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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】糸電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220802BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220802BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220802BHJP
   H01M 50/547 20210101ALI20220802BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M50/547
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020549223
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037298
(87)【国際公開番号】W WO2020067023
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018182470
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 洪
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 充
(72)【発明者】
【氏名】得原 幸夫
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0274954(US,A1)
【文献】特開2014-026747(JP,A)
【文献】特開2017-168388(JP,A)
【文献】特開2009-087814(JP,A)
【文献】特開昭64-000657(JP,A)
【文献】特開2009-193888(JP,A)
【文献】KWON, Y. H., et al.,Cable-Type Flexible Lithium Ion Battery Based on Hollow Multi-Helix Electrodes,ADVANCED MATERIALS,John Wiley & Sons, Inc.,2012年10月02日,Volume 24, Issue 38,p.5192-5197,Version of Record online 2012.08.07
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/0562
H01M 4/62
H01M 50/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に相対する第1端部及び第2端部を有する糸電池であって、
前記長手方向に延びる糸状の第1電極と、前記第1電極の外周面に配置される固体電解質と、前記固体電解質の外周面に配置される第2電極と、前記第1端部において前記第1電極の前記第1端部側の端面を覆う第1集電体と、前記第2端部において前記第2電極の前記第2端部側の端面を覆う第2集電体とを備え、
前記第1集電体は、前記第1端部において、前記第1電極と接続され、前記第2電極及び前記固体電解質とは接続されておらず、
前記第2集電体は、前記第2端部において、前記第2電極と接続され、前記第1電極及び前記固体電解質とは接続されておらず、
前記糸電池の最外周面の少なくとも一部には、第2電極が配置されており、
前記糸電池の直径が1mm以下であり、
前記糸電池の直径に対する長さの比率(長さ/直径)が5以上であることを特徴とする糸電池。
【請求項2】
前記第1電極、前記第2電極及び前記固体電解質が、いずれも酸化物を含んでいる請求項1に記載の糸電池。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方が、前記固体電解質と同じ酸化物を含んでいる請求項2に記載の糸電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、薄型化に応じ、電源である電池について、収容スペースの形状に追従させやすい形状の電池が求められている。
収容スペースの形状に追従させやすい形状としては、例えば、特許文献1に記載されたような糸型の電池が挙げられる。特許文献1は、内部集電体と該内部集電体の周面に被覆された負極材料とからなる内部電極と、内部電極の外部に設置された電解質と、該電解質の周面に被覆された、正極材料と該正極材料の周面に設けられた外部集電体及び保護被覆部分とからなる、様々な形状に変形しうる糸型の電池を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4971139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、糸型の電池から外部に電流を引き出す具体的な方法が何ら開示されていない。要求電圧は電子機器ごとに異なるため、電子機器に搭載される電池は通常、適切な電圧となるよう複数個組み合わせて用いられる。しかしながら、特許文献1に記載の糸型の電池では、外部に電流を引き出す方法はもちろん、電池同士を接続する方法が不明である。