(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】光コネクタアダプタ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2018150594
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-05-13
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】平 淳司
(72)【発明者】
【氏名】高石 洋平
(72)【発明者】
【氏名】地引 正幸
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-121698(JP,A)
【文献】登録実用新案第3153362(JP,U)
【文献】米国特許第05317663(US,A)
【文献】特開平08-248263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255
6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
概略筒状のアダプタハウジングと、該アダプタハウジングに収容される筒状のスリーブと、該スリーブを両側から挟み込み、前記アダプタハウジング内で係合構造にて
該アダプタハウジングと係合固定され、支持する一対のスリーブホルダとを備え、
前記一対のスリーブホルダは、同じ形状とし、
前記係合構造は、前記アダプタハウジングの内
部に形成し
、前記アダプタハウジングのいずれの側からも
前記一対のスリーブホルダの挿入を許容しつつ、いずれの側からも
前記一対のスリーブホルダの反対方向への抜け止めをはかることを特徴とする光コネクタアダプタ。
【請求項2】
前記係合構造は、いずれかの開口端から他端側へ向かうほど徐々に隆起した傾斜面と、該傾斜面に続く後方側
で垂直に下る垂直面を有する傾斜ストッパを、前記アダプタハウジング
の中央部に形成し、いずれの側からも挿入を許容しつつ、いずれの側からも反対方向への抜け止めをはかることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタアダプタ。
【請求項3】
前記係合構造は、挿入方向に対しては前記傾斜ストッパにて支持され、前記傾斜ストッパの傾斜面の垂直方向に対しては弾性支持構造にて支持されていることを特徴とする請求項2に記載の光コネクタアダプタ。
【請求項4】
前記係合構造は、前記アダプタハウジングの壁面を薄肉化して弾性を備えていることを特徴とする請求項
3に記載の光コネクタアダプタ。
【請求項5】
前記係合構造は、係合する相手側部材に向かってアーム状に突き出た弾性を有する係合片を備えていることを特徴とする請求項
3に記載の光コネクタアダプタ。
【請求項6】
前記一対のスリーブホルダには、対となる前記スリーブホルダと対面させたときに干渉しない位置に前記係合片を形成してあることを特徴とする請求項
5に記載の光コネクタアダプタ。
【請求項7】
前記アダプタハウジングは、壁面から内側に向けて突き出るように、傾斜ストッパを形成してあり、
前記スリーブホルダは、前記アダプタハウジングの内周面に形成した前記傾斜ストッパに向けて突き出るアーム状の係合片を有す
ることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタアダプタ。
【請求項8】
互いに対面させたときに干渉しない位置となるように前記係合片を形成してあることを特徴とする請求項
7に記載の光コネクタアダプタ。
【請求項9】
前記係合片は、前記スリーブホルダを装着状態となるように対面させたときに互いに相手側に突き出る形状となっており、突き出た位置における相手側の前記スリーブホルダの外周面には前記係合片の側に突き出て傾動範囲を規制する支持凸部を形成してあることを特徴とする請求項
8に記載の光コネクタアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタと光コネクタとを連結する光コネクタアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
先端にフェルール部を備えた光コネクタ同士を連結するために光コネクタアダプタが利用されている。従来、特許文献1に示す光コネクタアダプタや特許文献2に示すシャッター付き光コネクタアダプタなどが知られている。
