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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】挿通部材固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/02 20060101AFI20220802BHJP
   A61M 25/02 20060101ALI20220802BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20220802BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61M39/02 112
A61M25/02 500
F16J15/06 L
F16L5/02 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018222563
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020081537
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】515345746
【氏名又は名称】株式会社EVIジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】392000796
【氏名又は名称】株式会社サンメディカル技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嵐 伸作
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104437(JP,A)
【文献】特開平3-254758(JP,A)
【文献】国際公開第1993/025264(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204134042(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/02
A61M 25/02
F16J 15/06
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の挿通部材を挿通対象に固定する挿通部材固定装置であって、
本体部と、前記挿通部材を把持するチャック部と、前記挿通部材の外周に密着する内シール部と、前記挿通部材の線状状態を保持するために前記挿通部材を支持する挿通部材支持部と、前記内シール部と前記挿通部材支持部との移動を規制する移動規制部と、
を備え、
前記本体部は、
第一開口部、第二開口部、及び、前記第一開口部と前記第二開口部とを連通する連通部と、前記挿通対象に固定される固定部と、を有し、
前記チャック部は、前記挿通部材が挿通される挿通部と、外周に設けられて前記本体部の前記連通部の内壁と接触する接触部とを有し、
前記内シール部は、
前記挿通部材が挿通されて前記挿通部材の外周面に内周が密着する貫通孔を有し、
前記移動規制部は、
前記本体部の第一開口部側に接続する本体部接続部と、前記内シール部の外周から内側方向に押圧する内シール部押圧部と、前記挿通部材支持部の外周に当接する当接部とを有し、
前記挿通部材支持部は、
長さ方向に設けられる両端部と、前記挿通部材の外周に当接して前記挿通部材を支持する支持部と、前記移動規制部の前記当接部と前記挿通部材とによって挟持される被挟持部とを有し、
前記挿通部材支持部と前記内シール部とは、前記挿通部材の軸方向に隣接して設けられ、
前記挿通部材支持部と前記内シール部との間には、前記挿通部材支持部が前記挿通部材の揺動に伴う前記挿通部材支持部の本体部側端部の位置の変動を許容する空間が設けられた、
挿通部材固定装置。
【請求項2】
前記移動規制部の外周と前記本体部とに密着し、液体が前記移動規制部の外周と前記本体部との間から前記本体部の内側に流入することを防止する外シール部が設けられている、
請求項1記載の挿通部材固定装置。
【請求項3】
前記内シール部は、前記移動規制部または前記チャック部に当接して変形する当接部と、前記移動規制部または前記チャック部が前記当接部に当接することによる前記内シール部の変形を容易とする逃げ部を有する、
請求項1記載の挿通部材固定装置。
【請求項4】
前記第一開口部には、前記移動規制部の前記本体部接続部と螺合する螺合部が前記第一開口部の開口側に設けられ、
前記移動規制部は、前記第一開口部との螺合の際の前記チャック部側への移動により、前記チャック部を前記第二開口部側に押圧するチャック押圧部を有し、
前記チャック部は、前記第二開口部側への前記移動規制部の押圧により前記本体部に接触し、接触した本体部から抗力を受けることで前記チャック部が前記挿通部材の径方向内側へ移動させる接触面を有する、
請求項1記載の挿通部材固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿通部材を挿通対象に固定する挿通部材固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、挿通対象に挿通される挿通部材を挿通対象に固定する装置としては、例えば、特許文献1に示す保持機構組立体が知られている。
【0003】