そのため、電池を複数個組み合わせて使用する場合の電圧設計を自由に行えないという問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、外部に電流を引き出しやすく、電圧設計の自由度が高い糸電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の糸電池は、長手方向に相対する第1端部及び第2端部を有する糸電池であって、上記長手方向に延びる糸状の第1電極と、上記第1電極の外周面に配置される固体電解質と、上記固体電解質の外周面に配置される第2電極と、上記第1端部を覆う第1集電体と、上記第2端部を覆う第2集電体とを備え、上記第1集電体は、上記第1端部において、上記第1電極と接続され、上記第2電極とは接続されておらず、上記第2集電体は、上記第2端部において、上記第2電極と接続され、上記第1電極とは接続されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部に電流を引き出しやすく、電圧設計の自由度が高い糸電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の糸電池の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1におけるA-A線断面図である。
図3図3は、図1におけるB-B線断面図である
図4図4(a)~図4(f)は、本発明の糸電池を製造する方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の糸電池について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
本発明の糸電池は、長手方向に相対する第1端部及び第2端部を有する。本発明の糸電池は、長手方向に延びる糸状の第1電極と、第1電極の外周面に配置される固体電解質と、固体電解質の外周面に配置される第2電極と、第1端部を覆う第1集電体と、第2端部を覆う第2集電体とを備える。
【0011】
本発明の糸電池では、第1集電体が、第1端部において、第1電極と接続され、第2電極と接続されていない。また、第2集電体が、第2端部において、第2電極と接続され、第1電極と接続されていない。
本発明の糸電池では、第1集電体及び第2集電体が電池の両端に配置されているため、それぞれの集電体に導体を接続して電流を引き出すことが容易である。さらに、本発明の糸電池を複数個配置して直列接続や並列接続することによって、電圧設計を自由に行うことができる。
【0012】
本発明の糸電池の構成の例について、図1図2及び図3を参照しながら説明する。
図1は、本発明の糸電池の一例を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1におけるA-A線断面図であり、図3は、図1におけるB-B線断面図である。
図1に示す糸電池1は、長手方向(図1中、両矢印Lで示す方向)に相対する第1端部1aと第2端部1bとを有する。
図2及び図3に示すように、糸電池1は、第1電極10と、固体電解質30と、第2電極20と、第1集電体70と、第2集電体90とを備える。
第1電極10は長手方向(図2中、両矢印Lで示す方向)に延びる糸状であって、第1電極10の外周面には固体電解質30が配置されており、固体電解質30の外周面には第2電極20が配置されている。
第1集電体70は、第1端部1aにおいて、第1電極10と接続されており、第2集電体90は、第2端部1bにおいて、第2電極20と接続されている。
一方で、第1電極10の第2端部1b側の端面には絶縁層50が配置されており、第1電極10と第2集電体90とを絶縁している。従って、糸電池1の第2端部1bにおいて、第1電極10は第2集電体90とは接続されていない。また、第2電極20の第1端部1a側の端面には絶縁層50が配置されており、第2電極20と第1集電体70とを絶縁している。従って、糸電池1の第1端部1aにおいて、第2電極20は第1集電体70とは接続されていない。
【0013】
なお、図2では、固体電解質30の両端面にも絶縁層50が配置されているが、固体電解質30の端面は、第1電極10又は第2電極20と接触していてもよい。
【0014】
図2に示す糸電池1では、第1端部1a側において、絶縁層50と第1集電体70との間に第1電極10が配置されているが、絶縁層50と第1集電体70とが直接接触していてもよい。第1端部1a側において絶縁層50と第1集電体70との間に第1電極10が配置されていない場合であっても、第1電極10は第1集電体70と接続され、第2電極20は絶縁層50によって第1集電体70と絶縁される。
また、図2に示す糸電池1では、第2端部1b側において、第2集電体90が絶縁層50と直接接触しているが、第2集電体90と絶縁層50の間に第2電極20が配置されていてもよい。第2端部1b側において絶縁層50と第2集電体90との間に第2電極20が配置されていた場合であっても、第2電極20は第2集電体90と接続され、第1電極10は絶縁層50によって第2集電体90と絶縁される。
【0015】
図2に示す糸電池1において、絶縁層50は必須の構成ではない。例えば、第2端部1b側において、第1電極10と第2集電体90との間に空間が設けられることにより第1電極10と第2集電体90とが絶縁されていてもよい。同様に、第1端部1a側において、第2電極20と第1電極10との間に空間が設けられることにより、第2電極20と第1電極10とが絶縁されていてもよい。また、絶縁層50の部分に固体電解質30が配置されていてもよい。
