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特許7115685パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20220802BHJP
   F16D 65/28 20060101ALI20220802BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20220802BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20220802BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20220802BHJP
   F16D 125/70 20120101ALN20220802BHJP
   F16D 127/02 20120101ALN20220802BHJP
   F16D 129/04 20120101ALN20220802BHJP
【FI】
B60T13/74 H
F16D65/28
B60T17/18
F16D121:24
F16D125:40
F16D125:70
F16D127:02
F16D129:04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018242418
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020104553
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112082
【氏名又は名称】ヒルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 進治
(72)【発明者】
【氏名】小寺 晴大
(72)【発明者】
【氏名】石井 淳二
(72)【発明者】
【氏名】野田 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】荒木 功二
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正晃
(72)【発明者】
【氏名】大月 俊一
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-149536(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0345580(US,A1)
【文献】特開2000-275497(JP,A)
【文献】特開2018-106436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18
B60T 13/74
F16D 65/28
F16D 121/24
F16D 125/40
F16D 125/70
F16D 127/02
F16D 129/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置固定で中心軸線を軸として回転する駆動ギアと、前記駆動ギアの中心軸線上を回転不能に進退する牽引ロッドとを有し、前記駆動ギアに設けたギア側ネジと前記牽引ロッドに設けたロッド側ネジとを螺合させ、電動モータが駆動ギアを回転させると牽引ロッドが進退し、前記牽引ロッドの進退を伝達してブレーキ機構を制動又は解除する電動パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータにおいて、
ギア側ネジを雌ネジ、ロッド側ネジを雄ネジとして、
牽引ロッドは、駆動ギアに近い側の端から、ロッド側ネジを設けないガイドを突出させ、駆動ギアから遠い側の端に対向して配置されたストッパと前記端との間に、付勢手段としての弾性部材を介在させたことを特徴とするパーキングブレーキ装置の電動アクチュエータ。
【請求項2】
位置固定で中心軸線を軸として回転する駆動ギアと、前記駆動ギアの中心軸線上を回転不能に進退する牽引ロッドとを有し、前記駆動ギアに設けたギア側ネジと前記牽引ロッドに設けたロッド側ネジとを螺合させ、電動モータが駆動ギアを回転させると牽引ロッドが進退し、前記牽引ロッドの進退を伝達してブレーキ機構を制動又は解除する電動パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータにおいて、
