(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】手すり
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20220802BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
E04F11/18
E04B1/00 501L
(21)【出願番号】P 2018133851
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594087104
【氏名又は名称】三和アルミ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112185
【氏名又は名称】ビニフレーム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】特許業務法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 仁史
(72)【発明者】
【氏名】中西 章
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴之
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-127335(JP,A)
【文献】実開昭58-079638(JP,U)
【文献】特開2005-048392(JP,A)
【文献】実開昭60-172940(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0211952(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の前側に取り付ける手すりであって、
支柱と、前記躯体の上面に取り付けた上側アンカー及び下面に取り付けた下側アンカーと、上側固定具及び下側固定具を備え、
前記上側固定具と前記下側固定具が前記躯体を上下から挟んでいて、前記上側固定具を前記上側アンカーに固定してあり、前記下側固定具を前記下側アンカーに固定してあり、前記上側固定具及び前記下側固定具の前側に前記支柱を固定してあり、
前記上側固定
具は、躯体に当接する平面状の躯体側当接面を有しており、前記躯体側当接面は、水平面に対する角度が可変であ
り、
前記下側アンカーは、前記上側アンカーよりも後側に位置していることを特徴とする手すり。
【請求項2】
前記上側固定
具は、前記躯体の上下方向に位置する挟持部と、前記躯体と前記挟持部との間に位置する角度調整具を有しており、
前記角度調整具は、前記躯体側当接面と、前記挟持部に当接する固定具側当接面を有するものであって、前記躯体側当接面が水平面に対して異なる角度となる複数の姿勢で、前記固定具側当接面が前記挟持部に当接可能であることを特徴とする請求項1記載の手すり。
【請求項3】
前記固定具側当接面は、左右方向を軸とする回転面からなり、
前記挟持部は、前記固定具側当接面に密接する回転面からなる被当接面を有することを特徴とする請求項2記載の手すり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅のベランダなどに設置される手すりに関する。
【背景技術】
【0002】
マンションなどの集合住宅のベランダや通路などに設置される手すりにおいて、支柱を躯体から外側に持ち出して取り付けるものがある。たとえば、特許文献1に示すものは、支柱から躯体側に向けて突出する上下2片の固定部によって躯体を上下から挟み込み、上下の固定部を、それぞれ躯体の上面及び下面に埋め込んだアンカーボルトに固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような手すりを取り付ける躯体においては、その上面が水平面に対して傾斜している場合がある。しかしながら、特許文献1の手すりは、上下の固定部の躯体に当接する面が水平向きであるから、躯体の上面が傾斜していると、躯体と固定部の間に隙間が生じてしまい、躯体に対して固定部を確実に固定できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、躯体から持ち出して設置されるものであって、躯体の上面が傾斜していても確実に取り付けられる手すりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1の発明は、躯体の前側に取り付ける手すりであって、支柱と、前記躯体の上面に取り付けた上側アンカー及び下面に取り付けた下側アンカーと、上側固定具及び下側固定具を備え、前記上側固定具と前記下側固定具が前記躯体を上下から挟んでいて、前記上側固定具を前記上側アンカーに固定してあり、前記下側固定具を前記下側アンカーに固定してあり、前記上側固定具及び前記下側固定具の前側に前記支柱を固定してあり、前記上側固定具は、躯体に当接する平面状の躯体側当接面を有しており、前記躯体側当接面は、水平面に対する角度が可変であり、前記下側アンカーは、前記上側アンカーよりも後側に位置していることを特徴とする。なお、下側固定具が角度不変な躯体側当接面を有していてもよい。
【0007】
本発明のうち請求項2の発明は、前記上側固定具は、前記躯体の上下方向に位置する挟持部と、前記躯体と前記挟持部との間に位置する角度調整具を有しており、前記角度調整具は、前記躯体側当接面と、前記挟持部に当接する固定具側当接面を有するものであって、前記躯体側当接面が水平面に対して異なる角度となる複数の姿勢で、前記固定具側当接面が前記挟持部に当接可能であることを特徴とする。なお、下側固定具が挟持部のみを有していてもよい。
【0008】
