(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】消音治具
(51)【国際特許分類】
B25C 7/00 20060101AFI20220802BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B25C7/00 Z
G10K11/16 150
(21)【出願番号】P 2019071105
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 有汰
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-105988(JP,U)
【文献】実開昭52-114481(JP,U)
【文献】特開昭50-025469(JP,A)
【文献】特開2016-087667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0233814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C1/00-13/00
B21J7/00-7/46
B21J15/00-15/50
B21D28/00-28/36
G10K11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打込機に取付可能な取付部と、
前記取付部に取り付けられた前記打込機による射出物の射出軌跡を周囲から取り囲むように配置され、防音材で構成された射出音低減部と、
打込み対象に接触する接触面を有し、防振材で構成された打撃音低減部と、
を備え、
前記打撃音低減部は、前記打込み対象に前記接触面を接触させた状態で前記打込み対象と当該打撃音低減部との間に固着物を配置するための固着物配置空間を形成する窪部を有し、
前記固着物配置空間は、当該固着物配置空間に対して射出方向上流側の空間よりも前記射出軌跡に直交する断面の大きさが拡大されており、
前記窪部は、前記固着物配置空間が前記射出軌跡に垂直な方向に開放されるように形成されている、
消音治具。
【請求項2】
前記打込み対象に前記接触面を吸着させるための吸着部
を更に備える
請求項1に記載の消音治具。
【請求項3】
前記射出音低減部は、前記射出軌跡を周囲から取り囲むように配置され、吸音材で構成された射出音吸音部を含んで構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の消音治具。
【請求項4】
前記接触面によって形成される接触領域の面積は、前記取付部の前記射出軌跡に直交する断面積の2倍以上である、
請求項1~
請求項3の何れか1項に記載の消音治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消音治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空圧式固着具打込機の減音装置が開示されている。この減音装置では、圧縮された空気が一気に開放された時の音(以下、射出音という。)を減音するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、釘等の射出物の射出音は低減できるが、射出物が柱等の打込対象に衝突する音や貫通する音(以下、これら衝突する音、貫通する音を纏めて「打撃音」という。)を低減できない。
【0005】
本発明は、射出音だけでなく、打撃音をも低減することができる消音治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る消音治具は、打込機に取付可能な取付部と、前記取付部に取り付けられた前記打込機による射出物の射出軌跡を周囲から取り囲むように配置され、防音材で構成された射出音低減部と、打込み対象に接触する接触面を有し、防振材で構成された打撃音低減部と、を備える消音治具である。
【0007】
この態様では、消音治具は、打込機に取付可能な取付部を備える。このため、釘打機等の打込機に取付部を取り付けることにより、消音治具を打込機に取り付けることができる。
また、消音治具は、防音材で構成された射出音低減部を備える。射出音低減部は、取付部に取り付けられた打込機による射出物の射出軌跡を周囲から取り囲むように配置される。このため、釘などの射出物の射出音が射出音低減部によって低減される。
また、消音治具は、防振材で構成された打撃音低減部を備える。打撃音低減部は、打込み対象に接触する接触面を有する。このため、接触面を柱等の打込み対象に接触させた状態で釘等の射出物を打込むことで、射出物と打込み対象との打撃音が低減される。
【0008】
以上説明したとおり、この態様に係る消音治具によれば、打込機により射出物を打込み対象に打込む際、射出音だけでなく、打撃音をも低減することができる。
【0009】
なお、本発明における「防音材」とは、音を吸収する機能を有する吸音材(グラスウール等)だけでなく、音を遮る機能を有する材料をも含む概念である。
【0010】