ギア側ネジを雄ネジ、ロッド側ネジを雌ネジとして、
駆動ギアは、牽引ロッドに近い側の端から、ギア側ネジを設けないガイドを突出させ、
牽引ロッドは、駆動ギアから遠い側の端に対向して配置されたストッパと前記端との間に、付勢手段としての弾性部材を介在させたことを特徴とするパーキングブレーキ装置の電動アクチュエータ。
【請求項3】
ガイドは、雌ネジに外周面を摺接させる円柱状である請求項1又は2いずれか記載のパーキングブレーキ装置の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
位置固定で中心軸線を軸として回転する駆動ギアと、前記駆動ギアの中心軸線上を回転不能に進退する牽引ロッドとを有し、前記駆動ギアに設けたギア側ネジ(例えば雌ネジ)と前記牽引ロッドに設けたロッド側ネジ(例えば雄ネジ)とを螺合させ、電動モータが駆動ギアを正回転させると牽引ロッドを前進させ、駆動ギアを逆回転させると牽引ロッドを後退させて、前記牽引ロッドの進退を伝達してブレーキ機構を制動又は解除する電動パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータは、ブレーキ機構を解除した状態から、牽引ロッドが更に後退すると、牽引ロッドが破損してしまう虞があることから、牽引ロッドの過度な後退を防止する必要がある(特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1は、減速ギア機構(変換機構)に負荷付与機構を設け、牽引ロッドが過度に後退すると前記負荷付与機構が電動モータ(電気モータ)に負荷を与え、前記負荷が一定以上になると前記電動モータの回転を停止する電動パーキングブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)の電動アクチュエータを開示する(特許文献1・[請求項1])。負荷付与機構は、牽引ロッドに当接するストッパや、牽引ロッドに一体となった減速ギア機構のギアに当接する摩擦部材が例示される。特許文献2も、特許文献1同様の構成を開示する(特許文献2・[請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-004430公報
【文献】特開2016-043798公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する電動パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータは、牽引ロッドの過度な後退を防止するため、電動モータに負荷を与える負荷付与機構が必要である。しかし、牽引ロッドの過度な後退を防止できるのは、負荷付与機構やモータ制御手段が正しく作動している場合で、負荷の検知が間違っていたり、モータ制御手段がうまく働かなかったりして、電動モータが回り続けると牽引ロッドが後退を続けてしまう。そこで、なんらかの不具合によって電動モータが回り続けても、牽引ロッドの過度な後退が防止される電動パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータについて検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
検討の結果開発したものが、位置固定で中心軸線を軸として回転する駆動ギアと、前記駆動ギアの中心軸線上を回転不能に進退する牽引ロッドとを有し、前記駆動ギアに設けたギア側ネジと前記牽引ロッドに設けたロッド側ネジとを螺合させ、電動モータが駆動ギアを回転させると牽引ロッドが進退し、前記牽引ロッドの進退を伝達してブレーキ機構を制動又は解除する電動パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータにおいて、ギア側ネジを雌ネジ、ロッド側ネジを雄ネジとして、牽引ロッドは、駆動ギアに近い側の端から、ロッド側ネジを設けないガイドを突出させ、駆動ギアに向けた付勢手段を設けたことを特徴とするパーキングブレーキ装置の電動アクチュエータである。
【0007】
