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特許7115573ヘッドアップディスプレイ装置及び同製造方法
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  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置及び同製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置及び同製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220802BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021009956
(22)【出願日】2021-01-26
(62)【分割の表示】P 2016250965の分割
【原出願日】2016-12-26
(65)【公開番号】P2021076859
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-01-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小口 慎二
(72)【発明者】
【氏名】佃 大輔
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-072583(JP,A)
【文献】特開2012-056334(JP,A)
【文献】特開2004-361717(JP,A)
【文献】国際公開第2013/165977(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
B60K 35/00-37/06
G02B 5/00-5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に投射器及び反射鏡が収納され、前記投射器から投射された光を前記反射鏡によって反射させ、反射された光が前記筐体の外部に配置された表示部に画像として表示されるヘッドアップディスプレイ装置において、
前記反射鏡は、基体と、この基体の表面部にアルミニウム蒸着され前記光を反射可能な反射膜と、前記基体の側面部に位置する回転軸部、からなり、
前記表面部のうち、前記基体の上面部、下面部のいずれかの面と前記表面部との境界となる境界部に隣接する前記表面部の端部のみが、前記反射膜に覆われず露出した露出部として形成されていることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記投射器から投射された光は、前記反射膜及び前記露出部に入射する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
ヘッドアップディスプレイ装置の製造方法であって、
側面部に回転軸を有する反射鏡の基体を準備する準備工程と、
前記基体の表面部にアルミニウム蒸着することにより反射膜を形成して反射膜付き基体を得る被膜工程と、
前記表面部のうち、前記基体の上面部または下面部のいずれかの面と前記表面部との境界となる境界部に隣接する前記表面部の端部に形成された前記反射膜を除去して前記反射鏡を得る除去工程と、を有することを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射鏡を備えたヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラス等に各種情報を表示し、表示された情報を周囲の背景と共に視認可能とするいわゆるヘッドアップディスプレイ装置がある。例えば、ヘッドアップディスプレイ装置に関する従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示されたヘッドアップディスプレイ装置は、筐体に投射器、平面鏡及び凹面鏡が収納されており、投射器から投射された光は、平面鏡に反射した後に凹面鏡に反射し、フロントガラス(表示部)に入射する。フロントガラスに入射した光は、画像として乗員に視認される。
【0004】
凹面鏡は、樹脂製の基体と、この基体の表面部に形成され光を反射可能な反射膜と、からなる。反射膜は、基体の表面部の縁を含めて表面部全体を覆うように形成されている。凹面鏡に入射する光は、反射膜の周縁部にも入射する。そのため、反射膜の周縁部に反射した光は、画像の輪郭としてフロントガラスに表示される。
【0005】
ところで、画像の輪郭が目立つと、画像と周囲の背景との一体感が損なわれ、表示品位が低下する。そこで、画像の輪郭を表示する光の反射をあらかじめ抑制することが考えられる。従来技術による平面鏡には、平面鏡の縁を囲む枠部材が取り付けられている。例えば、凹面鏡にも枠部材を取り付けた場合、反射は抑制されるが部品点数が増えてしまう。さらに、大きな画像をフロントガラスに表示しようとする場合、大きい凹面鏡が必要となる。凹面鏡を大きくすることに伴い、枠部材も不可避的に大きくなり、重量も増す。
【0006】
新たに部材を追加することなく、画像の輪郭を目立たなくすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-185753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、輪郭が目立たない画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1による発明によれば、筐体に投射器及び反射鏡が収納され、前記投射器から投射された光を前記反射鏡によって反射させ、反射された光が前記筐体の外部に配置された表示部に画像として表示されるヘッドアップディスプレイ装置において、
前記反射鏡は、基体と、この基体の表面部にアルミニウム蒸着され前記光を反射可能な反射膜と、前記基体の側面部に位置する回転軸部、からなり、前記表面部のうち、前記基体の上面部、下面部のいずれかの面と前記表面部との境界となる境界部に隣接する前記表面部の端部のみが、前記反射膜に覆われず露出した露出部として形成されていることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置が提供される。