光コネクタアダプタは、概略筒状のアダプタハウジングと、前記アダプタハウジングに収容される筒状のスリーブと、このスリーブを両側から挟み込み、前記アダプタハウジング内で係合構造にて係合固定され、支持する一対のスリーブホルダとを備えている。
同文献に開示された光コネクタアダプタは、一方の開口を塞ぎつつも外部の光コネクタを挿入すると撓んで挿入を邪魔しないシャッタを備えている。
【0003】
アダプタハウジングの両方の開口にそれぞれ光コネクタを差し込むと、各光コネクタの先端に露出しているフェルール部がスリーブ部の両側から挿入される。スリーブ部内でフェルール部が当接することで内蔵ファイバ同士が対面して当接するので、光コネクタは光信号の伝達路として連結される。また、光コネクタ自体は機械的にアダプタハウジングに係合するので、光コネクタは外れない状態で支持される。
【0004】
スリーブホルダは一対の部品で形成され、スリーブを挟み込んで組み立て、アダプタハウジングにおける所定の側から奥に向けて挿入する。アダプタハウジングの中程の内周面には位置決め突起が形成されており、スリーブホルダが突き当たると、それ以上は奥に入らなくなる。また、位置決め突起に突き当たる位置にはスリーブホルダの挿入方向に向かって後方側に係合することで、開口側に抜けてこないようにする係合構造も形成されている。
【0005】
シャッタは一枚の板片で形成され、アダプタハウジングの一方の開口の縁部に固定され、同開口内に向けて折り曲げられた形状となっていて、同開口を概ね塞いでいる。ただし、光コネクタが挿入されると、当該光コネクタによってアダプタハウジングの内側に押し倒されるので、光コネクタは挿入できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-164500号公報
【文献】特許3644884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の光コネクタアダプタは、スリーブホルダに雌雄の別があり、区別して組み付けなければならない。また、アダプタハウジングには、挿入すべき入り口が決まっており、二つある開口を区別して組み付けなければならない。従って、作業時に方向や部品を慎重に区別しなければならず、誤ってしまうと組立できないので、作業性が良くなかった。
特に、光コネクタアダプタから容易に光コネクタが外れないようにしっかりと固定する必要があり、このために簡易な係合構造は採用できなかった。
また、従来のシャッタ付き光コネクタアダプタは、光コネクタを抜けばシャッタが元の形状に復元し、アダプタハウジング内のスリーブホルダの開口を塞ぐことができる高さに復帰することが期待されている。しかし、現実には光コネクタを挿入したときに無理に変形されたり、光コネクタの挿抜による繰り返しの曲げ伸ばしにより期待どおりに元の形状に復元できない。
本発明は、組立の作業性を容易にすることができ、容易に光コネクタが外れないように保持し、元の形状に戻る復元性を向上させたシャッタを備える光コネクタアダプタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、概略筒状のアダプタハウジングと、前記アダプタハウジングに収容される筒状のスリーブと、このスリーブを両側から挟み込み、前記アダプタハウジング内の係合構造にて係合固定され、支持する一対のスリーブホルダとを備え、前記係合構造は、アダプタハウジングの内部で、それぞれの開口ごとに形成し、いずれの側からも挿入を許容しつつ反対方向への抜け止めをはかる構成としてある。
前記構成において、アダプタハウジングの内部、例えばほぼ中央にて、それぞれの開口ごとに前記係合構造が形成されているので、光コネクタをいずれの側からも挿入でき、かつ、反対方向へは抜け止めできる。
【0009】
本発明の他の態様として、前記係合構造は、開口側から奥へ向かうほど徐々に迫り上がる傾斜面と、その奥側でほぼ垂直に下る垂直面を有する傾斜ストッパを、アダプタハウジングの内部で、それぞれの開口ごとに形成し、いずれの側からも挿入を許容しつつ反対方向への抜け止めをはかる構成としてある。
ここでいう垂直面とは、90度程度でも良いが、例えば、アダプタハウジング壁面から傾斜面に向けて80度以下で形成することで、スリーブホルダの係合突起との嵌合をより外れにくい構造にしても良い。
【0010】