ギア側ネジ及びロッド側ネジは、雌ネジ及び雄ネジの関係が逆でもよい。具体的には、位置固定で中心軸線を軸として回転する駆動ギアと、前記駆動ギアの中心軸線上を回転不能に進退する牽引ロッドとを有し、前記駆動ギアに設けたギア側ネジと前記牽引ロッドに設けたロッド側ネジとを螺合させ、電動モータが駆動ギアを回転させると牽引ロッドが進退し、前記牽引ロッドの進退を伝達してブレーキ機構を制動又は解除する電動パーキングブレーキ装置の電動アクチュエータにおいて、ギア側ネジを雄ネジ、ロッド側ネジを雌ネジとして、駆動ギアは、牽引ロッドに近い側の端から、ギア側ネジを設けないガイドを突出させ、牽引ロッドは、駆動ギアに向けた付勢手段を設けたことを特徴とするパーキングブレーキ装置の電動アクチュエータである。
【0008】
牽引ロッドは、正回転する駆動ギアに捩じ込まれる移動を前進、逆回転する駆動ギアからネジ戻される移動を後退とする。例えばブレーキドラムに向けてブレーキシューを押し付けるブレーキレバーから構成されるブレーキ機構は、牽引ロッドをブレーキレバーに直接接続したり、牽引ロッドの駆動ギアから遠い側より延ばしたブレーキロッド又はブレーキケーブルを前記ブレーキレバーに接続したりして、前記牽引ロッドの進退をブレーキレバーに伝達させる。駆動ギア及び牽引ロッドは、例えば電動アクチュエータのケースに収容される。この場合、駆動ギアは回転自在かつ位置固定でケースに保持され、牽引ロッドは回転不能及び進退自在にケースに保持される。
【0009】
本発明の電動アクチュエータは、駆動ギアが正回転して牽引ロッドが前進し、ブレーキ機構が制動状態になると、前記ブレーキ機構が牽引ロッドの進退を受け付けなくなり、牽引ロッドの前進が制限される。また、駆動ギアが逆回転して牽引ロッドが後退すると、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除されて駆動ギアが空回りし、牽引ロッドの後退が制限される。ここで、駆動ギアが空回りして後退制限された牽引ロッドは、ガイドを駆動ギアに挿入する(ギア側ネジを雌ネジ、ロッド側ネジを雄ネジの場合)又は駆動ギアからガイドを挿入させて(ギア側ネジを雄ネジ、ロッド側ネジを雌ネジの場合)、付勢手段により駆動ギアに向けて押された状態にある。これにより、再び駆動ギアが正回転すると、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとが螺合し、牽引ロッドが前進する。
【0010】
ガイドは、雌ネジに外周面を摺接させる円柱状であると、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除されても、駆動ギアと牽引ロッドとが互いの中心軸線を一致させた位置関係でガイドを駆動ギアに挿入させたままにできる。ギア側ネジが雌ネジの場合、ガイドはギア側ネジに外周面を摺接させる円柱状で、ギア側ネジが雄ネジの場合、ガイドはギア側ネジに内周面を摺接させる円柱状である。これにより、再び駆動ギアが正回転すると、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとが円滑に螺合する。また、ガイドが常に雌ネジに摺接することから、雌ネジから離れたガイドが前記雌ネジに衝突及び離反を繰り返して雌ネジを傷める虞もない。
【0011】
牽引ロッドは、駆動ギアに向けて付勢できれば、押す付勢手段又は引っ張る付勢手段を問わない。例えば、牽引ロッドは、駆動ギアから遠い側の端に対向して配置されたストッパと前記端との間に、付勢手段としての弾性部材を介在させた構成がある。ストッパは、牽引ロッドを収容する電動アクチュエータのケースの壁面又は前記壁面に設けたブロックを例示できる。弾性部材は、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除された状態で牽引ロッドを駆動ギアに向けて付勢できればよく、牽引ロッドが前進した後は牽引ロッドから離れてもよい。弾性部材は、ゴムブロック、コイルスプリング、皿バネや板バネを例示できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパーキングブレーキ装置の電動アクチュエータは、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除されたところで、牽引ロッドの後退が制限される。これにより、牽引ロッドの過度な後退に起因する問題、例えば牽引ロッドの破損が回避される。牽引ロッドは、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除されたことで後退が制限されるので、何らかの不具合により電動モータが回り続けても、牽引ロッドが過度な後退をすることがない。このように、本発明のパーキングブレーキ装置の電動アクチュエータは、高いフェールセーフ能力を有する。