本発明のうち請求項3の発明は、前記固定具側当接面は、左右方向を軸とする回転面からなり、前記挟持部は、前記固定具側当接面に密接する回転面からなる被当接面を有することを特徴とする。なお、「左右方向を軸とする回転面」とは、左右方向を向いたある直線を軸として、直線又は曲線からなる母線を軸周りに回転させて得られる曲面のことである。たとえば、母線が軸と平行な直線であれば、回転面は円柱側面となり、母線が軸を直径とする円弧であれば、回転面は球面となる。また、「密接する」とは、面同士が隙間なく当接することをいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明のうち請求項1の発明によれば、躯体側当接面の水平面に対する角度が可変であるから、躯体の上面が傾斜している場合であっても、躯体側当接面の角度を傾斜に一致させるか、それができなければ近い角度に合わせることで、躯体側当接面と躯体の隙間を無くすか小さくできるので、躯体と上側固定具を確実に固定することができる。また、支柱が前後方向に荷重を受けた際、上側アンカーが中心となって支柱が回転する向きに力が作用し、下側固定具により下側アンカーに引き抜き力が作用するが、下側アンカーが上側アンカーよりも後側に位置しているので、下側固定具の支柱に対する固定部から下側アンカーに対する固定部までの距離が長くなり、てこの原理によって、下側アンカーに作用する引き抜き力が小さくなる。よって、より大きな荷重に耐えることが可能であって、十分な強度を有する手すりとなる。また、上側アンカーと下側アンカーの躯体への取付位置が前後にずれているので、躯体の厚みが十分に確保できない場合であっても、上側アンカーと下側アンカーが干渉しない。
【0012】
本発明のうち請求項2の発明によれば、挟持部に対する角度調整具の姿勢を変えるだけで、容易に躯体側当接面の角度を調整できる。
【0013】
本発明のうち請求項3の発明によれば、角度調整具の固定具側当接面と、挟持部の被当接面が、相互に密接する回転面からなるので、角度調整具の躯体側当接面の水平面に対する角度が無段階に調整可能である。よって、躯体の上面の傾斜角度によらず、角度調整具と躯体の隙間を無くすことができるので、躯体と上側固定具をより確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】手すりの第一実施形態の縦断面図(
図3のA-A線断面図)である。
【
図2】手すりの第一実施形態の横断面図(
図3のB-B線断面図)である。
【
図4】手すりの第一実施形態のコーナー部の横断面図である。
【
図5】手すりの第一実施形態の施工手順を示す説明図である。
【
図6】(a)、(b)は、躯体の上面の勾配が異なる場合の説明図である。
【
図7】手すりが荷重を受けた場合の説明図であり、(a)は第一実施形態、(b)は比較形態を示す。
【
図8】手すりの第二実施形態の縦断面図(
図10のC-C線断面図)である。
【
図9】手すりの第二実施形態の横断面図(
図10のD-D線断面図)である。
【
図11】(a)、(b)は、手すりの第二実施形態のコーナー部の横断面図である。
【
図12】手すりの第三実施形態の縦断面図(
図13のE-E線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の手すりの具体的な内容について説明する。この手すりは、種々の場所に設置して用いられるものであるが、ここでは第一実施形態として、転落防止を目的として集合住宅のベランダに設置されるものを示す。なお、以下において、前後方向とは手すりの見込方向であり、ベランダに設置された状態で、屋外側が前側、屋内側が後側である。
【0018】
すなわち、この手すりは、躯体100の前側に取り付けられる。ここで、手すりが取り付けられる躯体100は、
図1に示すように、建物の外壁面から前側に水平向きに突出する床スラブ101と、その前端部から上向きに延びる立ち上がり壁102からなるものである。立ち上がり壁102の高さは、床スラブ101の厚さの略1/3である。また、立ち上がり壁102の上面は、雨水を階下に滴下させないよう、後方へ下向きに傾斜しており、その勾配は4度である。
【0019】
まず、手すりの第一実施形態の全体構成について説明する。
図1~
図3に示すように、この手すりは、支柱1と、上側アンカー2a及び下側アンカー2bと、上側固定具3a及び下側固定具3bと、上桟5と、下桟6と、縦格子7を備え、上側固定具3aが角度調整具4を有している。支柱1は、躯体100の前側に位置して立設してあり、その下端が床スラブ101の下面よりも下側であって、左右に間隔を空けて複数本が並んでいる。躯体100の上面には、上側アンカー2aにより上側固定具3aを取り付けてあり、躯体100の下面には、下側アンカー2bにより下側固定具3bを取り付けてあって、上側固定具3a及び下側固定具3bにより、支柱1を固定してある。ただし、躯体100の上面と上側固定具3aの上側挟持部31aの間には、角度調整具4を挟んで設けてある。支柱1の上端には、複数本の支柱1に跨って、左右に延びる上桟5が取り付けてある。また、支柱1の下端には、複数本の支柱1に跨って、左右に延びる下桟6が取り付けてある。そして、隣り合う支柱1間の、上桟5と下桟6の間に、左右に並ぶ複数本の縦格子7が取り付けてある。よって、躯体100(床スラブ101と立ち上がり壁102)は、支柱1及び縦格子7の後側に位置していて、前側からは見えにくくなっているので、意匠性が良好である。
【0020】
続いて、手すりの第一実施形態の各構成部材について説明する。支柱1は、断面が前後に長い略矩形で中空の押出形材からなり、その長手方向が垂直方向となるように立設してあって、その下端部の後側面が、躯体100(床スラブ101及び立ち上がり壁102)の前側面に対向している。支柱1の後側面には、上下に延びる取付溝11が形成してある。取付溝11は、略C字形で後側に向けて開口するものである。
【0021】
そして、躯体100の上面及び下面に、それぞれ上側アンカー2aと下側アンカー2bを埋め込んである。上側アンカー2aは、躯体100の立ち上がり壁102の上面に垂直向きに埋め込んであり、先端は上側に突出している。また、下側アンカー2bは、躯体100の床スラブ101の下面に垂直向きに埋め込んであり、先端は下側に突出している。そして、下側アンカー2bは、上側アンカー2aよりも後側に位置している。この上側アンカー2aと下側アンカー2bの位置関係について、より詳しくは、第一実施形態において、立ち上がり壁102の前後方向長さは100mmで、上側アンカー2aは、その前後方向中央部、すなわち躯体100の前側面から50mmの位置に設けてある。一方、下側アンカー2bは、躯体100の前側面から85mmの位置に設けてある。
