(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】アクチュエータユニット及びシート支持装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/52 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
B60N2/52
(21)【出願番号】P 2018180672
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】古閑 智貴
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001573(JP,A)
【文献】実公平07-008307(JP,Y2)
【文献】特開2013-216199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し込まれた状態で制御対象を動作させるスイッチと、
通電状態で前記スイッチを押し込み、非通電状態で前記スイッチを押し込んだ状態を維持するカム機構と、
を備え
、
前記カム機構は、一方向へ回転して前記スイッチを押し込み、他方向へ回転して押し込み状態を解除するカムと、前記カムを回転させるモータと、を備え、
前記スイッチが押し込まれた状態において、
前記カムが前記スイッチから受ける摩擦力及び反力によって前記カムに作用する回転モーメントが、前記一方向に向って正の値とされている、
アクチュエータユニット。
【請求項2】
前記回転モーメントによる前記カムの回転を止める回転抑制機構を備えている、
請求項1に記載のアクチュエータユニット。
【請求項3】
前記カムにおける一部の外周面が前記カムの回転中心を中心とする円周に沿って形成され、
前記一部の外周面が前記スイッチを押し込む際に、前記スイッチが最も押し込まれた状態とされる、
請求項2に記載のアクチュエータユニット。
【請求項4】
前記カム機構は、一方向へ回転して前記スイッチを押し込み、他方向へ回転して押し込み状態を解除するカムと、前記カムを回転させるモータと、を備え、
前記カムにおける一部の外周面が前記カムの回転中心を中心とする円周に沿って形成され、
前記一部の外周面が前記スイッチを押し込む際に、前記スイッチが最も押し込まれた状態とされる、請求項1に記載のアクチュエータユニット。
【請求項5】
請求項1~
請求項4の何れか1項に記載のアクチュエータユニットと、
前記スイッチによって開閉される前記制御対象としてのバルブと、
前記バルブの開閉に応じて空気が給排気されるエアスプリングと、
シート本体を支持すると共に前記エアスプリングの圧力によって上下方向に伸縮するリンク機構と、
を備えたシート支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータユニット及びシート支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、カム部材の回転移動により弁棒を押し込んで、エアスプリングへ空気を給排気する車両用エアサスペンション式シート支持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、シート高さに連動するメカ機構によりカム部材へトルクを付与している。カム部材へのトルク付与をモータなどの電動アクチュエータで行うと、電気的制御による操作の簡易化や高さメモリー機能などによる利便性向上が期待できる。しかし、エアスプリングへ空気を給排気している間は弁棒を押し込み続けるため、カム部材へトルクを付与するために電力をかけ続ける必要がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、消費電力を低減できるアクチュエータユニット及びシート支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るアクチュエータユニットは、押し込まれた状態で制御対象を動作させるスイッチと、通電状態で前記スイッチを押し込み、非通電状態で前記スイッチを押し込んだ状態を維持するカム機構と、を備え、前記カム機構は、一方向へ回転して前記スイッチを押し込み、他方向へ回転して押し込み状態を解除するカムと、前記カムを回転させるモータと、を備え、前記スイッチが押し込まれた状態において、前記カムが前記スイッチから受ける摩擦力及び反力によって前記カムに作用する回転モーメントが、前記一方向に向って正の値とされている。
