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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
B08B3/02 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019156341
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021030186
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592258306
【氏名又は名称】森合精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】雪島 良太
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-102990(JP,A)
【文献】特開2007-190623(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136341(WO,A1)
【文献】特開昭60-125202(JP,A)
【文献】実開平07-032053(JP,U)
【文献】特開2015-004176(JP,A)
【文献】実開昭57-177586(JP,U)
【文献】特開平06-106151(JP,A)
【文献】特開2002-011418(JP,A)
【文献】特開2001-070900(JP,A)
【文献】実開平04-111223(JP,U)
【文献】特開2019-051653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置フレームに支持される筒状の洗浄チャンバーと、前記洗浄チャンバー内に配され被洗浄物を保持する回転テーブルと、前記回転テーブルを回転させる回転機構と、前記回転テーブルと前記回転機構との間に配される回転軸と、前記洗浄チャンバー内に配置され洗浄液を吐出する複数のノズルと、を備え、前記被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、
前記洗浄チャンバーは、前側部分が左右に開くように後側部分が回転可能に支持された左右チャンバー部材を有し、前記左右チャンバー部材は、閉じた状態で上方が覆われた有底筒状の筒状部となるものであり、
前記複数のノズルは、前記各チャンバー部材の内側面に第1及び第2ノズル群に分けて設けられている、
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄チャンバーは、前記回転テーブルを覆う洗浄位置と、前記洗浄位置の後方で前記回転テーブルを露出させる脱着位置との間で進退可能である、請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記筒状部は、上方を覆う部分がドーム状である、請求項1または2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記左右チャンバー部材は、窓部を有し、
前記窓部の窓枠には、水たまり防止用の傾斜溝が形成されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記左右チャンバーの前側部分の間には、前記左右チャンバー部材の密封性を調整する緩衝部材が設けられている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄チャンバーは、支持機構を介して前記装置フレームに支持され、
前記支持機構は、前記各チャンバー部材の後側部分が回転可能に取り付けられているシャフト取付板と、前記シャフト取付板から後方に延び前記装置フレームに移動可能に支持される支持シャフトと、前記支持シャフトに鉛直方向に延びるように取り付けられる縦部材と、前記縦部材の下端に回転可能に設けられるカムローラと、前記装置フレームに設けられ前記カムローラが移動可能であるガイドレールとを備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記回転テーブルよりも下方であって前記洗浄チャンバーの外部に底部材が配置され、
前記底部材は、前記洗浄チャンバーから漏れた液体を前記洗浄チャンバー後部側に戻す傾斜部を有し、