【0022】
上側固定具3aは、略L字形の金具と、角度調整具4からなるものであって、略L字形の金具についてより詳しくは、矩形平板状で垂直向きの上側取付部32aと、矩形平板状で上側取付部32aの下端から後側に向けて延びる上側挟持部31aと、上側取付部32aの上端から後側に向けてわずかに突出する係止片33aと、上側挟持部31aの後端よりやや前側の位置から上側に向けて突出する立設片34aからなる。上側挟持部31aは、その後側の略2/3の領域が、左右方向から見て上側に凸となるように湾曲した湾曲部35aとなっており、湾曲部35aの下面は、左右方向を軸とする回転面、すなわち、中心軸が左右方向に平行な円柱の側面の一部に一致する曲面形状であって、角度調整具4が当接する被当接面36aとなっている。また、立設片34aは、高さが上側取付部32aよりも低く、垂直に延びている。これらの上側挟持部31a、上側取付部32a、係止片33a及び立設片34aからなる上側固定具3aの左右幅は、支柱1の左右幅よりも長いものである。そして、上側取付部32aと上側挟持部31aには、それぞれ1つずつボルト孔を形成してあり、何れのボルト孔も、各部の左右方向中央部に位置している。さらに、上側取付部32aのボルト孔の上側には、ネジ孔を形成してある。なお、上側挟持部31aの上面のボルト孔周辺部は、水平面となっている。
【0023】
角度調整具4は、金属製のものであって、略平板状で左右幅が上側挟持部31aの左右幅に等しいものである。角度調整具4の上面は、上側挟持部31aに当接する固定具側当接面42であり、左右方向から見て上側に凸となり、湾曲部35aの下面の被当接面36aの形状と一致する曲面形状(左右方向を軸とする回転面、すなわち、中心軸が左右方向に平行な円柱の側面の一部に一致する曲面形状)である。また、角度調整具4の下面は、躯体100に当接する躯体側当接面41であり、平面である。よって、角度調整具4は、上側挟持部31aの被当接面36aに対する前後位置がずれても、常に固定具側当接面42が被当接面36aに隙間なく当接するものであり、前後位置がずれることで、角度調整具4の姿勢が変化し、すなわち躯体側当接面41の水平面に対する角度が変化する。ここでは、躯体側当接面41は、後方へ下向きに傾斜していて、水平面に対する角度が4度となっており、立ち上がり壁102の上面に隙間なく当接する。そして、角度調整具4の左右方向中央部には、前後に長い長孔形状のボルト孔43を形成してある。
【0024】
下側固定具3bは、略L字形の金具からなるものであって、より詳しくは、矩形平板状で垂直向きの下側取付部32bと、矩形平板状で下側取付部32bの上端から後側に向けて延びる下側挟持部31bからなる。ただし、下側挟持部31bは、前後方向中央部に段部35bを形成してあり、段部35bの前側部分よりも後側部分の方が一段高くなっている。この下側固定具3bの左右幅は、支柱1の左右幅よりも長いものである。そして、下側取付部32bと下側挟持部31b(段部35bの後側部分)には、それぞれ1つずつボルト孔を形成してあり、何れのボルト孔も、各部の左右方向中央部に位置している。
【0025】
そして、これらの上側固定具3aと下側固定具3bが、躯体100を上下から挟んでいる。より詳しくは、上側固定具3aの上側挟持部31aの後側部分である湾曲部35aが躯体100の立ち上がり壁102の上側に位置しており、躯体100の立ち上がり壁102と上側挟持部31aの湾曲部35a間に、角度調整具4を設けてある。すなわち、上側挟持部31aを、角度調整具4を介して躯体100の立ち上がり壁102の上面に当接させ、角度調整具4のボルト孔43の前後方向中央部及び上側挟持部31aのボルト孔に上側アンカー2aの先端部を挿入してあり、上側アンカー2aに上側からナットを螺合して、上側固定具3aを躯体100に固定してある。また、下側固定具3bの下側挟持部31b(段部35bの後側部分)を、躯体100の床スラブ101の下面に当接させ、ボルト孔に下側アンカー2bの先端部を挿入してあり、下側アンカー2bに下側からナットを螺合して、下側固定具3bを躯体100に固定してある。この際、上側固定具3aの上側取付部32aの前側面と、下側固定具3bの下側取付部32bの前側面が面一となるようにしてある。なお、下側固定具3bの下側挟持部31bの、段部35bの前側部分は、躯体100の床スラブ101の下面から離隔しており、これにより、水切り性が向上している。
【0026】
さらに、支柱1の後側面の取付溝11に、2本のボルトの頭部を挿入してあって、各ボルトのネジ部が支柱1から後側に突出している。そして、支柱1の後側面を、上側固定具3aの上側取付部32aの前側面及び下側固定具3bの下側取付部32bの前側面に当接させ、2本のボルトを上側固定具3aの上側取付部32aのボルト孔及び下側固定具3bの下側取付部32bのボルト孔にそれぞれ挿入してあり、各ボルトに後側からナットを螺合して、上側固定具3a及び下側固定具3bの前側に支柱1を固定してある。この際、取付溝11に頭部を挿入したボルトは、支柱1に対して上下動自在であるから、上側固定具3a及び下側固定具3bに対する支柱1の取付高さは自在に調整できる。また、上側固定具3aについては、さらに上側取付部32aのネジ孔に後側からネジを挿入し、支柱1に螺合させて補強してある。
【0027】
このようにして、上側アンカー2aに取り付けた上側固定具3a及び下側アンカー2bに取り付けた下側固定具3bを介して、支柱1が躯体100に対して固定される。この際、上側固定具3a及び下側固定具3bの左右幅は何れも支柱1の左右幅よりも広いものであるが、上側固定具3a及び下側固定具3bは支柱1の後側に位置しており、前側からは支柱1に隠れて目立たないので、意匠性が良好である。
【0028】
