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特許7115547ねじ軸およびその製造方法、並びに、ステアリングホイールの電動位置調節装置およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ねじ軸およびその製造方法、並びに、ステアリングホイールの電動位置調節装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21H 3/04 20060101AFI20220802BHJP
   B21H 3/02 20060101ALI20220802BHJP
   B62D 1/185 20060101ALI20220802BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B21H3/04 B
B21H3/02
B62D1/185
F16H25/24 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020536412
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2019028104
(87)【国際公開番号】W WO2020031637
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2018151671
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018235095
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 猛志
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-225573(JP,A)
【文献】特開2010-208440(JP,A)
【文献】特開2015-227166(JP,A)
【文献】特開2003-033841(JP,A)
【文献】特開2008-281142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21H 3/04
B21H 3/02
B62D 1/185
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径軸部と、小径軸部とを備え、
前記大径軸部は、外周面に軸方向全長にわたり雄側ねじ部を有し、
前記小径軸部は、前記大径軸部の軸方向に隣接して配置され、該大径軸部の外径よりも小さい外径を有し、かつ、外周面に、前記雄側ねじ部の溝底線である螺旋曲線の延長線と同位相となる螺旋状の転造痕を有し、
前記雄側ねじ部は、所定のねじ山高さを有する完全ねじ部と、該雄側ねじ部の軸方向両端縁部にあり、前記所定のねじ山高さに満たない不完全ねじ部とを備え、該雄側ねじ部の全体が正常なねじ部として機能し、前記転造痕は、ねじ部として機能しない非ねじ部である、
ねじ軸。
【請求項2】
前記小径軸部の外径は、前記雄側ねじ部の溝底径の0.9倍以上1.1倍以下である、請求項に記載のねじ軸。
【請求項3】
前記小径軸部に対し、軸方向に関して前記大径軸部と反対側に隣接して配置され、該小径軸部の外径よりも大きい外径を有する隣接軸部を備える、請求項1または2に記載のねじ軸。
【請求項4】
前記小径軸部は、前記大径軸部の軸方向一方側に配置される第1の小径軸部と、前記大径軸部の軸方向他方側に配置される第2の小径軸部とにより構成される、請求項1~のいずれかに記載のねじ軸。
【請求項5】
第1の小径軸部の外径および第2の小径軸部の外径はいずれも、前記雄側ねじ部の溝底径の0.9倍以上1.1倍以下である、請求項に記載のねじ軸。
【請求項6】
ステアリングホイールの電動位置調節装置に組み込まれることができる、請求項またはに記載のねじ軸。
【請求項7】
転造用大径軸部と、前記転造用大径軸部の軸方向に隣接して配置され、前記転造用大径軸部の外径よりも小さい外径を有する転造用小径軸部と、を備えたワークに対し、前記転造用大径軸部の外周面に軸方向全長にわたり雄側ねじ部を形成するために、複数個の転造ダイスを用いて前記ワークに歩みが生じる転造加工を施す工程を備え、
前記ワークに対し前記転造加工を施す工程において、前記転造ダイスにより、前記転造用大径軸部の外周面に雄側ねじ部を形成するための転造加工を施すのと同時に、前記転造用小径軸部の外周面に螺旋状の転造痕を形成し、
前記雄側ねじ部を、所定のねじ山高さを有する完全ねじ部と、該雄側ねじ部の軸方向両端縁部にあり、前記所定のねじ山高さに満たない不完全ねじ部とにより構成し、該雄側ねじ部の全体を正常なねじ部として機能させることを可能にし、かつ、前記転造痕を、ねじ部として機能しない非ねじ部とする、
ねじ軸の製造方法。
【請求項8】
前記転造用小径軸部の外径を、前記転造用大径軸部の外周面に形成すべき雄側ねじ部の溝底径の0.9倍以上1.1倍以下とする、請求項に記載のねじ軸の製造方法。
【請求項9】
前記ワークとして、前記転造用小径軸部に対し、軸方向に関して前記転造用大径軸部と反対側に隣接して配置され、該転造用小径軸部の外径よりも大きい外径を有する隣接軸部を備えたワークを用いる、請求項7または8に記載のねじ軸の製造方法。
【請求項10】
前記ワークとして、前記転造用小径軸部が、前記転造用大径軸部の軸方向一方側に配置される第1の転造用小径軸部と、前記転造用大径軸部の軸方向他方側に配置される第2の転造用小径軸部とにより構成されたワークを用いる、請求項のいずれかに記載のねじ軸の製造方法。
【請求項11】
第1の小径軸部の外径および第2の小径軸部の外径をいずれも、前記雄側ねじ部の溝底径の0.9倍以上1.1倍以下とする、請求項10に記載のねじ軸の製造方法。
【請求項12】
前記ねじ軸として、ステアリングホイールの電動位置調節装置に組み込まれるねじ軸を適用する、請求項10または11に記載のねじ軸の製造方法。
【請求項13】
大径軸部と、小径軸部とを備え、前記大径軸部は、外周面に軸方向全長にわたり雄側ねじ部を有し、前記小径軸部は、前記大径軸部の軸方向に隣接して配置され、該大径軸部の外径よりも小さい外径を有し、かつ、外周面に、前記雄側ねじ部の溝底線である螺旋曲線の延長線と同位相となる螺旋状の転造痕を有する、ねじ軸と、
内周面に、前記雄側ねじ部と螺合する雌側ねじ部を有するナットと、
を備え、
前記雌側ねじ部の軸方向の一部が、前記雄側ねじ部から外れた軸方向位置に配置可能であり、
前記転造痕は、前記ナットの雌側ねじ部と螺合しない、
送りねじ機構。
【請求項14】
電動モータと、送りねじ機構と、操舵部品とを備え、
前記送りねじ機構は、外周面に雄側ねじ部を有するねじ軸と、前記雄側ねじ部に対して係合する雌側ねじ部を内周面に有するナットとを備え、前記電動モータから伝わる回転力により前記ねじ軸と前記ナットとが相対回転することに基づいて、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向に相対変位可能に構成されており、
