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特許7115597保守支援方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】保守支援方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20220802BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220802BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
H01M10/48 P
H01M10/42 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021106580
(22)【出願日】2021-06-28
(62)【分割の表示】P 2019114665の分割
【原出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021170347
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-12-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】栗澤 勇
(72)【発明者】
【氏名】今泉 博文
【審査官】新里 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-324109(JP,A)
【文献】特開2011-175494(JP,A)
【文献】特開2019-040536(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109800127(CN,A)
【文献】特開2016-174468(JP,A)
【文献】特開2011-160604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H01M 10/42-10/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
蓄電素子に関する電圧値を含む測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置から取得される測定データと、測定データから導出される前記蓄電素子のSOH(State Of Health )又は予測寿命とに基づいて前記蓄電素子の異常又は異常の予兆を検知し、異常又は異常の予兆の原因を、複数の原因候補から1又は複数に絞り込み、
絞り込まれた原因に応じて、原因毎に予め記憶してある物品の識別データから、修理に必要な物品の識別データを特定し、
前記識別データを含む修理手配データを保守作業者宛てに送信する
保守支援方法。
【請求項2】
前記コンピュータが、複数の前記蓄電素子毎にSOH又は予測寿命を導出する
請求項1に記載の保守支援方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、前記識別データを含む修理手配データを、未対応のデータとして記憶部に記憶する
請求項1又は2に記載の保守支援方法。
【請求項4】
前記修理に必要な物品は、交換用部材、測定器又は工具の少なくともいずれかである
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の保守支援方法。
【請求項5】
前記異常又は異常の予兆の原因は、前記測定データが入力された場合に、原因及び確度を出力するように学習された学習モデルを用いて絞り込まれる
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の保守支援方法。
【請求項6】
コンピュータに、
蓄電素子に関する電圧値を含む測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置から取得される測定データと、測定データから導出される前記蓄電素子のSOH又は予測寿命とに基づいて前記蓄電素子の異常又は異常の予兆を検知し、異常又は異常の予兆の原因を、複数の原因候補から1又は複数に絞り込み、
絞り込まれた原因に応じて、原因毎に予め記憶してある物品の識別データから、修理に必要な物品の識別データを特定し、
前記識別データを含む修理手配データを保守作業者宛てに送信する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の保守管理作業を支援する保守支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子は、無停電電源装置、安定化電源に含まれる直流又は交流電源装置等に広く使用されている。再生可能エネルギー又は既存の発電システムにて発電された電力を蓄電しておく大規模なシステムでの蓄電素子の利用も拡大している。
【0003】
蓄電素子の運用には、劣化診断等の定期的な点検を含む予防保全の取り組みが必須である。保守作業者の負担を軽減しつつ、正確な情報に基づく蓄電素子の劣化診断を可能とするために、ネットワークを経由して蓄電素子のユーザ又は保守作業者が蓄電素子の状態を確認可能とする技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、保守作業者が蓄電素子の定期点検時に、蓄電素子のユーザが管理するネットワークを介さずに、蓄電素子の状態データを取得できる機器が開示されている。特許文献1に開示されている方法によって、保守作業者は蓄電素子の設置場所に赴き、所持する端末装置を用いて蓄電素子の状態データを容易に取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6402925号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓄電素子の状態データを遠隔から確認できることによって、異常が発生していることを保守作業者が検知できる。発生した異常に対し、保守作業者が蓄電素子の設置場所へ赴き、異常の原因を究明し異常の発生した蓄電素子を交換する等の対処を施す。保守作業者の熟練度によっては、作業に要する時間に大きな差異が生じる。蓄電素子を含むシステムを、継続して運用できるような保守管理が望まれる。
