(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】気密性能予測装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20220802BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20220802BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20220802BHJP
【FI】
G06Q50/08
E04B1/76 ESW
E04B1/76 400B
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2017223403
(22)【出願日】2017-11-21
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大屋 綾子
【審査官】久慈 渉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-080246(JP,A)
【文献】特開2013-217039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0262029(US,A1)
【文献】特開2003-193585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め測定した建物の気密性能を目的変数とし、かつ前記気密性能の測定時における前記気密性能に影響する予め定めた因子を説明変数とした重回帰分析により算出した回帰式を、前記目的変数とした前記気密性能の種類毎に記憶する記憶部と、
対象の建物の設計仕様情報を取得し、取得した前記設計仕様情報から前記因子を抽出する抽出部と、
前記目的変数の選択結果を入力する入力部と、
前記抽出部によって抽出された前記因子、及び前記入力部によって入力された前記選択結果に対応する前記記憶部に記憶された前記回帰式に基づいて、対象の建物における気密性能を予測する予測部と、
を備えた気密性能予測装置。
【請求項2】
前記因子は、分電盤の種類、空調方式、並びにスイッチ及びコンセントの種類と、断熱仕様、床面積、床仕上げ材の敷設面積、並びに、ポスト集合部、ユニットバス、及び躯体継ぎ目の気密の有無の少なくとも1つと、を含む請求項1に記載の気密性能予測装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記気密性能として建物の相当隙間面積及び総相当隙間面積の少なくとも
一方を予測する請求項1又は請求項2に記載の気密性能予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の気密性能を予測する気密性能予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、出力部と、建物の部屋の少なくとも1つの部位の断熱仕様に関するデータを格納するメモリと、プロセッサとを備える断熱効果の程度を示す情報を出力するためのコンピュータが提案されている。具体的には、プロセッサが、メモリを参照することによって、改修前の建物の部屋の断熱仕様と、改修後の建物の部屋の少なくとも1つの部位の断熱仕様とに基づいて、改修前、後の建物の部屋の断熱効果の程度を示す情報とを計算し、出力部に、改修前の建物の部屋の少なくとも1つの部位の断熱仕様及び改修前の建物の部屋の断熱効果の程度を示す情報を示す情報と、改修メニュー及び改修メニューに従った改修後の建物の部屋の断熱効果の程度を示す情報を示す情報と、を対応付けて出力する。これにより、改修または改築を施すことによる生じる効果を効率的に提示することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、既知の建物の気密性能を元に断熱効果やエネルギ損失を予測することができるが、建物の気密性能そのものを予測できない。
【0005】
また、気密性能は実際に測定により求めるため、設計段階での予測が難しく、予測できたとしても、設計の仕様が類似する建物しか予測できない。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、設計段階の建物の気密性能の予測が可能な気密性能予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
