(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】溶着部の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/72 20060101AFI20220802BHJP
E04D 5/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G01N25/72 K
E04D5/00 Z
(21)【出願番号】P 2019120156
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】井上 朋子
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205263016(CN,U)
【文献】国際公開第2015/056790(WO,A1)
【文献】特開2008-089437(JP,A)
【文献】特開2008-115549(JP,A)
【文献】特開2004-137880(JP,A)
【文献】特開2006-234689(JP,A)
【文献】特開2018-100569(JP,A)
【文献】特開2004-037359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/72
E04D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設けられた防水層において、下層側に設けられた樹脂被膜鋼板又は樹脂製の防水シートと上層側に設けられた樹脂製の防水シートとの溶着部を、前記下層側の樹脂被膜鋼板、前記下層側の防水シート及び前記上層側の防水シートが溶融しない範囲で、前記上層側から加熱する工程と、
前記溶着部において加熱前の状態よりも隆起された部分を未溶着部として判定する工程と、
を有する溶着部の検査方法。
【請求項2】
前記溶着は、設定温度及び風量の少なくとも一方を調節可能な熱風ガンによる熱風溶着とされ、前記加熱は、前記熱風ガンの設定温度及び風量の少なくとも一方を、前記熱風溶着時よりも下げて行う請求項1に記載の溶着部の検査方法。
【請求項3】
前記溶着部において、前記上層側の防水シートの上に金属製の薄板を置き、前記薄板を介して前記溶着部を加熱する請求項1又は請求項2に記載の溶着部の検査方法。
【請求項4】
前記下層側の樹脂被膜鋼板は、平部及び立ち上がり部を含んで構成され、前記平部と前記立ち上がり部との間には湾曲されたコーナー部が形成されており、前記上層側の防水シートは、前記コーナー部を含む範囲で前記下層側の樹脂被膜鋼板に溶着されている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の溶着部の検査方法。
【請求項5】
前記建物は住宅とされ、
前記防水層は、当該住宅のバルコニー又はベランダに設けられている請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の溶着部の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着部の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅等の建物において、防水性が必要とされる所定の箇所には、防水層が設けられている。この防水層は、樹脂で被膜された鋼板(以下、適宜「樹脂被膜鋼板」と称す。)又は複数の樹脂製の防水シート(以下、適宜「防水シート」と称す。)を含んで構成されることがある。
【0003】
このように、防水層が複数の樹脂被膜鋼板又は防水シートを含んで構成される場合には、これらのつなぎ目において、下層側の樹脂被膜鋼板又は防水シートに対して、上層側の防水シートが溶着されている。このとき、防水層の防水性及び耐久性は、当該つなぎ目の溶着品質によって左右される。
【0004】
従来、溶着部の溶着状態を検査する方法として、上層側の防水シートの小口に、棒状又は扁平状の工具を当てる方法が知られている。この方法では、当該工具の入り込みの有無によって、溶着部の溶着状態を検査する。
【0005】
また、特許文献1には、上層側の防水シートのうち、溶着されていない部分に吸盤を吸着させて、該吸盤を引き上げることで、溶着された部分と溶着されていない部分の境界を検査する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記いずれの方法を用いても、溶着状態を検査できるのは、溶着作業が行われた部分(溶着部)のうち、実際に溶着された部分(以下、適宜「正規溶着部」と称す。)の外側端部のみである。つまり、これらの方法では、溶着部において周囲を正規溶着部に囲まれて内部に空気が溜まってしまった未溶着の部分(以下、適宜「未溶着部」と称す。)が存在する場合、これを特定することができない。
【0008】
