(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】移動体、位置決め方法、及び位置決めシステム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20220802BHJP
G01C 15/02 20060101ALI20220802BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20220802BHJP
【FI】
G01C15/00 103C
G01C15/02
G05D1/02 F
(21)【出願番号】P 2018237686
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】512326931
【氏名又は名称】株式会社移動ロボット研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 壮広
(72)【発明者】
【氏名】宮口 幹太
(72)【発明者】
【氏名】小柳 栄次
(72)【発明者】
【氏名】宮重 正幸
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-198330(JP,A)
【文献】特開2017-15523(JP,A)
【文献】特表2014-522064(JP,A)
【文献】特開平2-123404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距用レーザ光を目標位置へ向けて照射する照射工程と、
光拡散板と床面に対する作業を行うための床面作業部とを含んで構成される作業機構を備える移動体のうちの、前記光拡散板が第1の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置と、前記光拡散板が第2の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置とに基づいて、前記床面作業部と前記目標位置との間の位置関係を算出する位置関係算出工程と、
前記位置関係に基づいて、前記床面作業部の位置を調整する調整工程と、
を含む位置決め方法。
【請求項2】
前記移動体を前記目標位置の方向へ移動させる移動工程を更に含み、
前記位置関係算出工程では、前記移動体が停止した位置において、前記光拡散板が第1の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置と、前記光拡散板が第2の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置とに基づいて、前記位置関係を算出する、
請求項1に記載の位置決め方法。
【請求項3】
前記照射工程によって照射された前記レーザ光と、前記光拡散板の面とが交差するように前記光拡散板を回転させる回転工程を更に含み、
前記位置関係算出工程では、前記回転工程によって回転された前記光拡散板が第1の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置と、前記光拡散板が第2の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置とに基づいて、前記位置関係を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の位置決め方法。
【請求項4】
複数の前記目標位置が存在する場合であって、複数の前記目標位置の各々へ前記移動体を移動させる際に、前記移動に要する時間と前記レーザ光と前記光拡散板の面とが交差するように前記光拡散板を回転させるのに要する時間との和を表す時間総和を算出し、前記時間総和が小さくなるような複数の前記目標位置の各々の間の移動経路を設定する設定工程と、
前記設定工程において設定された前記移動経路に応じて、前記移動体を移動させる移動工程と、を更に含む、
請求項3に記載の位置決め方法。
【請求項5】
光拡散板と床面に対する作業を行うための床面作業部とを含んで構成され、かつ移動可能な作業機構と、
前記光拡散板の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記光拡散板の画像に基づいて、前記光拡散板が第1の位置であるときに前記光拡散板に写ったレーザ光の位置と、前記光拡散板が第2の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置とを算出し、該算出結果を用いて前記床面作業部と前記レーザ光が照射された位置を表す目標位置との間の位置関係を算出し、前記位置関係に基づいて、前記床面作業部の位置を調整する制御部と、
を備える移動体。
【請求項6】
測距用レーザ光を目標位置へ向けて照射するレーザ装置と、
請求項5に記載の移動体と、
を備える位置決めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体、位置決め方法、及び位置決めシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の位置検出方法及び装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の技術では、レーザポインタロボットの単独のレーザ光源から、対象とする物体に対して2本のレーザ光を順次照射する。そして、第1のレーザスポットの重心位置と第2のレーザスポットの重心位置を物体の物体内座標系で計測する。これにより、対象物体のエリア座標系での位置が検出される。
【0003】