上桟5は、目板部材51と表面部材52の2部材からなる。目板部材51は、略平板状の押出形材からなり、隣り合う支柱1に跨って左右に延びるものである。より詳しくは、1本の目板部材51は2本の支柱1に跨り、左右端部は左右の支柱1よりも外側に突出していて、これを左右に並べて端面同士を突き合わせて連設してあり、前後幅は支柱1の前後幅よりもわずかに長い。目板部材51の上面には、前縁及び後縁に沿って左右に延びる爪部511が形成してある。爪部511は、上側に向けて先細りで、前後方向の外側に向けて突出する返しを有する形状である。そして、このような目板部材51を、各支柱1の上端面に当接させ、上側からネジ止めして固定してある。表面部材52は、下側に向けて開口する略コ字形の押出形材からなり、目板部材51と同様に左右に延びており(左右長さは必ずしも目板部材51と同じでなくてもよい)、前後幅は目板部材51の前後幅よりもわずかに長い。前側面部及び後側面部の下端部には、内側に向けて突出し先端が上向きに屈曲している突起521が形成してある。また、人が手を掛ける部材なので、上面は丸みを帯びた形状となっている。そして、目板部材51の前後の爪部511に、表面部材52の前後の突起521を係合させ、表面部材52で目板部材51を上側から覆い隠すようにして取り付けてある。なお、手すりの左右長さが長い場合、表面部材52は複数本に分割されるが、その分割位置は、必ずしも目板部材51と同じでなくてもよい。そして、分割位置において、表面部材52は端面同士を突き合わせて取り付けられる。
【0029】
下桟6は、目板部材61と表面部材62の2部材からなる。表面部材62は、下側に向けて開口する略コ字形の押出形材からなり、隣り合う支柱1に跨って左右に延びるものである。より詳しくは、上桟5の目板部材51と同様に、1本の表面部材62は2本の支柱1に跨り、左右端部は左右の支柱1よりも外側に突出していて、これを左右に並べて端面同士を突き合わせて連設してあり、前後幅は支柱1の前後幅よりもわずかに長い。前側面部及び後側面部の下端部には、内側に向けて突出し先端が上向きに屈曲している突起621が形成してある。そして、このような表面部材62を、各支柱1の下端面に当接させ、下側からネジ止めして固定してある。目板部材61は、略平板状の押出形材からなり、表面部材62と同様に左右に延びており(左右長さは必ずしも表面部材62と同じでなくてもよい)、前後幅は表面部材62の前後幅よりもわずかに短い。目板部材61の上面には、前縁及び後縁に沿って左右に延びる爪部611が形成してある。爪部611は、上側に向けて先細りで、前後方向の外側に向けて突出する返しを有する形状である。そして、表面部材62の前後の突起621に、目板部材61の前後の爪部611を係合させ、目板部材61で表面部材62の開口部を塞ぐようにして取り付けてある。なお、手すりの左右長さが長い場合、目板部材61は複数本に分割されるが、その分割位置は、必ずしも表面部材62と同じでなくてもよい。そして、分割位置において、目板部材61は端面同士を突き合わせて取り付けられる。
【0030】
縦格子7は、断面略矩形で中空の押出形材からなり、上桟5と下桟6の間でその長手方向が垂直方向となるように立設してあり、上端面は上桟5の目板部材51の下面に当接していて、上側からネジ止めして固定してあり、下端面は下桟6の表面部材62の上面に当接していて、下側からネジ止めして固定してある。その前後幅及び左右幅は、支柱1の前後幅及び左右幅に等しい。よって、前側から見ると、支柱1と縦格子7は区別がつかないので、連続感のある意匠となる。
【0031】
また、躯体100の立ち上がり壁102の上側には、樹脂製のカバー8を取り付けてあり、上側アンカー2aやボルトを覆い隠して意匠性を向上させている。カバー8は、左右に延びるものであって、後方へ水平に延び途中で屈曲して下向きに傾斜する上面部81と、上面部81の後端から下向きに延びる後側面部82を有している。ただし、後側面部82は、上側部分に対して下側部分が一段後側へ突出した形状である。このカバー8の上面部81の前端部を、上側固定具3aの係止片33aに載置してあり、後側面部82の上側部分を上側固定具3aの立設片34aに後側から当接させ、後側からネジ止めして固定してある。上側挟持部31aの、立設片34aより後側部分は、カバー8の後側面部82の下側部分に納まる。なお、このカバー8により、支柱1と躯体100の間の隙間が塞がれる。支柱1と躯体100の間に隙間があると、隙間を通して地表面が見えるため、屋内側(後側)の住人が恐怖を感じる場合があるが、カバー8で隙間を塞ぐことで、それを防いでいる。また、カバー8は、支柱1に対応する部位のみに設けるものであってもよい。
【0032】
なお、
図4に示すように、この手すりの第一実施形態を、上側から見て直角に屈曲させて、コーナー部に設けることもできる。コーナー部においては、コーナー部に向けてそれぞれの方向から延びる上桟5、下桟6及びカバー8の端面を45度の角度で切断して突き合わせてある。そして、上桟5及び下桟6の内部の、コーナー部の外周側と内周側に、L字形のコーナー金具63を取り付け、それぞれコーナー部の外周側と内周側からネジ止めして固定してある(
図4は下桟6を示す)。
【0033】
続いて、
図5に基づき、この手すりの第一実施形態の施工手順を説明する。なお、図中の丸数字は、以下の1~7の各工程に対応している。
1.工場において、2本の支柱1、上桟5の目板部材51、下桟6の表面部材62及び縦格子7を組んで、面状のユニットとする。この際、支柱1の取付溝11には2本のボルトを取り付けておく。
2.現場において、躯体100の上面及び下面の支柱1に対応する位置に、それぞれ上側アンカー2a及び下側アンカー2bを埋め込む。
3.上側アンカー2a及び下側アンカー2bに対して、それぞれ上側固定具3a及び下側固定具3bを取り付ける。上側固定具3aについては、まず、角度調整具4のボルト孔43に上側アンカー2aを挿通し、角度調整具4を躯体100の上面に載置してから(図中の3’)、上側挟持部31aの被当接面36aを角度調整具4の固定具側当接面42に当接させる。