防水層の溶着部に未溶着部が存在すると、防水性及び耐久性の確保に必要な溶着幅を確保できない場合がある。したがって、溶着後には、未溶着部を特定する検査を行い、必要に応じて当該部分を補修することが望ましい。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、溶着部において、未溶着部を特定可能な溶着部の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様に係る溶着部の検査方法は、建物に設けられた防水層において、下層側に設けられた樹脂被膜鋼板又は樹脂製の防水シートと上層側に設けられた樹脂製の防水シートとの溶着部を、前記下層側の樹脂被膜鋼板、前記下層側の防水シート及び前記上層側の防水シートが溶融しない範囲で、前記上層側から加熱する工程と、前記溶着部において加熱前の状態よりも隆起された部分を未溶着部として判定する工程と、を有している。
【0011】
第1の態様によれば、まず、溶着部において、上層側に設けられた防水シートが上層側から加熱される。
【0012】
次に、溶着部に未溶着部が存在する場合には、該加熱によって未溶着部の内部の空気が膨張し、未溶着部の内圧が高まる。これにより、上層側の防水シートのうち、未溶着部の上層側を構成する部分が押し上げられて隆起される。これに対して、正規溶着部を加熱しても、防水シートのうち、正規溶着部の上層側を構成する部分は隆起されない。
【0013】
つまり、溶着部を加熱することで、上層側の防水シートのうち、未溶着部の上層側を構成する部分のみが隆起され、正規溶着部の上層側を構成する部分は隆起されない。よって、溶着部において、加熱後に加熱前の状態よりも隆起された部分が、未溶着部として判定される。
【0014】
第2の態様に係る溶着部の検査方法は、第1の態様において、前記溶着は、設定温度及び風量の少なくとも一方を調節可能な熱風ガンによる熱風溶着とされ、前記加熱は、前記熱風ガンの設定温度及び風量の少なくとも一方を、前記熱風溶着時よりも下げて行う。
【0015】
第2の態様によれば、熱風溶着時に使用した熱風ガンを用いて、熱風溶着後に溶着部が加熱される。
【0016】
第3の態様に係る溶着部の検査方法は、第1又は第2の態様において、前記溶着部において、前記上層側の防水シートの上に金属製の薄板を置き、前記薄板を介して前記溶着部を加熱する。
【0017】
第3の態様によれば、金属製の薄板において熱が拡散され、この薄板からの伝熱によって防水シートが加熱される。これにより、溶着部において薄板と接する範囲が一度に加熱される。
【0018】
第4の態様に係る溶着部の検査方法は、第1~第3のいずれかの態様において、前記下層側の樹脂被膜鋼板は、平部及び立ち上がり部を含んで構成され、前記平部と前記立ち上がり部との間には湾曲されたコーナー部が形成されており、前記上層側の防水シートは、前記コーナー部を含む範囲で前記下層側の樹脂被膜鋼板に溶着されている。
【0019】
第4の態様によれば、コーナー部に未溶着部が存在する場合、上層側の防水シートのうち、該未溶着部の上層側を構成する部分が隆起される。
【0020】
第5の態様に係る溶着部の検査方法は、第1~第4のいずれかの態様において、前記建物は住宅とされ、前記防水層は、当該住宅のバルコニー又はベランダに設けられている。
【0021】
第5の態様によれば、住宅のバルコニー又はベランダに設けられている防水層において、溶着部に形成された未溶着部が特定される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、第1の態様に係る溶着部の検査方法は、溶着部において未溶着部を特定できるという優れた効果を有する。
【0023】
第2の態様に係る溶着部の検査方法は、溶着に使用した機材を用いて、効率よく簡便に溶着部の溶着状態を検査できるという優れた効果を有する。
【0024】
第3の態様に係る溶着部の検査方法は、溶着部の広い範囲を効率よく検査できるという優れた効果を有する。
【0025】
第4の態様に係る溶着部の検査方法は、コーナー部に形成された未溶着部を特定できるという優れた効果を有する。
【0026】
第5の態様に係る溶着部の検査方法は、雨水にさらされる住宅のバルコニーやベランダにおいて、高い防水性及び耐久性を確保し、住宅を漏水から守ることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る検査方法によって検査される溶着部を備えた防水層の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示される防水層の一部を拡大して示す拡大平面図である。
【
図3】(A)は、
図2の3A-3A線に沿って切断した断面を拡大して示す溶着部の拡大断面図であり、(B)は、
図2の3B-3B線に沿って切断した断面を拡大して示す溶着部の拡大断面図である。
【
図4】
図3(A)における溶着部のうち、樹脂被膜鋼板の平部と防水シートの平部との溶着部の検査方法を示す概略図であり、(A)は、空気だまりが形成された部分を加熱した場合の溶着部における加熱前後の状態を示す図であり、(B)は、空気だまりが形成されていない部分を加熱した場合の溶着部にける加熱前後の状態を示す図である。
【
図5】