【0007】
本発明は、保守支援方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
保守支援方法は、コンピュータが、蓄電素子に関する電圧値を含む測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置から取得される測定データに基づき、前記蓄電素子の異常又は異常の予兆の原因を、複数の原因候補から1又は複数に絞り込み、絞り込まれた原因に応じて、修理に必要な物品の識別データを特定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】保守支援システムの概要を示す。
図2】保守支援システムが含む装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】保守用機器の内部構成を示すブロック図である。
図4】保守支援システムにおける修理シーケンスを示す。
図5】保守支援システムにおける修理シーケンスを示す。
図6】保守端末装置にて表示される修理支援画面の内容例を示す。
図7】保守端末装置にて表示される修理支援画面の内容例を示す。
図8】修理フローの内容例を示す図である。
図9】修理支援画面の他の内容例を示す。
図10】修理支援画面の他の内容例を示す。
図11】変形例1における保守支援システムによる修理シーケンスを示す。
図12】変形例2における保守支援装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
保守支援方法は、蓄電素子の異常又は異常の予兆の原因を、複数の原因候補から前記蓄電素子に関する測定データに基づいて1又は複数に絞り込み、前記複数の原因候補夫々に対応付けて記憶してある修理フローから、絞り込まれた原因に対応する修理フローを選択し、選択した修理フローに基づいて実行すべき修理手順を出力する。
【0011】
蓄電素子の異常又は異常の予兆などは外観からは判断できない場合もあるが、蓄電素子の測定データを取り込むことで異常又は異常の予兆の検知が可能になる。従来は、保守作業者がどの測定データから、どのような異常が発生したのかを判断し、どのように修理するかが均質でなかった。上記構成により、保守作業者が誰であっても、絞り込まれた原因に応じて予め最善として記憶されている修理フローに基づく修理手順が、保守作業者が用いる装置に出力される。熟練者であるか否かによらない均質な修理作業が実施される。
【0012】
前記修理手順に基づく作業の結果を受け付け、受け付けた結果に応じて原因を更に絞り込み、前記原因に基づく次に実行すべき修理手順の出力と、作業の結果の受け付けとが、修理が完了するまで繰り返し実行されてもよい。
【0013】
異常又は異常の予兆の原因が、事前に取得される測定データのみでは特定できない場合であっても、保守支援方法は、保守作業者に対し、修理フローを実行した場合の作業の結果に応じて修理現場で原因を特定するための手順を提示する。これによって熟練者でない作業者でも、熟練者と同様の修理作業が可能になる。
【0014】
前記絞り込まれた原因に応じて、修理作業に必要な交換用部材、測定器又は工具の識別データを含む修理手配データを前記修理作業の作業者宛てに送信してもよい。
【0015】
例えば、蓄電素子の測定データから、蓄電素子の劣化が異常の原因と推定される場合は、保守作業者は交換用の蓄電素子を持参する。測定データから、蓄電素子以外の構造的な、又は電気回路的な要因で異常又は異常が検知されたと推定される場合には、それらに応じた様々な工具が状況に合わせて必要になる。上記構成により、修理作業に必要な交換用部材、測定器、工具等が手配される。必要な物品が自動的に手配されるので、現場へ赴く保守作業者が所持し忘れて再度訪問するといった事態を回避することができ、保守作業者の熟練度によらず、保守活動の効率化が期待できる。交換用部材については自動的に手配されることで、顧客への納品の管理システムと連携させることも可能になり、どのような部品をいつ交換したかという履歴が確認可能になる。
【0016】
前記絞り込まれた原因、又は作業の結果に応じて、修理作業に必要な熟練者のスケジュールを手配し、前記修理手順は、前記熟練者からの指示に基づき出力されてもよい。
【0017】
上記構成により、修理フローでカバーできていない事象の場合でも、熟練者の遠隔からのサポート等が円滑に行なわれる。これにより、実際に修理作業を行なう保守作業者が熟練者であるか否かによらない均質な修理作業が実施される。
【0018】
前記異常又は予兆の原因は、前記測定データが入力された場合に、原因及び確度を出力するように学習された学習モデルを用いて絞り込まれてもよい。
【0019】
学習モデルを用いることにより、外観、又は測定データから人間が判別することが困難な異常又は異常の予兆を検知できる可能性がある。蓄電素子の状態は、直接測定することができないが、測定データから学習モデルによって精度よく推定できる可能性がある。複数の測定データに現れている原因の推定に過去の修理の実績を活かし、推定の精度を高めることができる。
【0020】