【0016】
第1集電体70及び第2集電体90は、その一部が、糸電池1の外周面に回り込むように配置されていてもよい。
ただし、第1集電体70は第2電極20と接触しない範囲とし、第2集電体90は第1電極10と接触しない範囲とする。
第1集電体70及び第2集電体90が糸電池1の外周面に回り込むように配置されていると、第1集電体70と第1電極10との接触面積、及び、第2集電体90と第2電極20との接触面積が大きくなり、内部抵抗が低下する。また、第1集電体70及び第2集電体90が糸電池1の外周面に回り込むように配置されていると、集電体の剥離強度が向上する。
【0017】
本発明の糸電池は、最外周面の少なくとも一部が絶縁性材料からなる絶縁膜により覆われていてもよい。
ここで、最外周面とは、第1電極、第2電極、固体電解質からなる構造体の最外周面を意味する[ただし、長手方向における両端面(図2において、第1集電体70及び第2集電体90が設けられている領域)を除く]。
最外周面の少なくとも一部が絶縁性材料からなる絶縁膜により覆われていると、外部からの衝撃や振動等によって第1電極、第2電極及び固体電解質が破損することや短絡することを防止できる。
【0018】
本発明の糸電池は、可撓性を有していることが好ましい。
糸電池が可撓性を有していると、収容スペースの形状に追従させやすい。
なお、本明細書においては、糸電池を曲率半径が50mmとなるまで変形させても破壊されない場合に、可撓性を有していると判断する。
糸電池を内径100mmの環の内周面に沿って配置した際に、糸電池が破壊されなければ、曲率半径が50mmとなるまで変形させても破壊されない、すなわち可撓性を有していると判断する。
【0019】
本発明の糸電池の直径は特に限定されないが、0.005mm以上、1mm以下であることが好ましい。
糸電池の直径が0.005mm以上、1mm以下であると、糸電池が充分な可撓性を有し、収容スペースの形状に追従させやすくなる。
糸電池の直径が0.005mm未満の場合、糸電池の直径が小さすぎて、充分な容量を得ることができない。また、糸電池の内部抵抗が大きくなりすぎるおそれがある。一方、糸電池の直径が1mmを超える場合、糸電池の可撓性が低下してしまうおそれがある。
なお、糸電池の直径は、無作為に選択した10箇所における糸電池の長手方向に垂直な断面の断面形状から直径を測定し、平均値をとることにより求めることができる。ただし、糸電池の断面形状が円形でない場合には、断面の面積から求められる投影面積相当円の直径を断面の直径とする。
上記絶縁膜が形成されている場合には、絶縁膜の厚さも糸電池の直径に含める。
【0020】
本発明の糸電池の長手方向の長さは特に限定されないが、1mm以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の糸電池において、直径と長さの比は特に限定されないが、[(長さ)/(直径)]が5以上であることが好ましい。
【0022】
本発明の糸電池において、長手方向に垂直な断面の断面形状は円形に限定されず、楕円形状や多角形形状であってもよい。
【0023】
本発明の糸電池においては、第1電極及び第2電極のうちの一方が正極となり、他方が負極となる。以下では、第1電極が正極、第2電極が負極である場合の例について説明する。
【0024】
[第1電極]
第1電極は、正極活物質粒子を含む焼結体により構成されている。
正極活物質粒子を構成する材料としては、例えば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、リチウム含有層状酸化物、スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等の酸化物が挙げられる。
好ましく用いられるナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の具体例としては、Li(PO等が挙げられる。好ましく用いられるオリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の具体例としては、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO等が挙げられる。好ましく用いられるリチウム含有層状酸化物の具体例としては、LiCoO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3等が挙げられる。好ましく用いられるスピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の具体例としては、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等が挙げられる。
これらの正極活物質粒子のうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
これらのなかでは、Li(POが特に好ましい。
【0025】
第1電極は、正極活物質粒子の他に、固体電解質粒子及び導電性粒子を含んでいてもよい。
固体電解質粒子を構成する材料としては、例えば、後述する固体電解質を構成する酸化物が挙げられる。
固体電解質粒子は、後述する固体電解質を構成する酸化物と同じものであることが好ましい。
