(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】プラズマ技術を用いた自立型2次元ナノ構造体の製作のためのプロセス、リアクタおよびシステム
(51)【国際特許分類】
C01B 32/186 20170101AFI20220802BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20220802BHJP
C01B 21/064 20060101ALI20220802BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C01B32/186
B01J19/12 C
C01B21/064 J
B01J19/08 K
B01J19/08 H
(21)【出願番号】P 2018559963
(86)(22)【出願日】2017-05-11
(86)【国際出願番号】 PT2017000007
(87)【国際公開番号】W WO2017196198
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-20
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】518397858
【氏名又は名称】インスティツト スーペリア テクニコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タタロバ,エレナ ステファノバ
(72)【発明者】
【氏名】エンリケス ドス サントス デュアルテ ビエイラ,ジュリオ パウロ
(72)【発明者】
【氏名】アルベス ダ モタ キャピタオ レモス,ルイス パウロ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンキャルベス ソアレス,ブルノ ミグエル
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/189643(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0301212(US,A1)
【文献】特開平01-315140(JP,A)
【文献】特開平10-007409(JP,A)
【文献】特開昭60-117711(JP,A)
【文献】特表2014-528897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02、
14/00-19/32
C01B 32/00-32/991、
15/00-23/00
H05H 1/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンを生成するためのプロセスであって、(a)少なくとも1種の不活性ガスとグラフェンの少なくとも1種の前駆体との混合物の流れを生成させ、
(b)マイクロ波プラズマによって、前の工程の前記流れの前記前駆体をその原子および分子成分に分解し、
(c)前の工程で形成された前記原子および分子成分を赤外線放射に曝し、続いて、
(d)前記原子および分子成分の核生成から生じる前記ナノ構造体を回収する、
工程を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
工程c)において、前記原子および分子成分を紫外線に供することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記紫外線が、50W~3000Wを含む電力範囲で動作する紫外線放射源によって発生されることを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程(a)と工程(b)との間に、40~220℃に含まれる温度範囲で動作する冷却装置によって前記流れを冷却することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
工程(a)で生成された前記流れが、4.2×10
-6~8.3×10
-4m
3/sに含まれる流量を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(a)の前記混合物の前記不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記前駆体は、メタン、エチレン、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、アセチレン、ジボラン、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム、窒素およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記マイクロ波プラズマが、100W~60000Wの電力範囲で動作するマイクロ波源によって発生されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記赤外線放射が、50W~3000Wに含まれる電力範囲で動作する赤外線放射源(11)によって発生されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
グラフェンを生成するための
システムであって、
中空本体(1)を有するマイクロ波プラズマリアクタ
を備え、前記中空本体(1)は、
・プラズマ生成表面波発射部(19)、
・前駆体成分核生成部(21)、および、
・前記
プラズマ生成表面波発射部(19)および前記
前駆体成分核生成部(21)にそれぞれ接続された第1の端部と第2の端部とを有し、これらの部分(19、21)の間に流体連通をもたらす過渡部(20)、
を含み、
前記部分(19、20、21)は、前記中空本体(1)内に動作の3つの内側ゾーン(19’、20’、21’)をそれぞれ画定し、前記過渡部(20)の前記第1の端部は、前記第2の端部の断面積よりも小さい断面積を有
しており、
前記システムは、前記中空本体(1)の前記前駆体成分核生成部(21)によって画定された前記内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、少なくとも、前記中空本体(1)の外側にある1つの赤外線放射源(11)をさらに備える、
ことを特徴とする
システム。
【請求項10】
前記過渡部(20)の前記断面積が、その第1の端部からその第2の端部に漸次増加することを特徴とする、請求項9に記載の
システム。
【請求項11】
前記部分(19、20、21)が互いに一体に接続されて単一部分を形成していることを特徴とする、請求項9または10に記載の
システム。
【請求項12】
その中空本体(1)が、石英、サファイア、アルミナおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される誘電体材料によって形成されることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の
システム。
【請求項13】
その中空本体(1)が、少なくとも1種の不活性ガスと少なくとも1種の前駆体との混合物の入口部(8)をさらに含み、前記入口部(8)は、前記
プラズマ生成表面波発射部(19)に一体化されているか、前記
プラズマ生成表面波発射部(19)に接続部を介して取り付けられていることを特徴とする、請求項9~12のいずれか一項に記載の
システム。
【請求項14】
グラフェンを生成するためのシステムであって、