図3(A)における溶着部のうち、樹脂被膜鋼板のコーナー部と防水シートのコーナー部との溶着部の検査方法を示す概略図であり、(A)は、空気だまりが形成された部分を加熱した場合の溶着部における加熱前後の状態を示す図であり、(B)は、空気だまりが形成されていない部分を加熱した場合の溶着部における加熱前後の状態を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る検査方法を示す図であり、(A)は概略斜視図であり、(B)は
図6(A)の6B-6B線に沿って切断した断面を拡大して示す溶着部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図5を用いて、第1実施形態に係る溶着部の検査方法について説明する。本実施形態では、住宅のバルコニー10(
図2参照)に設けられた防水層12に、本発明に係る検査方法を適用した場合について説明する。なお、各図に適宜示される矢印UPは鉛直上向きを示す。また、以下の説明で特記なく上下の方向を用いる場合は、鉛直上下方向の上下を示すものとする。また、上層側とは、防水層12の上層側を示し、下層側とは、防水層12の下層側を示すものとする。
【0029】
図1には、住宅のバルコニー10に設けられた防水層12の概略斜視図が示されている。バルコニー10には、床材の上に断熱材、絶縁シートが順に敷設されている(いずれも図示しない)。防水層12は、バルコニー10においてこれらの上に設けられている。また、防水層12は平面視で略矩形状に形成されており、住宅の部屋とバルコニー10との出入り口側(以下、適宜「屋内側」と称す。)に一方の長辺を有し、屋内側とは反対側(以下、適宜「屋外側」と称す。)に他方の長辺を有する。
【0030】
<樹脂被膜鋼板>
防水層12は、樹脂被膜鋼板14、16、18、20、22、24、26、28を含んで構成されている。
【0031】
各樹脂被膜鋼板14、16、18、20、22、24、26、28は、めっき鋼板の表側の面に、塩化ビニル樹脂を被膜した所謂塩ビ鋼板とされる。一例として、
図3に示されるように、樹脂被膜鋼板20では、めっき鋼板21の表側の面に、塩化ビニル樹脂製の樹脂層23が形成されている。樹脂被膜鋼板20の詳細については後述する。
【0032】
図1に示されるように、樹脂被膜鋼板14、16、18、20は、防水層12の屋内側において、一端側から他端側へ順に敷設されている。一方で、樹脂被膜鋼板22、24、26、28は、防水層12の屋外側において、一端側から他端側へ順に敷設されている。以下、「一端側」とは、防水層12において、平面視で樹脂被膜鋼板14及び樹脂被膜鋼板22が設けられている側を示すものとし、「他端側」とは、防水層12において、平面視で樹脂被膜鋼板20及び樹脂被膜鋼板28が設けられている側を示すものとする。
【0033】
樹脂被膜鋼板14は、略水平に形成された平部14Aと、平部14Aの屋内側の端部から略上向きに延出された立ち上がり部14Bとを含んで構成されている。さらに樹脂被膜鋼板14には、防水層12の一端側の短辺に沿って、平部14Aから略上向きに延出された立ち上がり部14Cが形成されている。
【0034】
樹脂被膜鋼板16は、略水平に形成された平部16Aと、平部16Aの屋内側の端部から略上向きに延出された立ち上がり部16Bとを含んで構成されている。同様に、樹脂被膜鋼板18は、平部18Aと立ち上がり部18Bとを含んで構成されている。
【0035】
また同様に、樹脂被膜鋼板20は、平部20Aと立ち上がり部20Bとを含んで構成されている。さらに樹脂被膜鋼板20には、防水層12の他端側の短辺に沿って、平部20Aから略上向きに延出された立ち上がり部20Cが形成されている。樹脂被膜鋼板14の立ち上がり部14Cと樹脂被膜鋼板20の立ち上がり部20Cとは互いに対向している。
【0036】
なお、樹脂被膜鋼板14、16、18、20の各平部14A、16A、18A、20Aは、それぞれ平面視で防水層12の長手方向に長辺を有し、防水層12の短手方向に短辺を有する略矩形状の薄い板とされる。樹脂被膜鋼板14、16、18、20の平面視における長手方向の長さは、互いに略同一である。また、これらの平面視における短手方向の長さも、互いに略同一である。
【0037】
樹脂被膜鋼板22は、樹脂被膜鋼板14の屋外側の端部において、防水層12の一端部から樹脂被膜鋼板14の長手方向中央部にかけて、樹脂被膜鋼板14に隣接して配置されている。
【0038】
同様に、樹脂被膜鋼板24は、樹脂被膜鋼板14、16、18の屋外側の端部において、樹脂被膜鋼板14の長手方向中央部から樹脂被膜鋼板18の長手方向中央部にかけて、これらの樹脂被膜鋼板14、16、18に隣接して配置されている。
【0039】
また同様に、樹脂被膜鋼板26は、樹脂被膜鋼板18、20の屋外側の端部において、樹脂被膜鋼板18の長手方向中央部から樹脂被膜鋼板20の長手方向中央部にかけて隣接して配置されている。さらに同様に、樹脂被膜鋼板28は、樹脂被膜鋼板20の屋外側の端部において、樹脂被膜鋼板20の長手方向中央部から防水層12の他端部にかけて隣接して配置されている。
【0040】
樹脂被膜鋼板22は、略水平に形成された平部22Aと、平部22Aの屋外側の端部から略上向きに延出された立ち上がり部22Bとを含んで構成されている。さらに、樹脂被膜鋼板22には、防水層12の平面視における一端側の短辺に沿って、平部22Aから略上向きに延出された立ち上がり部22Cが形成されている。樹脂被膜鋼板22の立ち上がり部22Cと樹脂被膜鋼板14の立ち上がり部14Cとは、略同一平面をなしている。