【0007】
請求項1に記載のアクチュエータユニットでは、非通電状態でスイッチを押し込んだ状態が維持される。すなわち、スイッチを押し込み続けるために電力を必要としない。このため、スイッチを押し込み続けるために電力が必要なアクチュエータユニットと比較して消費電力を低減できる。
【0008】
一態様のアクチュエータユニットは、前記カム機構は、一方向へ回転して前記スイッチを押し込み、他方向へ回転して押し込み状態を解除するカムと、前記カムを回転させるモータと、を備え、前記スイッチが押し込まれた状態において、前記カムが前記スイッチから受ける摩擦力及び反力によって前記カムに作用する回転モーメントが、前記一方向に向って正の値とされている。
【0009】
一態様のアクチュエータユニットでは、モータによってカムが回転する。カムは、一方向へ回転することでスイッチを押し込む。また、他方向へ回転することでスイッチの押し込み状態を解除する。すなわち、モータを駆動させることでスイッチの動作を制御できる。
【0010】
スイッチが押し込まれた状態においては、カムがスイッチから受ける摩擦力及び反力によってカムに作用する回転モーメントが、一方向、つまりスイッチを押し込む方向に向って正の値とされている。すなわち、カムはスイッチを押し込む方向へ回転し続けようとする。このため、電力をかけなくてもスイッチの押し込み状態を維持できる。
【0011】
請求項2に記載の発明に係るアクチュエータユニットは、請求項1に記載のアクチュエータユニットにおいて、前記回転モーメントによる前記カムの回転を止める回転抑制機構を備えている。
【0012】
請求項2に記載のアクチュエータユニットでは、回転抑制機構を備えているため、カムが回転し続けることを抑制できる。このため、スイッチの過剰な押し込みによる反力の増加を抑制できる。
【0013】
請求項3に記載の発明に係るアクチュエータユニットは、請求項2に記載のアクチュエータユニットにおいて、前記カムにおける一部の外周面が前記カムの回転中心を中心とする円周に沿って形成され、前記一部の外周面が前記スイッチを押し込む際に、前記スイッチが最も押し込まれた状態とされる。
【0014】
請求項3に記載のアクチュエータユニットでは、カムの外周面が、カムの回転中心を中心とする円周に沿って形成されている。このため、スイッチを押し込んだ状態から押し込み状態を解除する方向(他方向)へカムが回転する際に、スイッチが当該外周面と接している間は、押し込み状態が維持される。さらに、スイッチと当該外周面との接触が解除されると、スイッチの押し込み状態が解除される。
【0015】
これにより、スイッチの押し込み状態を解除する方向へカムが回転する際に、スイッチをさらに押し込む必要がなく、消費電力を少なくできる。
【0016】
請求項4に記載の発明に係るアクチュエータユニットは、請求項1に記載のアクチュエータユニットにおいて、前記カム機構は、一方向へ回転して前記スイッチを押し込み、他方向へ回転して押し込み状態を解除するカムと、前記カムを回転させるモータと、を備え、前記カムにおける一部の外周面が前記カムの回転中心を中心とする円周に沿って形成され、前記一部の外周面が前記スイッチを押し込む際に、前記スイッチが最も押し込まれた状態とされる、請求項1に記載のアクチュエータユニット。
【0017】
請求項4に記載のアクチュエータユニットでは、カムの外周面は、カムの回転中心を中心とする円周に沿って形成されている。カムの外周面には、押し込まれたスイッチの反発力によって、外周面に垂直な垂直力と、外周面に沿う力とが作用する。このうち外周面に垂直な垂直力は、回転半径方向と一致するため、カムの回転に寄与しない。また、カムの外周面に沿う力は、回転方向と一致するが、この力は最大静止摩擦力を上回ることがない。このためカムは、スイッチの反発力によって回転しない。したがって、電力をかけなくてもスイッチの押し込み状態を維持できる。また、スイッチの押し込み状態を解除する方向へカムが回転する際に、スイッチをさらに押し込む必要がなく、消費電力を少なくできる。
