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特許7115755肝損傷の処置における使用のためのマクロファージに基づく治療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】肝損傷の処置における使用のためのマクロファージに基づく治療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/15 20150101AFI20220802BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220802BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20220802BHJP
【FI】
A61K35/15 Z
A61P1/16
C12N5/0786 ZNA
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019515418
(86)(22)【出願日】2017-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 GB2017052769
(87)【国際公開番号】W WO2018051136
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】1615923.8
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1707183.8
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513249781
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ エジンバラ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY COURT OF THE UNIVERSITY OF EDINBURGH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス、ステュアート
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、フィリップ スターキー
(72)【発明者】
【氏名】フォレスター、レズリー
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103977029(CN,A)
【文献】国際公開第2016/114723(WO,A1)
【文献】J.Immunol.Methods,2012,Vol.385,p.1-14
【文献】Nat. Rev. Immunol., 2003, Vol. 3, p. 23-35
【文献】J.Leukoc.Biol.,2008,Vol.84,p.1410-1421
【文献】Immunity,2010,Vol.32,p.593-604
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61P
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性肝損傷の処置での使用のための医薬組成物であって、選択的活性化マクロファージを含む医薬組成物
【請求項2】
前記急性肝損傷が、アセトアミノフェン、クラリスロマイシン、スタチン、ニコチン酸、アミオダロン、メトトレキサート、イソニアジド、ニトロフラントイン、オーグメンチン、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ナブメトン、ジクロフェナク、タクリンまたはジスルフィラムからなる群から選択される1つ以上の薬物の使用からの結果である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物
【請求項3】
前記薬物がアセトアミノフェンである、請求項2に記載の使用のための医薬組成物
【請求項4】
前記選択的活性化マクロファージが、前記1つ以上の薬物の使用から10時間後に投与される、請求項2または請求項3に記載の使用のための医薬組成物
【請求項5】
前記選択的活性化マクロファージが、IL-4と、IL-13および/またはCSF-1の少なくとも一つとを用いてマクロファージを極性化させることによって得られる、請求項1~4の何れかに記載の使用のための医薬組成物
【請求項6】
前記マクロファージが骨髄由来マクロファージである、請求項1~5の何れかに記載の使用のための医薬組成物
【請求項7】
前記選択的活性化マクロファージが、急性肝損傷を有する対象にとって自己由来である、請求項1~6の何れかに記載の使用のための医薬組成物
【請求項8】
前記選択的活性化マクロファージが多能性幹細胞由来である、請求項1~7の何れかに記載の使用のための医薬組成物
【請求項9】
前記選択的活性化マクロファージが、静脈内投与または点滴用に処方される、請求項1~8の何れか1項に記載の使用のための医薬組成物
【請求項10】
前記選択的活性化マクロファージが、細胞1x10~1x10個の用量で提供される、請求項1~9の何れか1項に記載の使用のための医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝損傷の処置での使用のための選択的活性化マクロファージに関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアミノフェン(パラセタモール、APAP)過剰摂取は、診療所における急性肝損傷(ALI)の一般的原因であり、米国では急性肝不全(ALF)の主な原因である(1~5)。APAPは、前臨床試験に対する典型的な肝臓毒ともなっており、APAP肝毒性を支える分子機序は現在よく理解されており、これは少なくとも40年の研究に相当する。しかし、診療所において、APAP誘発性ALIの治療管理は、主に薬物服用後早期(一般的には10時間以内)に有効な解毒剤として働くn-アセチルシステイン(NAC)療法に限定される。しかし、NAC療法の有効性は、APAP服用後遅れて(すなわち10時間超)来院する患者では実質的に低下する(6)。遅れて来院する患者に対する処置は、支持療法に大きく集中しており、その後にALFを発症する患者では肝臓移植が必要とされ得る。適切な臓器ドナーの不足および生涯にわたり免疫抑制剤が必要となるがゆえに、肝臓移植が理想的な治療介入ではないことは明らかである。したがって、APAP中毒で遅れて来院する患者に適用可能な新規療法の探索が急がれる。
【0003】
APAP中毒は、肝臓の小葉中心部の肝細胞の壊死が急速に始まることを特徴とする。即時的な臨床介入がないと、実質的な肝損傷が、一般的には免疫活性化、脳症、低体温および多臓器不全および死亡の高リスクを特徴とする全身性炎症反応症候群(SIRS)として知られる敗血症様反応を付随する肝不全へと進行し得る(7)。最近の研究から、肝臓自然免疫を維持するために働く組織常在マクロファージ(クッパー細胞、KC)が、APAP負荷後早期に枯渇するようになり、これが損傷中の肝臓における免疫学的欠損につながることが示された(8)。マクロファージは、アポトーシスのTNF関連弱誘導因子(TNF-related weak inducer of apoptosis)(TWEAK)の分泌を通じて増殖するように細管細胞(ductular cell)を刺激すると考えられる(Bird, T. G. et al. Bone marrow injection stimulates hepatic ductular reactions in the absence of injury via macrophage-mediated TWEAK signaling. Proc Natl Acad Sci U S A 110, 6542-6547, doi:10.1073/pnas.1302168110 (2013); Jakubowski, A. et al. TWEAK induces liver progenitor cell proliferation. J Clin 548 Invest 115, 2330-2340, doi:10.1172/jci23486 (2005))。これらの細管細胞(ductular cell)が線維症と関連し得る一方で(Williams, M. J., Clouston, A. D. & Forbes, S. J. Links between hepatic fibrosis, ductular reaction, and progenitor cell expansion. Gastroenterology 146, 349-356, doi:10.1053/j.gastro.2013.11.034 (2014))、これらは、再生肝臓前駆細胞(HPC)も含有し得る(Lu,W.Y.et al.,Hepatic progenitor cells of biliary origin with liver repopulation capacity.Nat Cell Biol 17,971-983,doi:10.1038/ncb3203(2015))。KCは、さらに全身毒性のリスクを与える肝損傷中に制御不全になる腸由来病原体からの免疫学的障壁も提供する(9、10)。CCR2依存性に肝臓に動員される循環単球の枯渇および機能不全につながるさらなる全身性の免疫学的な影響がある(11~13)。組織損傷および再生中のマクロファージ生物学の複雑で可塑性の性質を反映すると思われる肝損傷中のマクロファージの役割に関して、矛盾する文献が存在する。
【0004】
健常肝臓中の幹細胞は、非常に大きな再生能を有するが、ウイルス感染、アルコール乱用、毒素への曝露および代謝性障害により誘導される慢性損傷は、線維性スカー(fibrotic scaring)、肝硬変およびその再生過程の最終的な不全につながる(Friedman, S. L. Mechanisms of hepatic fibrogenesis. Gastroenterology 134, 1655-1669, doi:10.1053/j.gastro.2008.03.003 (2008))。
【0005】
利用可能な唯一の処置は臓器移植であるが、これは需要が増加しており、ドナー数が限定的であり、代替療法が急ぎ必要とされている(Soltys, K. A. et al. Barriers to the successful treatment of liver disease by hepatocyte transplantation. J Hepatol 53, 769-774, doi:10.1016/j.jhep.2010.05.010 (2010))。
【0006】
肝損傷の処置において使用され得る新規療法は探索が急がれる。肝損傷に対する新規療法を提供することが本発明の目的である。有利に、このような療法は、肝臓壊死の消散を加速し、全身性炎症反応を抑制し、肝臓再生を促進することが可能である。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、慢性または急性肝損傷などの肝損傷の予防または処置での使用のための選択的活性化マクロファージ(AAM)が提供される。
【0008】