【0041】
また、樹脂被膜鋼板24は、略水平に形成された平部24Aと、平部24Aの屋外側の端部から略上向きに延出された立ち上がり部24Bとを含んで構成されている。同様に、樹脂被膜鋼板26は、平部26Aと立ち上がり部26Bとを含んで構成されており、樹脂被膜鋼板28は、平部28Aと立ち上がり部28Bとを含んで構成されている。樹脂被膜鋼板28にはさらに、防水層12の平面視における他端側の短辺に沿って、平部28Aから略上向きに延出された立ち上がり部28Cが形成されている。
【0042】
樹脂被膜鋼板22の立ち上がり部22Cと樹脂被膜鋼板28の立ち上がり部28Cとは、互いに対向している。また、樹脂被膜鋼板28の立ち上がり部28Cと樹脂被膜鋼板20の立ち上がり部20Cとは、略同一平面をなしている。
【0043】
なお、樹脂被膜鋼板22、24、26、28の各平部22A、24A、26A、28Aは、それぞれ平面視で防水層12の長手方向に長辺を有し、短手方向に短辺を有する略矩形状の薄い板とされる。樹脂被膜鋼板22、24、26、28の短手方向の長さは略同一とされ、これらの長さは、前述した樹脂被膜鋼板14、16、18、20の短手方向の長さよりも短い。また、樹脂被膜鋼板14、16、18、20、22、24、26、28の立ち上がり部14B、14C、16B、18B、20B、20C、22B、22C、24B、26B、28B、28Cは、略同一の高さで形成されている。
【0044】
<防水シート>
樹脂被膜鋼板14と樹脂被膜鋼板16とが隣接する部分(以下、樹脂被膜鋼板14、16、18、20、22、24、26、28同士が隣接する部分を適宜「つなぎ目」と称す。)には、上層側に帯状の防水シート30が設けられている。
【0045】
樹脂被膜鋼板14の平部14Aと樹脂被膜鋼板16の平部16Aとは、防水シート30の平部30Aによって連結されている。また、樹脂被膜鋼板14の立ち上がり部14Bと樹脂被膜鋼板16の立ち上がり部16Bとは、防水シート30の立ち上がり部30Bによって連結されている。
【0046】
同様に、樹脂被膜鋼板16と樹脂被膜鋼板18とのつなぎ目及び樹脂被膜鋼板18と樹脂被膜鋼板20とのつなぎ目には、それぞれ上層側に防水シート30が設けられている。これらのつなぎ目は、上記樹脂被膜鋼板14と樹脂被膜鋼板16とのつなぎ目における連結態様と同様に、防水シート30の平部30A及び立ち上がり部30Bによって連結されている。各防水シート30は、防水層12の短手方向に沿って延在されている。
【0047】
これに対して、樹脂被膜鋼板14と樹脂被膜鋼板22とのつなぎ目及び樹脂被膜鋼板14と樹脂被膜鋼板24とのつなぎ目には、長手方向に沿って延在された1枚の帯状の防水シート32が上層側に設けられている。
【0048】
樹脂被膜鋼板14の平部14A、樹脂被膜鋼板22の平部22A及び樹脂被膜鋼板24の平部24Aは、防水シート32の平部32Aによって連結されている。また、樹脂被膜鋼板14の立ち上がり部14Cと樹脂被膜鋼板22の立ち上がり部22Cとは、防水シート32の立ち上がり部32Bによって連結されている。
【0049】
防水シート32と同様に、樹脂被膜鋼板16と樹脂被膜鋼板24とのつなぎ目には、防水シート34が設けられており、樹脂被膜鋼板16の平部16Aと樹脂被膜鋼板24の平部24Aとは、防水シート34によって連結されている。
【0050】
また同様に、樹脂被膜鋼板18と樹脂被膜鋼板24とのつなぎ目及び樹脂被膜鋼板18と樹脂被膜鋼板26とのつなぎ目には、防水シート36が設けられている。樹脂被膜鋼板18の平部18A、樹脂被膜鋼板24の平部24A及び樹脂被膜鋼板26の平部26Aは、防水シート36によって連結されている。
【0051】
さらに同様に、樹脂被膜鋼板20と樹脂被膜鋼板26とのつなぎ目及び樹脂被膜鋼板20と樹脂被膜鋼板28とのつなぎ目には、防水シート38が設けられている。樹脂被膜鋼板20の平部20A、樹脂被膜鋼板26の平部26A、及び樹脂被膜鋼板28の平部28Aは、防水シート38の平部38Aによって連結されている。また、樹脂被膜鋼板20の立ち上がり部20Cと樹脂被膜鋼板28の立ち上がり部28Cとは、防水シート38の立ち上がり部38Bによって連結されている。
【0052】
樹脂被膜鋼板22と樹脂被膜鋼板24とのつなぎ目には、上層側に帯状の防水シート40が設けられている。樹脂被膜鋼板22の平部22Aと樹脂被膜鋼板24の平部24Aとは、防水シート40の平部40Aによって連結されている。また、樹脂被膜鋼板22の立ち上がり部22Bと樹脂被膜鋼板24の立ち上がり部24Bとは、防水シート40の立ち上がり部40Bによって連結されている。
【0053】
同様に、樹脂被膜鋼板24と樹脂被膜鋼板26とのつなぎ目及び樹脂被膜鋼板26と樹脂被膜鋼板28とのつなぎ目にも、それぞれ防水シート40が設けられている。これらのつなぎ目は、上記樹脂被膜鋼板22と樹脂被膜鋼板24とのつなぎ目における連結態様と同様に、防水シート40の平部40A及び立ち上がり部40Bによって連結されている。
【0054】
本実施形態では、防水シート30、32、34、36、38、40は、いずれも塩化ビニル樹脂製のシート(所謂塩ビシート)とされる。
