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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】空間構造物の支承装置及び支承方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/00 20060101AFI20220802BHJP
   E04H 3/14 20060101ALI20220802BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
E04B7/00 Z
E04H3/14 A
E04B1/24 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021204157
(22)【出願日】2021-12-16
【審査請求日】2022-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518235952
【氏名又は名称】森田 明
(73)【特許権者】
【識別番号】509199007
【氏名又は名称】株式会社川金コアテック
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】森田 明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 康弘
(72)【発明者】
【氏名】廣川 敦史
(72)【発明者】
【氏名】中村 美咲
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3091236(JP,U)
【文献】特開2002-021185(JP,A)
【文献】特開2001-288815(JP,A)
【文献】特開2011-226118(JP,A)
【文献】特開平10-231643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
E04B 7/00
E04H 3/14
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨置屋根の柱脚部をRC構造体に載せ、前記RC構造体に埋め込み固定した締結棒材と固定具で前記柱脚部のベースプレートを架設するようにした空間構造物の支承装置において、
前記固定具と前記RC構造体との間にプレストレス付与部材と弾性体を介在して挟着し、
前記弾性体は、前記プレストレス付与部材により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体と、前記プレストレス付与部材により与えられたエネルギーを散逸する粘性体とを組み合わせた粘弾性体からなることを特徴とする空間構造物の支承装置。
【請求項2】
前記プレストレス付与部材は、皿ばねからなることを特徴とする請求項1記載の空間構造物の支承装置。
【請求項3】
鉄骨置屋根の柱脚部をRC構造体に載せ、前記RC構造体に埋め込み固定したアンカーボルトからなる締結棒材とナットからなる固定具で前記柱脚部のベースプレートを架設するようにした空間構造物の支承装置において、
前記RC構造体と前記ベースプレートとの間に、板状のゴム層を両面から硬質の板材で挟んで形成した前記ベースプレートと略同一面積の弾性体を介在し、前記ベースプレートの上に複数個の皿ばねからなるプレストレス付与部材を載せ、前記ナットからなる固定具で前記皿ばねからなるプレストレス付与部材にプレストレスを付与して挟着し、
前記弾性体の硬質の板材は金属板からなり、この金属板の下面に錆促進剤又は被覆ゴムを設け、この金属板の下面の錆促進剤又は被覆ゴムと前記RC構造体の上面との間にレベル調整用モルタル層を充填してなることを特徴とする空間構造物の支承装置。
【請求項4】
前記RC構造体の上に前記弾性体と前記皿ばねからなる前記プレストレス付与部材の組み合わせで構成した支承部を耐火被覆で被覆してなることを特徴とする請求項2又は3記載の空間構造物の支承装置。
【請求項5】
鉄骨置屋根の柱脚部をRC構造体に載せ、前記RC構造体に埋め込み固定したアンカーボルトからなる締結棒材とナットからなる固定具で前記柱脚部のベースプレートを架設するようにした空間構造物の支承方法において、
前記RC構造体の上に突出した前記アンカーボルトからなる締結棒材を、板状のゴム層を両面から硬質の板材で挟んで形成した前記ベースプレートと略同一面積の弾性体の貫通孔に貫通して載せ置く工程と、
前記弾性体は、プレストレス付与部材により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体と、前記プレストレス付与部材により与えられたエネルギーを散逸する粘性体とを組み合わせた粘弾性体からなるものが用いられ、前記弾性体の上に前記柱脚部の前記ベースプレートを、前記締結棒材を貫通して設置する工程と、