また、設備機器等の据え付け位置の墨打ちを行うことができる据付面墨打ち装置が知られている(例えば、特許文献2)。特許文献2に記載の技術において、移動体20が備える上部プレート27aは、上面に計測ターゲット30が設けられている。また、計測ターゲット30は三次元計測手段80のレーザポインタが照射される箇所である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3731123号公報
【文献】特開2017-15523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、位置検出対象物体が位置する床面に対してレーザ光を照射するため、レーザスポットが広がってしまい、位置検出対象物体の位置を精度良く検出することができない。位置検出対象物体の位置を精度良く検出するためには、高精度なレーザ機器が必要となるため、システムの構成が複雑となる。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の技術では、実質的に計測ターゲット30を追尾する機能が必要であり、システムの構成が複雑となる。また、これらの技術を用いる場合には、システムの構成が複雑となるため、システムが高価となる。このため、簡易な構成によって墨打ちの位置決めを行うことができない、という課題がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して、移動体による作業の位置決めを簡易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の位置決め方法は、測距用レーザ光を目標位置へ向けて照射する照射工程と、光拡散板と床面に対する作業を行うための床面作業部とを含んで構成される作業機構を備える移動体のうちの、前記光拡散板が第1の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置と、前記光拡散板が第2の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置とに基づいて、前記床面作業部と前記目標位置との間の位置関係を算出する位置関係算出工程と、前記位置関係に基づいて、前記床面作業部の位置を調整する調整工程と、を含んで構成されている。これにより、移動体による作業の位置決めを簡易に行うことができる。
【0009】
本発明の位置決め方法は、前記移動体を前記目標位置の方向へ移動させる移動工程を更に含み、前記位置関係算出工程では、前記移動体が停止した位置において、前記光拡散板が第1の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置と、前記光拡散板が第2の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置とに基づいて、前記位置関係を算出するようにすることができる。
【0010】
本発明の位置決め方法は、前記照射工程によって照射された前記レーザ光と、前記光拡散板の面とが交差するように前記光拡散板を回転させる回転工程を更に含み、前記位置関係算出工程では、前記回転工程によって回転された前記光拡散板が第1の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置と、前記光拡散板が第2の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置とに基づいて、前記位置関係を算出するようにすることができる。これにより、システムが自動追尾機能を有しない場合であっても、移動体による作業の位置決めを簡易に行うことができる。
【0011】
本発明の位置決め方法は、複数の前記目標位置が存在する場合であって、複数の前記目標位置の各々へ前記移動体を移動させる際に、前記移動に要する時間と前記レーザ光と前記光拡散板の面とが交差するように前記光拡散板を回転させるのに要する時間との和を表す時間総和を算出し、前記時間総和が小さくなるような複数の前記目標位置の各々の間の移動経路を設定する設定工程と、前記設定工程において設定された前記移動経路に応じて、前記移動体を移動させる移動工程と、を更に含むようにすることができる。これにより、複数の目標位置が存在する場合に、移動体による作業の位置決めを効率的に行うことができる。
【0012】
本発明の移動体は、光拡散板と床面に対する作業を行うための床面作業部とを含んで構成され、かつ移動可能な作業機構と、前記光拡散板の画像を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記光拡散板の画像に基づいて、前記光拡散板が第1の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置と、前記光拡散板が第2の位置であるときに前記光拡散板に写った前記レーザ光の位置とを算出し、該算出結果を用いて前記床面作業部と前記目標位置との間の位置関係を算出し、前記位置関係に基づいて、前記床面作業部の位置を調整する制御部と、を備える移動体である。
【0013】
本発明の位置決めシステムは、測距用レーザ光を目標位置へ向けて照射するレーザ装置と、本発明の移動体と、を備える位置決めシステムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動体による作業の位置決めを簡易に行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る位置決めシステムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態の位置決めシステムの制御系の機能的な構成例を示す図である。
【