保守支援システムは、蓄電素子に関する測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置と、前記記憶装置と通信接続が可能な保守端末装置と、前記保守端末装置から通信接続が可能な保守支援装置とを含む。前記保守支援装置は、前記記憶装置から取得される測定データに基づき、前記蓄電素子の異常又は異常の予兆の原因を、複数の原因候補から1又は複数に絞り込む。前記保守支援装置は、前記複数の原因候補夫々に対応付けて記憶してある修理フローから、絞り込まれた原因に対応する修理フローを選択し、選択した修理フローに基づいて実行すべき修理手順を前記保守端末装置へ送信する。
【0021】
前記保守支援装置は、前記修理手順に基づく作業の結果を前記保守端末装置から受信し、受信した結果に応じて原因を更に絞り込み、前記原因に基づく次に実行すべき修理手順の送信と、作業の結果の受信を修理が完了するまで繰り返し実行してもよい。
【0022】
保守支援装置は、蓄電素子の異常又は異常の予兆の原因を、複数の原因候補から前記蓄電素子に関する測定データに基づいて1又は複数に絞り込む原因推定部、前記複数の原因候補夫々に対応付けて記憶してある修理フローから、絞り込まれた原因に対応する修理フローを選択するフロー選択部、及び選択した修理フローに基づいて実行すべき修理手順を出力する手順出力部を備える。
【0023】
コンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子の異常又は異常の予兆の原因を、複数の原因候補から前記蓄電素子に関する測定データに基づいて1又は複数に絞り込み、前記複数の原因候補夫々に対応付けて記憶してある修理フローから、絞り込まれた原因に対応する修理フローを選択し、選択した修理フローに基づいて実行すべき修理手順を出力する処理を実行させる。
【0024】
本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1は、保守支援システム100の概要を示す。保守支援システム100は、保守支援装置1及び保守作業者が用いる保守端末装置2を含む。保守支援システム100は、遠隔監視システム300と通信接続可能である。遠隔監視システム300は、保守対象の蓄電素子50の状態を示すデータを収集し、ネットワークを介して収集されたデータに基づく遠隔からの状態閲覧を実現する。保守支援システム100は、保守対象の蓄電素子を購入、又はレンタルしている顧客のデータを記憶する顧客データ管理システム400と通信接続可能である。本実施の形態においては、保守支援システム100、遠隔監視システム300及び顧客データ管理システム400は、保守対象の蓄電素子50の製造業者により管理され、製造業者用のネットワークMN又は専用線を介して相互に通信接続可能である。保守支援システム100は、蓄電素子50の製造管理システム(図示せず)と通信接続可能であってもよい。
【0026】
ネットワークMNは、製造業者用のローカルネットワークである。ネットワークMNは例えば、Ethernet(登録商標)であり、光回線であってもよい。ネットワークMNは、VPN(Virtual Private Network)を含んで、ロケーションの異なるシステム100,300,400間をローカルネットワークとして接続してもよい。保守支援システム100と遠隔監視システム300との間、保守支援システム100と顧客データ管理システム400との間は、ネットワークMNの一部でもよいし、専用線、又はVPNであってもよい。
【0027】
保守端末装置2及び保守支援装置1は、通信網N又はネットワークMNを介して通信接続可能である。通信網Nは、所謂インターネットである。通信網Nは、所定の移動通信規格による無線通信を実現するキャリアネットワークを含んでもよい。通信網Nは、一般光回線を含んでもよい。
【0028】
保守支援システム100による保守対象の蓄電素子50は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池を含む二次電池や、キャパシタのような、充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子50の一部は、充電不可能な一次電池であってもよい。本実施の形態における蓄電素子50は夫々、鉛蓄電池である。蓄電素子50は、蓄電セルを複数接続した蓄電モジュールであってもよい。蓄電素子50は、蓄電セルそのもの又は蓄電モジュールを複数接続した蓄電モジュール群であってもよい。
【0029】
蓄電装置5は、1又は複数の蓄電素子50を含む。蓄電装置5は、単体で利用されてもよい。蓄電装置5は、蓄電素子50の顧客(ユーザ)によって管理される顧客のネットワークCNに通信接続する蓄電装置5群として利用される。同一の顧客によって管理される蓄電装置5群は、顧客のネットワークCNを介して、顧客が管理する管理装置51へ蓄電素子50の状態データを送信する。状態データは少なくとも電圧値を含む。状態データは、内部抵抗値、電流値、温度を含んでもよい。状態データは、鉛蓄電池である蓄電素子50の端子に接続されたユニットから、保守用通信機器6を介して送信される。状態データは、リチウムイオン電池である蓄電モジュールに備えられる電池管理装置(BMU)に接続される保守用通信機器6によって送信されてもよい。状態データは、保守用通信機器6から保守端末装置2へ送信されてもよい。複数の蓄電装置5から送信される状態データは、専用線N2又は通信網Nを介して遠隔監視システム300で受信される。状態データは、蓄電素子50を夫々識別する製造番号等の識別データと対応付けて状態履歴として記憶される。
【0030】
保守用通信機器6が、蓄電装置5に設けられている。保守用通信機器6は、ネットワークCNを介さずに、保守作業者が用いる保守端末装置2とデータをやり取りできる。保守用通信機器6は、蓄電装置5の蓄電素子50夫々について状態データを取得するユニットと通信接続可能である。保守用通信機器6は、鉛蓄電池の端子に接続されたユニットと、無線通信によって通信接続可能である。保守用通信機器6は、リチウムイオン電池の蓄電モジュールに備えられる電池管理装置(BMU)と通信接続可能である。保守用通信機器6は、蓄電装置5から管理装置51向けに送信される状態データと同一の状態データを内蔵するメモリに記憶する。