前記操舵部品は、使用状態でステアリングホイールが固定され、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向に相対変位することに伴って、前記ステアリングホイールの位置調節方向に変位可能であり、
前記ねじ軸が、請求項に記載されているねじ軸により構成されている、
ステアリングホイールの電動位置調節装置。
【請求項15】
前記ステアリングホイールを位置調節範囲の端部まで変位させた状態で、前記雌側ねじ部の軸方向一部が、前記雄側ねじ部から外れた軸方向位置に配置可能である、請求項14に記載のステアリングホイールの電動位置調節装置。
【請求項16】
電動モータと、送りねじ機構と、操舵部品とを備え、前記送りねじ機構が、外周面に雄側ねじ部を有するねじ軸と、前記雄側ねじ部に対して係合する雌側ねじ部を内周面に有するナットとを備え、前記電動モータから伝わる回転力により前記ねじ軸と前記ナットとが相対回転することに基づいて、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向に相対変位可能に構成されている、ステアリングホイールの電動位置調節装置の製造方法であって、
転造用大径軸部と、該転造用大径軸部の軸方向一方側に配置され、前記転造用大径軸部の外径よりも小さい外径を有する第1の転造用小径軸部と、前記転造用大径軸部の軸方向他方側に配置され、前記転造用大径軸部の外径よりも小さい外径を有する第2の転造用小径軸部と、を備えたワークに対し、前記転造用大径軸部の外周面に軸方向全長にわたり雄側ねじ部を形成するために、複数個の転造ダイスを用いて前記ワークに歩みが生じる転造加工を施す工程により、ねじ軸を製造する工程を備え、
前記ねじ軸を製造する工程において、請求項12に記載のねじ軸の製造方法を採用する、
ステアリングホイールの電動位置調節装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械装置に組み込まれる送りねじ機構を構成するねじ軸とその製造方法、並びに、電動モータおよび送りねじ機構を備えるステアリングホイールの電動位置調節装置およびその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源としてステアリングホイールの前後位置や高さ位置の調節を可能とする、ステアリングホイールの電動位置調節装置が、従来から各種知られている(たとえば、特開2005-199760号公報、特開2006-321484号公報、特開2015-227166号公報参照)。
【0003】
このようなステアリングホイールの電動位置調節装置を含む各種機械装置に組み込まれ、駆動源の回転運動を直線運動に変換する機構として、送りねじ機構が広く普及している。送りねじ機構は、外周面に雄側ねじ部を有するねじ軸と、内周面に雌側ねじ部を有するナットとを備える。
【0004】
送りねじ機構には、滑りねじ式の送りねじ機構およびボールねじ式の送りねじ機構がある。滑りねじ式の送りねじ機構では、ねじ軸の雄側ねじ部とナットの雌側ねじ部とが螺合する。ボールねじ式の送りねじ機構では、ねじ軸の雄側ねじ部は雄ねじ溝を構成し、ナットの雌側ねじ部が雌ねじ溝を構成し、雄ねじ溝と雌ねじ溝との間に複数個のボールが配置される。
【0005】
いずれの送りねじ機構においても、ねじ軸の雄側ねじ部は、転造加工によって形成することができる。雄側ねじ部の転造加工では、複数個の転造ダイスの間で、ねじ軸の中間素材であるワークを転がしながら、これらの転造ダイスによってワークの外周面を塑性変形させることにより、雄側ねじ部が形成される。
【0006】
雄側ねじ部の転造加工には、転造ダイスに対してワークが軸方向に移動する現象である、歩みが発生する方式のものがある(たとえば、特開2003-33841号公報、特開2008-281142号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-199760号公報
【文献】特開2006-321484号公報
【文献】特開2015-227166号公報
【文献】特開2003-33841号公報
【文献】特開2008-281142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2003-33841号公報、特開2008-281142号公報などに記載された、歩みが発生する方式の雄側ねじ部の転造加工においては、雄側ねじ部の加工精度を良好にする観点から、改善の余地がある。以下、この点について、図10を参照しつつ説明する。
【0009】
図10は、このような方式の転造加工によって、ワーク1の大径部の外周面に雄側ねじ部3を形成する工程の一部を示している。なお、この際に使用する転造ダイス2の個数は2個以上(複数個)であるが、図10では、そのうちの1個のみを示している。具体的には、図10(a)から図10(b)に示すように、複数個の転造ダイス2の間でワーク1を転がしつつ、ワーク1に軸方向の移動である歩みを生じさせながら、複数個の転造ダイス2によってワーク1の大径部の外周面を塑性変形させることにより、雄側ねじ部3を形成する。図10(b)は、ワーク1の大径部の軸方向一方側(図10の右方側)の端縁部にまで雄側ねじ部3を形成するために、転造ダイス2の軸方向一方側の端部が、ワーク1の大径部の外周面から軸方向一方側に外れる位置まで、ワーク1を歩ませた状態を示す。
【0010】
図10(a)から図10(b)に示すようにワーク1と転造ダイス2との位置関係が変化すると、図10(a)の状態において転造ダイス2の軸方向一方側の端部とワーク1の大径部との間に作用していた転造荷重が、図10(b)の状態において喪失するため、転造ダイス2とワーク1との間に作用する転造荷重の分布に、大きな変化が生じる。この変化に応じた分だけ、転造ダイス2やワーク1を支持している転造盤の弾性変形量に変化が生じることに起因して、図10(c)に示すように、転造ダイス2とワーク1との間に傾きなどの相対変位が生じる傾向となる。この結果、ワーク1の大径部に形成される雄側ねじ部3の軸方向一方側の端部の加工精度が低くなる。このような不都合は、雄側ねじ部3の軸方向他方側の端部(図10には図示せず)についても、同様にして生じる。
【0011】
このように加工精度が低くなると、雄側ねじ部3の軸方向両端部を正常な雄側ねじ部として機能させることが難しくなり、その分、送りねじ機構の作動ストロークが短くなるという問題が生じる。
【0012】
本発明の目的は、雄側ねじ部の軸方向両端部の加工精度が良好なねじ軸と、並びに、電動モータおよび送りねじ機構を備え、該送りねじ機構の作動ストロークが十分に確保されているステアリングホイールの電動位置調節装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のねじ軸は、大径軸部と、小径軸部とを備える。
前記大径軸部は、外周面に軸方向全長にわたり雄側ねじ部を有する。
前記小径軸部は、前記大径軸部の軸方向に隣接して配置され、該大径軸部の外径よりも小さい外径を有し、かつ、外周面に、前記雄側ねじ部の溝底線である螺旋曲線の延長線と同位相となる螺旋状の転造痕を有する。
【0014】
本発明のねじ軸において、前記小径軸部の外径は、前記雄側ねじ部の溝底径の0.9倍以上1.1倍以下であることが好ましい。