適切には、肝損傷は、急性肝損傷、例えば薬物使用または薬物過剰摂取に付随する肝損傷などであり得る。適切には、肝損傷は、アセトアミノフェン、クラリスロマイシン、スタチン、ニコチン酸、アミオダロン、メトトレキサート、イソニアジド、ニトロフラントイン、オーグメンチン、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ナブメトン、ジクロフェナク、タクリンまたはジスルフィラムからなる群から選択される1つ以上の薬物の使用からの結果であり得る。適切には、薬物はアセトアミノフェンであり得る。適切には、肝損傷は、キノコ中毒などの中毒からの結果であり得る。
【0009】
適切には、AAMは、肝臓が壊死の徴候を示しているときに投与され得る。適切には、AAMは、中毒または薬物過剰摂取から10時間以上後に投与され得る。
【0010】
選択的活性化(M2様)マクロファージは、IL-4、IL-13、CSF-1またはそれらの組み合わせを用いてマクロファージを極性化することにより調製され得る。適切には、骨髄由来マクロファージ(BMDM)は、IL-4およびIL-13で極性化され得る。有利には、選択的活性化マクロファージは、AAMが肝損傷を有する対象にとって自己由来となるように、処置しようとする対象からのマクロファージ試料から調製され得る。
【0011】
適切には、選択的活性化マクロファージは、人工多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ES細胞)などの多能性細胞由来であり得る。
【0012】
適切には、選択的活性化マクロファージは静脈内投与用に処方される。
【0013】
適切には、選択的活性化マクロファージは、細胞10~10個の用量で提供され得る。
【0014】
別の態様において、本発明は、対象において肝損傷を予防するかまたは処置する方法であって、前記対象への治療的有効量の選択的活性化マクロファージを含む、方法を提供する。
【0015】
適切には、肝損傷は、急性肝損傷、例えば薬物使用または薬物過剰摂取に付随する肝損傷などであり得る。適切には、肝損傷は、アセトアミノフェン、クラリスロマイシン、スタチン、ニコチン酸、アミオダロン、メトトレキサート、イソニアジド、ニトロフラントイン、オーグメンチン、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ナブメトン、ジクロフェナク、タクリンまたはジスルフィラムからなる群から選択される1つ以上の薬物の使用からの結果であり得る。適切には、薬物はアセトアミノフェンであり得る。
【0016】
適切には、AAMは、肝臓が壊死の徴候を示しているときに投与され得る。適切には、AAMは、中毒または薬物過剰摂取から10時間以上後に投与され得る。
【0017】
選択的活性化(M2様)マクロファージは、IL-4、IL-13、CSF-1またはそれらの組み合わせでマクロファージを極性化することにより調製され得る。適切には、骨髄由来マクロファージ(BMDM)は、IL-4およびIL-13で極性化され得る。有利には、選択的活性化マクロファージは、AAMが肝損傷を有する対象にとって自己由来となるように、処置しようとする対象からのマクロファージ試料から調製され得る。
【0018】
適切には、選択的活性化マクロファージは、人工多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ES細胞)などの多能性細胞由来であり得る。
【0019】
適切には、投与は静脈内であり得、および/または細胞10~10個の用量で提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して本明細書中で後にさらに記載する。
【0021】
図1図1は、静脈内投与されるBMDMが肝臓および脾臓において急速に生着することを示す。(A)赤外線蛍光光学イメージングは、健常マウスおよびAPAP中毒マウスにおいて4時間以内で上腹部でVivotrack標識BMDM(5x10個、i.v.)が蓄積していることを示し、(B)15分ごとに測定した腹部ROIからの蛍光シグナルの定量は、4時間までの蓄積を示す。白丸は、未染色BMDMを投与されたマウスを示し、色付きの丸はVivotrack染色BMDMを投与されたマウス(黒丸、健常;赤丸、APAP中毒)を示す。(C)BMDMは、標識後の細胞ATPレベルにより示されるようにVivotrackに耐容性である。(D)蛍光顕微鏡は、標識後GFP陽性のBMDMの強く均一な染色を示すが、未標識BMDMでこれは示されず、(E)臓器のエクスビボイメージングは、健常マウスおよびAPAP中毒マウスにおける、移植(i.v.)後4時間での肝臓、肺および脾臓におけるBMDM局在化を示す。(F)臓器蛍光定量による臓器は、未染色細胞が投与された健常マウス(灰色のバー)および染色細胞が投与されたマウス(黒色のバー、健常;赤色のバー、APAP中毒)の両方における、肝臓、肺および脾臓でのBMDM局在を示す。蛍光シグナルは、健常な同等マウス肝臓と比較してAPAP中毒マウスの肝臓において70%弱く見え、このことから損傷肝臓において肝臓生着が少ないことが示唆される。(G)CFSE染色マクロファージにおけるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)に対する免疫組織化学3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)染色は、肝臓および脾臓実質(黒矢印)における典型的なマクロファージ形態を有する細胞での陽性染色を示す。BMDMは、肝臓の壊死領域(中心静脈(CV)周囲の強いバックグラウンド染色により特定;左画像中列)内およびその周囲で見られる。腎臓、肺または脳組織でBMDMは検出されなかった。パネル中の棒グラフは、標準偏差前後の平均値を示す。
【0022】
図2図2は、APAP誘発性肝損傷後、選択的活性化マクロファージ(AAM)が肝臓壊死を軽減することを示す。空腹マウスをAPAP(350mg/kg;i.p)で処置し、APAP投与から16時間後に、未操作(ナイーブ)または予め極性化されたBMDM(古典的活性化マクロファージ(CAM)、AAMまたは脱活性化マクロファージ(DAM))で処置した。(A)肝損傷バイオマーカー(ALT/AST/ALP)および機能マーカー(総ビリルビン/血清アルブミン)の血清化学分析は処置群間で差は示さない。白丸は、示されるように群ごとの個々の動物からの値を表し、(B)ヘマトキシリンおよびエオシン(H+E)染色は、APAP誘発性肝損傷の特徴である、中心静脈周囲の典型的なエオシン好性壊死領域を示す。パネルはマウス肝臓からの代表的な画像を示す(2x拡大率)。壊死の定量化は、示されているように群中の平均(水平線)前後の個々の動物あたりの白丸として右下に示す。アスタリスク記号は統計学的有意性を示す(P<0.05、クラスカル-ワリス検定)。
【0023】
図3図3は、極性化BMDM処置がAPAP誘発肝損傷後に肝細胞増殖を誘発することを示す。(A)増殖細胞を標識するために屠殺する1時間前に、APAP誘発性肝損傷後に極性化BMDMで処置したマウスをBrdU(1mg、i.p.)で標識した。パネルは、示されるように各群からの代表的な免疫蛍光(IF)染色を示す。核をDAPIで染色し、Alexa Fluor 555nm二次抗体の前に抗BrdU一次抗体(またはアイソタイプ対照抗体)を使用してBrdU陽性を染色した。切片をOperetta High Content Imaging System(Perkin Elmer)でイメージングし、定量した。全ての核のパーセンテージとして表した、BrdU陽性核(赤色に染色された核、546nmチャネルにおける最小蛍光強度500RFU)の数を数えることによって、切片を定量した。BrdU定量は、平均(黒色線)前後の個々の動物ごとに白丸として群で示す(右下)。スケールバーはパネルごとに左下に示す。アスタリスク記号は群間の統計学的有意性を示す(P<0.05、一元配置ANOVA)。(B)同時免疫染色から、実質および非実質起源の増殖細胞がAAMマウスにおいて肝臓を再生することが示される。
【0024】
図4図4は、極性化BMDM投与により、APAP誘発性肝損傷を有するマウスにおいて一連の循環炎症性サイトカインが減弱することを示す。電気化学発光技術(Meso Scale Discovery,Gaithersburg,MD)を用いて、BMDM(ナイーブBMDM、CAMおよびAAM)を投与されたマウスからの血清を、10プレックス(10-plex)パネルの炎症促進性サイトカインについてアッセイした。パネルは、分析した各サイトカイン(IFN-γ、IL-10、IL-12p70、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、CXCL1(KC/GRO)、TNFα)に対する群でのデータを示す。各白丸は、群ごとの個々の動物からのデータ点を表す。アスタリスク記号は統計学的有意性のレベルを表す(P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;一元配置ANOVA)。
【0025】
図5図5は、AAM投与によって、APAP誘発性肝損傷後のマウスにおいてCsf1発現が上方制御され、炎症性Cxcl1およびIl6発現が低下することを示す。ALI中のマクロファージシグナル伝達に関与していることが知られているサイトカインおよびケモカインの一群を、APAP誘発性肝損傷に対するBMDM処置後に肝臓全体でアッセイした。パネルは、APAP投与後にPBSを投与されたマウスと比較した群中の各遺伝子の平均相対発現を示す(BMDMなし)。黒色バーは標準偏差前後の平均の倍単位の差を示す(n=6)。生存促進遺伝子Csf1の発現は、AAM処置マウスにおいて有意に高かった。循環マーカーと一致して、Cxcl1およびIl6の発現は、AAM処置マウスにおいて有意に低かった。Gapdhをハウスキーピング遺伝子とした。アスタリスク記号は統計学的な差を示す(P<0.05;一元配置ANOVA)。
【0026】
図6図6は、AAMがナイーブおよびCAMを超える食作用能促進を呈することを示す。(A)極性化BMDMをアポトーシス蛍光胸腺細胞とともに温置した。BMDMをアポトーシス胸腺細胞(以前のように、3~5週齢のC57BL6マウスから採取し、1μMヒドロコルチゾンで処理した初代胸腺細胞(D.A.Ferenbachら、2010)とともに温置した。製造者の説明書(L.Bosurgiら、2015)に従ってCMTMR(Invitrogen)を用いてアポトーシス胸腺細胞を標識し、次いで、異なる表現型(緑色、AAM;赤色、CAM;黒色、ナイーブ)に対して極性化したBMDMとともに、30、60または120分間温置した。パネルは、CMTMR陽性BMDMのパーセンテージ(左)、それらの平均蛍光強度(MFI;左から2番目)、正規化MFI(右から2番目)およびMFIヒストグラム(右)を示す。淡青色のヒストグラムは未染色細胞を表す。(B)AAMにおいて食作用後にBMDM上のLy6C発現が減少する。左パネルは、異なる表現型に対して極性化されたLy6C陽性BMDMのパーセンテージを示し、右パネルは代表的なヒストグラムを示す。(C)AAMは、ナイーブまたはCAMよりも多くのザイモサン被覆pHrodo粒子を貪食する。BMDMをザイモサン被覆pHrodoバイオ粒子とともに最長で125分間温置し、ハイコンテンツイメージングを介してリアルタイムで分析した。グラフは、経時的に、群(緑色、AAM;赤色、CAM、黒色、ナイーブ)中の標準偏差前後の蛍光閾値(食作用に対して陽性)を上回る細胞の平均割合を示す。(D)様々な時間に撮影された代表的な画像から、AAMが、ナイーブマクロファージまたはCAMよりも早く、大きい容量まで緑色蛍光を呈することが示される。青色核染色(NucBlue)およびDeepRed Cell Maskで細胞を可視化する。
【0027】
