(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
A01M 29/32 20110101AFI20220802BHJP
【FI】
A01M29/32
(21)【出願番号】P 2018186856
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】592112558
【氏名又は名称】日本安全産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】杉江 荘平
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-038488(JP,A)
【文献】特開2013-165650(JP,A)
【文献】特開2013-165651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00-99/00
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に取り付けられる電線取付部と、該電線取付部に突設された離隔部とを備え、電線取付部を介して電線の長手方向に沿って間隔を空けて複数取り付けられると共に、各々の離隔部の間に電線と平行にライン材を架設して鳥の飛来を防ぐ鳥害防止具であって、
一側に連結部と、他側に被連結部を有しており、一方の鳥害防止具の連結部と他方の鳥害防止具の被連結部とを連結することで複数個の鳥害防止具を連結可能
であるとともに、
前記電線取付部は、本体部と、蓋部とを備え、
本体部は、電線を挿入するための開口部と、該開口部に設けられた軸部とを有しており、
蓋部は、前記軸部において基部を回動自在に軸支されて開口部に対し開閉自在であり、
前記蓋部の前記軸部近傍位置と、前記蓋部の略先部位置と、前記電線取付部の前記本体部のそれぞれ一側位置及び他側位置において、前記連結部と前記被連結部とが設けられていることを特徴とする鳥害防止具。
【請求項2】
前記本体部は係合部を有しており、前記蓋部は、閉状態において前記係合部と係合する被係合部を有していて、前記蓋部の先部と前記被係合部との間には可撓部が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に沿って複数取り付けることで鳥の飛来や営巣を防ぐ鳥害防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハトやカラス等の人間の生活圏に共生した鳥が電線に留まることによって、フンや鳴声による被害が近隣住民に及ぼされていた。また、深刻なケースではフンの付着、あるいは鳥の嘴や足爪によって電線表面を損傷させ、さらには関連機器の故障を引き起こす場合もあった。そこで、電柱間に架設した電線に沿って複数取り付け、各鳥害防止具の間に細いライン材を電線とほぼ平行に取り付けることで、電線上への鳥の立ち止まりを防止する鳥害防止具が知られている。鳥害防止具の電線への取り付け作業は、高所作業車のバケットに乗り込んだ作業者が、ライン材が離隔部に取り付けられ、複数の鳥害防止具がライン材で繋がれた状態の鳥害防止具を、間接活線工具を用いて一つずつ電線に取り付ける作業を行っており、作業効率が悪かった。更に電線に取り付けられていない鳥害防止具は、電線に取り付けられた鳥害防止具とライン材で繋がれたままバケット内に置かれており、電線とバケット内がライン材で繋がった状態となるため、バケット内の作業者が短絡事故の危険を感じることがあった。
【0003】
そこで、特許文献1には、複数の鳥害防止具を連装部材上に脱着可能に取り付けることで電線への鳥害防止具取り付け作業の作業効率を向上させる鳥害防止具が開示されている。