図4】床面作業ロボットの構成の一例を示す図である。
【
図5】グローバル座標系と位置決めシステムの構成を説明するための説明図である。
【
図6】本実施形態における床面作業ロボットによる墨出しの手順を説明するための説明図である。
【
図7】床面作業ロボットと目標位置との間の位置関係と光拡散板の画像とを説明するための説明図である。
【
図8】床面作業ロボットと目標位置との間の位置関係と光拡散板の画像とを説明するための説明図である。
【
図9】床面作業ロボットによる墨出しにおける前半部分の処理を示すシーケンス図である。
【
図10】床面作業ロボットによる墨出しにおける前半部分の処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
[第1実施形態]
【0018】
<位置決めシステムの構成>
【0019】
図1は、第1実施形態に係る位置決めシステム10の構成の一例を示す図である。
図1に示されるように、位置決めシステム10は、測距用レーザ光を目標位置へ向けて照射するレーザ装置12と、位置決めされた位置において床面に対する作業を行う床面作業ロボット14とを含む。本実施形態では、床面作業ロボット14が建設現場の床面に対して墨出しを行う場合を例に説明する。
【0020】
また、
図2に、位置決めシステム10の制御系の構成の一例を示す。
図2に示されるように、位置決めシステム10のレーザ装置12の制御系は、機能的には、レーザ制御部12Aと、レーザ通信部12Bとを備えている。また、
図2に示されるように、位置決めシステム10の床面作業ロボット14の制御系は、ロボット制御機器14Aと、カメラ14Bと、移動駆動モータ14Cと、位置決め駆動モータ14Dとを備えている。
【0021】
(レーザ装置)
【0022】
レーザ装置12のレーザ制御部12Aは、測距用レーザ光を目標位置へ向けて照射する。レーザ通信部12Bは、床面作業ロボット14との間で情報のやり取りをする。
【0023】
レーザ装置12は、例えば、
図3に示されるように、3次元レーザ測定器によって実現される。3次元レーザ測定器であるレーザ装置12は、レーザ制御部12Aから出力された制御信号に応じて、出力口12Xから測距用レーザを出力する。測距用レーザは、制御信号によって指定された方位に対して照射され、床面と略平行に照射される。また、レーザ装置12は、測距用レーザが照射された対象物までの水平距離を測定する。
【0024】
レーザ装置12は、
図3に示されるように、Z軸まわり(方位方向)に回転する。レーザ装置12は、床面に対して水平な軸と垂直な軸を中心軸として回転する2組のモータ(図示省略)を備えており、指定した任意の方向へ向けて測距用レーザを照射することができる。
【0025】
(床面作業ロボット)
【0026】
図4は、床面作業ロボット14の構成の一例を示す図である。床面作業ロボット14は、
図4に示されるように、制御部の一例としてのロボット制御機器14A、撮像部の一例としてのカメラ14B、移動機構16、移動機構16を駆動させるための移動駆動モータ14C、ペン描画装置18、ペン描画装置18を移動させるための位置決め駆動モータ14D、支持フレーム20、及び光拡散板22を備える。なお、
図4の下段の図は、
図4の上段の図におけるX-X’面の断面図である。床面作業ロボット14は移動体の一例である。
【0027】
本実施形態の移動機構16は、
図4に示されるように、独立2輪駆動機構である。
【0028】
移動駆動モータ14Cは、ロボット制御機器14Aの制御に応じて動力を出力する。移動駆動モータ14Cから出力された動力に応じて移動機構16が駆動する。
【0029】
ペン描画装置18は、支持フレーム20に設置されている。また、ペン描画装置18は、x‐yリニアステージ18Aと、ペンホルダー18Bと、ペン18Cとを備えている。ペンホルダー18B及びペン18Cは、本発明の床面に対する作業を行うための床面作業部の一例である。
【0030】
x‐yリニアステージ18Aは、床面作業ロボット14の座標系を表すロボット座標系のXR軸及びYR軸方向に移動可能なように構成されている。
【0031】
ペンホルダー18Bには、ペン18Cを鉛直方向に上下させるペン上げ下げ機構(図示省略)が備えられている。ペンホルダー18Bは、任意の位置でペン先を床面に押し付けることができ、建設現場の床面に墨出しをすることができる。したがって、x‐yリニアステージ18Aとペンホルダー18Bのペン上げ下げ機構(図示省略)とを制御することにより、床面に任意の文字や図形を描くことができる。
【0032】
位置決め駆動モータ14Dは、ロボット制御機器14Aの制御に応じて動力を出力する。位置決め駆動モータ14Dから出力された動力に応じて、x‐yリニアステージ18Aが移動し、ペンホルダー18B及びペン18Cが所定の位置となる。
【0033】
光拡散板22は、
図4に示されるように、ペンホルダー18Bの上部に配置される。また、光拡散板22は、床面に対して略垂直であって、かつ光拡散板22の平面がロボット座標系のX
R軸に一致又は平行であるように配置される。また、
図4に示されるように、光拡散板22の中心軸はペン18Cの中心軸と略一致するように配置されている。
【0034】
なお、ペン描画装置18と光拡散板22とカメラ14Bとは一体となっており、一体として移動可能なような構成となっている。具体的には、位置決め駆動モータ14Dから出力された動力に応じて、ペン描画装置18と光拡散板22とカメラ14Bとが移動する。
【0035】
カメラ14Bは、ペンホルダー18Bの上部に配置される。また、カメラ14Bは、光拡散板22に対向するように配置される。そして、カメラ14Bは、
