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特許7115706高精度加工システムおよび高精度加工方法
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  • 特許-高精度加工システムおよび高精度加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】高精度加工システムおよび高精度加工方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20220802BHJP
   B23C 3/12 20060101ALI20220802BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B25J9/10 A
B23C3/12 B
B23Q17/20 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019028987
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020131375
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000191353
【氏名又は名称】新明工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】城山 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】濱嶋 竜也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和晃
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-4183(JP,A)
【文献】特開2001-260020(JP,A)
【文献】特開2000-74616(JP,A)
【文献】特開2002-355730(JP,A)
【文献】特開昭59-24473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
B23C 1/00- 9/00
B23Q 17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を支持した状態で固定する固定治具と、
この加工対象物の加工面における不要な突起を切削する切削工具と、
加工対象物の形状データに基づいて求められる高精密加工を行なう部位の表面データに従って切削工具を移動させる高精度型産業用ロボットと、
加工対象物の表面に当接するスタイラスと、
この高精度型産業用ロボットに取付けられて切削工具およびスタイラスを支持する可動台と、
前記高精度型産業用ロボットの各部を駆動制御することにより可動台の位置および方向を制御するロボット制御部と、
前記スタイラスを加工対象物に当接させた状態で可動台を前記加工対象物の表面に沿って移動させるときにその微細動作を検出すると共に、可動台を前記加工対象物の表面に沿って移動させるときに可動台の微細駆動を行なうことにより切削工具による切削加工を可能とするボイスコイルモータと、
このボイスコイルモータに接続されて可動台の微細駆動および微細動作の検出を行なう微細動作制御部とを備えることを特徴とする高精度加工システム。
【請求項2】
請求項1に記載の高精度加工システムを用いて、前記ロボット制御部に、前記加工対象物の表面データに基づいて可動台が加工対象物の表面に沿うように可動台を移動させるロボット動作プログラムを実行させ、
前記微細動作制御部に、前記可動台に設けたスタイラスを加工対象物に接触させた状態で可動台を移動させるときに生じるボイスコイルモータの検出電流を用いて加工対象物の加工面の微小凹凸を検出させる検出処理と、
この微小凹凸の分布を前記微細動作制御部の記録部に記録させる記録処理と、
微小凹凸の分布から仕上げ加工が必要な切削対象の凹凸部を抽出すると共に、ロボット制御部に切削工具を切削対象の位置に移動させる位置情報を転送する移動処理と、