特許文献1の保持機構組立体は、挿通部材であるドライブラインと、ドライブラインが挿通される挿通部を有しドライブラインの挿通対象である皮膚に固定する固定部材と、固定部材にドライブラインを保持させる保持構造とを備える。保持構造は、挿通部内で挿通部材の外周に配置されるチャック部材及びシール部材と、挿通部の外側の開口部に挿入して螺合するねじ部材とを備える。挿通部において、チャック部材の固定部材側当接部が挿通部の挿通部傾斜面に当接した状態で、挿通部に対してねじ部材を螺合することにより、ねじ部材の先端当接部がチャック部材を押圧し、シール部材のチャック部材側接触面がチャック部材を押圧する。これにより、ドライブラインが固定部材に対して密着して保持される。また、上記構成の保持機構組立体のねじ部材の体外側端部に筒状のキンクガードを設け、保持機構組立体から外部に導出するドライブラインの屈曲や径方向の捩れを防止する構成が開示されている。キンクガードにおいて、ねじ部材の嵌合孔に嵌合する嵌合部は、シール部材に隣接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-104437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の保持構造体では、ドライブラインに外力が掛かる等によりドライブラインの振れが大きい場合、キンクガードに掛かる径方向の負荷がねじ部材との嵌合部分である嵌合部に伝達し、嵌合部に当接するシール部材が変形することがある。その結果、シール部材のシール機能、特にシール部材とドライブラインとの密着性を低下させる恐れがある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ドライブライン等の挿通部材の揺動の抑制とシールの確保を両立できる挿通部材固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の挿通部材固定装置は、
線状の挿通部材を挿通対象に固定する挿通部材固定装置であって、
本体部と、前記挿通部材を把持するチャック部と、前記挿通部材の外周に密着する内シール部と、前記挿通部材の線状状態を保持するために前記挿通部材を支持する挿通部材支持部と、前記内シール部と前記挿通部材支持部との移動を規制する移動規制部と、
を備え、
前記本体部は、
第一開口部、第二開口部、及び、前記第一開口部と前記第二開口部とを連通する連通部と、前記挿通対象に固定される固定部と、を有し、
前記チャック部は、前記挿通部材が挿通される挿通部と、外周に設けられて前記本体部の前記連通部の内壁と接触する接触部とを有し、
前記内シール部は、
前記挿通部材が挿通されて前記挿通部材の外周面に内周が密着する貫通孔を有し、
前記移動規制部は、
前記本体部の第一開口部側に接続する本体部接続部と、前記内シール部の外周から内側方向に押圧する内シール部押圧部と、前記挿通部材支持部の外周に当接する当接部とを有し、
前記挿通部材支持部は、
長さ方向に設けられる両端部と、前記挿通部材の外周に当接して前記挿通部材を支持する支持部と、前記移動規制部の前記当接部と前記挿通部材とによって挟持される被挟持部とを有し、
前記挿通部材支持部と前記内シール部とは、前記挿通部材の軸方向に隣接して設けられ、
前記挿通部材支持部と前記内シール部との間には、前記挿通部材支持部が前記挿通部材の揺動に伴う前記挿通部材支持部の本体部側端部の位置の変動を許容する空間が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドライブライン等の挿通部材の揺動の抑制とシールの確保を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る挿通部材固定装置の外観平面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る挿通部材固定装置の外観背面図である。
図3図1のA-A線矢視断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る挿通部材固定装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<挿通部材固定装置1と挿通部材2との関係>
本実施の形態に係る挿通部材固定装置1は、線状の挿通部材2を、挿通部材2の挿通対象に固定する。挿通部材固定装置1は、挿通部材2を固定する際に、挿通部材2を、少なくとも挿通部材固定装置1の内部と外部とに亘って存在するように挿通させた状態で保持して固定する。なお、挿通部材2は、挿通対象に挿通された部分が挿通部材固定装置1によって保持されていれば、挿通対象を貫通してもよいし、貫通しなくてもよい。挿通対象は、本実施の形態では、挿通部材2を挿通するための孔S1(図3参照)を有する皮膚Sとし、孔S1を通して挿通部材2を挿通させる。
【0012】
挿通部材2は、線状の長さを有する部材であり、本実施の形態では、挿通部材2は、医療用チューブの一種であり、体腔に配置される補助人工心臓(ventricular assist device: VAD)の駆動や制御に必要な配線であるドライブラインである。なお、補助人工心臓は、体内の血液を循環させるポンプを有する。体外に配置された機器は、補助人工心臓のポンプを冷却するための冷却水を送り出す圧送ポンプと、補助人工心臓のポンプへ電力を送る電源とを有する。ドライブラインは、人体の内部へ挿通する筒状の部材である。ドライブラインの外表面は、繊維によって被覆されている。ドライブラインの体内側の端部は、本実施の形態では、体内に配置された図示せぬ医療用機器(例えばVAD)に連結されており、ドライブラインの体外側端部は、体外に配置された図示せぬ機器に連結されている。
【0013】