前記ベースプレートの上に前記締結棒材を貫通してプレストレス付与部材を設置し、前記固定具で前記プレストレス付与部材にプレストレスを導入する工程と
からなることを特徴とする空間構造物の支承方法。
【請求項6】
前記プレストレス付与部材にプレストレスを導入する工程の後に、
前記RC構造体の上に前記弾性体と皿ばねからなる前記プレストレス付与部材の組み合わせで構成した支承部を耐火被覆で被覆する工程と
を付加してなることを特徴とする請求項5記載の空間構造物の支承方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RC構造体の上に鉄骨屋根などの空間構造物が柱脚部を介して取り付けられた空間構造物の支承装置及び支承方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体育館などの大スパン架構では、図8図9に示すように、鉄骨置屋根の梁11をRC構造体10で支持することが多い。従来の置屋根柱脚部は、柱脚部12のベースプレート13を、敷きモルタル14を介在してRC構造体10に埋め込んだアンカーボルト15で接合する方法がよく用いられている(非特許文献1)。
この非特許文献1によれば、東北地方太平洋沖地震では、アンカーボルト15が引っ張られて水平方向にせん断力を受け、アンカーボルト15が破断したり、敷きモルタル14やRC構造体10のモルタルが破損したりする被害が見られた。
【0003】
鉄骨の置屋根構造は、屋根自体が軽いため、自重による鉛直反力が小さい。そのため、地震時に水平力が柱脚部に掛かると、アンカーボルト15にせん断応力、柱脚部の回転による引張力が同時に作用し、柱脚部12とベースプレート13の下部の敷きモルタル14やRC構造体10が破損しやすいという問題があった。
より詳しくは、図8(a)(b)に示すような梁11や柱脚部12の回転による敷きモルタル14の偏心圧縮作用による損傷例として、梁(鉄骨置屋根)11や柱脚部12の矢印方向の回転で敷きモルタル14が圧縮力により砕かれ、敷きモルタル14の小片が矢印方向に飛び散るという、RC構造体10のモルタルの破損が確認された。
図9(a)(b)に示すようなRC構造体10の柱頭の回転による敷きモルタル14の偏心圧縮作用による損傷の例として、敷きモルタル14を支えるRC構造体10の柱頭が矢印方向に回転することで敷きモルタル14に偏圧圧縮力が作用して圧壊して、敷きモルタル14の小片が矢印方向に飛び散ったことが確認された。
【0004】
また、アンカーボルト15には、図8(a)(b)における梁(鉄骨置屋根)11の矢印方向の回転又は図9(a)(b)におけるRC構造体10の柱頭の回転により曲げ応力が発生し、アンカーボルト15の浮き上がりや破断の恐れがあるなどの問題があった。
【0005】
柱脚部12のベースプレート13をRC構造体10にアンカーボルト15で固定する場合において、ベースプレート13とアンカーボルト15のナットの間に皿ばねを介在する方法(特許文献1)、ベースプレート13とアンカーボルト15のナットの間にコイルばねを介在する方法(特許文献2)が知られているが、これらの例では、地震力を吸収するのみで、図8(a)(b)に示す梁(鉄骨置屋根)11の矢印方向の回転又は図9(a)(b)に示すRC構造体10の柱頭の回転により曲げ応力が発生する点や引っ張り対策としては、何ら考慮されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】主催/公益社団法人日本コンクリート工業会 コンクリート工学年次大会2014(高松)2014年7月11日(金)13:30~15:30[2217]RC下部構造を有する鉄骨置屋根空間構造物の被害調査と被害発生機構の分析、Vol.36、No.2、2014。
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-21185号公報
【文献】特開2001-303587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、RC構造体の上に鉄骨屋根などの空間構造物が柱脚部を介して取り付けられものにおいて、梁(鉄骨置屋根)の回転又はRC構造体の柱頭の回転により曲げ応力が発生しても敷きモルタルが破断せず、しかも、アンカーボルトの浮き上がりや破断の恐れのないものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
鉄骨置屋根11の柱脚部12をRC構造体10に載せ、前記RC構造体10に埋め込み固定した締結棒材15と固定具16で前記柱脚部12のベースプレート13を架設するようにした空間構造物の支承装置において、