第2の態様に係る消音治具は、第1の態様において、前記打撃音低減部は、前記打込み対象に前記接触面を接触させた状態で前記打込み対象と当該打撃音低減部との間に固着物を配置するための固着物配置空間を形成する窪部を有し、前記固着物配置空間は、当該固着物配置空間に対して射出方向上流側の空間よりも前記射出軌跡に直交する断面の大きさが拡大されている。
【0011】
この態様では、打撃音低減部は、固着物配置空間を形成する窪部を有する。固着物配置空間とは、打込み対象に接触面を接触させた状態で、打込み対象と当該打撃音低減部との間に固着物を配置するための空間である。そして、固着物配置空間は、当該固着物配置空間に対して射出方向上流側の空間よりも射出軌跡に直交する断面の大きさが拡大されている。
このため、柱等の打込み対象に固着させるブラケット等の固着物が比較的大きなものであっても、当該固着物を固着物配置空間に配置し、打撃音低減部の接触面を打込み対象に接触させた状態で、打込み作業を行うことができる。
【0012】
第3の態様に係る消音治具は、第2の態様において、前記窪部は、前記固着物配置空間が前記射出軌跡に垂直な方向に開放されるように形成されている。
【0013】
この態様では、窪部は、固着物配置空間が射出軌跡に垂直な方向に開放されるように形成されている。このため、打込み対象に接触面を接触させた状態で固着物配置空間が射出軌跡に垂直な方向に開放されるので、ブラケット等の固着物の一部を固着物配置空間の外に出した状態で打込み作業を行うことができる。
【0014】
第4の態様に係る消音治具は、第1~第3の何れかの態様において、前記打込み対象に前記接触面を吸着させるための吸着部を更に備える。
【0015】
この態様では、消音治具は、打込み対象に接触面を吸着させるための吸着部を備える。このため、柱等の打込み対象に打撃音低減部の接触面を密着させやすいので、打撃音低減部による消音効果を安定的に得ることができる。
【0016】
第5の態様に係る消音治具は、第1~第4の何れかの態様において、前記射出音低減部は、前記射出軌跡を周囲から取り囲むように配置され、吸音材で構成された射出音吸音部を含んで構成されている。
【0017】
この態様では、射出音低減部は、吸音材(グラスウール等)で構成された射出音吸音部を含んで構成されている。射出音吸音部は、射出軌跡を周囲から取り囲むように配置される。このため、釘などの射出物の射出音が効果的に低減される。
【0018】
第6の態様に係る消音治具は、第1~第5の何れかの態様において、前記接触面によって形成される接触領域の面積は、前記取付部の前記射出軌跡に直交する断面積の2倍以上である。
【0019】
この態様では、接触面によって形成される接触領域の面積は、取付部の射出軌跡に直交する断面積の2倍以上(より好ましくは5倍以上)である。このため、打込み対象に対する射出方向が安定すると共に、小型で扱いやすい消音治具とすることができる。
具体的に説明する。まず、接触面によって形成される接触領域の面積は、打込み対象に対する射出方向の安定性に寄与する。一方、消音治具の全体が大きくなることは、消音治具を扱い難くする。この態様では、接触面によって形成される接触領域の面積は、取付部の射出方向に直交する断面積の2倍以上である。これにより、消音治具の全体を大きくすることなく、接触面によって形成される接触領域の面積を大きくしている。このため、打込み対象に対する射出方向が安定すると共に、小型で使いやすい消音治具とすることができる。
なお、取付部の射出方向に直交する断面積が、射出方向の位置に応じて異なる場合には、上記「取付部の射出方向に直交する断面積」は、打込機の一部が挿入される範囲(射出方向の範囲)における当該断面積の平均値で考える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、射出音だけでなく、打撃音をも低減することができる消音治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】実施形態の消音治具を示す三面図(平面図、正面図、右側面図)である。
【
図3】実施形態の消音治具を示す断面図(
図2の3-3線断面図)である。
【
図4】実施形態の消音治具の使用状態を示す断面図である。
【
図5】磁石の配置方法のバリエーションを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る消音治具10について、図面を用いて説明する。
【0023】
なお、各図に示す矢印FR、矢印UP、矢印LHを、それぞれ、消音治具10の前後方向前側、上下方向上側、左右方向左側として説明する。また、前後方向を射出方向、前後方向前側を射出方向下流側、前後方向後側を射出方向上流側ということがある。
【0024】
図1~
図3には、第1実施形態の消音治具10が示されている。
【0025】
図1~
図3に示すように、消音治具10は、合成樹脂で構成された樹脂部材20と、ゴム等の防振材で構成された防振部材30と、吸音材40と、磁石50と、を含んで構成されている。
【0026】
(樹脂部材20)