本実施の形態では、ドライブラインの内部には、圧送ポンプと補助人工心臓との間で冷却水を循環させる冷却水循環通路と、電源とポンプとを連結する電源ケーブル等とが配線される。なお、ドライブラインの構成はこれに限定するものではなく、例えば、電源ケーブルのみを有する構成としてもよいし、冷却水循環路のみを有する構成としてもよいし、他の機能を有する部材等を有する構成としてもよい。
【0014】
ドライブラインは、被検者の挿通部位の皮膚S(図3参照)から体内に挿通され、目的部位(本実施の形態ではVAD)へと到達するように案内される。ドライブラインを固定する場合、挿通部位の皮膚Sでの細菌感染の発症、所謂ドライブライン感染症対策が必要である。
【0015】
本実施の形態の挿通部材固定装置1は、挿通対象の皮膚Sに挿通される挿通部材2(ドライブライン)の揺動を抑制し、且つ、挿通部材2との水密性を確保できる。特に、挿通部材固定装置1は、挿通部材2が揺動しても、細菌が挿通部材2の外周を伝って皮膚Sの孔S1を抜けて体内へ侵入することを防止できる。よって、挿通部材2の揺動に関わらず、挿通部材2との間を確実にシールして、挿通部位での細菌感染の発症を防止する。
【0016】
なお、挿通部材2は、ドライブラインに限定されず、挿通対象に挿通された状態で固定される線状のものであればどのようなものでもよく、例えば、カテーテルや、その他の医療用チューブ、または中実の医療用ケーブルであってもよく、医療用ケーブル以外の線状の部材であってもよい。また、挿通部材2が挿通される挿通対象は、本実施の形態では、皮膚Sとしたが、これに限らず、臓器や骨等の生物を構成する要素等に対して、細菌等の侵入を抑制する必要がある対象物としてもよい。
【0017】
<挿通部材固定装置1の構成>
次に、本実施形態に係る挿通部材固定装置1について説明する。
【0018】
本実施の形態に係る挿通部材固定装置1は、線状の挿通部材2を挿通対象に固定する。挿通対象に固定するとは、本実施の形態では、皮膚Sの一部(挿通部位)に本体部3の固定部35の一部をアンカーのように用いることにより本体部3を皮膚Sに固定することを意味する。
【0019】
本実施の形態では挿通部材固定装置1は、本体部3と、チャック部4と、内シール部5と、挿通部材支持部6、移動規制部7と、外シール部9とを備える。
【0020】
本体部3は、挿通対象に固定され、挿通部材2が挿通される。本体部3は、挿通対象の孔S1を覆うように取り付けられている。本体部3には、孔S1を挿通する挿通部材2が挿通された状態で固定される。
【0021】
本体部3は、第一開口部31、第二開口部32、及び、第一開口部31と第二開口部32とを連通する連通部33と、挿通対象に固定される固定部35と、回り止め取り付け部36とを有する。なお、本体部3は、挿通対象に固定できる剛性等を有することが好ましく、本実施形態のように生体組織である皮膚Sに固定される固定部35を有する場合には、生体適合性の高い金属で形成されていることが好ましい。生体適合性の高い金属としては、例えば、チタン、チタン合金等である。なお、固定部35には、メッシュ状のチタン繊維等の細胞の侵入が可能な多孔性材料で表面が形成されて、固定部35と皮膚Sとの密着性が向上されて、細菌の生体内への侵入の防止が図られている。
【0022】
第一開口部31、第二開口部32及び連通部33には、挿通部材2が挿通される。
【0023】
第一開口部31は、連通部33の体外側で連続して設けられた開口部であり、第二開口部32は、体内側で連続して設けられた開口部である。
【0024】
第一開口部31は、開口面が連通部33の軸方向に対して直交するように形成されている。第二開口部32は、開口面が連通部33の軸方向に対して非直交となるように形成されている。第一開口部31の断面は円形状に形成されており、その断面直径は、本実施の形態では、第一開口部31と螺合する移動規制部7の外径と略同じ長さとなるように形成されている。
【0025】
第一開口部31には、移動規制部7の本体部接続部71と螺合する螺合部312が第一開口側に設けられ、移動規制部7が螺合する。本実施の形態では、螺合部312は、雄ねじ部である本体部接続部71に螺合する雌ねじ部である。なお、本体部接続部71の詳細については後述する。
【0026】
第二開口部32の断面は、第二開口部32内を挿通部材2が傾斜して挿通か可能な楕円形状に形成されており、第二開口部32の断面積は、挿通部材2を第二開口部32と平行な方向に切断した時の断面積よりも大きい。
【0027】
連通部33は、第一開口部31と第二開口部32とを連通するものであり、断面視円形状に形成されている。連通部33は、本実施の形態では、第一開口部31と第二開口部32とともに中心軸が一つの直線となるように設けられている。
【0028】
連通部33は、円筒状に構成されており、内部にチャック部4を収容する。連通部33は、本実施の形態では、軸方向の中央部分が半径方向で外方に膨らむ円筒状に構成されている。
【0029】
連通部33は、内面において、第二開口部32側に、第一開口部31から第二開口部32に向かって内径が縮径するように設けられた傾斜内周面34を有する。
【0030】
傾斜内周面34は、チャック部4が第一開口部31側から押圧されて、第二開口部32側に移動した際に、チャック部4の第二開口部32側の外面が当接し、チャック部4を縮径してチャック部4に挿通部材2をチャックさせる。
【0031】
傾斜内周面34は、本実施の形態では、傾斜角度が一定となるように設けられているが、これに限定されるものでなく、例えば、第二開口部32に向かって傾斜角度が大きくなるように断面視して曲線状に形成されてもよい。