【0013】
ガイドは、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除された状態で、牽引ロッドが駆動ギアから大きく逸脱しないように、位置関係を制限する。また、付勢手段は、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除された状態で、牽引ロッドを駆動ギアに向けて押し込む。こうして、ガイドと付勢手段とが協働して、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除された状態から駆動ギアを正回転させれば、確実に牽引ロッドを前進させることができる。
【0014】
ガイドは、雌ネジに外周面を摺接させる円柱状であると、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除された状態から、がたつきなく、円滑に牽引ロッドを前進させ、駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとを再び螺合させることができる。付勢手段としての弾性部材は、牽引ロッドに駆動ギアに向けた付勢を簡易に実現する。特に、牽引ロッドが駆動ギアのギア側ネジと牽引ロッドのロッド側ネジとの螺合が解除された状態で圧縮されるコイルスプリングや皿バネは、牽引ロッドが前進すると圧縮が解除され、牽引ロッドに不要な負荷を与えない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用した電動アクチュエータを用いた電動パーキングブレーキ装置の一例を表す側面図である。
図2】本例の電動アクチュエータを表す部分断面図である。
図3】別例1の電動アクチュエータを表す部分断面図である。
図4】別例2の電動アクチュエータを表す部分断面図である。
図5】ブレーキ機構を制動状態にした本例の電動パーキングブレーキ装置を表す側面図である。
図6】ブレーキ機構を制動状態にした本例の電動アクチュエータを表す部分断面図である。
図7】ブレーキ機構を解除する途中の本例の電動パーキングブレーキ装置を表す側面図である。
図8】ブレーキ機構を解除する途中の本例の電動アクチュエータを表す部分断面図である。
図9】ブレーキ機構を解除状態にした本例の電動パーキングブレーキ装置を表す側面図である。
図10】ブレーキ機構を解除状態にした本例の電動アクチュエータを表す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の電動アクチュエータ1は、図1及び図2に見られるように、例えばブレーキドラム(図示略)に向けてブレーキシュー(図示略)を押し付けるブレーキレバー13から構成されるブレーキ機構の前記ブレーキレバー13を揺動させるブレーキケーブル12に牽引ロッド3の進退を伝達させる。電動アクチュエータ1は、牽引ロッド3の進退を直接ブレーキレバー13に伝達させたり、可撓性のあるブレーキケーブル12に代えて、剛性のあるブレーキロッドを用いて伝達させたりしてもよい。
【0017】
本例の電動アクチュエータ1は、前後(図2中左右)に三分割されるケース11に、電動モータ4、減速ギア機構41、駆動ギア2及び牽引ロッド3を収容する。電動モータ4に電力及び制御信号を送る電気ケーブル42は、ケース11に嵌め込まれた電気ケーブル用挿通ブロック116を通じてケース11内に引き込まれ、電動モータ4に接続される。牽引ロッド3に接続されるブレーキケーブル12は、ケース11に嵌め込まれたブレーキケーブル用挿通ブロック115を通じてケース外へ引き出され、自在継手131を介してブレーキレバー13に接続される。
【0018】
駆動ギア2は、金属製の部材で、ケース11に設けられたギア保持空間111に収容され、位置固定で中心軸線Lpを軸として回転する。本例の駆動ギア2は、内周面に雌ネジであるギア側ネジ211を設けた円筒状のギア本体部21(図2中右)と、減速ギア機構41に噛み合う伝達ギア22(図2中左)とを一体にした構成である。伝達ギア22は、ギア本体部21と反対側に円筒状のボス221を突出させる。駆動ギア2は、ギア本体部2のギア側雌ネジ211から伝達ギア22のボス221に貫通する孔の内周面に、雌ネジであるギア側雌ネジ211を設けている。本例のケース11は、前記ボス221に対向する位置に、ギア保持空間111に連続するガイド用空間114を設けている。