図4に示されるD方向から、光拡散板22の画像を撮像する。ペン描画装置18及び光拡散板22は、本発明の作業機構の一例である。
【0036】
ロボット制御機器14Aは、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、及びネットワークインタフェース等を含んで構成されている。ロボット制御機器14Aは、例えば半導体集積回路、より詳しくはApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)等によって構成されてもよい。ロボット制御機器14Aは、
図2に示されるように、機能的には、ロボット制御部140と、目標位置記憶部141と、ロボット通信部142とを備えている。
【0037】
ロボット制御部140は、カメラ14B、移動駆動モータ14C、及び位置決め駆動モータ14Dを制御する。また、目標位置記憶部141には、建設現場の床面に対する墨出しの目標位置に関する位置情報が格納されている。また、ロボット通信部142は、レーザ装置12との間で情報のやり取りをする。
【0038】
ロボット制御部140は、目標位置に関する位置情報を、目標位置記憶部141から読み出し、床面作業ロボット14を目標位置へ移動させるように移動駆動モータ14Cを制御する。なお、目標位置は複数存在するため、ロボット制御部140は、1つの目標位置に対する墨出しが完了すると、次の目標位置を目標位置記憶部141から読み出し、床面作業ロボット14を次の目標位置へ移動させるように、移動駆動モータ14Cを制御する。
【0039】
また、ロボット制御部140は、カメラ14Bを制御し、光拡散板22に写ったレーザ光を撮像する。また、ロボット制御部140は、移動駆動モータ14Cを制御し、床面作業ロボット14の移動機構16を駆動させる。
【0040】
また、ロボット制御部140は、カメラ14Bによって撮像された光拡散板22の画像に応じて、位置決め駆動モータ14Dを制御し、ロボット座標系のXR軸及びYR軸において、x‐yリニアステージ18Aを所定の方向へ移動させることにより、ペン18Cを目標位置へ移動させる。なお、ペン18Cを目標位置へ移動させる際には、ロボット制御部140は、光拡散板22とカメラ14Bとの間の位置関係を保ちながら、x‐yリニアステージ18A及びペンホルダー18Bの位置を制御する。位置決めの詳細に関しては後述する。
【0041】
(位置決めシステム10の作用)
【0042】
次に、本実施形態における位置決めシステム10の作用の概要について説明する。
【0043】
図5に示されるように、床面作業ロボット14が走行する平面においてグローバル座標系のX軸‐Y軸が設定される。この場合、位置P(x
p,y
p)にレーザ装置12が配置され、床面作業ロボット14の現在位置R
0(x
0,y
0)、床面作業ロボット14の姿勢α
0、及び現在の目標位置T
0(x
t0,y
t0)に対するレーザの照射方向θ
0は既知であることを前提とする。
【0044】
ここで、
図5に示されるように、床面作業ロボット14の姿勢α
0は、測距用レーザの照射方向の軸が床面作業ロボット14のロボット座標系のY
R軸に対して成す角とする。また、レーザの照射方向θ
0は、グローバル座標系のY軸に対してレーザの照射方向が成す角とする。
【0045】
床面作業ロボット14を現在位置R0(x0,y0)から次の目標位置T1(xt1,yt1)まで移動させる方法としては様々な方法が考えられるが、本実施形態においては独立2輪駆動機構を有する床面作業ロボット14の各車軸に取り付けられたエンコーダに応じた値に基づいて、既存技術であるオドメトリ手法に従って、床面作業ロボット14の現在位置を計算する。
【0046】
床面作業ロボット14を現在位置R0(x0,y0)から次の目標位置T1(xt1,yt1)まで移動させるためには、以下の手順(1)~(4)に従う。
【0047】
手順(1):
図6(a)に示されるように、レーザ装置12は、次の目標位置T
1(x
t1,y
t1)の方向に向けて測距用レーザを照射する。
【0048】
手順(2):
次に、
図6(b)に示されるように、床面作業ロボット14を角度α
0+β
0だけ超信地旋回させる。なお、α
0は既知であり、β
0は幾何的関係から容易に計算できる。
【0049】
手順(3):
図6(c)に示されるように、床面作業ロボット14を直進させる。ここでレーザ位置決めロボット位置P(x
p,y
p)、床面作業ロボットの中心位置を表す現在位置R
0(x
0,y
0)、次の目標位置T
1(x
t1,y
t1)の座標が既知であるため距離l
1を算出できる。
【0050】
手順(4):
図6(d)に示されるように、床面作業ロボット14を角度γ
1超信地旋回させる。γ
1は、幾何的関係から算出することができる。
【0051】
上記の手順(1)~(4)に従って移動することにより、原理的には、床面作業ロボット14の回転中心を表すR1(x1,y1)は目標位置T1の直上にあり、光拡散板がレーザ装置12から出力される測距用レーザに対して正対することになる。しかし、実際には床面と移動機構16に対応するタイヤとの摩擦、床面の不陸、移動機構16に対応するタイヤの滑り、及び制御周期のタイミング等により誤差を生じることになる。
【0052】
そこで、本実施形態では、床面作業ロボット14の現在位置R1(x1,y1)、姿勢α1、及び現在位置R1(x1,y1)と目標位置T1(xt1,yt1)との間の偏差(Δx,Δy)を次の手順(5)~(8)より求める。
【0053】
手順(5):
カメラ14Bによって撮像された光拡散板22の画像から、カメラ座標系における測距用レーザのスポット重心座標を算出した後、光拡散板22の中心軸から測距用レーザのレーザスポットまでの距離dspot1を算出する。