第1電極が固体電解質粒子を含んでおり、該固体電解質粒子が固体電解質を構成する酸化物と同じものであると、第1電極と固体電解質との接合が強固なものとなり、応答速度及び機械的強度が向上する。
導電性粒子は、例えば、Ag、Au、Pt、Pdなどの金属、炭素、電子伝導性を有する化合物、またはそれらを組み合わせた混合物等により構成される粒子が挙げられる。またこれらの導電性を有した物質が正極活物質粒子の表面に被覆された状態で第1電極に含まれてもよい。
【0026】
[第2電極]
第2電極は、負極活物質粒子を含む焼結体で構成されている。
負極活物質粒子を構成する材料の例としては、例えば、MO(Mは、Ti、Si、Sn、Cr、Fe、Nb、V及びMoからなる群より選ばれた少なくとも一種である。0.9≦X≦3.0)で表される化合物、LiMO(Mは、Ti、Si、Sn、Cr、Fe、Nb、V及びMoからなる群より選ばれた少なくとも一種である。0.9≦X≦3.0、2.0≦Y≦4.0)で表される化合物、黒鉛-リチウム化合物、リチウム合金、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等が挙げられ、MOで表される化合物、LiMOで表される化合物、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等の酸化物であることが好ましい。
MOで表される化合物は、酸素の一部がPやSiで置換されていてもよいし、Liを含んでもよい。好ましく用いられるリチウム合金の具体例としては、Li-Al等が挙げられる。好ましく用いられるナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の具体例としては、Li(POやLiFe(PO等が挙げられる。好ましく用いられるスピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の具体例としては、LiTi12等が挙げられる。これらの負極活物質粒子のうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
これらのなかでは、Li(POが特に好ましい。
【0027】
第2電極は、負極活物質粒子の他に、固体電解質粒子及び導電性粒子を含んでいてもよい。
固体電解質粒子を構成する材料としては、例えば、後述する固体電解質を構成する酸化物が挙げられる。
固体電解質粒子としては、後述する固体電解質を構成する酸化物と同じものであることが好ましい。
第2電極が固体電解質粒子を含んでおり、該固体電解質粒子が固体電解質を構成する酸化物と同じものであると、第2電極と固体電解質との接合が強固なものとなり、応答速度及び機械的強度が向上する。
導電性粒子として好ましく用いられるものとしては、例えば、Ag、Au、Pt、Pdなどの金属、炭素、電子伝導性を有する化合物、またはそれらを組み合わせた混合物等により構成される粒子が挙げられる。またこれらの導電性を有した物質が負極活物質粒子などの表面に被覆された状態で第2電極に含まれてもよい。
【0028】
なお、本明細書において、酸化物には、硫化酸化物を含めないものとする。
【0029】
[固体電解質]
固体電解質としては、例えば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物等の酸化物が挙げられる。
好ましく用いられるナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物としては、Li(PO(0.9≦x≦1.9、1.9≦y≦2.1、Mは、Ti、Ge、Al、Ga及びZrからなる群より選ばれた少なくとも一種)が挙げられる。
リチウム含有リン酸化合物としては、Li1.2Al0.2Ti1.8(POが好ましい。
組成の異なる2種以上のナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物を混合して用いてもよい。
【0030】
固体電解質の好ましい組成としては、例えば、Li1+xAlGe2-x(POで示されるガラス化可能な組成[例えば、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.2Al0.2Ge1.8(PO等]、Li1+xAlGe2-x-yTi(POで示されるガラス化可能な組成[例えば、Li1.5Al0.5Ge1.0Ti0.5(PO、Li1.2Al0.2Ge1.3Ti0.5(PO等]、AlPO、SiO及びBとからなる群より選択される少なくとも1種とLi1+xAlGe2-x(PO又はLi1+xAlGe2-x-yTi(POとの混合物、Li1+xAlGe2-x(POとLi1+xAlGe2-x-yTi(POの混合物、Li1+xAlGe2-x(PO又はLi1+xAlGe2-x-yTi(POのLiの一部をNa、Co、Mn又はNiで置き換えたもの[例えば、Liの一部をNaで置き換えたLi1.1Na0.1Al0.2Ge1.3Ti0.5(POやLi1.4Na0.1Al0.5Ge1.0Ti0.5(PO等]、Li1+xAlGe2-x(PO又はLi1+xAlGe2-x-yTi(POのGeの一部をZr、Fe又はVで置き換えたもの[例えば、Geの一部をZrで置き換えたLi1.2Al0.2Ge1.7Zr0.1(PO、Li1.5Al0.5Ge1.0Ti0.4Zr0.1(PO等]等が挙げられ、これら2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