・少なくとも表面波発射部(19)、プラズマ形成過渡部(20)、および前駆体成分の核生成部(21)を含む中空本体(1)を有するマイクロ波プラズマリアクタであって、前記部分(19、20、21)が、相互に流体連通して連続的に接続された、動作の3つの内側ゾーン(19’、20’、21’)を前記マイクロ波プラズマリアクタに各々画定するマイクロ波プラズマリアクタを含み、
・前記中空本体(1)の前記核生成部(21)によって画定された前記内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、前記中空本体(1)の外側にある1つの赤外線放射源(11)を少なくともさらに含む、ことを特徴とするシステム。
【請求項15】
前記中空本体(1)の外側に冷却装置(10)をさらに含み、前記冷却装置(10)は、少なくとも前記中空本体(1)の前記核生成部(21)によって画定された前記内側ゾーン(21’)を冷却するよう配置されることを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記冷却装置(10)は、40~220℃に含まれる温度範囲で動作可能であることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
少なくとも前記中空本体(1)の前記核生成部(21)によって画定された前記内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、前記中空本体(1)の外側にある紫外線放射源をさらに含むことを特徴とする、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項18】
前記中空本体(1)の前記部分(19、20、21)が互いに一体に接続されて単一部分を形成していることを特徴とする、請求項14~17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記中空本体(1)が、石英、サファイア、アルミナおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される誘電体材料で形成されていることを特徴とする、請求項14~18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記中空本体(1)の外側にある冷却装置(10)をさらに含み、前記冷却装置(10)が、少なくとも、前記中空本体(1)の前記過渡部(20)によって画定されている前記内側ゾーン(20’)を冷却するように配置されていることを特徴とする、請求項
9から13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記冷却装置(10)は、40~220℃に含まれる温度範囲で動作可能であることを特徴とする、請求項
20に記載のシステム。
【請求項22】
少なくとも前記中空本体(1)の前記
前駆体成分核生成部(21)によって画定された前記内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、前記中空本体(1)の外側にある紫外線放射源をさらに含むことを特徴とする、請求項
20または
21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、プラズマ技術、特にマイクロ波プラズマを用いた自立型2次元ナノ構造体の選択的製造のためのプロセスおよびリアクタおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、新たな2次元ナノ構造体の開発は、より大きな需要をもたらし、そのためより大きな戦略的価値をもたらす科学技術研究分野の1つと考えられている。
【0003】
グラフェンは、数多くの科学的および工学的分野における応用の潜在可能性があり、多くの驚異的な特性を有するため、需要が増加している2次元(カーボンベース)ナノ構造体の最も顕著な例である。
【0004】
しかし、グラフェンの機械的、光学的、および電気的性能は、その構造特性、すなわち単層の数(その成長は望ましい量子力学的特性を制限する)、sp3炭素の存在、欠陥などの構造特性に極めて依存する。
【0005】
現在、グラフェンの生成に使用されるプロセスは、2つの異なるアプローチの1つに基づいており、それらは以下で、「トップダウン」または「ボトムアップ」と呼ばれる。
【0006】
最高品質のグラフェンは、高度に配向した熱分解グラファイトを機械的に剥離することによって得ることができるが、このプロセスは「トップダウン」アプローチの最も一般的な例と考えることができる。しかし、このプロセスは、工業用途の基準レベル(約1g/h)と比較して、比較的生産速度(約1mg/h)が低い。
【0007】
グラファイトから酸化グラフェンを生成し、続いて酸化グラフェンを熱還元することは、「トップダウン」生成戦略の第2の例であり、これは一際高い生産速度(1g/h超)を有するにもかかわらず、非常に欠陥の多い生成物が得られる(非特許文献1)。
【0008】
「ボトムアップ」アプローチには、とりわけ、エピタキシャル成長、化学蒸着(CVD)および炭化ケイ素基板の真空グラファイト化が含まれる。これらの技術は、遷移金属からの干渉によるナノ構造体特性の劣化、高価な触媒(Fe、Co、Cu、Niなど)の使用の必要性、非常に高い処理温度、生成工程の長さと複雑さ、有害化学物質の使用、とりわけナノ構造体の組み立てプロセスに対する非常に限られた制御などのいくつかの欠点を呈する(非特許文献2)。
【0009】
したがって、既存の技術は、工業的用途に適した生産速度を確保しながら、予め規定され、十分に制御された物理化学的および構造的特性の2次元ナノ構造体を提供することはまだできていない。
【0010】
従来の制約に対して、最先端の「ボトムアップ」アプローチは、一般に、意図した用途の成功を制限する可能性がある、固体表面から成る基板の使用を必要とするということが付け加えられるべきである。
【0011】
例えば、エネルギー貯蔵および変換装置または新しい複合材料の創出を目的とする場合、自立型グラフェン構造体(すなわち、支持基板なし)の使用は、水平グラフェン、および基板によって支持されたグラフェン(グラフェンシートの一方の面が、固体の基板表面に埋め込まれている)の代わりとしてより魅力的である。
【0012】
実際には、自立型グラフェンは、応用という点では、両面と少なくとも3つの開放端を使用できる明らかな利点があるが、基板結合型グラフェンは1つの面のみを使用する。
【0013】
近年、マイクロ波プラズマは、多くの分野で注目されている多数の自立型ナノ構造体を生成する「エアロゾル・スルー・プラズマ」技術(「ボトムアップ」アプローチ)で使用されており(特許文献1)、その自立型ナノ構造体はグラフェン(非特許文献3)を含む。
【0014】
非特許文献4の研究では、3次元の材料や基板を使用する必要なく、自律的にグラフェンを生成することが可能であることが証明されている。
【0015】
しかし、この研究は、他の前述の制約、すなわち、生成されたナノ構造体が低純度で、その一部のみが2つまたは3つの炭素層により構成されたグラフェンシートである(残りのものは他の炭素同素体に対応している)こと、および低生産速度(約1mg/h)であることを維持しているという点を強調すべきである。
【0016】
生成された2次元ナノ構造体の原子単層数および構造的な質(欠陥、不純物など)を制御するために、決定論的な最終生成物を選択することができる新規なマイクロ波プラズマアシストプロセスが提案された。
【0017】