【0054】
図7(a)に示されるように、床面作業ロボット14の現在位置R
1(x
1,y
1)と目標位置T
1(x
t1,y
t1)とがずれている状況を考える。この場合、測距用レーザのレーザスポットは、spot1の位置となる。この状態において、レンズ歪み除去処理及び正対化処理後の光拡散板22の画像は、
図7(b)に示されるようになる。この光拡散板22の画像からカメラ座標系における測距用レーザのスポット重心座標を算出する。光拡散板22の画像は正対化処理が施されているため、レーザスポット重心座標の値を取得し、光拡散板22の中心軸からレーザスポットまでの距離d
spot1を算出することができる。
【0055】
手順(6):
次に、レーザ装置12は、レーザ装置12の位置P(xp,yp)から床面作業ロボット14の光拡散板22までの距離rmeasureを測定する。また、ロボット制御機器14Aは、レーザ装置12の位置P(xp,yp)から目標位置T1までの距離rt1を算出する。レーザ装置12の位置P(xp,yp)と目標位置T1の座標は既知であるため、距離rt1を算出することができる。
【0056】
手順(7):
図8(a)に示されるように、床面作業ロボット14は、ペン描画装置18を制御してY
R軸方向に、ペンホルダー18Bとペン18Cとカメラ14Bとを距離d
yだけ移動する。この場合、測距用レーザのレーザスポットは、spot2の位置となる。このとき、カメラ14Bによって撮像される光拡散板22の画像は、
図8(b)に示されるようになる。そして、床面作業ロボット14は、カメラ座標系におけるレーザスポット重心座標を算出し、光拡散板の中心軸からレーザスポットまでの距離d
spot2を算出する。
【0057】
手順(8):
手順(5)~(7)において算出又は測定された距離rt1,距離rmeasure,距離dspot1,及び距離dspot2を用いてR1(x1,y1),Δx,Δy,及び姿勢α1を幾何的関係から算出する。
【0058】
手順(9):
手順(8)で算出された(Δx,Δy)を用いて、ペン描画装置18の位置を制御することで次の目標位置T1(xt1,yt1)の床面上に任意の文字や図形を描くことができる。
【0059】
手順(1)~(9)を繰り返すことにより、複数の目標位置の床面上に順次任意の文字や図形を描くことができる。
【0060】
次に、
図9~
図10を参照して、位置決めシステム10の作用の詳細を説明する。位置決めシステム10が起動すると、
図9に示すシーケンスが実行される。
【0061】
ステップS100において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、目標位置記憶部141に格納された次の目標位置T1(xt1,yt1)を読み出す。
【0062】
ステップS101において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS100で読み出された次の目標位置T1(xt1,yt1)に基づき、測距用レーザの照射方向θ1を算出する。そして、ステップS101において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、ロボット通信部142を介して、照射方向θ1をレーザ装置12へ送信する。
【0063】
ステップS102において、レーザ装置12のレーザ通信部12Bは、上記ステップS101で床面作業ロボット14から送信された照射方向θ1を受信する。そして、ステップS102において、レーザ装置12のレーザ制御部12Aは、照射方向θ1へ測距用レーザを照射するようにレーザ装置12を制御する。これにより、照射方向θ1へ測距用レーザが照射される。
【0064】
ステップS104において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS102で算出された測距用レーザの照射方向θ1と、現在の目標位置T0(xt0,yt0)に応じた照射方向θ0と、現在の床面作業ロボット14の姿勢α0とに基づいて、幾何学的関係から、床面作業ロボット14の旋回角度β0を算出する。
【0065】
ステップS106において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS104で算出された旋回角度β0と現在の床面作業ロボット14の姿勢α0とに基づいて、床面作業ロボット14を角度(α0+β0)だけ超信地旋回させるように、移動駆動モータ14Cを制御する。これにより、移動駆動モータ14Cから出力される動力に応じて移動機構16が駆動し、床面作業ロボット14は角度(α0+β0)だけ超信地旋回する。
【0066】
ステップS107において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS100で読み出された次の目標位置T1(xt1,yt1)と、現在の床面作業ロボット14の位置R0(x0,y0)とに基づいて、現在の床面作業ロボット14の位置R0(x0,y0)から次の目標位置T1(xt1,yt1)までの距離l1を算出する。
【0067】
ステップS108において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、床面作業ロボット14を次の目標位置T1(xt1,yt1)の方向へ移動させる。具体的には、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS107で算出された距離l1を走行させるように移動駆動モータ14Cを制御する。移動駆動モータ14Cから出力される動力に応じて移動機構16が駆動し、床面作業ロボット14は次の目標位置T1(xt1,yt1)へ向けて移動する。そして、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS107で算出された距離l1の走行が終了すると、床面作業ロボット14を停止させるように、移動駆動モータ14Cを制御する。