しかし、上記特許文献1記載の鳥害防止具は、予め連装部材を準備する必要があり、また、該連装部材に鳥害防止具を取り付ける作業が必要であり、更に、電線への鳥害防止具取り付け作業中に連装部材が落下する危険や、鳥害防止具の電線への取り付け作業後に連装部材を回収する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鳥害防止具の電線に対する取り付け作業の作業性向上、作業性向上に伴う作業者の安全性向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の鳥害防止具は、電線に取り付けられる電線取付部と、該電線取付部に突設された離隔部とを備え、電線取付部を介して電線の長手方向に沿って間隔を空けて複数取り付けられると共に、各々の離隔部の間に電線と平行にライン材を架設して鳥の飛来を防ぐ鳥害防止具であって、一側に連結部と、他側に被連結部を有しており、一方の鳥害防止具の連結部と他方の鳥害防止具の被連結部とを連結することで複数個の鳥害防止具を連結可能であるとともに、前記電線取付部は、本体部と、蓋部とを備え、本体部は、電線を挿入するための開口部と、該開口部に設けられた軸部とを有しており、蓋部は、前記軸部において基部を回動自在に軸支されて開口部に対し開閉自在であり、前記蓋部の前記軸部近傍位置と、前記蓋部の略先部位置と、前記電線取付部の前記本体部のそれぞれ一側位置及び他側位置において、前記連結部と前記被連結部とが設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項2記載の鳥害防止具は、請求項1の鳥害防止具であって、前記本体部は係合部を有しており、前記蓋部は、閉状態において前記係合部と係合する被係合部を有していて、前記蓋部の先部と前記被係合部との間には可撓部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、鳥害防止具の連結部を、それぞれ隣接する鳥害防止具の被連結部と連結することで、複数の鳥害防止具を同時に電線に取り付け可能であるので、作業性に優れる。また、鳥害防止具同士がライン材によって繋がれていても、電線とバケット内がライン材で繋がれた状態を回避できるため、安全性が向上する。
加えて、電線取付部は、開閉自在な蓋部を有しているので、開口部に電線を挿入した後、該蓋部を回動させ閉状態にすることで電線からの鳥害防止具の落下を防止できる。
更に、蓋部の軸部近傍付近と、前記蓋部の略先部付近と、電線取付部の本体部の一側位置及び他側位置に連結部と被連結部の対がそれぞれ設けられているので、複数の鳥害防止具を連結する際に、隣接する鳥害防止具の蓋部の軸部近傍付近の連結部と被連結部とを連結し、蓋部の略先部付近の連結部と被連結部とを連結し、電線取付部の本体部の連結部と被連結部とを連結することで、蓋部に加え各鳥害防止具の電線取付部も互いに一体化され連動するようになるので、電線への取り付け時に連結した蓋部全体を一度の回動作業で閉状態にすることが可能であり、作業性に優れる。
また、電線への取り付け時に蓋部の回動につられて電線取付部が回動したとしても、連結した全ての電線取付部が一体となって回動することにより、各々の鳥害防止具の角度調整作業が不要であり作業性に優れる。
【0011】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、本体部に係合部を有し、蓋部に閉状態において前記係合部と係合可能な被係合部を有していることで、電線取付部の開口部に電線を挿入した後、蓋部を回動させ閉状態とし、更に本体部の係合部と蓋部の被係合部を係合させることによって蓋部を閉状態に固定できるので、鳥害防止具の電線からの落下を確実に防止できる。
更に、蓋部の先部と被係合部との間に可撓部を設けたことによって、複数個の鳥害防止具を連結した状態においても、可撓部が変形することで本体部の係合部と蓋部の被係合部を一箇所ずつ係脱可能であり、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】電線に取り付けられた鳥害防止具の側面図である。
【
図6】蓋部の(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は(a)のB-B線縦断面図である。
【
図9】(a)(b)(c)は連結した鳥害防止具の電線への取付手順を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
本実施による鳥害防止具10は、
図4のように電線Dに脱着可能に取り付けられる側面視略コの字状の電線取付部1と、ライン材を保持するために該電線取付部1の略上端部に突設された離隔部2と、間接活線工具により鳥害防止具10を保持するための把持部9から構成されている。なお、以下において前後とは
図4に示す通りとする。また、上下とは
図4における上下とする。さらに左右とは