【0055】
<つなぎ目>
図2には、
図1で示された防水層の一部を拡大して示す拡大平面図が示されている。
【0056】
(樹脂被膜鋼板同士の重なり)
樹脂被膜鋼板18の平部18Aは、他端側かつ屋内側の角部及び他端側かつ屋外側の角部が切り欠かれている。これにより、樹脂被膜鋼板18の平部18Aには、樹脂被膜鋼板20の平部20Aと隣接する側(他端側)の端部に、略矩形状の重なり片Pが形成されている。樹脂被膜鋼板20の平部20Aにおける一端側の端部は、樹脂被膜鋼板18の重なり片Pの上に重ねられている。
【0057】
また、樹脂被膜鋼板18の平部18Aの屋外側の端部には、略矩形状の重なり片Qが形成されている。樹脂被膜鋼板24の平部24A及び樹脂被膜鋼板26の平部26Aにおける屋内側の各端部は、樹脂被膜鋼板18の重なり片Qの上に重ねられている。
【0058】
樹脂被膜鋼板18と同様に、樹脂被膜鋼板16の平部16Aには、他端側の端部に重なり片Pが形成されており、屋外側の端部に重なり片Qが形成されている。
【0059】
なお、図示されていないが、
図1に示される樹脂被膜鋼板14の平部14Aにも、他端側の端部に重なり片Pと同様の重なり片が形成されている。また、平部14Aの屋外側の端部にも、重なり片Qと同様の重なり片が形成されている。
【0060】
上記の通り樹脂被膜鋼板14及び樹脂被膜鋼板16については、樹脂被膜鋼板18と同様のため、樹脂被膜鋼板同士の重なり方についての説明を省略する。
【0061】
また、樹脂被膜鋼板28の平部28Aは屋内側かつ他端側の角部が切り欠かれている。これにより、樹脂被膜鋼板28の平部28Aには、屋内側の端部に略矩形状の重なり片Rが形成されている。当該重なり片Rは、樹脂被膜鋼板20の平部20Aにおける屋外側の端部の上に重ねられている。
【0062】
なお、図示されていないが、
図1に示される樹脂被膜鋼板22の平部22Aにも、屋内側の端部に重なり片Rと同様の図示しない重なり片が形成されている。樹脂被膜鋼板22については、樹脂被膜鋼板28と同様のため、樹脂被膜鋼板同士の重なり方についての説明を省略する。
【0063】
また、
図2に示されるように、樹脂被膜鋼板24の平部24Aにおける屋内側の端部は、樹脂被膜鋼板16及び樹脂被膜鋼板18における屋外側の各端部の上に重ねられている。同様に、樹脂被膜鋼板26の平部26Aにおける屋内側の端部は、樹脂被膜鋼板18及び樹脂被膜鋼板20における屋外側の各端部の上に重ねられている。なお、図示されていないが、樹脂被膜鋼板24の平部24Aにおける屋内側の端部は、
図1に示される樹脂被膜鋼板14における屋外側の端部の上にも重ねられている。
【0064】
(樹脂被膜鋼板と防水シートとの重なり)
図2に示されるように、樹脂被膜鋼板18の重なり片Pと樹脂被膜鋼板20の平部20Aとが重ねられた部分は、上層側に設けられた防水シート30の平部30Aに覆われている。また、樹脂被膜鋼板18の平部18Aと樹脂被膜鋼板20の平部20Aとは、当該重ねられた部分以外では、互いに突き合わされている。このように突き合わされた部分も、上層側に設けられた防水シート30の平部30Aに覆われている。
【0065】
さらに、
図1に示される樹脂被膜鋼板18の立ち上がり部18Bと樹脂被膜鋼板20の立ち上がり部20Bとは、互いに突き合わされている。図示されていないが、当該突き合わされた部分も、上層側に設けられた防水シート30の立ち上がり部30Bに覆われている。
【0066】
このように、樹脂被膜鋼板18と樹脂被膜鋼板20とのつなぎ目は、樹脂被膜鋼板18と樹脂被膜鋼板20とが互いに重ねられた部分と互いに突き合わされた部分とを含んで、上層側に設けられた防水シート30に覆われている。
図1に示された防水層12における他のつなぎ目については、上記のつなぎ目と同様の構造であるため、個々のつなぎ目についての説明は省略する。
【0067】
(防水シート同士の重なり)
図2に示されるように、樹脂被膜鋼板18の平部18Aと樹脂被膜鋼板20の平部20Aとを連結する防水シート30の平部30Aは、その屋外側の端部において、防水シート36及び防水シート38と重ねられている。詳細には、平部30Aの屋外側かつ一端側の端部の上には、防水シート36が重ねて設けられている。一方、平部30Aの屋外側かつ他端側の端部は、防水シート38の上に重ねて設けられている。
【0068】
<溶着部>
(樹脂被膜鋼板と防水シートとの溶着部)
図3(A)には、
図2の3A-3A線に沿って切断した樹脂被膜鋼板20と防水シート30との溶着部48における拡大断面図が示されている。
【0069】
下層側の樹脂被膜鋼板20には、前述した平部20Aと立ち上がり部20Bとの間に、湾曲されたコーナー部20Dが形成されている。
【0070】
防水シート30の平部30Aは、樹脂被膜鋼板20の平部20Aに溶着されており、防水シート30の立ち上がり部30Bは、樹脂被膜鋼板20の立ち上がり部20Bに溶着されている。防水シート30において、平部30Aと立ち上がり部30Bとの間をコーナー部30Cとすると、防水シート30のコーナー部30Cは、樹脂被膜鋼板20のコーナー部20Dに沿って溶着されている(図示しない)。換言すると、上層側に設けられた防水シート30は、コーナー部20Dを含む範囲で下層側に設けられた樹脂被膜鋼板20に溶着されている。