【0068】
ステップS109において、レーザ装置12の位置P(xp,yp)と、次の目標位置T1(xt1,yt1)と、距離l1の走行前の床面作業ロボット14の位置R0(x0,y0)とに基づいて、角度γ1を算出する。角度γ1は、位置R0(x0,y0)から位置R1(x0,y0)までの直線と、位置P(xp,yp)から次の目標位置T1(xt1,yt1)までの直線とが交差する角度であるため、容易に算出される。
【0069】
ステップS110において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、レーザ装置12から照射されたレーザ光と光拡散板22の面とが交差するように光拡散板22を回転させる。具体的には、ステップS110において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、床面作業ロボット14を、上記ステップS109で算出された角度γ1だけ超信地旋回させるように、移動駆動モータ14Cを制御する。これにより、移動駆動モータ14Cから出力される動力に応じて移動機構16が駆動し、床面作業ロボット14は角度γ1だけ超信地旋回する。
【0070】
ステップS112において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、床面作業ロボット14が停止した位置において、光拡散板22を撮像するようにカメラ14Bを制御する。そして、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、カメラ14Bによって撮像された光拡散板22の画像を取得する。なお、このときの光拡散板22の位置を第1の位置とする。
【0071】
ステップS114において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS112で取得された、光拡散板22が第1の位置であるときに光拡散板22に写った測距用レーザ光の位置spot1を算出する。具体的には、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、カメラ座標系における測距用レーザのスポット重心座標を、測距用レーザ光の位置spot1として算出する。そして、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、光拡散板22に写った測距用レーザ光の位置に基づいて、カメラ座標系における光拡散板22の中心軸から測距用レーザのレーザスポットまでの距離dspot1を算出する。
【0072】
ステップS116において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、ロボット通信部142を介して、距離dspot1の算出が完了したことを表す制御信号をレーザ装置12へ送信する。
【0073】
次に
図10に示すステップS118において、レーザ装置12のレーザ通信部12Bは、上記ステップS116で床面作業ロボット14から送信された制御信号を受信する。そして、ステップS118において、レーザ装置12のレーザ制御部12Aは、レーザ装置12から床面作業ロボット14の光拡散板22までの距離r
measureを測定する。
【0074】
ステップS120において、レーザ装置12のレーザ制御部12Aは、上記ステップS118で算出された距離rmeasureを、レーザ通信部12Bを介して床面作業ロボット14へ送信する。
【0075】
ステップS122において、床面作業ロボット14のロボット通信部142は、上記ステップS120で送信された、距離rmeasureを受信する。
【0076】
ステップS123において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、レーザ装置12の位置P(xp,yp)から目標位置T1までの距離rt1を算出する。
【0077】
ステップS124において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、位置決め駆動モータ14Dを制御して、YR軸方向にペンホルダー18Bと光拡散板22とカメラ14Bとを距離dyだけ移動させる。距離dyは予め設定される。
【0078】
ステップS126において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、光拡散板22を撮像するようにカメラ14Bを制御する。そして、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、カメラ14Bによって撮像された光拡散板22の画像を取得する。なお、このときの光拡散板22の位置を第2の位置とする。
【0079】
ステップS128において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS126で取得された、光拡散板22が第2の位置であるときに光拡散板22に写った測距用レーザ光の位置spot2を算出する。上記ステップS114と同様に、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、カメラ座標系における測距用レーザのスポット重心座標を、測距用レーザ光の位置spot2として算出する。そして、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、光拡散板22に写った測距用レーザ光の位置に基づいて、カメラ座標系における光拡散板22の中心軸から測距用レーザのレーザスポットまでの距離dspot2を算出する。