気密性能予測装置は、予め測定した建物の気密性能を目的変数とし、かつ前記気密性能の測定時における前記気密性能に影響する予め定めた因子を説明変数とした重回帰分析により算出した回帰式を記憶する記憶部と、対象の建物における前記因子を入力する入力部と、前記入力部によって入力された前記因子、及び前記記憶部に記憶された前記回帰式に基づいて、対象の建物における気密性能を予測する予測部と、を備える。
【0008】
第1の態様に係る気密性能予測装置によれば、記憶部には、予め測定した建物の気密性能を目的変数とし、かつ前記気密性能の測定時における前記気密性能に影響する予め定めた因子を説明変数とした重回帰分析により算出した回帰式が記憶される。
【0009】
入力部によって、新築やリフォームなどの対象の建物における気密性能に影響する予め定めた因子を入力する。
【0010】
そして、予測部では、入力部によって入力された因子、及び記憶部に記憶された回帰式に基づいて、対象の建物における気密性能が予測される。すなわち、重回帰分析により算出された回帰式に、対象の建物の仕様を因子として入力することで、設計段階の建物の気密性能を予測することができる。
【0011】
また、上記目的を達成するために第1の態様に係る気密性能予測装置は、予め測定した建物の気密性能を目的変数とし、かつ前記気密性能の測定時における前記気密性能に影響する予め定めた因子を説明変数とした重回帰分析により算出した回帰式を、前記目的変数とした前記気密性能の種類毎に記憶する記憶部と、対象の建物の設計仕様情報を取得し、取得した前記設計仕様情報から前記因子を抽出する抽出部と、前記目的変数の選択結果を入力する入力部と、前記抽出部によって抽出された前記因子、及び前記入力部によって入力された前記選択結果に対応する前記記憶部に記憶された前記回帰式に基づいて、対象の建物における気密性能を予測する予測部と、を備える。
【0012】
第2の態様に係る気密性能予測装置によれば、記憶部には、予め測定した建物の気密性能を目的変数とし、かつ前記気密性能の測定時における前記気密性能に影響する予め定めた因子を説明変数とした重回帰分析により算出した回帰式が、目的変数とした気密性能の種類毎に記憶される。
【0013】
抽出部では、新築やリフォームなどの対象の建物の設計仕様情報を取得し、取得した設計仕様情報から、新築やリフォームなどの対象の建物における気密性能に影響する予め定めた因子が抽出される。
【0014】
そして、予測部では、抽出部によって抽出された因子、及び入力部によって入力された目的変数の選択結果に対応する記憶部に記憶された回帰式に基づいて、対象の建物における気密性能が予測される。すなわち、重回帰分析により算出された回帰式に、対象の建物の仕様を因子として入力することで、設計段階の建物の気密性能を予測することができる。また、説明変数としての因子を設計仕様から抽出するので、因子の入力を行う煩わしい作業を行うことなく、建物の気密性能を予測することが可能となる。
【0015】
なお、因子は、分電盤の種類、空調方式、断熱仕様、床面積、スイッチ及びコンセントの種類、床仕上げ材の敷設面積、並びに、ポスト集合部、ユニットバス、及び躯体継ぎ目の気密の有無の少なくとも1つを適用してもよい。
【0016】
また、予測部は、気密性能として建物の相当隙間面積及び総相当隙間面積の少なくとも一方を予測してもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、設計段階の建物の気密性能の予測が可能な気密性能予測装置を提供できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る気密性能予測装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る気密性能予測装置において、各種プログラムの実行により実現される機能を表す機能ブロック図を示す図である。
【
図3】(A)は回帰式算出部による重回帰分析の際に、入力部によって入力する目的変数、及び説明変数の一例を示す図であり、(B)は回帰式算出部によって算出した回帰式の一例を示す図である。
【
図4】(A)は分電盤と壁の開口部を示す斜視図であり、(B)は分電盤の通気経路を示す断面図である。
【
図5】(A)は床暖熱の断熱ラインを説明するための図であり、(B)は基礎断熱の断熱ラインを説明するための図である。
【