【0032】
連通部33の内周面において、第一開口部31側には、周方向に延在する凹部37が設けられている。この凹部37には、移動規制部7と本体部3とを水密的に閉塞する外シール部9が配置されている。
【0033】
固定部35は、挿通対象である皮膚Sに固定される部分であり、挿通部材固定装置1を挿通対象に固定する。固定部35は、詳細には、皮膚Sに設けられた孔S1周辺の皮膚Sに固定される。固定部35は、本実施の形態では、挿通部位の外周面から連通部33の延びる方向と非平行に突出するフランジ部352を有する。このフランジ部352を孔S1の周りの皮膚Sの内側に、アンカーとして埋設することで、固定部35は皮膚Sに固定されている。本実施の形態では、連通部33の延びる方向は、フランジ部352に対して傾斜している。
【0034】
固定部35は、連通部33を囲むように連通部33と一体的に構成されている。固定部35と連通部33とは一体的に構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、連通部33を構成する筒状体の第二開口部32側の外周に、別体としてフランジ状に形成された固定部35を溶接、接着等により固定する構成としてもよい。
【0035】
なお、フランジ部352の表面は、固定対象への密着性が向上するような表面処理が施されていてもよい。
【0036】
回り止め部材8は、連通部33内に配置されるチャック部4の被回り止め部46に係合され、チャック部4の軸周りの回動を抑制する。回り止め部材8は、本実施の形態では、頭部82及び軸部84を有するねじである。
【0037】
回り止め取付部36には、回り止め部材8が取り付けられている。
【0038】
回り止め取付部36は、外面から突出して設けられた台部362と、台部362に形成され、且つ、本体部3の連通部33と外部とを貫通し、回り止め部材8が挿入される貫通孔364とを有する。台部362の突端部は平面であり、回り止め部材8の軸部84が貫通孔364に挿入された際に、回り止め部材8の頭部82が係止される。本実施の形態では、軸部84は、雄ねじ部であり、貫通孔364の内周には軸部84と螺合する雌ねじ部が設けられている。これにより、軸部84の連通部33内への突出長は調整自在となっている。なお、回り止め部材8の頭部82と回り止め取付部36の突端部との間には、シール部86が配置され、双方間を水密的に閉塞している。
【0039】
回り止め部材8の軸部84がチャック部4の被回り止め部46に挿入される。これにより、チャック部4は軸回りでの回転が抑制される。
【0040】
チャック部4は、挿通部材2を締め付けて把持し、本体部3に固定される。チャック部4は、本実施の形態においては、連通部33の内周面と、連通部33を挿通する挿通部材2の外周22との間に配置され、連通部33と挿通部材2との間を水密的に閉塞する。なお、チャック部4は、挿通部材2を保持するとともに、連通部33と挿通部材2の間を水密的に閉塞できれば、どのような材料で構成されてもよい。チャック部4は、挿通部材2を締め付けることができる程度の微小な変形が可能な材料を用いることができる。例えば、チャック部4は、例えば、チタンやチタン合金等の耐食性の高い金属であって本体部3を形成する金属と同等の硬度を持つまたは本体部3を形成する金属より低い硬度を持つ金属で形成されてもよい。
【0041】
チャック部4は、挿通部材2を締め付けて把持する筒状体に構成されることが好ましい。なお、チャック部4は、径方向で分割された分割体を一体的に合わせることで筒状体になるように構成してもよい。本実施の形態のチャック部4は、筒状体を、筒状体の軸を含む径方向で2分割に分割した半割の分割体4a、4bを組み合わせることで構成されている。また、チャック部4は、径方向に分割できる構造に限らず、軸方向に分割できる構造や、分割体に分割できない構造としてもよい。
【0042】
チャック部4は、挿通部材2が挿通される挿通部42と、外周に設けられて本体部3の連通部33の内周面と接触する接触部44と、被回り止め部46を有する。
【0043】
挿通部42は、挿通部材2の囲むように配置される縮径可能に形成される。挿通部42は、縮径して挿通部材2の外周22に密着して外嵌する。
【0044】
挿通部42は、本実施の形態では、チャック部4の内周面全体である。挿通部42は、断面円形状に設けられており、断面の直径が均一となるように形成されている。なお、挿通部42は、断面の直径が均一となるように形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば中央部において、断面の直径が拡大されるように形成された段部を有してもよい。本実施の形態では、分割体4a、4bの内周を挿通部材2の外径よりも若干小さく構成し、分割体4a、4bの断面半円状の内周部分で挿通部材2の外周22を挟み、半径方向内側に移動することによっても、挿通部材2を押圧しつつ挟むことができ、挿通部材2の外周と密着して挿通部材2を保持する。
【0045】
接触部44は、連通部33の内周面と接触して、チャック部4を連通部33に水密的に密着する。
【0046】
接触部44は、本実施の形態では、チャック部4の外周面であり、特に、第二開口部32側の外周面に設けられ、傾斜内周面34に当接する接触面442を有する。
【0047】
接触面442は、第二開口部32側への移動規制部7の押圧によりチャック部4が本体部3に接触し、接触した本体部3から抗力を受けることでチャック部4が挿通部材2の径方向内側へ移動させる。
【0048】