自立型グラフェンシートを生成するために使用されたこのプロセスは、エタノールの分解が起こるマイクロ波アルゴンプラズマを通して、エタノールのような液体前駆物質を注入することに基づいている。プラズマによって気相で生成された炭素原子および分子は、系のより低温の領域に拡散し、固体炭素核に凝集する。
【0018】
プロセスは非特許文献5、非特許文献6の研究で説明されている。
【0019】
これらの研究は、市場で入手可能であるグラフェン材料に匹敵する高い構造的な質(1~3原子層)を有するが、自立しているという利点、すなわち前述したように支持基板を持たないという利点があるグラフェンシートを生成することを可能にし、異なる炭素同素体(生成された全ナノ構造体の約30%に限定される)の同時生成の問題を部分的に解決している。
【0020】
しかし、これらの提案は、約0.5mg/hの低グラフェン生成速度、および酸素を組み込んで生成された得られた生成物の比較的低い純度レベルなどの上記の他の問題を解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【非特許文献】
【0022】
【文献】S.Mao,H.Pu,J.Chen,’’Graphene oxide and its reduction:modeling and experimental progress’’2012 RSC Adv.progress 2 2643
【文献】E.Tatarovaら,’’Plasmas for Environmental Issues:From hydrogen production to 2D materials assembly’’2014 Plasma Sources Sci.Technol.23 063002-063054
【文献】J.Phillips,C.C.Luhrse,M.Richard2009IEEETrans.Plasma Sci.37 726
【文献】Datoら,’’Substrate-Free Gas-Phase Synthesis of Graphene Sheets’’2008Nano Letters8 2012
【文献】E.Tatarova,J.Henriques,C.C.Luhrs,A.Dias,J.Phillips,M.V.Abrashev,C.M.Ferreira,’’Microwave plasma based single step method for free standing graphene synthesis at atmospheric conditions’’2013 Appl.Phys.Lett.103 134101-5
【文献】E.Tatarova,A.Dias,J.Henriques,A.M.Botelho do Rego,A.M.Ferraria,M.V.Abrashev,C.C.Luhrs,J.Phillips,F.M.Dias,C.M.Ferreira,’’Microwave plasmas applied for the synthesis of free standing graphene sheets’’2014 J.Phys D:Appl.Phys.47 385501-512
【発明の概要】
【0023】
したがって、先行技術の上記の問題を解決する自立型2次元ナノ構造体の生成のためのプロセスおよびリアクタおよびシステムの必要性が存在する。
【0024】
特に自立した2次元ナノ構造体の生成プロセス、およびそれにより得られるナノ構造体のより高い純度レベルならびにより良い工業生産速度を提供することができる、そのプロセスを実施するためのリアクタおよびシステムが当技術分野に必要である。
【0025】
本発明のさらなる目的、利点および機能性は、以下の説明に記載され、自然に開発され、実際に使用されて、改善され得る。
【0026】
本発明の目的は、本発明の特定の実施形態を定義するため従属請求項を用いながら、添付の独立請求項に請求されるプロセス、リアクタおよびシステムによって達成される。
【0027】
本発明は自立型2次元ナノ構造体の生成プロセスであって、以下の工程を含むことを特徴とするプロセス:
(a)少なくとも1種の不活性ガスと少なくとも1種の前駆体との混合物の流れを生成させ、
(b)マイクロ波プラズマによって、前の工程の前駆体をその原子および分子成分に分解し、
(c)前の工程で形成された前駆体成分を赤外線放射に曝し、続いて、
(d)前駆体成分の核生成から生じる前記ナノ構造体を回収する。
【0028】
一実施形態では、本プロセスは、工程c)において前駆体成分を紫外線放射に供する工程をさらに含み、紫外線放射が、50W~3000W、好ましくは100W~2500W、より好ましくは150W~2000W、最も好ましくは200W~1500Wに含まれる電力範囲で動作する紫外線放射源によって発生される。
【0029】
別の実施形態において、本プロセスはさらに、工程(a)と工程(b)との間において、40~220℃、好ましくは40~200℃、より好ましくは40~180℃、最も好ましくは40~150℃に含まれる温度範囲で動作する冷却装置によって前記流れを冷却することを含む。
【0030】
一態様では、工程(a)で生成された当該流れは、4.2×10-6~8.3×10-4m3/s、好ましくは8.3×10-6~3.3×10-4m3/s、より好ましくは1.7×10-5~1.7×10-4m3/sに含まれる流量を有する。
【0031】
別の態様では、工程(a)の混合物の当該不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前駆体は、メタン、エチレン、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、アセチレン、ジボラン、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム、窒素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0032】
当該マイクロ波プラズマは、100W~60000Wの電力範囲で動作するマイクロ波源によって生成される。
【0033】
当該赤外線放射は、50W~3000W、好ましくは100W~2500W、より好ましくは150W~2000W、最も好ましくは200W~1500Wに含まれる電力範囲で動作する紫外線放射源(11)によって生成される。
【0034】
本発明はまた、自立型2次元ナノ構造体を製造するためのマイクロ波プラズマリアクタであって、本リアクタは、中空本体(1)を有し、中空本体(1)は、
・プラズマ生成表面波発射部(19)、
・前駆体成分核生成部(21)、および、
・表面波発射部(19)および核生成部(21)にそれぞれ接続された第1の端部と第2の端部を有し、これらの部分(19、21)の間に流体連通をもたらす過渡部(20)、
を含み、
前記部分(19、20、21)が、本体(1)内に動作(作用)の3つの内側ゾーン(19’、20’、21’)をそれぞれ画定する、マイクロ波プラズマリアクタにおいて、
過渡部(20)の第1の端部は、第2の端部の断面積よりも小さい断面積を有することを特徴とする、マイクロ波プラズマリアクタについて言及する。
【0035】
好ましくは、過渡部(20)の断面積は、その第1の端部から第2の端部まで漸次(次第に)増加している。
【0036】
一実施形態では、当該部分(19、20、21)は互いに一体に接続され、単一部分(単一部品)を形成する。
【0037】
リアクタ中空本体(1)は、石英、サファイア、アルミナおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される誘電体材料によって形成される。