図3に示すように、樹脂部材20は、射出方向上流側の基端部22と、射出方向下流側の先端部21と、を含んで構成されている。基端部22は、打込機90が取り付けられる取付部23と、吸音材40が配置される吸音材配置部24と、を有する。先端部21は、防振部材30が固定される固定部として機能する。
【0027】
図1に示すように、先端部21は、射出方向に直交する断面の大きさが、基端部22よりも大きくなるように形成されている。また、先端部21は、射出方向に直交する断面の形が矩形とされ、基端部22は、射出方向に直交する断面の形が円形とされている。
【0028】
図3に示すように、基端部22は、筒状の周壁22Aと、周壁22Aの内部に形成されたリブ22Bと、を有する。周壁22Aは、消音治具10に取り付けられた打込機90による射出物の射出軌跡AXを中心とした円筒状に形成されている。リブ22Bは、周壁22Aの内面から射出軌跡AXに向かって突出するように形成されている。リブ22Bの形状は、射出方向から見て、円形である。
【0029】
リブ22Bは、周壁22Aの内部における前後方向中間位置に位置する。周壁22Aの内部におけるリブ22Bよりも前方は、グラスウール等の吸音材40が配置される空間とされ、リブ22Bよりも後方は、釘打機90のノーズトップ91が挿入される空間とされている(
図4参照)。
【0030】
吸音材40は、打込機90による射出物の射出軌跡AXが通る空間を残すように配置されている。吸音材40は、音を吸収する機能を有する材料であり、例えば、グラスウール、ロックウール、ウレタンフォームである。吸音材40は、射出軌跡AXを中心とする円筒形状の領域に配置されている。このため、吸音材40は、射出軌跡AXを周囲から取り囲むように配置されている。このように配置された吸音材40が、本発明の「射出音吸音部」に相当する。
【0031】
本実施形態では、周壁22Aの内部におけるリブ22Bの位置は、前後方向の中央よりも前側である。
【0032】
また、周壁22Aの内部におけるリブ22Bよりも射出方向上流側(つまり、取付部23)には、打込機90のノーズトップ91が挿入されたときに、打込機90のノーズトップ91を保持するための保持部材23Bが設けられている。保持部材23Bは、例えば、
図3に示すように、リング状のゴム部材である。
【0033】
先端部21には、射出方向に貫通する貫通孔21Hが形成されている。貫通孔21Hは、射出軌跡AXが通る位置に形成されている。本実施形態では、先端部21の貫通孔21Hの大きさ及び形状は、リブ22Bが形成する孔と同一である。
【0034】
本実施形態では、
図2(B)に示すように、貫通孔21Hの位置は、先端部21を射出方向から見たときの外形の図心の位置と略一致する。
【0035】
図3に示すように、樹脂部材20の先端部21は、防振部材30が接着等により固定される固定面21Sを有する。固定面21Sは、法線方向を射出方向に向けた平面である。
【0036】
(防振部材30)
防振部材30の外形は、射出方向から見て、樹脂部材20の先端部21と同じ外形である。本実施形態では、防振部材30の外形は、射出方向から見て、樹脂部材20の先端部21と同じ矩形状である。
【0037】
防振部材30は、前面30S、側面30T及び後面30Uを有している。
防振部材30の後面30Uは、接着等により樹脂部材20の先端部21の固定面21Sに固定されている。
防振部材30の前面30Sは、法線方向を射出方向に向けた平面とされている。防振部材30の前面30Sは、打込み作業において、柱等の打込み対象80(
図4参照)に接触した状態となる。防振部材30の前面30Sが、本発明の「接触面」に相当する。
【0038】
防振部材30には、窪部31が形成されている。窪部31は、防振部材30の前面30Sが射出方向上流側(前後方向後側)に向かって窪むように形成されている。但し、本実施形態では、窪部31の深さ(射出方向上流側への深さ)が防振部材30の厚さと一致している。つまり、本実施形態の防振部材30の窪部31は、防振部材30を厚さ方向に貫通している。
【0039】
防振部材30の前面30Sを打込み対象としての柱80の表面81に接触させた状態では、柱80と消音治具10との間に空間(以下、固着物配置空間32という。)が形成される。固着物配置空間32は、当該固着物配置空間32に対して射出方向上流側の空間(本実施形態では、樹脂部材20の先端部21の貫通孔21Hによる空間)よりも射出軌跡AXに直交する断面の大きさが拡大されている。本実施形態では、固着物配置空間32は、直方体形状の空間とされている。
【0040】
射出物が打込機90から射出されると、釘などの射出物は、リブ22Bにより形成された空間、吸音材40により形成された空間、樹脂部材20の先端部21の貫通孔21Hにより形成された空間、窪部31により形成された空間を、この順に通る。
【0041】
また、固着物配置空間32は、射出軌跡AXに垂直な方向(本実施形態では、
図1に示すように左右方向左側)に開放されるように形成されている。換言すると、防振部材30は、射出軌跡AXを当該射出軌跡AXに直交する方向の全周から取り囲むようには形成されていない。
【0042】
(磁石)
図1、
図4に示すように、防振部材30には、磁石50が配置されている。具体的には、