固体電解質は、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物に加えて、さらに、ペロブスカイト型構造を有する酸化物固体電解質やガーネット型若しくはガーネット型類似構造を有する酸化物固体電解質を含んでいてもよい。ペロブスカイト型構造を有する酸化物固体電解質の具体例としては、例えばLa0.55Li0.35TiOが挙げられ、ガーネット型若しくはガーネット型類似構造を有する酸化物固体電解質の具体例としては、例えばLiLaZr12が挙げられる。
【0032】
本発明の糸電池は、第1電極、第2電極及び固体電解質が、いずれも酸化物を含んでいることが好ましい。
第1電極、第2電極及び固体電解質がいずれも酸化物を含んでいると、焼結体を形成しやすくなる。また、酸化物を含む焼結体は応力が加わって破断したとしても、各破断片を起点とした連続破壊が起こりにくいため、粉々になりにくく短絡が防止され、電池機能が維持される。
【0033】
本発明の糸電池は、第1電極及び第2電極の少なくとも一方が、固体電解質と同じ酸化物を含んでいることが好ましく、第1電極及び第2電極の両方が、固体電解質と同じ酸化物を含んでいることがより好ましい。特に、第1電極及び第2電極の少なくとも一方が、Li1.2Al0.2Ti1.8(PO等のリチウム含有リン酸化合物を含んでいることが好ましく、第1電極及び第2電極の両方が、上記リチウム含有リン酸化合物を含んでいることがより好ましい。
固体電解質と同じ酸化物を含む電極は、固体電解質との接合が強固となるため、応答速度及び機械的強度が向上する。
【0034】
本発明の糸電池において、第1電極、第2電極及び固体電解質は、硫化物及び硫化酸化物を実質的に含まないことが好ましい。
【0035】
第1電極が固体電解質と同じ酸化物を含んでいる場合、その含有量は30重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。
第1電極における上記酸化物の含有量が30重量%未満であると、第1電極と固体電解質との接合強度を充分に向上させることができないおそれがある。一方、上記含有量が70重量%を超えると、第1電極中に占める正極活物質粒子の割合が減少するため、エネルギー密度が低下するおそれがある。
なお、第1電極中に占める酸化物の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析等の組成分析により測定することができる。また、簡易的には、粉末X線回折(XRD)等のデータ解析を利用することもできる。
【0036】
第2電極が固体電解質と同じ酸化物を含んでいる場合、その含有量は30重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。
第2電極における上記酸化物の含有量が30重量%未満であると、第2電極と固体電解質との接合強度を充分に向上させることができないおそれがある。一方、上記含有量が70重量%を超えると、第2電極中に占める負極活物質粒子の割合が減少するため、エネルギー密度が低下するおそれがある。
なお、第2電極中に占める酸化物の含有量は、第1電極と同様の方法で測定することができる。
【0037】
[集電体]
第1集電体及び第2集電体について説明する。
第1電極が正極である場合、第1集電体は正極集電体となり、第2電極が負極である場合、第2集電体は負極集電体となる。
【0038】
正極集電体及び負極集電体は、電子伝導性があるものであれば、特に限定されない。正極集電体及び負極集電体は、例えば、炭素や電子伝導性の高い酸化物や複合酸化物、金属等により構成することができる。例えば、Pt、Au、Ag、Al、Cu、ステンレス、ITO(酸化インジウムスズ)等により構成することができる。
正極集電体を構成する材料としては、Ni又はAlが好ましい。一方、負極集電体を構成する材料としては、Cuが好ましい。
【0039】
[絶縁層]
絶縁層を構成する材料は絶縁性材料であればよく、例えば、ガラス、セラミックス、絶縁性樹脂等が挙げられる。
ガラスとしては、例えば、石英ガラス(SiO)や、SiO、PbO、B、MgO、ZnO、Bi、NaO及びAlからなる群から選ばれる少なくとも2種以上を組み合わせた複合酸化物系ガラス等が挙げられる。
セラミックスとしては、例えば、アルミナ、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト等が挙げられる。
絶縁性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性ポリウレタン、テフロン(登録商標)等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂、及び、光硬化性樹脂等が挙げられる。
絶縁層の厚さ(糸電池の長手方向における長さ)は特に限定されないが、0.005mm以上、1mm以下であることが好ましい。
【0040】
[絶縁膜]
絶縁膜を構成する材料は絶縁性材料であればよく、例えば絶縁層を構成する絶縁性材料と同様のものを好適に用いることができる。
絶縁膜の厚さは特に限定されないが、0.005mm以上、1mm以下であることが好ましい。
【0041】
[製造方法]
本発明の糸電池を製造する方法の例を、図4(a)~図4(f)を参照しながら説明する。
図4(a)~図4(f)は、本発明の糸電池を製造する方法の一例を示す模式図である。