本実施の形態では、接触面442は、傾斜内周面34と傾斜角度が同一の傾斜面で構成されている。言い換えれば、接触面442が、傾斜内周面34との面接触によって、傾斜内周面34と当接するように構成されている。すなわち、接触面442には、傾斜内周面34と傾斜角度が同一の部分が少なくとも一部分に形成されていることが好ましい。
【0049】
チャック部4の第一開口部31側の端部には、内シール部5が当接するシール当接部45と、移動規制部7が当接する規制部当接部48とが設けられている。
【0050】
シール当接部45は、チャック部4の第一開口部31側に形成された端部の傾斜面の一部と、連通部33の径方向に平行な面とで構成されており、規制部当接部48と連続して形成されている。なお、シール当接部45は、チャック部4の第一開口部31側に形成された傾斜面の一部と、連通部33の径方向に平行な面とで構成されるが、これに限定されるものではなく、シール当接部45からチャック部4を第二開口部32側へ押す方向の力を受けることができる形状であればよい。
【0051】
規制部当接部48は、チャック部4が連通部33に配置された状態において、第一開口部31側の端部に設けられ、移動規制部7と当接する部分である。
【0052】
規制部当接部48は、移動規制部7のチャック押圧部75と当接して、チャック部4が縮径する方向の力が、チャック押圧部75より与えられるように構成されている。なお、チャック押圧部75についての詳細は後述する。
【0053】
また、移動規制部7のチャック押圧部75も、移動規制部7の径方向外側へ向かう力を、規制部当接部48から受ける。
【0054】
本実施形態では、規制部当接部48は、傾斜面であるチャック押圧部75と傾斜角度が同一の傾斜面で構成されている。言い換えれば、規制部当接部48が、チャック押圧部75との面接触によって、チャック押圧部75と当接する。すなわち、規制部当接部48には、シール当接部45の傾斜面と傾斜角度が同一の傾斜面が少なくとも一部分に形成されていることが好ましい。
【0055】
なお、規制部当接部48は、傾斜面で構成されるが、これに限定されるものではなく、少なくとも移動規制部7からチャック部4を第二開口部32側へ押す方向の力を受けることができる形状であればよい。また、チャック部4の外周面には、挿通対象に取り付ける際のすべり止めとなる凹部が周方向に設けられてもよい。
【0056】
被回り止め部46は、本体部3に取り付けられる回り止め部材8と係合して、連通部33内におけるチャック部4の軸回りの回転を規制する。
【0057】
被回り止め部46は、本実施の形態では、チャック部4の外周面に設けられている。被回り止め部46は、軸方向に延在する溝状に形成されている。
【0058】
被回り止め部46は、本実施の形態では、分割体4a、4bのそれぞれに設けられており、分割体4a、4bを連通部33内に配置してチャック部4を形成した際に、回り止め部材8に対応する位置に容易に配置可能となっている。本実施の形態では、被回り止め部46内に、本体部3の回り止め取付部36の台部362から連通部33内に突出する回り止め部材8の軸部84が挿入されることにより、チャック部4の周方向への移動が規制される。
【0059】
内シール部5は、変形して挿通部材2を締め付けて保持するとともに、移動規制部7と挿通部材2の双方に水密的に密着し、挿通部材2と移動規制部7との間を閉塞する。内シール部5は、移動規制部7の内周面と挿通部材2の外周面との間に配置される。内シール部5は、挿通部材2を囲むように配置されている。
【0060】
内シール部5は、貫通孔52、当接部54及び逃げ部56を有する。
【0061】
貫通孔52は、挿通部材2が挿通されて挿通部材2の外周22に内周が密着する。内シール部5が弾性的に変形することにより、貫通孔52の内周が挿通部材2の外周22を押圧する。本実施の形態の内シール部5は円環状体である。
【0062】
当接部54は、移動規制部7またはチャック部4に当接して変形する。本実施の形態では、当接部54は、チャック部側当接部54aと規制部側当接部54bとを有する。チャック部側当接部54aは、内シール部5において、第二開口部32側に軸方向で開口する開口部を囲むように配置され、軸方向でチャック部4に当接する。規制部側当接部54bは、内シール部5において第一開口部31側に軸方向で開口する開口部を囲むように配置され、軸方向で移動規制部7に当接する。
【0063】
逃げ部56は、移動規制部7またはチャック部4が当接部54(54a、54b)に当接することによる内シール部5の変形を容易とする。
【0064】
逃げ部56は、本実施の形態では、チャック部4の端部において第一開口部31側の開口端面と開口端面に連続する外周面とにより形成される角部に当接するチャック部側当接部54aに形成された環状の切欠部である。これにより、チャック部側当接部54aがチャック部4の第一開口部31側の角部に当接した際に、角部の形状に対応して逃げ部56側に変形してチャック部4の角部に密着した状態となる。
【0065】
移動規制部7は、本体部3に固定して、内シール部5と挿通部材支持部6との移動を規制する。
【0066】
移動規制部7は、本実施の形態では、本体部3の第一開口部31の内周面に設けられた螺合部312と螺合して本体部3に接続し、第一開口部31を遮蔽するとともに挿通部材2を保持する。
【0067】
移動規制部7は、筒状に形成されており、本体部接続部71、内シール部押圧部72、当接部73、チャック押圧部75、接続操作部77を有する。
【0068】
本体部接続部71は、本体部3の第一開口部31側で接続する。
【0069】
