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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ワークの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 35/04 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
B29C35/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018027259
(22)【出願日】2018-02-19
(65)【公開番号】P2019142065
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392035352
【氏名又は名称】株式会社豊電子工業
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠介
(72)【発明者】
【氏名】作井 孝至
(72)【発明者】
【氏名】長 伸朗
(72)【発明者】
【氏名】今村 幸伯
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/078450(WO,A1)
【文献】特開2008-213265(JP,A)
【文献】特開平04-265735(JP,A)
【文献】実開平02-017313(JP,U)
【文献】特表2010-535648(JP,A)
【文献】特開2013-50550(JP,A)
【文献】特開2016-16526(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第1521037(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/00-35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置を用いた加熱工程であって、平面部を含む樹脂製ワークを筐体の内部空間に配置した後、過熱水蒸気を、前記筐体の内部空間に配置された複数のノズルから供給して、前記樹脂製ワークを加熱する前記加熱工程を含むワークの製造方法であって、
前記加熱工程では、前記複数のノズルの軸が、前記平面部の法線に対して、前記平面部の平面に沿う一方向に傾斜するように、前記複数のノズルが配置された状態において、前記過熱水蒸気を前記複数のノズルから前記樹脂製ワークに吹き付けて、前記筐体の内部空間に配置された前記樹脂製ワークを加熱し、
前記装置は、前記筐体と、前記複数のノズルと、を備え、
前記樹脂製ワークは、一方及び他方の主面を含む平板状体であり、
前記複数のノズルは、複数の第1のノズルと、複数の第2のノズルとを含み、
前記加熱工程では、前記平板状体の前記一方の主面において、前記複数の第1のノズルの軸が、前記一方の主面の法線に対して、前記一方の主面に沿う一方向に傾斜するように、前記複数の第1のノズルが配置され、
前記平板状体の前記他方の主面において、前記複数の第2のノズルの軸が、前記他方の主面の法線に対して、前記一方の主面に沿う一方向と逆方向に傾斜するように、前記複数の第2のノズルが配置され、
前記装置は、前記過熱水蒸気を排気する排気口をさらに備え、
前記排気口は、前記樹脂製ワークよりも前記過熱水蒸気の下流側、かつ、前記平板状体の前記一方の主面に沿う方向に設けられ
前記装置は、遮蔽部材をさらに備え、
前記遮蔽部材は、前記樹脂製ワークの両端に設けられており、前記過熱水蒸気を遮蔽し、
前記装置は、前記筐体の内部空間を上部空間と下部空間とに分け、前記上部空間と前記下部空間との貫通孔を有するフレームをさらに備え、
前記遮蔽部材は、前記樹脂製ワークの両端で前記上部空間と前記下部空間とを遮蔽する、
ワークの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気を金属製ワークに供給して、当該金属製ワークを加熱する加熱装置がある。このような加熱装置の一例が、特許文献1に開示されている。また、このような加熱装置を用いて、金属製ワークを加熱する工程を含む製品の製造方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-075466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような加熱装置は、ノズルを用いて過熱水蒸気を金属製ワークに対して吹き付けることによって、過熱水蒸気をワークに供給する。当該金属製ワークにおいて過熱水蒸気が吹き付けられる面と、ノズルの軸とは、略垂直に交差する。この理由の一つとして、過熱水蒸気が当該金属製ワークの所定の部位に当たり、熱が過熱水蒸気からその部位に伝達することから、さらにその部位から他の部位に速やかに伝導するため、当該金属製ワークを均一に加熱することができることが挙げられる。