産業用ロボットによる切削工具の配置を行なった後に切削工具を駆動して仕上げ加工を行わせる切削処理とからなる一連の処理を実行させる精密仕上加工プログラムを実行させることを特徴とする高精度加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度加工システムおよび高精度加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高精度の部品を加工するときには加工後に、加工面に発生する突起(いわゆるバリ)をディスクグラインダーのような研磨機を用いて取り除くことにより、仕上げ加工を行なうことがある。基本的に自動運転によって部品を加工する加工機を用いた加工においても、同様の仕上げ加工を作業者の手作業で行なう必要があった。
【0003】
例えば、航空機などで使用する部品は、複雑な形状部品を放電精密加工機のような超精密加工機を用いて加工することにより、ミクロンオーダーの超精密加工を行なっていた。このような精密加工機を用いる場合、個々の複雑形状部品のバリ取り用プログラムを作成し、複雑形状部品のミクロンオーダーの超精密バリ取り仕上が必要であった。
【0004】
特許文献1にはこのような産業用ロボットのアームの先端に取付けた工具により被加工物に生じたバリを取り除くための制御をアームの撓みを補正しながら行なう為の超精密バリ取り仕上げプログラムの一例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開8-39465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の仕上加工を行なう場合には、1個の複雑形状部品を仕上げるのに、精密加工を行なうプログラムと精密仕上加工を行なうプログラムの両方をそれぞれセットする必要があり多大の時間がかかるという問題があった。
【0007】
また、複雑形状の被加工部品を仕上加工機の固定治具に固定するときに、どうしても毎回固定する位置が異なってしまうため、毎回バリ取り用の精密加工プログラムを調整し直す必要が生じるという問題も発生する。
【0008】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、精密加工による仕上加工を行なう被加工物の形状が複雑であったとしても、仕上加工を施す部材の形状に合わせて仕上加工プログラムを入れ直すことなく目的とする不要な突起のみを確実に切削加工することができる高精度加工システムおよび高精度加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、第1発明は、加工対象物を支持した状態で固定する固定治具と、この加工対象物の加工面における不要な突起を切削する切削工具と、加工対象物の形状データに基づいて求められる高精密加工を行なう部位の表面データに従って切削工具を移動させる高精度型産業用ロボットと、 加工対象物の表面に当接するスタイラスと、この産業用ロボットに取付けられて切削工具およびスタイラスを支持する可動台と、前記産業用ロボットの各部を駆動制御することにより可動台の位置および方向を制御するロボット制御部と、前記スタイラスを加工対象物に当接させた状態で可動台を前記加工対象物の表面に沿って移動させるときにその微細動作を検出すると共に、可動台を前記加工対象物の表面に沿って移動させるときに可動台の微細駆動を行なうことにより切削工具による切削加工を可能とするボイスコイルモータと、このボイスコイルモータに接続されて可動台の微細駆動および微細動作の検出を行なう微細動作制御部とを備えることを特徴とする高精度加工システム(請求項1)を提供する。
【0010】
固定治具によって固定された加工対象物はその位置を固定させた状態で支持される。高精度型産業用ロボットはロボット制御部によって制御されて、加工対象物の形状データに基づいて求められる高精密加工を行なう部位の表面データに従って切削工具およびスタイラスを支持する可動台を移動させることができる。従って、スタイラスを加工対象物に当接させた状態で可動台を加工対象物の表面に沿って移動させるときにボイスコイルモータの出力によって可動台の微細動作を検出することにより、切削の必要性がある突起を検出することができる。
【0011】
次いで、ロボット制御部が高精度産業用ロボットを制御して可動台を前記検出した突起の位置に合わせて切削工具を微細動作制御部によって移動させ、突起部分を切削させるべくボイスコイルモータを微細駆動させると共に、切削工具を駆動して突起を切削することができる。切削工具はモータスピンドルであることにより、バリ取り仕り上げを行なうことができる。
【0012】