【0031】
ネットワークCNは、複数の蓄電装置5を運用する顧客のローカルネットワークである。ネットワークCNは、例えばEthernet(登録商標)であり、光回線であってもよい。ネットワークCNは、VPNを含んでもよい。ネットワークCNは、ECHONET(登録商標) /ECHONETLite (登録商標)対応のネットワークであってもよい。専用線N2は、蓄電装置5の顧客のネットワークCNと遠隔監視システム300との間を接続するプライベートネットワークである。専用線N2は、通信網Nであってもよい。専用線N2は、ECHONET /ECHONETLite 対応の専用ネットワークであってもよい。
【0032】
本実施の形態の保守支援システム100は、蓄電素子50又は蓄電装置5の保守管理を、保守端末装置2にて取得した状態データ、顧客データ管理システム400から得られる顧客データ、遠隔監視システム300から得られる診断データを用いて支援する。保守支援システム100は、保守端末装置2にて取得した状態データ、遠隔監視システム300から得られる診断データに基づいて異常を検知又は異常の予兆を検知する。保守支援システム100は、検知した異常又は異常の予兆に基づいて保守作業者の修理作業を支援する。遠隔監視システム300にて収集される状態データに基づく診断により、保守支援装置1は、修理作業の手順を保守作業者へ保守端末装置2を通じて対話形式で提示する。これにより、修理作業は熟練度によらずに多様な保守作業者によって均質に実施可能になる。
【0033】
このような蓄電素子50の保守支援システム100を実現するための詳細な構成について説明する。
【0034】
図2は、保守支援システム100が含む装置の内部構成を示すブロック図である。保守支援装置1は、サーバコンピュータを用い、制御部10、記憶部11、及び通信部12を備える。本実施の形態において保守支援装置1は、1台のサーバコンピュータとして説明するが、複数のサーバコンピュータで処理を分散させてもよい。
【0035】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit )又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサである。制御部10は、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。制御部10は、記憶部11に記憶されている保守支援プログラム1Pに基づく処理を実行する。保守支援プログラム1PはWebサーバプログラムを含む。制御部10は、保守端末装置2へのWebページの提供を実行するWebサーバとして機能する。
【0036】
記憶部11は、例えばハードディスク又はSSD(Solid State Drive )等の不揮発性メモリを用いる。記憶部11は、上述した保守支援プログラム1Pを記憶する。この保守支援プログラム1Pは、記録媒体7に記憶してある保守支援プログラム7Pを制御部10が読み出して記憶部11に複製したものであってもよい。記憶部11は、修理フローを記憶する。記憶部11は、修理フローを、検知される異常又は異常の予兆の原因別に記憶するとよい。修理フローは、保守端末装置2で表示させる修理支援画面の遷移データを含んでよい。記憶部11は、保守作業者の作業者IDを含む作業者データを記憶する。作業者データは、作業者IDに対応付けて作業者名、電子メールアドレス等の連絡先情報、承認者となる上長の承認者IDを含む。作業者データには、作業者の熟練度合を示すランクを付与しておく。
【0037】
通信部12は、ネットワークMNを介した通信接続及びデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には通信部12は、ネットワークMNに対応したネットワークカードである。通信部12は、ネットワークMNに接続される図示しないルータ機器及び通信網Nを介した通信を実現してもよい。制御部10は、通信部12によって遠隔監視システム300及び顧客データ管理システム400との間でデータを送受信する。
【0038】
保守端末装置2は、保守作業者が使用するコンピュータである。保守端末装置2は、デスクトップ型若しくはラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよい。保守端末装置2は、所謂スマートフォン又はタブレット型の通信端末であってもよい。保守端末装置2は、視覚的な指示を出力できるヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display )、グラス型のウェアラブル端末装置であってもよい。保守端末装置2は、制御部20、記憶部21、第1通信部22、第2通信部23、表示部24、及び操作部25を備える。保守端末装置2は図示するように撮像部26を備えてもよい。
【0039】
制御部20は、CPU又はGPUを用いたプロセッサである。制御部20は、記憶部21に記憶されている保守端末用プログラム2Pに基づき、修理手順を表示部24に表示させる。制御部20は、保守用通信機器6から情報データを読み出す処理を実行する。制御部20は、保守端末用プログラム2Pに含まれるWebブラウザによる保守支援装置1との間での情報処理を実行する。
【0040】
記憶部21は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部21は、保守端末用プログラム2Pを含む各種プログラムを記憶する。記憶部21は、保守端末用プログラム2Pに基づく画面データを記憶する。保守端末用プログラム2Pは、記録媒体8に記憶してある保守端末用プログラム8Pを制御部20が読み出して記憶部21に複製したものであってもよい。
【0041】