前記傾斜部の下側に、前記傾斜部から漏れた液体を回収タンクに戻す開口を有するベースが配置されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記回転テーブルを回転方向において定位置に停止させる定位置停止機構を備え、前記定位置停止機構が、前記洗浄チャンバーの外部であって、前記洗浄チャンバーと前記回転機構との間に設けられている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記定位置停止機構は、前記回転軸側に取り付けられた被検出部材と、前記装置フレーム側に取り付けられ前記被検出部材を検知する位置検出センサと、基端部が前記回転軸取り付けられ回転ローラを先端に有するローラブラケットと、可動部材を有し前記可動部材の先端嵌合部を前記回転ローラに嵌合させるアクチュエータとを備え、前記回転テーブルが停止する際に、前記アクチュエータによって前記可動部材を移動させ、その先端嵌合部を前記回転ローラに嵌合させるものである、請求項8記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記洗浄チャンバーから回収タンクへ液体を流すダクトからミストコレクタが湯気を吸う構成とされ、前記ダクトに、前記ミストコレクタから落ちてくる水を遮断する遮水板及び、前記回収タンクの湯気が漏れるのを遮断する遮蔽板が設けられている、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記洗浄チャンバー内には前記第1及び第2ノズル群が接続される第1及び第2配管を有し、
前記第1及び第2配管は、それぞれ先端部分が前記左右チャンバー部材に固定されている、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項12】
前記複数のノズルは、前記配管ごとに取り外し可能に取り付けられている、請求項11記載の洗浄装置。
【請求項13】
前記左右のチャンバー部材の前側部分の間には、前記左右のチャンバー部材の一方から他方に延びる水よけ板が設けられている、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項14】
前記装置フレームは、被洗浄物を脱着する前面側に開口部が形成され、前記開口部が、上側になるほど後方に位置するように斜めに傾斜している、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項15】
前記左右のチャンバー部材は、左右別々に開閉可能である、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項16】
前記洗浄チャンバーは、炭素繊維強化プラスチックによって形成されている、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物を回転させて、被洗浄物を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工部品等の洗浄装置は、そのケーシング内に、被洗浄物を回転テーブルに載せて、周囲に配された複数のノズルから洗浄液を噴射して被洗浄物を洗浄するものである。また、乾燥機能を備える洗浄装置では、これにエアノズルが追加され、コンプレッサを通じて噴射されるエアブローと被洗浄物の回転により、被洗浄物の乾燥を行うものが一般的である。
【0003】
被洗浄物の回転と空気によって、被洗浄物を効果的に水切り乾燥する洗浄装置として、筒状の洗浄チャンバーと、前記洗浄チャンバー内に配され被洗浄物を保持する回転テーブルと、前記回転テーブルを回転させる回転機構と、前記回転テーブルと前記回転機構との間に配される回転軸と、前記洗浄チャンバー内に空気を送る吸気口と、空気を排出する排気口と、前記排気口に接続されるブロアと、複数のノズルと、洗浄液を排出する排水口と、を備え、前記洗浄チャンバーは、底部と、上方が覆われた有底筒状の筒部と、を有し、前記底部は、前記回転テーブルよりも下に配され、中央が開口して当該開口と前記回転軸との間に所定の隙間を有し、周縁から当該開口に向けて傾斜しており、前記吸気口は前記筒部の上方に配され、前記排気口は前記底部よりも下に配され、前記洗浄チャンバー内の空気が前記底部の開口を通過して前記排気口より排気されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-55275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のものでは、洗浄品を脱着する際に前記洗浄品の周辺に前記ノズルが位置しているので、被洗浄物を脱着する際に邪魔になる。