図1に示す通りとする。離隔部2は、前側に開口した凹部であるライン材受け部2aと、ライン材押さえ部2bを上下に間隔を空けて2対備えており、ライン材押さえ部2bがライン材受け部2aの開口部に係合することで、ライン材受け部2aに挿入されたライン材が保持される。この鳥害防止具10は、電線取付部1を介して電線Dの長手方向に沿って間隔をあけて複数取り付け、各鳥害防止具10の略鉛直に設置された離隔部2のライン材受け部2aにライン材を固定することで、各鳥害防止具10の離隔部2の間にライン材を架設して使用するものである。また、ライン材は、本実施形態では繊維を束ねるとともに表面に樹脂被覆を施したものを使用し、絶縁性と引っ張り張力、剪断耐力を有するものが使用されている。把持部9は、鳥害防止具10の電線取り付け作業を行う際に把持される略平板状の垂下片であり、作業者は、把持部9を間接活線工具で把持して作業を行う。該把持部9は、離隔部2と略直線状になるように鳥害防止具10の下部に設けられており、電線取付部1は、略直線状の離隔部2と把持部9に対して、電線取付部1の下部が把持部9よりも前側に位置するように傾斜して設けられている。
【0016】
電線取付部1は、
図1及び
図3及び
図5のように、略コの字形の本体部1cと電線Dを挿入するため前側に開口した開口部1aと、該開口部1aの上端部に
図1のように略水平に設けられた軸部1bと、前記軸部1bにおいて基部を回転自在に軸支され、開口部1aに対し開閉自在である略平板状の蓋部3と、該蓋部3を開口部1aを塞いだ閉状態に固定するための係合部4とを備えている。蓋部3は、
図6のように、基部には電線取付部1の軸部1bに回動自在に軸支されている軸受部3aを有していて、先部には前記係合部4と係合する孔状の被係合部5を有している。また、蓋部3は、
図5のように開口部1aへの電線Dの挿入を妨げない角度まで開くことができ、また、軸部1bと軸受部3aとの間の摩擦力によって、蓋部3の自重による重力程度の力では蓋部3は回動せず、開状態を維持することができる。また、蓋部3の閉状態においては、蓋部3が開口部1aを塞いだ状態で前記係合部4と蓋部3に設けられた被係合部5が係合することにより、
図1乃至
図4のように蓋部3の閉状態が保持される。
電線取付部1は、
図1乃至
図5のように電線Dの上側やや後方を保持する受け部6と、電線Dを下側やや前方から押圧保持する締付部7とを備えている。該締付部7はナット部8を回転することで受け部6に近付く方向あるいは、受け部6から遠ざかる方向に移動する機構を備えており、ナット部8は該締付部7の下方において、ナット部8の下端が上端よりも前側に位置するように傾斜して設けられている。また、受け部6の電線Dとの接触面は、電線Dの受け部6での保持力を高める目的で複数の凹部が設けられており、更に締付部7の電線Dとの接触面は、締付部7がナット部8の回転で移動する際に、電線Dが締付部7の前側や後側に移動しないようにV字形状となっている。
図5の状態の電線取付部1の開口部1aに電線Dを挿入した後、電線Dの上側が受け部6に保持され電線Dの下側が締付部7で押圧保持される位置、すなわち、
図4の状態になるまでナット部8を回転させて締付部7を受け部6方向に移動させることで受け部6と締付部7の間に電線が保持され、電線Dに電線取付部1が回動及び移動不能に固定される。
【0017】
係合部4は
図7のように、締付部7の下側に設けられており、係合部4は、ナット部8の上方に固定されている係合部本体4bと、係合部本体4bの上面から前方へと延出するように設けられた係合爪4aを有しており、係合爪4aの上面には突起部4cが設けられ、突起部4cの後ろ側には段差部4dが設けられている。蓋部3の被係合部5は、該係合爪4aとスナップフィット係合可能な貫通孔である。蓋部3を閉状態になる方向に回動すると、まず、該被係合部5に係合爪4aと係合部本体4bが挿入される。更に蓋部3を前方から押すことによって、被係合部5は、該被係合部5の上端部で係合爪4aを上から押さえ係合爪4aを撓ませながら挿入される。そして被係合部5の上端部が突起部4cを越え、段差部4dの位置になるまで挿入されると、突起部4cが被係合部5の上端部に係合し、係合部4と被係合部5はスナップフィット係合される。蓋部3の閉状態において、該係合爪4aが該被係合部5にスナップフィット係合することにより蓋部3の閉状態が保持される。また、係合爪4aと被係合部5が係合し、蓋部3が閉状態で保持された状態において、係合爪4aの先部は蓋部3の被係合部5から前方に突出している。係合爪4aの先部が被係合部5から前方に突出していることにより、この係合爪4aの先部を外部から操作することが可能となり、係合爪4aの先部を押し下げることにより係合爪4aと被係合部5のスナップフィット係合を解除することが可能となる。