【0015】
本発明のねじ軸は、前記小径軸部に対し、軸方向に関して前記大径軸部と反対側に隣接して配置され、該小径軸部の外径よりも大きい外径を有する隣接軸部を備えることができる。
【0016】
本発明のねじ軸において、前記小径軸部は、前記大径軸部の軸方向一方側に配置される第1の小径軸部と、前記大径軸部の軸方向他方側に配置される第2の小径軸部とにより構成されることができる。この場合、具体的には、第1の小径軸部は、前記大径軸部の軸方向一方側に隣接して配置され、前記大径軸部の外径よりも小さい外径を有し、かつ、外周面に、前記雄側ねじ部の溝底線である螺旋曲線の延長線と同位相となる螺旋状の第1の転造痕を有し、第2の小径軸部は、前記大径軸部の軸方向他方側に隣接して配置され、前記大径軸部の外径よりも小さい外径を有し、かつ、外周面に、前記螺旋曲線の延長線と同位相となる螺旋状の第2の転造痕を有する。
【0017】
本発明のねじ軸において、第1の小径軸部の外径および第2の小径軸部の外径はいずれも、前記雄側ねじ部の溝底径の0.9倍以上1.1倍以下であることが好ましい。
【0018】
本発明のねじ軸は、ステアリングホイールの電動位置調節装置に組み込まれることができる。
【0019】
本発明のねじ軸の製造方法は、転造用大径軸部と、前記転造用大径軸部の軸方向に隣接して配置され、前記転造用大径軸部の外径よりも小さい外径を有する転造用小径軸部と、を備えたワークに対し、前記転造用大径軸部の外周面に軸方向全長にわたり雄側ねじ部を形成するために、複数個の転造ダイスを用いて前記ワークに歩みが生じる転造加工を施す工程を備える。
【0020】
特に、本発明のねじ軸の製造方法では、前記ワークに対し前記転造加工を施す工程において、前記転造ダイスにより、前記転造用大径軸部の外周面に雄側ねじ部を形成するための転造加工を施すのと同時に、前記転造用小径軸部の外周面に螺旋状の転造痕を形成する。
【0021】
本発明のねじ軸の製造方法においては、前記転造用小径軸部の外径を、前記転造用大径軸部の外周面に形成すべき雄側ねじ部の溝底径の0.9倍以上1.1倍以下とすることが好ましい。
【0022】
本発明のねじ軸の製造方法において、前記ワークとして、前記転造用小径軸部に対し、軸方向に関して前記転造用大径軸部と反対側に隣接して配置され、該転造用小径軸部の外径よりも大きい外径を有する隣接軸部を備えたワークを用いることができる。
【0023】
本発明のねじ軸の製造方法において、前記ワークとして、前記転造用小径軸部が、前記転造用大径軸部の軸方向一方側に配置される第1の転造用小径軸部と、前記転造用大径軸部の軸方向他方側に配置される第2の転造用小径軸部とにより構成されたワークを用いることができる。この場合、前記ワークに対し前記転造加工を施す工程において、前記転造ダイスにより、前記転造用大径軸部の外周面に雄側ねじ部を形成するための転造加工を施すのと同時に、第1の転造用小径軸部の外周面に螺旋状の第1の転造痕を形成し、第2の転造用小径軸部の外周面に螺旋状の第2の転造痕を形成する。第1の小径軸部の外径および第2の小径軸部の外径をいずれも、前記雄側ねじ部の溝底径の0.9倍以上1.1倍以下とすることが好ましい。
【0024】
本発明のねじ軸の製造方法においては、製造対象となる前記ねじ軸として、ステアリングホイールの電動位置調節装置に組み込まれるねじ軸を適用することができる。
【0025】
本発明のステアリングホイールの電動位置調節装置は、電動モータと、送りねじ機構と、操舵部品とを備える。
【0026】
前記送りねじ機構は、外周面に雄側ねじ部を有するねじ軸と、前記雄側ねじ部に対して係合する雌側ねじ部を内周面に有するナットとを備え、前記電動モータから伝わる回転力により前記ねじ軸と前記ナットとが相対回転することに基づいて、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向に相対変位可能に構成されている。
【0027】
前記送りねじ機構としては、滑りねじ式の送りねじ機構、あるいは、ボールねじ式の送りねじ機構のいずれも採用することができる。滑りねじ式の送りねじ機構では、前記雄側ねじ部と前記雌側ねじ部は、直接係合すなわち螺合する。ボールねじ式の送りねじ機構では、前記雄側ねじ部と前記雌側ねじ部は、複数個のボールを介して係合する。
【0028】
前記操舵部品は、使用状態でステアリングホイールが固定され、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向に相対変位することに伴って、前記ステアリングホイールの位置調節方向に変位可能となっている。
【0029】
本発明のステアリングホイールの電動位置調節装置においては、前記ねじ軸が、本発明のねじ軸により構成されていることを特徴とする。
【0030】
本発明のステアリングホイールの電動位置調節装置では、前記ステアリングホイールを位置調節範囲の端部まで変位させた状態で、前記雌側ねじ部の軸方向一部が、前記雄側ねじ部から外れた軸方向位置に配置可能である。
【0031】
本発明のステアリングホイールの電動位置調節装置の製造方法は、電動モータと、送りねじ機構と、操舵部品とを備え、前記送りねじ機構が、外周面に雄側ねじ部を有するねじ軸と、前記雄側ねじ部に対して係合する雌側ねじ部を内周面に有するナットとを備え、前記電動モータから伝わる回転力により前記ねじ軸と前記ナットとが相対回転することに基づいて、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向に相対変位可能に構成されている、ステアリングホイールの電動位置調節装置の製造方法であって、
転造用大径軸部と、該転造用大径軸部の軸方向一方側に配置され、前記転造用大径軸部の外径よりも小さい外径を有する第1の転造用小径軸部と、前記転造用大径軸部の軸方向他方側に配置され、前記転造用大径軸部の外径よりも小さい外径を有する第2の転造用小径軸部と、を備えたワークに対し、前記転造用大径軸部の外周面に軸方向全長にわたり雄側ねじ部を形成するために、複数個の転造ダイスを用いて前記ワークに歩みが生じる転造加工を施す工程により、ねじ軸を製造する工程を備える。
【0032】
特に、本発明のステアリングホイールの電動位置調節装置の製造方法は、該ねじ軸を製造する工程において、本発明のねじ軸の製造方法を採用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、雄側ねじ部の軸方向両端部の加工精度が良好なねじ軸と、並びに、電動モータおよび送りねじ機構を備え、該送りねじ機構の作動ストロークが十分に確保されているステアリングホイールの電動位置調節装置とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の実施の形態の1例に係るステアリングホイールの電動位置調節装置を示す部分断面図である。