前記構成において、傾斜ストッパはアダプタハウジングの内部、例えばほぼ中央にて、それぞれの開口ごとに形成してある。傾斜ストッパは開口側から奥へ向かうほど徐々に迫り上がる傾斜面を有しているので、スリーブホルダを挿入するときには容易に乗り越える。一方、傾斜ストッパは、その奥側でほぼ垂直に下る垂直面を有しているので、いったん傾斜面を乗り越えたあとは、手前側には抜け出ることはない。傾斜ストッパはアダプタハウジングのそれぞれの開口ごとに形成してあるので、一方の傾斜ストッパを乗り越えたら、スリーブホルダは反対側の傾斜ストッパの垂直面に突き当たり、それ以上は奥へと移動できなくなる。すなわち、スリーブホルダがアダプタハウジングの内部における所定位置、例えばほぼ中央に移動したときに、それぞれの開口ごとに形成した傾斜ストッパに挟まれるように傾斜ストッパを形成しておく。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光コネクタアダプタによれば、組立の作業性を容易にすることができ、かつ、復元性を向上させたシャッタを備える光コネクタアダプタを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例にかかる光コネクタアダプタの外観斜視図である。
【
図3】同光コネクタアダプタの構成部品を示す斜視図である。
【
図4】同光コネクタアダプタのZ線における断面図である。
【
図5】同光コネクタアダプタのX線における断面図である。
【
図9】光コネクタ挿入開始時の光コネクタアダプタの側面断面図である。
【
図10】光コネクタ挿入開始時の光コネクタアダプタの要部拡大図である。
【
図11】光コネクタ挿入後の光コネクタアダプタの側面断面図である。
【
図12】本発明の一実施例にかかる光コネクタアダプタの外観斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1および
図2は、本発明の一実施例にかかる光コネクタアダプタの外観斜視図であり、
図3は、同光コネクタアダプタの構成部品を示す斜視図である。
図1の紙面において、左下方を前方および前端側、右上方を後方および後端側、上方を上方、下方を下方、手前側を右面側、背面側を左面側と呼ぶことにする。
【0014】
本実施例の光コネクタアダプタ10は、概略筒状のアダプタハウジング20と、前記アダプタハウジングに収容される筒状のスリーブ30と、このスリーブを両側から挟み込み、前記アダプタハウジング内で係合構造にて係合固定され、支持する一対のスリーブホルダ40と、前記アダプタハウジングの開口に取り付けられるシャッタ50を備えている。
【0015】
アダプタハウジング20は、概略断面矩形の各筒状に形成されている。また、一方の開口にシャッタ50が取り付けられている。
スリーブ30は、円筒状に形成されており、その内径は、光コネクタを装着したときに前端に備えられる円柱状のフェルール部が挿入できる程度の大きさとしてある。スリーブホルダ40は、雌雄の別のない一つの形状であり、互いに逆方向に対面させた状態で、間にスリーブ30を収容して装着される。
【0016】
スリーブホルダ40は、互いに対面して当接する壁面部41と、この壁面部41から一方向に突き出るように形成されてスリーブ30を収容することが可能な筒状部42と、この壁面部41の左右の端部から筒状部42と同方向に突き出るように形成されて光コネクタの側面に係合することが可能なコネクタ係合アーム43と、筒状部42やコネクタ係合アーム43と反対方向に突き出るホルダ係合片44と、ホルダ係合片44と同方向に突き出るアーム状係合片45とを備えている。
【0017】
図4は、同光コネクタアダプタのZ線における断面図であり、
図5は、同光コネクタアダプタのX線における断面図である。また、
図6は、同光コネクタアダプタにおけるスリーブホルダの組立状態の斜視図である。
スリーブホルダ40は、雌雄の別がない一つの形状である。
筒状部42とコネクタ係合アーム43が突き出る側を、壁面部41における表面と呼ぶと、壁面部における裏面側に、ホルダ係合片44とアーム状係合片45とが突き出ている。ホルダ係合片44は、一対のスリーブホルダ40の背面側同士を対面させて近接させて、スリーブホルダ40同士を係合させるものであり、それぞれにおいて壁面部41の左右の縁部で上下が逆になるように延設されている。従って、壁面部41の裏面同士を向かい合わせたときには、一方のスリーブホルダ40のホルダ係合片44は上側から突き出ており、他方のスリーブホルダ40のホルダ係合片44は下側から突き出ることになる。ホルダ係合片44の先端からは内側に向けて小突起44aが突き出ており、相手側のスリーブホルダ40の壁面部41の厚みを超えた部位で壁面部41を乗り越えて係合することができる。このように突き出る位置を違えることにより、対となるスリーブホルダ40と対面させたときに干渉しない位置となっている。