本体部接続部71は、外周面に螺合部312と螺合する被螺合部(本実施の形態では、雄ねじ部)712を有し、この被螺合部712を螺合部312に螺合して、移動規制部7は本体部3に固定される。
【0070】
本体部接続部71の内周には、内シール部5を収容する収容部76が配置されている。収容部76は、内シール部5が押圧されて変形した際に、内シール部5の変形した部分を収納可能である。収容部76は、本実施の形態では、本体部接続部71の内周面に周方向にそって凹状に形成されている。
【0071】
内シール部押圧部72は、内シール部5の外周(規制部側当接部54b)から内側方向に押圧し、内シール部5を挿通部材2に高い水密性を有する状態で密着させる。
【0072】
内シール部押圧部72は、本実施の形態では、本体部接続部71の内周に設けられ、収容部76を構成する。内シール部押圧部72は、収容部76内に嵌まる内シール部5の外周(規制部側当接部54b)に当接している。
【0073】
当接部73は、挿通部材支持部6の外周6aに当接し、移動規制部7に挿通部材支持部6を取り付けた状態にする。当接部73は、挿通部材支持部6の外周6aに当接することにより、挿通部材支持部6が移動規制部7から立設した状態で支持するように取り付けられる。
【0074】
チャック押圧部75は、連通部33に挿入されてチャック部4に当接する。
【0075】
チャック押圧部75は、本実施の形態では、チャック部4の規制部当接部48に当接する部位である。チャック押圧部75は、第一開口部31との螺合の際のチャック部4側への移動により、チャック部4を第二開口部32側に押圧する。
【0076】
チャック押圧部75は、移動規制部7が第一開口部31から挿入される際の移動規制部7の先端部の内周面に設けられている。
【0077】
チャック押圧部75は、チャック部側当接部54aと連続するように形成されている。なお、チャック押圧部75は、チャック部側当接部54aの傾斜面の傾斜角度と同一の傾斜角度を有する傾斜面で構成されるが、これに限定されるものではない。チャック押圧部75の形状は、チャック押圧部75の少なくとも一部がチャック部4の規制部当接部48に当接することで、移動規制部7からチャック部4を第二開口部32側へ押す方向の力を伝えることができる形状であればよい。
【0078】
接続操作部77は、移動規制部7を本体部3に固定する際に操作される。接続操作部77は、本実施の形態では、六角ナット状のねじ部であり、当接部73の外周面に設けられている。
接続操作部77は、本体部接続部71を本体部3の第一開口部31に挿入して、軸を中心に回転操作される。この結果、接続操作部77の本体部接続部71は回転され、被螺合部712を螺合部312に螺合し、移動規制部7を第二開口部32側に移動して、移動規制部7を本体部3に接続させる。なお、この被螺合部712と本体部3の螺合部312とを螺合することにより、移動規制部7は、第一開口部31を遮蔽する役割と、チャック部4、内シール部5及び外シール部9を押圧する役割と、挿通対象に挿通部材2を挿通させた状態で保持する役割とを発揮する。
【0079】
外シール部9は、移動規制部7の外周7aと本体部3とに密着して設けられる。
外シール部9は、例えば、Oリング等で構成され、本体部3に形成された凹部37に収容される。外シール部9は、移動規制部7の外周7aと本体部3との間を水密的に閉塞する。これにより、外シール部9は、液体が移動規制部7の外周7aと本体部3との間から本体部3内に、本体部3の第二開口部32側へ流入することを防止する。なお、外シール部9がOリングである場合、移動規制部7の外周7aに周方向で延在する凹部を設け、この凹部内に外シール部9を配設してもよい。この構成において、移動規制部7が本体部3に接続した際に、外シール部9が本体部3の内周に当接して変形して、移動規制部7の外周7aと本体部3と密着して設けられるようにしてもよい。
【0080】
挿通部材支持部6は、所謂、キンクガードであり、本体部3に接続された移動規制部7から導出される挿通部材2の屈曲や径方向の捩れを防止する。
【0081】
挿通部材支持部6は、移動規制部7から導出する挿通部材2の外周を囲むように配置される。
【0082】
挿通部材支持部6は、長さ方向に設けられる両端部62、63と、挿通部材2の外周22に当接して挿通部材2を支持する支持部65と、移動規制部7の当接部73と挿通部材2とによって挟持される被挟持部67とを有する。
【0083】
挿通部材支持部6は、本実施の形態では、所定の長さを有する支持部65の両端部を両端部62、63とし、支持部65が挿通部材2の外周22に当接することにより、挿通部材2の屈曲、径方向の捩れを防止している。挿通部材支持部6は、本実施の形態では、支持部65を挿通部材2の周囲に配置される略円筒状体に構成され、内側空間により開口する両端部62、63を連通させている。つまり、両端部62、63にそれぞれ支持部65の開口部が設けられているが、これに限ることなく、支持部65が、挿通部材2の外周22に当接して挿通部材2を支持して、挿通部材2の屈曲、捩れを防止するものであれば、どのように形成されてもよい。たとえば、挿通される挿通部材2に対して挟持することにより長手方向で当接するフレーム体或いは、C字状の筒状体として形成されてもよい。
【0084】