また、前記洗浄品を脱着する必要があるので、前記ノズルを、前記洗浄品に近い位置に設けることができず、洗浄性能を高めることができない。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、被洗浄物の脱着が容易で、洗浄性能を高めることができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、装置フレームに支持される筒状の洗浄チャンバーと、前記洗浄チャンバー内に配され被洗浄物を保持する回転テーブルと、前記回転テーブルを回転させる回転機構と、前記回転テーブルと前記回転機構との間に配される回転軸と、前記洗浄チャンバー内に配置され洗浄液を吐出する複数のノズルと、を備え、被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、前記洗浄チャンバーは、前側部分が左右に開くように後側部分が回転可能に支持された左右チャンバー部材を有し、前記左右チャンバー部材は、閉じた状態で上方が覆われた有底筒状の筒状部となるものであり、前記複数のノズルは、前記各チャンバー部材の内側面に第1及び第2ノズル群に分けて設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
このようにすれば、第1及び第2ノズル群は左右チャンバー部材に分けて設けられ、左右チャンバー部材と一緒に動くので、被洗浄物を脱着する際に、ノズルが邪魔にならない。また、複数のノズルは左右チャンバー部材に設けられているので、被洗浄物に対し近距離からの噴射が可能となり、洗浄性能を向上させることができる。よって、ノズルの本数を減らしても、十分な洗浄性能を得ることができ、省エネを図る上で有利となる。
【0009】
前記洗浄チャンバーは、前記回転テーブルを覆う洗浄位置と、前記洗浄位置の後方で前記回転テーブルを露出させる脱着位置との間で進退可能である、ようにできる。このようにすれば、回転テーブルに保持される被洗浄物の脱着を容易にできる。
【0010】
前記筒状部は、上方を覆う部分がドーム状である、ことが望ましい。このようにすれば、上方を覆う部分である天井部分がドーム状で丸みを帯びているので、天井部分に付着した水滴が被洗浄物の上に落下しにくい。
【0011】
前記左右チャンバー部材は、窓部を有し、前記窓部の窓枠には、水たまり防止用の傾斜溝が形成されている、ことが望ましい。このようにすれば、傾斜溝を通じて水が流れるので、洗浄チャンバーの窓枠には水が溜まりにくくなる。
【0012】
また、前記左右チャンバーの前側部分の間には、前記左右チャンバー部材の密封性を調整する緩衝部材が設けられている、ことが望ましい。このようにすれば、左右チャンバー部材の密封性を調整する緩衝部材が設けられているので、左右チャンバー部材は必要以上に閉じず、ミストコレクタなどの吸引で洗浄チャンバー内の気圧が下がり、真ん中のパッキンが潰れるのが回避される。
【0013】
前記洗浄チャンバーは、支持機構を介して前記装置フレームに支持され、前記支持機構は、前記各チャンバー部材の後側部分が回転可能に取り付けられているシャフト取付板と、前記シャフト取付板から後方に延び前記装置フレームに移動可能に支持される支持シャフトと、前記支持シャフトに鉛直方向に延びるように取り付けられる縦部材と、前記縦部材の下端に回転可能に設けられるカムローラと、前記装置フレームに設けられ前記カムローラが移動可能であるガイドレールとを備える、ことが望ましい。このようにすれば、支持機構で支持されることで、洗浄チャンバーが自重で下がるのが抑制される。
【0014】
前記回転テーブルよりも下方であって前記洗浄チャンバーの外部に底部材が配置され、前記底部材は、前記洗浄チャンバーから漏れた液体を前記洗浄チャンバー後部側に戻す傾斜部を有し、前記傾斜部の下側に、前記傾斜部から漏れた液体を回収タンクに戻す開口を有するベースが配置されている、ことが望ましい。このようにすれば、傾斜部から液体が漏れても、ベースの開口を通じて回収タンクに回収される。