【0080】
ステップS130において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS114で得られた算出結果と上記ステップS128で得られた算出結果とを用いて、ペンホルダー18B及びペン18Cと次の目標位置T1(xt1,yt1)との間の位置関係を算出する。具体的には、ステップS130において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS123でロボット通信部142により受信された距離rmeasureと、上記ステップS123で算出された距離rt1と、上記ステップS114で得られた距離dspot1と、上記ステップS128で得られた距離dspot2と、ペンホルダー18B、光拡散板22、及びカメラ14Bを移動させた距離dyと、照射方向θ1とに基づいて、幾何的関係から、床面作業ロボット14の位置R1(x1,y1)、床面作業ロボット14の姿勢α1、及び位置関係の一例としての偏差(Δx,Δy)を算出する。
【0081】
ステップS132において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS130で算出された偏差(Δx,Δy)に基づいて、ペンホルダー18B及びペン18Cの位置を調整する。具体的には、ステップS132において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、上記ステップS130で算出された偏差(Δx,Δy)がゼロになるように位置決め駆動モータ14Dを制御し、ペン描画装置18を移動させる。これにより、次の目標位置T1(xt1,yt1)の直上にペン描画装置18のペン18Cが位置することになる。
【0082】
ステップS134において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、ペン描画装置18のうちのペンホルダー18Bのペン上げ下げ機構(図示省略)を制御して、床面に墨出しを実行する。
【0083】
ステップS136において、床面作業ロボット14のロボット制御部140は、ロボット通信部142を介して、目標位置T1(xt1,yt1)での墨出しが完了したことを表す制御信号をレーザ装置12へ送信する。
【0084】
レーザ装置12のレーザ通信部12Bが制御信号を受信すると、レーザ装置12のレーザ制御部12Aは、ステップS100に戻り、更に次の目標位置の情報を読み出す。そして、ステップS102~ステップS136の各処理によって順次墨出しが実行される。
【0085】
以上説明したように、第1の実施形態では、レーザ光を目標位置へ向けて照射し、光拡散板22と床面に対する作業を行うためのペン18C及びペンホルダー18Bとを含んで構成されるペン描画装置を備える床面作業ロボット14のうちの、光拡散板22が第1の位置であるときに光拡散板22に写ったレーザ光の位置と、光拡散板22が第2の位置であるときに光拡散板22に写ったレーザ光の位置とに基づいて、ペン18C及びペンホルダー18Bと目標位置との間の位置関係を算出する。そして、第1の実施形態では、算出された位置関係に基づいて、ペンホルダー18B及びペン18Cの位置を調整する。これにより、移動体による作業の位置決めを簡易に行うことができる。また、システムが自動追尾機能を有しない場合であっても、移動体による作業の位置決めを簡易に行うことができる。
【0086】
例えば、特許第5516204号公報に記載の技術は、移動体の位置及び姿勢の検出のために高価なトータルステーションが利用され、更に移動体の位置検出用のプリズムを複数備える必要がある。このため、プリズムの識別及び視準に時間を要するとともに全体システムを構築する際のコストがかかる。
【0087】
これに対し、本実施形態では、トータルステーションに比べて安価な3次元レーザ測量機としてのレーザ装置を利用し、かつ位置関係を固定した光拡散板とカメラとを移動させることで、移動体の位置と姿勢とを計測する。これにより、プリズムを複数必要とせず、プリズムの視準及び識別といった処理も不要となるため、短時間での計測が可能になる。また、安価に位置決めシステムを構築することができる。
【0088】
また、本実施形態の位置決めシステム10は、光拡散板22とカメラ14Bの位置関係を変えずに移動させることで床面作業ロボット14の位置と姿勢とを計測する。光拡散板22とカメラ14Bの移動機構は、ペンホルダー18B及びペン18Cの移動機構と共用されるため、位置決めシステムを複雑化させず、かつコストを抑制することができる。
【0089】
[第2実施形態]
【0090】
次に、第2実施形態に係る位置決めシステム10について説明する。なお、第2実施形態に係る位置決めシステム10の構成は、第1実施形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
第2実施形態では、複数の目標位置が存在する場合に、複数の目標位置の各々へ床面作業ロボット14を移動させる際に、移動に要する時間と光拡散板22を回転させるのに要する時間とを考慮して、複数の目標位置の各々の間の移動経路を設定する点が、第1実施形態と異なる。
【0092】