図5(A)に示すように、防振部材30の前面30Sには、凹部33が形成されている。この凹部33に磁石50が配置されている。磁石50は、防振部材30の前面30Sが打込み対象80に押し付けられて防振部材30が多少変形した場合でも、磁石50が防振部材30の前面30Sよりも射出方向下流側(前後方向前側)に飛び出さないように配置されている。
【0043】
但し、磁石50は、
図5(B)に示すように、防振部材30の中に埋設された状態で配置されてもよい。
【0044】
(大径部10A、小径部10B)
図3に示すように、消音治具10は、射出方向に直交する断面が小さい小径部10Bと、射出方向に直交する断面が大きい大径部10Aと、から構成されていると捉えることもできる。
【0045】
小径部10Bの外形は、射出方向に直交する断面が円形である。大径部10Aの外形は、射出方向に直交する断面が矩形である。
【0046】
小径部10Bは、樹脂部材20の基端部22と、吸音材40と、を含んで構成されている。大径部10Aは、樹脂部材20の先端部21と、防振部材30と、磁石50と、を含んで構成されている。
【0047】
(打込み作業)
図4は、消音治具10の使用状態の一例を示す断面図である。
図4には、一例として、鉄製の柱80(「打込み対象」)に釘を打ち込む際に、本実施形態の消音治具10を用いる様子が示されている。また、この例では、柱80にブラケット70を重ねた状態で釘を打ち込むことで、ブラケット70(「固着物」)を柱80に固着させる作業が示しめされている。
【0048】
ブラケット70は、柱80の面81に沿って配置される第1部分71と、板厚方向に曲げられた屈曲部を挟んで第1部分71と接続された第2部分72と、板厚方向に曲げられた屈曲部を挟んで第2部分72と接続された第3部分73と、を含んで構成されている。
【0049】
図4に示すように、打込み作業が行われる状態では、固着物配置空間32には、ブラケット70の第1部分71が配置され、ブラケット70の第2部分72及び第3部分73は配置されない。凹部33の深さD1(
図3参照)は、ブラケット70の第1部分71の厚みよりも大きいが、ブラケット70の厚みD2(
図4参照)よりは小さい。凹部33の深さD1は、例えば5mm以下である。
【0050】
防振部材30の前面30S(「接触面」)が柱80の面81に密着した状態となっている。そのため、射出軌跡AXは、柱80の面81に垂直である。
【0051】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0052】
本実施形態では、消音治具10は、打込機90に取付可能な取付部23を備える。このため、釘打機等の打込機90に取付部23を取り付けることにより、消音治具10を打込機90に取り付けることができる。
また、消音治具10は、防音材で構成された射出音低減部11(
図3参照)を備える。なお、本発明における「防音材」とは、音を吸収する機能を有する吸音材だけでなく、音を遮る機能を有する材料をも広く含む概念であり、本実施形態における樹脂部材20も防音材に該当する。射出音低減部11は、取付部23に取り付けられた打込機90による射出物の射出軌跡AXを周囲から取り囲むように配置されている。このため、釘などの射出物の射出音が射出音低減部11によって低減される。
また、消音治具10は、防振材(防振部材30)で構成された打撃音低減部12を備える。打撃音低減部12は、打込み対象80に接触する接触面30Sを有する。このため、接触面30Sを柱等の打込み対象80に接触させた状態で釘等の射出物を打込むことで、射出物と打込み対象80との打撃音が低減される。
【0053】
以上説明したとおり、本実施形態に係る消音治具10によれば、打込機90により射出物を打込み対象80に打込む際、射出音だけでなく、打撃音をも低減することができる。
【0054】
また、本実施形態では、打撃音低減部12は、固着物配置空間32を形成する窪部31を有する。固着物配置空間32とは、打込み対象80に接触面30Sを接触させた状態で、打込み対象80と当該打撃音低減部12との間に固着物70を配置するための空間である。そして、固着物配置空間32は、当該固着物配置空間32に対して射出方向上流側の空間よりも射出軌跡AXに直交する断面の大きさが拡大されている。
このため、柱等の打込み対象80に固着させるブラケット等の固着物70が比較的大きなものであっても、当該固着物70を固着物配置空間32に配置し、打撃音低減部12の接触面30Sを打込み対象80に接触させた状態で、打込み作業を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、消音治具10は、打込み対象80に接触面30Sを吸着させるための吸着部(磁石50)を備える。このため、柱等の打込み対象80に打撃音低減部12の接触面30Sを密着させやすいので、打撃音低減部12による消音効果を安定的に得ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、窪部31は、固着物配置空間32が射出方向に垂直な方向に開放されるように形成されている。このため、打込み対象80に接触面30Sを接触させた状態で固着物配置空間32が射出方向に垂直な方向に開放されるので、ブラケット等の固着物70の一部を固着物配置空間32の外に出した状態で打込み作業を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態では、射出音低減部11は、吸音材40で構成された射出音吸音部40(吸音材40)を含んで構成されている。射出音吸音部40は、射出軌跡AXを周囲から取り囲むように配置されている。このため、釘などの射出物の射出音が効果的に低減される。