【0015】
前記回転テーブルを回転方向において定位置に停止させる定位置停止機構を備え、前記定位置停止機構が、前記洗浄チャンバーの外部であって、前記洗浄チャンバーと前記回転機構との間に設けられている、ことが望ましい。このようにすれば、定位置停止機構が、前記洗浄チャンバーの外部にあるので、洗浄チャンバー内の作業やノズルからの噴射の邪魔にならない。
【0016】
この場合、前記定位置停止機構は、前記回転軸側に取り付けられた被検出部材と、前記装置フレーム側に取り付けられ前記被検出部材を検知する位置検出センサと、基端部が前記回転軸取り付けられ回転ローラを先端に有するローラブラケットと、可動部材を有し前記可動部材の先端嵌合部を前記回転ローラに嵌合させるアクチュエータとを備え、前記回転テーブルが停止する際に、前記アクチュエータによって前記可動部材を移動させ、その先端嵌合部を前記回転ローラに嵌合させるもの、とすることができる。
【0017】
前記洗浄チャンバーから回収タンクへ液体を流すダクトからミストコレクタが湯気を吸う構成とされ、前記ダクトに、前記ミストコレクタから落ちてくる水を遮断する遮水板及び、前記回収タンクの湯気が漏れるのを遮断する遮蔽板が設けられている、ことが望ましい。このようにすれば、遮蔽板によって、ミストコレクタが、落ちてくる水やタンクの湯気を吸引するのが遮断される。
【0018】
前記洗浄チャンバー内には前記第1及び第2ノズル群が接続される第1及び第2配管を有し、前記第1及び第2配管は、それぞれ先端部分が前記左右チャンバー部材に固定されている、ことが望ましい。このようにすれば、洗浄チャンバーの動作(揺れ)によって配管の根元にかかる負荷が軽減される。
【0019】
前記複数のノズルは、前記配管ごとに取り外し可能に取り付けられている、ことが望ましい。このようにすれば、被洗浄物の種類によってノズルを配管ごと交換することができ、被洗浄物の種類に関わりなく洗浄できるように多種類のノズルを取り付ける必要がなくなり、洗浄液やエアを節減でき、騒音も低減できる。
【0020】
前記左右のチャンバー部材の前側部分の間には、前記左右のチャンバー部材の一方から他方に延びる水よけ板が設けられている、ことが望ましい。
【0021】
このようにすれば、前記左右のチャンバー部材の前側部分の間から水(お湯)が漏れても、勢いよく出て作業者にかかるのが回避される。
【0022】
前記装置フレームは、被洗浄物を脱着する前面側に開口部が形成され、前記開口部が、上側になるほど後方に位置するように斜めに傾斜している、ことが望ましい。このようにすれば、脱着のために作業者が前傾姿勢になったときに、作業者の頭が装置にぶつからない。
【0023】
前記左右のチャンバー部材は、左右別々に開閉可能である、ことが望ましい。このようにすれば、一方を閉めて運転の状態にし、他方を開けて手を入れ、ノズルの狙いを調整することができる。
【0024】
前記洗浄チャンバーは、炭素繊維強化プラスチックによって形成されている、ことが望ましい。このようにすれば、洗浄チャンバーの外観の向上、コスト削減、軽量化が図れる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る洗浄装置によれば、被洗浄物の脱着が容易で、洗浄性能や乾燥性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態である洗浄装置の側面図である。
図2】本発明の一実施の形態である洗浄装置の正面図である。
図3】前記洗浄装置の回転部を示す図である。
図4】洗浄チャンバー付近の拡大側面図である。
図5】洗浄チャンバー付近を上面から見た平面図である。
図6】洗浄チャンバーの左右チャンバー部材が開かれた状態を示す図である。
図7】遮蔽板を示す図である。
図8】窓部の窓枠を示す図である。
図9】ノズルの取り付け状態を示す図である。
図10】前記洗浄装置の定位置停止機構を示す平面図である。
図11図10のA-A線における断面図である。
図12】基板の平面図である。
図13】水回路図である。
図14】空気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明するが、本発明は実施形態に限定されるものではない。特に、実施形態のノズルの本数や配置、各部材の形状等は一例であり、本発明はそれらに限定されない。
【0028】
1.洗浄装置の構造