本実施形態においては、墨出しを行う際に、床面作業ロボット14の光拡散板22をレーザ装置12に対して略垂直になるように姿勢を制御する必要がある。このため、複数の目標位置が存在する場合には、墨出しを順次行う経路によっては姿勢制御のために多くの時間を費やす。しかし、墨出しを順次行う経路を適切に選択すれば、複数の目標位置への墨出しを効率化することができる。また、複数の目標位置への墨出しを効率化することは、床面作業ロボット14のバッテリー消費の観点からも合理的である。
【0093】
そこで、第2実施形態においては、複数の目標位置が存在する場合に、複数の目標位置の各々へ床面作業ロボット14を移動させる際に、移動に要する時間と光拡散板22を回転させるのに要する時間とを考慮して、床面作業ロボット14の移動経路を設定する。
【0094】
この場合、床面作業ロボット14の現在位置から次の目標位置に移動して墨出しを行うためには、旋回、直進又は後退、及び再度の旋回の3つの動作をする必要がある。本実施形態では、これら一連の動作に要する時間をコストとして設定する。このコストは、現在位置を表す座標と、次の目標位置を表す座標と、床面作業ロボット14の移動速度V、床面作業ロボット14の旋回速度ω、レーザ装置12の座標P(xp,yp)が既知であれば算出できる。
【0095】
具体的には、まず、床面作業ロボット14のロボット制御機器14Aのロボット制御部140は、目標位置記憶部141に格納された複数の目標位置の各々を読み出す。そして、ロボット制御部140は、床面作業ロボット14を、複数の目標位置の各々へ仮想的に移動させた際に要する時間をシミュレーションする。以下、シミュレーションについて詳しく説明する。
【0096】
まず、ロボット制御部140は、現在位置を表す座標と、次の目標位置を表す座標と、現在の床面作業ロボット14の姿勢と、床面作業ロボット14の旋回速度ωとに基づいて、次の目標位置へ移動する際の旋回に要する時間を算出する。
【0097】
次に、ロボット制御部140は、現在位置を表す座標と、次の目標位置を表す座標と、床面作業ロボット14の移動速度Vとに基づいて、現在位置から次の目標位置への移動に要する時間を算出する。
【0098】
次に、ロボット制御部140は、次の目標位置を表す座標と、現在の床面作業ロボット14の姿勢と、レーザ装置12の座標P(xp,yp)と、床面作業ロボット14の旋回速度ωとに基づいて、レーザ装置12から出力されるレーザ光と光拡散板22の面とが略垂直に交差するように光拡散板22を回転させるのに要する時間を算出する。
【0099】
次に、ロボット制御部140は、移動に要する時間と、レーザ光と光拡散板22の面とが略垂直交差するように光拡散板22を回転させるのに要する時間との和を表す時間総和を算出する。そして、ロボット制御部140は、時間総和が小さくなるような複数の目標位置の各々の間の移動経路を設定する。
【0100】
ロボット制御部140は、設定された移動経路に応じて、床面作業ロボット14を移動させるように、移動駆動モータ14Cを制御する。これにより、複数の目標位置に対する墨出しに要する時間が短くなるような移動経路に沿って墨出しがなされる。
【0101】
第2実施形態に係る位置決めシステムの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
以上説明したように、第2実施形態の位置決めシステムは、複数の目標位置が存在する場合に、複数の目標位置の各々へ床面作業ロボット14を移動させる際に、移動に要する時間とレーザ光と光拡散板22の面とが交差するように光拡散板22を回転させるのに要する時間との和を表す時間総和を算出し、当該時間総和が小さくなるような複数の目標位置の各々の間の移動経路を設定する。そして、第2実施形態の位置決めシステムは、設定された移動経路に応じて、床面作業ロボット14を移動させる。これにより、複数の目標位置が存在する場合に、移動体による作業の位置決めを効率的に行うことができる。
【0103】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0104】
例えば、上記各実施形態では、位置決めシステムの構成が、
図1及び
図2に示されるような場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ロボット制御機器14Aは、床面作業ロボット14に搭載せずに、外部装置として構成するようにしてもよい。また、目標位置記憶部141及びレーザ制御部12Aに関しても、レーザ装置12に搭載せずに、外部装置として構成するようにしてもよい。この場合には、レーザ装置12及び床面作業ロボット14は、外部装置との間の通信処理によって制御が行われる。
【0105】
また、上記各実施形態においては、床面作業部がペンホルダー18B及びペン18Cである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ペンホルダー18B及びペン18Cを、床面への削孔装置又は床面へのピン打ち装置に変更するようにしてもよい。これにより、床面の穴あけ又はピン打ちを行うことができる。
【0106】
また、上記ではプログラムが記憶部(図示省略)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体の何れかに記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0107】
12 レーザ装置
12A レーザ制御部
12B レーザ通信部
12X 出力口
14 ロボット制御機器
14 床面作業ロボット
14A ロボット制御機器
14B カメラ
14C 移動駆動モータ
14D 位置決め駆動モータ
16 移動機構
18 ペン描画装置
18A リニアステージ
18B ペンホルダー
18C ペン
20 支持フレーム
22 光拡散板
140 ロボット制御部
141 目標位置記憶部
142 ロボット通信部