図2図2(a)は、ステアリングホイールが前後位置調節範囲の後端部に位置する状態を示す図1と同様の図であり、図2(b)は、ステアリングホイールが前後位置調節範囲の前端部に位置する状態を示す図1と同様の図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の1例に係るねじ軸の側面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の1例に係るねじ軸の中間素材であるワークの側面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態の1例に関して、転造機にワークをセットした状態を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の1例に関して、互いに正転方向に回転する1対の転造ダイスの距離が狭まっていき、該転造ダイスがワークの転造用大径軸部に押し付けられて転造加工が開始された状態を示す図である。
図7図7(a)は、本発明の実施の形態の1例に関して、転造加工の途中段階で、1対の転造ダイスが正転方向に回転することに伴って、ワークが軸方向一方側の端まで歩んだ状態を示す図であり、図7(b)は、転造加工の途中段階で、1対の転造ダイスが逆転方向に回転することに伴って、ワークが軸方向他方側の端まで歩んだ状態を示す図である。
図8図8(a)は、本発明の実施の形態の1例に関して、転造加工の最終段階で、1対の転造ダイスが正転方向に回転することに伴って、ワークが軸方向一方側の端まで歩むと共に、ワークの軸方向他方側の転造用小径軸部の外周面に転造痕が形成される状態を示す図であり、図8(b)は、転造加工の最終段階で、1対の転造ダイスが逆転方向に回転することに伴って、ワークが軸方向他方側の端まで歩むと共に、ワークの軸方向一方側の転造用小径軸部の外周面に転造痕が形成される状態を示す図である。
図9図9は、図8(a)のA部拡大図である。
図10図10(a)~図10(c)は、従来のねじ転造加工によって生じる不都合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[実施の形態の1例]
本発明の実施の形態の1例について、図1図9を用いて説明する。
【0036】
(ステアリングホイールの電動位置調節装置およびねじ軸)
図1および図2は、本例のねじ軸21(図3)を用いたステアリングホイールの電動位置調節装置を示している。なお、ステアリングホイールの電動位置調節装置に関して、前後方向は、該装置が組み付けられる車両の前後方向を意味し、前側は、図1図3の左側であり、後側は、図1図3の右側である。また、本例のステアリングホイールの電動位置調節装置は、図示しない電動モータを駆動源として、ステアリングホイール12の前後位置調節を可能としている。図1は、ステアリングホイール12が前後位置調節範囲の中間部に位置する状態を示しており、図2(a)は、ステアリングホイール12が前後位置調節範囲の後端部に位置する状態を示しており、図2(b)は、ステアリングホイール12が前後位置調節範囲の前端部に位置する状態を示している。
【0037】
本発明のステアリングホイールの電動位置調節装置は、ステアリングコラム4と、ステアリングシャフト5と、電動アクチュエータ6とにより構成されることができる。本発明のステアリングホイールの電動位置調節装置は、少なくとも、電動アクチュエータ6を構成する、電動モータ(図示せず)および送りねじ機構14と、ステアリングシャフト5を構成し、操舵部品に相当するアウタチューブ10とを備える。
【0038】
ステアリングコラム4は、テレスコープ状に互いに組み合わされた、前側のアウタコラム7と後側のインナコラム8とを備える。アウタコラム7は、車体に対し軸方向の変位を阻止されている。インナコラム8は、その前側部がアウタコラム7の後側部の内径側に摺動可能に挿入されている。
【0039】
ステアリングシャフト5は、前側のインナシャフト9と後側のアウタチューブ10とを備える。インナシャフト9とアウタチューブ10は、スプライン係合などにより、トルクの伝達を可能に、かつ、伸縮可能に組み合わされている。インナシャフト9は、アウタコラム7の内径側に図示しない軸受を介して回転自在に支持されている。アウタチューブ10は、インナコラム8の内径側に軸受11を介して回転自在に支持されている。このような構成により、ステアリングシャフト5がステアリングコラム4の内径側に回転自在に支持されている。これと共に、インナコラム8およびアウタチューブ10が、アウタコラム7およびインナシャフト9に対して軸方向に相対変位可能となっている。ステアリングホイール12は、操舵部品であるアウタチューブ10の後側端部に支持固定される。
【0040】
電動アクチュエータ6は、ハウジング13と、送りねじ機構14と、図示しない電動モータとを備える。ハウジング13は、アウタコラム7の下面に支持固定されている。
【0041】
送りねじ機構14は、ナット15とロッド16とを備える。送りねじ機構14の中心軸は、ステアリングシャフト5およびステアリングコラム4の中心軸と平行に配置されている。
【0042】
ナット15は、内周面に雌側ねじ部17を有する。ナット15は、ハウジング13内に、軸方向の変位を不能に、かつ、回転可能に支持されており、ウォーム減速機18を介して電動モータにより回転駆動可能となっている。
【0043】
ロッド16は、前側に配置されたねじ軸21と、後側に配置された延長軸22とを組み合わせることにより構成されている。ロッド16を構成する延長軸22の後側端部は、腕部20を介してインナコラム8の後側部に接続されている。
【0044】
ねじ軸21は、大径軸部23と、小径軸部に相当する第1の小径軸部24および第2の小径軸部25と、隣接軸部に相当する基端側軸部26と、を備える。
【0045】
大径軸部23は、外周面に軸方向全長にわたり、雌側ねじ部17と螺合する雄側ねじ部19を有する。雄側ねじ部19は、転造加工によって形成されている。雄側ねじ部19のうち軸方向両端縁部を除いた軸方向中間部は、所定のねじ山高さを有する完全ねじ部により構成されている。雄側ねじ部19の軸方向両端縁部のそれぞれは、所定のねじ山高さに満たない不完全ねじ部により構成されている。本例では、完全ねじ部のみならず不完全ねじ部も含めて、雄側ねじ部19の全体が、正常なねじ部として機能するように精度良く仕上げられている。すなわち、雄側ねじ部19のフランク面は、完全ねじ部である軸方向中間部だけでなく、不完全ねじ部である軸方向両端縁部においても、精密に仕上げられている。このため、本例では、雄側ねじ部19全体の軸方向長さが、有効ねじ長さに相当する。なお、フランク面とは、ねじ山の側面、すなわち、歯面のことである。本例では、雄側ねじ部19のリード角(進み角)θは、4°未満である。ただし、本発明を実施する場合、雄側ねじ部19のリード角θを、4°以上とすることもできる。
【0046】
第1の小径軸部24は、大径軸部23の前側である軸方向一方側に隣接して配置されている。第1の小径軸部24は、大径軸部23の外径よりも小さい外径を有する円柱状の部位であり、外周面に螺旋状の第1の転造痕27を有する。第1の転造痕27は、転造加工工程において、雄側ねじ部19を形成するための転造ダイス35によって形成される。第1の転造痕27は、雄側ねじ部19の溝底線である螺旋曲線の延長線と同位相である。
【0047】