第1通信部22は、通信網N又はネットワークMNを介したデータ通信を実現するための通信デバイスである。第1通信部22は、有線通信用のネットワークカード等の通信デバイス、基地局BS(図1参照)に接続する移動通信用の無線通信デバイス、又はアクセスポイントAPへの接続に対応する無線通信デバイスを用いる。
【0042】
第2通信部23は、保守用通信機器6と通信接続してデータ通信を実現するための通信デバイスである。第2通信部23は、Wifi又はBluetooth (登録商標)等の無線通信デバイスであってもよい。第2通信部23は、USB(Universal Serial Bus )インタフェースであってもよい。
【0043】
表示部24は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイである。表示部24は、制御部20の保守端末用プログラム2Pに基づく操作画面、及び保守支援装置1で提供されるWebページのイメージを表示する。表示部24は、好ましくはタッチパネル内蔵型ディスプレイである。表示部24は、タッチパネル非内蔵型ディスプレイであってもよい。
【0044】
操作部25は、制御部20との間で入出力が可能なキーボード及びポインティングデバイス、若しくは音声入力部等のユーザインタフェースである。操作部25は、表示部24のタッチパネル、又は筐体に設けられた物理ボタンを用いてもよい。操作部25は、ユーザによる操作情報を制御部20へ通知する。
【0045】
撮像部26は、撮像素子を用いて得られる撮像画像を出力する。制御部20は、任意のタイミングで撮像部26の撮像素子にて撮像される画像を取得できる。
【0046】
顧客データ管理システム400は、顧客IDに対応付けて、顧客の氏名又は名称、顧客の連絡先、住所等の属性データを記憶する。顧客データ管理システム400は、顧客が複数の蓄電装置5を異なるロケーションに設置して管理している場合、ロケーションを識別するロケーションIDに対応付けて所在地を記憶する。顧客データ管理システム400は、顧客IDに対応付けて、顧客が購入した蓄電素子50の製造番号を記憶する。顧客が複数の蓄電装置5を異なるロケーションに設置して管理している場合、顧客データ管理システム400は、顧客ID及びロケーションIDと対応付けて設置されている蓄電素子50の製造番号を記憶する。
【0047】
遠隔監視システム300は、蓄電素子50の製造番号に対応付けて蓄電素子50の状態データを逐次記憶する。遠隔監視システム300は、蓄電素子50の状態データが示す値が所定範囲内に含まれるか否かを診断する。遠隔監視システム300は、状態データに基づいて蓄電素子50毎のSOC(State Of Charge)、SOH(State Of Health)、及び予測寿命等を含む診断データを、蓄電素子50毎に導出してもよい。
【0048】
製造管理システムは、蓄電素子50の製造番号に対応付けて製造時のロット番号、出荷日時を記憶するとよい。
【0049】
図3は、保守用通信機器6の内部構成を示すブロック図である。保守用通信機器6は、制御部60、記憶部61、第1通信部62、第2通信部63、及び第3通信部64を備える。制御部60は、CPU又はマイクロプロセッサを用いる。記憶部61は、予め規定されたプログラムを記憶する。
【0050】
記憶部61は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部61は、蓄電素子50から受信した状態データを記憶する。
【0051】
第1通信部62は、蓄電素子50に接続されたユニットとの通信接続を実現する通信デバイスである。本実施の形態では第1通信部62はBluetooth(登録商標)等の無線通信によって蓄電素子のユニットと通信接続する。
【0052】
第2通信部63は、ネットワークCNを介した通信接続を実現する通信デバイスである。保守用通信機器6は、蓄電素子50から受信した状態データを第2通信部63によって管理装置51へ送信できる。蓄電素子50が通信機能を有する電池管理装置を備えている場合、第2通信部63は不要である。
【0053】
第3通信部64は、保守用通信機器6と保守端末装置2との通信接続を実現する通信デバイスである。本実施の形態において第3通信部64は、USBインタフェースである。第3通信部64は、第1通信部62とは異なる無線通信デバイスであってもよい。
【0054】
保守用通信機器6の制御部60は、プログラムに基づき、第1通信部62によって定期的に蓄電素子50から状態データを取得する。制御部60は、取得した状態データを逐次、記憶部61に記憶する。記憶の周期は、蓄電素子50が鉛電池である場合、例えば1日に1回程度である。制御部60は、取得した日時を状態データに対応付けて記憶部61に記憶する。制御部60は、取得した状態データを第2通信部63から逐次、管理装置51へ向けて送信する。制御部60は、プログラムに基づき、第3通信部64によって保守端末装置2と通信接続した場合、保守端末装置2からの指示に応じて、記憶部61から状態データを読み出し、その状態データを第3通信部64から送信する。
【0055】
保守作業者が所持する保守端末装置2は、定期的な保守点検の実施時に保守用通信機器6に蓄積される状態データを取得する。保守端末装置2は、ネットワークMN又は通信網Nを介して遠隔監視システム300へ状態データを送信し、遠隔監視システム300に状態データを集約させる。これにより、顧客のネットワークCNを介して遠隔監視システム300へ送信されない状態データについても、遠隔監視システム300で集約することができる。
【0056】
本実施の形態の保守支援システム100は、以下のようにして蓄電素子50の保守管理を支援する。図4は、保守支援システム100における修理シーケンスを示す。図4は、異常を検知してから修理手配までのシーンにおける手順を示している。
【0057】