図7図7は、移植されたAAMがインビボで高度に食作用性であり、それらの抗炎症性表現型を保持することを示す。(A)試験設計時系列は、APAP後16時間でのBMDM移植前の空腹マウスへの単回APAP投与を示す。内在および外来細胞の食作用能は、APAP後36時間での処分前に、PKH26色素(i.v.;貪食細胞によって専ら摂取される色素)の負荷によって評価した。(B)PBS(最上列)またはAAM(最下列)を投与されたマウスからの、ペトリ皿中の代表的な左外側葉の写真。APAP(青色の矢頭)後に出血性壊死の局所領域がPBS処置マウスで観察され、これはマクロファージ処置マウスの肝臓では観察されない。(C)BMDM療法が行われたマウスでは血清トランスアミナーゼが実質的に減少する(ALT、左パネル;AST、右パネル)(D)上のパネルは、マクロファージ処置マウスが肝臓においてLy6C+浸潤マクロファージの若干の減少を呈することを示し、パネルは、浸潤細胞のパーセンテージ(左)および絶対数(右)を示す。下のパネルは、Ly6C+マクロファージがマクロファージ処置マウスの肝臓においてより高い食作用活性を有することを示唆する傾向を示す(左パネル、パーセンテージ;右パネル絶対数)。(E)移植BMDMは、移植後20時間で、血液および肝臓の両方で多数検出される。(F)肝臓で検出されたBMDMの大部分はLy6C陰性であり、これにより、殆どの細胞がそれらの抗炎症表現型を保持することが示唆され、(G)移植マクロファージは肝臓において実質的な食作用活性を示し、食作用はCFSE+およびPKH26+マクロファージにおいてゲートオン(gated on)された。95%を超えるLy6C-BMDMが食作用に対して陽性であり、インビボで高い食作用活性を確認する。
【0028】
図8図8は、健常マウスにおける未操作BMDM投与後の血清化学を示す。BMDM投与の20時間後に採取したマウス血清中で肝損傷および機能のマーカーをアッセイした(細胞1x10個、i.v.)。パネルは、群中の平均(黒線)前後の個々のマウス(白丸)の値を示す。何れのバイオマーカーも、PBSビヒクル対照と比較してBMDM群で統計学的に有意ではなかった(スチューデントのt検定)。
【0029】
図9図9は、APAP処置後早期(4時間)に投与されたナイーブBMDMが、肝損傷を軽減しないことを示す。APAP投与(BMDM投与の20時間後、1x10個i.v.)の24時間後に採取したマウス血清中で肝損傷および機能のマーカーをアッセイした。測定したマーカーは統計学的に有意ではなかったものの、血清トランスアミナーゼは、BMDM処置マウスでより高い傾向を示し、死亡はBMDM処置群でのみ観察された(スチューデントt検定)。
【0030】
図10図10は、サイトカイン介在性BMDM極性化が通常および超低付着性プラスチック上で起こることを示す。通常のプラスチック(黒色バー)または超低付着性プラスチック(灰色バー)の何れかにおいて、48時間にわたり、LPS(50ng/mL)およびIFNγ(20ng/mL)-CAM用)、IL-4(20ng/mL)およびIL-13(20ng/mL)-AAM用、IL-10(10ng/mL)-DAM用の何れかとともに、または増殖因子なし(ナイーブマクロファージ)でBMDMを培養した。(A)古典的活性化遺伝子(Nos2、Tnf、Ccl2)についての相対的遺伝子発現分析から、通常および低付着性プラスチックの両方においてLPS/IFNで処理したBMDMにおける発現の実質的かつ一貫した増加が示される。(B、C)原型的な選択的活性化遺伝子(B、選択的活性化遺伝子:Chil3、Retnla、Mrc1、Arg1;C、DAM:Il10)の遺伝子発現分析から、それぞれIL-4/IL-13(B)およびIL-10(C)とともに培養したBMDMにおける発現の一貫した増加が示される。選択的活性化遺伝子は両方のプラスチックタイプでIL-4/IL-13によって上方制御され、一方でIL-10処理後の低付着性プラスチックにおいてIl10遺伝子発現がより高かった。
【0031】
図11図11は、極性化BMDM投与が、APAP誘発性肝損傷を有するマウスの肝臓全体において炎症性サイトカインの一群にわたりより弱い傾向を示すことを示す。電気化学発光技術(Meso Scale Discovery,Gaithersburg,MD)を用いて、BMDM(ナイーブ、CAM、AAM)で処置したマウスからの血清を、10プレックス(10-plex)パネルの炎症促進性サイトカインについてアッセイした。パネルは、分析した各サイトカイン(IFN-γ、IL-10、IL-12p70、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、CXCL1(KC/GRO)、TNFα)に対する群でのデータを示す。各白丸は、群ごとの個々の動物からのデータ点を表す。アスタリスク記号は統計学的有意性のレベルを表す(P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;一元配置ANOVA)。
【0032】
図12図12は、ヒト単球由来マクロファージがインビトロ極性化後に食作用動態の変化を示すことを示す。LPS/IFN(古典的活性化については、hCAMに向けて)、IL4/IL-13(選択的活性化については、hAAMに向けて)、または刺激なし(ナイーブMDM)で培養する前に分化を推進するために7日間にわたりヒト組み換えCSF1とともにインビトロでヒト単球を温置した。マクロファージを96ウェルCellCarrierプレートに細胞1x10個/ウェルで播種し、ザイモサングリーンpHrodoバイオ粒子とともに125分間温置した。(A)群あたり4ウェルからのpHrodo陽性細胞のリアルタイム平均割合。スポットは、標準偏差前後の平均値を示す。(B)温置中の様々な時点における培養中のhMDMからの代表的画像。青色染色はNucBlue核を表す。赤色染色はDeep Red細胞マスクの細胞質染色である。緑色シグナルは、酸性リソソーム中の摂取されたpHrodoバイオ粒子を表す。食作用の傾向はマウスBMDMと類似していたが、粒子摂取の開始が遅れた。
【0033】
図13図13は、フローサイトメトリーゲーティングストラテジーを示す。肝臓消化物の亜集団の分類からの代表的なフロープロット。上部パネルは、ダブレットおよび肝臓/死染色について陰性であるものを除き、分析に使用される全ての細胞を示す。亜集団は全肝マクロファージまたはCD45+細胞の割合として表した。肝常在マクロファージは、生存可能なCD45+Ly6G-CD3-NK1.1-CD19-CD11blowF4/80highとして定義した。肝浸潤マクロファージは、消化された肝臓の非実質分画からの生存可能なCD45+Ly6G-CD3-NK1.1-CD19-CD11bhighF4/80low細胞として定義され、マクロファージサブセットを同定するために使用した。肝臓あたりの細胞の絶対数の定量は、各サブセットをNPCの割合として表し、肝臓の消化部分中のNPCの総数を計数し、重量差により肝臓全体中のNPCの総数を計算し、それにより各サブ集団の総数を計算することにより行った。移植AAMはCFSE+として同定された。総生存可能CD45+Ly6G-CD3-CD19-NK1.1-細胞のゲートでパーセンテージCFSE+細胞を計算した。陰性は、AAMの代わりにビヒクルを投与されたAPAP中毒マウスからの肝臓において設定した。AAMを、それらのLy6C発現についてさらに分類し、FMO対照を使用してゲーティングを設定した。貪食細胞のパーセンテージ(陽性および陰性)は、CFSE+細胞のゲートにおいて計算した。陰性は、AAMを移植したがPKH26PCLの代わりにビヒクルを注射したAPAP中毒マウスからの肝臓を用いて設定した。PKH26PCL MFlは同じゲートにおいて計算した。
【0034】
図14図14は、フローサイトメトリーゲーティングストラテジーを示す。食作用分析の亜集団の分類からの代表的なフロープロット。パネルは、ダブレットを除いて、試験において分析された全細胞を示す。BMDMはCD11b+として同定された。貪食細胞のパーセンテージは、CD11b+細胞のゲートにおいて計算した。食作用に対して陽性のBMDMは、CMTMR+(すなわち蛍光アポトーシス胸腺細胞)として定義された。非特異的結合のパーセンテージ(4℃での食作用、右上のパネル)を食作用性BMDMのパーセンテージ(37℃)から差し引いた。貪食細胞をそれらのLy6C発現に基づいてさらに分類した(右下パネル)。ゲートはFMO対照を使用して設定した。
【0035】
図15図15は、APAP中毒マウスにおけるAAM送達後の全血パラメーターを示す。本発明者らは、DPBS(ビヒクル対照)対AAM(5x10個、静脈内)を投与された中毒動物における全血の何れのパラメーター間でも統計学的差異を認めなかった。(A)パネルは、白血球(WBC)、赤血球(RBC)、ヘモグロビン(Hgb)、ヘマトクリット(HCT)および血小板(PLT)について示されるように、群ごとに分類された白丸(個々の動物)を示す。(B)1群あたりのリンパ球数(左)およびパーセンテージ(右)。(C)1群あたりの単球数(左)およびパーセンテージ(右)。(D)1群あたりの顆粒球数(左)およびパーセンテージ(右)。
【0036】
図16図16は、ESDMおよびBMDMの比較を示す。画像解析を用いたBMDM(A)およびESDM(B)の染色サイトスピンは、ESDMがより大きいことを示す(C)(スケールバー30μM)。ESDMにおける純粋な集団を示すBMDM(D)およびESDM(E)のフローサイトメトリー分析。Phrodoビーズ添加から0(I)、50(II)、100(III)および150(IV)分後のBMDM(G)およびESDM(H)のライブ食作用アッセイからの画像およびHarmony画像解析ソフトウェアを用いた食作用速度の定量(I)(スケールバー50μM)。[p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001;n=3、(C)対応のないt検定、(F)クラスカル-ワリス検定を用いた一元配置ANOVA、(I)シダックの多重比較検定を用いた二元配置ANOVA]
【0037】
図17図17は、ESDMおよびBMDMのM1およびM2刺激を示す。ナイーブ、M1およびM2刺激BMDMおよびESDMのGriess一酸化窒素アッセイ(A)、およびqRT-PCR分析による主要マーカーの発現、M1のマーカーとしてのiNos(B)およびCd86(C)、M2表現型のマーカーとしてのArg1(D)およびFizz1(E)、および組織再構築のマーカーとしてのTweak(F)、Mmp9(G)、Mmp12(H)およびMmp13(I)。M1およびM2刺激BMDM(J)およびESDM(K)の食作用の定量化。[p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001;群あたりn=3、テューキーの多重比較検定を用いた二元配置ANOVA]。
【0038】
図18図18は、より高用量のESDMが抗線維化効果を有することを示す。損傷および1000万または2000万個のマクロファージのマクロファージ注射の模式図(A)。1000万(10m)または2000万(20m)個の何れかのESDMを注射したCCl4処理肝臓からの肝臓切片のPSR染色(B~G)およびaSMA染色(H~M)。スケールバー200μM。[p<0.05、1群あたりn=5、対応のないt検定]。
【0039】
図19図19は、ESDMが損傷肝臓において前駆反応を開始し得ることを示す。対照損傷肝臓(A~F)と比較して、ESDMを注射したマウスにおいて、有意に多数のPanCK陽性細胞が観察された。スケールバー100μM。[p<0.05、1群あたりn=5、対応のないt検定]。
【0040】