【0071】
ここで、下層側の樹脂被膜鋼板20は、めっき鋼板21と、該めっき鋼板21の表側の面に設けられた塩化ビニル樹脂製の樹脂層23とを含んで構成されている。防水シート30は、樹脂被膜鋼板20の樹脂層23に溶着されている。
【0072】
図3(A)に示されるように、樹脂被膜鋼板20の平部20Aと防水シート30の平部30Aとの溶着部48Aには、該平部20Aと該平部30Aとの間に、空気だまり50が形成されている。
【0073】
同様に、樹脂被膜鋼板20の立ち上がり部20Bと防水シート30の立ち上がり部30Bとの溶着部48Bには、空気だまり52が形成されている。さらに、樹脂被膜鋼板20のコーナー部20Dと防水シート30のコーナー部30Cとの溶着部48Cには、空気だまり54が形成されている。
【0074】
なお、本実施形態では説明の便宜上、溶着部48に3つの空気だまり50、52、54が形成されているものとして説明したが、空気だまりの数はこれに限らず、例えば溶着部に1つも空気だまりが形成されていなくてもよい。
【0075】
(防水シート同士の溶着部)
図3(B)には、
図2の3B-3B線に沿って切断した防水シート30の平部30Aと防水シート36との溶着部49における拡大断面図が示されている。
【0076】
下層側の樹脂被膜鋼板26は、めっき鋼板27と、該めっき鋼板27の表側の面に設けられた塩化ビニル樹脂製の樹脂層29とを含んで構成されている。
【0077】
防水シート30の平部30Aは、下層側に設けられた樹脂被膜鋼板26の樹脂層29に溶着されている。なお、溶着部48、49に限らず、
図1に示される防水層12の他の溶着部において、上層側に設けられた防水シート30、32、34、36、38、40は、それぞれ下層側に設けられた樹脂被膜鋼板14、16、18、20、22、24、26、28のいずれかの樹脂層に溶着されている(図示しない)。
【0078】
図3(B)に示されるように、樹脂被膜鋼板26に溶着された防水シート30のさらに上層側には、防水シート36が溶着されている。ここで、
図3(B)に示されるように、溶着部49において、防水シート30の平部30Aと防水シート36との間には、空気だまり54が形成されている。なお、溶着部49に限らず、
図1に示される防水層12において、防水シート同士が重なる部分では、上層側に設けられた防水シートは、それぞれ下層側に設けられた防水シートに溶着されている。
【0079】
(本実施形態の作用・効果)
次に、溶着部の検査方法について説明し、その説明を通して本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0080】
<溶着部の検査方法>
本実施形態では、一例として、
図3(A)に示された溶着部48A及び溶着部48Cの検査方法について説明する。上層側の防水シート30は、設定温度を調節可能な熱風ガン100(
図4参照)を用いた熱風溶着によって、下層側の樹脂被膜鋼板20に溶着されたものとする。なお、以下の説明において、熱風ガン100の設定温度等の条件は一例であり、これらの条件に限定されず、加熱対象の材質や厚さ等に応じて適宜変更される。
【0081】
ここでは、作業員が熱風ガン100の設定温度を420℃に設定して、熱風ガン100の先端を、溶着面から5mm~1cm程度離して、これを秒速2cm~3cm程度の速度で水平移動しながら、溶着部48A、48Cを溶着したものとする。
【0082】
(加熱工程)
図4及び
図5に示されるように、まず、熱風ガン100を用いて上層側から溶着部48A、48Cを加熱する。検査員は、溶着時に使用した熱風ガン100の設定温度を400℃に下げて、この先端を防水シート30の表側の面から3cm程度離して、これを秒速2cm~3cm程度の速度で水平移動させながら、溶着部48A、48Cを加熱するものとする。当該条件は、下層側の樹脂被膜鋼板20の樹脂層23及び上層側の防水シート30が溶融しない範囲とされる。なお、検査員は作業員と同一人物であってもよい。
【0083】
図4(A)には、加熱前における防水シート30の平部30Aの状態が実線で表されており、加熱後における該平部30Aの状態が二点鎖線で表されている。熱風ガン100からの熱風によって、溶着部48Aに形成された空気だまり50の空気が加熱される。このとき、空気だまり50の空気が膨張し、未溶着部の内圧が高まる。これにより、上層側に設けられた防水シート30の平部30Aのうち、未溶着部の上層側を構成する部分が押し上げられて隆起部60が形成される。
【0084】
(判定工程)
このように、上記加熱工程で溶着部48Aを加熱することによって、上層側に設けられた防水シート30における平部30Aの一部が加熱前の状態よりも隆起された場合に、当該隆起された部分(隆起部60)を未溶着部として判定する。
【0085】
これに対して、
図4(B)に示されるように、防水シート30の平部30Aのうち、正規溶着部の上層側を構成する部分は、加熱しても隆起されない。よって、加熱しても隆起されなかった部分については、空気だまりのない正規溶着部であるとみなす。
【0086】
同様に、