一例として、壁面部41の右側面縁部の上側と、左側面縁部の下側にホルダ係合片44
を1つずつ形成する。このようにすれば、対となるスリーブホルダ40と対面させたときに干渉することなく壁面部41を乗り越えて係合することができる。これにより、スリーブホルダ40をアダプタハウジング20に挿入する際に、対となるスリーブホルダ40が仮組みの状態となり、組立が容易となる。
組立の工程によって仮組みの状態を要しない場合は、ホルダ係合片44を設けない構成としても良い。
【0018】
アーム状係合片45についても、壁面部41から突き出る位置を違えることにより、対となるスリーブホルダと対面させたときに干渉しない位置となっている。アーム状係合片45は、壁面部41の上側の縁部と下側の縁部に2つずつ形成されている。上側の縁部のアーム状係合片45は、一対のスリーブホルダ40を対面させたときに、それぞれの壁面部41から突き出るアーム状係合片45が突き当たらないように左右にずれた位置関係としてある。一例として、二つのアーム状係合片45のために壁面部41の縁部を2等分した上で、さらにそれぞれの領域を2等分し、ともに右側の領域にアーム状係合片45を形成する。このようにすれば、一対のスリーブホルダ40を対面させたときには左右が反転するので、ともに右側の領域から突き出るものであっても相手側からすると左側から突き出ていることになり、対となるスリーブホルダ40と対面させたときに干渉しない位置となる。
【0019】
さらに、本実施例の場合は、上下を反転させたときに対象となるように形成してある。このようにすることで、スリーブホルダ40は雌雄がないばかりか、対面させたときに上下の区別もなくなり、組立作業が容易になる。また、左右のホルダ係合片44で挟み込みつつ係合するため、一対のスリーブホルダ40はしっかりと固定される。また、本実施例では、概略矩形形状である壁面部41の長い片にあたる上下の縁部にアーム状係合片45を形成することとしてあり、一対のスリーブホルダ40はしっかりと固定される。
【0020】
ホルダ係合片44の先端からは内側に向けて小突起44aが突き出ているのに対し、アーム状係合片45の先端からは外側に向けて小突起45aが突き出ている。ここでいう外側とは、アダプタハウジング20に挿入したときに、アダプタハウジング20の内周面に対面する側である。小突起45aは、突き出る先端側から根本側に向けて徐々に隆起する傾斜面45a1を有しており、最も隆起した部位を超える位置でほぼ垂直に下る垂直面45a2を有している。この小突起45aは、アダプタハウジング20の内周面における中程の上壁面と下壁面に形成した係合突起21aに係合することができる。
【0021】
係合突起21aは、一方の開口側に対面するほぼ垂直の垂直面21a1と、隆起した部分の水平面21a2と、他方の開口側に対面する乗り上げ面21a3とを有している。スリーブホルダ40をアダプタハウジング20内に挿入していくと、アーム状係合片45の小突起45aに形成した傾斜面45a1は、係合突起21aにおける乗り上げ面21a3に当接するものの、傾斜しているアーム状係合片45が撓むことで小突起45aは係合突起21aに突き当たることなく乗り上がる。さらに挿入すると、アーム状係合片45の小突起45aに形成した垂直面45a2が係合突起21aの水平面21a2を通り越すので、アーム状係合片45は小突起45aの隆起分だけ撓められていた状態から元の状態に復帰する。これにより、アーム状係合片45の小突起45aに形成した垂直面45a2と、係合突起21aの垂直面21a1とが対面する。従って、この状態でアダプタハウジング20からスリーブホルダ40を挿入方向と逆方向に抜こうとしても、垂直面45a2と垂直面21a1とが対面することになり、容易には抜けない状態となっている。ここで、乗り上げ面21a3は、垂直面として形成しても良く、また、アーム状係合片45が水平面21a2へ乗り上げやすいように、挿入する開口側から他方開口側に向かって徐々に隆起する傾斜面としても良い。
本明細書中で、「挿入方向」とは、アダプタハウジング20の、一方の開口から他方の開口に向けて進む方向のことを言い、このとき、中央部から他方の開口側を後方側と言い、中央部から一方の開口側を前方側と言う。
【0022】