【0038】
別の実施形態では、リアクタ中空本体(1)は、少なくとも1種の不活性ガスと少なくとも1種の前駆体との混合物の入口部(8)をさらに含み、入口部(8)は、表面波発射部(19)に一体化されているか、または、表面波発射部(19)に接続部を介して取り付けられている。
【0039】
さらに、本発明は、自立型2次元ナノ構造体の生成システムであって、当該システムは、
・少なくとも、表面波発射部(19)、プラズマ形成過渡部(20)、および前駆体成分の核生成部(21)を含む中空本体(1)を有するマイクロ波プラズマリアクタであって、当該部分(19、20、21)が、相互に流体連通して連続的に接続された、動作の3つの内側ゾーン(19’、20’、21’)をリアクタ内に各々画定するマイクロ波プラズマリアクタを含み、当該システムは、
・当該リアクタ本体(1)の核生成部(21)によって画定された内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、プラズマリアクタ中空本体(1)の外側の1つの赤外線放射源(11)を少なくとも、
さらに含むことを特徴とする、システムに関する。
【0040】
一実施形態では、システムは、プラズマリアクタ中空本体(1)の外側に冷却装置(10)をさらに含み、冷却装置(10)は、少なくとも当該リアクタ本体(1)の過渡部(20)によって画定されている内側ゾーン(20’)を冷却するよう配置される。
【0041】
当該冷却装置(10)は、40~220℃、好ましくは40~200℃、より好ましくは40~180℃、最も好ましくは40~150℃に含まれる温度範囲で動作可能である。
【0042】
別の実施形態では、システムは、少なくともプラズマリアクタ中空本体(1)の核生成部(21)によって画定された内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、当該リアクタ本体(1)の外側の紫外線放射源をさらに含む。
【0043】
さらに別の実施形態では、リアクタ本体(1)の当該部分(19、20、21)は互いに一体に接続され、単一部分を形成する。
【0044】
当該リアクタ本体(1)は、石英、サファイア、アルミナおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される誘電体材料によって形成される。
【0045】
非常に好ましい実施形態では、自立型2次元ナノ構造体の生成システムは、
・中空本体(1)を有するマイクロ波プラズマリアクタであって、中空本体(1)が少なくとも、
プラズマ生成表面波発射部(19)、
前駆体成分核生成部(21)、および、
表面波発射部(19)および核生成部(21)にそれぞれ接続された第1の端部と第2の端部とを有し、これらの部分(19、21)の間に流体連通をもたらす過渡部(20)、
を含み、
当該部分(19、20、21)が、リアクタ本体(1)内に動作の3つの内側ゾーン(19’、20’、21’)をそれぞれ画定し、過渡部(20)の第1の端部は、過渡部(20)の第2の端部の断面積よりも小さい断面積を有するマイクロ波プラズマリアクタ、および、
・当該リアクタ本体(1)の核生成部(21)によって画定された内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、当該リアクタ中空本体(1)の外側の1つの赤外線放射源(11)を少なくとも、
含むことを特徴とする。
【0046】
好ましくは、上記実施形態のシステムは、リアクタ本体(1)の外側に冷却装置(10)をさらに含み、冷却装置(10)は、少なくとも、当該リアクタ本体(1)の過渡部(20)により確定された内側ゾーン(20’)を冷却するよう配置され、冷却装置(10)は40~220℃、好ましくは40~200℃、より好ましくは40~180℃、最も好ましくは40~150℃の温度範囲で動作可能である。
【0047】
好ましくは、上記実施形態のシステムは、少なくとも当該リアクタ本体(1)の核生成部(21)によって画定された内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、当該プラズマリアクタ中空本体(1)の外側の紫外線放射源をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
添付の図面および写真は、本発明の例示的な実施形態および典型的な結果を示し、説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0049】
【
図1-3】本発明の好ましいシステムの縦断面図を示し、また、(T1、T2およびT3)とも表記された、リアクタ内のガス温度勾配(13、15、16)(
図2)及びガス速度勾配(17、18)(
図3)などの自立型ナノ構造体の生成プロセスに関連するいくつかの物理的特性を示しており、ガス速度勾配の制御によって本発明による自立型2次元ナノ構造体の生成を選択することができる。
【0050】
【
図4】プラズマリアクタの例示的な注入ユニットの概略図を示す。
【0051】
【
図5】温度および速度の強い軸方向の勾配で制御された100nmのスケールバーを有するグラフェンシートの選択的合成の結果を使用して得られた走査型電子顕微鏡(SEM)画像の例を示す。40000倍の倍率のこの画像は、2次電子および印加作動電圧15.0kVでのSEIモードで得られた。
【0052】
【
図6】本発明のシステムによって合成されたグラフェンシートを用いて得られた高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)の画像を示す。画像から分かるように、10nmのスケールバーでは、これらのグラフェンシートは有利には数層しか有さず、その多くは単層で、矢印によって示されている。
【0053】
【
図7】カーボンナノ構造体(カーボンナノ粒子、グラフェンナノシートおよびナノダイヤモンド)の非選択的な当技術分野の合成の結果を用いて得られた、100nmのスケールバーを有する走査型電子顕微鏡(SEM)の画像の例を示す。制御されないおよび/または低下された温度/速度の軸方向勾配の条件を採用している。この画像は40000倍の倍率を有し、2次電子および印加作動電圧15.0kVでのSEIモードで得られた。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、自立型2次元ナノ構造体を選択的に生成するための、マイクロ波プラズマを用いたプロセスならびにリアクタおよびシステムに関し、有利には自立型2次元ナノ構造体は、少数の原子層のみによって構成され、懸濁状態のフレークの形態で生成され、1時間当たり1グラム(1g/h)のオーダーの生成速度で生成される。
【0055】
本発明のプロセス、リアクタおよびシステムは、運転条件を監視することによって、ナノ構造体の選択的生成、すなわち単一の2次元原子単層同素体の生成を可能にする。
【0056】
図5および
図6は、本発明に従って生成されたナノ構造体の例を示し、
図5は、フレーク状グラフェンナノシートの走査型電子顕微鏡(SEM)の画像を示し、
図6は、数層のみの単層を有するグラフェンナノシートの高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)の画像を示す。これらの図に示された結果は、決定的な方法で最終生成物を選択することができる本発明のプロセスの適用によって達成された。
【0057】
一方、
