX線画像Rの画素値補正テーブルを取得することにより、同じ基準の画素値の補正が行なわれた複数のX線画像Rを取得することができるので、複数のX線画像Rを再構成する場合に、精度の高い再構成画像を容易に得ることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、X線画像処理部9eは、複数回のX線撮影によりX線画像Rを複数取得する場合において、複数のX線画像Rの各々が得られるごとに、画素値補正テーブルを取得するように構成されている。X線画像処理部9eは、複数のX線画像Rの各々に対応する画素値補正テーブルに基づいて、複数のX線画像Rの各々を補正するように構成されている。これにより、複数のX線画像Rの各々が得られるごとに取得される画素値補正テーブルにより複数のX線画像Rの各々が補正されたとしても、画素値補正テーブルが、ファントム30の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの複数の吸収係数A1、B1、C1に対応付けられた画素値により取得されているので、同じ基準の補正が行なわれた複数のX線画像Rを取得することができる。この結果、たとえば、複数のX線画像Rを再構成して再構成画像を取得する場合であっても、再構成画像にアーチファクト(虚像)が生じることを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、X線画像処理部9eは、X線画像R中におけるファントム30の複数の特徴部分A、B、Cのそれぞれの複数の吸収係数A1、B1、C1と、複数の吸収係数A1、B1、C1のそれぞれに対応する複数の画素値X、Y、Zとに基づいて推定されるX線画像Rの推定画素値情報とに基づいて、画素値補正テーブルを取得するように構成されている。このように構成すれば、推定画素値情報により、正確な画素値補正テーブルを取得することができるので、画素値補正テーブルによるX線画像R中の画素値を精度よく補正することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、画像閲覧装置9は、表示部9fを備えている。そして、X線画像処理部9eは、目標画素値関数と推定画素値情報との両方を表示部9fに表示させるように構成されている。これにより、目標画素値関数と推定画素値情報との違いを容易にユーザーが視覚的に認識することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、X線画像処理部9eは、対応情報に基づいて、複数の画素値X、Y、Zを複数の目標画素値Ta、Tb、Tcに補正したX線画像Rに対して行う画像処理の設定を変更するように構成されている。これにより、補正後のX線画像Rに対して行われる画像処理を適切に行うことができる。
【0076】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0077】
たとえば、上記本実施形態では、目標画素値関数は、座標Ax1、Ax2、Ax3を通る一次関数である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、目標画素値関数は、二次関数、三次関数などであってもよい。
【0078】
また、上記本実施形態では、被写体20は、右手である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被写体は、左手、脚部、胸部、腹部などであってもよい。
【0079】
また、上記本実施形態では、X線画像処理部9eは、複数の吸収係数A1、B1、C1と、X線画像R中の画素値X、Y、Zとを対応させた対応情報に基づいて、画素値X、Y、Zを目標画素値Ta、Tb、Tcに補正したX線画像Rに対して行う画像処理の設定を変更するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、医用X線画像処理装置における画素値補正テーブルにより補正する前のX線画像に対して行う画像処理の設定を変更してもよい。
【0080】
また、上記本実施形態では、画像閲覧装置9がX線画像処理部9eを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、医用X線画像処理装置がX線画像処理部を備えていてもよい。
【0081】
また、上記本実施形態では、医用X線画像処理装置8および画像閲覧装置9が、それぞれ、X線画像Rに対する画像処理を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、医用X線画像処理装置および画像閲覧装置の一方のみがX線画像の画像処理を行ってもよい。
【0082】
また、上記本実施形態では、説明の便宜上、X線画像処理部9eの制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線画像処理部9eの制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 X線画像撮影装置
8 医用X線画像処理装置(画像処理部)
9 画像閲覧装置
9d ファントム情報記憶部
9e X線画像処理部
9f 表示部
20 被写体
30 ファントム
A、B、C 特徴部分(複数の基準部)
A1、B1、C1 吸収係数
R X線画像
Ta、Tb、Tc 目標画素値
X、Y、Z 画素値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9