前記固定具16と前記RC構造体10との間にプレストレス付与部材18と弾性体19を介在して挟着するようにしたことを特徴とする。
【0010】
前記弾性体19は、前記プレストレス付与部材18により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体のみからなる場合と、前記プレストレス付与部材18により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体と、前記プレストレス付与部材18により与えられたエネルギーを散逸する粘性体とを組み合わせた粘弾性体からなる場合とを包含する。
【0011】
本発明は、より具体的には、
鉄骨置屋根11の支柱(柱脚部)12をRC構造体10に載せ、前記RC構造体10に埋め込み固定したアンカーボルトからなる締結棒材15とナットからなる固定具16で前記柱脚部12のベースプレート13を架設するようにした空間構造物の支承装置において、
前記RC構造体10と前記ベースプレート13との間に、板状のゴム層20を両面から硬質の板材21で挟んで形成した前記ベースプレート13と略同一面積の弾性体19を介在し、前記ベースプレート13の上に複数個の皿ばねからなるプレストレス付与部材18を載せ、前記ナットからなる固定具16で皿ばねからなるプレストレス付与部材18にてプレストレスを付与して挟着するようにしたことを特徴とする。
【0012】
前記弾性体19における硬質の板材21は金属板からなり、この金属板21の下面に鉄筋24又は前記RC構造体10に埋設したスタッドボルト26を溶接し、この金属板21の下面と前記RC構造体10の上面との間にレベル調整用モルタル層29を充填して前記弾性体19を含む支承部の横ずれを防止してなることを特徴とする。
【0013】
前記弾性体19における硬質の板材21は金属板からなり、この金属板21の下面に錆促進剤25又は被覆ゴム30を設け、この金属板21の下面の錆促進剤25又は被覆ゴム30と前記RC構造体10の上面との間にレベル調整用モルタル層29を充填して前記弾性体19を含む支承部の横ずれを防止してなることを特徴とする
【0014】
前記RC構造体10と前記ベースプレート13との間に、板状のゴム層20を両面から硬質の板材の金属板21で挟んで形成した前記ベースプレート13と略同一面積の弾性体19を介在し、前記ベースプレート13の上に複数個の皿ばねからなるプレストレス付与部材18を載せ、前記ナットからなる固定具16で皿ばねからなるプレストレス付与部材18にてプレストレスを付与して挟着形成した支承部は、耐火被覆23で被覆してなることを特徴とする。
【0015】
梁(鉄骨置屋根)11の支柱(柱脚部)12をRC構造体10に載せ、前記RC構造体10に埋め込み固定したアンカーボルトからなる締結棒材15とナットからなる固定具16で前記支柱(柱脚部)12のベースプレート13を架設するようにした空間構造物の支承方法において、
前記RC構造体10の上に突出した前記アンカーボルトからなる締結棒材15を、板状のゴム層20を両面から硬質の板材の金属板21で挟んで形成した前記ベースプレート13と略同一面積の弾性体19の貫通孔22に貫通して載せ置く工程と、
前記弾性体19の上に前記支柱(柱脚部)12の前記ベースプレート13を、前記アンカーボルトからなる締結棒材15を貫通して設置する工程と、
前記ベースプレート13の上に前記アンカーボルトからなる締結棒材15を貫通して皿ばねからなるプレストレス付与部材18を設置し、前記ナットからなる固定具16で前記皿ばねからなるプレストレス付与部材18にて前記弾性体19にプレストレスを導入する工程と
からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、
鉄骨置屋根の柱脚部をRC構造体に載せ、前記RC構造体に埋め込み固定した締結棒材と固定具で前記柱脚部のベースプレートを架設するようにした空間構造物の支承装置において、
前記固定具と前記RC構造体との間にプレストレス付与部材と弾性体を介在して挟着し、
前記弾性体は、前記プレストレス付与部材により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体と、前記プレストレス付与部材により与えられたエネルギーを散逸する粘性体とを組み合わせた粘弾性体からなるので、次の作用効果を有する。
プレストレス付与部材を介在して締結棒材の固定具で締め付けて予めプレストレスを導入することで、ベースプレートの浮き上がりを防止し、締結棒材のせん断力負担軽減を図ることができる。この結果、プレストレス付与部材により自重の小さい鉄骨置屋根の転倒力による浮き上がりが防止される。また、RC構造体とベースプレートとの間に弾性体を挟み、ベースプレートの曲げ及びせん断剛性を適切に評価するとともに、締結棒材への応力集中の低減を図ることができる。