図7は、カーボンナノ粒子、グラフェンナノシートおよびナノダイヤモンドなどのいくつかのカーボンナノ構造体を区別することができる従来技術のプロセスによる非選択的生成条件を用いて得られた走査型電子顕微鏡(SEM)の画像を示す。
【0058】
本明細書に示される例はグラフェンの生成に関するものであるが、本発明のプロセス、リアクタおよびシステムは、グラフェン誘導体(例えば、N-グラフェン、F-グラフェン)、ゲルマネン(2次元ゲルマニウムホモログ)、六方晶窒化ホウ素などの、他の2次元ナノ構造体の生成のために使用できる。
【0059】
本発明の文脈において、「2次元ナノ構造体」という用語は、限られた数(典型的には1~3)の原子層からなるナノメートル厚さのシートを指す。
【0060】
「自立型ナノ構造体」という用語は、崩壊することなく自重を支持することができ、支持基板を使用する必要なく、懸濁状態のフレークの形態で生成される独立したナノ構造体を指す。
【0061】
「流れ」という用語は、動く流体を指す。
【0062】
「マイクロ波プラズマ」という表現は、マイクロ波電力によって励起された表面波の電界を印加することによって生成されるイオン化ガスを指す。表面波は、電界が最大強度を有する、プラズマと誘電体との間の界面で伝搬する。伝搬するとき、表面波はプラズマを生成し、セルフコンシステント(self-consistent)法でそれ自身の伝播構造を生成する。
【0063】
「前駆体」は、ナノ構造体を構築するための原材料を構成する原子または分子の生成物を意味する。
【0064】
「前駆体成分」とは、前駆体を作る化学元素、すなわち、以下の化学元素:炭素、ホウ素、ゲルマニウム、窒素、酸素、水素およびフッ素のうちの1つ以上を意味する。
【0065】
「前駆体成分の核生成」または単に「核生成」とは、不活性ガス中に分散された1つまたは複数の前駆体成分のセットがナノメートルスケールで凝集体に結合する工程を意味する。
【0066】
「選択的」生成とは、例えば、同素変異体の出現を避けることによる、所望の最終産物の確定的選択を意味する。すなわち、それぞれの操作パラメータ、すなわち、流量、マイクロ波電力および赤外線放射源が規定されている同素体の唯一のタイプの制御された生成である。
【0067】
定量的表現「約X」の明示的な提示とは無関係に、本明細書の記載において提示される任意のXという値は、実際のX値の近似値として理解されるべきである、なぜなら、真値に対するそのような近似は、真値からの偏差(ずれ)をもたらす実験条件および/または測定条件に起因して、合理的に予測され得るからである。
【0068】
本明細書の文脈において、「含む(comprising)」という用語およびその言葉の変形は、「特に、含む(including, among others)」と理解されるべきである。したがって、この用語は「のみからなる(consisting only of)」と解釈されるべきではない。
【0069】
本出願の文脈において、表現「および/または」の使用は、両方の条件が満たされるか、またはそれらのうちの1つのみが生じることを意味することが意図される。例えば、「冷却装置および/または紫外線放射源」という用語は、「冷却装置および紫外線放射源」または「冷却装置」または「紫外線放射源」を意味する。
【0070】
プラズマ技術を使用して自立型2次元ナノ構造体を生成するための本発明のプロセスは、以下の工程を含む:
(a)少なくとも1種の不活性ガスと少なくとも1種の前駆体との混合物の流れを生成させ、
(b)マイクロ波プラズマによって前駆体をその原子および分子成分に分解し、当該プラズマが前の工程の混合物の流れから生成され、
(c)前の工程で形成された前駆体成分を赤外線放射に曝露し、続いて、
(d)前駆体成分の核生成から生じるナノ構造体を収集する。
【0071】
流れを生成する工程a)において、不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンまたはそれらの混合物を含む群から選択され、前駆体は、以下の元素:炭素、ホウ素、ゲルマニウム、窒素、酸素、水素およびフッ素の1つ以上を含む化学組成を有し得る。例として、メタン、エチレン、アセチレンまたはジボランのようなガス状の前駆体、またはエタノール、プロパノール、ブタノールまたはメタノールなどの液体状の前駆体、または例えば一酸化ゲルマニウムまたは二酸化ゲルマニウムなどの固体前駆体を使用してもよい。
【0072】
ガスと前駆体との混合物は、例えば4.2×10-6から8.3×10-4標準立方メートル/秒(m3/s)の間に含まれる流速で、好ましくは8.3×10-6から3.3×10-4m3/s、より好ましくは1.7×10-5から1.7×10-4m3/sの間に含まれる流速で、リアクタの入口部(8)での流れ状態(流れレジーム;stream regime)に注入できる。
【0073】
当該流れは、表面波(5)に属する10MHz~28GHz、好ましくは100MHz~14GHz、より好ましくは500MHz~3GHz、最も好ましくは2.45GHzの周波数の高周波電界に曝され、マイクロ波(7)によって、100~60000W、好ましくは500~10000W、より好ましくは1000~6000W、最も好ましくは2000~6000Wの電力で励起される。
【0074】
このマイクロ波電力(7)は、例えば、電界アプリケータ(電界印加装置)(6)によって印加されて、流れの中に存在する前駆体をその原子および分子成分に分解する高エネルギー密度(0.1~1GW/m3)のプラズマ(2、3、4)を生成する。
【0075】
前駆体の原子および分子成分は、それらが気相状態で生成された高温プラズマゾーン(20’)から、2次元ナノ構造体が自律的に生成および成長される、高温プラズマゾーンよりも温度が低い核生成ゾーン(21’)に流れる。
【0076】
気体混合物の温度および流れ速度の空間勾配の制御は、所望の2次元ナノ構造体を選択的に生成することを可能にする。
【0077】
これらの空間勾配の調整は、例えば、リアクタの周りに赤外線放射源(11)、およびオプションで冷却装置(10)および/または紫外線放射源を適用することによって達成される。
【0078】
本発明のプロセスの一実施形態において、前駆体成分は、工程(c)においてさらに紫外線に供される。紫外線は、50W~3000W、好ましくは100W~2500W、より好ましくは150W~2000W、最も好ましくは200W~1500Wに含まれる電力範囲で動作する紫外線放射源によって生成される。
【0079】
さらに、流れは、工程(a)と工程(b)との間で、40~220℃、好ましくは40~200℃、より好ましくは40~180℃、最も好ましくは40~150℃の温度範囲で動作する冷却装置による冷却に供してもよい。
【0080】
このプロセスの好ましい実施形態では、赤外線放射および紫外線の両方が工程(c)で印加され、工程(a)と工程(b)の間の流れの冷却も行われる。
【0081】
驚くべきことに、赤外線放射の適用は、従来技術(技術水準)を明らかに上回る高品質のナノ構造体を提供する。理論化するつもりはないが、赤外線放射は、シートあたりの単層の数および炭素のsp3結合の割合を制御するのに有利に干渉するようである。
【0082】
プロセスに必要とされる赤外線放射は、50W~3000W、好ましくは100W~2500W、より好ましくは150W~2000W、最も好ましくは200W~1500Wに含まれる電力範囲で動作する紫外線放射源(11)によって生成される。
【0083】
紫外線放射と赤外線放射との組み合わせにより、さらに良好な結果が得られ、そのような組み合わせは、グラフェン構造体に付加された酸素基の除去効率を向上させるよう干渉するようであり、最終生成物の質をさらに向上するのに寄与する。