4.ユニットの支柱1に取り付けたボルトを上側固定具3aと下側固定具3bのボルト孔に通して固定する。上側固定具3aについてはさらにネジ止めして補強する(図中の4’)。
5.手すりの長さに応じて、必要な数のユニットを左右に連設する。
6.上桟5の目板部材51に表面部材52を取り付け、下桟6の表面部材62に目板部材61を取り付ける。
7.上側固定具3aにカバー8を取り付ける。
以上で、手すりの第一実施形態の施工が完了する。なお、上桟5の表面部材52と下桟6の目板部材61は、工場で予め取り付けてもよい(上記の工程6を、工程1に組み込んでもよい)。
【0034】
このように構成した手すりの第一実施形態によれば、上側固定具3aにおいて、角度調整具4の固定具側当接面42と、上側挟持部31aの被当接面36aが、相互に密接する回転面からなるので、角度調整具4の躯体側当接面41の水平面に対する角度が無段階に調整可能であって、調整が容易である。よって、躯体100の上面の傾斜角度によらず、角度調整具4と躯体100の隙間を無くすことができるので、躯体100と上側固定具3aをより確実に固定することができる。より詳しくは、
図1に示す場合においては、手すりが取り付けられる躯体100(立ち上がり壁102)の上面は、後方へ下向きに傾斜しており、その勾配は4度であったが、実際の施工現場においては、勾配がある場合とない場合があり、また勾配がある場合の角度も様々である。
図1に示す場合、立ち上がり壁102の上面の勾配は4度であり、この際、被当接面36aの前後方向の略中央部に角度調整具4の固定具側当接面42を当接させる(この際、上側アンカー2aが角度調整具4のボルト孔43の前後方向中央部を貫通する)ことで、躯体側当接面41の傾斜角度も4度となり、立ち上がり壁102の上面の勾配に一致して当接していた。これに対し、
図6(a)に示すのは、立ち上がり壁102の上面の勾配が8度の場合である。この場合、上側挟持部31aの被当接面36aの前後方向の後端に角度調整具4の固定具側当接面42を当接させる(この際、上側アンカー2aが角度調整具4のボルト孔43の前端部を貫通する)ことで、躯体側当接面41の傾斜角度も8度となり、立ち上がり壁102の上面の勾配に一致して当接する。また、
図6(b)に示すのは、立ち上がり壁102の上面の勾配が0度の場合である。この場合、上側挟持部31aの被当接面36aの前後方向の前端に角度調整具4の固定具側当接面42を当接させる(この際、上側アンカー2aが角度調整具4のボルト孔43の後端部を貫通する)ことで、躯体側当接面41の傾斜角度も0度となり、立ち上がり壁102の上面の勾配に一致して当接する。なお、角度調整具4の躯体側当接面41の傾斜が立ち上がり壁102の上面の勾配に一致することで、当接する全面に荷重が均等に分散し、一部に荷重が集中することがないので、上側固定具3aから躯体100の上面へかかる負荷が軽減され、特に改修用のものとして用いられる場合において、取り付ける対象の躯体100の表面が脆弱になっている場合でも、躯体100を保護できる。
【0035】
また、
図7(a)に示すように、支柱1が前後方向に荷重を受けた際(
図7は前側から荷重を受けた場合を示す)、上側アンカー2aが中心となって支柱1が時計回りに回転する向きに力が作用し、下側固定具3bにより下側アンカー2bに引き抜き力が作用する。この際、下側アンカー2bが上側アンカー2aよりも後側に位置しているので、下側固定具3bの支柱に対する固定部から下側アンカーに対する固定部までの距離L
1が長くなる。
図7(b)は、比較のため下側アンカー2bが上側アンカー2aと同じ前後位置であるものを示しており、この場合の支柱1に対する固定部から下側アンカー2bに対する固定部までの距離L
2よりも、第一実施形態の場合の距離L
1の方が長いことがわかる。そして、このように支柱1に対する固定部から下側アンカー2bに対する固定部までの距離が長いことで、てこの原理により、下側アンカー2bに作用する引き抜き力が小さくなる。よって、より大きな荷重に耐えることが可能であって、十分な強度を有する手すりとなる。また、上側アンカー2aと下側アンカー2bが同じ前後位置の場合、躯体100の厚みが上側アンカー2aと下側アンカー2bの長さを合わせた分以上でないと、上側アンカー2aと下側アンカー2bが干渉してしまう。しかしながら、第一実施形態では、上側アンカー2aと下側アンカー2bの躯体100への取付位置が前後にずれているので、躯体100の厚みが十分に確保できず上側アンカー2aと下側アンカー2bの長さを合わせた分以下しかない場合であっても、上側アンカー2aと下側アンカー2bが干渉しない。
【0036】
さらに、左右の支柱1、上桟5の目板部材51、下桟6の表面部材62及び縦格子7を、予め工場で組んでユニット化できるので、現場における施工が容易で工期を短縮できる。
【0037】
次に、この手すりの第二実施形態について、
図8~
図10に基づき説明する。第二実施形態は、第一実施形態における縦格子7に替えて、ガラスパネル9を取り付けたものである。ガラスパネル9は、上桟5、下桟6及び左右の支柱1によって形成される枠体の内周側に嵌め込まれるものであり、第一実施形態とは、ガラスパネル9を有する点並びに支柱1、上桟5及び下桟6の形状が異なっている。以下、第一実施形態と異なる部分に絞って説明する。
【0038】
第二実施形態の支柱1は、断面略矩形で中空の押出形材からなり、その前後幅、左右幅及び後側面に形成した取付溝11は、第一実施形態のものと同じであって、下端部の後側面が、躯体100(床スラブ101及び立ち上がり壁102)の前側面に対向している。そして、ガラスパネル9に対する左右の支柱1の内周側面(左側の支柱1の右側面、右側の支柱の左側面)には、前後方向中央部に、上下に延びる嵌合溝12が形成してある。嵌合溝12は、略コ字形で内周側に向けて開口するものである。
【0039】