【0018】
請求項5に記載の発明に係るシート支持装置は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載のアクチュエータユニットと、前記スイッチによって開閉される前記制御対象としてのバルブと、前記バルブの開閉に応じて空気が給排気されるエアスプリングと、シート本体を支持すると共に前記エアスプリングの圧力によって上下方向に伸縮するリンク機構と、を備えている。
【0019】
請求項5に記載のシート支持装置では、通電状態でスイッチが押し込まれ、バルブが開閉し、エアスプリングへ空気が給排気される。また、非通電状態でスイッチを押し込んだ状態が維持されるため、エアスプリングへの空気の給排気が維持される。
これにより、シート本体を支持するリンク機構を上下方向に伸縮するためのエアスプリングの圧力調整を、非通電状態で維持できる。
【0020】
例えばこのシート支持装置を車両用シートに組付ける際、車両の走行時に、エアスプリングに給排気を繰り返しながらシート本体の高さを一定に保つ際の消費電力が抑えられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るアクチュエータユニット及びシート支持装置によると、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータユニット及びシート支持装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るアクチュエータユニット及びシート支持装置を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアクチュエータユニット及びシート支持装置を示す上面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアクチュエータユニットを示す斜視図である。
【
図5】(A)は本発明の実施形態に係るアクチュエータユニットを示す部分拡大上面図であり、(B)は本発明の実施形態に係るアクチュエータユニットにおけるカムを回転させて排気弁棒を押し込んだ状態を示す部分拡大上面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るアクチュエータユニットにおいてカムが排気弁棒から受ける力の状態を示した部分拡大上面図である。
【
図7】(A)は本発明の実施形態に係るアクチュエータユニットにおけるカムの外周面を円弧に沿って形成した変形例を示す部分拡大上面図であり、(B)は(A)のカムの外周面で排気弁棒を押し込んだ状態を示す部分拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1~
図7を用いて、本発明に係るアクチュエータユニット40及びシート支持装置10の一実施形態について説明する。なお、図中矢印FRはアクチュエータユニット40及びシート支持装置10が取り付けられる車両における車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印Wは車両幅方向(車両左右方向)を示している。また、本実施形態に係るアクチュエータユニット40及びシート支持装置10の前後左右上下の方向性は、車両の方向性と一致している。以下の説明で使用する前後左右上下の方向性は、車両に対する方向性である。
【0024】
<シート支持装置>
図1はシート支持装置10の全体を示す斜視図であり、
図2は側面図、
図3は上面図である。本発明に係るシート支持装置10は、車両の乗員が着座する車両用サスペンションシートに用いられ、乗員が着座するシート本体を上下動可能に支持するものである。
【0025】
シート支持装置10には、シート本体に着座する乗員の荷重をエアスプリング30で緩衝的に受けるエアサスペンション機構12が備えられている。このエアサスペンション機構12は、ロアフレーム14と、アッパフレーム16と、リンク機構20と、エアスプリング30及びアクチュエータユニット40を備えて構成されている。
【0026】
(ロアフレーム、アッパフレーム)