遠隔監視システム300は、運用者の管理装置51又は保守用通信機器6を介して集約された状態データに基づき、異常を検知する(ステップS301)。遠隔監視システム300は、異常が検知された蓄電素子50を含むシステムの管理者、及び保守作業者へ異常を通知する(ステップS302)。ステップS302の通知は具体的には、顧客管理システムで参照されるシステムの管理者、保守作業者の連絡先に対して通知がされる。保守端末装置2へ通知がされてもよい。
【0058】
遠隔監視システム300は、検知した異常に係る状態データを異常が検知された蓄電素子50の識別データと対応付けて保守支援装置1へ送信する(ステップS303)。
【0059】
保守支援装置1は、異常が検知された蓄電素子50の識別データと対応付けて状態データを通信部12で受信する(ステップS101)。制御部10は、蓄電素子50の識別データに基づいて顧客管理システムから、納入日を含む顧客データを取得する(ステップS102)。顧客データには、蓄電素子50の納入先の名称及び住所を含むとよい。
【0060】
制御部10は、受信した状態データに基づき、異常又は異常の予兆の原因を絞り込む(ステップS103)。ステップS103において制御部10は例えば、状態データに含まれる電圧値が、正常範囲の上限を突破している場合と、下限を突破している場合とで異なる原因を推定する。正常範囲は、蓄電素子50の種別、型別又は個々に、設定されている。制御部10は、内部抵抗値が正常範囲として設定されている範囲の上限を突破している場合と、下限を突破している場合とで異なる原因を推定してもよい。制御部10は、状態データに含まれる温度が正常範囲として設定されている上限を突破している場合と、下限を突破している場合とで異なる原因を推定してもよい。
【0061】
制御部10は、絞り込んだ原因による異常、又は異常の予兆となるような現象の進行を抑止するための修理に必要な物品の識別情報を特定する(ステップS104)。記憶部11は、ステップS103で絞り込まれる原因毎に、必要な物品の識別情報を、予め記憶しておくとよい。物品は例えば、蓄電素子50の交換部品である。物品は、詳細な原因を特定するための測定器であってもよい。
【0062】
制御部10は、修理を手配する修理手配データを、記憶部11に未対応のデータとして記憶する(ステップS105)。修理手配データは、異常又は異常の予兆が検知された対象の蓄電素子50の識別データと、絞り込んだ原因及び特定した物品の識別情報とを含む。制御部10は、修理手配データを、異常が検知されたシステムの修理作業を行なう保守作業者向けに送信し(ステップS106)、一旦処理を終了する。ステップS106の送信は、保守作業者の電子メールアドレス宛に電子メールで送信されるとよい。保守作業者が使用する保守端末装置2へ通知がメッセージとして送信されてもよい。
【0063】
異常の通知及び修理手配データを受けた保守作業者は、タブレット端末装置に保守端末用プログラム2Pをインストールした保守端末装置2を用い、異常が検知された蓄電素子50の設置場所へ赴く。保守作業者は、保守端末装置2を保守支援装置1と通信網Nを介して安全に通信接続させて、保守支援装置1とのデータの授受によって示される手順に応じて修理を進める。
【0064】
図5は、保守支援システム100における修理シーケンスを示す。図5は、修理手配後から修理現場における手順を示している。
【0065】
保守作業者が保守端末装置2を用い、第1通信部22を介して保守支援装置1と通信接続させる操作を行なうと、制御部20は、保守支援装置1と通信網Nを介して通信接続する(ステップS201)。
【0066】
制御部20は、修理対象の蓄電素子50を識別する製造番号等の識別データと対応付けて、修理支援画面を保守支援装置1へ要求する(ステップS202)。
【0067】
保守支援装置1の制御部10は、修理支援画面の要求を受けると(ステップS111)、要求に応じて、識別データを含む修理手配データを記憶部11から読み出す(ステップS112)。制御部10は、修理手配データに対応する修理フローを記憶部11から読み出す(ステップS113)。制御部10は、修理フローに基づいて次に実行すべき修理手順を特定する(ステップS114)。制御部10は、特定した修理手順を含む修理支援画面を保守端末装置2へ送信する(ステップS115)。修理支援画面は、絞り込まれた原因に対応する修理フローに基づく修理手順を示すメッセージ又は画像を含む。修理フローは、記憶部11に記憶されている。修理支援画面には、修理手順を示すメッセージ又は画像に対し、その手順を実施したか否か、手順の結果はどうであったかを入力するインタフェースが含まれているとよい。
【0068】
保守端末装置2では、保守支援装置1から送信された修理支援画面を第1通信部22で受信する(ステップS203)。制御部20は、修理支援画面を表示部24に表示する(ステップS204)。
【0069】
修理支援画面には、第2通信部23によって保守端末装置2を保守用通信機器6と通信接続させるように促すメッセージが含まれているとよい。制御部20は、保守用通信機器6と通信接続する(ステップS205)。ステップS205の処理は、保守用通信機器6から正常に遠隔監視システム300へ状態データが送信されている場合には不要である。
【0070】
制御部20は、表示部24に表示させている修理手順を示す修理支援画面にて保守作業者の操作部25による操作を受け付ける(ステップS206)。制御部20は、操作結果を保守支援装置1へ送信する(ステップS207)。ステップS206で受け付ける操作には、保守用通信機器6を介した状態データの測定、保守用通信機器6を介した蓄電素子50の制御が含まれていてもよい。
【0071】
保守支援装置1は、通信部12によって修理支援画面上での操作結果を受信する(ステップS116)。制御部10は、操作結果を受信する都度、蓄電素子50の識別データに対応付けて修理ログとして記憶部11に記憶する(ステップS117)。
【0072】