また、弾性体は、粘性体を包含する粘弾性体を利用することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、
前記プレストレス付与部材は、皿ばねからなるので、皿ばねにより自重の小さい鉄骨置屋根の転倒力による浮き上がりが防止される。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、
鉄骨置屋根の柱脚部をRC構造体に載せ、前記RC構造体に埋め込み固定したアンカーボルトからなる締結棒材とナットからなる固定具で前記柱脚部のベースプレート架設するようにした空間構造物の支承装置において、
前記RC構造体と前記ベースプレートとの間に、板状のゴム層を両面から硬質の板材で挟んで形成した前記ベースプレートと略同一面積の弾性体を介在し、前記ベースプレートの上に複数個の皿ばねからなるプレストレス付与部材を載せ、前記ナットからなる固定具で皿ばねからなるプレストレス付与部材にプレストレスを付与して挟着し、
前記弾性体の硬質の板材は金属板からなり、この金属板の下面に錆促進剤又は被覆ゴムを設け、この金属板の下面の錆促進剤又は被覆ゴムと前記RC構造体の上面との間にレベル調整用モルタル層を充填してなるので、
プレストレス付与部材を介在してアンカーボルトのナットで締め付けて予めプレストレスを導入することで、ベースプレートの浮き上がりを防止し、アンカーボルトのせん断力負担軽減を図ることができる。この結果、皿ばねにより自重の小さい鉄骨置屋根の転倒力による浮き上がりが防止される。また、RC構造体とベースプレートとの間に板状のゴム層を両面から硬質の板材で挟んで形成した弾性体を挟み、ベースプレートの曲げ及びせん断剛性を適切に評価するとともに、アンカーボルトへの応力集中の低減を図ることができる。
また、RC構造体の回転に弾性体が追随し、破損をより低下できる。さらに、前記同様、ベースプレートの曲げ及びせん断剛性を適切に評価するとともに、アンカーボルト(締結棒材)への応力集中の低減を図ることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、
前記RC構造体の上に前記弾性体と前記皿ばねからなる前記プレストレス付与部材の組み合わせで構成した支承部を耐火被覆で被覆したので、地震動以外の火災に対して支承部の損傷を未然に防止できる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、
鉄骨置屋根の柱脚部をRC構造体に載せ、前記RC構造体に埋め込み固定したアンカーボルトからなる締結棒材とナットからなる固定具で前記柱脚部のベースプレートを架設するようにした空間構造物の支承方法において、
前記RC構造体の上に突出した前記アンカーボルトからなる締結棒材を、板状のゴム層を両面から硬質の板材で挟んで形成した前記ベースプレートと略同一面積の弾性体の貫通孔に貫通して載せ置く工程と、
前記弾性体は、プレストレス付与部材により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体と、前記プレストレス付与部材により与えられたエネルギーを散逸する粘性体とを組み合わせた粘弾性体からなるものが用いられ、前記弾性体の上に前記柱脚部の前記ベースプレートを、前記締結棒材を貫通して設置する工程と、
前記ベースプレートの上に前記締結棒材を貫通してプレストレス付与部材を設置し、前記固定具で前記プレストレス付与部材にプレストレスを導入する工程と
からなるので、請求項1と同様の作用効果を有する。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、
前記プレストレス付与部材にプレストレスを導入する工程の後に、
前記RC構造体の上に前記弾性体と皿ばねからなる前記プレストレス付与部材の組み合わせで構成した支承部を耐火被覆で被覆する工程と
を付加してなるので、請求項4と同様の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による空間構造物の支承装置及び支承方法の実施例1を示す斜視図である。
図2図1における要部の拡大断面図である。
図3】本発明に用いられる弾性体19の断面図である。
図4】(a)は、弾性体19の一例を示す平面図、(b)は、弾性体19の他の例を示す平面図である。
図5】本発明による空間構造物の支承装置を耐火被覆23で被覆した例を示す断面図である。