第二実施形態の上桟5は、目板部材51と表面部材52の2部材からなり、表面部材52は、第一実施形態のものと同じである。目板部材51は、略平板状の押出形材からなり、2本の支柱1に跨って左右に延びており、前後幅は支柱1の前後幅よりもわずかに長い。目板部材51の上面には、第一実施形態のものと同様に、前縁及び後縁に沿って左右に延びる爪部511が形成してある。目板部材51の下面には、前後方向中央部に、左右に延びる嵌合溝512が形成してある。嵌合溝512は、略コ字形で下側に向けて開口するものである。このような目板部材51を、各支柱1の上端面に当接させ、上側からネジ止めして固定してある。ただし、目板部材51の左右端は、左右の支柱1の外周側面と面一である。そして、目板部材51の前後の爪部511に、表面部材52の前後の突起521を係合させ、表面部材52で目板部材51を上側から覆い隠すようにして取り付けてある。
【0040】
第二実施形態の下桟6は、目板部材61と表面部材62の2部材からなり、目板部材61は、第一実施形態のものと同じである。表面部材62は、下側に向けて開口する略コ字形の押出形材からなり、2本の支柱1に跨って左右に延びており、前後幅は支柱1の前後幅よりもわずかに長い。表面部材62の前側面部及び後側面部の下端部には、第一実施形態のものと同様に、内側に向けて突出し先端が上向きに屈曲している突起621が形成してある。表面部材62の上面には、前後方向中央部に、左右に延びる嵌合溝622が形成してある。嵌合溝622は、略コ字形で上側に向けて開口するものである。このような表面部材62を、各支柱1の下端面に当接させ、下側からネジ止めして固定してある。ただし、表面部材62の左右端は、左右の支柱1の外周側面と面一である。そして、表面部材62の前後の突起621に、目板部材61の前後の爪部611を係合させ、目板部材61で表面部材62の開口部を塞ぐようにして取り付けてある。
【0041】
そして、このように左右の支柱1、上桟5の目板部材51及び下桟6の表面部材62を四周枠組みして構成した枠体の内周側に、ガラスパネル9を嵌め込んである。具体的な組立手順は、左右の支柱1の下端に、表面部材62を取り付けてから、ガラスパネル9の左右端部及び下端部を支柱1の嵌合溝12及び表面部材62の嵌合溝622に嵌合させ、その後左右の支柱1の上端に目板部材51を取り付け、ガラスパネル9の上端部を目板部材51の嵌合溝512に嵌合させる。施工時は、このように1枚のガラスパネル9を嵌め込んだ枠体を1つのユニットとして、これを左右に複数並べて取り付ける。隣り合うユニット同士は、支柱1同士が近接して設けられ(支柱1同士の間隔は、支柱1の左右幅に等しい)、
図9に示すように、1つの上側固定具3a及び下側固定具3bに、2本の支柱1が固定される。そして、上桟5の表面部材52は、隣り合うユニットに跨って取り付けられる。
【0042】
なお、
図11(a)に示すように、この手すりの第二実施形態を、上側から見て直角に屈曲させて、コーナー部に設けることもできる。コーナー部においては、第一実施形態と同様に、コーナー部に向けてそれぞれの方向から延びる上桟5、下桟6及びカバー8の端面を45度の角度で切断して突き合わせて、L字形のコーナー金具63により固定してある(
図11は下桟6を示す)。そして、コーナー部においては、支柱1に替えて、躯体100に固定されていない2本の縦桟91により、ガラスパネル9の端部を保持している。縦桟91は、ガラスパネル9の端面及びコーナー部の外側面に対向する断面略L字形の基材911と、ガラスパネル9の内側面に対向する押縁材912からなる。さらに、
図11(b)に示すように、
図11(a)における2本の基材911を一体に成形して1本の基材911aとし、これに2本の押縁材912を取り付けた1本の縦桟91aを用いてもよい。
【0043】
このように構成した手すりの第二実施形態も、第一実施形態と同様の作用効果を奏するものである。また、第一実施形態の縦格子7に替えてガラスパネル9を取り付けたものであるが、第一実施形態と同様に、左右の支柱1、上桟5の目板部材51、下桟6の表面部材62及びガラスパネル9を、予め工場で組んでユニット化できるので、現場における施工が容易で工期を短縮できる。
【0044】
次に、この手すりの第三実施形態について、
図12及び
図13に基づき説明する。第三実施形態は、第二実施形態と同様に、ガラスパネル9を備えるものであるが、第二実施形態とは、上桟5及び下桟6の形状が異なっている。以下、第二実施形態と異なる部分に絞って説明する。
【0045】
第三実施形態の上桟5は、目板部材51と表面部材52の2部材からなり、目板部材51は、第二実施形態のものと同じである。表面部材52は、上面の形状が第二実施形態のものと異なっており、上面が平面状で後方へ下向きに傾斜している。
【0046】
第三実施形態の下桟6は、下側に向けて開口する略コ字形の押出形材からなり、隣り合う支柱1間で左右に延びており、端面は支柱1の左右側面に当接している。その前後幅は、支柱1の前後幅よりも短い。また、その上面には、前後方向中央部に、左右に延びる嵌合溝622が形成してある。嵌合溝622は、略コ字形で上側に向けて開口するものである。支柱1の左右側面の、立ち上がり壁102の上端よりやや上側の位置には、略コ字形の係止部材64をネジ止めして固定してあり(左右に延び上側に開口する向き)、下桟6の嵌合溝622の端部を、左右の支柱1に取り付けた略コ字形の係止部材64に上側から嵌め込み、下桟6を係止部材64に係止してある。
【0047】
そして、このように左右の支柱1、上桟5の目板部材51及び下桟6を四周枠組みして構成した枠体の内周側に、ガラスパネル9を嵌め込んである。なお、支柱1の下端には、支柱1の断面形状と同形で平板状の蓋13を取り付けてあり、開口部を塞いである。具体的な組立手順は、左右の支柱1の間に、下桟6を取り付けてから、ガラスパネル9の左右端部及び下端部を支柱1の嵌合溝12及び下桟6の嵌合溝622に嵌合させ、その後左右の支柱1の上端に目板部材51を取り付け、ガラスパネル9の上端部を目板部材51の嵌合溝512に嵌合させる。施工時は、第二実施形態と同様に、このように1枚のガラスパネル9を嵌め込んだ枠体を1つのユニットとして、これを左右に複数並べて取り付ける。
【0048】