スリーブホルダ40をアダプタハウジング20に挿入していくときに、アダプタハウジング20の係合突起21aに最初に当接するのは、挿入方向を基準として後側のスリーブホルダ40から挿入方向前方側に突き出るアーム状係合片45である。このアーム状係合片45が係合突起21aを乗り越えると、もう片方の前方側のスリーブホルダ40から挿入方向後方側に突き出るアーム状係合片45が係合突起21aに突き当たる。このときに対面するのは、アーム状係合片45の小突起45aに形成した垂直面45a2と、係合突起21aの垂直面21a1であり、容易に乗り越える組み合わせではないから、突き当たる。これにより、スリーブホルダ40は、それ以上はアダプタハウジング20には挿入できなくなる。すなわち、それ以上挿入できない状態となるのと同時に、抜くこともできない状態となる。このようにして組み合わせた一対のスリーブホルダ40はアダプタハウジング20内における中程の所定位置に係合固定される。
【0023】
スリーブホルダ40に雌雄の区別がないのと同様に、アダプタハウジング20の内部もY軸周りで回転対称な形状としてあるため、アダプタハウジング20のいずれの開口からスリーブホルダ40を挿入しても同じように係合する。このように、本実施例の係合構造では、アダプタハウジング20のほぼ中央にて、それぞれの開口ごとに形成し、いずれの側からも挿入を許容しつつ反対方向への抜け止めをはかるように作用している。
【0024】
また、アーム状係合片45における小突起45aは、挿入方向の前方側から後方側へ向かうほど徐々に迫り上がる傾斜面45a1と、この傾斜面45a1に続く後方側でほぼ垂直に下る垂直面45a2を有する傾斜ストッパとなる。一対のスリーブホルダ40の壁面部41の裏面同士を向かい合わせることで、傾斜ストッパは挿入方向の前方側と後方側に形成され、いずれの側からも挿入を許容しつつ反対方向への抜け止めをはかることができる。
【0025】
なお、このような傾斜ストッパは、スリーブホルダ40の側に形成することもできるし、アダプタハウジング20の側に形成してもよい。例えば、アダプタハウジング20の内周面におけるスリーブホルダに対面する側に前記係合構造を構成する傾斜面と垂直面を形成し、スリーブホルダ40から突き出るアーム状係合片45と係合する構成とすればよい。
【0026】
また、係合突起21aはアダプタハウジング20の内周面に形成してある。一例として、アダプタハウジング20の外周面に凹み21bを形成し、壁面を薄肉化してもよい。係合突起21aが形成される壁面を薄肉化することにより、弾性を備えさせ、弾性支持構造としている。一方の側だけ、例えば、スリーブホルダ40の側の弾性支持構造だけとしてもよいが、スリーブホルダ40の側にもアダプタハウジング20の側にも、弾性支持構造を形成してもよい。。
【0027】
このようにアーム状係合片45の小突起45aがアダプタハウジング20の係合突起21aを乗り越えるためには、アーム状係合片45が弾性部材として撓むことが必要である。アーム状係合片45は、係合する相手側部材に向かってアーム状に突き出ることにより、弾性を有する係合片となっている。すなわち、アーム状係合片45は弾性支持構造の一例である。
【0028】
アーム状係合片45は、一対のスリーブホルダ40を対面させて装着状態としたときに、互いに相手側のスリーブホルダ40に突き出る形状となっている。突き出た位置では、アーム状係合片45と相手側のスリーブホルダ40の一部が対面する。突き出た位置における相手側のスリーブホルダ40の外周面には同アーム状係合片45の側に突き出る支持凸部46を形成してある。支持凸部46はアーム状係合片45における小突起45aを形成した側と反対側の面に対面しており、小突起45aが係合突起21aを乗り越えるために撓むと、支持凸部46とアーム状係合片45とが近接するため、支持凸部46の隆起高さやアーム状係合片45の厚みを適宜調整することで、アーム状係合片45が傾動可能な範囲(傾動範囲)を規制することができる。
【0029】
スリーブホルダ40は、図示しない光コネクタと係合すると、光コネクタにかかる引っ張り力を支持することになり、このときに所定の大きさの引っ張り力に耐えるように設計されている必要がある。アーム状係合片45が容易に撓めば組立作業は容易になる反面、この引っ張り力に耐える力は弱くなる。前記支持凸部46の隆起高さやアーム状係合片45の厚みを適宜調整することで、両方のバランスをとることができる。すなわち、必要な引っ張り力に耐えることができ、組立作業も容易にできる範囲とすることができる。
【0030】
図7は、シャッタ片の斜視図であり、
図8は、クリップの斜視図である。