図20図20は、ESDMがリポソームクロドロネート処置マウスの肝臓を再配置させ得ることを示す。単球由来対組織常在マクロファージにおいて差次的に発現されるマーカー、Myb(A)、Ccr2(B)およびPu.1(C)の発現。リポソームクロドロネート誘発クッパー細胞枯渇およびESDMまたはBMDMの注射の略図(D)。異なる処置群からの肝臓切片のCFSE免疫染色(E~H;スケールバー100μM)およびCFSE免疫組織化学(I~L、スケールバー50μM)。CFSE+免疫染色(M)およびCFSE+免疫組織化学(N)の定量。矢印は検出されたCFSE+細胞を指す。(O)アルカリホスファターゼ(ALP)および(P)アルブミンレベルの血清分析。(Q)F4/80免疫組織化学によるリポソームクロドロネート処置後の肝臓評価におけるマクロファージ集団。クロドロネート処理後のPBS対照(A)、24時間(B)、48時間(C)および72時間(D)のF4/80染色肝臓切片の代表的な画像。F4/80+染色の定量分析(E)。(R)FITC免疫組織化学による異なる臓器におけるESDMおよびBMDM生着の評価。それぞれPBS(A~D)、リポソームクロドロネート(E~H)、リポソームクロドロネートおよびBMDM(I~L)およびリポソームクロドロネートおよびESDM(M~P)で処置したマウスの肝臓、肺、腎臓および心臓切片における外来性マクロファージの代表的画像(スケールバー100μM)。[p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001;群あたりn=5、一元配置ANOVA]
【0041】
図21図21は、血清トランスアミナーゼが、ビヒクル対照と比較して、注射から20時間後にESDM処置マウスにおいて異ならないことを示す。
【0042】
図22図22は、ESDMが、組み換えマウスIL-4/IL-13を用いたインビトロでの24時間極性化後のM2関連遺伝子の顕著な増加を示すことを示す。
【0043】
図23図23は、選択的活性化ESDMがインビトロで食作用能が高いことを示す。インビトロでアポトーシス性胸腺細胞とともに温置されたESDMは、栄養を与えられていない同等細胞に対して、食作用について79%陽性を示す。
【0044】
図24図24は、ESDM処置マウスが、ESDM注射(5x10個、i.v.)から20時間後に小葉中心部壊死領域の縮小を示すことを示す。パネルは、ヘモトキシリン(Haemotxylin)およびエオシン(H+E)染色および画像定量化中に使用されるそれらの対応する画像セグメンテーション(分類子)を示す。
【0045】
図25図25は、移植ESDM(黒矢印)が肝臓および脾臓に局在することを示す。パネルA-肝臓(上段、x20倍拡大率;下段、x40倍拡大率)切片。パネルB-脾臓切片。
【0046】
図26図26は、ヒト多能性幹細胞からのマクロファージの産生を示し、hPSC由来のマクロファージは、CD11bおよび25F9の両方(B)を発現するが、CD93(A)は発現せず、重要なM1(C、D)およびM2関連遺伝子(E、F)は刺激時に上方制御される。ライブ食作用アッセイを使用したところ、iPSC-DMはMDMと同じ傾向を辿り、「ナイーブ」およびM2活性化マクロファージは、M1活性化マクロファージよりも食作用性が強かった(G、H)。[p<0.05、**p<0.01、***p<0.001;n=3、(C~F)一元配置ANOVA、(G~H)テューキーの多重比較検定を用いた二元配置ANOVA]。
【0047】
図27図27は、iPSC由来マクロファージがCD45(A)、25F9(B)、CD169(C)、CD163(C)、CD14(D)およびCD43(E)を発現することを示す。ごく一部のiPSCには、低レベルのVCAM1(F)およびCD15(G)がある。iPSCはCD93(B)を発現しない。
【0048】
図28図28は、iPSC由来マクロファージがCD206(A)、CD115(B)、CD86(C)、CX3CR1(E)、CCR2(F)、CCR5(G)およびCCR8(H)を発現するがHLA-DR(D)を発現しないことを示す。
【0049】
図29図29は、移植の20時間後の転写変化度を決定するための、APAP中毒マウスまたは健常マウス(n=3)への移植後のFACS分類AAMからの低密度マイクロアレイデータを示すボルケーノプロット(それぞれ、y軸およびx軸上の倍単位の変化に対する統計学的有意性)を示す。APAP処置マウスとPBS処置マウスとの間で異なる統計学的に有意な遺伝子は、水平線より上にある。スチューデントのt検定。AAMは一般に、それらの抗炎症表現型を保持し、分析された95%の遺伝子は、APAP処置マウスとPBS処置マウスとの間で差はなかった。
【詳細な説明】
【0050】
本発明者らは、驚くべきことに、選択的活性化マクロファージ(AAM)が肝臓に対する損傷の処置において特に有用であることを見出した。驚くべきことに、AAMの投与の結果、以下の有利な効果のうち1つ以上が得られ得る:壊死の軽減、肝細胞増殖の増加、炎症促進性サイトカインレベルの低下、損傷部位での食作用の増加および内在性の炎症性浸潤マクロファージの割合の低下。したがって、AAM療法は、有利に、肝炎壊死の解消を加速し得、全身性炎症反応を抑制し得、肝線維症を軽減し得、肝瘢痕化を軽減し得、および/または肝再生を促進し得る。
【0051】
インビトロでESC由来の造血細胞は、発生中の卵黄嚢における造血の原始波(primitive wave)に関連する血液細胞とより密接に関連していると考えられる(Zambidis, E. T., Peault, B., Park, T. S., Bunz, F. & Civin, C. I. in Blood Vol. 106 860-870 (2005))。組織常在マクロファージは、造血幹細胞(HSC)が胚において出現するかなり前の造血の原始波(primitive wave)に由来し、Mybの非存在下で発生することが知られている(Schulz, C. et al. A lineage of myeloid cells independent of Myb and hematopoietic stem cells. Science 336, 86-90, doi:10.1126/science.1219179 (2012))。適切には、本明細書に記載のマクロファージは組織常在様マクロファージであり得る。あるいは、本明細書に記載のマクロファージは単球由来様マクロファージであり得る。組織常在様マクロファージは、MybおよびCcr2の発現レベルがより低いことおよびPu.1の発現がより高いことを特徴とし得る。
【0052】
選択的活性化(M2様)マクロファージは当技術分野で公知であり、Tヘルパー2(th2)サイトカインインターロイキン-4(IL-4)およびIL-13を用いて骨髄由来マクロファージを極性化することによって調製され得る。例えば、AAMはGordonら、Immunity 32,May 28,201,593~604頁で詳述される。有利には、AAMは、本発明の実施例に記載のようにマクロファージから産生され得る。
【0053】
AAMは、Chil3(Ym1)、Retnla(Fizz)、Mrc1(マンノース受容体1)およびArg1(アルギナーゼ)のそれらの高発現を特徴とし得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「肝損傷」は肝毒性を指す。単なる例として、肝損傷は、自己免疫性肝炎、原発性移植片無機能、過小グラフト症候群、悪性腫瘍および/または薬物誘発性肝損傷の結果として対象において起こる。適切には、薬物誘発性肝損傷は、クラリスロマイシン、スタチン、ニコチン酸、アミオダロン、メトトレキサート、イソニアジド、ニトロフラントイン、オーグメンチン、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ナブメトン、ジクロフェナク、タクリンまたはジスルフィラムからなる一覧から選択される1つ以上の薬物の使用の結果であり得る。より適切には、薬物誘発性肝損傷は、アセトアミノフェン過剰摂取の結果として生じる。
【0055】
肝臓への長期的な障害は慢性肝損傷につながり得る。単なる例として、慢性肝損傷は、ウイルス性肝炎、アルコール、肥満および代謝障害から引き起こされ得る。慢性肝損傷は、線維症、肝瘢痕化および肝硬変を引き起こし得、これらは正常な肝臓組織の瘢痕組織による置き換えを特徴とする。本発明は、驚くべきことに、投与されたESDMが、インビボで肝線維症の量を有意に減少させ、線維形成性筋線維芽細胞および活性化肝前駆細胞(特にPanCK+細管細胞(ductular cell))の数を下方制御したことを発見した。さらに、驚くべきことに、ESDMが枯渇クッパー細胞区画を再配置させ得ることが見出された。理論に拘束されることを望まないが、ESDMは瘢痕組織の細胞外マトリクス(ECM)成分を破壊するマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)を分泌し得ると考えられる。適切には、M2様マクロファージに極性化されたESDMも慢性肝損傷の処置において有用であり得る。
【0056】
本発明はまた、驚くべきことに、培養中にAAM表現型に刺激されたマクロファージがインビボでこの抗炎症性表現型を保持することも見出した。これにより、移植されたマクロファージが表現型において炎症促進性になり得、それによって損傷の処置に有害となり得るという潜在的な安全性の懸念が克服される。
【0057】
適切には、AAMは肝損傷後の再生期に投与され得る。例えば、薬物誘発性肝損傷から16時間後である。本発明は、この期間におけるAAMの投与によって壊死が軽減されることを示した。例えば、アセトアミノフェン過剰摂取後の再生期におけるAAMの投与が、中心小葉壊死を60%減少させ、肝細胞増殖を8倍増加させ、ならびに循環炎症促進性サイトカイン(IFN-γ、IL-6、CXCL1およびTNF-αなど)のレベルを低下させることが示された。したがって、AAMは再生反応を加速させ得る。
【0058】
理論に縛られることを望むものではないが、AAMはそれらの高度に食作用性の表現型ゆえに肝臓から壊死物質を除去すると考えられる。
【0059】
有利には、選択的活性化マクロファージは、AAMが肝損傷を有する対象にとって自己由来となるように、処置しようとする対象からのマクロファージ試料から調製され得る。例えば、マクロファージ試料を対象から採取し、増殖させ、AAMとして特徴付けし、再注入し得る。
【0060】
適切には、選択的活性化マクロファージは、ヒト人工多能性幹細胞由来であり得る。これは、アセトアミノフェン中毒など、急性肝不全に急速に進行する肝損傷にとって有利であり得る。
【0061】
