(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】位置検出装置及び形状検出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20220802BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220802BHJP
G01B 9/02015 20220101ALI20220802BHJP
【FI】
G01B5/00 B
G01B11/00 A
G01B9/02015
(21)【出願番号】P 2018032946
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(73)【特許権者】
【識別番号】501292142
【氏名又は名称】株式会社小坂研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187626(JP,A)
【文献】特開2011-174922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 - 5/30
G01B 9/02 - 9/029
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触子及び外部物体に対する前記接触子の相対位置を変える位置調整手段を有して、前記接触子が前記外部物体に接触した接触位置を計測する位置検出装置であって、
光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から照射された光が入射し、入射した光を内部で反射させて光の干渉を生じさせる光干渉領域と、
前記光干渉領域から出た光の強度を計測する光計測手段と、
前記光計測手段が計測した光の強度を基に前記接触子の前記外部物体への接触を検知し、前記位置調整手段から前記外部物体に対する前記接触子の相対位置の情報を得て、前記接触位置を導出する演算手段とを備え、
前記光干渉領域は、前記接触子の前記外部物体への接触により変形して、光の干渉状態を変えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の位置検出装置において、前記光照射手段が照射する光はレーザ光であり、前記光干渉領域は、変形により該光干渉領域から出るレーザ光の強度を変え、前記演算手段は、前記光計測手段によって計測されたレーザ光の強度が、前記接触子が非接触状態で前記光計測手段によって計測されたレーザ光の強度と異なることから前記接触子の前記外部物体への接触を検知することを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の位置検出装置において、前記光照射手段が照射する光は多波長光であり、前記光干渉領域は、変形によって該光干渉領域から出る多波長光に含まれる各波長の光の強度を変え、前記演算手段は、前記光計測手段によって計測された特定波長Wの光の強度が、前記接触子が非接触状態で前記光計測手段によって計測される前記特定波長Wの光の強度と異なることから前記接触子の前記外部物体への接触を検知することを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の位置検出装置において、前記光干渉領域は、光の干渉が内側で生じる弾性体を有することを特徴とする位置検出装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の位置検出装置において、前記光干渉領域は、光の入射方向に間隔を空けて対向配置された対となる反射膜を有し、前記対となる反射膜間で光を反射させて光の干渉を生じさせることを特徴とする位置検出装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の位置検出装置において、前記光照射手段から照射された光を前記光干渉領域に伝える光ファイバを備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項7】
接触子及び検出対象物に対する前記接触子の相対位置を変える位置調整手段を有して、前記接触子が前記検出対象物に接触した接触位置を計測し、前記検出対象物の形状を導出する形状検出装置であって、
光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から照射された光が入射し、入射した光を内部で反射させて光の干渉を生じさせる光干渉領域と、
前記光干渉領域から出た光の強度を計測する光計測手段と、
前記光計測手段が計測した光の強度を基に前記接触子の前記検出対象物への接触を検知し、前記位置調整手段から前記検出対象物に対する前記接触子の相対位置の情報を得て、前記接触位置を導出し、複数の該接触位置から前記検出対象物の形状を検知する演算手段とを備え、
前記光干渉領域は、前記接触子の前記検出対象物への接触により変形して、光の干渉状態を変えることを特徴とする形状検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に形成された、例えば、小孔、小穴、微細突起、又は微細溝等の特定部位の座標を検知可能な位置検出装置及び特定部位の形状を導出可能な形状検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密微細加工技術の進歩に伴い、微細物の形状を測定する重要性が増加している。特に、微細金型、超精密機器、マイクロマシン等に使用するマイクロ部品、燃料噴射用や化学繊維用の各種ノズル孔、フェルール等の光通信機器、医療機器の微小径深穴、マイクロチャネル等の深溝といった微細物の形状の測定技術が加工技術向上や品質保証のために要望されている。なお、孔は貫通したものを意味し、穴は底の有るものを意味する(以下、同様)。
【0003】
例えば、微小径孔は顕微鏡による測定が行なわれているが、孔の外側からの測定では、孔内部の形状を検知できず、孔内部の真円度、真直度等について評価できない。
孔内部の形状を測定するには、孔が形成された計測対象物を切断して、孔の断面形状を顕微鏡で測定することが考えられるが、計測対象物を破壊することとなるため、計測対象物は製品として利用できなくなる等の制限がある。
【0004】
そこで、計測対象物を破壊することなく、微小径孔内の形状を測定することが求められ、その方法として、孔の内側で光を反射させ、反射光を孔の外側で検出する光学的方式(例えば、非特許文献1、2参照)が報告されている。この方式以外にも、バイブロスキャニング法のプローブを用いた方式(例えば、非特許文献3参照)、振動させたプローブの接触に伴う振幅変化を用いた加振プローブ式(例えば、非特許文献4参照)、プローブと測定対象面との接近をトンネル現象により検出する方式(例えば、非特許文献5参照)、空気圧により接触子の保持と接触の検出を行う方式(例えば、非特許文献6参照)等が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】丸山六男、外3名、「光学的方法による小穴内径測定装置の開発」、精密工学会誌、1996年1月、第62巻、1号、p145-149
【文献】秋山信幸、外5名、「微小径深穴用光学式内径測定装置の開発」、精密工学会誌、1996年4月、第62巻、4号、p584-588
【文献】山本正樹、外2名、「バイブロスキャニング法を用いた微細形状測定システムの開発」、精密工学会誌、2001年2月、第67巻、2号、p251-255
【文献】Boris、G.;Lothar、D.;Martin、H.Design and characterization of a resonant triaxial microprobe.J.Micromech.Microeng.2015,25,125011.