【0010】
請求項3による発明によれば、ヘッドアップディスプレイ装置の製造方法であって、
側面部に回転軸を有する反射鏡の基体を準備する準備工程と、
前記基体の表面部にアルミニウム蒸着することにより反射膜を形成して反射膜付き基体を得る被膜工程と、
前記表面部のうち、前記基体の上面部または下面部のいずれかの面と前記表面部との境界となる境界部に隣接する前記表面部の端部に形成された前記反射膜を除去して前記反射鏡を得る除去工程と、を有することを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、基体の端部には反射膜が形成されない。これにより、画像の表示品位が高まる。
【0012】
請求項3に係る発明では、ヘッドアップディスプレイ装置の製造方法は、反射膜付き基体の端部の反射膜を除去して反射鏡を得る除去工程を含む。これにより、画像の表示品位が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例によるヘッドアップディスプレイ装置の内部の構造の模式図である。
図2図1に示されたヘッドアップディスプレイ装置が有する反射鏡の斜視図である。
図3図2に示された反射鏡の正面図である。
図4図2に示された反射鏡の基体を準備する工程と、基体の形状を記憶する工程を説明する図である。
図5図4に示された基体に反射膜を蒸着する工程と、反射膜の一部をレーザの照射により除去する工程を説明する図である。
図6】レーザを照射する方向について説明する図である。
図7】マスキングによる反射膜の除去とレーザによる反射膜の除去とを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Upは上、Dnは下を示している。
<実施例>
【0015】
図1を参照する。図1には、本発明によるヘッドアップディスプレイ装置10が示されている。このヘッドアップディスプレイ装置10は、例えば、車両に搭載される。ヘッドアップディスプレイ装置10から投射された光Lは、フロントガラス11(表示部11)に画像として表示され、運転者は、車両の前方の背景と共に、画像(虚像)を視認できる。
【0016】
ヘッドアップディスプレイ装置10は、筐体12の内部に、光Lを投射する液晶表示器20(投射器20)と、投射された光Lを反射させる平面鏡30及び凹面鏡40(反射鏡40)とが収納されて構成されている。
【0017】
筐体12は、主要部が遮光性を有する合成樹脂により形成され、箱状を呈する。筐体12は、下部筐体13に上部筐体14が被せられて構成されている。上部筐体14の一部は、光Lが透過可能な透過部15で構成されている。
【0018】
液晶表示器20は、基板21に実装された発光ダイオードからなる光源22と、この光源22からの照明光が透過して光Lを形成する液晶表示素子23と、からなる。液晶表示素子23は、TFT型の液晶パネルが採用される。表示光Lは、例えば、車両の速度やエンジン回転数を表示する。液晶表示素子23は、周知の技術が採用される。詳細な説明は省略する。
【0019】
平面鏡30は、液晶表示器20から投射された光Lを凹面鏡40に向けて反射させる反射部31と、この反射部31を上部筐体14の側面に固定する固定部材32と、反射部31の縁を囲む枠部材33と、からなる。
【0020】
反射部31は、主に可視光を反射させ赤外線を透過させるいわゆるコールドミラーである。この反射部31は、ガラス基板34と、このガラス基板34に対して光Lが投射される面に形成された反射層35と、からなる。反射層35は、膜厚が異なる多層の干渉膜からなる。
【0021】
凹面鏡40は、後述する回転軸部43,44(図5参照)が上部筐体14の側部に係止することにより、回転可能に支持されている。凹面鏡40は、透過部15から臨める位置に傾斜状態にて配置されている。以下、凹面鏡40の詳細について説明する。
【0022】
図2を参照する。凹面鏡40(反射鏡)は、基体41と、この基体41に形成され光Lを反射可能な反射膜60と、からなる。基体41は、本体部42と、この本体部42の左右に設けられる左回転軸部43と、右回転軸部44と、からなる。
【0023】
本体部42は、直方体が縦方向及び横方向の双方向に湾曲した形状であり、反射膜60の形成される表面部51と、表面部51の反対側となる裏面部52と、これらの表面部51と裏面部52の間の左側面部53、右側面部54、上面部55、下面部56と、からなる。本体部42は、表面部51が凹んだ湾曲形状を呈する。左回転軸部43は、図示しないアクチュエータに把持される平板状の把持部45を備える。アクチュエータが把持部45を回転させて、凹面鏡40は回転する。
【0024】
図3を参照する。光Lが入射する方向から見て、凹面鏡40は、反射膜60の周縁部61の外周側に表面部51の一部が露出する露出部51aを有する。周縁部61は、下縁部62と、この下縁部62の両端から上方に延びる左縁部63、右縁部64と、これらの左縁部63、右縁部64の上端を繋ぐ上縁部65と、からなる。露出部51aは、上縁部65の上方に位置している。
【0025】
なお、露出部51aは、左縁部63の左方、右縁部64の右方、又は、下縁部62の下方に位置していてもよい。さらには、露出部51aは、周縁部61の外周側に周状に位置していてもよい。
【0026】
次に、凹面鏡40の製造方法について説明する。
【0027】
図4(a)を参照する。始めに、射出成形により反射鏡の基体41を成形する(準備工程)。原料は、例えば、ポリカーボネート等の樹脂を採用する。
【0028】