制御部10は、受信した操作結果によって修理作業が完了したか否かを判断する(ステップS118)。完了していないと判断された場合(S118:NO)、制御部10は、処理をステップS114へ戻し、次の手順を特定する。
【0073】
ステップS117で完了したと判断された場合(S118:YES)、制御部10は、次回修理作業が必要か否かを判断する(ステップS119)。ステップS119で必要であると判断された場合(S119:YES)、制御部10は、交換用部材等の物品の発注準備を、顧客データ管理システム400と連携して実行する(ステップS120)。制御部10は、いったん修理処理を終了する。制御部10は、次回修理作業及び発注準備を知らせるメッセージを含む終了画面を保守端末装置2へ送信し(ステップS121)、処理を終了する。
【0074】
ステップS119で不要と判断された場合(S119:NO)、制御部10は、修理は完了したとして、修理手配データを記憶部11から削除する(ステップS122)。制御部10は、次回修理作業及び発注準備を知らせるメッセージを含む終了画面を保守端末装置2へ送信し(S121)、処理を終了する。
【0075】
ステップS119で必要と判断された場合、手配された交換用部材等と共に再度現地に赴いた保守作業者の操作によって、図5のシーケンスが開始される。
【0076】
保守端末装置2は、終了画面を受信し(ステップS208)、保守支援装置1との通信接続を切断し(ステップS209)、処理を終了する。
【0077】
図6及び図7は、保守端末装置2にて表示される修理支援画面240の内容例を示す。図6に示すように修理支援画面240は、修理手順を示すメッセージを含む。図6の修理支援画面240には、保守用通信機器6におけるエラーが表示されているか否かの確認を促すメッセージが表示されている。修理支援画面240には、表示されているか否かの選択を受け付けるインタフェース241が表示されている。保守作業者がいずれかのインタフェース241を操作部25によって選択すると、操作結果が保守支援装置1へ送信される(S207)。保守支援装置1は、操作結果に応じて原因を更に絞り込み、次の修理手順を特定する(S114)。
【0078】
図7は、次の修理手順を含む修理支援画面240の一例を示す。図6の修理支援画面240は、図6に示した修理支援画面240にてインタフェース241が選択された場合に表示される。図7の修理支援画面240は、図6の修理支援画面240にて、エラー表示なしのインタフェース241が選択された場合の手順を示す。図7の修理支援画面240は、保守用通信機器6を介して蓄電素子50の測定データを取得し、その結果を入力する欄を含む。
【0079】
図8は、修理フローの内容例を示す図である。記憶部11は、図8に示すように、絞り込まれた原因毎に、修理フローを記憶する。図8は、「直流地絡」「温度上昇」「電圧異常」「抵抗異常」夫々の原因に応じて記憶されている修理フローの内容例を示す。図5に示した処理手順において、保守支援装置1の制御部10は、原因が例えば「直流地絡」であると絞り込まれている場合、図8の「直流地絡」の原因の識別情報に対応付けられている修理フローを読み出す(S113)。
【0080】
「直流地絡」の場合、制御部10は、以下に示すような修理支援画面240を出力する。図9及び図10は、修理支援画面240の他の内容例を示す。修理支援画面240は、「目視で外観を観察してください」という確認を促すメッセージと共に、「液漏れはありますか?/はい/いいえ」と選択を受け付けるインタフェース241を含む。「はい」が選択された場合、修理支援画面240には、「液漏れしている蓄電素子を交換してください」という指示メッセージが出力される。「いいえ」が選択された場合、図9の修理支援画面240は、図10に示す修理支援画面240に遷移する。図10の修理支援画面240には、「白色結晶はありますか?/はい/いいえ」と選択を受け付けるインタフェース241が表示される。制御部10は、修理作業が完了したと判断されるまで、修理フローの手順を読み出して出力する処理を繰り返す。制御部10は、修理フローで夫々の選択肢に応じた「交換」「経過観察」又は「継続使用」といった指示にたどり着いた場合、修理作業が完了したと判断する。
【0081】
このように、保守端末装置2は、絞り込まれた原因に応じて予め最善として記憶されている修理フローに基づく修理手順を、保守支援装置1の処理に基づいて表示する。これにより、熟練者であるか否かによらない修理作業が実施される。迅速に修理作業が進行し、必要な工具等も自動的に手配されるので、修理の効率化も期待される。
【0082】
(変形例1)
上述した実施形態の保守支援装置1に記憶されている修理フローでは、制御部10は、異常又は異常の予兆の原因の特定に至らない場合も考えられる。このため、変形例1の保守支援システム100は、熟練者の支援が可能な構成とすることによって、稀なケースなどのために、蓄電素子50についての熟練者の知見を広く活かすことができる。例えば、図5のシーケンスで示した処理手順の内、ステップS114で修理手順が特定できない場合が想定される。この場合、保守支援装置1の制御部10は、処理をステップS120へ進め、熟練者のスケジュール確保を含めて次回の修理作業の手配を実行する。手配は、保守支援装置1の制御部10による、熟練者のランクが付与されている保守作業者への電子メール又はメッセージの通知を含む。手配は、制御部10が保守作業者の管理者への通知を含む。この場合、管理者が、熟練者及び非熟練者の保守作業者を現地等へ割り振る。
【0083】
図11は、変形例1における保守支援システム100による修理シーケンスを示す。図11に示す処理手順は、熟練者が遠隔にてサポートできる日時に実施される修理作業の手順を示す。図11に示す手順の内、図5に示した処理手順と共通する手順については、同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0084】