【0005】
ところで、このような加熱装置は、平面部を有する樹脂製ワークを加熱する場合にも利用されることがある。このような場合、樹脂製ワークが金属製ワークと比較して熱伝導しにくいことから、上記した金属製ワークを加熱する場合と異なり、熱が速やかに伝導しない。そのため、樹脂製ワークの各部位の温度が不均一になる傾向にある。
【0006】
また、本出願の発明者等は、ノズルを増設することを想起したが、単にノズルを増設した場合、コストが増大する。
【0007】
本発明は、樹脂製ワークを均一に加熱するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るワークの製造方法は、
過熱水蒸気を複数のノズルから供給して、平面部を含む樹脂製ワークを加熱する加熱工程を含むワークの製造方法であって、
前記加熱工程では、前記複数のノズルの軸が、前記平面部の法線に対して、前記平面部の平面に沿う一方向に傾斜するように、前記複数のノズルが配置された状態において、前記過熱水蒸気を前記複数のノズルから前記樹脂製ワークに吹き付けて、前記樹脂製ワークを加熱する。
このような構成によれば、複数のノズルから吹き付けられた過熱水蒸気が、樹脂製ワークの平面部の平面に沿って均一に流れる。そのため、熱を過熱水蒸気から樹脂製ワークの平面部に速やかに伝達させる。また、次々と新しい過熱水蒸気を供給するため、熱を伝達した当該過熱水蒸気を樹脂製ワークの平面部から速やかに排出させる。したがって、樹脂製ワークを均一に加熱することができる。また、ノズルの増設の必要性が減少するため、ノズルの増設によるコストの増大を抑制することができる。
【0009】
また、前記樹脂製ワークは、一方及び他方の主面を含む平板状体であり、
前記複数のノズルは、複数の第1のノズル(例えば、ノズル3a)と、複数の第2のノズル(例えば、ノズル4a)とを含み、
前記加熱工程では、前記平板状体の前記一方の主面において、前記複数の第1のノズルの軸が、前記一方の主面の法線に対して、前記一方の主面に沿う一方向に傾斜するように、前記複数の第1のノズルが配置され、
前記平板状体の前記他方の主面において、前記複数の第2のノズルの軸が、前記他方の主面の法線に対して、前記一方の主面に沿う一方向と逆方向に傾斜するように、前記複数の第2のノズルが配置されることを特徴としてもよい。
このような構成によれば、過熱水蒸気を第1及び第2のノズルから樹脂製ワークの両面にそれぞれ相互に逆方向に吹き付けるため、過熱水蒸気が樹脂製ワークの両面において相互に逆方向に流れる。そのため、樹脂製ワークの両面において過熱水蒸気がそれぞれ循環する。また、熱を過熱水蒸気から樹脂製ワークの両面に伝導させる。そのため、樹脂製ワークをさらに均一に加熱することができる。また、ノズルの増設によるコストの増大をさらに抑制することができる。
【0010】
また、前記過熱水蒸気を排気する排気手段(例えば、排気口53、54)をさらに備え、
前記排気手段は、前記樹脂製ワークよりも前記過熱水蒸気の下流側に設けられていることを特徴としてもよい。
このような構成によれば、排気手段によって、樹脂製ワークに沿って流れた過熱水蒸気を排気するため、次々と新しい過熱水蒸気を樹脂製ワークに吹き付けることができる。そのため、次々と新しい過熱水蒸気が樹脂製ワークに沿って流れることによって、熱が過熱水蒸気から樹脂製ワークへ与えることができる。そのため、樹脂製ワークを速やかに加熱することができる。
【0011】
また、遮蔽部材をさらに備え、
前記遮蔽部材は、前記樹脂製ワークの両端に設けられており、前記過熱水蒸気を遮蔽することを特徴としてもよい。
このような構成によれば、遮蔽部材が過熱水蒸気を遮蔽することによって、排気手段が過熱水蒸気をさらに排気しやすくなる。そのため、次々と新しい過熱水蒸気が樹脂製ワークに沿って流れることによって、熱が過熱水蒸気から樹脂製ワークへ与えることができる。そのため、樹脂製ワークをさらに速やかに加熱することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、樹脂製ワークを均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係るワーク加熱装置の斜視図である。
図2】実施の形態1に係るワーク加熱装置の断面図である。
図3】実施の形態1に係るワーク加熱装置の断面図である。
図4】実施の形態2に係るワーク加熱装置の断面図である。
図5】実施の形態2に係るワーク加熱装置の断面図である。