ES細胞およびiPSCなどの多能性幹細胞からマクロファージを産生させる様々な方法が当技術分野で公知である、Yeung et al.2012( “Conditional-ready mouse embryonic stem cell derived macrophages enable the study of essential genes in macrophage function”. Sc. Rep. 2015 Mar 10;5:8909. doi: 10.1038/srep08908)、Zhuang et al.2012(“Pure populations of murine macrophages from cultured embryonic stem cells. Application to studies of chemotaxis and apoptotic cell clearance.” J Immunol Methods. 2012 Nov 30;385(1-2):1-14. doi: 10.1016/j.jim.2012.06.008. Epub 2012 Jun 18.)、Sneju et al.(“Application of iPS cell-derived macrophages to cancer therapy” Oncoimmunology. 2014; 3: e27927)、Hale et al.(“Induced Pluripotent Stem Cell Derived Macrophages as a Cellular System to Study Salmonella and Other Pathogens” PLOS, http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0124307)、Zhang et al.(“Functional Analysis and Transcriptomic Profiling of iPSC-derived Macrophages and Their Application in Modeling Mendelian Disease” Circ Res. 2015 Jun 19;117(1):17-28)、Mucci et al.(“Murine iPSC-Derived Macrophages as a Tool for Disease Modeling of Hereditary Pulmonary Alveolar Proteinosis due to Csf2rb Deficiency” Stem Cell Reports. 2016 Aug 9;7(2):292-305.)、およびvan Wigenburt et al.,(“Efficient, Long Term Production of Monocyte-Derived Macrophages from Human Pluripotent Stem Cells under Partly-Defined and Fully-Defined Conditions” PLOS ONE 8(8): e71098. doi:10.1371/journal.pone.0071098)を参照のこと。このようなマクロファージは、Tヘルパー2(th2)サイトカインインターロイキン-4(IL-4)およびIL-13を用いてAAMに極性化され得る。IL-4/IL-13を用いた極性化の結果、Chil3(例えば、ナイーブBMDMに対して最大およそ100倍の増加)、Retnla(例えば、最大1000~100000倍の増加)、Mrc1(例えば最大およそ10倍の増加)、Arg1(例えば最大およそ100~1000倍の増加)に対する遺伝子発現において動的な変化が起こり得る。
【0062】
適切には、AAMはES細胞由来であり得る。したがって、ES細胞由来マクロファージ(ESDM)は、ES細胞をコロニー刺激因子-1(CSF-1)(M-CSFとしても知られる)およびIL-3の存在下で培養して胚様体(EB)を形成させることによって作製され得る。EBは組織培養プラスチックに接着する一方で、マクロファージ前駆細胞は非接着性であり、したがって培地中に放出される。次いで、マクロファージ前駆細胞を様々な時点で、例えば10または20日後に採取し、未処理ペトリ皿上に播種し、CSF-1のみの存在下で培養し得る。この工程は、単層を形成させるプラスチックに接着し、ESDMに成熟する単球様細胞を生じさせ得る。ES細胞のESDMへの成熟は、成熟マクロファージ特異的マーカーF4/80(マウスマクロファージ特異的)または25F9(ヒトマクロファージ特異的)およびCD11bの存在を検出することによって監視し得る。さらに、ヒトマクロファージは、単球マーカーCD93が存在しないことを特徴とし得る。有利には、記載の方法は、ESDMの実質的に均質な集団を生じさせる。
【0063】
あるいは、AAMはiPSC由来であり得る。適切には、iPSCのマクロファージへの分化のための方法は、サイトカインミックス1(骨形成タンパク質(BMP4)、血管内皮増殖因子(VEGF)および幹細胞因子(SCF)を含む)を培地に追加することを含み得る。細胞を切断し、除去し、分割し、サイトカインミックス1を追加した新鮮培地中で再培養し得る。第2日にサイトカインを追加しながら3日間懸濁状態で細胞を培養し、EBを形成させ得る。次いで、サイトカインミックス2(M-CSF、IL3、Glutamax、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびβ-メルカプトエタノールを含む)を追加した培地にEBを移し得る。プロトコールの残りの期間、使用済み培地を3~4日ごとに新鮮培地と交換して、この培地中でEBを維持し得る。約2週間後、EBが培養上清中にマクロファージ前駆体を産生し、これを回収し、サイトカインミックス3(M-CSF、Glutamax、ペニシリン/ストレプトマイシン)を追加した培地に移し、iPSC由来マクロファージ(iPSC-DM)に成熟させた。マクロファージ前駆細胞は、およそ2か月間、週に2回、回収し続け得る。
【0064】
好ましくは、iPSC由来マクロファージ(iPSC-DM)はヒトiPSC由来である。あるいは、iPSC-DMはマウス由来であり得る。
【0065】
得られたESDMまたはiPSC-DMは、続いて、LPSおよびIFNγで処理することによりM1様表現型の何れかを採用するためにインビトロで極性化され得る。あるいは、IL-4を用いてAAMを得るためにESDMまたはiPSC-DMを極性化し得る。あるいは、IL-4、IL-13およびCSF-1を用いてAAMを得るためにESDMを極性化し得る。M1様極性化マクロファージは古典的活性化マクロファージ(CAM)としても知られる。ESDM由来のAAMは、それらの、Chil3(Ym1)、Retnla(Fizz)、Mrc1(マンノース受容体1)およびArg1(アルギナーゼ)の高発現を特徴とし得る。対照的に、M1様極性化マクロファージ(ESDM、BMDMまたはiPSC-DMなど)は、NO産生の有意な増加ならびにiNosおよびCd86の遺伝子発現増加を特徴とし得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、肝損傷の処置から恩恵を受け得るあらゆる個体を指す。対象はヒト対象であり得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、進行を妨げる、または対象における肝損傷を伴う臨床症状を部分的または完全に軽減する介入を指す。適切には、この処置の結果、肝臓再生が増加し得るかまたは加速され得る。
【0068】
当然のことながら、治療的有効量のAAMは、処置しようとする対象の体重を含む様々な要因に依存する。例として、治療的有効量は、1x10~1x10個のAAMの用量の形態であり得るか、または治療的有効量は、2x10~2x10個のAAMの用量の形態であり得る。具体的には、治療的有効量は、2x10個の用量の形態であり得る。
【0069】
適切には、AAMまたはAAMを含む医薬組成物は、単回投与で提供され得る。そうではあるが、複数回投与もまた利用され得ることが理解されよう。
【0070】
適切には、AAMは医薬組成物中に含まれ得る。例えば、医薬組成物は治療的有効量のAAMおよび薬学的に許容される担体を含み得る。
【0071】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、対象への投与に適した、何らかの適切な希釈剤、賦形剤またはそれらの組み合わせを指す。薬学的に許容される担体は、対象へのAAMの送達を促進する有機または無機物質であり得る。
【0072】
適切な実施形態において、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤および適合性の担体をさらに含み得る。本組成物はまた、抗酸化剤および/または保存剤も含み得る。適切な抗酸化剤は、言及されるチオール誘導体(例えばチオグリセロール、システイン、アセチルシステイン、シスチン、ジチオエリスリトール、ジチオスレイトール、グルタチオン)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、亜硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムアセトン、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオ硫酸ナトリウム)およびノルジヒドログアイアレイン酸(nordihydroguaiareticacid)からなる群から選択され得る。適切な保存剤は、例えばフェノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウムおよび塩化セチルピリジニウムであり得る。
【0073】
本発明の医薬組成物は、何らかの適切な経路を介して対象に投与するためのものであり得る。適切な投与経路は、静脈内注射または点滴からなる群から選択され得る。医薬組成物を投与するための他の方法は当業者にとって公知であろう。
【0074】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という語およびそれらの変形語は、「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味し、それらは他の部分、添加剤、成分、整数または段階を排除すること(および排除しないこと)を意図しない。本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が用いられる場合、本明細書は、文脈上別段の要求がない限り、複数形ならびに単数形を企図すると理解すべきである。
【0075】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して記載される特性、整数、特徴、化合物、化学的部分または基は、適合しない場合を除き、本明細書中に記載の何らかの他の態様、実施形態または例に適用可能であると理解されたい。本明細書中で開示される全ての特性(何れの添付の特許請求の範囲、要約および図面も含む)、および/またはそのように開示される何らかの方法または工程の全ての段階は、このような特性および/または段階の少なくとも一部が互いに排他的である組み合わせを除き、あらゆる組み合わせで組み合わせられ得る。本発明は、何れの前述の実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書中で開示される特性のあらゆる新規のものまたはあらゆる新規の組み合わせ(何れの添付の特許請求の範囲、要約および図面も含む)、またはそのように開示されるあらゆる方法または工程の段階のあらゆる新規の1つまたはあらゆる新規の組み合わせに及ぶ。
【0076】
読者は、本願に関連して本明細書と同時またはそれ以前に提出された全ての論文および文書に注目し、これらは、本明細書とともに公衆の縦覧に対して開かれ、このような論文および文書の全ての内容は参照により本明細書中に組み込まれる。
[実施例]
実施例1:骨髄由来マクロファージ
方法
【0077】