【文献】白石利也、外3名、「マイクロ部品の形状・寸法測定に関する研究(装置の改良ならびにプローブの校正と寸法測定結果)」、日本機械学会論文集(C編)、2002年 9月、第68巻、673号、p2783-2790
【文献】高橋潔、外5名、「吸気型ボールプローブの開発(第1報)-基本的構成-」、精密工学会誌、1998年8月、第64巻、8号、p1153-1157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、測定対象物が孔に限定され、穴等が測定できないという問題がある。
また、非特許文献2~6に記載された方法では、プローブの小径化が困難なため、例えば、内径が10μm未満の孔や穴については、内部形状を測定できないという問題がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、微小孔、微小穴の内周面の座標を検出可能な位置検出装置及び微小孔、微小穴の内周面の形状を検出可能な形状検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る位置検出装置は、接触子及び外部物体に対する前記接触子の相対位置を変える位置調整手段を有して、前記接触子が前記外部物体に接触した接触位置を計測する位置検出装置であって、光を照射する光照射手段と、前記光照射手段から照射された光が入射し、入射した光を内部で反射させて光の干渉を生じさせる光干渉領域と、前記光干渉領域から出た光の強度を計測する光計測手段と、前記光計測手段が計測した光の強度を基に前記接触子の前記外部物体への接触を検知し、前記位置調整手段から前記外部物体に対する前記接触子の相対位置の情報を得て、前記接触位置を導出する演算手段とを備え、前記光干渉領域は、前記接触子の前記外部物体への接触により変形して、光の干渉状態を変える。
【0009】
第1の発明に係る位置検出装置において、前記光照射手段が照射する光はレーザ光であり、前記光干渉領域は、変形により該光干渉領域から出るレーザ光の強度を変え、前記演算手段は、前記光計測手段によって計測されたレーザ光の強度が、前記接触子が非接触状態で前記光計測手段によって計測されたレーザ光の強度と異なることから前記接触子の前記外部物体への接触を検知するのが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る位置検出装置において、前記光照射手段が照射する光は多波長光であり、前記光干渉領域は、変形によって該光干渉領域から出る多波長光に含まれる各波長の光の強度を変え、前記演算手段は、前記光計測手段によって計測された特定波長Wの光の強度が、前記接触子が非接触状態で前記光計測手段によって計測される前記特定波長Wの光の強度と異なることから前記接触子の前記外部物体への接触を検知することができる。
【0011】
第1の発明に係る位置検出装置において、前記光干渉領域は、光の干渉が内側で生じる弾性体を有するのが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る位置検出装置において、前記光干渉領域は、光の入射方向に間隔を空けて対向配置された対となる反射膜を有し、前記対となる反射膜間で光を反射させて光の干渉を生じさせるのが好ましい。
【0013】
第1の発明に係る位置検出装置において、前記光照射手段から照射された光を前記光干渉領域に伝える光ファイバを備えるのが好ましい。
【0014】
前記目的に沿う第2の発明に係る形状検出装置は、接触子及び検出対象物に対する前記接触子の相対位置を変える位置調整手段を有して、前記接触子が前記検出対象物に接触した接触位置を計測し、前記検出対象物の形状を導出する形状検出装置であって、光を照射する光照射手段と、前記光照射手段から照射された光が入射し、入射した光を内部で反射させて光の干渉を生じさせる光干渉領域と、前記光干渉領域から出た光の強度を計測する光計測手段と、前記光計測手段が計測した光の強度を基に前記接触子の前記検出対象物への接触を検知し、前記位置調整手段から前記検出対象物に対する前記接触子の相対位置の情報を得て、前記接触位置を導出し、複数の該接触位置から前記検出対象物の形状を検知する演算手段とを備え、前記光干渉領域は、前記接触子の前記検出対象物への接触により変形して、光の干渉状態を変える。
【0015】
【0016】
【発明の効果】
【0017】