ロアフレーム14は、シート本体を車両へ固定する支持体である。ロアフレーム14は、リンク機構20を介してアッパフレーム16と連結されている。リンク機構20は、アクチュエータユニット40から給排気されたエアスプリング30の膨張及び縮小に伴って上下に伸縮して、アッパフレーム16及びシート本体を上下に移動させる。
【0027】
ロアフレーム14は、前後方向に延びる左右一対のレールメンバー14Aと、レールメンバー14Aの前端同士及び後端同士を連結し左右方向に延びる前後一対の横メンバー14Bとを備えている。
【0028】
また、アッパフレーム16は、前後方向に延びる左右一対のレールメンバー16Aと、レールメンバー16Aの前端同士及び後端同士を連結し左右方向に延びる前後一対の横メンバー16Bとを備えている。
【0029】
アッパフレーム16とロアフレーム14との間には、アッパフレーム16が上方から受ける荷重を受けるエアスプリング30と、このエアスプリング30の振動を吸収する油圧シリンダ式のダンパ32(
図2参照)が配設されている。
【0030】
(リンク機構)
図2に示すように、リンク機構20は、2本のリンクアーム21、22がリンク軸24Aを介してX状に組まれた左右一対のXリンク24と、前側の上下の可動軸21A、22A(
図1参照)とを備えている。Xリンク24は、前上がりに傾斜するリンクアーム21と前下がりに傾斜するリンクアーム22の中間部がリンク軸24Aを介してX状に組まれ、リンク軸24Aを支点として相対回転可能とされたものである。
【0031】
左右のXリンク24における前上がり側のリンクアーム21の後端部には、左右方向に延びる固定軸21Bが固定されている。固定軸21Bは、ロアフレーム14の各レールメンバー14Aの後端部に回転可能に支持されている。
【0032】
またこれと同様に、前下がり側のリンクアーム22の後端部には、左右方向に延びる固定軸22Bが固定されている。固定軸22Bは、アッパフレーム16の各レールメンバー16Aの後端部に回転可能に支持されている。
【0033】
アッパフレーム16側の固定軸22Bは、左右一対のレールメンバー16Aの後端部に架け渡されてこれらレールメンバー16Aに回転自在に支持されており、ロアフレーム14側の固定軸21Bは、左右一対のレールメンバー14Aの後端部に架け渡されて回転自在に支持されている。
【0034】
一方、各リンクアーム21、22の前端部は、可動軸21A、22A(
図1参照)を介して、それぞれアッパフレーム16およびロアフレーム14の各レールメンバー16A、14Aに沿って前後方向に移動可能に支持されている。
【0035】
アッパフレーム16側の可動軸21Aは、左右一対のレールメンバー16Aの前端部に架け渡され、レールメンバー16Aに沿って前後方向に移動可能に支持されている。また、ロアフレーム14側の可動軸22Aは、左右一対のレールメンバー14Aの前端部に架け渡され、レールメンバー14Aに沿って前後方向に移動可能に支持されている。
【0036】
このリンク機構20によれば、ロアフレーム14側の固定軸21Bを支点として左右のXリンク24が同期して伸縮し、伸縮に伴ってアッパフレーム16が昇降する。すなわち、リンクアーム21、22の傾斜角度が鉛直方向に近づくように立ち上がると、Xリンク24が上方に伸張してアッパフレーム16が上昇する。逆に、リンクアーム21、22の傾斜角度が水平方向に近づくように折り畳まれるとXリンク24が下方に縮小してアッパフレーム16が下降する。
【0037】
このようにリンク機構20が作動してアッパフレーム16が上昇する際には、各リンクアーム21、22の前端部は可動軸21A、22Aとともに後方の固定軸22B、21Bにそれぞれ接近し、アッパフレーム16が下降する際には、各リンクアーム21、22の前端部は可動軸21A、22Aとともに固定軸22B、21Bから離間する。
【0038】
(エアスプリング)
エアスプリング30は、
図1に示すように、ロアフレーム14内の後側のスペースに配置されており、その上端部が、左右の前上がり側のリンクアーム21間にわたって固定されリンク機構20の作動に伴って昇降する受圧板34に固定されている。エアスプリング30には、例えば車両のエアブレーキ装置を構成するエアコンプレッサ(空気供給源)から圧縮空気が供給されるようになっている。エアスプリング30は、空気が供給されると上方に膨出し、排気されると下方に縮小する。