マウスBMDM:ペニシリン/ストレプトマイシン(100U/mL、100μg/mL)を含有するハンクス平衡塩類溶液(HBSS、Gibco)中でC57/BL6雄マウス(8~10週齢)の大腿骨および脛骨を回収した。10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシン(100U/mL、100μg/mL)を追加したDMEM:F12(1:1)細胞培養培地(Gibco)を用いて骨髄(BM)を流し出した。マウスBMを遠心分離し(400g、5分)、次いで再懸濁し、20ng/mLマウス組み換えCSF1(Peprotech)を含有する追加済みDMEM:F12培地(20mL)中で100μmフィルターに通して濾過した。次いで、BM懸濁液を滅菌超低接着性フラスコ(Corning Inc.)に移し、37℃、5%CO、20mL体積で温置した。2日ごとに、400ng CSF1を含有する新鮮培地と培地の10~20%を交換した。BMDM極性化のために、移植の24時間前に、超低接着性フラスコ中でリポ多糖(LPS、50ng/mL、Sigma Aldrich)および組み換えマウスインターフェロンガンマ(IFNγ、20ng/mL、Peprotech)を用いて細胞を極性化させ、古典的活性化マクロファージ(CAM)を生成させた。AAMについては、組み換えマウスインターロイキン-4およびインターロイキン-13(IL-4/IL-13、20ng/mL、Peprotech)でBMDMを極性化させた。不活性化マクロファージ(DAM)については、組み換えマウスインターロイキン-10(IL-10、10ng/mL、Peprotech)でBMDMを24時間刺激した。
【0078】
ヒト単球由来マクロファージ:ヒト単球由来マクロファージ(hMDM)は、本質的に以前に記載されたように(19)、凍結保存CD14単球から分化させた。簡潔に述べると、超低接着性フラスコ(Corning)中、細胞2x10個/mLで、低温保存ストックを急速に凍結融解し、10%FBS(v/v)、2mMグルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン(500U/mL、500μg/mL)および100ng/mLヒト組み換えCSF1(Miltenyi)を追加したIscove’s Modified Eagle’s Medium(IMEM)中で希釈した。2日ごとに1μg CSF1を含有する10%培地交換により、7日間にわたり細胞をマクロファージへと分化させた。7日後、hMDMを回収し、計数し、CAMおよびAAMに対するヒト組み換えサイトカイン(Peprotech、上記で詳述)とともに、または未刺激のままにして(ナイーブhMDM)、CellCarrierプレート上に播種した。hMDMを食作用アッセイのために使用した(下記参照)。
【0079】
APAP誘発性肝損傷およびBMDM投与:全ての動物実験はBritish Home Officeの手続きおよび倫理的指針のもとで行い、実験計画は独立に獣医が審査した。野生型C57BL6雄マウス(10週齢)は、Harlan(UK)によって供給され、清潔な動物施設で最低2週間順応させた。マウスをオープントップケージに5/6匹の群で収容し、食餌および水を自由に摂取させながら12時間の暗/明サイクルに同調させた。APAP投与前に、マウスを少なくとも12時間絶食させた。マウスに対して、温生理食塩水中で溶解させたAPAP(350mg/kg)または生理食塩水のみの何れかの単回注射(i.p.)を行った。CFSE染色BMDMをダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中で再懸濁し、APAP投与の4時間後または16時間後の何れかに、イソフルラン/酸素ガス麻酔下で尾静脈を介してマウスに投与した(細胞1x10個、100μL)。処分の1時間前に、マウスにPBS中の1mg(i.p.)の5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU、Sigma Aldrich)を適用して、増殖細胞を標識した。CO増加雰囲気中での窒息により人道的にマウスを処分した。心臓穿刺を介して全血を回収し、4℃で一晩凝血させて血清を回収した。肝臓組織を採取し、左側葉を2片に分け、凍結イソペンタン浴に入れるか、またはメタカン中で24時間固定した。残存肝臓および他の臓器を、パラフィン包埋前に24時間、ホルマリン(4%パラホルムアルデヒド)中で固定した。
【0080】
インビボ細胞追跡:末梢投与された移植細胞の肝臓局在を確認するために、本発明者らは蛍光イメージングを利用した。移植前に、BMDMをインビトロでVivoTrack680(近赤外蛍光造影剤、Perkin Elmer)で染色した。BMDM(5x10個)を4mLのDPBS中の再構成VivoTrack(2mL)とともに温置し、暗環境において室温で15分間温置し、続いて過剰な色素を除去するために2回洗浄した。イメージングは、健常マウス(DPBS処置、i.p.)またはAPAP処置マウスにおいて16時間で行った。マウスを麻酔し、酸素/イソフルオランガスで維持し、毛を刈り取り、その後、PhotonIMAGER(商標)(Biospace Lab)イメージングスイートを用いて、時系列蛍光画像を687nm励起および722nm発光(487nmでバックグラウンド補正)で15分間隔で背臥位で撮影した。5時間後、マウスを人道的に処分し、臓器をエクスビボで画像化してAAM局在化を確認した。いくつかの実験において、インビトロでVivotrack680での染色を確認するために、構成的発現GFPマウスから分化させたBMDM(20)を使用した。
【0081】
CFSE染色:本質的に製造業者の説明書に従って、BMDMをCellTrace CFSE(ThermoFisher)で染色した。簡潔に述べると、BMDMをDPBS中で細胞1x10個/mLで再懸濁し、37℃、暗条件で20分間、最終濃度50μMのCFSEとともに温置した。細胞を遠心分離し(400g、5分)、10xDPBS体積で洗浄し、暗条件で37℃にて20分間再度温置した。最後に、染色細胞を遠心分離し、細胞1x10個/mLでDPBS中で再懸濁し、移植まで氷上で保存した。
【0082】
血清調製:血液を4℃で一晩凝血させた。血清を連続遠心分離により得た。簡潔に述べると、1500g(5分、4℃)での遠心分離によって血清を血液細胞から分離し、新しいマイクロチューブにピペットで移した。血清を再度遠心分離し(14000g、5分、4℃)、あらゆる残存血液細胞および細胞片をペレット化した。血清を新しいマイクロチューブに移し、使用するまで-20℃で凍結した。
【0083】
血清化学評価:アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、総ビリルビンおよび血清アルブミンの測定によって血清化学検査を行った。市販のキット(Alpha Laboratories Ltd)を利用して、(21)により記載の方法を用いてALTを測定した。ASTおよびALPは市販のキット(Randox Laboratories)により決定した。総ビリルビンは、市販のキット(Alpha Laboratories Ltd)を使用して、PearlmanおよびLee(22)によって記載の酸ジアゾ法(acid diazo method)によって決定した。マウス血清アルブミン測定値は市販の血清アルブミンキット(Alpha Laboratories Ltd)を用いて決定した。キットは全て、Cobas Fara遠心分離分析装置(Roche Diagnostics Ltd)での使用に適応していた。全アッセイについて、実験内精度はCV<4%であった。いくつかの実験において、ALP活性を除き、アッセイは血漿試料に対して行った。
【0084】
ヘマトキシリンおよびエオシン染色および壊死の定量:肝臓組織の4ミクロン切片を回転式ミクロトームで切り、Surgipath Superior Adhesive Slides(Leica Biosystems)上で回収し、45℃で一晩乾燥させた。Shandon Varistain Gemini ES Automated Slide Stainer(ThermoScientific)上でヘマトキシリンおよびエオシンで切片を染色し、Shandon ClearVue Coverslipper(ThermoScientific)を用いて標本にした。壊死の定量のために、電動ステージおよびOlympus BX51顕微鏡を使用してDotslide VS-ASWソフトウェア(Olympus)で単独画像を作成するためにスライドをスキャンし、Olympus PlanApo 2XレンズおよびOlympus XC10カメラを使用して画像を取得した。FIJI(24、25)においてTrainable WEKA Segmentationプラグイン(23)を使用して画像を解析した。壊死組織および生存組織を識別する別個の分類子を決定し、各画像において全組織に適用した。
【0085】
BrdU免疫蛍光染色:ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックの4ミクロン切片をSuperfrost(商標)Plusスライド上で回収した。切片を脱ワックス処理し、クエン酸ナトリウム(pH6.0)緩衝液中で熱誘導性抗原回収の前に再水和した。タンパク質溶液(Spring Bioscience,Pleasanton,CA)中で切片を30分間ブロッキング処理した後、ラット抗BrdU一次抗体(Abcam)とともに30分間、またはアイソタイプ対照ラットIgG(Vector Laboratories)とともに温置した。切片をPBSで十分に洗浄した後、ヤギ抗ラットIgG二次抗体、Alexa Fluor(登録商標)555複合物を暗環境で60分間適用した。切片をPBSで再度洗浄した後、DAPI含有フルオロマウントGおよびカバースリップにおいて標本にした。Operettaハイコンテンツイメージングシステム(PerkinElmer)で切片を画像化し、DAPI陽性領域(核)において546nmのシグナルを含有する陽性細胞のパーセンテージに基づいて定量した。共局在実験のために、Alexa Fluor(登録商標)488複合物を用いて(暗環境で60分間温置)、Hnf4a(ヤギ抗マウス、Santa Cruz)およびCD31(ウサギ抗マウス、Abcam)で二重染色を行った。
【0086】
炎症促進性サイトカインの血清および肝臓の定量化:炎症促進性サイトカインの一群(IFN-γ、IL-10、IL-12p70、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、KC/GRO、TNF-α)は、本質的に製造業者の説明書に従って、発光ベースのV-plex炎症促進パネル1(マウス)キット(Meso Scale Diagnostics)を使用して、マウス血清または肝臓ホモジネート中で多重化した。肝臓ホモジネートについては、Tissue Tearorホモジナイザー(Biospec Products)を使用して、75mg肝臓組織を冷溶解緩衝液(150mM NaCl、20mM Tris、1mM EDTA、1mM EGTA、1%TritonX-100(v/v)、2xプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma Aldrich))中で溶解させた。粗製ホモジネートを遠心分離(20,000g、10分間、4℃)して細胞片を除去した。ビシンコニン酸(BCA)アッセイ法を用いて上清についてタンパク質濃度を決定した。サイトカイン定量のために、25μLの血清または100μgの肝臓ホモジネートを各ウェルに添加し、50μLの体積で希釈剤41と混合し、振盪プレートミキサー(600rpm)上で2時間温置した。ウェルを十分に洗浄した後(PBS、0.05%Tween20v/v)、二次抗体のカクテルを適用した。プレートをQuickPlex SQ 120アナライザー(Meso Scale Diagnostics)でアッセイし、各分析物の標準曲線に対する線形回帰に基づいて分析物を定量した。推奨されるように2つ組で標準物質をアッセイした。アッセイ内精度が高く、生物学的複製物が多数であるため、試料を1つ組でアッセイした。