このように構成した手すりの第三実施形態も、第二実施形態と同様の作用効果を奏するものである。また、第二実施形態と同様に、左右の支柱1、上桟5の目板部材51、下桟6及びガラスパネル9を、予め工場で組んでユニット化できるので、現場における施工が容易で工期を短縮できる。
【0049】
なお、第一実施形態~第三実施形態において、下側固定具が角度調整具を有するものであってもよい。また、角度調整具が、上側固定具及び/又は下側固定具の挟持部に対して、段階的に角度調整可能なものであってもよい。たとえば、角度調整具の固定具側当接面が、中心軸が左右方向に平行な正角柱の複数の側面からなる形状のものである。この際、挟持部の被当接面も、同じ正角柱の複数の側面からなり、角度調整具の固定具側当接面の複数の面が隙間なく当接するものとなる。この場合でも、角度調整具の躯体側当接面の水平面に対する角度が可変であるから、躯体の上面及び/又は下面が傾斜している場合であっても、躯体側当接面の角度を傾斜に一致させるか、それができなければ近い角度に合わせることで、角度調整具と躯体の隙間を無くすか小さくできるので、躯体と上側固定具及び/又は下側固定具を確実に固定することができる。また、挟持部に対する角度調整具の角度決めが容易であって、一度設定した角度からずれることがなく、躯体と上側固定具及び/又は下側固定具をより確実に固定することができる。
【0050】
次に、この手すりの第四実施形態について、
図14に基づき説明する。第四実施形態は、第一実施形態と比べて、上側固定具3a及び下側固定具3bの形状が異なるものであって、支柱1、上桟5、下桟6及び縦格子7の形状は同じである。以下、第一実施形態と異なる部分に絞って説明する。
【0051】
第四実施形態の上側固定具3aは、支柱1に取り付ける支柱側部材37と躯体100に取り付ける躯体側部材38の2つの金具からなる。支柱側部材37は、矩形平板状で垂直向きの上側取付部32aを有し、上側取付部32aの下端部は後側下方へ向けて屈曲しており、先端部には、円形膨大状(左右に延びる丸棒状)の軸部371を形成してある。また、上側取付部32aの上端から後側に向けて突出する第一係止片331aと、上側取付部32aの上端よりやや下側から後側に向けて突出し、第一係止片331aとの間に隙間を形成する第二係止片332aを有しており、第一係止片331aの下側面には、下側に向けて開口する断面略C字形の溝部を形成してあって、この溝部にビート333を取り付けてある。さらに、支柱側部材37は、この手すりの左右全長にわたって延びる通し材であり、上側取付部32aの、軸部371と第二係止片332aの間であって各支柱1に対応する位置に、ボルト孔を形成してある。一方、躯体側部材38は、矩形平板状で前後に延びる上側挟持部31aを有し、上側挟持部31aの下面が、躯体100に当接する平面状の躯体側当接面41となっている。また、上側挟持部31aの前端部は前側上方へ屈曲しており、先端部には、左右に延びる断面C字形の軸受部381を形成してある。さらに、上側挟持部31aの後端から上側に向けて突出する立設片34aを有しており、立設片34aは、上側部分が、左右方向から見て後側に凸となるように湾曲している。また、躯体側部材38は、各支柱1に対応する位置に設けられるものであって、その左右幅は、支柱1の左右幅より長いものであり、上側挟持部31aの左右方向中央部に、ボルト孔を形成してある。そして、支柱側部材37の軸部371が、躯体側部材38の軸受部381に対して回動自在に嵌まっており、躯体側部材38が、支柱側部材37に対して左右方向軸周りに角度可変に連結してある。
【0052】
第四実施形態の下側固定具3bは、略L字形の金具からなるものであって、矩形平板状で垂直向きの下側取付部32bと、矩形平板状で下側取付部32bの上端から後側に向けて延びる下側挟持部31bと、矩形平板状で下側挟持部31bの後端から下側に向けて延びる垂下片34bからなる。下側取付部32bは、垂下片34bよりも長くなっている。また、下側取付部32bの下端部の後側面には、後側に延び屈曲して下側に延びる突出片331bを形成してあり、突出片331bの下端部の前側面に、断面略三角形の爪部を形成してある。さらに、垂下片34bの下端部の前側面には、前側に延び屈曲して下側に延びる突出片332bを形成してあり、突出片332bの下端部の後側面に、断面略三角形の爪部を形成してある。また、下側固定具3bは、各支柱1に対応する位置に設けられるものであって、その左右幅は、支柱1の左右幅よりも長いものである。そして、下側取付部32bと下側挟持部31bには、それぞれ1つずつボルト孔を形成してあり、何れのボルト孔も、各部の左右方向中央部に位置している。
【0053】
そして、これらの上側固定具3aと下側固定具3bが、躯体100を上下から挟んでいる。より詳しくは、上側固定具3aの躯体側部材38の上側挟持部31aの後側部分が躯体100の立ち上がり壁102の上側に位置している。ただし、立ち上がり壁102の上面は、後方へ下向きに傾斜しており、その勾配は8度である。よって、躯体側部材38の下面の躯体側当接面41の水平方向に対する傾斜角度も8度となるように、躯体側部材38を傾けて、躯体側当接面41を躯体100の立ち上がり壁102の上面に当接させ、ボルト孔に上側アンカー2aの先端部を挿入してあり、上側アンカー2aに上側からナットを螺合して、上側固定具3aの躯体側部材38を躯体100に固定してある。なお、上側アンカー2aは、立ち上がり壁102の上面の勾配に合わせて設けてある。また、下側固定具3bの下側挟持部31bを、躯体100の床スラブ101の下面に当接させ、ボルト孔に下側アンカー2bの先端部を挿入してあり、下側アンカー2bに下側からナットを螺合して、下側固定具3bを躯体100に固定してある。
【0054】