【0039】
アッパフレーム16上に設置されたシート本体に着座する乗員の荷重は、受圧板34を介してエアスプリング30で受けられ、ダンパ32の振動吸収作用とともに緩衝される。また、エアスプリング30は、空気が供給されると上方に膨出し、これによりアッパフレーム16が上昇してシート本体が高く調整され、排気されると下方に縮小し、これによりアッパフレーム16が下降してシート本体が低く調整される。
【0040】
(アクチュエータユニット)
アクチュエータユニット40は、
図1に示すように、ロアフレーム14内の後側のスペースに配置されており、
図4に示すように、筐体42と、モータ44と、ウォーム46と、ウォームホイール48と、カム50と、バルブ60と、を備えて構成されている。筐体42は、モータ格納部42Aと、バルブ格納部42Bと、モータ格納部42A及びバルブ格納部42Bを連結する連結部42Cと、を備えている。また、筐体42には、モータ44、ウォーム46、ウォームホイール48、カム50及びバルブ60を上方から覆うように、図示しない蓋が固定される。なお、モータ44、ウォーム46、ウォームホイール48及びカム50は、本発明におけるカム機構の一例である。
【0041】
モータ格納部42Aには、円柱状のモータ44が格納及び固定されている。モータ44の一端は端子台44Aに接続されている。端子台44Aに外部から電源ケーブルが接続されることで、モータ44に電力が供給される。なお、モータ44の一端には、端子台44Aに代えてバッテリを固定してもよい。モータ44の他端からはシャフトが突出し、このシャフトはウォーム46に接続されている。シャフトが略水平方向に沿う回転軸44Bを中心に回転することで、ウォーム46がモータ44におけるシャフトの回転方向と同じ方向へ軸回転する。
【0042】
ウォーム46は円柱形状に形成されており、ウォーム46の中心軸46Bとモータ44の回転軸44Bとが略一致するように、筐体42の連結部42Cに配置されている。モータ44のシャフトが回転することにより、ウォーム46が中心軸46Bを回転中心として軸回転する。
【0043】
ウォーム46は、ウォームホイール48と一体的に用いられるギア機構であり、ウォーム46Aの外周面には「ねじ歯車」が形成されている。
【0044】
ウォームホイール48は、円弧状に形成された外周面48Aを備え、当該外周面48Aには、ウォーム46のねじ歯車と噛み合う「はす歯歯車」が形成されている。ウォームホイール48は、略鉛直方向に沿う回転軸48Bを中心に軸回転する。なお、外周面48Aは回転軸48Bを中心とする円周上に沿うように形成されている。
【0045】
これにより、モータ44が略水平方向に沿う回転軸44Bを中心に回転すると、ウォームホイール48が、略鉛直方向に沿う回転軸48Bを中心に軸回転する。なお、モータ44の回転軸44Bは必ずしも略水平方向に沿う必要はなく、モータ44及びウォームホイール48にけるそれぞれの回転軸44B、48Bが互いに略直交すればよい。
【0046】
ウォームホイール48には、カム50が固定されている。または、ウォームホイール48とカム50とは一体的に形成されている。このため、カム50は、ウォームホイール48の回転に同調して回転する。つまり、カム50は、ウォームホイール48と等しい角度だけ回転する。
【0047】
例えば、
図5(A)、(B)に示すように、ウォーム46が略水平方向(
図5(A)、(B)における紙面に沿う方向)に沿う中心軸46Bを中心に軸回転すると、ウォームホイール48が略鉛直方向(
図5(A)、(B)における紙面前後方向)に沿う回転軸48Bを中心に軸回転する。これに伴い、カム50が、回転軸48Bを中心にウォームホイール48と等しい角度だけ軸回転する。
【0048】
カム50は、回転軸48B上に配置されウォームホイール48と一体化した中心部50Aと、中心部50Aから外側(回転軸48Bを中心とする円の径方向外側)へ突出した一対の突出部50B、50Cと、を備えている。
【0049】
図5(B)に示すように、カム50が一方向(反時計回り)へ回転すると、突出部50Bによってバルブ60における排気弁棒62Bが押し込まれる。排気弁棒62Bが押し込まれた状態から、カム50が他方向(時計回り)へ回転すると、排気弁棒62Bの押し込み状態が解除される。