【0087】
インビトロでの超低接着性プラスチック上で適切なBMDMサイトカイン誘導性極性化を確認するための遺伝子発現分析:BMDMを24ウェルプラスチックプレートまたは24ウェル超低接着性プレートにおいて細胞2.5x10個/ウェルで播種した。細胞を完全培地(20ng/mLのCSF1を含有するDMEM:F12培地)中で一晩接着させた。培地を除去し、極性化を推進するために、48時間にわたり適切なサイトカインを含む、および含まないDMEM:F12培地で置き換えた(n=3;上記方法を参照)。製造者の説明書に従ってRNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用して、細胞からRNAを回収した。Nanodrop ND-1000(Thermo Scientific)を用いて分光光度によりRNAを定量し、ゲノムDNA除去段階を含むQuantitect Reverse Transcriptionキット(Qiagen)を用いて逆転写を行った。Roche Lightcycler 480II(Roche,Basel,Switzerland)上、384ウェル方式でQuantiTect SYBR Green PCRキット(Qiagen)を用いて遺伝子発現を定量した。遺伝子発現は、以下の遺伝子に対して設計された市販のQuantitectプライマー(Qiagen)を用いて測定した:iNos、Tnf、Mcp(CAM用)、Ym1、Fizz、Mr、Arg1(AAM用)およびIl10(DAM用;Il-10-BMDM)。ハウスキーピング遺伝子として18S rRNAを用いて、ナイーブBMDMに対して、2-ΔΔCT法を使用して、相対的発現を決定した。
【0088】
APAP処置マウス由来の肝臓組織における炎症促進性遺伝子発現分析のための遺伝子発現分析:およそ10mgの凍結肝臓組織を秤量し、組織ティアラ-(tissue tearor)を用いて900μL Qiazol溶解試薬(Qiagen)中でホモジナイズした。クロロホルム(200μL)を添加し、手作業で混合し、温置した(5分間、室温)。遠心分離(12000g、15分、4℃)後に水相においてRNAを除去し、イソプロピルアルコールで沈殿させた。エタノール洗浄後、RNAse不含水を用いて風乾ペレットからRNAを再懸濁した。RNAを定量し、DNase処理し、記載のように逆転写した。遺伝子発現分析のために、Csf1、Csf2、Csf3、Ccl2、Ccl3、Ccl5、Ccl7、Ccl12、Cxcl1、Cxcl2、Il-6、TnfおよびTgfβに対するQuantitectプライマー(Qiagen)を使用した。Gapdhをハウスキーピング遺伝子とした。
【0089】
食作用アッセイ:食作用を調べるために、非極性化BMDM(ナイーブ)、CAMまたはAAMを使用した。BMDMをアポトーシス胸腺細胞(以前のように(26)3~5週齢のC57BL6マウスから採取し、1μMヒドロコルチゾンで処理した初代胸腺細胞とともに温置した。製造者の説明書に従い、CMTMR(Invitrogen)を用いてアポトーシス胸腺細胞を標識した(27)。37℃または4℃で1:5の比率で30分間、1時間または2時間、BMDMに標識アポトーシス細胞を負荷した。細胞を洗浄し、抗CD11b BV650(クローンM1/70;Ebioscience)および抗Ly6C V450(クローンHK1.4;Ebioscience)で染色した後、フローサイトメトリーにより食作用を確認した。食作用は、37℃でのCD11b+CMTMR+細胞のパーセンテージマイナス4℃でのCD11b+CMTMR+細胞のパーセンテージとして計算した。Ly6C+細胞のパーセンテージは、37℃でCD11b+CMTMR+細胞のゲートにおいて計算した。CMTMRに対する平均蛍光強度(MFI)は、同じ条件で同じゲートにおいて計算した。データはLSRII Fortessa(BD Biosciences)で取得した。
【0090】
リアルタイム実験のための食作用アッセイ:マウスBMDMまたはhMDMを96ウェルCellCarrierマイクロプレート(PerkinElmer)において一晩播種し(1x10個/ウェル)、その後、適切なサイトカインで刺激して(上記方法を参照)、極性化を推進した。イメージングの前に、製造者の説明書に従い、BMDMをNucBlue生細胞染色剤(ThermoFisher)およびCellMask Deep Red原形質膜染色剤(ThermoFisher)で染色した。プレートをOperettaハイコンテンツイメージングシステム(PerkinElmer)に移し、37℃および5%COで平衡化させた。製造者の説明書に従い、ウェルにpHrodo green zymosan bioparticles(ThermoFisher)を添加することによって食作用を開始させた。最長150分間バイオ粒子を添加する前および添加した後5分間隔で、蛍光画像をDAPIチャネル、488nmおよび647nmで撮影した。画像をColumbus画像解析ソフトウェア(PerkinElmer)で定量した。500を超える蛍光強度(488nm)に基づいて食作用に対して陽性のマクロファージを分類し、全生細胞(NucBlue陽性細胞)の割合として表した。群あたり4個の別個のウェルから平均割合値を取った。
【0091】
肝臓消化、白血球単離およびフローサイトメトリー:インビボで移植AAMの局在および表現型を調べるために、CFSE染色AAMまたはビヒクルをAPAP投与から16時間後にマウスに移植した。3時間後、マウスに対してPKH26PCL(100μL、0.1mM)のi.v.注射を行い、貪食細胞を標識した。36時間で、EDTAチューブにおいて屠殺マウスから血液を採取し、血液学的分析のためにCelltacαアナライザー(日本光電)ですぐに処理した。遠心分離(6000rpm、10分、4℃)を介して残りの血液から血漿を採取し、凍結した。僅かに変更を加えて、以前に記載の方法(15、28)に従って肝臓を消化した。簡潔に述べると、肝臓にPBSを灌流させ、APAP投与の36時間後に左側葉を氷冷RPMI培地中で回収した。5mL肝臓消化酵素カクテル(コラゲナーゼV、Sigma、0.8mg/mL;コラゲナーゼD、Roche、0.63mg/mL;ディスパーゼ、Gibco、1mg/mL;DNase1、Roche、100μg/mL)中で葉をメスにより機械的に破壊した。ホモジネートを振盪インキュベーター中にて37℃、240rpmで25分間消化した。肝臓消化物を70μmフィルターに通し、RPMIで30mLにした。消化物を遠心分離し(300g、5分間、4℃)、赤血球溶解処理(Sigma)の前に洗浄した。細胞数を数え、適切な対照(すなわち、未染色、蛍光マイナス1)とともに細胞表面マーカーを標的とするための抗体の一群を用いて染色した。細胞を10%マウス血清とともに4℃で20分間温置することによって非特異的抗体結合を阻止し、続いて一次抗体の組み合わせ(それぞれ1:200希釈で使用)とともに4℃で20分間温置した。以下の複合抗体を使用した:CD11b BV650(クローンM1/70;Ebioscience)、Ly-6C V450(クローンHK1.4;Ebioscience)、CD45.2 AF700(クローン104;Ebioscience)、F4/80APC(希釈率1:100;クローンBM8;Invitrogen)、Ly-6G PE -Cy7(クローン1A8;Biolegend)、CD3 PE-Cy7(クローン17A2;Biolegend)、NK1.1 PE-Cy7(クローンPK136;Biolegend)、CD19 PE-Cy7(クローン6D5;Biolegend)。細胞生存率は、製造者のプロトコールに従って、Fixable Viability Dye eFluor780(1:1000、Ebioscience)を用いて評価した。抗体染色後、LSRII Fortessa(BD Biosciences)フローサイトメーターで分析する前に、試料をすぐに分析するか、またはBD Cell Fix(BD Bioscience)で固定した。FlowJo10ソフトウェア(Tree Star)を用いてデータを分析した。
【0092】
統計:データは全て、別段の断りがない限り、平均±標準偏差として表す。統計学的検定については、スチューデントのt検定を2群のパラメトリックデータに対して行い、マン-ホイットニーU検定を2群のノンパラメトリックデータセットに対して行った。複数群を含むデータセットについては、パラメトリックデータセットに対して一元配置ANOVAを行った。データセットが正規分布するか否かを判断するためにシャピロ-ウィルク検定を使用した。全ての統計はGraphPad Prism 6.0(GraphPad Software)で行った。
【0093】
結果
【0094】
BMDMは静脈内投与後迅速に脾臓および肝臓に向かう:インビボおよびエクスビボイメージング技術を使用して、健常マウスおよびAPAP中毒マウスにおけるBMDMの初期体内分布を監視した。肝臓への局在を監視するために、BMDMをVivotrack680(蛍光赤外造影剤)で標識して、およびVivotrack680なしで、APAP投与16時間後のマウスまたは健常対照に移植した(5x10個、i.v.)。健常マウスおよびAPAP処置マウスの上腹部における蛍光シグナルのほぼ直線状の蓄積が最初の4時間にわたって観察され、このことから、1つ以上の腹部臓器において徐々に局在することが示唆される(図1A、B)。BMDMはVivotrack標識に十分に耐容性であり、標識後のATPレベルの有意な低下は見られなかった(図1C)。さらに、蛍光顕微鏡から、GFP陽性BMDMは、488nmでのみ可視的である非標識細胞と比較して、細胞をビボトラック標識した後に強く均一な赤外蛍光シグナルを呈することが示された(図1D)。エクスビボ分析から、BMDM投与の4時間後に、健常マウスおよびAPAP処置マウスにおいてBMDMの肝臓および脾臓局在が確認された(図1E)。静脈血通過に対する障壁として作用すると思われる肺においても実質的なシグナルが観察された。定量により、肝臓局在が健常マウスにおいてより高く、一方で脾臓局在は同等であったことが示された(図1F)。最後に、顕微鏡アプローチを使用して、BMDMをインビトロでCFSE(CellTrace,Life Technologies)で染色し、APAPの16時間後に移植し、36時間で処分した。CFSE染色細胞は、FITCに対してDABに基づく免疫組織化学染色を用いて検出された。DAB陽性細胞は、典型的なマクロファージ形態を有するFFPE切片において脾臓および肝臓で検出されたが(図1G)、肺、心臓または脳では検出されなかった(データは示さない)。肝臓および脾臓のBMDM局在は、健常動物およびAPAP中毒動物において観察され、一部のBMDMは壊死病変に局在し、これは中心静脈周囲の散在性のバックグラウンドDAB染色によって可視化された(図1G)。
【0095】