第2の小径軸部25は、大径軸部23の後側である軸方向他方側に隣接して配置されている。第2の小径軸部25は、大径軸部23の外径よりも小さい外径を有する円柱状の部位であり、外周面に螺旋状の第2の転造痕28を有する。第2の転造痕28は、転造加工工程において、雄側ねじ部19を形成するための転造ダイス35によって形成されるものである。第2の転造痕28は、雄側ねじ部19の溝底線である螺旋曲線の延長線と同位相である。
【0048】
本例では、第1の小径軸部24の外径d1と、第2の小径軸部25の外径d2とは、互いに等しい(d1=d2)。ただし、本発明を実施する場合、第1の小径軸部24の外径d1と、第2の小径軸部25の外径d2とを、互いに異ならせることもできる。
【0049】
本例では、第1の小径軸部24の外径d1、および、第2の小径軸部25の外径d2のそれぞれは、雄側ねじ部19の溝底径Dの0.9倍以上1.1倍以下の範囲(溝底径Dとの差が±10%の範囲)に設定されている(1.1D≧d1≧0.9D、1.1D≧d2≧0.9D)。ただし、本発明を実施する場合には、外径d1、d2の範囲を、本例の範囲とは異なる範囲に設定することもできる。
【0050】
本例では、第1の小径軸部24の外径d1、および、第2の小径軸部25の外径d2のそれぞれは、ナット15の雌側ねじ部17の内径(ねじ山の内接円径)よりも小さい。したがって、第1の転造痕27および第2の転造痕28のそれぞれは、ナット15の雌側ねじ部17とは螺合しない。すなわち、第1の転造痕27および第2の転造痕28のそれぞれは、ナット15の雌側ねじ部17と螺合する雄ねじ部として機能することがない、非ねじ部に相当する。
【0051】
基端側軸部26は、第2の小径軸部25に対し、軸方向に関して大径軸部23と反対側、すなわち、第2の小径軸部25の後側である軸方向他方側に、隣接して配置されている。基端側軸部26は、全体的に第2の小径軸部25の外径よりも大きい外径を有する段付円柱状の部位である。基端側軸部26は、軸方向中間部に、径方向外方に突出するフランジ部29を有する。また、基端側軸部26のうち、フランジ部29よりも後側に位置する部分は、円柱状の挿入部30により構成されている。
【0052】
延長軸22は、円管形状を有する中空軸である。延長軸22の前側端部には、ねじ軸21の挿入部30が内嵌固定されている。ねじ軸21のフランジ部29の後側端面が、延長軸22の前側端面に当接することにより、延長軸22に対してねじ軸21が軸方向に位置決めされている。
【0053】
ステアリングホイール12の前後位置を調節する際には、電動モータにより、ウォーム減速機18を介してナット15を回転駆動することで、ロッド16をナット15に対して軸方向に変位させる。ロッド16の軸方向変位に伴い、このロッド16に腕部20を介して接続されたインナコラム8、および、インナコラム8の内径側に支持されたアウタチューブ10が、ロッド16と同じ方向(ステアリングホイール12の位置調節方向)に変位し、ステアリングホイール12の前後位置が調節される。本例では、雄側ねじ部19のリード角θが4°未満であるため、ロッド16からナット15に逆入力として軸力が作用した場合でも、ナット15が回転しにくくなっている。
【0054】
本例では、送りねじ機構14を構成するねじ軸21の雄側ねじ部19の全体が、正常なねじ部として機能するように精度良く仕上げられている。このため、ステアリングホイール12の前後位置の調節を行う際に、雄側ねじ部19の軸方向端縁部が雌側ねじ部17と螺合する位置まで、ロッド16をナット15に対して軸方向に変位させることができる。さらには、雌側ねじ部17の軸方向一部が雄側ねじ部19から外れた軸方向位置に達するまで、ロッド16をナット15に対して軸方向に変位させることもできる。
【0055】
本例では、図2(a)に示すように、雌側ねじ部17の軸方向前側部が、第1の小径軸部24の周囲に達するまで(少なくとも第1の転造痕27の全体を覆う位置まで)、ステアリングホイール12を後側に向けて移動させることが可能である。また、図2(b)に示すように、雌側ねじ部17の軸方向後側部が、第2の小径軸部25の周囲に達するまで(少なくとも第2の転造痕28の全体を覆う位置まで)、ステアリングホイール12を前側に向けて移動させることが可能である。
【0056】
本例では、雄側ねじ部19が所定の長さに決められている場合には、雄側ねじ部の軸方向両端部を正常なねじ部として機能させることができない従来品に比べて、送りねじ機構14の作動ストロークを長くすること、すなわち、ステアリングホイール12の前後位置の調節範囲を広くすることができる。これに対して、送りねじ機構14の作動ストロークが所定の長さに決められている場合には、雄側ねじ部の軸方向両端部を正常なねじ部として機能させることができない従来品に比べて、送りねじ機構14の軸方向寸法を小さくすることができる。特に、本例では、雌側ねじ部17の軸方向一部が雄側ねじ部19から外れた軸方向位置に達するまで、ロッド16をナット15に対して軸方向に変位させることが可能となっている。その分、ステアリングホイール12の前後位置の調節範囲を広くできる効果や、送りねじ機構14の軸方向寸法を小さくできる効果を、より高めることができる。
【0057】
本発明を実施する場合、ステアリングホイールを位置調節範囲の端部まで変位させた状態で、雌側ねじ部の軸方向一部が、雄側ねじ部から外れた軸方向位置に配置される構成を採用する場合には、該雌側ねじ部の軸方向一部の軸方向長さLaは、最大で、当該状態での雌側ねじ部と雄側ねじ部との螺合部の軸方向長さLbの70%程度(La≒0.7Lb)とすることができる。
【0058】
本例では、ナット15の雌側ねじ部17の軸方向一部を、第1の転造痕27や第2の転造痕28の周囲まで移動させることが可能であるため、第1の転造痕27や第2の転造痕28を、送りねじ機構14の潤滑用のグリース溜りとして機能させることができる。
【0059】
本例では、図2(b)に示すように、ステアリングホイール12を位置調節範囲の前端部まで移動させた場合に、ハウジング13の後端部に固定され、かつ、ねじ軸21の周囲に配置された円環状の当接部材37の後側面が、基端側軸部26のフランジ部29の前側面に当接するように構成されている。このため、ステアリングホイール12が、それ以上、前側に移動することが防止される。すなわち、フランジ部29が、ステアリングホイール12の位置調節範囲の前端部を規定するストッパとして機能する。
【0060】
(ステアリングホイールの位置調節装置の製造方法およびねじ軸の製造方法)
本発明のステアリングホイールの位置調節装置の製造方法は、電動モータ(図示せず)と、送りねじ機構14と、操舵部品であるアウタチューブ10とを備え、送りねじ機構14が、外周面に雄側ねじ部19を有するねじ軸21と、雄側ねじ部19に対して係合する雌側ねじ部17を内周面に有するナット15とを備え、前記電動モータから伝わる回転力によりねじ軸21とナット15とが相対回転することに基づいて、ねじ軸21とナット15とが軸方向に相対変位可能に構成されており、これにより、アウタチューブ10がステアリングホイール12の位置調節方向に変位可能となっている、ステアリングホイールの電動位置調節装置の製造方法に関する。
【0061】