図1は本発明の一実施の形態である洗浄装置の側面図、図2は同洗浄装置の正面図、図3は前記洗浄装置の回転部を示す図である。
【0029】
本発明の一実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す図である。図1図3に示すように、洗浄装置1は、装置フレーム2に、洗浄ポンプ3、液加温用ヒータ-4、引き出しスノコ5、フロートスイッチ6(図12参照)、チャンバー開閉エアシリンダ7A,7B、チャンバー移動エアシリンダ8、テーブル回転モータ(回転機構)9、ミストコレクタ10、ラインフィルタ11、オイルスキマ12、シグナルタワー(警報表示器)13、ライトカーテン14が取り付けられている。
【0030】
なお、洗浄装置1は幅と奥行が小さく、省スペースが図られ、また、洗浄装置1の操作は、ペンダント型の操作具15で行うようにして、ボックス型の操作盤を用いる場合よりも、省スペースを図っている。被洗浄物を装填する、装置フレーム2の前側であってその上部に検知センサが取り付けられ、装置が作動している際に作業者が手を挿入するなどの行為をすると、それを検知センサが検出して装置1を緊急停止させることで、安全性の向上を図るようにしている。
【0031】
装置フレーム2は、洗浄チャンバー16を支持し、被洗浄物を脱着する前面側に開口部2Aが形成されている。この開口部2Aを形成するフレーム部材2Aaは、上側になるほど後方に位置するように斜めに傾斜している。これにより、例えば脱着のために作業者が前傾姿勢になったときに、作業者の頭が装置1にぶつからない。テーブル回転モータ9の周囲にはカバーを設けているので、安全性が確保され、見栄えもよい。
【0032】
また、引き出しスノコ5を大きくして、清掃の周期を長くなるようにしている。さらに、具体的に図示していないが、パイプではなく、可撓性を有するホースやチューブを配管に多用することで、回収タンク上のスペースを確保するようにしている。よって、メンテナンス時に、フィルタ交換やタンク清掃などの作業を行いやすくなっている。
【0033】
また、洗浄装置1の全体高さを低くしているので、洗浄装置1の上から、工場などの設置場所内を見渡せることができる。よって、例えば、奥の場所に配置されている洗浄装置1の警報表示器13を確実に見ることができる。
【0034】
図4は洗浄チャンバー付近の拡大側面図、図5は洗浄チャンバー付近を上面から見た平面図、図6は洗浄チャンバーの左右チャンバー部材が開かれた状態を示す図である。
【0035】
図4及び図5に示すように、洗浄チャンバー16は、炭素繊維強化プラスチックからなり、洗浄チャンバー16の外部であって、後述する回転テーブル44よりも下方に底部材21が配置されている。洗浄チャンバー16は、上方が覆われた有底筒状の筒状部22を備える。底部材21は、洗浄チャンバー16から漏れた液体を受ける傾斜部21aを有し、その傾斜部21aの下側に、ベース24が配置されている。傾斜部21aは、周縁から開口24aに向けて下向きに傾斜している。なお、回収タンク23は容量が小さいので、液加温用ヒーター4が小さくてよくなり、コストダウン・省エネの点で有利である。
【0036】
筒状部22は、左右に開閉可能である左右チャンバー部材22A,22Bを備え、それらが閉じた状態では、下方が開口する円筒部の上方を覆う部分がドーム状(半球状)の天井部分となっている。そして、洗浄チャンバー16は、図4に示すように、カムフォロア機構で支持され、洗浄チャンバー16が自重で下がるのを抑制するようになっている。前記カムフォロア機構は、各チャンバー部材22A,22Bの後側部分が複数個の蝶番32を介して回転可能に取り付けられているシャフト取付板34と、シャフト取付板34から後方に延び装置フレーム2に上下に平行でスライド移動可能なるように支持される支持シャフト17と、各支持シャフト17に鉛直方向に延びるように取り付けられる縦部材18と、縦部材18の下端に回転可能に設けられるカムローラ19と、装置フレーム2に設けられこのカムローラ19が移動可能であるガイドレール20とを備える。よって、洗浄チャンバー16は、洗浄チャンバー16が進退する際に洗浄チャンバー16と一緒に進退する支持シャフト17を含むカムフォロア機構を介して装置フレーム2に支持されている。そして、チャンバー部材22A,22Bが開閉するために移動する方向に、支持シャフト17やガイドレール20は延びており、チャンバー部材22A,22Bの、開閉のための移動は安定して行われる。