スタイラスを当接させた状態でボイスコイルモータによる突起の検出を行なう場合、可動部が軽く、ダイレクトドライブであるため、一般のアクチュエータよりも高速で、かつ電気シグナルに合わせて運動することができる。つまり、スタイラスの微細な動作に追従して高速応答する電気信号を用いて凹凸を検出することができる一方、スタイラスによって切削工具の微細駆動を行なう場合にも応答性が良く、微細加工に適している。
【0013】
前記高精度産業用ロボットは例えば汎用性に優れた6軸ロボットなどの多関節ロボットであるが、直交ロボット、パラレルリンクロボットなどを採用してもよい。可動台はLMガイドなどの直線運動部を用いて支持されることにより、移動方向が直線方向に精度良く規制された台であることが好ましい。
【0014】
第2発明は、前記高精度加工システムを用いて、前記ロボット制御部に、前記加工対象物の表面データに基づいて可動台が加工対象物の表面に沿うように可動台を移動させるロボット動作プログラムを実行させ、前記微細動作制御部に、前記可動台に設けたスタイラスを加工対象物に接触させた状態で可動台を移動させるときに生じるボイスコイルモータの検出電流を用いて加工対象物の加工面の微小凹凸を検出させる検出処理と、この微小凹凸の分布を前記微細動作制御部の記録部に記録させる記録処理と、微小凹凸の分布から仕上げ加工が必要な切削対象の凹凸部を抽出すると共に、ロボット制御部に切削工具を切削対象の位置に移動させる位置情報を転送する移動処理と、産業用ロボットによる切削工具の配置を行なった後に切削工具を駆動して仕上げ加工を行わせる切削処理とからなる一連の処理を実行させる精密仕上加工プログラムを実行させることを特徴とする高精度加工方法(請求項2)を提供する。
【0015】
ロボット制御部にロボット動作プログラムを実行させた状態で、微細動作制御部に精密仕上加工プログラムを実行させることにより、検出処理によってロボット制御部に加工対象物の表面に沿うように可動台を移動させて表面にスタイラスを当接させて加工面の微小凹凸を触診するかのようにして検出することができ、記録処理によって前記微小凹凸の分布を記録部に記録できる。さらに、移動処理によって微小凹凸の分布から仕上け加工が必要な凹凸部の場所と量を抽出して切削工具を移動させ、切削処理によって切削工具を用いて仕上げ加工を行なうことができる。
【0016】
ロボット制御部に実行させるロボット動作プログラムは高精度型産業用ロボットに与えられたティーチペンダンドによって作成されたものであることが考えられる。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明によれば複雑な形状の被加工物の仕上加工を加工プログラムを入れ直すことなく不要な突起のみを確実かつ効率的に切削加工することができる高精度加工システムおよび高精度加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る高精度加工システムを示す図である。
図2】前記高精度加工システムの模式的な構成を示す図である。
図3】加工対象物の固定治具の構成を示す図である。
図4】高精度加工システムのスタイラスと切削工具の関係を示す図である。
図5】高精度加工方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態の高精度加工システム1の構成を図1図5に従って説明する。図1図2に示すように、本発明の高精度加工システム1は加工対象物2を支持した状態で固定する固定治具3と、この加工対象物2の加工面2Aにおける不要な突起を切削する切削工具4と、加工対象物2の形状データ5に基づいて求められる高精密加工を行なう加工面2Aの表面データに従って切削工具4を移動させる高精度型産業用ロボット6と、加工対象物2の表面に当接するスタイラス7と、この産業用ロボット6に取付けられて切削工具4およびスタイラス7を支持する可動台8と、前記産業用ロボット6の各部を駆動制御することにより可動台8の位置および方向を制御するロボット制御部9と、前記スタイラス7を加工対象物2に当接させた状態で可動台8を前記加工対象物2の表面に沿って移動させるときにその微細動作を検出すると共に、可動台8を前記加工対象物2の表面に沿って移動させるときに可動台8の微細駆動を行なうことにより切削工具4による切削加工を可能とするボイスコイルモータ10と、このボイスコイルモータ10に接続されて可動台8の微細駆動および微細動作の検出を行なう微細動作制御部11とを備える。
【0020】