シャッタ50は、アダプタハウジング20における少なくとも一方の開口に装着され、一方の開口を塞ぎつつも外部から光コネクタを挿入すると撓んで挿入を邪魔しない。シャッタ50は、シャッタ片51とクリップ52とから構成されている。シャッタ片51は一枚の板片から構成され、アダプタハウジング20における一方の開口の下壁縁部に対して下面側から接する支持壁部51aと、同支持壁部51aからアダプタハウジング20の下壁縁部を回り込んで上方に屈曲する屈曲部位51bと、同屈曲部位51bからアダプタハウジング20の開口内側に向けて当該開口を塞ぐように伸延される遮蔽部位51cとから構成されている。
【0031】
屈曲部位51bは、支持壁部51aの前端からいったんやや下方に傾斜してから前記下壁縁部を回り込んで上方に屈曲している。言い換えると、前記下壁縁部から離れるように湾曲した後で、下壁縁部の前方を回り込むようにして開口の内側に向かうように湾曲することで、曲げ半径を大きくしている。
遮蔽部位51cは急角度で屈曲部位51bから立設した後、いったんは立ち上がる角度が緩み、再度、急角度で立ち上がっており、いわゆるS字カーブを描く断面形状となっている。このようにS字カーブとすることにより、
光コネクタが挿入されるときに屈曲部位51bに近い部位で光コネクタフェルールの側面が接触し押し倒すこととなるので、フェルールの端面が接触してフェルール端面を損傷することがない。さらに挿入するとシャッタ片51の先端側は大きく傾いて筒状部42の開口から待避し、挿入される光コネクタのフェルール部がスリーブ30に挿入できるようになる。
なお、スリーブホルダ40における筒状部42の先端と遮蔽部位51cとが干渉しないように、同遮蔽部位51cの先端が傾動する範囲に沿って筒状部42の先端に面取り部42aを形成してある。これにより、シャッタ片51の遮蔽部位51cの全長をより長くすることができ、この結果、遮蔽部位51cが筒状部42開口部分を広い範囲で覆うことができる。
【0032】
このように、支持壁部51aは略矩形の筒体からなるアダプタハウジング20のいずれかの外面にて支持され、屈曲部位51bは同支持壁部51aにおけるアダプタハウジング20の先端側で筒体の内側に入り込むように屈曲しており、遮蔽部位51cは同屈曲部位51bから筒体の内側に入り込んで開口を塞ぐように立設されている。
【0033】
シャッタ片51をアダプタハウジング20に取り付けるクリップ52は、シャッタ片51の支持壁部51aを下方から押さえつける押さえ板部位52aと、押さえ板部位52aよりも左右外側方向に広がり、さらにアダプタハウジング20の開口側に向かって延びた後、同アダプタハウジング20の開口における下壁縁部を上方側に回り込んで下壁縁部の上面側に回り込む挟持部52bとを備えている。押さえ板部位52aの前方側は解放されており、シャッタ片51の屈曲部位51bに接触しない構成となっている。
【0034】
このように、クリップ52は、シャッタ片51の支持壁部51aをアダプタハウジング20の外面に押さえつける押さえ板部位52aと、支持壁部51aよりも幅方向外側にてアダプタハウジング20の開口側に延設され、同開口の先端側縁部で筒体であるアダプタハウジング20の内側に回り込むように屈曲する挟持部52bとを有している。
【0035】
シャッタ50において、シャッタ片51の支持壁部51aと屈曲部位51bと遮蔽部位51cとを形成する板片の厚みよりも、クリップ52の厚みの方を厚くしてある。クリップ52はシャッタ片51をしっかりと固定するために必要十分な強度を持つように所定の厚みが必要となる。一方、シャッタ片51は可能な限りしなやかにすることで光コネクタを抜き差ししたときに元の形状に復元する復元性能を向上させるべく、可能な限り薄くしている。
【0036】
また、クリップ52における押さえ板部位52aにはクリップ側貫通穴52a1を形成し、シャッタ片51における支持壁部51aにおける同クリップ側貫通穴52a1に対面する部位にもシャッタ片側貫通穴51a1を形成してある。これらに対応して、アダプタハウジング20におけるクリップ側貫通穴52a1とシャッタ片側貫通穴51a1に対面する部位には、概ねシャッタ片51とクリップ52の厚み分だけ隆起する突起23を形成してある。突起23は開口側から反対側に向けて徐々に隆起し、最後には垂直となるように形成された垂直面を備えている。
【0037】