第1の発明に係る位置検出装置は、光照射手段から照射された光が入射し、入射した光を内部で反射させて光の干渉を生じさせる光干渉領域と、光干渉領域から出た光の強度を計測する光計測手段と、光計測手段が計測した光の強度を基に接触子の外部物体への接触を検知し、位置調整手段から外部物体に対する接触子の相対位置の情報を得て、接触位置を導出する演算手段を備え、光干渉領域は、接触子の外部物体への接触により変形して、光の干渉状態を変える。従って、第1の発明に係る位置検出装置は、光の干渉状態の変化を利用して接触子の外部物体への接触を検知することから接触子の微小化ができ、微小孔、微小穴の内周面の座標を検出可能である。
【0018】
第2の発明に係る形状検出装置は、光照射手段から照射された光が入射し、入射した光を内部で反射させて光の干渉を生じさせる光干渉領域と、光干渉領域から出た光の強度を計測する光計測手段と、光計測手段が計測した光の強度を基に接触子の検出対象物への接触を検知し、位置調整手段から検出対象物に対する接触子の相対位置の情報を得て、接触位置を導出し、複数の接触位置から検出対象物の形状を検知する演算手段とを備え、光干渉領域は、接触子の検出対象物への接触により変形して、光の干渉状態を変える。従って、第2の発明に係る形状検出装置は、光の干渉状態の変化を利用して接触子の外部物体への接触を検知することから接触子の微小化が図れ、微小孔、微小穴の内周面の形状を検出可能であり、微細三次元形状検出に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る位置検出装置の説明図である。
【
図2】(A)、(B)はそれぞれ外部物体に接触した様子を示す説明図である。
【
図3】弾性体のZ方向長さと光計測手段によって計測される光の強度の関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る位置検出装置の説明図である。
【
図5】波長の長さと光計測手段によって計測される個々の波長の光の強度の関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の第3の実施の形態に係る位置検出装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る位置検出装置10は、接触子11及び物体P(外部物体の一例)に対する接触子11の相対位置を変える位置調整手段12を有して、接触子11が物体Pに接触した接触位置を計測する装置であって、光を照射する光照射手段13と光の強度を計測する光計測手段14と接触位置を導出する演算手段15を備えている。以下、詳細に説明する。
【0021】
本実施の形態において、物体Pは、
図1に示すように、上方から下向きに穴が形成され底部を有し、位置調整手段12に底部が固定されている。位置調整手段12は、物体PをX、Y、Z方向に移動させて、物体Pに対する接触子11の相対位置を変えることができる。
接触子11は球状(本実施の形態では、直径が0.1~100μm)であり、光照射手段13から接触子11の間には、光ファイバ16、ファイバ結合器17、光ファイバ18、反射膜19、弾性体20、反射膜21及び光ファイバ22が順に接続されている。
【0022】
本実施の形態では、光ファイバ18の反射膜19に接続された一端側領域、反射膜19、弾性体20、反射膜21及び光ファイバ22によって、長手方向の異なる位置で径が等しい、Z方向に沿った直線形状物が形成されている。接触子11はこの直線形状物より径が大きい。なお、光ファイバの一端側領域、反射膜、弾性体、反射膜及び光ファイバによって形成される直線形状物は長手方向の異なる位置で径が異なっていても良い。
反射膜19、21は、同素材(本実施の形態では主としてAu)で形成された薄膜であり、Z方向に間隔を空けて対向配置されている。反射膜19、21の屈折率は等しく、反射膜19、21の屈折率は、光ファイバ18のコア23の屈折率、弾性体20の屈折率、光ファイバ22のコア24の屈折率とは異なっている。光ファイバ18のコア23と光ファイバ22のコア24は屈折率が等しく、仮想直線上に配されている。なお、光ファイバ22の代わりにコアの有さない光ファイバや、光を透過する光ファイバ以外のものを採用することも可能である。
【0023】