【0058】
また、本実施形態では、接触面30Sによって形成される接触領域の面積(
図2におけるL1×L2で表される面積)は、取付部23の射出方向に直交する断面積の2倍以上(より具体的には5倍以上)である。このため、打込み対象80に対する射出方向が安定すると共に、小型で扱いやすい消音治具10とすることができる。
具体的に説明する。まず、接触面30Sによって形成される接触領域の面積(L1×L2で表される面積)は、打込み対象に対する射出方向の安定性に寄与する。一方、消音治具10の全体が大きくなることは、消音治具10を扱い難くする(
図7参照)。本実施形態では、接触面30Sによって形成される接触領域の面積(L1×L2で表される面積)は、取付部23の射出方向に直交する断面積よりも大きくされている。これにより、消音治具10の全体を大きくすることなく、接触面30Sによって形成される接触領域の面積(
図2におけるL1×L2で表される面積)を大きくしている。このため、打込み対象80に対する射出方向が安定すると共に、小型で使いやすい消音治具10とすることができる。
【0059】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、「打込機」が釘(ネイル)を打つための釘打機90である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の「打込機」は、例えば、針(ステープル)を打つための機械であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、樹脂部材20に吸音材40を配置する空間が形成され、当該空間に吸音材40が配置された例を説明した。換言すると、消音治具10が、射出音吸音部40(吸音材40)を備える例を説明した。
しかし、本発明の消音治具はこれに限定されず、消音治具は、射出音吸音部40(吸音材40)を備えなくてもよい。
例えば、第1実施形態の消音治具10において吸音材40を取り除いてもよい。この場合でも、「防音材」としての樹脂部材20が、射出軌跡AXを周囲から取り囲むように配置されているといえる。換言すると、この場合でも、消音治具は、射出音低減部11を備えているといえる。このように、本発明における「防音材」は非常に広い概念である。
【0061】
また、上記実施形態では、窪部31の深さが、防振部材30の厚みと同一である例(つまり、防振部材30の厚み方向の全体が窪部31とされた例)を説明したが、本発明の「窪部」はこれに限定されない。例えば、窪部31の深さを、防振部材30の厚みよりも小さくしてもよい。具体的には例えば、窪部31の深さを5mm以下とし、防振部材30の厚みを10mm以上としてもよい。
【0062】
また、例えば、本発明の消音治具は、
図6に示すように、打撃音低減部(防振部材130)が窪部31を有しない消音治具110であってもよい。
消音治具110では、防振部材130に射出軌跡AXが通る貫通孔135が形成されている。貫通孔135の大きさ(射出方向に見た大きさ)は、樹脂部材20の先端部21の貫通孔21Hと略同一とされている。
【0063】
また、例えば、本発明の消音治具は、
図7に示すような消音治具210であってもよい。
この消音治具210では、樹脂部材220が、基端部22と先端部21とを備えていない。そのため、消音治具210は、大径部10A(
図3参照)と小径部10Bとを備えていない。その結果、接触面30Sによって形成される接触領域の面積が、取付部23の射出方向に直交する断面積と略同一である。
また、この消音治具210の防振部材230は、窪部231を有している。しかし、窪部231が形成する固着部配置空間232は、射出方向に垂直な方向に開放されていない。換言すると、窪部231を有する防振部材230は、射出軌跡AXを当該射出軌跡AXに直交する方向の全周から取り囲むようには形成されている。
【0064】
なお、消音治具110及び消音治具210について、上記実施形態と同様の構成について同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0065】
10 消音治具
11 射出音低減部
12 打撃音低減部
23 取付部
30 防振部材
30S 前面(接触面)
31 窪部
32 固着物配置空間
40 吸音材(射出音吸音部)
50 磁石(吸着部)
70 ブラケット(固着物)
80 柱(打込み対象)
90 釘打機(打込機)
110 消音治具
130 防振部材(打撃音低減部)
210 消音治具
230 防振部材(打撃音低減部)
231 窪部
232 固着物配置空間
AX 射出軌跡