図6】(a)は、横ずれ防止のため弾性体19の金属板21の下面に鉄筋24を溶接し、その下にレベル調整用モルタル層29を充填した例を示す断面図、(b)は、弾性体19の金属板21の下面に錆促進剤25を塗布し、その下にレベル調整用モルタル層29を充填した例を示す断面図、(c)は、弾性体19の金属板21の下面をRC構造体10に埋設したスタッドボルト26に溶接し、その下にレベル調整用モルタル層29を充填した例を示す断面図、(d)は、アンカーボルト15に代えてアンカー金属棒27を用いた例を示す断面図、(e)は、弾性体19の金属板21の下面に被覆ゴム30設け、その下にレベル調整用モルタル層29を充填した例を示す断面図である。
図7】(a)は、皿ばね18を2枚ずつ表裏反転して積層した例を示す断面図、(b)は、皿ばね18を同一方向に4枚重ねた例を示す断面図である。
図8】従来の鉄骨置き屋根構造物において、(a)は、梁(鉄骨置屋根)11の左回転により敷きモルタル14に偏心圧縮が作用した例を示す説明図、(b)は、梁(鉄骨置屋根)11の右回転により敷きモルタル14に偏心圧縮が作用した例を示す説明図である。
図9】従来の鉄骨置き屋根構造物において、(a)は、RC構造体10の右回転により敷きモルタル14に偏心圧縮が作用した例を示す説明図、(b)は、RC構造体10の左回転により敷きモルタル14に偏心圧縮が作用した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、
鉄骨置屋根11の支柱(柱脚部)12をRC構造体10に載せ、前記RC構造体10に埋め込み固定したアンカーボルト(締結棒材)15とナット(固定具)16で前記支柱(柱脚部)12のベースプレート13を架設するようにした空間構造物の支承装置において、
前記ナット(固定具)16と前記RC構造体10との間に皿ばね(プレストレス付与部材)18と弾性体19を介在して挟着する。
【0026】
前記弾性体19は、前記プレストレス付与部材18により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体のみからなる場合と、前記プレストレス付与部材18により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体と、前記プレストレス付与部材18により与えられたエネルギーを散逸する粘性体とを組み合わせた粘弾性体からなる場合とを包含するものとする。
【0027】
前記梁(鉄骨置屋根)11の支柱(柱脚部)12をRC構造体10に載せ、前記RC構造体10に埋め込み固定したアンカーボルトからなる締結棒材15とナットからなる固定具16で前記柱脚部12のベースプレート13を架設するようにした空間構造物の支承装置において、
前記RC構造体10と前記ベースプレート13との間に、板状のゴム層20を両面から硬質の板材の金属板21で挟んで形成した前記ベースプレート13と略同一面積の弾性体19を介在し、前記ベースプレート13の上に複数個の皿ばねからなるプレストレス付与部材18を載せ、前記ナットからなる固定具16で皿ばねからなるプレストレス付与部材18にプレストレスを付与して挟着する。
【0028】
前記弾性体19の硬質の板材21は金属板からなり、この金属板21の下面をに鉄筋24又は前記RC構造体10に埋設したスタッドボルト26に溶接し、この金属板21の下面と前記RC構造体10の上面との間にレベル調整用モルタル層29を充填して前記弾性体19の横ずれを防止してなる。
【0029】
前記弾性体19の硬質の板材21は金属板からなり、この金属板21の下面に錆促進剤25又は被覆ゴム30を設け、この金属板21の下面の錆促進剤25又は被覆ゴム30と前記RC構造体10の上面との間にレベル調整用モルタル層29を充填してなる。
【0030】
前記RC構造体10と前記ベースプレート13との間に、板状のゴム層20を両面から硬質の板材の金属板21で挟んで形成した前記ベースプレート13と略同一面積の弾性体19を介在し、前記ベースプレート13の上に複数個の皿ばねからなるプレストレス付与部材18を載せ、前記ナットからなる固定具16で皿ばねからなるプレストレス付与部材18にプレストレスを付与して挟着形成した支承部は、耐火被覆23で被覆してなる。
【0031】
梁(鉄骨置屋根)11の支柱(柱脚部)12をRC構造体10に載せ、前記RC構造体10に埋め込み固定したアンカーボルトからなる締結棒材15とナットからなる固定具16で前記支柱(柱脚部)12のベースプレート13を架設するようにした空間構造物の支承方法において、
前記RC構造体10の上に突出した前記アンカーボルトからなる締結棒材15を、板状のゴム層20を両面から硬質の板材の金属板21で挟んで形成した前記ベースプレート13と略同一面積の弾性体19の貫通孔22に貫通して載せ置く工程と、
前記弾性体19の上に前記支柱(柱脚部)12の前記ベースプレート13を、前記アンカーボルト(締結棒材)15を貫通して設置する工程と、
