(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】フィルムシート体による包装方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/03 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
B65D81/03
(21)【出願番号】P 2018027681
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502431009
【氏名又は名称】株式会社カクワ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 慶一
(72)【発明者】
【氏名】衣川 綾
(72)【発明者】
【氏名】角 泰孝
【審査官】永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-141460(JP,A)
【文献】特開2008-174256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/02-81/17
B65D 53/00-53/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱に伴い収縮する収縮性フィルム(1)と、これより熱収縮率が小さい非収縮性フィルム(2)とが積層され、接着部(3)で断続的に接着されたフィルムシート体(4)を使用し、
前記フィルムシート体(4)で物品を包み込み、前記フィルムシート体(4)を加熱して前記収縮性フィルム(1)を収縮させ、前記非収縮性フィルム(2)に波形状の段を形成して緩衝性を付与する包装方法において、
前記フィルムシート体(4)には、物品を包み込む前に予め加熱するプレヒート処理を行うことにより、前記収縮性フィルム(1)を中間段階まで収縮さ
せて、前記非収縮性フィルム(2)
は中間段階まで段
が形成された緩やかな波形状とし、
その後、物品を包み込んだ状態で前記フィルムシート体(4)を再度加熱し、前記収縮性フィルム(1)を最終段階まで収縮させる
ことにより、前記非収縮性フィルム(2)に最終段階まで段を形成
し、前記非収縮性フィルム(2)の波形状の波高が高くなるようにする本収縮処理を行うことを特徴とするフィルムシート体による包装方法。
【請求項2】
前記プレヒート処理では、前記収縮性フィルム(1)を、中間段階までの収縮として、最終段階までの収縮に対し、5割~8割収縮させることを特徴とする請求項1に記載のフィルムシート体による包装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱収縮率の異なるフィルムが積層されたフィルムシート体を熱処理して、物品包装時の緩衝材とする包装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1においては、
図6(6A)に示すように、加熱に伴い収縮する収縮性フィルム1と、これより熱収縮率が小さい非収縮性フィルム2とが積層され、接着部3で断続的に接着されたフィルムシート体4を加熱し、
図6(6B)に示すように、収縮性フィルム1を収縮させ、非収縮性フィルム2に襞状の段を形成して、フィルムシート体4を物品包装用の緩衝材とする技術が記載されている。
【0003】
このように物品を包装する場合、フィルムシート体4を予め加熱して、非収縮性フィルム2に段が形成された緩衝構造とした後、物品を包み込む方法と、フィルムシート体4で物品を包み込んだ後、フィルムシート体4を加熱して、非収縮性フィルム2に段が形成された緩衝構造とする方法とがある(下記特許文献1の段落[0075]及び下記特許文献2の[0052]参照)。
【0004】
これらの方法のうち、いずれを採用するかは、包装する物品の形状や性質によって適宜決定すればよく、物品をしっかりと締め付けるように包装する必要がある場合には、後者の方法、すなわち、物品を包み込んだ後、フィルムシート体4を加熱して緩衝構造とする方法が適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-141460号公報
【文献】特開2017-144559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、
図7に示すように、上記のようなフィルムシート体4を使用して、例えば、飲料のボトルのような物品21を包装する際、非収縮性フィルム2を物品21に接する内側とし、収縮性フィルム1を外側として、加熱に伴い収縮させると、非収縮性フィルム2に正常な波形状の段が形成されず、段が片側に倒れるような段流れや段潰れが生じ、十分な緩衝性が得られないことがあった。
【0007】
また、