【0037】
筒状部22は、左右に分割されている左チャンバー部材22Aと右チャンバー部材22Bとを備える。チャンバー部材22A,22Bは前側部分が左右に離れるように開くことができるように後側部分がシャフト取付板34に回転可能に支持されている。洗浄チャンバー16は、チャンバー移動エアシリンダ8によって、左右チャンバー部材22A,22Bが閉じた状態となり回転テーブル44(被洗浄物)の周囲を覆う前側位置(洗浄位置)と、左右チャンバー部材22A,22Bが回転して開いた状態となり回転テーブル44(被洗浄物)の周囲を開放して露出させる後側位置(脱着位置)との間を移動可能とされている。なお、洗浄チャンバー16の周囲のカバーを透明材料で形成しているので、見通しがよく、被洗浄物の脱着作業などを行いやすくなっている。
【0038】
また、左右チャンバー部材22A,22Bは、前側部分(正面側部分)がチャンバー開閉エアシリンダ7A,7Bによって左右に開閉されるようになっている。なお、洗浄チャンバー16の前面部分において、左右チャンバー部材22A,22Bの前側部分の間には、左右チャンバー部材22A,22Bの閉じ具合(密封性)を調整するゴムパッキン28(緩衝部材)が設けられ、必要以上に強く閉じないようにされている。
【0039】
よって、洗浄チャンバー16から回収タンク23へ液体を流すダクト25から湯気を吸うミストコレクタ10の吸引で洗浄チャンバー16内の気圧が下がり、前記前側部分の間のパッキン29が潰れるのが防止される。そして、ミストコレクタ10から落ちてくる水を遮断する遮水板26Aや回収タンク23の湯気が漏れるのを遮断する遮蔽板26Bがダクト25の途中に設けられている(図7参照)。
【0040】
また、左右チャンバー部材22A,22Bは、洗浄チャンバー16内を観察できるように円形状の窓部22Aa,22Baを有し、図8に示すように、窓部22Aa,22Ba周囲の環状の窓枠22Ab,22Bbには、水が溜まりにくくなるように水たまり防止用の傾斜溝(傾斜溝22Adのみ図示)が窓枠厚さ方向に延びるように形成されている。また、左右のチャンバー部材22A,22Bの前側部分の間には、水よけ板27が設けられている(図6参照)。左右のチャンバー部材22A,22Bの前側部分の間から水(お湯)が漏れようとしても、水よけ板27によって止められ、勢いよく出ず、作業者にかかるのが回避される。
【0041】
そして、洗浄チャンバー16が前側位置(洗浄位置)にあるときは、左右チャンバー部材22A,22Bが閉じた状態となり、回転テーブル44(被洗浄物)の周囲を覆っている。よって、被洗浄物を洗浄又は水切り乾燥することができる。そして、例えば被洗浄物を着脱する時は、チャンバー開閉エアシリンダ7A,7Bにて左右チャンバー部材22A,22Bを開きながら、チャンバー移動エアシリンダ8にて洗浄チャンバー16(左右チャンバー部材22A,22B)を後側位置に移動させる。このとき、縦部材18の下端のカムローラ19がガイドレール20上を転動するが、シャフト取付板34から後方に延びる支持シャフト17が装置フレーム2にスライド移動可能に支持されているので、チャンバー部材22A,22Bの、開閉のための移動は安定して行われる。
前記前側位置から移動して後側位置(脱着位置)になると、左右チャンバー部材22A,22Bが左右に開いた状態となり、残された回転テーブル44(被洗浄物)は周囲が開放され、回転テーブル44(被洗浄物)を露出させることになる。よって、被洗浄物の脱着を容易にできるようになる。なお、各チャンバー部材22A,22Bの上部には、それぞれ、給水パイプ(図示せず)が接続される給水口22Ac,22Bcが設けられている。
【0042】
左右チャンバー部材22A,22Bを開閉するチャンバー開閉シリンダ7A,7Bは、パワーの小さいものを用いているので、作業者が手などを左右チャンバー部材22A,22Bの間に挟んでも、負傷しにくくなっている。そして、チャンバー開閉シリンダ7A,7Bは、それぞれ独立して動作させることができるので、左右のチャンバー部材22A,22Bを、左右別々に開閉することができる。
【0043】
これにより、運転の状態にして、一方のチャンバー部材を閉める一方、他方のチャンバー部材を開けて、作業者が手を入れ、後述する第1及び第2ノズル群31A,31Bの各ノズルの狙い方向を調整することができる。また、洗浄チャンバー16の内容積を小さくしているので、ミストコレクタ10による湯気の吸引が早くなり、乾燥性能が高くなっている。