【0018】
図1乃至
図5に示すように電線取付部1の本体部1cの下端部付近の右側には、略中心部に略円柱状の孔部を有する略円筒状の第一被連結部11bが本体部1cから右側に突出する方向に設けられており、更に、該部位の左側には略丸棒状の第一連結部11aが左側に突出して設けられている。第一連結部11aの外径は、第一被連結部11bの孔部の内径と同じか、やや大きくなっており、第一連結部11aが第一被連結部11bの孔部に挿入されることで第一連結部11aと第一被連結部11bとが脱着可能に係合される。また、本体部1cの中心部よりもやや下側の位置の右側には、略中心部に略円柱状の孔部を有する略円筒状の第二被連結部12bが本体部1cから右側に突出する方向に設けられており、更に、該部位の左側には略丸棒状の第二連結部12aが左側に突出して設けられている。第二連結部12aの外径は、第二被連結部12bの孔部の内径と同じか、やや大きくなっており、第二連結部12aが第二被連結部12bの孔部に挿入されることで第二連結部12aと第二被連結部12bとが脱着可能に係合される。
【0019】
図6に示すように蓋部3の先端部には棒状部3bが略水平に設けられており、棒状部3bの右端に略丸棒状の第三連結部31aが設けられており、棒状部3bの左側部分には左側に開口した略円柱状の孔部である第三被連結部31bが設けられている。第三連結部31aの外径は、第三被連結部31bの孔状部の内径と同じか、やや大きくなっており、第三連結部31aが第三被連結部31bの孔部に挿入されることで第三連結部31aと第三被連結部31bとが脱着可能に係合される。また、蓋部3の軸受部3aの右端には第四連結部32aが設けられ、該軸受部3aの左側には第四被連結部32bが設けられており、
図6(c)に示す第四連結部32aの凸部が、第四被連結部32bの凹部に挿入されスナップフィット係合することで第四連結部32aと第四被連結部32bは脱着可能に係合される。また、蓋部3の棒状部3bと被係合部5の間には、可撓部33が設けられている。可撓部33は、可撓部33より上部の蓋部3の各部位よりも幅が狭い樹脂製部材で構成されていることで可撓性を有しており、蓋部3の他の部位よりも変形が容易となっている。蓋部3に可撓部33が設けられていることで、
図1乃至
図5のように蓋部3の軸受部3aが電線取付部1の軸部1bに固定されていても、可撓部33が変形することによって棒状部3bは蓋部3の左右中心線を軸として回転方向に変形することが可能となっている。
【0020】
次に本発明の鳥害防止具10を連結する手順について説明する。まず、
図5のように蓋部3を開口部1aへの電線Dの挿入を妨げない程度の開状態とし、開口部1aの開口径が電線Dの直径よりも大きくなる位置に締付部7を位置させた鳥害防止具10a~10eを準備する。次いで、鳥害防止具10aの右側に該鳥害防止具10aと連結する鳥害防止具10bを、鳥害防止具10aと鳥害防止具10bに設けた4箇所の連結部と被連結部とがそれぞれ当接する位置、すなわち、鳥害防止具10aの第一被連結部11bの孔部と鳥害防止具10bの第一連結部11aの先端が当接し、鳥害防止具10aの第二被連結部12bの孔部と鳥害防止具10bの第二連結部12aの先端が当接し、鳥害防止具10aの第三連結部31aの先端と鳥害防止具10bの第三被連結部31bの孔部が当接し、鳥害防止具10aの第四連結部32aの凸部と鳥害防止具10bの第四被連結部32bの凹部が当接する位置に鳥害防止具10aと鳥害防止具10bを並べる。その後、並べた鳥害防止具10aと鳥害防止具10bの各本体部1cを左右から挟むように押さえることで、鳥害防止具10bの第一連結部11aが鳥害防止具10aの第一被連結部11bの内部に挿入されて係合され、鳥害防止具10bの第二連結部12aが鳥害防止具10aの第二被連結部12bの内部に挿入されて係合され、鳥害防止具10aの第三連結部31aが鳥害防止具10bの第三被連結部31bに挿入されて係合され、鳥害防止具10aの第四連結部32aが鳥害防止具10bの第四被連結部32bに挿入されて係合し、鳥害防止具10aと鳥害防止具10bに設けた計4箇所の連結部、被連結部が脱着可能に係合されることで鳥害防止具10aと鳥害防止具10bとが連結される。