【0084】
ガス温度空間勾配は15,000K/m~75,000K/mの範囲であり、リアクタの壁の温度は300K~1200Kの範囲である。
【0085】
前駆体成分の核生成の後、固体ナノ構造体は、例えば膜濾過装置(22)内に回収される。
【0086】
要約すると、本発明のプロセスは、マイクロ波プラズマリアクタに、少なくとも1種の不活性ガスと少なくとも1種の前駆体との混合物(9)を流れ状態に注入することに基づいている。
【0087】
この流れは、前駆体をその原子および/または分子成分に分解する高エネルギー密度プラズマ(2、3、4)を発生させる、例えば電界アプリケータ(6)に導入されるマイクロ波電力(7)の使用によって励起された表面波(5)の電界に曝される。リアクタゾーン(19’、20’)(
図2参照)のプラズマによって気相状態で生成されたこれらの前駆体成分は、原子核リアクタ核生成ゾーン(21’)に拡散し、固体ナノ構造体に凝集し、次いで例えば膜濾過装置(22)で回収される。
【0088】
驚くべきことに、前記リアクタ核生成ゾーン(21’)に配置された赤外線放射源(11)の使用は、シート当たりの単層の数および炭素のsp3結合の割合の制御を可能にし、高品質のナノ構造体をもたらす。
【0089】
冷却装置(10)および/または紫外線放射源をオプションで使用することにより、空間勾配、ガスおよび前駆体混合物の温度および流れの速度をより制御することができ、それは所望の最終生成物の決定論的選択に対して有利に寄与する。
【0090】
本発明はまた、自立型2次元ナノ構造体の製造のためのマイクロ波プラズマリアクタについて言及する。
【0091】
図2を参照すると、自立型2次元ナノ構造体を生成するための本発明のリアクタは、中空本体(1)を有し、その本体(1)は、
・プラズマ生成表面波発射部(19)、
・前駆体成分核生成部(21)、および、
・表面波発射部(19)および核生成部(21)にそれぞれ接続された第1の端部と第2の端部とをし、これらの部分(19、21)の間に流体連通をもたらす過渡部(20)、
を含み、
当該部分(19、20、21)は、それぞれ、リアクタにおいて動作の3つの内側ゾーン(19’、20’、21’)を画定し、リアクタは、過渡部(20)の第1の端部において、過渡部(20)の第2の端部よりも小さな断面積を有することを特徴とする。
【0092】
本発明の好ましい実施形態では、過渡部(20)の断面積は、その第1の端部から第2の端部まで漸次増加している。
【0093】
本発明のリアクタの1つの態様では、当該部分(19、20、21)は互いに一体に接続され、単一部分を形成する。
【0094】
本発明のリアクタの別の好ましい実施形態では、その中空本体(1)は、少なくとも1種の不活性ガスと少なくとも1種の前駆体との混合物を入れるための入口部(8)をさらに含み、入口部(8)は、表面波発射部(19)に一体化されているか、接続部を介して表面波発射部(19)に取り付けられている。
【0095】
リアクタ中空本体(1)は、石英、サファイア、アルミナおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される誘電体材料によって形成される。
【0096】
作動中、ガスと前駆体との混合物の当該流れは、複数の反応ゾーン(19’、20’、21’)を横切り、中空本体(1)は増加する中空断面積を有する。
【0097】
自立型2次元ナノ構造体を生成するプロセスは、表面波が発射される、より小さな断面積(a)のゾーン(19’)で始まり;次に、例えば数学式A=na(式中、nは1~20の値を有する比A/aを表す)に従う、徐々に増加する断面積を有する過渡ゾーン(20’)に進み(
図2と
図3を参照);最終的に、ゾーン(19’)の断面積(a)よりも大きな断面積(A)を有する核生成ゾーン(21’)に続く。
【0098】
このリアクタ本体(1)の幾何形状は、所望の2次元ナノ構造体の選択的生成、特にその生成速度の著しい増加に良い影響を及ぼす、速度および流れ温度の制御された低下をもたらす。
【0099】
本発明はさらに自立型2次元ナノ構造体の生成システムに関する。
【0100】
本発明のシステムは、
・少なくとも、表面波発射部(19)、プラズマ形成過渡部(20)、および前駆体成分の核生成部(21)を含む中空本体(1)を有するマイクロ波プラズマリアクタであって、当該部分(19、20、21)が、相互に流体連通して連続的に接続された、動作の3つの内側ゾーン(19’、20’、21’)をリアクタ内においてそれぞれ画定するマイクロ波プラズマリアクタ、
を含み、前記システムは、さらに、
・前記リアクタ本体(1)の核生成部(21)によって画定された当該内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、プラズマリアクタ中空本体(1)の外側の1つの赤外線放射源(11)を少なくとも、
含む。
【0101】
赤外線放射源(11)は、50W~3000W、好ましくは100W~2500W、より好ましくは150W~2000W、最も好ましくは200W~1500Wに含まれる電力範囲で動作する。
【0102】
システムの一実施形態では、プラズマリアクタ中空本体(1)の外側に冷却装置(10)をさらに含み、冷却装置(10)は、少なくとも当該リアクタ本体(1)の過渡部(20)によって画定される内側ゾーン(20’)を冷却するよう配置される。
【0103】
冷却装置(10)は、40~220℃、好ましくは40~200℃、より好ましくは40~180℃、最も好ましくは40~150℃に含まれる温度範囲で動作可能である。
【0104】
さらに別の実施形態では、システムは、少なくともプラズマリアクタ中空本体(1)の核生成部(21)によって画定された内側ゾーン(21’)を照射するように配置された当該リアクタ本体(1)の外側の紫外線放射源をさらに含む。紫外線放射源は、50W~3000W、好ましくは100W~2500W、より好ましくは150W~2000W、最も好ましくは200W~1500Wに含まれる電力範囲で動作する。
【0105】
リアクタ本体(1)の部分(19、20、21)は、単一部分を形成するために、互いに一体的に接続されていてもよい。
【0106】
当該マイクロ波プラズマリアクタ本体(1)は、石英、サファイア、アルミナおよび同様の材料およびそれらの組合せを含む群から選択される誘電体材料から構成される。
【0107】
本発明のシステムの最も好ましい実施形態において、本システムは、
・中空本体(1)を有するマイクロ波プラズマリアクタであって、前記中空本体(1)が少なくとも、
プラズマ生成表面波発射部(19)、
前駆体成分核生成部(21)、および、
表面波発射部(19)および核生成部(21)にそれぞれ接続された第1の端部と第2の端部とを有し、これらの部分(19、21)の間に流体連通をもたらす過渡部(20)、
を含み、
当該部分(19、20、21)が、リアクタ本体(1)内に動作の3つの内側ゾーン(19’、20’、21’)をそれぞれ画定し、過渡部(20)の第1の端部が、過渡部(20)の第2の端部の断面積よりも小さい断面積を有する、マイクロ波プラズマリアクタ、および
・当該リアクタ本体(1)の核生成部(21)によって画定された内側ゾーン(21’)を照射するように配置された、当該プラズマリアクタ中空本体(1)の外側の1つの赤外線放射源(11)を少なくとも、
含むことを特徴とする。
【0108】