図6】(A)は畳等の床仕上げ材の床下との通気を説明するための図であり、(B)はフローリングの床下との通気を説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係る気密性能予測装置のパーソナルコンピュータで重回帰分析プログラムを実行した際に行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る気密性能予測装置のパーソナルコンピュータで気密予測プログラムを実行した際に行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】変形例の気密性能予測装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図10】変形例の気密性能予測装置のパーソナルコンピュータで気密予測プログラムを実行した際に行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る気密性能予測装置の概略構成を示すブロック図である。
【0020】
本発明の実施の形態に係わる気密性能予測装置10は、住宅などの建物の建築やリフォーム等を行う際に、建物の気密性能を予測するためのツールとして機能する。例えば、建物の気密性能に起因する建物の仕様を入力することで、建物の気密性能を予測して予測結果を表示する処理等を行う。
【0021】
気密性能予測装置10は、パーソナルコンピュータ12を含んで構成されている。パーソナルコンピュータ12は、
図1に示すように、CPU14、ROM16、RAM18、入出力ポート20を備え、これらがアドレスバス、データバス、及び制御バス等のバス22を介して接続されている。
【0022】
入出力ポート20には、各種入出力機器として、ディスプレイ24、マウス26、キーボード28、ハードディスク(HDD)30、各種ディスク34からの情報の読み出しを行うディスクドライブ32が各々接続されている。
【0023】
ROM16には、気密性能を予測するための気密予測プログラムや、気密性能を予測するための回帰式を算出するための重回帰分析プログラム等が記憶されている。RAM18は、CPU14によって行われる各種演算等を行う作業メモリ等として使用される。
【0024】
図2は、本実施形態に係る気密性能予測装置10において、各種プログラムを実行することにより実現される機能を表す機能ブロック図を示す図である。
【0025】
本実施形態に係る気密性能予測装置10は、
図2に示すように、回帰式算出部40、入力部42、記憶部44、及び予測部46の機能を有する。
【0026】
回帰式算出部40は、予め測定した建物の気密性能を目的変数とし、かつ気密性能の測定時における気密性能に影響する予め定めた因子を説明変数として重回帰分析を行うことにより、気密性能を予測する際に使用する回帰式を算出する。
【0027】
入力部42は、回帰式算出部40が回帰式を求めるために必要な気密性能の測定値、及び当該気密性能の測定時の説明変数となる予め定めた因子の入力を行う。また、入力部42は、回帰式算出部40が求めた回帰式を用いて対象の物件の気密性能を予測する際に、対象の物件の設計仕様情報(因子)の入力を行うことにより、建物の気密性能の予測の開始を指示する。入力部42は、例えば、マウス26やキーボード28等を用いて、目的変数、説明変数、及び物件の仕様等の入力を行う。
【0028】
記憶部44は、回帰式算出部40による重回帰分析により算出された回帰式をHDD30に記憶し、建物の気密性能の予想時に読み出す。なお、記憶部44は、回帰式算出部40によって算出した回帰式を各種ディスク34やメモリ等の他に記憶してもよい。
【0029】
予測部46は、記憶部44に記憶された回帰式を読み出し、読み出した回帰式と、入力部42によって入力された対象の物件の仕様情報とに基づいて、対象の建物の気密性能を予測する。また、予測部46は、対象の建物の気密性能の予測結果をディスプレイ24に表示する。
【0030】
次に、回帰式算出部40による重回帰分析について詳細に説明する。
図3(A)は、回帰式算出部40による重回帰分析の際に、入力部42によって入力する目的変数、及び説明変数の一例を示す図である。また、
図3(B)は、回帰式算出部40によって算出した回帰式の一例を示す図である。
【0031】
本実施形態では、重回帰分析の目的変数として、同一工法の建物に関する、相当隙間面積(C値)及び総相当隙間面積(αA)の少なくとも一方の測定値を適用する。例えば、ユニット建物の相当隙間面積または総相当隙間面積を測定した結果を目的変数として入力する。なお、相当隙間面積=総相当隙間面積/床面積である。
【0032】
図3(B)には、それら説明変数の因子に基づく回帰式を示す。
【0033】
以下、上記の説明変数の因子のうち、主要な因子について、気密性能に関係する理由を説明する。
【0034】
また、分電盤には、扉付の分電盤や、太陽光発電対応の分電盤、センサ分電盤、HEMS(Home Energy Management System)などに対応する情報分電盤等の複数の種類の分電盤がある。