尚、鳥害防止具10aの第三連結部31aと鳥害防止具10bの第三被連結部31bの係合のみ、蓋部3の先部に設けた可撓部33の変形の影響で鳥害防止具10aと鳥害防止具10bの各本体部1cを左右から挟むように押さえるという方法で係合出来ない場合があるが、その場合は、鳥害防止具10aと鳥害防止具10bの各本体部1cを左右から挟むように押さえた後、別途、鳥害防止具10aと鳥害防止具10bの各々の蓋部3の棒状部3bを左右から挟むように押さえ、鳥害防止具10aの第三連結部31aと鳥害防止具10bの第三被連結部31bを係合させる。
次いで、鳥害防止具10cを前記鳥害防止具10bの右側に並べ前記同様の手順で鳥害防止具10bに連結し、更に、鳥害防止具10d、10eと同じ手順を繰り返すことで
図8のように鳥害防止具10a~10eが連結され、それぞれの蓋部3が互いに連結されて一体化した蓋部群Bを備えた鳥害防止具群Aとすることができる。
【0021】
次いで連結した鳥害防止具10を電線Dに取り付ける手順について
図8の鳥害防止具群Aを電線Dに取り付ける場合を例として
図9にて説明する。尚、各鳥害防止具10は、電線Dへの取り付け前に離隔部2にライン材が取り付けられているが、
図9では、該ライン材を省略している。また、各作業は、高所作業車のバケットから、作業者が間接活線工具を用いて実施しているが、
図9では間接活線工具を省略している。
鳥害防止具群Aのうち、真ん中に位置する鳥害防止具10cの把持部9を間接活線工具で把持し、鳥害防止具群Aの前方から電線Dに近づけ、開口部1aに電線Dを挿入し、次いで、
図9(b)のように鳥害防止具群Aの受け部6を電線Dの上側に当接させる。
図9(b)の状態で鳥害防止具10cの把持部9を把持している間接活線工具とは別の間接活線工具を用いて、蓋部群Bの先部等を操作し、蓋部群Bを蓋部群Bが閉状態になる方向に回動させ、蓋部群Bを閉状態にし、次いで、蓋部群Bのうち、鳥害防止具10eの蓋部3のみを前方から押さえ、鳥害防止具10eの本体部1cに設けた係合部4と鳥害防止具10eの蓋部3に設けた被係合部5を係合させることで鳥害防止具10eの蓋部3を閉状態に保持する。次いで、鳥害防止具10d、鳥害防止具10c、鳥害防止具10b、鳥害防止具10aの各々の蓋部3を前方から押さえることで各鳥害防止具10の蓋部3の被係合部5と本体部1cの係合部4を順次係合させていくことで、
図9(c)のように鳥害防止具群Aの電線取付部1に電線Dが挿入され、蓋部群Bが閉状態で保持された状態となる。
【0022】
次いで、鳥害防止具10aの離隔部2が略垂直となるように該鳥害防止具10aの把持部9を間接活線工具で把持しながら、該鳥害防止具10aのナット部8を別の間接活線工具で回転することによって該鳥害防止具10aの締付部7を該鳥害防止具10aの受け部6方向に移動させ、電線Dを該鳥害防止具10aの受け部6と該鳥害防止具10aの締付部7の間で押圧保持することで電線Dに鳥害防止具10aを固定する。次いで、鳥害防止具10bの把持部9を間接活線工具で把持し、右方向に鳥害防止具10bを動かすことで、鳥害防止具10aと鳥害防止具10bの間の四箇所の連結部と被連結部の係合を解除し、電線に固定された鳥害防止具10aと、電線に固定されておらず各々が連結された鳥害防止具10b~10eからなる鳥害防止具群とに分割する。その後、鳥害防止具10b~10eからなる鳥害防止具群を、鳥害防止具10aの離隔部2と鳥害防止具10bの離隔部2の間のライン材が張った状態になるまで右方向に動かす。なお、以降の鳥害防止具10bから鳥害防止具10eの電線への取り付け作業は、上記鳥害防止具10aに対する作業手順と同様にして行う。
以上の作業により鳥害防止具10aから鳥害防止具10eの各々の離隔部が略鉛直且つ、各離隔部間にライン材が架設された状態となり、電線への取り付けが完了する。
【0023】
次いで本発明の作用効果について説明する。本発明の鳥害防止具10は、
図1乃至
図5に示すように、電線取付部1の本体部1cの一側には、第一連結部11aと第二連結部12aを備え、本体部1cの他側には、第一被連結部11bと第二被連結部12bを備えている。また、
図1乃至