図6】実施の形態1に係るワーク加熱装置の一変形例の断面図である。
図7】流速の解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。図1図7では、3次元xyz座標系を規定した。
【0015】
(実施の形態1)
図1図3を参照して実施の形態1について説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、ワーク加熱装置10は、筐体1と、フレーム2と、ノズル3aとを備える。
【0017】
筐体1は、樹脂製ワークW1を収容することができる内部空間を有する筐体本体1aと、開閉可能な扉1bとを備える。筐体本体1aの内部空間には、フレーム2とノズル3aとを設けられている。図1に示す筐体1の一例は、略直方体であるが、これに限定されず、筐体1は、多種多様な形状を有する。
【0018】
樹脂製ワークW1は、樹脂材料、又は繊維強化複合材料を含む。樹脂材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。繊維強化複合材料として、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等が挙げられる。樹脂製ワークW1は、所定の大きさの平面を有する平面部を備える形状であればよく、例えば、板形状や、板状部と当該板状部に機械的に接続する厚肉部とを備える形状である。図1及び図2に示す樹脂製ワークW1は、一方の主面W1aと、他方の主面W1bとを含む平板状体であり、一方及び他方の主面W1a、W1bとは、上記した平面部の平面に相当する。樹脂製ワークW1を加熱し、必要に応じて加工を加えることによって、多種多様な樹脂製部材を形成することができる。このような樹脂製部材として、例えば、ルーフ等のパネル部材、インパクトビーム、ドアインナやラゲッジインナ等のボディ部材など、車両に搭載される部材が挙げられる。
【0019】
フレーム2は、筐体1の内部空間に配置され、その配置箇所は筐体1の内部空間の中央近傍に配置される。フレーム2は、樹脂製ワークW1を支持する。図2及び図3に示すフレーム2の一例は、2本の棒状体であるが、フレーム2は、他に梯子状、網状、テープ状等の多種多様な形状を採り得る。
【0020】
ノズル3aは、過熱水蒸気を所定の方向に吹き付ける。ノズル3aは、フレーム(図示略)や管3等を介して、筐体1の内部空間におけるフレーム2の上方に、複数配置されている。複数のノズル3aの軸が、樹脂製ワークW1の平面部の法線に対して、平面部の平面に沿う一方向に傾斜するように、複数のノズル3aが配置されている。ノズル3aの軸と、ノズル3aから過熱水蒸気を吹き付けられた樹脂製ワークW1の平面とが交差する吹き付け角度αは、0(零)°越え90°未満の範囲内にある。吹き付けられた過熱水蒸気は、樹脂製ワークW1の表面に当たり、所定の方向に流れる。
【0021】
図2及び図3に示すノズル3aの一例は、過熱水蒸気が過熱水蒸気タンク3bから供給される管3に設けられている。複数の管3は、フレーム2から所定の間隔を空けて、過熱水蒸気を吹き付ける方向、言い換えると、扉1b側(ここでは、X軸マイナス側)に並んで配置されている。複数のノズル3aの軸が、樹脂製ワークW1の主面W1aの法線に対して、主面W1aに沿う一方向である扉1b側に傾斜するように、複数のノズル3aが配置されている。管3の軸は、樹脂製ワークW1の主面W1aと略平行な方向に延びる。ノズル3aの一例は、管3の軸方向に沿って複数配列されている。また、ノズル3aの過熱水蒸気の吹き出し口の形状は、特に限定されないが、多種多様な形状を備える。当該形状は、例えば、孔形状、略円状、略多角形状、又はスリット形状である。また、各ノズル3aの過熱水蒸気の吹き付け角度α、及び流量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
ここで、ワーク加熱装置10を用いて樹脂製ワークW1を加熱する加熱工程について説明する。ワーク加熱装置10の扉1bを開き、樹脂製ワークW1をフレーム2に配置した後、扉1bを閉める。複数のノズル3aの軸が、樹脂製ワークW1の平面部の法線に対して、平面部の主面W1aに沿う一方向である扉1b側に傾斜するように、複数のノズル3aが配置されている。この状態において、過熱水蒸気を複数のノズル3aから樹脂製ワークW1に吹き付ける。すると、吹き付けられた過熱水蒸気が、樹脂製ワークW1の主面W1aに当たって、樹脂製ワークW1の主面W1aに沿って、扉1b側へ均一に流れる。熱が、この流れた過熱水蒸気から、当該過熱水蒸気が接する樹脂製ワークW1の主面W1aの各部位に速やかに伝達する。次々と新しい過熱水蒸気をノズル3aから供給するため、熱を伝達した当該過熱水蒸気を樹脂製ワークW1の主面W1aから速やかに排出させる。そのため、主面W1aに対するノズル3aの面積当たりの設置本数を増やさなくても、樹脂製ワークW1を均一に加熱することができる。従って、ノズル3aの増設によるコストの増大を抑制することができる。また、本加熱工程は、例えば、樹脂製部材の製造方法の一工程として利用することができる。