図8に示すように、非収縮性フィルム2を外側とし、収縮性フィルム1を物品21に接する内側として、加熱に伴い収縮させると、収縮性フィルム1に熱が十分に伝わらず、収縮不良が生じることがあるほか、温度を高くし過ぎると、収縮性フィルム1と非収縮性フィルム2とが溶着してしまい、非収縮性フィルム2に正常な波形状の段ではなく、癒着した皺が生じ、十分な緩衝性が得られない恐れがあった。
【0008】
そこで、この発明は、非収縮性フィルムに正常な波形状の段が形成され、緩衝性に優れた包装が可能なフィルムシート体による包装方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明は、加熱に伴い収縮する収縮性フィルムと、これより熱収縮率が小さい非収縮性フィルムとが積層され、接着部で断続的に接着されたフィルムシート体を使用し、
前記フィルムシート体で物品を包み込み、前記フィルムシート体を加熱して前記収縮性フィルムを収縮させ、前記非収縮性フィルムに波形状の段を形成して緩衝性を付与する包装方法において、
前記フィルムシート体には、物品を包み込む前に予め加熱するプレヒート処理を行うことにより、前記収縮性フィルムを中間段階まで収縮させると共に、前記非収縮性フィルムに中間段階まで段を形成し、
その後、物品を包み込んだ状態で前記フィルムシート体を再度加熱し、前記収縮性フィルムを最終段階まで収縮させると共に、前記非収縮性フィルムに最終段階まで段を形成する本収縮処理を行うこととしたのである。
【0010】
また、前記プレヒート処理では、前記収縮性フィルムを、中間段階までの収縮として、最終段階までの収縮に対し、5割~8割収縮させることとしたのである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るフィルムシート体による包装方法では、プレヒート処理を行って、非収縮性フィルムに予め段を中間段階まで形成したフィルムシート体により物品を包み込むので、その後、再度加熱する本収縮処理を行うとき、非収縮性フィルムの段の形状が保持された状態で、最終段階まで段が形成される。
【0012】
このため、段流れや段潰れの発生を極力抑制して、正常な波形状の段を形成することができ、非収縮性フィルムの段の弾力により、緩衝性に優れた包装が可能となる。
【0013】
また、非収縮性フィルムを内側とし、収縮性フィルムを外側とした場合だけでなく、非収縮性フィルムを外側とし、収縮性フィルムを内側とした場合でも、収縮不良や溶着が生じにくく、正常な波形状の段を形成することができ、同様の緩衝性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明に係るフィルムシート体による段を内側にしたボトル包装方法において、(1A)プレヒート処理後の包装状態を示す斜視図及び横断平面図、(1B)本収縮処理後の包装状態を示す斜視図及び横断平面図
【
図2】同上の熱風によるプレヒート処理を示す概略側面図
【
図3】同上の熱盤によるプレヒート処理を示す概略側面図
【
図4】同上の段を外側にしたボトル包装状態を示す斜視図
【
図5】同上の段を内側にしたPIB包装状態を示す斜視図
【
図6】フィルムシート体の(6A)熱処理前の状態を示す概略側面図、(6B)熱処理後の状態を示す概略側面図
【
図7】段を内側にしたボトル包装における段流れが生じた状態を示す横断平面図
【
図8】段を外側にしたボトル包装における溶着が生じた状態を示す横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
この発明においては、
図6(A)に示すように、加熱に伴い収縮する収縮性フィルム1と、これより熱収縮率が小さい非収縮性フィルム2とが積層され、これらがその積層面において、間隔をあけて平行するように断続する線状の接着部3で接着されたフィルムシート体4を使用する。
【0017】
収縮性フィルム1及び非収縮性フィルム2としては、特に限定されず、それぞれ公知のものを使用することができ、例えば、収縮性フィルム1としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非収縮性フィルム2としては、中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)を使用する。
【0018】
接着部3において収縮性フィルム1及び非収縮性フィルム2を接着する方法としては、ドライラミネートやフィルム自体の熱融着、高周波融着、超音波融着等の公知の方法を使用することができる。
【0019】
フィルムシート体4は、巻回されたロールの状態で、物品を包装する業者に供給され、物品包装時にロールから繰り出される。
【0020】
このようなフィルムシート体4を使用して、例えば、
図1に示すように、飲料のボトルのような物品21を包装する際には、物品21を包み込む前の段階で、フィルムシート体4にプレヒート処理を行う。
【0021】