図6に示すように、蓋部3の棒状部3bの一側には第三連結部31aを備え、蓋部3の棒状部3bの他側には第三被連結部31bを備えており、更に、蓋部3の軸受部3aの一側には第四連結部32aを備え、蓋部3の軸受部3aの他側には第四被連結部32bを備えている。鳥害防止具10に設けた第一連結部11a、第二連結部12a、第三被連結部31b、第四被連結部32bと、該鳥害防止具10と隣接した鳥害防止具10の第一被連結部11b、第二被連結部12b、第三連結部31a、第四連結部32aとを各々連結していくことで
図8のように複数個の鳥害防止具10を連結することが可能となる。このように連結したことにより、
図9に手順を示したように、複数の鳥害防止具10の電線Dへの取り付けを同時に実施出来るので鳥害防止具10の電線取り付けの作業性が向上する。また、離隔部2にライン材が取り付けられた鳥害防止具10を連結し、該ライン材で繋がれた全ての鳥害防止具10を同時に電線に取り付けることで、電線Dと高所作業車のバケット内がライン材で繋がれる状態が回避され安全性が向上する。
【0024】
また、鳥害防止具10の蓋部3の棒状部3bの一側に設けた第三連結部31aと該鳥害防止具10と隣接する鳥害防止具10の蓋部3の棒状部3bの他側に設けた第三被連結部31bとを連結することによって、連結された蓋部3の軸部1b支点での回動が連動するようになる。蓋部3が連動することによって、
図8乃至
図9のように複数の鳥害防止具10が連結された状態であっても、各鳥害防止具10の蓋部3を個別に開閉する動作が不要となり、
図9(b)から
図9(c)に示したように一度の回動作業で連結した蓋部3全体を閉状態にすることが可能となり作業性が向上する。
【0025】
更に、
図8乃至
図9に示すように、本発明の鳥害防止具10は、鳥害防止具10の蓋部3の棒状部3bの一側に設けた第三連結部31aと該鳥害防止具10と隣接する鳥害防止具10の蓋部3の棒状部3bの他側に設けた第三被連結部31bの連結に加え、鳥害防止具と該鳥害防止具と隣接する鳥害防止具の、蓋部3の軸受部3aに設けた第四連結部32aと第四被連結部32bを連結し、更に、本体部1cに設けた第一連結部11aと第一被連結部11b、第二連結部12aと第二被連結部12bとを各々連結している。蓋部3の棒状部3bと軸受部3aの二箇所で複数個の鳥害防止具10を連結した場合には、蓋部3を開閉する際に各々の鳥害防止具10が蓋部3の回動につられて電線に対しばらばらに回動する。例えば、
図9(b)の状態から蓋部群Bを開口部1aを閉じる方向に回動させた結果、鳥害防止具10cは、
図9(b)の状態でとどまり、鳥害防止具10eは、離隔部2が前側に倒れこんだ角度となった場合、鳥害防止具10cはその蓋部3を閉じることが出来ても、鳥害防止具10eはその蓋部3を閉じることが出来ないという状況が発生する。このように連結された複数の鳥害防止具10の電線D上での設置角度が異なると、連結した蓋部3を一度に閉じることが出来なくなり、連結した蓋部3を一度に閉じるには各鳥害防止具10の電線D上での設置角度を揃える作業が必要となる。しかし、本発明のように、複数の鳥害防止具10を連結する際に、蓋部3先部の連結と軸受部3aの連結に加え、電線取付部1の本体部1cを連結すると、蓋部3の回動につられて鳥害防止具10が回動したとしても、連結した全ての鳥害防止具が一体となって回動し、各鳥害防止具の電線D上での設置角度は同じとなり、各鳥害防止具10の角度調整作業が不要となり作業性が向上する。
【0026】
また、本発明の鳥害防止具10は、
図1乃至
図5に示したように本体部1cに係合部4を有し、
図1乃至
図6に示したように蓋部3に係合部4と係合可能な被係合部5を有していることで、
図5の蓋部3の開状態から、蓋部3を回動させ閉状態とし、更に蓋部を前方から押さえ、係合部4と被係合部5を係合させることで
図1乃至
図4のように蓋部3を閉状態に固定できる。また、
図6に示したように蓋部3の先部の棒状部3bと被係合部5の間に可撓部33を設けたことで、
図9(b)から