図4(A)、(B)に示すように、分電盤52は、壁の開口部54を介して配線され、壁内や、天井、通気口56等を介して屋外に通じている。また、分電盤52の種類によってその開口の大きさも異なるため、分電盤52の種類が建物の気密性能に大きく影響する。
【0035】
また、空調方式は、ルームエアコンの場合と、全館空調の場合とでダクト躯体を貫通する面積等が異なるため、空調方式の違いによっても建物の気密性能に大きく影響する。
【0036】
また、断熱仕様は、例えば、床断熱と、基礎断熱とがあるが、床断熱は、
図5(A)に示すように、床下空間は断熱ラインの外側となり、床面で断熱する。一方、基礎断熱は、
図5(B)に示すように、床下空間は断熱ラインの内側となり、基礎部分で断熱し、2重の気密ラインを有し、断熱仕様によって気密性能が大きく影響する。
【0037】
また、スイッチ・コンセントは、壁に開口を設けて取り付けると共に、裏面側に気密構造を有する種類もあるため、スイッチ・コンセントの種類などによって建物の気密性能に大きく影響する。
【0038】
また、畳等の床仕上げ材は、
図6(A)に示すように、床下と巾木60の周りが通気すると共に、床下と床下継ぎ部のあたりから通気する。一方、
図6(B)に示すように、フローリングの場合は、表面が平滑で巾木60との隙間が生じにくく、床下継ぎ部からの通気も保たれる。すなわち、畳・テキスタイルの面積によって建物の気密性能に大きく影響する。
【0039】
また、気密テープによる躯体の気密化の有無によっても建物の気密性能に大きく影響する。
【0040】
本実施形態では、上述したように、入力部42によって上記の目的変数及び説明変数を入力することにより、回帰式算出部40が重回帰分析を行うことによって回帰式を算出する。算出した回帰式の一例は、
図3(B)に示すものが得られる。
図3(B)の例では、目的変数を総相当隙間面積とした例を示す。また、説明変数としては、重回帰分析を繰り返すことにより、寄与率の高い因子を決定した。
図3(B)の例では、ポスト集合部50、分電盤52、空調方式、断熱仕様、床面積、スイッチ・コンセント、畳・テキスタイル、UB気密、及び気密テープの有無を説明変数とした場合の回帰式を示す。なお、
図3(B)のX1~X17は、回帰式を算出した際に導き出される定数を示す。
【0041】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る気密性能予測装置10で行われる具体的な処理内容について説明する。
図7は、本実施形態に係る気密性能予測装置10のパーソナルコンピュータ12で重回帰分析プログラムを実行した際に行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0042】
ステップ100では、CPU14が、重回帰分析の目的変数を入力するための予め定めた目的変数入力画面をディスプレイ24に表示してステップ102へ移行する。すなわち、物件毎に測定した相当隙間面積及び総相当隙間面積を説明変数として入力するための画面がディスプレイ24に表示される。
【0043】
ステップ102では、CPU14が、入力部42によって目的変数の入力が行われたか否かを判定する。本実施形態では、測定した物件の相当隙間面積及び総相当隙間面積が入力されたか否かを判定し、該判定が肯定されるまで待機してステップ104へ移行する。
【0044】
ステップ104では、CPU14が、重回帰分析の説明変数を入力するための予め定めた説明変数入力画面をディスプレイ24に表示してステップ102へ移行する。
【0045】
ステップ106では、CPU14が、入力部42によって説明変数の入力が行われたか否かを判定する。本実施形態では、測定した物件の仕様のうち気密性能に関係する予め定めた因子の入力が行われたか否かを判定し、該判定が肯定されるまで待機してステップ108へ移行する。
【0046】
ステップ108では、CPU14が、他の物件の測定値があるか否かを判定する。すなわち、測定した物件の全ての目的変数及び説明変数の入力が行われたか否かを判定する。具体的には、他の物件の入力する指示が入力部42によって行われたか否かを判定し、該判定が肯定された場合にはステップ100に戻って他の物件の目的変数及び説明変数の入力を行う。一方、判定が否定された場合にはステップ110へ移行する。
【0047】
ステップ110では、CPU14が、入力された目的変数及び説明変数を用いて、回帰式算出部40による重回帰分析を行って回帰式を算出してステップ112へ移行する。
【0048】