【0023】
(実施の形態2)
図4、5を参照して、実施の形態2について説明する。
【0024】
図4及び図5に示すように、ワーク加熱装置20は、ノズル4aと、排気口53、54と、遮蔽板63、64とをさらに備えるところを除いて、ワーク加熱装置10(図1図3参照)と同じ構成を備える。
【0025】
ノズル4aは、ノズル3aと同様の構成を備え、過熱水蒸気を所定の方向に吹き付ける。ノズル4aは、フレーム(図示略)や管4等を介して、筐体1の内部空間におけるフレーム2の下方に、複数配置されている。樹脂製ワークW1の他方の主面W1bにおいて、複数のノズル4aの軸が、他方の主面W1bの法線に対して、一方の主面W1aに沿う一方向と逆方向(ここでは、X軸プラス側)に傾斜するように、複数のノズル4aが配置される。ノズル3aとノズル4aとは、フレーム2、及び、フレーム2に支持される樹脂製ワークW1を挟む。複数のノズル4aは、ノズル3aが過熱水蒸気を吹き付ける方向と逆方向(ここでは、X軸方向プラス側)に吹き付ける。ノズル4aの軸と、ノズル4aから過熱水蒸気を吹き付けられた主面W1bとが交差する吹き付け角度βは、0(零)°越え90°未満の範囲内にある。ノズル4aが吹き付けた過熱水蒸気は、樹脂製ワークW1の表面に当たり、ノズル3aが吹き付けた過熱水蒸気と逆の方向に流れる。
【0026】
図4及び図5に示すノズル4aの一例は、過熱水蒸気が過熱水蒸気タンク3bから供給される管4に設けられている。複数の管4は、フレーム2から所定の間隔を空けて、過熱水蒸気を吹き付ける方向(ここでは、X軸プラス側)に並んで配置されている。管4の軸は、樹脂製ワークW1の他方の主面W1bと略平行な方向(ここでは、Y軸方向)に延びる。ノズル4aの一例は、管4の軸方向に沿って複数配列されている。
【0027】
排気口53は、ノズル3aから供給される過熱水蒸気の下流側に設けられ、排気口54は、ノズル4aから供給される過熱水蒸気の下流側に設けられている。排気口53、54は、過熱水蒸気をワーク加熱装置20の内部空間からワーク加熱装置20の外側に排出することができる。
【0028】
遮蔽板64は、フレーム2と排気口54との間における筐体本体1aに設けられている。遮蔽板63は、フレーム2と排気口53との間における扉1bに設けられている。言い換えると、遮蔽板63、64は、樹脂製ワークW1の両端にそれぞれ設けられている。樹脂製ワークW1の一端と、遮蔽板63との隙間は、樹脂製ワークW1が過熱水蒸気によって熱膨張しても、遮蔽板63と機械的に干渉せず、かつ、必要な過熱水蒸気の遮蔽性能を確保できる大きさを有するとよい。同様に、樹脂製ワークW1の一端と、遮蔽板64との隙間は、樹脂製ワークW1が過熱水蒸気によって熱膨張しても、遮蔽板64と機械的に干渉せず、かつ、必要な過熱水蒸気の遮蔽性能を確保できる大きさを有するとよい。図4、5に示す遮蔽板63の一例は、ノズル3aから供給される過熱水蒸気を遮蔽し、当該過熱水蒸気が、筐体本体1aの内部空間における主面W1b側へ侵入することを抑制する。そのため、当該過熱水蒸気が、排気口53近傍に留まり、排気口53から筐体本体1aの外側に排気されやすくなる。同様に、図4、5に示す遮蔽板64の一例は、ノズル4aから供給される過熱水蒸気を遮蔽し、当該過熱水蒸気が、筐体本体1aの内部空間における主面W1a側へ侵入することを抑制する。そのため、当該過熱水蒸気が、排気口54近傍に留まり、排気口54から筐体本体1aの外側に排気されやすくなる。
【0029】
ここで、ワーク加熱装置20を用いて樹脂製ワークW1を加熱する加熱工程について説明する。ワーク加熱装置20の扉1bを開き、樹脂製ワークW1をフレーム2に配置した後、扉1bを閉める。複数のノズル4aの軸が、樹脂製ワークW1の平面部の法線に対して、平面部の主面W1bに沿う一方向に傾斜するように、複数のノズル4aが、複数のノズル4aと同様に配置されている。この状態において、過熱水蒸気を複数のノズル3a、4aから樹脂製ワークW1に吹き付ける。すると、吹き付けられた過熱水蒸気が、樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bに当たって、樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bに沿って、均一に流れる。熱が、この流れた過熱水蒸気から、当該過熱水蒸気が接する樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bの各部位に伝達する。この流れによって、熱が、当該過熱水蒸気から、当該過熱水蒸気が次々接する樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bの各部位に伝達する。そのため、主面W1a、W1bのそれぞれに対するノズル3a、4aの面積当たりの設置本数を増やさなくても、樹脂製ワークW1を均一に加熱し得る。従って、ノズル3a、4aの増設によるコストの増大を抑制することができる。