このプレヒート処理は、
図2又は
図3に示すように、フィルムシート体4を収縮性フィルム1の収縮方向の一方へ送りつつ、収縮性フィルム1側から加熱する。
【0022】
加熱方法としては、
図2に示すように、ノズル5から噴出する熱風を収縮性フィルム1側から吹き付ける方法や、
図3に示すように、熱盤6に収縮性フィルム1側を当接させる方法が考えられる。
【0023】
このようなプレヒート処理では、収縮性フィルム1を、中間段階までの収縮として、最終段階までの収縮に対し、5割~8割収縮させる。この処理に伴い、非収縮性フィルム2は、中間段階まで段が形成された緩やかな波形状となる。
図2及び
図3では、後述する本収縮処理後の非収縮性フィルム2の波形状を二点鎖線で表している。
【0024】
このプレヒート処理による収縮温度は、後述のように物品21を包み込む際における両端部の接合シール時の余裕や物品21との隙間の確保を考慮し、本収縮処理の収縮温度よりも少し低く設定して、例えば、収縮性フィルム1がPETの場合、65℃~70℃とするのがよい。他の素材であれば、異なる温度が適している可能性がある。
【0025】
その後、
図1(1A)に示すように、フィルムシート体4を円筒形に巻いて溶断すると共に、その両端部を接合シールし、物品21の外周に嵌入装着する。
図1の例では、非収縮性フィルム2を物品21に接する内側とし、収縮性フィルム1を外側としている。
【0026】
このとき、フィルムシート体4は、物品21の大径部の外径よりも巻回状態の内径が大きくなるようにし、物品21との間に隙間ができるようにする。
【0027】
そして、この状態で、フィルムシート体4を再度加熱し、収縮性フィルム1を最終段階まで収縮させると共に、非収縮性フィルム2に最終段階まで段を形成する本収縮処理を行うと、非収縮性フィルム2の波形状の波高が高くなって、その頂部が物品21に密着した状態で、フィルムシート体4により物品21の外周が締め付けられる。
【0028】
この本収縮処理は、例えば、フィルムシート体4で包み込まれた状態の物品21を、シュリンクトンネルの高温となった内部を通過させることにより行う。本収縮処理による収縮温度は、例えば、収縮性フィルム1がPETの場合、75℃~80℃とするのがよい。他の素材であれば、異なる温度が適している可能性がある。
【0029】
上記のような包装方法では、プレヒート処理を行って、非収縮性フィルム2に予め段を中間段階まで形成したフィルムシート体4により物品21を包み込むので、その後、再度加熱する本収縮処理を行うとき、非収縮性フィルム2の段の形状が保持された状態で、最終段階まで段が形成される。
【0030】
このため、段流れや段潰れの発生を極力抑制して、正常な波形状の段を形成することができ、非収縮性フィルム2の段の弾力により、緩衝性に優れた包装が可能となる。
【0031】
また、
図4に示すように、非収縮性フィルム2を外側とし、収縮性フィルム1を内側とした場合でも、収縮不良や溶着が生じにくく、正常な波形状の段を形成することができ、上述のように非収縮性フィルム2を内側とし、収縮性フィルム1を外側とした場合と同様の良好な緩衝性を得ることができる。
【0032】
ところで、上記実施形態では、フィルムシート体4でボトルのような物品21を包装する場合について例示したが、フィルムシート体4は、
図5に示すように、商品の宅配等におけるパックインボックス(PIB)の包装に使用することもできる。
【0033】
この包装形態は、例えば、積み重ねた本のような物品22を段ボールから成る台板7に載せ、プレヒート処理を行ったフィルムシート体4で物品22を台板7と共に包み込み、その後、本収縮処理を行って、物品22を台板7上に保持し、段ボール製の外箱に物品22を台板7と共に収納するものである。
【0034】
このように物品22をPIB包装すると、物品22の稜部に平行に沿う部分では、非収縮性フィルム2の段流れや段潰れが生じやすいが、物品22の稜部に直交する部分では、非収縮性フィルム2の段は形状が保持されるので、外箱を変形させるような大きな外力や衝撃が作用しても、物品22をしっかりと緩衝して保護することができる。
【0035】
そして、上記各形態のような包装方法で使用するフィルムシート体4は、プレヒート処理を行う前の状態において、非収縮性フィルム2にまだ波形状の段が形成されておらず、一般的な気泡緩衝材に比較して、極めて薄いものであることから、同一径のロールとしたとき、相当な長さを巻回することができ、物品の包装のためフィルムシート体4を購入する業者のロールの購入頻度を減らすことができる。また、フィルムシート体4のロールの保管スペースを削減することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 収縮性フィルム
2 非収縮性フィルム
3 接着部
4 フィルムシート体
5 ノズル
6 熱盤
7 台板
21,22 物品