本発明のステアリングホイールの位置調節装置の製造方法は、転造用大径軸部32と、転造用大径軸部32の軸方向に隣接して配置され、転造用大径軸部32の外径よりも小さい外径を有する第1の転造用小径軸部33と第2の転造用小径軸部34と、を備えたワーク31に対し、転造用大径軸部32の外周面に軸方向全長にわたり雄側ねじ部19を形成するために、複数個の転造ダイス35を用いてワーク31に歩みが生じる転造加工を施す工程により、ねじ軸21を製造する工程を備える。
【0062】
本発明のねじ軸21の製造方法について、図4図9を参照しつつ説明する。以下の説明中、特に断る場合を除き、軸方向は、ねじ軸21の中間素材であるワーク31の軸方向を意味し、軸方向一方側は、図4図9の左側であり、軸方向他方側は、図4図9の右側である。
【0063】
図4は、ワーク31を示している。ワーク31は、ねじ軸21(図3参照)のうち、雄側ねじ部19、第1の転造痕27、および、第2の転造痕28以外の形状を有する。すなわち、ワーク31は、外周面に雄側ねじ部19が形成される転造用大径軸部32と、外周面に第1の転造痕27が形成される第1の転造用小径軸部33と、外周面に第2の転造痕28が形成される第2の転造用小径軸部34と、基端側軸部26とを備える。
【0064】
転造用大径軸部32の外周面は、軸方向両端縁部に形成された面取り部を除き、外径が軸方向に関して変化しない円筒面である。第1の転造用小径軸部33は、転造用大径軸部32の軸方向一方側に隣接して配置され、かつ、転造用大径軸部32の外径よりも小さい外径を有する。第2の転造用小径軸部34は、転造用大径軸部32の軸方向他方側に隣接して配置され、かつ、転造用大径軸部32の外径よりも小さい外径を有する。また、第1の転造用小径軸部33の外径は、第1の小径軸部24(図3参照)の外径と同じくd1であり、第2の転造用小径軸部34の外径は、第2の小径軸部25(図3参照)の外径と同じくd2である。
【0065】
ワーク31に転造加工を施してねじ軸21を得る場合には、最初に、図5に示すように、ワーク31を転造盤にセットする。転造盤は、1対の転造ダイス35を備える。転造ダイス35のそれぞれは、短円柱形状を有する丸ダイスであり、互いの外周面同士を対向させた状態で、互いに平行に配置されている。転造ダイス35のそれぞれは、外周面に、雄側ねじ部19を転造加工するための螺旋状の転造歯36(図9参照、図5図8では形状の図示を省略)を有する。また、本例では、転造ダイス35の軸方向寸法は、ワーク31の転造用大径軸部32の軸方向寸法とほぼ等しい。ただし、本発明を実施する場合、転造ダイス35の軸方向寸法は、転造用大径軸部32の軸方向寸法よりも大きくすることや小さくすることもできる。
【0066】
図5に示すようにワーク31を転造盤にセットする段階で、1対の転造ダイス35の外周面同士の間隔は、ワーク31の転造用大径軸部32の外径よりも十分に大きくなっている。ワーク31を転造盤にセットした状態で、ワーク31は、1対の転造ダイス35の外周面同士の間の中央位置に、1対の転造ダイス35と平行に配置される。転造ダイス35のそれぞれの外周面が、ワーク31の転造用大径軸部32の外周面に対向する。また、ワーク31は、転造盤を構成する図示しないワーク支持装置が備える1対のセンタによって、軸方向両側から挟持されている。この状態で、ワーク31は、前記ワーク支持装置によって、回転自在に、かつ、1対の転造ダイス35に対する軸方向移動を自在に支持されている。前記ワーク支持装置は、ワーク31の転造加工に伴って、ワーク31に伸びが生じた場合でも、前記1対のセンタ同士の間隔が拡がることによって、該伸びを許容する。
【0067】
ワーク31を転造盤にセットした状態で、ワーク31には、前記1対のセンタから軸方向の挟持力が加わる。本例の場合、ワーク31は、転造用大径軸部32よりも軸方向他方側に位置する部分が、第2の転造用小径軸部34および基端側軸部26によって構成されている。基端側軸部26の外径が、第2の転造用小径軸部34の外径よりも大きくなっている。このため、本例のワーク31の場合には、基端側軸部26に対応する部分の外径が、第2の転造用小径軸部34の外径と等しくなっている場合に比べて、転造用大径軸部32よりも軸方向他方側に位置する部分の剛性が高くなっている。このため、前記1対のセンタから軸方向の挟持力が加わった場合に、転造用大径軸部32よりも軸方向他方側に位置する部分が座屈することが有効に防止される。
【0068】
次に、1対の転造ダイス35を互いに同方向に回転させながら、1対の転造ダイス35同士の間隔を狭めていく。図6に示すように、1対の転造ダイス35の外周面(転造歯36)をワーク31の転造用大径軸部32の外周面に食い込ませていく工程である、切り込みが開始される。該切り込みを開始すると、ワーク31は、1対の転造ダイス35から回転力を付与され、1対の転造ダイス35と逆方向に回転する。これにより、ワーク31の転造用大径軸部32の外周面の全周に転造加工が施され、雄側ねじ部19が徐々に形成される。
【0069】
本例の転造加工では、前記切り込みの進行に伴い、1対の転造ダイス35の転造歯36とワーク31の転造用大径軸部32との間に生じるリード角誤差に基づいて、ワーク31が1対の転造ダイス35に対して軸方向に移動する現象である、歩みが発生する。
【0070】
本例では、1対の転造ダイス35は、NC制御によって、前記切り込みの開始時の回転方向である正転方向の回転と、その反対方向である逆転方向の回転とが、交互に繰り返される。このため、ワーク31は、1対の転造ダイス35の外周面同士の間で、軸方向に往復移動しながら、転造加工を施される。具体的には、ワーク31は、1対の転造ダイス35が正転方向に回転する場合には、図7(a)に示すように軸方向他方側に移動し、1対の転造ダイス35が逆転方向に回転する場合には、図7(b)に示すように軸方向一方側に移動する。ワーク31のこのような軸方向他方側への移動と軸方向一方側への移動とが交互に繰り返されながら、ワーク31に転造加工が施される。
【0071】
本例では、前記NC制御によって、ワーク31の軸方向他方側への移動は、図7(a)に示す軸方向位置で止まるように構成されている。図7(a)に示す軸方向位置は、ワーク31の第1の転造用小径軸部33の全体が、1対の転造ダイス35の外周面同士の間に進入し終わった軸方向位置である。同様に、ワーク31の軸方向一方側への移動は、図7(b)に示す軸方向位置で止まるようになっている。図7(b)に示す軸方向位置は、ワーク31の第2の転造用小径軸部34のうち、軸方向他方側の端部を除く部分が、1対の転造ダイス35の外周面同士の間に進入し終わった軸方向位置である。したがって、本例では、1対の転造ダイス35のそれぞれが、ワーク31の基端側軸部26にぶつかることなく、転造加工が行われるようになっている。
【0072】