【0019】
ギア保持空間111は、ギア本体部21の後面に摺接する壁面と、ボス221の前面に摺接する壁面とに挟まれたケース11内部の空間で、ギア本体部21及びボス221それぞれに対応した断面円形の空間と、伝達ギア22を収容する空間とを有する。ギア本体部21及びボス221は、対応する断面円形の空間に、ベアリング又はブッシュを介して回転自在に嵌合させる。また、ギア本体部21及びボス221は、それぞれケース11の壁面に摺接しながら、進退方向に掛合する。こうして、駆動ギア2は、減速ギア機構41から伝達ギア22が回転動力を受けると、ギア保持空間111内で進退不能に回転する。
【0020】
牽引ロッド3は、金属製の部材で、ケース11に設けられたロッド保持空間113に収容され、中心軸線Lrを駆動ギア2の中心軸線Lpに一致させ、前記駆動ギア2の中心軸線Lp上を回転不能に進退する。本例の牽引ロッド3は、断面方形のロッド本体部31(図2中右)と、外周面に雄ネジであるロッド側ネジ321を設けた円柱状のロッドネジ部32(図2中真中)と、前記ロッドネジ部32の駆動ギア2に近い側の端から突出させたガイド33とを一体にした構成である。ガイド33は、ロッド側ネジ321を設けないロッドネジ部32の延長部分である。
【0021】
付勢手段であるコイルスプリング34は、ロッド本体部31に接続したブレーキケーブル12に遊嵌し、ケース11の壁面をストッパとして、ロッド本体部31の駆動ギア2から遠い側の端と前記壁面との間に介在する。本例のコイルスプリング34は、駆動ギア2のギア側ネジ211と牽引ロッド3のロッド側ネジ321との螺合が解除される(図2の状態)と、ロッド本体部31とケース11の壁面とに挟まれて圧縮され、牽引ロッド3を駆動ギア2に向けて付勢する(図2中黒塗矢印参照)。しかし、本例のコイルスプリング34は、牽引ロッド3が前進すると、牽引ロッド3から離れる。
【0022】
ロッドネジ部32は、駆動ギア2のギア側ネジ211に螺合させる外周面のロッド側ネジ321を外周面に設けた断面円形の部材である。また、ガイド33は、前記ロッドネジ部32の延長部分であり、やはり断面円形の部材である。これに対して、ロッド本体部31は、断面方形で、同じ断面方形の空間を有するロッド保持空間113と、中心軸線Lrを中心とする回転方向に掛合する。これにより、牽引ロッド3は、回転する駆動ギア2のギア側ネジ211にロッド側ネジ321を螺合させると、回転不能に進退する。
【0023】
牽引ロッド3の付勢手段は、図3に見られる別例1の電動アクチュエータ1のように、後退した牽引ロッド3を引っ張る形のコイルスプリング34を用いてもよい。別例1の電動アクチュエータ1は、ロッド本体部31に設けたロッド側掛合部312と、ケース11に設けたケース側掛合部117との間に、伸縮方向を牽引ロッド3の進退方向と平行に、コイルスプリング34を架け渡されている。牽引ロッド3が前進(図3中左方へ移動)してブレーキケーブル12を引っ張ると、コイルスプリング34は縮退して牽引ロッド3に付勢力を与えない。逆に、牽引ロッド3が後退(図3中右方へ移動)してブレーキケーブル12を緩めると、コイルスプリング34は伸長して牽引ロッド3に付勢力を与える。
【0024】
本発明は、図4に見られるに、ギア側ネジ211を雄ネジ、ロッド側ネジ321を雌ネジとした別例2の電動アクチュエータ1としても構成される。別例2の電動アクチュエータ1は、ギア本体部21から雄ネジであるギア側ネジ231を外周面に設けたギアネジ部23を突出させ、前記ギア側ネジ231の端から牽引ロッド3に向けて断面円形のガイド24を突出させている。また、別例2の電動アクチュエータ1は、ロッド本体部31の内部をくり抜き、内周面に雌ネジであるロッド側ネジ311を設けている。ギア側ネジ231及びロッド側ネジ321の螺合量に応じて牽引ロッド3が進退することは、本例(図2参照)と同じである。
【0025】
本例の電動アクチュエータ1の動作を説明する。牽引ロッド3の進退は、電動モータ4が正回転すると駆動ギア2に捻じ込まれて前進(各図中左方への移動)し、逆に電動モータ4が逆回転すると駆動ギア2も逆回転して駆動ギア2から捻じ戻されて後退(各図中右方への移動)する。ブレーキ機構が解除状態(ブレーキレバー13は初期姿勢に復帰、図1参照)にあれば、図2に見られるように、牽引ロッド3は駆動ギア2のギア側ネジ211と牽引ロッド3のロッド側ネジ321との螺合が解除されるまで後退し、圧縮したコイルスプリング34により駆動ギア2に向けて付勢された状態にある(図2中黒塗矢印参照)。