前記ベースプレート13の上に前記アンカーボルト(締結棒材)15を貫通して皿ばね(プレストレス付与部材)18を設置し、前記ナット(固定具)16で前記皿ばね(プレストレス付与部材)18にて前記弾性体19にプレストレスを導入する工程と
からなる。
【実施例1】
【0032】
本発明による空間構造物の支承装置及び支承方法の実施例を図面に基づき説明する。
本発明の第1のポイントは、自重の小さい梁(鉄骨置屋根)11の転倒力による浮き上がり防止のために、皿ばね(プレストレス付与部材)18を介在して予めプレストレスを導入することである。
本発明の第2のポイントは、プレストレスを導入しても発生する回転挙動や水平変形に対してRC構造体10とベースプレート13との間に弾性体19を挟み、垂直、水平変位を吸収することである。
【0033】
前記本発明の第1及び第2のポイントを達成するための具体的構成を説明する。
図1において、下部構造体であるRC構造体10の上に、鉄骨置屋根などの梁(鉄骨置屋根)11の柱脚部12が固定的に取り付けられる。
前記RC構造体10には、複数本のアンカーボルト(締結棒材)15が埋め込まれ、これらのアンカーボルト(締結棒材)15のねじ部分が前記RC構造体10の上面に突出している。
前記柱脚部12の下端部には、ベースプレート13が一体に溶接され、このベースプレート13と前記RC構造体10の上面との間には、前記本発明の第2のポイントを達成する弾性体19を介在する。また前記ベースプレート13の上面まで前記アンカーボルト(締結棒材)15のねじ部を貫通突出し、前記本発明の第1のポイントを達成する皿ばね(プレストレス付与部材)18を嵌合し、さらにその上にワッシャ17を介在してナット(固定具)16が螺着されている。
【0034】
前記本発明の第1のポイントを達成する皿ばね(プレストレス付与部材)18は、一例として、図2に示すように、4枚の皿ばねが1枚毎に表裏を交互に反転して重ね合わせ、ナット(固定具)16の締め付け程度でプレストレスが導入される。この皿ばね(プレストレス付与部材)18は、前記梁(鉄骨置屋根)11の重量、大きさ、形状等に応じて1~複数枚使用される。また、この皿ばね(プレストレス付与部材)18は、図7(a)に示すように、4枚の皿ばねを2枚毎に表裏を交互に反転して重ね合わせたり、図7(b)に示すように、4枚の皿ばねをすべて同一方向に向けて重ね合わせたりするなど、設定するプレストレスの大きさに応じて枚数と、重ね合わせの向きなどを設定することができる。
【0035】
前記本発明の第2のポイントを達成する弾性体19は、一例として、図3に示すように、厚さ数mmのゴム層20と、このゴム層20の両面を厚さ数mmの薄い硬質の板材の金属板21で被覆してなるもので、前記ゴム層20の全周には、金属板21の全周囲を保護するため外周縁部20aとこの外周縁部20aから上下面に伸びた外周まくり部20bとからなる。弾性体19の大きさは、図4(a)のような正方形や、(b)に示すような長方形など、前記ベースプレート13の大きさや形状に合わせた構成とする。
【0036】
前記弾性体19は、前記プレストレス付与部材18により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体のみからなる場合と、前記プレストレス付与部材18により与えられたエネルギーを貯蔵可能な弾性体と、前記プレストレス付与部材18により与えられたエネルギーを散逸する粘性体とを化学的に混合するなどの方法で組み合わせた粘弾性体からなる場合とを包含するものとする。
【0037】
前記弾性体19が、加圧による横ずれ防止のため、図6(a)は、弾性体19における硬質の板材の金属板21の下面に鉄筋24に溶接し、その下にレベル調整用モルタル層29を充填した例を示す。
図6(b)は、弾性体19の金属板21の下面に錆促進剤25を塗布し、その下にレベル調整用モルタル層29を充填した例を示す。
図6(c)は、弾性体19の金属板21の下面をRC構造体10に埋設したスタッドボルト26に溶接し、その下にレベル調整用モルタル層29を充填した例を示す。
図6(e)は、弾性体19の金属板21の下面に被覆ゴム30設け、その下にレベル調整用モルタル層29を充填した例を示す。
【0038】
以上のように構成における作用を説明する。
(1)アンカーボルト(締結棒材)15のナットとベースプレート13との間に皿ばね(プレストレス付与部材)18を介在してアンカーボルト(締結棒材)15のナット(固定具)16を締め付けて予めプレストレスを導入する。プレストレスを導入することで、ベースプレート13の浮き上がりを防止し、アンカーボルト(締結棒材)15のせん断力負担軽減を図ることができる。この結果、皿ばね(プレストレス付与部材)18により自重の小さい屋根の転倒力による浮き上がりが防止される。