【0030】
また、本加熱工程では、過熱水蒸気をノズル3a、4aから樹脂製ワークW1の両面、つまり主面W1a、W1bにそれぞれ吹き付ける。そのため、過熱水蒸気が樹脂製ワークW1の主面W1a、W1bにおいて相互に逆方向に流れる。そのため、樹脂製ワークW1の主面W1a、W1bにおいて過熱水蒸気がそれぞれ循環する。また、熱を過熱水蒸気から樹脂製ワークW1の主面W1a、W1bに伝導させる。そのため、樹脂製ワークW1をさらに均一に加熱することができる。また、ノズル3a、4aの増設によるコストの増大をさらに抑制することができる。
【0031】
また、本加熱工程では、排気口53、54が、樹脂製ワークW1に沿って流れた過熱水蒸気を、ワーク加熱装置20の外側に排気する。そのため、次々と新しい過熱水蒸気を樹脂製ワークW1に吹き付けることができる。これによって、次々と新しい過熱水蒸気が樹脂製ワークW1に沿って流れることによって、熱が過熱水蒸気から樹脂製ワークW1へ与えることができる。そのため、樹脂製ワークW1を速やかに加熱することができる。
【0032】
また、本加熱工程では、過熱水蒸気が、排気口53近傍から、筐体本体1aにおける樹脂製ワークW1の主面W1b側に向かって流れても、遮蔽板63が、この過熱水蒸気を遮蔽する。そのため、排気口53が過熱水蒸気をさらに排気しやすくなる。そのため、次々と新しい過熱水蒸気が樹脂製ワークW1の主面W1aに沿って流れることによって、熱が過熱水蒸気から樹脂製ワークW1へ与えることができる。同様に、過熱水蒸気が、排気口54近傍から、筐体本体1aにおける樹脂製ワークW1の主面W1a側に向かって流れても、遮蔽板64が、この過熱水蒸気を遮蔽する。そのため、排気口54が過熱水蒸気をさらに排気しやすくなる。そのため、次々と新しい過熱水蒸気が樹脂製ワークW1の主面W1bに沿って流れることによって、熱が過熱水蒸気から樹脂製ワークW1へ与えることができる。そのため、樹脂製ワークW1をさらに速やかに加熱することができる。
【0033】
(実施の形態1の一変形例)
図6を参照して、実施の形態1の一変形例について説明する。
【0034】
図6に示すように、ワーク加熱装置30は、ノズル41aと、排気口53、541と、遮蔽板63、641とを除いて、ワーク加熱装置10(図1図3参照)と同じ構成を備える。
【0035】
ワーク加熱装置30は、ノズル41aと、排気口53、541と、遮蔽板63、641とを備える。ノズル41aは、ノズル4a(図4及び図5参照)と同様の構成を備え、ノズル4aと異なる向きに配置されている。樹脂製ワークW1の他方の主面W1bにおいて、複数のノズル41aの軸が、他方の主面W1bの法線に対して、一方の主面W1aに沿う一方向と同じ方向(ここでは、X軸マイナス側)に傾斜するように、複数のノズル41aが配置される。ノズル3aとノズル41aとは、フレーム2、及び、フレーム2に支持される樹脂製ワークW1を挟む。複数のノズル41aは、ノズル3aが過熱水蒸気を吹き付ける方向と同じ方向(ここでは、X軸方向マイナス側)に吹き付ける。ノズル41aの軸と、ノズル41aから過熱水蒸気を吹き付けられた主面W1bとが交差する吹き付け角度βは、0(零)°越え90°未満の範囲内にある。ノズル41aが吹き付けた過熱水蒸気は、樹脂製ワークW1の主面W1bに当たり、ノズル3aが吹き付けた過熱水蒸気と同じ方向に流れる。図6に示すノズル41aの一例は、ノズル4aの一例と同様の構成を有する。
【0036】
排気口541は、ノズル41aから供給される過熱水蒸気の下流側に設けられている。排気口541は、過熱水蒸気をワーク加熱装置30の内側空間から外側に排出することができる。
【0037】
遮蔽板641は、フレーム2と排気口541との間における扉1bに設けられている。遮蔽板641は、樹脂製ワークW1の一端に設けられている。樹脂製ワークW1の一端と、遮蔽板641との隙間は、樹脂製ワークW1が過熱水蒸気によって熱膨張しても、遮蔽板641と機械的に干渉せず、かつ、必要な過熱水蒸気の遮蔽性能を確保できる大きさを有するとよい。図6に示す遮蔽板641の一例は、ノズル41aから供給される過熱水蒸気を遮蔽し、当該過熱水蒸気が、筐体本体1aの内部空間における主面W1a側へ侵入することを抑制する。そのため、当該過熱水蒸気が、排気口541近傍に留まり、排気口541から筐体本体1aの外側に排気されやすくなる。