本例では、前記切り込みの工程は、図8(a)および図9に示すように、1対の転造ダイス35によって、転造用大径軸部32の外周面に雄側ねじ部19を形成するための転造加工が施されるのと同時に、第1の転造用小径軸部33の外周面に螺旋状の第1の転造痕27が形成され、かつ、図8(b)に示すように、1対の転造ダイス35によって、転造用大径軸部32の外周面に雄側ねじ部19を形成するための転造加工が施されるのと同時に、第2の転造用小径軸部34の外周面に螺旋状の第2の転造痕28が形成されるまで行う。本例では、このようにして第1の転造痕27および第2の転造痕28が形成されるため、第1の転造痕27および第2の転造痕28のそれぞれは、雄側ねじ部19の溝底線である螺旋曲線の延長線と同位相の螺旋状痕となる。
【0073】
第1の転造用小径軸部33の外径d1、および、第2の転造用小径軸部34の外径d2が、雄側ねじ部19の溝底径Dと同等以上であれば、第1の転造痕27および第2の転造痕28のそれぞれは、雄側ねじ部19と一つながりに形成された螺旋状痕となる。これに対し、第1の転造用小径軸部33の外径d1、および、第2の転造用小径軸部34の外径d2が、雄側ねじ部19の溝底径Dよりもある程度小さくなると、第1の転造痕27および第2の転造痕28のそれぞれと雄側ねじ部19とが不連続になる場合がある。
【0074】
前記切り込みの工程を終了した後、1対の転造ダイス35の間隔を拡げて、完成したねじ軸21を、転造盤から取り出す。
【0075】
本例のねじ軸21の製造方法によれば、雄側ねじ部19のフランク面を、完全ねじ部である軸方向中間部だけでなく、不完全ねじ部である軸方向両端縁部においても、精密に仕上げることができる。
【0076】
本例では、前記切り込みの工程を開始した後、初めのうちは、図7(a)および図7(b)に示すように、1対の転造ダイス35の外周面がワーク31の転造用大径軸部32の外周面にのみ接触した状態で、雄側ねじ部19を形成するための転造加工が行われる。この際には、図7(a)に示すように、ワーク31に生じる歩みによって、1対の転造ダイス35の外周面の軸方向一方側端部が転造用大径軸部32の外周面から軸方向に外れた場合や、図7(b)に示すように、ワーク31に生じる歩みによって、1対の転造ダイス35の外周面の軸方向他方側端部が転造用大径軸部32の外周面から軸方向に外れた場合に、1対の転造ダイス35とワーク31との間に作用する転造荷重の分布に大きな変化が生じる。この変化に応じた分だけ、1対の転造ダイス35やワーク31を支持している転造盤の弾性変形量に変化が生じることによって、1対の転造ダイス35とワーク31との間に傾きなどの相対変位が生じる傾向となる。この結果、加工途中の雄側ねじ部19の軸方向両端部の加工精度は、低いものとなる。
【0077】
しかしながら、前記切り込み工程の最終段階では、図8(a)および図8(b)に示すように、1対の転造ダイス35の外周面が、転造用大径軸部32の外周面だけでなく、第1の転造用小径軸部33および第2の転造用小径軸部34の外周面にも接触するようになる。この際には、図8(a)に示すように、ワーク31に生じる歩みによって、1対の転造ダイス35の外周面の軸方向一方側端部が転造用大径軸部32の外周面から軸方向に外れた場合には、1対の転造ダイス35の外周面の軸方向一方側端部は、第1の転造用小径軸部33の外周面に接触して支えられるため、1対の転造ダイス35とワーク31との間に作用する転造荷重の分布に大きな変化が生じることを防止することができる。図8(b)に示すように、ワーク31に生じる歩みによって、1対の転造ダイス35の外周面の軸方向他方側端部が転造用大径軸部32の外周面から軸方向に外れた場合には、1対の転造ダイス35の外周面の軸方向他方側端部は、第2の転造用小径軸部34の外周面に接触して支えられるため、1対の転造ダイス35とワーク31との間に作用する転造荷重の分布に大きな変化が生じることを防止することができる。したがって、前記切り込みの工程の最終段階では、1対の転造ダイス35やワーク31を支持している転造盤の弾性変形量の変化を小さく抑えることができる。このため、1対の転造ダイス35とワーク31との間に傾きなどの相対変位を生じにくくすることができる。
【0078】
本例では、雄側ねじ部19は、メートル並目ねじの、いわゆる三角ねじであり、かつ、前記切り込み工程の最終段階では、図8および図9に示すように、1対の転造ダイス35の転造歯36の溝底部にワーク31の肉(雄側ねじ部19の頂部)が接する程度にまで切り込み量を増やすことによって、1対の転造ダイス35とワーク31との接触面積が多くなる。したがって、このことによっても、前記切り込み工程の最終段階で、前記傾きなどの相対変位を生じにくくすることができる。この結果、前記切り込みの工程の最終段階において、雄側ねじ部19の軸方向両端部の加工精度を良好にすることができる。すなわち、雄側ねじ部19のフランク面を、完全ねじ部である軸方向中間部だけでなく、不完全ねじ部である軸方向両端縁部においても、精密に仕上げることができる。
【0079】
本発明を実施する場合には、ワーク31に対する転造加工を2回に分けて行う方法である、二重転造(二回転造)の方法を採用することもできる。この場合には、2回目の転造加工で雄側ねじ部19のねじ山をより高くすることにより、切り込み工程の最終段階で前記傾きなどの相対変位をより生じにくくすることができる。
【0080】
本発明を実施する場合で、雄側ねじ部19の溝底径Dよりも、第1の転造用小径軸部33の外径d1や第2の転造用小径軸部34の外径d2を大きくする場合には、これらの外径d1、d2が大きくなるほど、前記切り込み工程の最終段階において、転造ダイス35の転造歯36の軸方向端部が、転造用大径軸部32から第1の転造用小径軸部33や第2の転造用小径軸部34に乗り上がる際の抵抗力が大きくなる。
【0081】
すなわち、転造歯36の軸方向端縁部には、C面取り部やR面取り部などの、図示しない面取り部が存在している。転造歯36の軸方向端部が、転造用大径軸部32から第1の転造用小径軸部33や第2の転造用小径軸部34に乗り上がる際には、前記面取り部が第1の転造用小径軸部33や第2の転造用小径軸部34の肉を軸方向に押すことになる。ところが、前記面取り部には歯(刃)が存在しないため、前記肉を軸方向に押すことに対する抵抗力は大きいものとなる。また、前記面取り部が前記肉を軸方向に押す量は、前記外径d1、d2が大きくなるほど多くなる。このため、前記抵抗力は、前記外径d1、d2が大きくなるほど大きくなる。前記抵抗力が過大になると、ワーク31に過大な伸びや捩れが発生し、雄側ねじ部19の加工精度に悪影響を及ぼす。
【0082】
本例では、このような不都合が生じないようにするため、雄側ねじ部19の溝底径Dよりも、第1の転造用小径軸部33の外径d1や第2の転造用小径軸部34の外径d2を大きくする場合には、これらの外径d1、d2を、雄側ねじ部19の溝底径Dの1.1倍以下(溝底径Dを基準として+10%以下)となるように設定している(1.1D≧d1>D、1.1D≧d2>D)。
【0083】
一方、雄側ねじ部19の溝底径Dよりも、第1の転造用小径軸部33の外径d1や第2の転造用小径軸部34の外径d2を小さくする場合には、これらの外径d1、d2を小さくし過ぎると、図8(a)および図8(b)に示す状態で、1対の転造ダイス35とワーク31との間に生じる傾きなどの相対変位を十分に抑えられなくなる。
【0084】