前記高精度加工システム1を構成する固定治具3および高精度産業用ロボと6は作業者が作業しやすい高さに形成された作業台1A上に固定されている。前記加工対象物2は例えば航空機産業で用いられるタービンブレードなどの高精度加工を必要とするものであり、極端な少量多品種を必要とするものである。そして、前記高精度加工システム1は一次加工において基本的な形状の加工が行われた加工対象物2に、二次加工として高精度加工(バリ取り)を行なうものである。また、固定冶具3は高さ調節可能な基台部12と、この基台部12に支持されて支持部13とを備える。
【0021】
図3に示すように、固定冶具3はこの加工対象物2を固定するものであり、加工対象物2の側面に当接する当接板部14と、加工対象物2を置く台部15と、加工対象物2の各部に当接する抑え部材16,17と、加工対象物2に押さえ込む力をかけるクランプ18とを備えることにより、クランプ18のワンタッチ操作によって固定し、また、ワンタッチ操作によって解除可能である。
【0022】
図4に示すように、切削工具4はモータスピンドル4Aによって回転駆動されるバリ取り工具4Bからなり、可動台8上に取付けられているので、可動台8の移動に伴って図示上下方向に移動可能に構成されている。また、可動台8は高精度型産業用ロボット6の先端部に設けられるボイスコイルモータ10によって駆動され、例えばLMガイドによって図示略上下方向に直線移動可能に支持されると共に可能な限り軽量化された可動部分8Aを備える。加えて、可動部分8Aにはスタイラス7および切削工具4を備える。
【0023】
前記高精度型産業用ロボット6は、例えば人の腕に似た自由度を持つと共に精密な作業を行なうことができる垂直多関節ロボットであることが好ましく、かつ、ミクロンオーダーの微細な分解能で制御することができるものである。本実施形態の高精度型産業用ロボット6は5つの回転軸6A~6E上で回動自在に支持する関節駆動部と、両矢印6F方向に進退可能に支持する進退駆動部とを備え、前記形状データ5の例としてのティーチペンダントからのコマンドに従って各駆動部が制御されることにより、形状データ5に基づいて求められる加工対象物の表面データに従って可動台8を移動させると共に、可動台8の角度をボイスコイルモータ10の駆動によるスタイラス7または切削工具4の移動方向が加工対象物2の表面に略垂直となる角度にさせるものである。
【0024】
ロボット制御部9は前記形状データ5の指示に従って高精度型産業用ロボット6の駆動部を適宜制御することにより可動台8の位置および角度を調節可能とするロボット動作プログラムP1を実行可能とするものであり、本実施形態の高精度加工システム1では、さらに微細動作制御部11からの指示コマンドに従って形状データ5を微細動作制御部11に転送したり、微細動作制御部11からの指示コマンドによって、前記スタイラス7を加工面に当接させたり、切削工具4によって加工面の凸部を切削させるように移動させることができる。なお、スタイラス7の先端部は円形に形成されており、スタイラス7が当接する加工対象物2の表面に傷をつけないように構成されている。
【0025】
前記ボイスコイルモータ10は可動台8を移動させてスタイラス7を加工面に軽く当接させた状態で可動台8の移動量を検出可能であると共に、回転駆動させた切削工具4を微細駆動して加工面の突起に当接させてこの突起だけを切削可能に構成している。このボイスコイルモータ10は電気信号を印加することにより可動台8の可動部8Aを迅速かつ高精度に移動させることができると共に、可動部8Aの移動量に合せた電気信号を遅れることなく発生させることができる。つまり、アクチュエータとしての動作に加えて位置検出器としての動作も行なわせることができる。
【0026】
前記微細動作制御部11は精密仕上加工プログラムP2を実行することにより、前記形状データ5を用いたロボット動作プログラムP1を実行させたり、ボイスコイルモータ10による微細動作を制御し、また、ボイスコイルモータ10からの信号によって可動台8の移動量を精度良く検出することにより、検出処理、記録処理、移動処理、切削処理を実行可能とするものである。
【0027】
図5は上記構成の高精度加工システム1を用いた高精度加工方法の例を示す図である。図5に示すように、前記ロボット制御部9に、まず、前記加工対象物2の形状データ5に基づいて可動台8が加工対象物2の表面に沿うように可動台8を移動させるロボット動作プログラムP1を実行させる(ステップS1)。
【0028】