【0038】
ここで、ワーク加熱装置30を用いて樹脂製ワークW1を加熱する加熱工程について説明する。ワーク加熱装置30の扉1bを開き、樹脂製ワークW1をフレーム2に配置した後、扉1bを閉める。複数のノズル41aの軸が、樹脂製ワークW1の平面部の法線に対して、平面部の主面W1bに沿う一方向に傾斜するように、複数のノズル41aが、複数のノズル3aと同様に配置されている。この状態において、過熱水蒸気を複数のノズル3a、41aから樹脂製ワークW1に吹き付ける。すると、吹き付けられた過熱水蒸気が、樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bに当たって、樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bに沿って、均一に流れる。熱が、この流れた過熱水蒸気から、当該過熱水蒸気が接する樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bの各部位に伝達する。この流れによって、熱が、当該過熱水蒸気から、当該過熱水蒸気が次々接する樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bの各部位に伝達する。そのため、主面W1a、W1bのそれぞれに対するノズル3a、41aの面積当たりの設置本数を増やさなくても、樹脂製ワークW1を均一に加熱し得る。従って、ノズル3a、41aの増設によるコストの増大を抑制することができる。
【0039】
また、本加熱工程では、過熱水蒸気をノズル3a、41aから樹脂製ワークW1の両面、つまり主面W1a、W1bにそれぞれ吹き付ける。そのため、過熱水蒸気が樹脂製ワークW1の主面W1a、W1bにおいて同じ方向に流れる。熱を過熱水蒸気から樹脂製ワークW1の主面W1a、W1bに伝導させる。そのため、樹脂製ワークW1をさらに均一に加熱することができる。また、ノズル3a、41aの増設によるコストの増大をさらに抑制することができる。
【0040】
(解析例)
次に、図7を参照して、実施の形態2に係るワーク加熱装置20の一具体例について、過熱水蒸気の流速を解析した解析結果について説明する。
【0041】
実施の形態2に係るワーク加熱装置20の一具体例を用いて、樹脂製ワークW1の一具体例を加熱した場合の、ワーク加熱装置20の筐体本体1aの内部空間における過熱水蒸気の流速を解析した。その解析結果の一具体例を図7に示した。なお、図7では、管3、4、樹脂製ワークW1、フレーム2の一部2aに相当する構成をそれぞれ図示したが、排気口53、54と、遮蔽板63、64とに相当する構成の図示を省略した。また、便宜的に、図7に図示した構成には、ワーク加熱装置20の各構成に相当する付番を記載し、以下の説明においても、相当する付番を付して説明する。
【0042】
図7に示すように、樹脂製ワークW1の部位に応じて、大きな流速の差を確認することができない。流速は、樹脂製ワークW1の近傍において均一と考えられる。そのため、熱が、この流れた過熱水蒸気から、当該過熱水蒸気が接する樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bの各部位に伝達し、熱が、当該過熱水蒸気から、当該過熱水蒸気が次々接する樹脂製ワークW1の主面W1a、及びW1bの各部位に伝達すると考えられる。
【0043】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態2に係るワーク加熱装置20(図4及び図5参照。)は、排気口53、54を備えたが、過熱水蒸気を排気する技術的な排気手段を備えてもよい。このような排気手段としては、ダクト、ファン、バルブ等が挙げられる。また、ワーク加熱装置20は、遮蔽板63、64を備えたが、平板状以外の多種多様な形状を有する遮蔽部材を備えてもよい。このような遮蔽部材の形状として、曲面板や、一部に曲面形状やフィン形状を備える平板状体等が挙げられる。また、ワーク加熱装置10(図1~3参照)は、適宜、排気口53と遮蔽板63とをさらに備えてもよい。


【符号の説明】
【0044】
10、20、30 ワーク加熱装置
1 筐体
1a 筐体本体 1b 扉
2 フレーム
3 管 3a ノズル
3b 過熱水蒸気タンク
4 管 4a、41a ノズル
5、53、54、541 排気口 63、64、641 遮蔽板
W1 樹脂製ワーク
W1a、W1b 主面
α、β 吹き付け角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7