保守支援装置1は、修理支援画面の要求を受信する(S111)。制御部10は、修理手配データを読み出すと(S112)、熟練者が用いる保守端末装置2とも通信接続する(ステップS121)。制御部10は、修理対象の蓄電素子50の識別データを含む修理手配データ及び既に実施した修理ログを熟練者の保守端末装置2へ送信する(ステップS122)。
【0085】
保守支援装置1の制御部10は、修理作業を実際に行なう保守作業者の保守端末装置2と、熟練者の保守端末装置2との間で相互にビデオ通話又はチャット等に必要な通信データを双方へ送信する(ステップS123)。ビデオ通話又はチャットは、保守支援システム100内、即ち保守端末用プログラム2Pに含まれる機能で実現されてもよい。ビデオ通話又はチャットは、保守支援システム100外のサービスで実現されてもよい。
【0086】
熟練者の保守端末装置2は、修理手配データ及び修理ログを受信する(ステップS221)。保守端末装置2の制御部20は、修理手配データに含まれる蓄電素子50の識別データに基づいて遠隔監視システム300から状態データの履歴を取得する(ステップS222)。
【0087】
熟練者の保守端末装置2と、修理作業をする保守作業者の保守端末装置2とは夫々、保守支援装置1から送信された通信データを受信する(ステップS213、S223)。これらの保守端末装置2は相互に通信接続する(ステップS214、S224)。
【0088】
熟練者の保守端末装置2の制御部20は、ステップS222で取得した状態データ及びステップS221で受信した修理手配データ及び修理ログを表示部24に表示する(ステップS225)。制御部20は、操作する熟練者と、保守作業者との間のやり取りに応じて指示操作を受け付け、送信する(ステップS226)。終了操作がされると、制御部20は通信接続を切断し(ステップS227)、処理を終了する。
【0089】
保守作業者の保守端末装置2の制御部20は、指示を受信すると表示部24等により出力し(ステップS215)、修理作業のログを記憶する(ステップS216)。熟練者とのやり取りの上で修理作業が終了し、保守作業者による終了操作がされる。制御部20は、修理ログを保守支援装置1へ送信した後、保守支援装置1及び熟練者の保守端末装置2との通信接続を切断し(ステップS217)、処理を終了する。
【0090】
保守支援装置1は、保守端末装置2間でのやり取りによって修理作業が完了したか否かを判断する(ステップS124)。完了していないと判断された場合(S124:NO)、保守支援装置1は、処理をステップS124へ戻して待機する。保守支援装置1はステップS124において、修理作業をする保守作業者の保守端末装置2からの通知によって修理作業の完了を判断する。保守支援装置1は、他の方法によって修理作業の完了を判断してもよい。
【0091】
ステップS124で完了したと判断された場合(S124:YES)、保守支援装置1は、修理作業をする保守作業者の保守端末装置2から修理ログを受信し(ステップS125)、処理を終了する。
【0092】
このように、熟練者の遠隔からのサポートも円滑に行なわれることで、保守作業者が熟練者であるか否かによらない均質な修理作業が実施される。
【0093】
(変形例2)
上述した実施形態では、保守支援装置1は、検知した異常又は異常の予兆を、図4のフローチャートのステップS103で説明したように、状態データに含まれる測定値が正常とされる範囲の上限よりも高いか、下限よりも低いかの判別に基づいて絞り込んだ。この絞り込みは、深層学習を含む機械学習によって実現されてもよい。
【0094】
上述した実施形態では、保守支援装置1は、記憶部11に記憶した修理フローに基づいて次に実行すべき修理手順を特定した。保守支援装置1は、熟練者による修理手順を学習した修理手順モデルを作成し、この修理手順モデルに基づいて次の修理手順を特定し、保守端末装置2へ送信してもよい。
【0095】
図12は、変形例2における保守支援装置1の構成を示すブロック図である。変形例2の保守支援装置1は、修理フローに代替して、学習モデル11M及び修理手順モデル12Mを記憶部11に記憶する。
【0096】
学習モデル11Mは、異常又は異常の予兆が検知された蓄電素子50の原因特定に用いられる。学習モデル11Mは例えば、ニューラルネットワークを用い、異常が検知された状態データを入力した場合に、原因の識別情報を確度と共に出力するように学習される。学習モデル11Mは、原因が特定済みの状態データを用いて学習されるとよい。
【0097】
修理手順モデル12Mは、LSTM(Long Short-Term Memory)モデル、RNN(Recurrent Neural Network)モデルに基づき作成される。修理手順モデル12Mは、特定された原因を第1に入力した後、対処した手順を入力する都度に、次に実施すべき修理手順を対話形式で出力するように学習されるとよい。修理手順モデル12Mは、原因が特定されて修理が完了した修理ログ、特に熟練者による修理ログを用いて学習されるとよい。
【0098】
このように、保守支援装置1は、深層学習を適用した学習モデル11Mを用いることによって、過去の修理の実績を活かして精度よく原因を推定できる。また、保守支援装置1が修理手順モデル12Mを用いて修理手順を提示することによって、作業者が熟練者であるか否かによらない均質な修理作業が実施される。
【0099】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0100】
100 保守支援システム
1 保守支援装置
10 制御部
11 記憶部
1P 保守支援プログラム
2 保守端末装置
20 制御部
21 記憶部
2P 保守端末用プログラム
300 遠隔監視システム
400 顧客データ管理システム
6 保守用通信機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12