また、挿通部材支持部6は、軸方向において支持部65に肉薄部と肉厚部とを設けた構成としてもよい。この構成とすることにより、挿通部材支持部6は、軸方向の端面が肉薄部により形成される空間に移動することができるので、肉薄部が無い円筒と比較して可撓性を有する構造となる。軸方向に肉薄部と肉厚部とを設けた挿通部材支持部6は、剛性を有することにより挿通部材2の捩れや揺動を抑制することができ、また可撓性を有することにより挿通部材支持部6の端部付近での挿通部材2の折れ曲がりを抑制することができる。挿通部材支持部6の他方の端部62を支点として屈曲を生じるような力が挿通部材2に作用されても、挿通部材支持部6が撓むことにより、挿通部材2の屈曲や捩れ等を抑制することができる。すなわち、挿通部材支持部6により、挿通部材2が本体部3に対して相対移動が抑制されるように剛性と可撓性とを有することで、挿通部材固定装置1が取り付けられる部位において、挿通部材2の変位による人体への負荷を軽減することができる。さらに、挿通部材支持部6は、挿通部材2を支持することにより、挿通部材2自体が内シール部5側に移動しにくくなる。肉薄部は、挿通部材支持部が可撓性を有することができれば、特に限定されるものではなく、挿通部材支持部の周回り方向全体に設けられてもよく、軸方向に複数設けられてもよい。なお、挿通部材支持部は、周回り方向に分割された複数の部材から設けられてもよいが、その場合には肉薄部は周回り方向に断続的に設けられてもよい。
【0085】
また、挿通部材支持部6では、支持部65が、本体部側端部63と他方の端部62を有し、他方の端部側に、挿通部材2に内側面が当接する内側部と、内側部の外側に設けられた外側部とにより構成されてもよい。この場合、内側部の係合部と外側部の被係合部とが係合することにより、内側部と外側部とが係合する構造を採用することができる。例えば、挿通部材支持部は、筒状部材である外側部に内側部を内側部の他方の端部62側から挿入してもよい。内側部と外側部との嵌合構造については、外側部が外嵌した状態から内側部から抜けにくくする係合凸部が内側部に設けられた構成を用いてもよい。係合凸部は、例えば、径方向外側に凸となる突出部として、肉薄部を間に設けて長手方向に複数配置される。係合凸部は、径方向外側端部が径方向内側端部よりも本体部側端部側に位置し、軸方向の傾きを有することで、内筒部に外筒部が外嵌された状態において、内筒部からの外筒部の抜けを抑制する。内筒部の外周面と外筒部の内周面との間には、凸部間に隙間が形成されるので、内筒部と外筒部により構成される支持部は、肉薄部が無い円筒と比較して可撓性を有するとともに、剛性をも有する構造となる。また、外筒部の本体部側端部が内側部の本体部側端部と当接する構成とすることにより、挿通部材支持部6の過度な湾曲を抑制することもできる。挿通部材支持部6は、挿通部材2に作用された力によって本体部側端部63側の被挟持部67に力が伝達することを緩和することができ、挿通部材2自体を内シール部5側に移動しにくくなる。
【0086】
開口する両端部62、63のうち一方の端部である本体部側端部63の外径よりも他方の端部62の外径の方が小さい。また、両端部62、63のそれぞれの内径は、挿通部材2の外径と略等しい。
【0087】
挿通部材支持部6は、本体部側端部63側に被挟持部67が設けられ、この被挟持部67を介して、移動規制部7に固定されている。
【0088】
被挟持部67は、本実施の形態では、一端部(本体部側端部63)において開口部を囲む部位から突出する筒状体であり、挿通部材2が挿通される。被挟持部67は、移動規制部7の当接部73の内側に挿入されて内嵌する際に、当接部73と、挿通された挿通部材2とにより挟持される。よって、挿通対象の外側で挿通部材支持部6の取り換え作業等のメンテナンス性に優れる。本実施の形態では被挟持部67に、当接部73に係合する爪部を設け、双方の結合を強化している。
【0089】
挿通部材支持部6と内シール部5とは、挿通部材2の軸方向に隙間Gを空けて隣接して設けられている。具体的には、連通部33内において、挿通部材支持部6の被挟持部67は、内シール部5と離間して配置され、被挟持部67と内シール部5との間には隙間Gが形成されている。
【0090】
この隙間Gにより、挿通部材支持部6が揺動して、被挟持部67、つまり、本体部側端部63の位置が変動する場合、挿通部材2の揺動に伴い挿通部材支持部6の本体部側端部63の位置の変動を許容する。これにより、本体部側端部63が変動しても、本体部側端部63が内シール部5に接触することがない。
【0091】
<挿通部材固定装置1の組立>
挿通部材2が、本体部3の連通部33に挿通される。例えば、皮膚Sに設けられた孔から体外側へ延出した挿通部材2を本体部3の第二開口部32から第一開口部31側へ挿通することで本体部3の連通部33に挿通する。
【0092】
チャック部4が挿通部材2の外周に配置される。具体的には、チャック部4を構成する分割体4a、4bを、挿通部材2を挟みつつ筒状体にして挿通部材2の外周に配置する。
【0093】
チャック部4は、第一開口部31側から連通部33内に挿入される。ここでは、連通部33に挿入されたチャック部4の接触面442は、連通部33の傾斜内周面34に当接するが、この時点では、連通部33の傾斜内周面34に当接していなくてもよい。また、チャック部4は連通部33内において被回り止め部46を回り止め部取付部36の貫通孔364と対向する位置に位置させて、貫通孔364を介して挿入された回り止め部材8の軸部84を係合させておく。つまり、被回り止め部46内に軸部84を挿入する。
【0094】
次に、挿通部材2の外周に、内シール部5が、チャック部4よりも第1開口部31側に外嵌される。次いで、チャック押圧部75側から第一開口部31内に挿入されることにより、内シール部5を嵌めた移動規制部7が、挿通部材2の外周に嵌められる。そして、連通部33の螺合部312に対して移動規制部7の被螺合部712を螺合させる。被螺合部712が螺合部312に螺合することにより、移動規制部7は本体部3の第二開口部32側へと移動する。