図4(b)を参照する。レーザ加工機80は、レーザを発振する発振部81と、レーザを集光して照射する照射部82と、発振部81及び照射部82を制御する制御部83と、レーザの被照射物の形状の情報を格納する記憶部84と、を備える。後述する反射膜60を除去する工程(除去工程)に先立って、記憶部84は、基体41のなかのレーザが照射される部位(後述する境界部57(図6(c)参照))及びその周辺(上面部55及び表面部51の上端)の三次元形状の情報を記憶する(記憶工程)。なお、記憶部84が記憶する情報は、基体41のなかのレーザが照射される部位の形状を含めばよい。即ち、記憶部84は、基体41全体の三次元形状の情報を記憶してもよい。
【0029】
図5(a)を参照する。次に、真空蒸着により反射膜60を形成する(被膜工程)。釜71に基体41を配置する。釜71の内部を真空ポンプ72により減圧する。被膜原料73として、例えば、アルミニウムを採用し、アルミニウムをヒータ74により加熱する。気化されたアルミニウムは、基体41の表面部51に付着する。これにより、基体41の表面部51に反射膜60が形成された反射膜付き基体49が得られる。
【0030】
図5(b)を参照する。最後に、周縁部61の上縁部65の一部を、照射部82が照射するレーザにより除去する(除去工程)。レーザは、記憶部84(図4(b)参照)に記憶された三次元形状の情報に基づいて照射する。即ち、発振部81及び照射部82は、記憶部84に記憶された三次元形状の情報に基づいた加工条件により制御される。
【0031】
図6(c)を参照する。レーザの照射の向きについて説明する。基体41の外縁は、曲面形状を呈する。例えば、基体41の上面部55と表面部51との境界となる境界部57も、曲面形状を呈する。レーザは、境界部57の法線に沿って照射する。
【0032】
なお、レーザの照射に代えて、反射膜60は、切削又は研磨により除去してもよく、マスキング処理をして表面部51の一部を露出させてもよい。
【0033】
次に、本発明の効果について説明する。
【0034】
図1図3を参照する。光Lが凹面鏡40に入射する方向から見て、凹面鏡40は、反射膜60の周縁部61の外周側に表面部51の一部が露出する露出部51aを有する。そのため、基体41の表面部51の上端に入射した光Lは、反射膜60に入射する光Lと比較すると、反射が抑制される(図1参照)。結果、画像の輪郭を表示する光Lが、フロントガラス11に表示されにくくなる。画像の輪郭が目立たなくなり、画像と周囲の背景との一体感を増すことができ、画像の表示品位が高まる。
【0035】
露出部51aは、上縁部65の上方に位置している。上縁部65は、他の縁部(62~64)よりも、透過部15に近い。即ち、より外光を反射させやすい部位に露出部51aが位置いるため、外光の反射をより抑制することができる。
【0036】
図4(b)及び図5(b)を参照する。上縁部65の一部は、レーザ加工機80が照射するレーザにより除去する(除去工程)。この除去工程に先立って、レーザ加工機80(記憶部84)は、基体41のなかのレーザが照射される部位(境界部57)及びその周辺(上面部55及び表面部51の上端)の三次元形状の情報を記憶し(記憶工程)、三次元形状の情報に基づいてレーザを照射する。そのため、基体41の境界部57の形状に応じて、適切な加工の経路、レーザの強度及び照射範囲が決定される。より正確かつ均一に反射膜60の周縁部61を除去することができる。
【0037】
図6(a)を参照する。仮に、基体101の上面部102の垂線に沿ってレーザを照射した場合、表面部103の一部に反射膜104が残る虞がある。図6(b)を参照する。同様に、基体101の表面部103の垂線に沿ってレーザを照射した場合、上面部102の一部に反射膜104が残る虞がある。即ち、反射膜104を過不足なく取り除くためには、レーザを表面部103に向けて照射する場合と、レーザを上面部102に向けて照射する場合の計2回照射する必要がある。
【0038】
図6(c)を参照する。一方、本発明では、レーザを曲面形状を呈する境界部57の法線に沿って照射する。この場合、レーザは表面部51及び上面部55の両方に照射される。そのため、1回のレーザの照射により、反射膜60を過不足なく除去することができる。
【0039】
図7を参照する。基体の表面部の一部が露出するように反射膜を形成するには、例えば、マスキング処理をすることが考えられる。具体的には、射出成形により基体201を準備し(図7(a))、基体201の表面部202の上端にマスク203をし(図7(b))、蒸着により基体201の表面部202に反射膜204を形成し(図7(c))、マスク203を剥がし(図7(d))、凹面鏡205を得る。しかし、図7(b)に示されるように、幅の狭い部位を正確にマスク203をすることは難しい。仮に、マスク203をした場合であっても、マスク203を剥がす際にマスク203に蒸着した反射膜204と共にこの周縁の反射膜まではがしてしまう虞があり、品位が低下する虞がある。
【0040】
さらに、反射膜付き基体49(図5参照)の周縁部61を切削又は研磨により除去することも考えられるが、切削又は研磨の際にくずが生じる。
【0041】
一方、本発明のように周縁部61の一部がレーザにより除去されれば(図7(g))、反射膜60の端部は直線になり(図7(h),図7(i))、高い表示品位を確保することができる。
【0042】
なお、本発明によるヘッドアップディスプレイ装置10は、車両を例に説明したが、その他の乗り物にも適用可能であり、これらの形式のものに限られるものではない。また、スクリーンは、フロントガラスに限られず、ケースに支持されたコンバイナであってもよい。即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、乗用車に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0044】
10…ヘッドアップディスプレイ装置
11…フロントガラス(表示部)
12…筐体
20…液晶表示器
30…平面鏡
40…凹面鏡
41…基体
42…本体部
49…反射膜付き基体
51…表面部
51a…露出部
57…境界部
60…反射膜
61…周縁部
62…下縁部
63…左縁部
64…右縁部
65…上縁部
80…レーザ加工機
84…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7