図9(c)に示すように複数の蓋部3を連結した蓋部群Bを閉状態に固定する場合であっても、本体部1cの係合部4と蓋部3の被係合部5を鳥害防止具毎に一箇所ずつ係合することが可能となる。詳しくは、仮に鳥害防止具が可撓部33を有しない場合には、複数個の鳥害防止具10を蓋部3先部の棒状部3b及び蓋部3の軸受部3a及び電線取付部1の本体部1cで連結すると、連結された複数の蓋部3は連動し一体となって動作し、連結された蓋部3を開口部1aを閉じる方向に回動させ更に前方から押さえると、連結された個数分の係合部4と被係合部5の組み合わせを一度に、同時に係合しようとする。実際の作業は、高所作業車のバケットから作業者が間接活線工具を用いて行っており、不安定且つ遠隔操作での作業であるため、複数個の係合部を一度に係合するだけの力を加えることが困難であり、更に、間接活線工具では連結されて横幅が広くなった蓋部3の全体に均等に力を加えることが困難であるため、連結された蓋部3を閉状態で固定出来ないという状況が発生する。このように連結された蓋部3が閉状態で固定されない状況が継続されることによって、連結された鳥害防止具10が電線Dから落下する危険性がある。これに対し本発明の鳥害防止具10は、
図6に示したように蓋部3先部の棒状部3bと被係合部5の間に可撓部33を設け変形可能とすることで、連結された複数の鳥害防止具10の全ての係合部を一度に閉じようとする動作が可撓部33の変形によって解消される。
例えば、
図9(b)から
図9(c)で示したように蓋部群Bのうち鳥害防止具10eの蓋部3のみを前方から押さえ、鳥害防止具10eの本体部1cに設けた係合部4と鳥害防止具10eの蓋部3に設けた被係合部5とが係合可能な位置まで鳥害防止具10eの蓋部3の被係合部5が係合爪4aに挿入されたとしても、可撓部33の変形によって各鳥害防止具10の蓋部3の棒状部3bが蓋部3の左右中心線を軸として回転することで、鳥害防止具10eの左側に位置する鳥害防止具10dの蓋部3の被係合部5は、鳥害防止具10eの蓋部3の被係合部5よりも前側に位置することが可能となり、鳥害防止具10dの本体部1cに設けた係合部4と鳥害防止具10dの蓋部3に設けた被係合部5とは係合されない。鳥害防止具10a~10cの被係合部5も同様に、鳥害防止具10eの被係合部5よりも前側に位置する関係となることにより、鳥害防止具10eの係合部4と鳥害防止具10eの被係合部5のみが係合されることになる。このように、連結された鳥害防止具10であっても、本体部1cの係合部4と蓋部3の被係合部5を一箇所ずつ係合可能とすることで、複数箇所を同時に係合するよりも小さな力で蓋部を閉状態に固定することが可能となり作業性が向上すると共に、一箇所でも蓋部が閉状態で固定されることによって連結された鳥害防止具10全体の落下も防止され安全性が向上する。なお同様に、係合部4と被係合部5の係合を解除する場合にも各鳥害防止具10毎に独立して係合解除が可能であり、作業性に優れる。
【0027】
本発明は、上記の実施形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形可能であり、鳥害防止具の各部の形状、大きさ、厚さ等は適宜変更できる。例えば、連結部、被連結部を設ける位置や、その個数は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。また、連結される鳥害防止具は、全て同じ形状、構造である必要は無く、例えば、受け部と締付部が具備されていない鳥害防止具に連結部と被連結部を設けて、該鳥害防止具同士を連結させても良いし、該鳥害防止具と受け部と締付部が具備された鳥害防止具とを連結させても良い。また、鳥害防止具の連結方法も、例えば2個連結した鳥害防止具を2組作り、その2組を連結し4個連結させるなど各種方法が選択可能であり、連結個数も適宜選択可能である。更に、蓋部の先部と被係合部の間を可撓部にする方法も、蓋部全体を可撓性の材質で構成しても良いし、蓋部の先部から被係合部の間だけ可撓性の材質で構成するという方法も可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 電線取付部
1a 開口部
1b 軸部
1c 本体部
11a 第一連結部
11b 第一被連結部
12a 第二連結部
12b 第二被連結部
2 離隔部
2a ライン材受け部
2b ライン材押さえ部
3 蓋部
3a 軸受部
3b 棒状部
31a 第三連結部
31b 第三被連結部
32a 第四連結部
32b 第四被連結部
33 可撓部
4 係合部
4a 係合爪
4b 係合部本体
4c 突起部
4d 段差部
5 被係合部
6 受け部
7 締付部
8 ナット部
9 把持部
10、10a~10e 鳥害防止具
A 鳥害防止具群
B 蓋部群
D 電線