【0050】
さらにカム50が他方向(時計回り)へ回転すると、突出部50Cによってバルブ60における給気弁棒62Cが押し込まれる。給気弁棒62Cが押し込まれた状態から、カム50が上述した一方向(反時計回り)へ回転すると、給気弁棒62Cの押し込み状態が解除される。なお、排気弁棒62B、給気弁棒62Cは本発明におけるスイッチの一例である。バルブ60は、本発明における制御対象の一例であり、筐体42におけるバルブ格納部42Bに固定されている。
【0051】
図4に示すように、バルブ60には、空気供給源から圧縮空気をバルブ60内に導入する配管が接続される給気口64Cと、空気を排出してエアスプリング30に空気を送出する配管が接続される排気口64Bとが設けられている。
【0052】
給気弁棒62Cが押し込まれると、バルブ60は給気状態となり、給気口64Cからエアスプリング30へ空気が給気される。エアスプリング30に空気が供給されるとアッパフレーム16が上昇させられ、シート本体が上昇する。
【0053】
また、排気弁棒62Bが押し込まれると、バルブ60は排気状態となる。バルブ60が排気状態になると、シート本体に着座する乗員の荷重によりエアスプリング30から空気が排出され、これによりシート本体が下降する。
【0054】
排気弁棒62B及び給気弁棒62Cには一例としてコイルバネK(
図6参照)が内挿されている。このため排気弁棒62B及び給気弁棒62Cは、無負荷の状態においてバルブ60から突出した状態で保持されている。この排気弁棒62B、給気弁棒62Cは、それぞれ突出部50B、50Cに押圧されることにより、コイルバネKの付勢力に抗してバルブ60の内部へ押し込まれる。
【0055】
図6には、排気弁棒62Bがカム50の突出部50Bによって押し込まれた状態が示されている。ここに示されている状態においては、バルブ60が排気状態とされている。排気弁棒62Bにおける先端部62Sは半球形状とされており、突出部50Bにおける排気弁棒62Bとの接触面52Bは平坦面とされている。
【0056】
このため、カム50の回転軸48Bに沿った方向から見て、接触面52Bは、先端部62Sとカム50との接点P1における接線PLと一致する。
【0057】
カム50には、排気弁棒62Bに内挿されたコイルバネKの付勢力により、排気弁棒62Bから押圧力Fが作用する。この押圧力Fは、接線PLに沿う分力F2と、接線PLの法線CLに沿う分力F1と、に分解することができる。
【0058】
さらにカム50には、排気弁棒62Bからの摩擦力F3が作用する。摩擦力F3は、接触面52B及び先端部62Sの摩擦係数等に応じて適宜設定することができる。分力F1、F2、摩擦力F3は、
図6における矢印の向きに向う力である。
【0059】
この状態において、カム50に作用する「時計回り」の回転モーメントM1は、回転軸48Bから接線PLまでの距離をd2として、M1=F2・d2で表される。また、カム50に作用する「反時計回り」の回転モーメントM2は、回転軸48Bから法線CLまでの距離をd1として、M2=F1・d1+F3・d2で表される。
【0060】
ここで、本実施形態に係るアクチュエータユニット40においては、M2>M1とされている。つまり、排気弁棒62Bが押し込まれ、バルブ60が排気状態とされている
図6の状態において、カム50に作用する「反時計回り」の回転モーメントが、カム50に作用する時計回りの回転モーメントより大きい。換言すると、カム50が排気弁棒62Bから受ける摩擦力及び反力によってカム50に作用する回転モーメントが、反時計回りに向って正の値(M2-M1>0)とされている。
【0061】
本実施形態においては、(M2-M1>0)となるように、コイルバネKのばね定数、接触面52B及び先端部62Sの摩擦係数、回転軸48Bと接線PLとの距離d2、回転軸48Bと法線CLとの距離d1等が設定されている。
【0062】
なお、カム50が「反時計回り」の回転モーメントによって回転し続けないように、カム50は、バルブ60の外側面と、接点P2において接触している。なお、カム50がバルブ60の外側面と接触する構成は、本発明における回転抑制機構の一例である。回転抑制機構としては、モータ44回転軸44B又はウォーム46の中心軸46Bの軸周りに回転ストッパを設けてもよいし、カム50の回転軸48Bの軸周りに回転ストッパを設けてもよい。