さらに、支柱1の後側面の取付溝11に、2本のボルトの頭部を挿入してあって、各ボルトのネジ部が支柱1から後側に突出している。そして、支柱1の後側面を、上側固定具3aの支柱側部材37の上側取付部32aの前側面及び下側固定具3bの下側取付部32bの前側面に当接させる。ここで、上側固定具3aにおいては、躯体100に固定された躯体側部材38に対して支柱側部材37を左右方向軸周りに回転させ、支柱側部材37の上側取付部32aの前側面を垂直向きにして、下側固定具3bの下側取付部32bの前側面と面一となるようにしてある。そして、2本のボルトを上側固定具3aの支柱側部材37の上側取付部32aのボルト孔及び下側固定具3bの下側取付部32bのボルト孔にそれぞれ挿入してあり、各ボルトに後側からナットを螺合して、上側固定具3a及び下側固定具3bの前側に支柱1を固定してある。この際、取付溝11に頭部を挿入したボルトは、支柱1に対して上下動自在であるから、上側固定具3a及び下側固定具3bに対する支柱1の取付高さは自在に調整できる。
【0055】
このようにして、上側アンカー2aに取り付けた上側固定具3a及び下側アンカー2bに取り付けた下側固定具3bを介して、支柱1が躯体100に対して固定される。この際、
図14の円弧状の矢印で示すように、躯体側部材38が、支柱側部材37に対して左右方向軸周りに角度可変であるから、躯体100の上面の勾配が異なる場合であっても、その勾配に躯体側部材38の躯体側当接面41の角度を一致させた上で、支柱側部材37の上側取付部32aの前側面を垂直向きにして、支柱1を垂直向きに取り付けることができる。
【0056】
また、上側固定具3aの上側には、樹脂製の上側カバー8aを取り付けてあり、上側アンカー2aやボルトを覆い隠して意匠性を向上させている。上側カバー8aは、左右に延びるものであって、後方下向きに延びる上面部81aと、上面部81aの後端から下向きに延びる後側面部82aを有している。この上側カバー8aの上面部81の前端部を、支柱側部材37の第一係止片331aに取り付けたビート333と第二係止片332aとの間に挿入してあり、後側面部82を躯体側部材38の立設片34aに後側から当接させ、後側からネジ止めして固定してある。なお、躯体100の上面の勾配に応じて、上側固定具3aの躯体側部材38の傾斜角度が変化し、それによって上側固定具3aに対する上側カバー8aの取付角度も変化する。しかしながら、上面部81aの前端部は、支柱側部材37の第一係止片331aに取り付けたビート333と第二係止片332aとの間に挿入してあるだけなので、角度変化に対して自在に対応できる。また、後側面部82aは、躯体側部材38の立設片34aが後側に凸となるように湾曲しているので、躯体側部材38の傾斜角度が変化しても、常に立設片34aの最後端部に後側から当接する。なお、上側カバー8aは、手すりの左右全長にわたって延びるものであってもよいし、支柱1に対応する部位のみに設けるものであってもよい。上側カバー8aを支柱1に対応する部位のみに設ける場合、それ以外の部位において、支柱側部材37を覆い隠す蓋材を別途取り付けてもよい。
【0057】
さらに、下側固定具3bの下側にも、樹脂製の下側カバー8bを取り付けてあり、下側アンカー2bやボルトを覆い隠して意匠性を向上させている。下側カバー8bは、左右に延びるものであって、後方上向きに延びる下面部81bと、下面部81bの後端から上向きに延びる後側面部82bと、下面部81bの前端から上向きに延びる前側面部83bを有しており、後側面部82bの上端部の前側面と、前側面部83bの上端部の後側面に、断面略三角形の爪部を形成してある。そして、下側固定具3bの下側取付部32bと突出片331bの間の隙間に、下側カバー8bの前側面部83bを挿入してあって、突出片331bの爪部と前側面部83bの爪部を係止させてある。また、下側固定具3bの垂下片34bと突出片332bの間の隙間に、下側カバー8bの後側面部82bを挿入してあって、突出片332bの爪部と後側面部82bの爪部を係止させてある。なお、下側カバー8bは、手すりの左右全長にわたって延びるものであってもよいし、支柱1に対応する部位のみに設けるものであってもよい。
【0058】
このように構成した手すりの第四実施形態は、上側固定具3aの躯体側部材38の躯体側当接面41の水平面に対する角度が可変であるから、躯体100の上面が傾斜している場合であっても、躯体側当接面41の角度を傾斜に一致させることで、躯体側当接面41と躯体100の隙間を無くすことができるので、躯体100と上側固定具3aを確実に固定することができる。そして、支柱側部材37に対する躯体側部材38の角度を変えるだけで、容易に躯体側当接面41の角度を調整できる。
【0059】
なお、第四実施形態において、下側固定具が、支柱側部材と躯体側部材からなるものであってもよい。また、支柱側部材が、支柱と一体に形成されたものであってもよい。さらに、躯体側部材が、支柱側部材に対して、段階的に角度調整可能なものであってもよい。たとえば、支柱側部材の軸部が、中心軸が左右方向に平行な正角柱の複数の側面からなる形状のものである。この際、躯体側部材の軸受部も、同じ正角柱の複数の側面からなり、支柱側部材の軸部の複数の面が隙間なく当接するものとなる。この場合でも、躯体側部材の躯体側当接面の水平面に対する角度が可変であるから、躯体の上面及び/又は下面が傾斜している場合であっても、躯体側当接面の角度を傾斜に一致させるか、それができなければ近い角度に合わせることで、躯体側部材と躯体の隙間を無くすか小さくできるので、躯体と上側固定具及び/又は下側固定具を確実に固定することができる。また、支柱側部材に対する躯体側部材の角度決めが容易であって、一度設定した角度からずれることがなく、躯体と上側固定具及び/又は下側固定具をより確実に固定することができる。
【0060】
本発明は、前記の実施形態に限定されない。たとえば、上側固定具と下側固定具の形状は、上記の要件を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。また、上桟と下桟の間部分の構成は、前記の縦格子やガラスパネルを設けた構成のほか、横格子やルーバー格子を設けてもよく、意匠性などを考慮して自在に設定できる。
【符号の説明】
【0061】
1 支柱
2a 上側アンカー
2b 下側アンカー
3a 上側固定具
3b 下側固定具
4 角度調整具
31a 上側挟持部(挟持部)
36a 被当接面
37 支柱側部材
38 躯体側部材
41 躯体側当接面
42 固定具側当接面
100 躯体