光照射手段13から照射された光は、光ファイバ16のコア、ファイバ結合器17、光ファイバ18のコア23を通って、反射膜19に到達する。反射膜19に到達した光は、反射膜19に対し直交する方向(Z方向)で反射膜19に入射する光と、反射膜19(光ファイバ18のコア23及び反射膜19の境界面)で反射され光ファイバ18のコア23をファイバ結合器17に向かって進む光とに分かれる。
反射膜19、21の屈折率と弾性体20の屈折率は異なることから、反射膜19に入射し、反射膜19を透過して弾性体20内に入射した光は、反射膜21(弾性体20及び反射膜21の境界面)で反射して反射膜19に向かう光と、反射膜21内に入射する光とに分かれる。
【0024】
反射膜19に向かった光は、反射膜19(弾性体20及び反射膜19の境界面)で反射し反射膜21に向かう光と、反射膜19に入射する光とに分かれ、反射膜21に向かった光は、一部を除き反射膜21で反射されて反射膜19に向かう。そして、反射膜19に向かった光の一部は、反射膜19を透過し、光ファイバ18のコア23をファイバ結合器17に向かって進む。このため、反射膜19、21間(弾性体20内)では、反射膜21から反射膜19に向かう複数の光が存在し、これらの光によって、光の干渉(本実施の形態では、ファブリ・ペロー型干渉)が生じる。この光の干渉状態は、反射膜19、21間の距離(弾性体20のZ方向長さ)の変化や反射膜19に対する反射膜21の角度の変化によって変わる。
【0025】
本実施の形態では、主として反射膜19、21及び弾性体20によって、光照射手段13から照射された光が入射し、入射した光を内部で反射させて光の干渉を生じさせる光干渉領域25が形成されている。よって、反射膜19、21は、光干渉領域25に入射する光の入射方向に間隔を空けて配されており、光ファイバ16、18は、光照射手段13から照射された光を光干渉領域25に伝え、光干渉領域25は、変形によって、内部で生じている光の干渉状態を変える。
【0026】
また、光ファイバ18のコア23をファイバ結合器17に向かって進む光は、ファイバ結合器17を通過し光ファイバ26のコアを通って、光計測手段14に到達し、光計測手段14によってその光の強度が検出される。即ち、光計測手段14は光干渉領域25から光ファイバ18のコア23に出た光の強度を計測する。
光計測手段14には、位置調整手段12及び光照射手段13に接続された演算手段15が接続されている。演算手段15は、光計測手段14から光計測手段14が計測した光の強度を取得でき、位置調整手段12から物体Pに対する接触子11の相対位置の情報を得ることができる。
【0027】
本実施の形態では、演算手段15が主として情報処理端末によって構成されており、演算手段15は光照射手段13に指令信号を送信して光を照射させることが可能である。
接触子11が物体Pに接触すると、
図2(A)、(B)に示すように、弾性体20(光干渉領域25)は弾性変形する。なお、
図2(A)は、物体PがZ方向正側(上方)に移動して接触子11に接触した際の様子、
図2(B)は、物体PがX方向負側(水平方向)に移動して接触子11に接触した際の様子をそれぞれ示している。
【0028】
光照射手段13が照射する光はレーザ光であり、光干渉領域25が弾性変形して、光干渉領域25内の光の干渉状態が変わることによって、
図3に示すように、光干渉領域25から光ファイバ18のコア23に出る光(レーザ光)の強度が変化する(即ち、光干渉領域25は、変形により光干渉領域25から出るレーザ光の強度を変える)。そのため、接触子11が物体Pに接触したか否かは、光計測手段14が計測する光の強度を基に判定可能であり、演算手段15は、光計測手段14に計測されたレーザ光の強度が、接触子11が物体Pや他の物体に非接触な状態で光計測手段14に計測されたレーザ光の強度と異なることから接触子11の物体Pへの接触を検知する。
【0029】
なお、
図3では、弾性体20のZ方向長さと光の強度の関係のみが示されているが、反射膜19に対する反射膜21の角度変化によっても、光干渉領域25から光ファイバ18のコア23に出る光の強度が変わることを確認している。また、本実施の形態では、弾性体20が紫外線硬化樹脂によって形成され、接触子11が石英(光ファイバの素材)によって形成されているが、これに限定されず、例えば、弾性体を熱硬化性樹脂、石英、樹脂や、内側又は一部に空気層が形成された構造体によって形成してもよいし、接触子を金属、セラミック等によって形成してもよい。
【0030】