【0044】
また、各チャンバー部材22A,22Bを開閉可能に支持する蝶番32を複数個にしているので、各蝶番32を交換する場合の作業などが行いやすくなる。つまり、蝶番が1つであると、蝶番を外したときに洗浄チャンバー16(チャンバー部材22A,22B)自体も一緒に外れてしまうので、洗浄チャンバー16を再び取り付ける作業が必要となるが、蝶番32を複数個とすることでそのような面倒な取付作業を回避できる。
【0045】
また、各チャンバー部材22A,22Bの内側には、図8に示すように、それぞれ、第1及び第2ノズル群31A,31Bが分けて別々に取り付けられている。洗浄チャンバー22A,22Bの内側面には、第1及び第2ノズル群31A,31Bと共にそれらが接続される第1及び第2配管33A,33Bが設けられるが、それらの第1及び第2配管33A,33Bは、根元部分が給水口22Ac,22Bcが接続され、自由端である先端部分が左右チャンバー部材22A,22Bに取付具を介して固定されている。そして、第1及び第2ノズル群1A,31Bは、第1及び第2配管33A,33Bごとに取り外し可能に取り付けられている、
【0046】
本実施形態の第1及び第2ノズル群31A,31Bは、洗浄液を噴射するノズルを用いているが、洗浄液と空気を噴射する2流体ノズルを用いてもよい。また、空気を噴射するエアノズルを追加してもよい。
【0047】
また、左右チャンバー部材22A,22Bの第1及び第2ノズル群31A,31Bは、被洗浄物を挟んで略対向するように配置されている。これにより、洗浄液が被洗浄物の左右両側から噴射されるので、被洗浄物を回転させれば、被洗浄物全体が効率よく洗浄される。
【0048】
一方、洗浄チャンバー16の下方には、チャンバーパッキン(図示せず)及び筒状の固定チャンバー41を挟んで基板42が設けられている。回収タンク23は容量が少ないので、液加温用ヒーター4が小さくてよくなり、また、ポンプとして洗浄ポンプ3一つしか用いていないので、コストダウン、消費電力のダウンが図れる。
【0049】
一方、基板42の中央に、円形状の開口42aが形成されていて(図12参照)、この開口42aに回転軸43が挿通されている。回転軸43は、下端が回転軸43を回転させるテーブル回転モータ9に接続され、上端が開口42aを貫通し、洗浄チャンバー16内の回転テーブル44に接続されている。よって、テーブル回転モータ9の回転により、回転テーブル44が回転する。
【0050】
また、回転テーブル44の上面には、被洗浄物を保持する治具45が設けられている。治具45で被洗浄物を保持したときに、被洗浄物と回転テーブル44との間に空間が形成されるようになっている。この空間により、洗浄液が被洗浄物の下面にあたるし、空気が通過して被洗浄物を効率よく乾燥することができる。なお、治具45の形状は特に制限されず、被洗浄物と回転テーブル44との間に空間が形成されればよい。
【0051】
図3図10及び図11に示すように、回転テーブル44を回転方向において定位置に停止させる定位置停止機構50が、洗浄チャンバー16の外部であって、洗浄チャンバー16とテーブル回転モータ9との間に設けられている。つまり、回転軸43側に被検出部材51が、それを検知する位置検出センサ52がフレーム2側にブラケット53を介して取り付けられている。
【0052】
また、回転可能である回転ローラ54aを先端に有するローラブラケット54の基端部が回転軸43に取り付けられ、所定位置においてアクチュエータ55(例えば、エアシリンダ)によって可動部材56の先端嵌合部が回転ローラ54aに嵌合可能に設けられている。そして、回転テーブル44を停止させる際には、被検出部材51が位置検出センサ52によって検出され、それによりテーブル回転モータ9の回転が制御されて、回転テーブル44が回転方向において定位置に停止するようにされる。この停止のとき、アクチュエータ55によって可動部材56を移動させて、その先端嵌合部を回転ローラ54aに嵌合させる。この嵌合によりローラブラケット54を介して、回転方向において定位置に回転テーブル44を確実に停止させることができる。
【0053】
2.洗浄・乾燥工程について
2-1.洗浄工程