また、微細動作制御部11に精密仕上加工プログラムP2を実行させて、前記可動台8に設けたスタイラス7を加工対象物2に接触させた状態で可動台8を移動させるときに生じるボイスコイルモータ10の検出電流を用いて加工対象物2の加工面2Aの微小凹凸を検出させる検出処理を実行させる(ステップS2)。
【0029】
このとき、加工対象部2が複雑な形状であっても、前記表面データ5を用いてスタイラス7を選択することにより、スタイラス7の先端部が加工面2Aに当接できるように前記可動台8を加工面2Aに沿って所定の距離を保つように移動させることにより、スタイラス7を用いた触診を行なうことができる。可動台8を加工面2Aに沿って移動させる時に可動台8の可動部8Aの直線移動によって発生する電流値などの電気信号は複雑な形状の微小凹凸であってもこれをフィードバック信号として確実に検出することができる。
【0030】
次に、この微小凹凸の分布を前記微細動作制御部11の記録部11Aに記録させる記録処理を実行させる(ステップS3)。
【0031】
前記記録処理によって記録される微小凹凸はミクロンオーダーであり、加工対象物2の固定作業時に僅かな位置ズレが発生することも考えられるが、このような位置ズレは可動台8の移動に対して変動することがない位置ズレとして表れるか、あるいは移動距離に比例して増減するズレ量として表れるので、微小凹凸の分布を記録部生11Aに記録させることにより、加工面2Aに発生しているバリの位置を特定することができる。
【0032】
従って、前記記録部11Aに記録された微小凹凸の分布(触診データ)を解析して、仕上げ加工が必要な切削対象の凹凸部を抽出すると共に、ロボット制御部9に切削工具を切削対象の位置に移動させるバリ取りプログラムを作成して、バリ取り加工対象の位置情報を前記ロボット制御部9に転送する移動処理を実行させることができる(ステップS4)。
【0033】
なお、前記移動処理において仕上加工が必要な切削対象の凹凸部の位置として、例えば許容高さとして50μm以上の凸部をバリとして抽出させることができるが、切削による仕上げ加工を必要とするバリがないことも考えられる。したがって、加工面2Aに切削対象の微小凹凸が存在するかどうかを判定する(ステップS5)。
【0034】
前記ステップS5において、切削対象となるバリがあると判断された場合、産業用ロボットによる切削工具の配置を行なった後に切削工具を駆動して仕上げ加工を行わせる切削処理を実行させる(ステップS6)。
【0035】
このとき、ロボット制御部9は切削工具4を選択した状態で、微細動作制御部11から受け取ったバリ取り加工対象の位置情報に従って高精度型産業用ロボット6の各部を制御することにより、切削工具4の先端部が加工面2Aと面一になるように、可動台8を加工面2Aに沿って所定の距離を保つように移動させることができる。この切削工具4は切削対象となる凸部のみを切削し、周辺の加工面2Aと面一となるようにするようにするバリ取りプログラムを作成して行なうものであるから、不要な切削加工を行なうことがなく、それだけ仕上げ加工を速やかに行なうことができ、バリが発生していない部分に傷を付けることがないので、仕上がりがより美しくなるという利点がある。
【0036】
上述のステップS2~S6の処理を繰り返すことにより、高精度加工方法によるバリ取り加工を極めて容易に行なうことができ、許容高さ以上のバリを確実に取りのぞき、加工面2Aのバリが許容高さ以下になっていることを前記ステップS6において確認してから仕上げ加工を終了することができる。
【0037】
とりわけ、航空機産業の複雑な形状の加工対象物2のバリ取り作業は、従来は高度な技術を持つ職人が手作業で行なっていたのであるが、本発明の高精度加工システム1および高精度加工方法を用いることにより、職人業を必要とする作業をロボット化することができ、バリ取りの仕上作業の自動化を行なうことができる。また、仕上げ加工作業を24時間365日続けて行なうことも可能となる。
【0038】
さらに、本発明の高精度加工システム1では、切削工具4や固定治具3を加工対象物2に合せて交換することも可能である。すなわち、異なる部品のバリ取り加工であっても、比較的容易に対応することができ、超高精度加工を行なう高精度加工システムの汎用性が向上する。
【符号の説明】
【0039】
1 高精度加工システム
2 加工対象物
3 固定治具
4 切削工具
5 形状データ
6 高精度型産業用ロボット
7 スタイラス
8 可動台
9 ロボット制御部
10 ボイスコイルモータ
11 微細動作制御部
P1 ロボット動作プログラム
P2 精密仕上加工プログラム
図1
図2
図3
図4
図5