なお、皿ばね(プレストレス付与部材)18は、通常、先に挙げた従来例のように、減衰効果のために使用しているが、本発明のようにプレストレスの導入のために使用する例は見られない。
(2)RC構造体10とベースプレート13の間に、弾性体19を介在することにより、アンカーボルト(締結棒材)15への応力集中が低減される。大スパン架構の支承部は、水平力による変動軸力が大きく、支承軸力に引抜力が生じ、アンカーボルト(締結棒材)15が降伏するとともに、回転剛性や復元力特性に影響する履歴特性の評価が複雑に変化し、地震時挙動を把握することが難しい。そこで、RC構造体10とベースプレート13との間に弾性体19を挟み、ベースプレート13の曲げ及びせん断剛性を適切に評価するとともに、アンカーボルト(締結棒材)15への応力集中の低減を図ることができる。
【0039】
前記実施例では、本発明は、第1のポイントを達成する皿ばね(プレストレス付与部材)18と、第2のポイントを達成する弾性体19を具備することが必須要件としたが、さらに、次の構成を付加することが望ましい。
図5において、RC構造体10の上に弾性体19と皿ばね(プレストレス付与部材)18の組み合わせで構成した支承部を、ケイ酸カルシウム板のような不燃物で被覆する。このような構成とすることで、地震動だけでなく、火災による損傷を軽減できる。
図6(d)において、アンカーボルト15に代えてアンカー金属棒27をRC構造体10内に埋設し、このアンカー金属棒27の先端部を弾性体19とベースプレート13を貫通してカプラー28で固定する。このカプラー28にジャッキを連結してプレストレスを導入する。これにより、アンカーボルト15とナット16に代わる構成とすることができる。
【0040】
前記実施例では、図7(b)に示すように、RC構造体10の上にモルタル層29を充填してレベルを調整するようにしたが、レベルの調整が不要のときは、RC構造体10の上面に弾性体19を直接載せてベースプレート13とともに固定するようにしてもよい。
前記実施例では、RC構造体10とベースプレート13の間に弾性体19を挟み、ベースプレート13の上に、皿ばね(プレストレス付与部材)18を設置してナット(固定具)16でプレストレスを導入するようにしたが、これに限られるものではなく、前記弾性体19とベースプレート13の間に皿ばね(プレストレス付与部材)18を設置してベースプレート13の上からナット(固定具)16で締め付けて皿ばね(プレストレス付与部材)18にプレストレスを導入するようにしてもよい。
また、複数枚の皿ばね(プレストレス付与部材)18は、RC構造体10と弾性体19の間、弾性体19とベースプレート13の間、ベースプレート13とナット(固定具)16の間に選択的にそれぞれ設置するようにしてもよい。
【0041】
前記実施例では、1枚のゴム層20を上下両面から硬質の板材の金属板21で挟んだ例を示したが、これに限られるものではなく、複数枚のゴム層20を両面から順次硬質の板材の金属板21で積層してなるものであってもよい。
前記実施例では、RC構造体10の上に水平に支柱(柱脚部)12のベースプレート13を取り付けるようにしたが、水平に限らず、傾斜している場合も含む。
【符号の説明】
【0042】
10…RC構造体、11…梁(鉄骨置屋根)、12…支柱(柱脚部)、13…ベースプレート、14…敷きモルタル、15…アンカーボルト(締結棒材)、16…ナット(固定具)、17…ワッシャ、18…皿ばね(プレストレス付与部材)、19…弾性体、20…ゴム層、21…硬質の板材(金属板)、22…貫通孔、23…耐火被覆、24…鉄筋、25…錆促進剤、26…スタッドボルト、27…アンカー金属棒、28…カプラー、29…レベル調整用モルタル層、30…被覆ゴム。
【要約】
【課題】鉄骨置屋根の回転又はRC構造体の柱頭の回転により曲げ応力が発生してもモルタルが破断せず、しかも、アンカーボルトの抜け上がりや破断の恐れのないものを提供することを目的とする。
【解決手段】鉄骨置屋根11の柱脚部12をRC構造体10に載せ、前記RC構造体10に埋め込み固定したアンカーボルト15とナット16で前記柱脚部12のベースプレート13を架設するようにした空間構造物の支承装置において、前記RC構造体10と前記ベースプレート13との間に、板状のゴム層20を両面から金属板21で挟んで形成した前記ベースプレート13と略同一面積の弾性体19を介在し、前記ベースプレート13の上に複数個の皿ばねからなるプレストレス付与部材18を載せ、前記ナット16でプレストレス付与部材18にて前記弾性体19にプレストレスを付与して挟着するようにする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9