本例では、このような不都合が生じないようにするため、雄側ねじ部19の溝底径Dよりも、第1の転造用小径軸部33の外径d1や第2の転造用小径軸部34の外径d2を小さくする場合には、これらの外径d1、d2を、雄側ねじ部19の溝底径Dの0.9倍以上(溝底径Dを基準として-10%以上)となるように設定している(D>d1≧0.9D、D>d2≧0.9D)。
【0085】
本発明を実施する場合、製造対象となるねじ軸21の雄側ねじ部19の条数は、特に問わない。たとえば、雄側ねじ部19は、図示のような1条ねじのほか、2条ねじであってもよい。雄側ねじ部19を2条ねじで構成すると、雄側ねじ部19が1条ねじである場合に比べて、転造加工を行う際の荷重バランスが良好となる。
【0086】
本発明を実施する場合、第1の転造痕27および第2の転造痕28を形成する軸方向範囲や、第1の転造痕27および第2の転造痕28の周方向長さなどは、任意の値に設定することができる。たとえば、第1の転造痕27および第2の転造痕28を形成する軸方向範囲の軸方向長さは、雄側ねじ部19のリードの0.02倍~2.5倍程度(たとえば1.0~1.5倍程度)とすることができる。
【0087】
本例では、転造加工時に転造ダイス35と基端側軸部26との干渉を避けるために、第2の小径軸部25のうち、軸方向他方側の端部には第2の転造痕28が形成されていない部分がある。ただし、本発明を実施する場合には、第2の転造痕28を形成した部分よりも軸方向他方側に位置する部分の全体を基端側軸部26とすることもできる。
【0088】
本発明を実施する場合、実施の形態の1例の変形例として、切り込み工程の開始から終了までの間、1対の転造ダイスの回転方向を反転させずに、該回転方向を所定の方向に維持する方式を採用することもできる。この場合、切り込み工程は、たとえば、図8(b)に示した軸方向位置から開始し、図8(a)に示した軸方向位置で終了することができる。
【0089】
本発明におけるねじ軸の転造方式は、転造加工中にワークに歩みが生じる転造方式であれば、たとえば、特開2003-33841号公報などに記載されているスルーフィード転造方式や、平板転造方式などを採用することもできる。
【0090】
スルーフィード転造方式では、たとえば、ワークに歩みを生じさせるために互いの中心軸同士を傾斜させた1対の転造ダイス(丸ダイス)を用いる。1対の転造ダイスの間隔を一定に保ちつつ、1対の転造ダイスを互いに同方向に回転させながら、1対の転造ダイスの間に、ワークを軸方向から供給する。ワークが1対の転造ダイスの間を歩みによって軸方向に通過する間に、ワークに転造加工を施す。本発明では、この過程で、1対の転造ダイスにより、転造用大径軸部の外周面に雄側ねじ部を形成するための転造加工を施すのと同時に、第1の転造用小径軸部の外周面に螺旋状の第1の転造痕を形成し、かつ、1対の転造ダイスにより、転造用大径軸部の外周面に雄側ねじ部を形成するための転造加工を施すのと同時に、第2の転造用小径軸部の外周面に螺旋状の第2の転造痕を形成する。
【0091】
スルーフィード転造方式では、ワークは1対の転造ダイスの間を軸方向に通過するため、ワークとしては、第1の転造用小径軸部よりも軸方向一方側に、第1の転造用小径軸部よりも外径が大きい部分を有しておらず、かつ、第2の転造用小径軸部よりも軸方向他方側に、第2の転造用小径軸部よりも外径が大きい部分を有していないワークを用いることが好ましい。ただし、たとえば、実施の形態の1例のワーク31のように、第2の転造用小径軸部34よりも軸方向他方側に、第2の転造用小径軸部34よりも外径が大きい、基端側軸部26が存在していても、第2の転造用小径軸部34の軸方向寸法Lが1対の転造ダイスのそれぞれの軸方向寸法よりも十分に大きい場合には、ワーク31を軸方向一方側から1対の転造ダイスの間に供給することによって、1対の転造ダイスと基端側軸部26との干渉をさけながら、スルーフィード転造によって雄側ねじ部を形成することができる。
【0092】
平板転造方式では、たとえば、それぞれが平板状である1対の転造ダイスを用いる。1対の転造ダイスは、互いの側面を対向させており、該側面に転造歯を有する。1対の転造ダイスを互いに対向する側面に対して平行に相対移動させながら、該側面の間にワークを供給する。該側面の間でワークを転がすことにより、ワークに歩みを生じさせながら、ワークに転造加工を施す。本発明では、この過程で、1対の転造ダイスにより、転造用大径軸部の外周面に雄側ねじ部を形成するための転造加工を施すのと同時に、第1の転造用小径軸部の外周面に螺旋状の第1の転造痕を形成し、かつ、1対の転造ダイスにより、転造用大径軸部の外周面に雄側ねじ部を形成するための転造加工を施すのと同時に、第2の転造用小径軸部の外周面に螺旋状の第2の転造痕を形成する。
【0093】
平板転造方式で、実施の形態の1例のワーク1に転造加工を施す場合には、たとえば、図8(b)に示したワーク31と1対の転造ダイスとの位置関係から転造加工を開始し、図8(a)に示したワーク31と1対の転造ダイスとの位置関係で転造加工を終了することができる。
【0094】
本発明のねじ軸の製造方法を実施する場合、転造加工に用いる転造ダイスの個数は、3個以上とすることもできる。
【0095】
本発明は、滑りねじ式の送りねじ機構を構成するねじ軸だけでなく、ボールねじ式の送りねじ機構を構成するねじ軸にも適用可能である。この場合、ねじ軸の雄側ねじ部は、雄ねじ溝となる。なお、本発明をボールねじ式の送りねじ機構を構成するねじ軸に適用する場合には、該ねじ軸を構成する第1の転造痕及び第2の転造痕のそれぞれは、複数個のボールを係合させる雄側ねじ部としては利用されない。
【0096】
本発明のステアリングホイールの電動位置調節装置は、特開2005-199760号公報、特開2006-321484号公報、特開2015-227166号公報などに記載されて従来から知られている、各種構造の装置(ステアリングホイールの前後位置と上下位置とのうちの少なくとも一方の位置を調節可能とした装置)に適用可能である。
【0097】
本発明のねじ軸を備える送りねじ機構は、ステアリングホイールの電動位置調節装置に限らず、自動車のステアリングホイールやヘッドライトの電動収納装置、工作機械のテーブル移動装置などの、各種機械装置に組み込んで用いることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 ワーク
2 転造ダイス
3 雄側ねじ部
4 ステアリングコラム
5 ステアリングシャフト
6 電動アクチュエータ
7 アウタコラム
8 インナコラム
9 インナシャフト
10 アウタチューブ
11 軸受
12 ステアリングホイール
13 ハウジング
14 送りねじ機構
15 ナット
16 ロッド
17 雌側ねじ部
18 ウォーム減速機
19 雄側ねじ部
20 腕部
21 ねじ軸
22 延長軸
23 大径軸部
24 第1の小径軸部
25 第2の小径軸部
26 基端側軸部
27 第1の転造痕
28 第2の転造痕
29 フランジ部
30 挿入部
31 ワーク
32 転造用大径軸部
33 第1の転造用小径軸部
34 第2の転造用小径軸部
35 転造ダイス
36 転造歯
37 当接部材
図1
図2
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