前の実施形態の変形例では、中空本体(1)の外側の赤外線放射源(11)に加えて、少なくとも当該リアクタ本体(1)の過渡部(20)によって画定される内側ゾーン(20’)を冷却するために、冷却装置(10)をリアクタ本体(1)の外側に配置することもできる。冷却装置(10)に加えて、またはこれに代えて、少なくとも当該リアクタ中空本体(1)の核生成部(21)によって画定される内側ゾーン(21’)を照射するために、紫外線放射源をプラズマリアクタ中空本体(1)の外側に配置することもできる。
【0109】
前の実施形態の別の変形例では、リアクタ本体(1)の当該部分(19、20、21)が互いに一体的に接続され、誘電材料の単一部分を形成する。オプションで、リアクタ本体(1)の部分(19、20、21)は、当業者に知られている適切な接続手段によって互いに接続される。
【0110】
以下は、本発明によるプラズマ技術を用いた自立型2次元ナノ構造体の選択的生成のいくつかの例である。もちろん、以下に記載される実施例は、独立請求項に定義される本発明の範囲に対するいかなる種類の限定を構成するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0111】
1.1時間当たり1グラム超の生成速度でのグラフェンの生成のために、18.0mmの内径を有する表面波発射部(19)と、内径が18.0mmから75.0mmに拡大する過渡部(20)と、内径75.0mmの核生成部(21)とを含む、石英チューブにより形成されたプラズマリアクタを用いた。最初に、前駆体として8.3×10
-6m
3/sの混合物の取り込み速度を有するエチレンまたはアセチレンと、キャリアガスとして8.3×10
-4m
3/sの流速を有するアルゴンとから構成される混合物が生成される。流速は、2つの流量計に連結されたコントローラによって監視される。次に、エチレンまたはアセチレンとアルゴンとによって形成された当該混合物を、石英チューブにより構成され且つ表面波発射部(19)に設置されるリアクタの入口部(8)において、注入ユニット(
図4参照)を用いて、接続部(14)を介して流れ状態(12)に導入する。この機能を実行することができる任意の他のガス注入システムをオプションで使用することができる。続いて、当該混合物の流れは、大気圧で表面波によって誘起されたマイクロ波プラズマトーチ(5)の部分(20)を通って進む。このプラズマトーチは、2.45GHzの周波数で動作するマイクロ波発生器と、絶縁体、方向性カプラ(方向性結結合器)およびチューナを含む導波管システム(7)と、サーファトロン型電界アプリケータ(6)とを含む。システムは、マイクロ波を短絡する調整可能な構成要素(部品)によって閉じられる。プラズマに供給されるマイクロ波電力は60kWである。この流れは、3000Wの印加電力で動作する紫外線(UV)とともに、3000Wの印加電力で動作する赤外線放射源(11)を介して赤外線放射(IR)に曝される。IRおよびUVは、電灯のマトリックスによって生成される。こうして形成された2次元グラフェンナノ構造体は、真空ポンプに結合された膜濾過装置(22)によって回収される。
【0112】
2.1時間当たり2ミリグラム超の生成速度でのゲルマネンの生成のために、18.0mmの内径を有する表面波発射部(19)と、内径が18.0mmから32.0mmに拡大する過渡部(20)と、内径32.0mmの核生成部(21)とを含む、石英チューブにより形成されたプラズマリアクタを用いた。使用される混合物は、8.0ミリグラム/時間の混合物の取り込み速度を有する固体前駆体、この場合には一酸化ゲルマニウムと、キャリアガスとして使用される8.3×10-5m3/sの流速を有するアルゴンとによって構成される。当該混合物は、表面波発射部(19)に配置されたリアクタの入口部(8)で、流れ状態(12)に注入され、次いで、プラズマが大気圧で表面波(5)によって生成されたマイクロ波プラズマトーチのホットゾーン(20’)を通過する。プラズマトーチは、2.45GHzの周波数で動作するマイクロ波発生器と、絶縁体、方向性カプラおよびチューナを含む導波管システム(7)と、サーファトロン型電界アプリケータ(6)とを含む。システムは、マイクロ波を短絡する調整可能な構成要素によって閉じられる。プラズマに供給されるマイクロ波電力は6kWである。クライオスタット装置(10)を使用して、石英チューブの壁の温度を220℃に維持する。この流れは、1000Wの印加電力で電灯のマトリックスによって生成された赤外線放射(IR)に曝される。最終的に、2次元ナノ構造体は、真空ポンプに結合された膜濾過装置(22)によって回収される。
【0113】
3.1時間当たり2ミリグラム超の生成速度でのゲルマネンの代替的な生成のために、システムは、最小半径18.0mmおよび最大半径32.0mmを有する上記記載のアセンブリ(実施例2)を使用する。使用される混合物は、8.0ミリグラム/時間の混合物の取り込み速度を有する固体前駆体、この場合には二酸化ゲルマニウムと、キャリアガスとして使用される8.3×10-5m3/sの流速を有するアルゴンとによって構成される。使用されるプラズマトーチは、上記(実施例2)と同じであり、2.45GHzの同じ周波数で、かつ同じタイプの電界アプリケータ(6)を用いて動作する。プラズマに供給されるマイクロ波電力は6kWである。この流れは、1500Wの印加電力で電灯のマトリックスによって生成された赤外線放射(IR)に曝される。最後に、2次元ナノ構造体は、真空ポンプに結合された膜濾過装置(22)によって回収される。
【0114】
4.1時間当たり約0.1グラムの生成速度でのグラフェンの生成のために、システムは、7.5mmの内径を有する表面波発射部(19)と、内径が7.5mmから21.0mmに拡大する過渡部(20)と、内径21.0mmの核生成部(21)とを含む石英チューブにより形成したプラズマリアクタにより構成され、用いられている。このシステムは、3.3×10-7m3/sの混合物の取り込み速度を有するガス状の前駆体、この場合にはメタンと、キャリアガスとして使用される6.7×10-5m3/sの流速を有するアルゴンとによって構成される混合物で作用する。流速は、2つの流量計に連結されたコントローラによって監視される。当該混合物は、表面波発射部(19)に位置するリアクタの入口部(8)において、流れ状態に注入され、次いで大気圧で表面波(5)によって生成されるマイクロ波プラズマトーチのホットゾーン(20’)を通過する。プラズマトーチは、2.45GHzの周波数で動作するマイクロ波発生器と、絶縁体、方向性カプラおよびチューナを含む導波管装置(7)と、サーファトロン型電界アプリケータ(6)とを含む。システムは、マイクロ波を短絡する調整可能な構成要素によって閉じられる。プラズマに供給されるマイクロ波電力は4kWである。この流れは、500Wの印加電力で電灯のマトリックスによって生成された赤外線放射(IR)に曝される。最後に、2次元ナノ構造体は、真空ポンプに結合された膜濾過装置(22)によって回収される。
【0115】
5.1時間当たり約20ミリグラムの生成速度での六方晶窒化ホウ素の生成のために、システムは、最小内径7.5mmおよび最大21.0mmを有する上記記載のアセンブリ(実施例4)を使用する。使用される混合物は、1.7×10-7m3/sの混合物の取り込み速度を有するガス状の前駆体、この場合にはジボランと、キャリアガスとして使用される3.3×10-5m3/sの流速を有するアルゴンとによって構成される。使用されるプラズマトーチは、上記(実施例4)と同じであり、2.45GHzの同じ周波数で、かつ同じタイプの電界アプリケータ(6)を用いて動作する。プラズマに供給されるマイクロ波電力は2kWである。この流れは、1000Wの印加電力で電灯のマトリックスによって生成された赤外線放射(IR)に曝される。最終的には、2次元ナノ構造体は、真空ポンプに結合された膜濾過装置(22)によって回収される。