【0063】
以上の説明においては、排気弁棒62Bと突出部50Bとの関係について
図6を用いて説明したが、給気弁棒62Cと突出部50Cとの関係についても同様である。この場合、上記説明における「時計回り」を「反時計回り」と読み替えるものとする。また、「反時計回り」を「時計回り」と読み替えるものとする。
【0064】
<作用・効果>
本発明の実施形態に係るアクチュエータユニット40では、バルブ60が排気状態とされている
図6の状態において、カム50に作用する「反時計回り」の回転モーメントが、カム50に作用する時計回りの回転モーメントより大きくされている。換言すると、バルブ60の排気状態において、カム50には排気弁棒62Bを押し込む方向の回転力が付与される。
【0065】
このため、非通電状態で排気弁棒62Bを押し込んだ状態を維持できる。すなわち、排気弁棒62Bを押し込み続けるための電力を必要としない。このため、排気弁棒62Bを押し込み続けるために電力が必要な場合と比較して消費電力を低減できる。
【0066】
排気弁棒62Bの押し込み状態を解除するためには、電力によりモータ44を逆回転させて、カム50を時計回りに回転させればよい。
【0067】
同様に、アクチュエータユニット40では、バルブ60の給気状態において、カム50には給気弁棒62C(
図5参照)を押し込む方向の回転力が付与される。
【0068】
このため、非通電状態で給気弁棒62Cを押し込んだ状態を維持できる。すなわち、給気弁棒62Cを押し込み続けるための電力を必要としない。このため、給気弁棒62Cを押し込み続けるために電力が必要な場合と比較して消費電力を低減できる。
【0069】
給気弁棒62Cの押し込み状態を解除するためには、電力によりモータ44を逆回転させて、カム50を反時計回りに回転させればよい。
【0070】
また、本発明の実施形態に係るシート支持装置10には、上記のアクチュエータユニット40が組み付けられている。このため、バルブ60の給気状態において、エアスプリング30へ空気が供給される。また、非通電状態で給気弁棒62Cを押し込んだ状態が維持されるため、エアスプリング30への空気の給気が維持される。同様に、バルブ60の排気状態において、エアスプリング30から空気が排出される。また、非通電状態で排気弁棒62Bを押し込んだ状態が維持されるため、エアスプリング30からの空気の排出が維持される。
【0071】
これにより、シート本体を支持するリンク機構20を上下方向に伸縮するためのエアスプリング30の圧力調整を、非通電状態で維持できる。このため、車両の走行時に、エアスプリング30に給排気を繰り返しながらシート本体の高さを一定に保つ際の消費電力が抑えられる。また、給気弁棒62C及び排気弁棒62Bを押し続けるための電力が不要となるため、モータ44が発熱することが抑制される。これによりアクチュエータユニット40の耐久性が向上する。
【0072】
さらに、アクチュエータユニット40においては、モータ44の回転力によってカム50を回転させているが、
図4に示すように、カム50の回転軸48Bとモータ44の回転軸44Bとが、略直交するように配置されている。このため、カム50の回転軸48Bとモータ44の回転軸44Bとが一致するように配置されている場合(例えば
図4においてカム50の上方にモータ44が配置されている場合)と比較して、アクチュエータユニット40の高さ寸法を小さくすることができる。このため、アクチュエータユニット40をエアサスペンション機構12へ組付け易い。
【0073】
なお、上記実施形態においては、カム50の突出部50Bにおける排気弁棒62Bとの接触面52Bは平坦面としたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図7(A)、(B)に示すカム70のように、排気弁棒62Bとの接触面72Bを、カム72Bの回転軸48Bを中心とする円周に沿って形成した曲面としてもよい。
【0074】
カム70においては、接触面72Bが、回転軸48Bから最も離れた部分とされている。すなわち、カム70が回転した際に、カム70における全ての部分の軌跡が、接触面72Bが描く軌跡Tの内側に配置される。このため排気弁棒62Bは、