図5(A)には、加熱前における防水シート30のコーナー部30Cの状態が実線で表されており、加熱後における該コーナー部30Cの状態が二点鎖線で表されている。加熱によって溶着部48Cに形成された空気だまり54の空気が膨張し、隆起部64が形成される。このように、加熱によってコーナー部30Cに形成された隆起部64を未溶着部として判定する。
【0087】
一方で、
図5(B)に示されるように、コーナー部30Cにおいても平部30A(
図4B参照)と同様に、正規溶着部の上層側を構成する部分は隆起されないため、当該部分については正規溶着部であるとみなす。
【0088】
図4に示される溶着部48A及び
図5に示される溶着部48Cにおいて、防水シート30の一部が隆起されたか否かについては、上層側から防水シート30を目視して又はこれに触れて判定する。
【0089】
なお、本実施形態では溶着部48A及び溶着部48Cの検査方法について説明したが、これに限らず、他の溶着部にも本発明に係る検査方法を適用してもよい。例えば、
図3(A)に示された立ち上がり部20Bと立ち上がり部30Bとの溶着部48Bに本発明に係る検査方法を適用してもよく、
図3(B)に示された防水シート30と防水シート36との溶着部49にこれを適用してもよい。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る検査方法によれば、平部20Aと平部30Aとの溶着部48A及びコーナー部20Dとコーナー部30Cとの溶着部48Cにおいて、未溶着部を特定できる。
【0091】
また、未溶着部を特定することで、当該部分の補修が可能となるため、補修によって必要な溶着幅を確保することができる。一方、溶着部48A、48Cを加熱しても隆起部60、64が形成されない場合には、溶着部48A、48Cの全範囲が溶着されていることを確認できる。この結果、防水層において高い防水性及び耐久性を確保できる。
【0092】
さらにまた、本実施形態に係る検査方法によれば、熱風溶着時に使用した熱風ガン100を用いて、熱風溶着後の溶着部48A及び溶着部48Cが加熱される。したがって、溶着時に使用した機材を用いて、効率よく簡便に溶着部の溶着状態を検査できる。
【0093】
また、本実施形態に係る溶着部の検査方法によれば、住宅のバルコニー10に設けられた防水層12において、空気だまり50及び空気だまり54が形成された未溶着部を特定することができる。このため、雨水にさらされるバルコニー10において高い防水性及び耐久性を確保し、住宅を漏水から守ることができる。
【0094】
さらに、本実施形態に係る溶着部の検査方法によれば、上層側に設けられた防水シートが小さい場合やその全範囲にわたって溶着されている場合でも、溶着部の溶着状態を検査することができる。また、正規溶着部を引きはがす方向に力をかけることなく、溶着部の溶着状態を検査することができる。
【0095】
(第2実施形態)
以下、
図6を用いて、第2実施形態に係る溶着部の検査方法について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0096】
本実施形態では、
図6(A)に示されるように、溶着部48Aに複数の空気だまり50が形成されているものとして説明する。
図6(B)には、
図6(A)の6B-6B線に沿って切断した断面を拡大して示す溶着部48Aの拡大断面図が示されている。
【0097】
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、加熱工程の前工程として、溶着部48Aにおいて上層側に設けられた防水シート30の平部30Aの上に、アルミニウム合金製の薄板70(以下、適宜「アルミ板70」と称す。)を置く。
【0098】
アルミ板70は、溶着部48Aにおいて上記の複数の空気だまり50を含む範囲で防水シート30の平部30Aの上に置かれる。なお、本実施形態では、説明の便宜上、溶着部48Aに複数の空気だまり50が形成されているものとして説明するが、これに限らず、溶着部に1つだけ空気だまりが形成されていてもよく、溶着部に空気だまりが形成されていなくてもよい。
【0099】
加熱工程では、防水シート30の上に置いたアルミ板70へ熱風ガン100の熱風を当てて、下層側の樹脂被膜鋼板20及び上層側の防水シート30が溶融しない範囲で、アルミ板70を介して溶着部48Aを加熱する。
【0100】
続いて判定工程では、図示されていないが、アルミ板70を撤去した後に、防水シート30の平部30Aのうち、アルミ板70が置かれていた部分において、加熱前の状態よりも隆起された部分を未溶着部として判定する。
【0101】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0102】
本実施形態に係る溶着部の検査方法によれば、熱伝導率の高いアルミ板70において熱が拡散され、アルミ板70全体が略均等に加熱される。
【0103】
また、アルミ板70からの伝熱によって、アルミ板70と接する上層側の防水シート30の平部30Aが加熱される。このとき、溶着部48Aにおけるアルミ板70と接する範囲が一度に加熱される。
【0104】