演算手段15は、光計測手段14が計測した光の強度を基に接触子11の物体Pへの接触を検知すると、位置調整手段12から物体Pに対する接触子11の相対位置の情報を得て、その情報を基に接触子11が物体Pに接触した接触位置(以下、単に「接触位置」と言う)を導出する。具体的には、接触子11の物体Pへの接触を検知した際の物体Pに対する接触子11の中心の相対位置、あるいは、その相対位置に補正演算をして求めた位置が接触位置(接触子11が物体Pに接触した座標)として導出される。補正演算とは、例えば、位置調整手段12が物体Pを移動させている向き(接触子11の物体Pに対する相対移動方向)と、光計測手段14が計測した光の強度の値とから接触子11の外周のどの部分が物体Pに接触したかを算出する演算処理である。
ここで、光干渉領域25から光ファイバ22のコア24に出た光の強度を計測可能な光計測手段を採用することによって、光干渉領域25から光ファイバ22のコア24に出た光の強度を基に接触子11の物体Pへの接触を検知可能となる。
【0031】
レーザ光を照射する光照射手段13の代わりに多波長光(波長の異なる複数の光からなるもので、例えば、白色光)を照射する光照射手段を採用してもよい。
以下、
図4、
図5を参照して、多波長光を照射する光照射手段31を備えた、本発明の第2の実施の形態に係る位置検出装置30を説明する。なお、位置検出装置30において、位置検出装置10と同様の構成については同じ記号を付して詳しい説明は省略する。
【0032】
位置検出装置30は、
図4に示すように、多波長光を照射する光照射手段31と、光干渉領域25と、光干渉領域25から出た多波長光の強度(具体的には、多波長光に含まれる個々の波長の光の強度)を計測可能な光計測手段32を備えている。光照射手段31から多波長光が照射されると、光干渉領域25内では光の干渉が生じ、この光の干渉によって、光干渉領域25から出て光計測手段32に到達する多波長光は、
図5に示すように、個々の波長の光の強度を縦軸に波長の長さを横軸に設定したグラフにおいて、周期的にピークを有する波形として表される。
【0033】
そして、接触子11の物体Pへの接触により光干渉領域25が変形すると、光干渉領域25内の光の干渉状態が変わり、光計測手段32に到達する多波長光の周期的なピークを有する波形は、
図5に示すように、横軸に沿ってシフトし、光計測手段32に計測される特定波長の光の強度が、接触子11が非接触状態時に計測される当該特定波長の光の強度と異なるようになる。
【0034】
従って、光干渉領域25は、変形によって光干渉領域25から出る多波長光に含まれる個々の波長の光の強度を変えることとなる。
演算手段15は、光計測手段32に計測された特定波長の光の強度が、接触子11が非接触状態で光計測手段14に計測される当該特定波長の光の強度と異なることから、光計測手段32に到達する多波長光の波形のシフトを検出し、接触子11の物体Pへの接触を検知する。そして、演算手段15は、位置調整手段12から物体Pに対する接触子11の相対位置の情報を得て接触位置(接触子11が物体Pに接触した座標)を検出する。
【0035】
また、位置検出装置10(位置検出装置30についても同様)は、複数の接触位置を得ることにより、物体Pの形状を検出することが可能であるので、位置検出装置10を、物体P(検出対象物の一例)の形状を導出する形状検出装置として用いることができる。
位置検出装置10を形状検出装置として用いる場合、物体Pに対する接触子11の相対位置が異なる座標で接触子11に物体Pを接触させることで、演算手段15は、複数の接触位置を得て、これら複数の接触位置から物体Pの形状を検知する。
【0036】
位置検出装置10、30は、ファブリ・ペロー型干渉を利用したものであるが、他の光干渉を利用して、接触子11の物体Pへの相対位置を検出することも可能である。
図6を参照して、マイケルソン型干渉を利用する、本発明の第3の実施の形態に係る位置検出装置40について説明する。なお、位置検出装置40において、位置検出装置10、30と同様の構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0037】
位置検出装置40は、
図6に示すように、接触子11、位置調整手段12、光照射手段13、光計測手段14、演算手段15に加え、光照射手段13から照射された光を分岐させるファイバ結合器(光学機構の一例)41、ファイバ結合器41で分岐した一方の光及び他方の光をそれぞれ反射する反射膜(第1の光反射手段の一例)42及び反射板(第2の光反射手段の一例)43を備えている。反射膜42はX方向及びY方向に沿って(水平に)配置され、下側に接触子11が連結されている。