【0026】
電動モータ4は、例えば駆動ギア2のギア側ネジ211と牽引ロッド3のロッド側ネジ321との螺合が解除されることによる負荷の低下を検知して、停止させることもできる。ここで、なんらかの不具合により、仮に電動モータ4が逆回転を続けると、駆動ギア2も逆回転を続ける。しかし、駆動ギア2のギア側ネジ211と牽引ロッド3のロッド側ネジ321との螺合が解除されているため、牽引ロッド3はこれ以上後退することはなく、駆動ギア2のみが空回りを続けることになる。
【0027】
ブレーキ機構の解除状態から電動モータ4を正回転させると、駆動ギア2が正回転を始める。ここで、牽引ロッド3は、圧縮されたコイルスプリング34により、常に駆動ギア2に向けて付勢されているから、駆動ギア2が正回転し始めると、解除されていた駆動ギア2のギア側ネジ211と牽引ロッド3のロッド側ネジ321と再び噛み合い、螺合し始める。こうして、駆動ギア2が正回転を続けると、図5及び図6に見られるように、牽引ロッド3が前進してブレーキケーブル13を引っ張り、ブレーキレバー13を傾倒させる。
【0028】
牽引ロッド3は、ロッド側ネジ321及びギア側ネジ211が螺合している間、駆動ギア2が正回転する限り、前進する。このとき、牽引ロッド3は、ガイド33をボス221端からケース11のガイド用空間114に突出させるだけで、前記ガイド33をケース11の壁面に衝突させることがない。駆動ギア2は、ブレーキケーブ12を引っ張る力が大きくなったり、ロッド本体部31の駆動ギア2に近い側の端がギア本体部21に係合したりして、電動モータ4に大きな負荷が掛かると、制御部(図示略)が前記電動モータ4を停止させ、正回転をやめる。
【0029】
ブレーキ機構の制動状態から電動モータ4を逆回転させると、駆動ギア2が逆回転を始めて、図7及び図8に見られるように、牽引ロッド3が後退してブレーキケーブル13を緩め、ブレーキレバー13を初期位置に向けて傾倒させる。牽引ロッド3は、ロッド側ネジ321及びギア側ネジ211が螺合している間、駆動ギア2が逆回転する限り、後退する。また、牽引ロッド3は、ロッド側ネジ321及びギア側ネジ211が螺合している間、コイルスプリング34を圧縮することもないので、前記コイルスプリング34の反発力を受けることなく、円滑に後退する。
【0030】
牽引ロッド3は、ロッド側ネジ321及びギア側ネジ211の螺合が解除される直前ぐらいから、コイルスプリング34を圧縮し始める。しかし、ロッド側ネジ321及びギア側ネジ211が螺合している限り、駆動ギア2の正回転により後退方向に移動させる力がコイルスプリング34の反発力(図10中黒塗り矢印参照)に勝るため、牽引ロッド3は、駆動ギア2が逆回転する限り、後退する。そして、ロッド側ネジ321及びギア側ネジ211の螺合が解除されると、牽引ロッド3は、図9及び図10に見られるように、後退しなくなる(図10中破線白抜き矢印参照)。
【0031】
牽引ロッド3は、ロッド側ネジ321及びギア側ネジ211の螺合が解除されても、ガイド33が駆動ギア2のギア側ネジ211に外周面を当接させて駆動ギア2に差し込まれている。これにより、駆動ギア2及牽引ロッド3は、互いの中心軸線Lp,Lr(図2参照)を一致させた位置関係が保たれている。そして、牽引ロッド3に圧縮されたコイルスプリング34が反発し、常にロッド側ネジ321端をギア側ネジ221単に押し当てている。これにより、再び駆動ギア2が正回転すると、ロッド側ネジ321及びギア側ネジ211が円滑に螺合する。
【符号の説明】
【0032】
1 電動アクチュエータ
11 ケース
12 ブレーキケーブル
13 ブレーキレバー
2 駆動ギア
21 ギア本体部
211 ギア側ネジ
22 伝達ギア
23 ギアネジ部
231 ギア側ネジ
24 ガイド
3 牽引ロッド
31 ロッド本体部
311 ロッド側ネジ
312 ロッド側掛合部
32 ロッドネジ部
321 ロッド側ネジ
33 ガイド
34 コイルスプリング
4 電動モータ
Lp 駆動ギアの中心軸線
Lr 牽引ロッドの中心軸線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10