【0116】
6.1時間当たり約2ミリグラムの生成速度でのグラフェンの生成のために、システムは、7.5mmの内径を有する表面波発射部(19)と、7.5mmの一定の内径の過渡部(20)と、同じ7.5mmの内径の核生成部(21)とを含む石英チューブにより形成したプラズマリアクタにより構成され、用いられている。このシステムは、超音波槽を使用して気化された後、1.7×10-8m3/sの混合物の取り込み速度を有する液体状の前駆体、この場合にはエタノールと、によって構成される混合物で作用し、キャリガガスとして使用される4.2×10-6m3/sの流速を有するアルゴンとによって構成された混合物で作用する。流速は、2つの流量計に連結されたコントローラによって監視される。当該混合物は、表面波発射部(19)に位置するリアクタの入口部(8)において、流れ状態に注入され、次いで大気圧で表面波(5)によって生成されるマイクロ波プラズマトーチのホットゾーン(20’)を通過する。プラズマトーチは、2.45GHzの周波数で動作するマイクロ波発生器と、絶縁体、方向性カプラおよびチューナを含む導波管装置(7)と、サーファトロン型電界アプリケータ(6)とを含む。システムは、マイクロ波を短絡する調整可能な構成要素によって閉じられる。プラズマに供給されるマイクロ波電力は0.4kWである。クライオスタット装置を使用して、石英チューブの壁の温度を60℃に維持する。この流れは、50Wの印加電力で動作する紫外線(UV)とともに、50Wの印加電力で動作する赤外線放射(IR)に曝され、IRおよびUVは、電灯のマトリックスによって生成される。最後に、2次元ナノ構造体は、真空ポンプに結合された膜濾過装置(22)によって回収される。
【0117】
7.1時間当たり約1ミリグラムの生成速度でのグラフェンの生成のために、システムは、すべての領域(19、20、21)において一定の内径7.5mmを有する上記記載のアセンブリ(実施例6)を使用する。このシステムは、超音波槽を使用して気化された後、1.7×10-8m3/sの混合物の取り込み速度を有する液体状の前駆体、この場合にはブタノールまたはプロパノールと、キャリアガスとして使用される4.2×10-6m3/sの流速を有するアルゴンとによって構成される混合物で作用する。使用されるプラズマトーチは、上記(実施例6)と同じであり、2.45GHzの同じ周波数で、かつ同じタイプの電界アプリケータ(6)を用いて動作する。プラズマに供給されるマイクロ波電力は0.4kWである。クライオスタット装置を使用して、石英チューブの壁の温度を40℃に維持する。この流れは、50Wの印加電力で電灯のマトリックスによって生成された赤外線放射(IR)に曝される。最後に、2次元ナノ構造体は、真空ポンプに結合された膜濾過装置(22)によって回収される。
【0118】
8.1時間当たり約1グラムの生成速度でのグラフェンの生成のために、18.0mmの内径を有する表面波発射部(19)と、内径が18.0mmから32.0mmに拡大する過渡部(20)と、内径32.0mmの核生成部(21)とを含む石英チューブにより形成されたプラズマリアクタを用いた。最初に、前駆体として8.3×10
-6m
3/sの混合物の取り込み速度を有するエチレンと、アルゴン90%、ヘリウム5%、ネオン5%で構成され、総流量3.3×10
-4m
3/sであるキャリアガスの混合物とによって構成された混合物が生成される。流速は、2つの流量計に連結されたコントローラによって監視される。次に、キャリアガスを伴うエチレンによって形成された当該混合物は、石英チューブにより構成され且つ表面波発射部(19)に設置されるリアクタの入口部(8)において、注入ユニット(
図4参照)を用いて、接続部(14)を介して流れ状態(12)に導入される。続いて、当該混合物の流れは、大気圧で表面波(5)によって発生されたマイクロ波プラズマトーチの部分(20)を通って進む。このプラズマトーチは、2.45GHzの周波数で動作するマイクロ波発生器と、絶縁体、方向性カプラおよびチューナを含む導波管装置(7)と、サーファトロン型電界アプリケータ(6)とを含む。システムは、マイクロ波を短絡する調整可能な構成要素によって閉じられる。プラズマに供給されるマイクロ波電力は20kWである。この流れは、2500Wの印加電力で動作するIR電灯のアレイによって発生された赤外線放射源(11)による赤外線放射(IR)放射に供される。このように形成された2次元グラフェンナノ構造体は、抽出装置によって回収される。
【0119】
9.1時間当たり約1グラムの生成速度でのN-グラフェンの生成のために、18.0mmの内径を有する表面波発射部(19)と、内径が18.0mmから75.0mmに拡大する過渡部(20)と、内径75.0mmの核生成部(21)とを含む石英チューブにより形成されたプラズマリアクタを用いた。このシステムは、3.3×10
-4m
3/sの流速を有するキャリアガス、この場合はアルゴンと、2つの前駆体、この場合はエタノールである液体状の前駆体、およびこの場合は窒素である気体状の前駆体とにより構成される混合物で作用し、超音波槽を用いて気化された後のエタノールは7.5×10
-6m
3/sの混合物の取り込み速度を有している。窒素は8.3×10
-7m
3/sの混合物の取り込み速度を有している。流速は、2つの流量計に連結されたコントローラによって監視される。次に、キャリアガスと2つの前駆体によって形成された当該混合物は、石英チューブにより構成され且つ表面波発射部(19)に設置されるリアクタの入口部(8)において、注入ユニット(
図4参照)を用いて、接続部(14)を介して流れ状態(12)に導入される。続いて、当該混合物の流れは、大気圧で表面波(5)によって発生されたマイクロ波プラズマトーチの部分(20)を通って進む。このプラズマトーチは、2.45GHzの周波数で動作するマイクロ波発生器と、絶縁体、方向性カプラおよびチューナを含む導波管装置(7)と、サーファトロン型電界アプリケータ(6)とを含む。システムは、マイクロ波を短絡する調整可能な構成要素によって閉じられる。プラズマに供給されるマイクロ波電力は6kWである。この流れは、2000Wの印加電力で動作するIR電灯のアレイによって発生された赤外線放射源(11)による赤外線放射(IR)放射に供される。このように形成された2次元グラフェンナノ構造体は、抽出装置によって回収される。
【0120】
図5は、温度および気体の速度の強い軸方向の勾配によって制御されるグラフェンシートの選択的合成の結果を用いて得られた走査型電子顕微鏡(SEM)の画像を示す。一方、
図7は、制御されないおよび/または減少した温度/速度の軸方向勾配の条件下で実行されたカーボンナノ構造体(カーボンナノ粒子、グラフェンナノシートおよびナノダイヤモンド)の非選択的な合成を用いて得られたSEMの画像を示す。SEM特性評価は、10~15kVの範囲の印加電圧で2次電子像モードで動作する電界放出銃走査電子顕微鏡によって実施した。
【0121】
図6は、本明細書に記載のシステムで合成されたグラフェンシートを用いて得られた高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)画像を示す。画像は、200kVの加速電圧で動作するHRTEM顕微鏡を使用して得た。見て分かるように、シートのエッジは明らかに上方に折り畳まれ、各シートの原子層の数を判定することが可能である。HRTEM画像は、シートの多くが単一原子層であることを明らかにし、単層の一部は、図面の矢印により特定されている。