【0042】
図4(a)に示すように、まず、第1電極10となる第1電極前駆体110を糸状に成型する。
第1電極前駆体110を糸状に成型する方法としては、例えば、第1電極を構成する材料と有機バインダと分散媒とを含有する混合液を紡糸する方法が挙げられる。
上記混合液を紡糸する方法としては、一般的な紡糸法を用いることができる。
【0043】
なお、図4(a)に示す工程に代わって、第1電極10そのものを作製してもよい。
第1電極10そのものを作製する方法としては、第1電極10を構成する材料を溶融させて紡糸する方法が挙げられる。
【0044】
続いて、図4(b)に示すように、第1電極前駆体110の外周面に、固体電解質30となる固体電解質前駆体130を形成する。
第1電極前駆体110の外周面に固体電解質前駆体130を形成する方法としては、例えば、固体電解質30を構成する材料と分散媒とを混合したスラリーを第1電極前駆体110の外周面に塗布し乾燥させる方法が挙げられる。
上記スラリーには必要に応じて有機バインダを添加してもよい。
【0045】
続いて、図4(c)に示すように、固体電解質前駆体130の外周面に、第2電極20となる第2電極前駆体120を形成する。
固体電解質前駆体130の外周面に第2電極前駆体120を形成する方法としては、例えば、第2電極20を構成する材料と分散媒とを混合したスラリーを固体電解質前駆体130の外周面に塗布する方法が挙げられる。
上記スラリーには必要に応じて有機バインダを添加してもよい。
【0046】
図4(a)~図4(c)により、糸電池1となる部分のうち、第1端部1a及び第2端部1b以外の部分である本体構造105が準備される。
【0047】
続いて、図4(d)に示すように、本体構造105の一方の端部に、第1集電体前駆体170と第1電極前駆体110と絶縁層前駆体150とからなる第1端部構造107を配置し、他方の端部に、第2集電体前駆体190と第2電極前駆体120と絶縁層前駆体150とからなる第2端部構造109を配置する。
このとき、第1端部構造107の本体構造105と接合する面において、本体構造105の第1電極前駆体110と接触する部分には第1電極前駆体110が、本体構造105の固体電解質前駆体130と接触する部分には絶縁層前駆体150が、本体構造105の第2電極前駆体120と接触する部分には絶縁層前駆体150が、それぞれ配置されていることが好ましい。ただし、本体構造105の固体電解質前駆体130と接触する部分には、第1電極前駆体110が配置されていてもよい。
また、第2端部構造109の本体構造105と接合する面において、本体構造105の第1電極前駆体110と接触する部分には絶縁層前駆体150が、本体構造105の固体電解質前駆体130と接触する部分には絶縁層前駆体150が、本体構造105の第2電極前駆体120と接触する部分には第2電極前駆体120が、それぞれ配置されていることが好ましい。ただし、本体構造105の固体電解質前駆体130と接触する部分には、第2電極前駆体120が配置されていてもよい。
【0048】
第1端部構造107を作製する方法としては、例えば、第1集電体前駆体170の表面に第1電極前駆体110及び絶縁層前駆体150を形成する方法が挙げられる。
第1集電体前駆体170の表面に第1電極前駆体110及び絶縁層前駆体150を形成する方法としては、例えば、第1集電体を構成する材料と有機バインダと分散媒とを含有する混合液を基材上に塗布して乾燥することによってシート状の第1集電体前駆体を得た後、第1電極を構成する材料と有機バインダと分散媒とを含有する混合液と、絶縁層を構成する絶縁性材料と分散媒とを混合したスラリーとを、それぞれシート状の第1集電体前駆体の表面に、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法によって付与し、乾燥させる方法等が挙げられる。
【0049】
第2端部構造109を作製する方法としては、例えば、第2集電体前駆体190の表面に、絶縁層前駆体150と第2電極前駆体120とを形成する方法が挙げられる。第2集電体前駆体190の表面に第2電極前駆体120及び絶縁層前駆体150を形成する方法としては、第1端部構造107を作製する方法と同様の方法を用いることができる。
【0050】
図4(e)に示すように、本体構造105、第1端部構造107及び第2端部構造109を接合して糸電池前駆体101を作製した後、焼成することによって、図4(f)に示す糸電池1が得られる。
焼成条件は特に限定されないが、500℃以上、1000℃以下であることが好ましい。
焼成雰囲気は、各材料が安定して合成、焼結される条件であれば特に限定されない。
【0051】
以上の手順により、本発明の糸電池を製造することができる。
得られた糸電池の表面には、必要に応じて、絶縁性材料と溶媒とを混合した混合液を塗布し、乾燥させることで絶縁性材料からなる絶縁膜を形成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 糸電池
1a 第1端部
1b 第2端部
10 第1電極
20 第2電極
30 固体電解質
50 絶縁層
70 第1集電体
90 第2集電体
101 糸電池前駆体
105 本体構造
107 第1端部構造
109 第2端部構造
110 第1電極前駆体
120 第2電極前駆体
130 固体電解質前駆体
150 絶縁層前駆体
170 第1集電体前駆体
190 第2集電体前駆体
図1
図2
図3
図4