【0095】
連通部33の螺合部312に対して移動規制部7の被螺合部712を螺合させていくことにより、移動規制部7のチャック押圧部75を第二開口部32の方向へ移動し、チャック押圧部75がチャック部4の規制部当接部48を押圧する。なお、内シール部5のチャック側当接部54aがチャック部4のシール当接部45を押圧する。
【0096】
チャック部4は、第二開口部32側への移動規制部7の押圧により、接触面442で、本体部3に接触し、接触した本体部3から抗力を受けることでチャック部4は、挿通部材2の径方向内側へ移動する。すなわち、螺合部312に対する被螺合部712の螺合を進めていくと、接触面442と傾斜内周面34との接触により、チャック部4の移動が規制される。これにより、チャック部4の分割体4a、4bどうしは半径方向中心軸側に向かって移動し、つまり、縮径し、本体部3に対して挿通部材2を密着して保持する力が発生する。これにより、密着性の高い保持構造を備えた挿通部材固定装置1を組立てることができる。
【0097】
連通部33の螺合部312に対して移動規制部7の被螺合部712を螺合することより移動規制部7を第二開口部32側に移動させる際、つまり、移動規制部7を回転させて第二開口部32側に移動させる際、チャック押圧部75を介して、チャック部4にも回転する力が伝達される。
【0098】
しかしながら、チャック部4は、回り止め部材8により、周方向の移動を抑制されている。これにより螺合部312と被螺合部712とを螺合することにより、移動規制部7かから軸回りの力が伝達されても、共回りすることなく、縮径する。よって、螺合部312に対して移動規制部7の被螺合部712を螺合する際に、チャック部4とチャック部4に把持される挿通部材2とが共回りすることがなく、供回り挿通部材2を捩れることがない。なお、説明した上記の組立手順は一例であり、螺合部312に対して移動規制部7の被螺合部712を螺合するまでの組立手順は特に限定されない。
【0099】
<挿通部材固定装置1の機能と効果>
本実施の形態によれば、連通部33の螺合部312に対して移動規制部7の被螺合部712を螺合することにより、移動規制部7のチャック押圧部75が、第二開口部32側へ移動する。チャック部4のシール当接部45が、チャック押圧部75に当接するため、移動規制部7がチャック部4を連通部33の軸方向に押圧する。ここで、チャック部4のシール当接部45と移動規制部7のチャック押圧部75との傾斜面とが互いに面接触していることから、螺合部312と被螺合部712の螺合による第二開口部32側へ移動させる力が効率良くチャック部4に伝達される。
【0100】
チャック部4に伝達された力は、チャック部4を縮径させ、挿通部材2と強固に水密に密着できる。また、チャック部4と内シール部5も水密的に密着して固定させることがきる。さらに、連通部33と移動規制部7との間の水密性も確保して第一開口部31を密閉することができる。
【0101】
また、本実施の形態の挿通部材固定装置によれば、連通部33内において、挿通部材支持部6の被挟持部67は、内シール部5と離間して配置され、被挟持部67と内シール部5との間には隙間Gが形成されている。
【0102】
この構成において、挿通部材2がねじれ方向や屈曲方向へ大きく揺動する場合、挿通部材2の外周が当接する挿通部材支持部6に力が伝達され、挿通部材支持部6が挿通部材2の軸を中心に挿通部材2が大きく振れるように変位する場合がある。この場合、挿通部材支持部6は、加わる力により挿通部材支持部6も挿通部材2に追従して変位して、本体部側端部63側の被挟持部67が隣接する内シール部5側に移動する。このように、挿通部材支持部6(具体的には被挟持部67)が内シール部5側に移動しても、この挿通部材支持部6の変位を隙間Gで吸収でき、内シール部5に対する影響を防ぐことができる。すなわち、挿通部材支持部6の振れが生じても挿通部材2に密着する内シール部5の密着状態に何ら影響を与えることが無く、内シール部5による挿通部材2と移動規制部7の間のシール(密閉状態)を確保できる。
【0103】
よって、本実施の形態によれば、ドライブライン等の挿通部材の揺動の抑制とシールの確保を両立できる。
【0104】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る挿通部材固定装置は、ドライブライン等の挿通部材の揺動の抑制とシールの確保を両立できる効果を有し、例えば、体表面に装着され、体内外に連続して配設される医療用チューブの固定装置に用いるものとして有用である。
【符号の説明】
【0106】
1 挿通部材固定装置
2 挿通部材
3 本体部
4 チャック部
4a、4b 分割体
5 内シール部
6 挿通部材支持部
6a、7a 外周
7 移動規制部
8 回り止め部材
82 頭部
84 軸部
9 外シール部
22 外周
31 第一開口部
32 第二開口部
33 連通部
34 傾斜内周面
35 固定部
36 回り止め取付部
37 凹部
42 挿通部
44 接触部
45 シール当接部
46 被回り止め部
48 規制部当接部
52 貫通孔
54 当接部
54a チャック部側当接部
54b 規制部側当接部
56 逃げ部
62 他方の端部
63 本体部側端部
65 支持部
67 被挟持部
71 本体部接続部
72 内シール部押圧部
73 当接部
75 チャック押圧部
76 収容部
77 接続操作部
86 シール部
S1 孔
312 螺合部
352 フランジ部
362 台部
364 貫通孔
442 接触面
712 被螺合部
図1
図2
図3
図4