被洗浄物を洗浄装置1にセットするために、洗浄チャンバー16を後側位置とすることで、左右チャンバー部材22A,22Bが開き、洗浄チャンバー16内を露出した状態となるので、被洗浄物を回転テーブル44上の治具45に取り付けることができる。そして、取付終了後洗浄チャンバー16を前側位置とし、左右チャンバー部材22A,22Bを閉じ、洗浄チャンバー16を閉空間とする。この状態で、洗浄可能な状態となる。
【0054】
テーブル回転モータ9を作動して回転テーブル44を回転させ、第1及び第2ノズル群31A,31Bから洗浄液を噴射させる。これにより、被洗浄物が回転テーブル44とともに回転しながら、洗浄液により全体が洗浄される。このとき、噴射された洗浄液は、ベース42の後方に形成された矩形状の開口42b(図12参照)を通過して、排水される。
【0055】
所定時間、被洗浄物を洗浄した後、第1及び第2ノズル群31A,31Bの噴射を停止し、次の乾燥工程に移行する。なお、水の流れを示す水回路図は図13に、空気の流れを示す空気回路図は図14にそれぞれ示す。
【0056】
2-2.乾燥工程
次に、テーブル回転モータ9を作動して回転テーブル44を高速回転させ、コンプレッサを作動させる。そうすると、洗浄後の洗浄チャンバー16内の高湿の空気は、排気ダクトを通じて排気される。
【0057】
また、被洗浄物の下には回転テーブル44との間に空間があるので、この空間に空気が入り込み、被洗浄物の下面も乾燥される。
【0058】
そして、被洗浄物及び回転テーブル44の周囲を通過した空気は、ベース24の開口24aに向けて流れていく。この時、回転テーブル44の下方には空気の渦ができるので、これにより被洗浄物の下面の乾燥がさらに促進される。
【0059】
そして、開口24aから洗浄チャンバー16の下方に出て行く。開口24aを出た空気は、排気ダクトを通じて排気される。
【0060】
所定時間、被洗浄物を水切り乾燥したら、コンプレッサと回転テーブル44の回転を止める。そして、洗浄チャンバー16を後側位置(脱着位置)に移動させて、チャンバー部材22A,22Bを開き、洗浄チャンバー16の内部を露出させて、被洗浄物を取り外す。以上により、被洗浄物の洗浄・乾燥が完了する。
【0061】
2-3.変形例
・複数のノズルに、空気を噴射するエアノズルを追加する場合、乾燥工程において、エアノズルから空気を噴射して、被洗浄物の乾燥を促進することができる。
【0062】
・吸気ダクトを介してブロアと吸気口とが接続された構造の洗浄装置の場合、乾燥工程において、ブロアより排気した空気を洗浄チャンバー内に循環させて、この空気を乾燥に再利用することができる。
【0063】
3.その他の実施形態
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、洗浄チャンバーは円筒形状に限らず、角筒形状でもよい。また、ノズルは、洗浄液を噴射するノズルに限らず、洗浄液と空気を噴射する2流体ノズルでもよい。また、空気を噴射するエアノズルを追加してもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 洗浄装置
2 装置フレーム
3 洗浄ポンプ
4 液加温用ヒーター
5 引き出しスノコ
6 フロートスイッチ
7A,7B チャンバー開閉エアシリンダ
8 チャンバー移動エアシリンダ
9 テーブル回転モータ
10 ミストコレクタ
11 ラインフィルタ
12 オイルスキマ
13 シグナルタワー
14 ライトカーテン
15 ペンダント型の操作具
16 洗浄チャンバー
17 支持シャフト
18 縦部材
19 カムローラ
20 ガイドレール
21 底部材
21a 傾斜部
22 筒状部
22A,22B チャンバー部材
22Aa,22Ba 窓部
22Ab,22Bb 窓枠
22Ac,22Bc 給水口
22Ad 傾斜溝
23 回収タンク
24 ベース
25 ダクト
26A 遮水板
26B 遮蔽板
27 水よけ板
28 ゴムパッキン
29 パッキン
31A,31B ノズル群
32A,32B 蝶番
33A,33B 配管
34 シャフト取付板
41 固定チャンバー
42 基板
42a,42b 開口
43 回転軸
44 回転テーブル
45 治具
50 定位置停止機構
51 被検出部材
52 位置検出センサ
53 ブラケット
54 ローラブラケット
54a 回転ローラ
55 アクチュエータ
56 可動部材
図1
図2
図3
図4
図5
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