ステップ112では、CPU14が、記憶部44によるHDD30への回帰式の記憶を行って一連の処理を終了する。
【0049】
次に、上述のように算出して記憶された回帰式を用いた気密性能を予測する際の具体的な処理について説明する。
図8は、本実施形態に係る気密性能予測装置10のパーソナルコンピュータ12で気密予測プログラムを実行した際に行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0050】
ステップ200では、CPU14が、予め定めた目的変数選択画面をディスプレイ24に表示してステップ202へ移行する。
【0051】
ステップ202では、CPU14が、入力部42によって目的変数の選択が行われたか否かを判定し、該判定が肯定されるまで待機してステップ204へ移行する。本実施形態では、相当隙間面積または総相当隙間面積の何れかを選択する。
【0052】
ステップ204では、CPU14が、対象の物件の仕様を入力するための予め定めた物件仕様入力画面をディスプレイ24に表示してステップ102へ移行する。
【0053】
ステップ206では、CPU14が、入力部42によって対象の物件の仕様が入力されたか否かを判定する。該判定は、気密性能に関係する予め定めた因子に対応する仕様が入力されたか否かを判定し、該判定が肯定されるまで待機してステップ208へ移行する。
【0054】
ステップ208では、CPU14が、記憶部44により記憶された回帰式のうち、選択された目的変数に対応する回帰式を読み出してステップ210へ移行する。
【0055】
ステップ210では、CPU14が、入力された物件仕様及び読み出された回帰式に基づく、気密性能の予測を予測部46によって行ってステップ212へ移行する。
【0056】
ステップ212では、CPU14が、気密性能の予測結果をディスプレイ24に表示してステップ214へ移行する。
【0057】
ステップ214では、CPU14が、予測を終了するか否か判定する。該判定は、キーボード28等によって予測の終了が指示されたか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ200に戻って気密性能の予測を再度行い、判定が肯定されたところで一連のしょりを終了する。
【0058】
このように、本実施形態では、建物の気密性能を目的変数とし、かつ気密性能の測定時における気密性能に影響する予め定めた因子を説明変数として重回帰分析を行って回帰式を算出し、算出した回帰式を用いて建物の気密性能を予測する。これにより、実測値では分からなかった構造に関する部分の気密性能への影響度を示すことが可能となる。
【0059】
また、建物の気密性能の実測値と予測値との差から施工不良等を検出することも可能となる。
【0060】
さらに、リフォームの際に気密性能の予測を行うことで、向上する気密性能を予測して提示することができる。
【0061】
なお、総相当隙間面積を建物の気密性能として予測する場合は、相当隙間面積を予測して、床面積で除算して総相当隙間面積を予測してもよいが、相当隙間面積と同様に、重回帰分析により総相当隙間面積を予測する回帰式を算出して予測してもよい。
【0062】
続いて、本実施形態に係る気密性能予測装置の変形例について説明する。
図9は、変形例の気密性能予測装置の概略構成を示すブロック図である。
【0063】
変形例の気密性能予測装置11では、上記の実施形態に対して、入出力ポート20にネットワーク36が更に接続されている点が異なる。
【0064】
ネットワーク36には、データベース(DB)38や、他のパーソナルコンピュータ(PC)39が接続されており、ネットワーク36に接続されたDB38やPC39と情報の授受が可能とされている。
【0065】
変形例では、DB38には、パーソナルコンピュータ12、39等で作成した、建物のCAD(Computer Aided Design system)情報等の建物の設計仕様情報がDB38に記憶される。また、DB38には、例えば、上述の回帰式や、回帰式を算出する際に使用した測定値や、他の建物の設計仕様情報などの情報が記憶される。
【0066】
そして、変形例では、予測部46が、回帰式を用いて建物の気密性能を予測する際に、DB38に記憶されたCAD情報から説明変数となる因子を抽出して、建物の気密性能(相当隙間面積または総相当隙間面積)を予測する。すなわち、変形例の予測部46は、上記の実施形態に対してCAD情報から説明変数となる因子を抽出する抽出機能を更に有する。変形例では、CAD情報から仕様情報を自動的に抽出するので、仕様の入力の手間を省くことが可能となる。例えば、CAD情報のうち建物の気密性能に影響する予め定めた因子を抽出し、算出して記憶しておいた回帰式に入力して、建物の気密性能を予測する。