本実施形態で説明したように溶着部48Aに複数の空気だまり50が形成されている場合には、上層側の防水シート30の平部30Aのうち、未溶着部の上層側を構成する複数の部分が一度に隆起される。
【0105】
したがって、本実施形態に係る溶着部の検査方法によれば、溶着部48Aの広い範囲を効率よく検査できる。なお、溶着部に1つだけ空気だまりが形成されている場合や溶着部に空気だまりが形成されていない場合であっても、溶着部の広い範囲を効率よく検査できる。
【0106】
さらに、本実施形態に係る溶着部の検査方法によれば、アルミ板70の全体が略均等に加熱されるため、防水シート30において一部に熱が集中するのを抑制することができる。よって、防水シート30の一部に熱が集中した場合に当該部分に不要な光沢や焦げが生じるのを抑制することができる。また、アルミ板70の全体が略均等に加熱されるため、加熱ムラが生じにくく、検査の質が検査員の習熟度に左右されにくい。
【0107】
ここで、
図6(B)に示されるように、溶着部48Aに空気だまり50が存在する場合、防水シート30の平部30Aのうち空気だまり50が形成されている部分(未溶着部)は、加熱前の状態でも、正規溶着部よりもわずかに隆起している。このため、未溶着部は、正規溶着部よりもアルミ板70に密着している。これにより、アルミ板70から未溶着部に熱が伝わりやすく、未溶着部の上層側を構成する部分が効率よく隆起される。このことから、正規溶着部が必要以上に加熱されるのを抑制できる。
【0108】
〔上記各実施形態の補足説明〕
なお、上記各実施形態に係る検査方法は、住宅のバルコニー10における防水層12に適用されるとしたが、これに限らず、本発明に係る検査方法は、建物に設けられた他の防水層に適用されてもよい。例えば、本発明に係る検査方法は、ビルに設けられた防水層に適用されてもよいし、ベランダ、屋上、テラス、屋根、プール等に設けられた防水層に適用されてもよい。
【0109】
また、上記各実施形態では、8つの樹脂被膜鋼板を含んで構成された防水層12について説明したが、これに限らない。例えば、樹脂被膜鋼板を用いずに防水層12が形成されていてもよい。すなわち、複数の防水シートがバルコニーに敷設され、これらの端部同士が重ね合わさることで防水層12が形成されていてもよい。
【0110】
また、上記各実施形態では、熱風ガン100を用いて熱風溶着された溶着部を検査する方法について説明したが、これに限らない。例えば、溶着剤を用いて溶着された溶着部に対して、本発明に係る検査方法を適用してもよい。さらに、上記各実施形態では、熱風ガン100を用いて検査する方法について説明したが、これに限らず、樹脂被膜鋼板及び防水シートが溶融しない範囲で溶着部を加熱する方法であれば、他の方法を用いて検査してもよい。例えば、熱風ガン100以外の機材を用いて溶着部を加熱してもよい。
【0111】
さらに、上記各実施形態では、熱風ガン100の設定温度を、溶着時よりも下げて検査を行う検査方法について説明したが、これに限らない。例えば、風量を調節可能な熱風ガンを用いて、溶着時よりも当該熱風ガンの風量を下げて検査を行ってもよい。また、設定温度及び風量の両方を調節可能な熱風ガンを用いて、溶着時よりも当該熱風ガンの設定温度及び風量を下げて検査を行ってもよい。さらに、検査時における熱風ガンの設定温度及び風量を、溶着時における熱風ガンの設定温度及び風量と同一にしたまま検査を行ってもよい。この場合、熱風ガンの吹き出し口と上層側の防水シートとの距離を溶着時より離すか、又は熱風ガンを水平移動させる速度を溶着時よりも速くすればよい。
【0112】
また、上記各実施形態では、溶着部48A及び溶着部48Cを加熱し、当該部分について判定を行う検査方法について説明したが、これに限らず、本発明に係る検査方法は、防水層において溶着作業が行われた部分(溶着部)に広く適用できる。例えば、溶着部48B、49を含む防水層12における他の溶着部に対して、本発明に係る検査方法を適用してもよい。また、本実施形態では、樹脂被膜鋼板が重ねられていない部分の上に防水シートが設けられた溶着部48A、48C、49について説明したが、これに限らず、樹脂被膜鋼板同士が重ねられた部分の上に防水シートが溶着された溶着部に、本発明に係る検査方法を適用してもよい。
【0113】
上記第2実施形態では、アルミ板70を用いる方法について説明したが、これに限らず、他の金属製の薄板を用いてもよい。
【0114】
また、上記第2実施形態では、熱風ガン100を用いてアルミ板70を加熱する方法について説明したが、これに限らず、他の方法で金属製の薄板を加熱してもよい。例えば、誘導加熱によって薄板を加熱してもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 バルコニー
12 防水層
14、16、18、20、22、24、26、28 樹脂被膜鋼板
14A、16A、18A、20A、22A、24A、26A、28A 平部
14B、16B、18B、20B、22B、24B、26B、28B 立ち上がり部
14C、20C、22C、28C 立ち上がり部
20D コーナー部
30、32、34、36、38、40 防水シート
48、49 溶着部
60、64 隆起部(隆起された部分)
70 アルミ板(金属製の薄板)
100 熱風ガン