図7(B)に示す接触面72Bと接している状態において、最も押し込まれた状態とされている。
【0075】
これにより、カム70が反時計回りに回転し、
図7(A)に示す排気弁棒62Bと接した状態から
図7(B)に示す状態まで、排気弁棒62Bは徐々に押し込まれる。カム70の回転角が、排気弁棒62Bと接触面72Bとが接触している回転角範囲ΔWにおいては、排気弁棒62Bは押し込まれもしないし、押し込み状態の解除もされない。
【0076】
このため、例えばバルブ60の排気状態を解除するために排気弁棒62Bの押し込み状態を解除する際、カム70を時計回りに回転させるが、この際排気弁棒62Bをさらに押し込む必要がない。これにより、モータ44に与える回転トルクを小さくして消費電力を節約できる。
【0077】
なお、カム70においては、
図6を用いて上記実施形態で説明したように、排気弁棒62Bから押圧力を受け、分力F1、F2、摩擦力F3(
図6参照)が作用する。これらの力によってカム70に作用する回転モーメントは、カム50と同様に、反時計回りに向って正の値とされている。これにより、カム70は、非通電状態で排気弁棒62Bを押し込んだ状態を維持できる。すなわち、排気弁棒62Bを押し込み続けるための電力を必要としない。このため、排気弁棒62Bを押し込み続けるために電力が必要な場合と比較して消費電力を低減できる。
【0078】
但し、カム70を用いた実施形態においては、排気弁棒62Bから受ける押圧力によってカム70に作用する回転モーメントを、反時計回りに向って正の値とすることは必須ではない。
【0079】
つまり、
図7(B)に示すように、カム70の外周面には、押し込まれた排気弁棒62Bの反発力によって、外周面72Bに垂直な垂直力F5と、外周面72Bに沿う力F6とが作用する。このうち外周面に垂直な垂直力F5は、回転半径方向と一致するため、カム70の回転に寄与しない。また、カム70の外周面72Bに沿う力F6は、回転方向と一致するが、この力は最大静止摩擦力(カム70と排気弁棒62Bとの間に発生する摩擦力F7の最大値)を上回ることがない。このためカム70は、排気弁棒62Bの反発力によって回転しない。したがって、電力をかけなくても排気弁棒62Bの押し込み状態を維持できる。また、排気弁棒62Bの押し込み状態を解除する方向へカム70が回転する際に、排気弁棒62Bをさらに押し込む必要がなく、消費電力を少なくできる。
【0080】
また、上記実施形態におけるアクチュエータユニット40においては、カム50に2つの突出部50B、50Cを設けているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば突出部を1つだけ設けるものとしてもよい。突出部を1つだけ設けたカムは、スイッチを1つだけ備えたバルブその他のアクチュエータに使用できる。例えば機械的に給気し自然排気する換気システム等に用いることができる。また、カムには突出部を3つ以上設けてもよい。突出部を3つ以上設けたカムは、スイッチを3つ以上備えたバルブその他のアクチュエータに使用できる。
【0081】
また、上記実施形態においては、ウォーム46及びウォームホイール48を用いてモータ44のトルクをカム50へ伝達しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばウォーム46及びウォームホイール48を用いずに、モータ44からカム50へ直接トルクを伝達してもよい。このような実施形態は、アクチュエータユニットを配置するスペースに余裕がある場合等において適宜採用できる。すなわち、本発明におけるカム機構は、少なくともモータ44及びカム50を備えていればよい。このように、本発明は様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
10 シート支持装置
20 リンク機構
30 エアスプリング
40 アクチュエータユニット
44 モータ(カム機構)
46 ウォーム(カム機構)
48 ウォームホイール(カム機構)
50 カム(カム機構)
60 バルブ(制御対象)
62B 排気弁棒(スイッチ)
62C 給気弁棒(スイッチ)
70 カム(カム機構)
72B 外周面(一部の外周面)