【0067】
次に、変形例の気密性能予測装置11で行われる具体的な処理内容について説明する。重回帰分析プログラムを実行した際に行われる処理については上記の実施形態と同様であるため説明を省略し、以下では、気密予測プログラムを実行した際に行われる処理について説明する。
図10は、変形例の気密性能予測装置11のパーソナルコンピュータ12で気密予測プログラムを実行した際に行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、上記の実施形態と同一処理については同一符号を付して説明する。
【0068】
ステップ200では、CPU14が、予め定めた目的変数選択画面をディスプレイ24に表示してステップ202へ移行する。
【0069】
ステップ202では、CPU14が、入力部42によって目的変数の選択が行われたか否かを判定し、該判定が肯定されるまで待機してステップ203へ移行する。変形例では、上記の実施形態と同様に、相当隙間面積または総相当隙間面積の何れかを選択する。
【0070】
ステップ203では、CPU14が、予測物件の指示が入力部42により行われたか否かを判定する。該判定は、予測対象の物件を表す情報の入力等が行われたか否か、或いは、予めDB38等に記憶されているCAD情報のうち、予測する対象を選択する指示が行われたか否か等を判定する。該判定が肯定されるまで待機してステップ205へ移行する。
【0071】
ステップ205では、CPU14が、指示された物件の設計仕様情報の要求をネットワーク36を介してDB38に要求してステップ207へ移行する。
【0072】
ステップ207では、CPU14が、要求した物件の設計仕様情報の受信が完了したか否かを判定し、該判定が肯定されるまで待機してステップ208へ移行する。
【0073】
ステップ208では、CPU14が、記憶部44により記憶された回帰式のうち、選択された目的変数に対応する回帰式を読み出してステップ209へ移行する。
【0074】
ステップ209では、CPU14が、予測に必要な因子を物件の設計仕様情報から抽出してステップ211へ移行する。例えば、予測部46が、建物の気密性能を予測するために、DB38から受信した物件の設計仕様情報から予め定めた因子を抽出する。
【0075】
ステップ211では、CPU14が、抽出した因子と読み出した回帰式とに基づく、気密性能の予測を予測部46によって行ってステップ212へ移行する。
【0076】
ステップ212では、CPU14が、気密性能の予測結果をディスプレイ24に表示してステップ214へ移行する。
【0077】
ステップ214では、CPU14が、予測を終了するか否か判定する。該判定は、キーボード28等によって予測の終了が指示されたか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ200に戻って気密性能の予測を再度行い、判定が肯定されたところで一連のしょりを終了する。
【0078】
このように、変形例では、回帰式に入力する因子をCAD情報から抽出するので、因子の入力等の煩雑な作業を行う必要がなく、上記の実施形態よりも建物の気密性能の予測を容易に行うことが可能となる。
【0079】
なお、変形例では、ネットワーク36に接続されたDB38から建物の設計仕様情報を受信して予測に必要な因子を抽出する形態を説明したが、これに限るものではない。例えば、上記の実施形態のように、パーソナルコンピュータ12のHDD30等にDB38に記憶する情報を記憶し、HDD30から予測に必要な因子を抽出して建物の気密性能を予測する形態としてもよい。
【0080】
また、上記の実施形態及び変形例では、建物の気密性能として、相当隙間面積及び総相当隙間面積の少なくとも一方を予測する例を説明したが、これに限るものではなく、他の建物の気密性能に関する値を予測してもよい。
【0081】
また、上記の実施形態におけるパーソナルコンピュータ12で行われる処理は、ソフトウエアの処理として説明したがハードウエアで行う処理としてもよいし、双方の組み合わせで行う処理としてもよい。また、ソフトウエアの場合には、プログラムとして記憶媒体等に記憶して流通するようにしてもよい。
【0082】
また、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
10、11 気密性能予測装置
12 パーソナルコンピュータ
14 CPU
30 HDD
40 回帰式算出部
42 入力部
44 記憶部
46 予測部