シャッタ50を取り付けるには、アダプタハウジング20にスリーブホルダ40に挿入した後、シャッタ片51の支持壁部51aを同アダプタハウジング20の開口の下壁に当接させるように、前方からクリップ52を同開口の下壁にスライドさせる。すると、シャッタ片51の左右から挟持部52bが同開口の下壁を挟み込むようにして装着される。シャッタ片51はシャッタ片側貫通穴51a1にアダプタハウジング20の突起23が入り込むように位置合わせしておき、クリップ52をスライドしていくと、押さえ板部位52aが突起23の傾斜面に沿って同突起23を乗り越える。乗り越えた位置では、シャッタ片側貫通穴51a1とクリップ側貫通穴52a1と突起23とが位置合わせされた状態となり、シャッタ片51やクリップ52がアダプタハウジング20から外れてしまうことを防止できる。
【0038】
なお、クリップ52における押さえ板部位52aには凹部を形成し、シャッタ片51における支持壁部51aの同凹部に対面する部位には切り起こし部を形成しておき、両者が凹凸係合するようにすることもできる。このようにすれば、シャッタ片51とクリップ52だけが位置合わせされる。クリップ52による固定が十分であれば、このような簡略化した構成としても良い。この場合でも、シャッタ片側貫通穴51a1とクリップ側貫通穴52a1と突起23とを併用することも可能であり、固定力を大きくしたい場合に有効である。
【0039】
図9は、光コネクタ挿入開始時の光コネクタアダプタの側面断面図であり、
図10は、光コネクタ挿入開始時の光コネクタアダプタの要部拡大図であり、
図11は、光コネクタ挿入後の光コネクタアダプタの側面断面図である。また、
図12は、本発明の一実施例にかかる光コネクタアダプタの外観斜視図である。
図9に示すように、光コネクタアダプタ10に光コネクタを挿入し始めた時点では、遮蔽部位51cは立ち上がっており、筒状部42の開口部分を遮蔽している。
【0040】
光コネクタを挿入していくと、光コネクタの先端下部がシャッタ片51における屈曲部位51bの上面に当接し、そのまま屈曲部位51bを挿入方向奥側に向けて押し倒す。すると、遮蔽部位51cは奥側に向けて倒れるので、光コネクタの挿入経路から待避し、光コネクタを奥まで挿入することができる。光コネクタを奥まで挿入すると、スリーブホルダ40に形成したコネクタ係合アーム43が光コネクタの両側面と係合し、コネクタ係合アーム43の抜け止めが図られる。
【0041】
光コネクタを挿入していくときには、最初にシャッタ片51の遮蔽部位51cに当接し、奥側へ押し倒そうとする。遮蔽部位51cは断面S字状とはなっているが概ね平板にも近いので押し倒される過程でより平板状になろうとするものの、傾動時に最も変形するのは屈曲部位51bである。屈曲部位51bはアダプタハウジング20の下壁縁部から離れるように湾曲してから同下壁縁部の前方を回り込むように湾曲しているので、遮蔽部位51cが押し倒されるときに屈曲部位51bは下壁縁部の前端の下面に近づくように引っ張られつつ下壁縁部の前端付近で奥側に向かうように撓められる。しかし、もともと同屈曲部位51bはアダプタハウジング20の下壁縁部を避けて回り込むように形成されているため、屈曲部位51bにおける一連の変形時にも屈曲部位51bの変形を同下壁縁部が妨げにくくなっている。この結果、シャッタ片51が湾曲するときに一部がアダプタハウジング20に当接して応力が集中することを防ぐことで、局部的に屈曲されることによるシャッタ片51の復元性の低下を防止できる。
【0042】
なお、本発明は前記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・スリーブホルダ40は、アダプタハウジング20内のほぼ中央で係合固定されているが、ほぼ中央である必要はない。光コネクタを接続するためのソケット状の器具とする場合には片方の開口側に寄せてある位置であってもかまわない。
・前記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0043】
10…光コネクタアダプタ、20…アダプタハウジング、21…筒体部、21a…係合突起、21a1…垂直面、21a2…水平面、21a3…乗り上げ面、21b…凹み、22…装着金具、23…突起、30…スリーブ、40…スリーブホルダ、41…壁面部、42…筒状部、42a…面取り部、43…コネクタ係合アーム、44…ホルダ係合片、44a…小突起、45…アーム状係合片、45a…小突起、45a1…傾斜面、45a2…垂直面、46…支持凸部、50…シャッタ、51…シャッタ片、51a…支持壁部、51a1…シャッタ片側貫通穴、51b…屈曲部位、51c…遮蔽部位、52…クリップ、52a…押さえ板部位、52a1…クリップ側貫通穴、52b…挟持部。