【0038】
ファイバ結合器17にはX方向に配置された光ファイバ44が接続されており、光照射手段13から照射されファイバ結合器17を通過した光は光ファイバ44のコアを通ってファイバ結合器41に到達する。ファイバ結合器41に到達し光は分岐され、一方はZ方向に配置された光ファイバ45のコア46を通り、光ファイバ45と反射膜42の間に設けられた弾性体47を進行して、反射膜42で反射され、弾性体47内を通過し光ファイバ45のコア46内をファイバ結合器41に向かって進み、他方はX方向に配置された光ファイバ48のコアを進み反射板43でファイバ結合器41に向かって反射される。光ファイバ45のコア46及び弾性体47は屈折率が等しく、光ファイバ45のコア46と弾性体47の境界面では光の反射が生じない。
【0039】
ファイバ結合器41は、反射膜42で反射された光と反射板43で反射された光を合流させて光の干渉を生じさせる。ファイバ結合器41で合流した光は光ファイバ44のコア、ファイバ結合器17、光ファイバ26のコアを通り、その光の強度が光計測手段14によって計測される。従って、光計測手段14は反射膜42及び反射板43で反射して合流した光の強度を計測することとなる。
【0040】
ここで、接触子11及び物体Pが接触すると弾性体47が変形して、反射膜42のファイバ結合器41に対する相対位置が変位し、ファイバ結合器41から反射膜42までの光路長(光ファイバ45のコア46及び弾性体47からなる光路の長さ)が変化することから、ファイバ結合器41が生じさせる光の干渉状態が変わる(即ち、反射膜42は、接触子11の物体Pへの接触によりファイバ結合器41に対する相対位置が変位してファイバ結合器41が生じさせる光の干渉状態を変える)。その結果、光計測手段14によって計測される光の強度が変化する。演算手段15は、光計測手段14が計測した光の強度を基に接触子11の物体Pへの接触を検知し、位置調整手段12から接触子11の物体Pに対する相対位置の情報を得て、接触子11が物体Pに接触した接触位置(座標)を導出する。
【0041】
また、位置検出装置40は、物体P(検出対象物の一例)の形状を導出する形状検出装置として用いることができる。位置検出装置40を形状検出装置として用いる場合、接触子11の物体Pに対する相対位置が異なる座標で接触子11に物体Pを接触させることで、演算手段15は、複数の接触位置を得て、これら複数の接触位置から物体Pの形状を検知する。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、光干渉領域は、接触子の外部物体(又は検出対象物、以下同じ)への接触によって変形し内部で生じている光の干渉状態を変えるものであればよく、対向配置された対となる反射膜を有さなくてもよい。但し、対向配置された対となる反射膜を有する場合、フィネスが高くなり、結果として、接触子の外部物体への接触を安定的に検知することが可能となる。
【0043】
また、対向配置された対となる反射膜を有する光干渉領域を採用する場合、反射膜間の全領域が弾性体で占有されている必要はなく、反射膜間の領域の一部に弾性体を設け、反射膜間の領域の大半を空間部にし、空間部内で光の干渉を生じさせるようにしてもよい。
そして、光ファイバを採用する代わりに、筒状部材を用いて、光照射手段から照射された光を光干渉領域に伝えるようにしてもよい。
更に、接触子は球状である必要はない。
【0044】
また、外部物体を移動させる位置調整手段の代わりに、接触子を移動させて外部物体に対する接触子の相対位置を変える位置調整手段を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
10:位置検出装置、11:接触子、12:位置調整手段、13:光照射手段、14:光計測手段、15:演算手段、16:光ファイバ、17:ファイバ結合器、18:光ファイバ、19:反射膜、20:弾性体、21:反射膜、22:光ファイバ、23、24:コア、25:光干渉領域、26:光ファイバ、30:位置検出装置、31:光照射手段、32:光計測手段、40:位置検出装置、41:ファイバ結合器、42:反射膜、43:反射板、44、45:光ファイバ、46:コア、47:弾性体、48:光ファイバ、P:物体