AAM処置は、APAP処置マウスにおいて壊死領域を縮小させる:ALIを処置するためのBMDMの治療可能性を試験するために、本発明者らは、APAP投与後およそ12時間でピークに達するピーク肝損傷壊死につながるAPAP誘発性肝損傷のマウスモデルを使用した。健常動物におけるBMDM移植単独では、臨床化学検査中に日常的に測定される循環肝臓バイオマーカー(図8)へのいかなる顕著な撹乱も起こらなかった。本発明者らは、未処理(ナイーブ)BMDM(1x10個、i.v.)がAPAP投与後すぐに(4時間)与えられた損傷を軽減し得るか否かを試験した。APAPの24時間後に血清トランスアミナーゼの減少がないことにより証明されるように、ナイーブBMDM療法はAPAPの4時間後では治療的利益がなかった(APAP/PBS対APAP/BMDM;ALT:6365±2955対10603±7974U/L、AST:6333±3138対7068±5584U/L)(図9)。また、BMDM処置群の2匹のマウスは、過剰な表現型を示した後、人道的な理由で早期に処分した。したがって、本発明者らは、再生期中にAPAP投与(1x10個、i.v.)の16時間後にBMDMを移植した。BMDMは、組み換え因子を用いてインビトロで異なる表現型に極性化させた。APAPから36時間後の血清ALTは、全BMDM処置群においてやや低かった(図2A、PBS:3800±1934U/L対ナイーブ:2737±2020、CAM:2413±1222、AAM:2248±1196、DAM:2993±2182)が、統計学的有意性には達しなかった。血清トランスアミナーゼは比較的長い循環半減期を有し、その後の損傷によってなお上昇し得るので、本発明者らは36時間で採取した肝臓組織に対してヘマトキシリンおよびエオシン染色を行った。画像解析ソフトウェアを用いてAPAPにより引き起こされる小葉中心壊死を定量し、壊死領域を全肝臓組織のパーセンテージとして表した。AAMで処置したマウスは、壊死領域の60%の縮小を示した(図2B、P<0.03)。
【0096】
AAM処置は、APAP誘発性肝損傷後に実質および非実質増殖を誘発する:本発明者らは、マクロファージ療法の20時間後(APAPの36時間後)の肝臓におけるBrdU取り込みを測定した。増殖細胞を標識するために、処分の1時間前にマウスに1mgのBrdUを適用した(i.p.)。免疫蛍光(IF)切片をハイコンテンツイメージングシステムでイメージングし、バックグラウンド染色を無視するためにDAPI染色核との共局在化によりBrdU陽性を確認した。IF分析から、AAM療法後に肝臓において増殖細胞の8.4倍の増加(P<0.05)が示された(図3A)。増殖細胞はまた、CAMで処置したマウスでも8.5倍多かった(P=0.03)が、DAM処置では増加せず、より多かったものの統計学的有意性には達しなかった。AAM処置マウスにおける増殖細胞の正体を理解するために、本発明者らは、Hnf4a(肝細胞マーカー)およびCD31(内皮マーカー)を用いて二重染色を行った。本発明者らは、CD31と密接に結び付いた中心静脈周囲の非実質細胞の寄与とともに、殆どのBrdU陽性細胞がHnf4aと共局在していたことを観察した(図3B)。
【0097】
循環炎症促進性サイトカインの一群は、APAP誘発性肝損傷後の極性化マクロファージ処置マウスにおいてより低い:本発明者らは、マクロファージが損傷後の炎症反応を軽減して治癒を促進すると仮定した。これを調べるために、本発明者らは、電気化学発光技術を使用して、36時間で採取したマウス血清中の炎症性サイトカイン(IFN-γ、IL-10、IL-12p70、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、KC/GRO、TNF-α)の10プレックス(10-plex)パネルを測定した。一貫して、AAMは炎症促進性サイトカインの一群の実質的な減少を示し、IFN-γ(82%、P<0.01)、IL-12p70(73%、P=0.02)、IL-6(75%、P<0.01)、CXCL1(36%、P<0.01)およびTNFα(27%、P<0.01)の減少を示した(図4)。両方のCAMで処置したマウスにおいても循環炎症促進性サイトカインの減少が観察された-IFN-γ(88%、P=0.03)、IL-6(80%、P=0.01)、CXCL1(45%、P<0.01)およびTNFα(39%、P<0.01)-およびDAM-IFN-γ(86%、P<0.01)、IL-6(64%、P=0.01)、CXCL1(35%、P<0.01)、TNFα(23%、P=0.02)。さらに、ナイーブBMDMで処置したマウスは、極性化同等物よりも程度は低いが、一部の炎症促進性マーカーの減少を示した-IFN-γ(73%、P<0.01)、CXCL1(36%、P<0.01)、TNF(23%、P<0.01)。これらのデータから、APAP中毒の再生期中に投与されたマクロファージが、特にAAMで処置されたマウスにおいて抗炎症反応を発揮することが示される。
【0098】
さらに、本発明者らは、qPCRを介した、炎症および/または修復に関連する肝臓組織全体における遺伝子の一群(Csf1、Csf2、Csf3、Ccl2、Ccl3、Ccl5、Ccl7、Ccl12、Cxcl1、Cxcl2、Il-6、TnfおよびTgfβ)の発現を測定した。これから、ビヒクル対照に対して、AAM処置マウスにおける生存促進性Csf1遺伝子発現の平均2.3倍の増加(P<0.01)が示された(図6)。これと一致して、本発明者らが観察した唯一の有意な変化は、炎症促進性遺伝子Cxcl1(2.4倍、P<0.05)およびIl-6(5.8倍、P<0.05)の減少を示した同じ動物群においてであった。このデータは、AAMのみが壊死領域の有意な縮小をもたらす、群間で観察された組織学的差異を説明する(図3B)。さらに、炎症促進性サイトカインCxcl1およびIL-6の遺伝子発現データは、タンパク質レベルでの循環プロファイルを反映する(図5)。
【0099】
AAMはインビトロで食作用速度および能力の増大を示す:本発明者らは、インビトロで異なる表現型に極性化されたBMDMの食作用を測定した。極性化BMDMを蛍光標識アポトーシス胸腺細胞と温置した後、本発明者らは、30分間の食作用後により多くのAAMが貪食したという有意でない傾向を観察した(ナイーブに対して11%の増加、M1に対して7.3%の増加)が、この差は60分および120分後には定常に達した(図6A)。さらに、他の群に対して30分でAAMにおける平均蛍光強度(MFI)の有意な上昇(ナイーブに対して21%の上昇、CAMに対して75%の上昇、ヒストグラムにおいてデータをプロット)および60分でCAMマクロファージに対して64%の上昇があった。細胞数に対して正規化した後のAAMにおけるより高いMFI(CAMに対して67%の上昇)が観察される。古典的炎症性骨髄表面マーカーである炎症マーカーLy6Cを発現するBMDMのパーセンテージを測定した。AAMは、30分(ナイーブに対して22%低下、CAMに対して34%低下)、60分(ナイーブに対して44%低下、CAMに対して52%低下)および120分(ナイーブに対して61%低下、CAMに対して72%低下;図6B)でLy6C陽性細胞のパーセンテージが有意に低い。
【0100】
極性化BMDMを用いてザイモサン(酵母中に存在するグルカン)で被覆されたpH感受性蛍光マイクロビーズの食作用を監視するためのリアルタイム食作用アッセイを行った。フローサイトメトリー分析と一致して、経時的にAAM中のpHrodo陽性細胞のパーセンテージの増加が観察され、それは90分に近づくにつれて定常に達していった(図6C)。ナイーブおよびCAMと比較した、AAMにおける貪食率および能力の上昇を示す代表的な画像が提供される(図6D)。
【0101】
AAMは、食作用性が高く、インビボで抗炎症性表現型を保持する:移植後のAAMを特徴付けるためにインビボ食作用実験を行った。APAP投与の16時間後に、CFSE標識AAMをマウスに移植した(5x10個、i.v.)。3時間後、内在性および外来性マクロファージを標識するために、PKH26(貪食細胞の特異的標識のための赤色蛍光色素)のi.v.投与をマウスに対して行った(試験計画については図7Aを参照のこと)。ビヒクルのみを投与されたマウスにおいて肉眼的な組織学的異常が観察され、これは、AAM処置マウスでは殆ど存在しなかった点状の出血性壊死領域を特徴とした(図7B)。血清化学分析から、AAM処置マウスにおいて血清トランスアミナーゼの有意な減少(59%低いALT、75%低いAST)が示された(図7C)。
【0102】
BMDM処置マウスの肝臓における浸潤性炎症性マクロファージのパーセンテージの、中程度であるが統計学的に有意な減少が観察され(図7D)、これは、これらの炎症性細胞における貪食細胞の増加傾向に対応した(P=0.08)。i.v.移植の20時間後に肝臓と血液の両方における移植AAMが検出され、これは肝臓消化中に採取された肝臓白血球のおよそ1%を占めた(図7E)。移植AAMのうち、検出されたものの83%がLy6Cloであり、このことから、これらの細胞がインビボでそれらの抗炎症性表現型を保持していることが確認された(図7F)。それらのLy6C発現に基づいてPKH26を貪食した移植細胞のパーセンテージを測定した。Ly6Chi細胞の70%およびLy6Clo細胞の98%超がPKH26陽性であり、このことから、移植AAMがインシトゥで高度に食作用性であることが示唆される。
考察
【0103】
APAP中毒は、来院の一般的な理由であり、米国および英国で年間何千もの緊急入院の主要因である。処置の中心は、広範囲の傷害が起こる前に肝臓において抗酸化能を高めるために、スルフヒドリル供与体であるNACを早期に投与することを含む。しかし、この解毒療法の有効性は、肝臓壊死が既に確立され得る、遅れて来院する患者では著しく低下する。APAP中毒は、米国におけるALFの主な原因に相当し、肝臓移植が唯一の有効な治療法である。したがって、ALFのリスクを低下させるために、真正の肝損傷を有する患者を処置するための新規治療ストラテジーを特定し、開発することが臨床的に必要とされる。さらに、ALIからの回復を促進し、付随する費用および臨床的支出を減少させるための処置もまた非常に有益である。
【0104】
本発明者らは、肝損傷に対する可能性のある細胞療法(ALIなど)を試験した。マクロファージは、インビボでアポトーシスおよび壊死細胞の両方のクリアランスに関与する。しかし、KC(肝臓常在マクロファージ)はAPAP-ALI中に枯渇するようになり、自然免疫の障害が起こる(8)。マクロファージは、糖尿病(30)、腎線維症(31)、肺障害(32)および悪性腫瘍(33)を含む他の疾患適応症に対する可能性のある細胞療法として既に研究されてきたが、肝損傷(ALIなど)に関してはまだ評価されていない。潜在的な凝固障害のため、APAPモデルでは侵襲的外科手術は実用的ではないが、疾患の劇症性ゆえに損傷部位に治療を迅速に施すことが不可欠である。したがって、本発明者らは、健常マウスおよびAPAP中毒マウスにおいて4時間以内にBMDMを肝臓および脾臓に静脈内送達した(尾静脈経由)。本発明者らは、健常対照と比較して、APAP処置マウスにおけるBMDM生着の減少を観察した。これは、APAP-ALIの特徴である、微小環境への浸潤または肝微小循環の撹乱が原因であり得る(34)。肺は、i.v.注射後の細胞にとって別の障害物であるが、マクロファージは、サイズが比較的小さいため、末梢投与に適している。実際に、本発明者らは、投与の20時間後に肺においてマクロファージを全く観察せず、このことから、ボーラス注射後の肺での局在が一時的であることが示唆された。それにもかかわらず、肺塞栓症は依然として安全上の懸念事項である。したがって、他の非侵襲的投与経路を使用し得る。健常マウスにおける1x10個のBMDMのi.v.投与は安全であると思われ、この投与の結果、血液化学のいかなる指標も変化せず、細胞5x10個の送達時にAPAP処置マウスにおいて何れの血液学的パラメーターも変化しなかった(データは示さない)。
【0105】
APAP-ALI中の肝細胞死は、炎症性メディエーターの放出および危険関連分子パターン(DAMP)、例えばHMGB1などを通じた自然免疫系の活性化の刺激事象である(35)。自然免疫系の全身的活性化が制御されないと、臨床転帰の重要な決定要因であるSIRSとして臨床的に認識されている、多臓器不全および死亡につながり得る(7)。本発明者らのマウスモデルにおけるAAMの投与は、ヒトALF中に上昇することが知られている循環炎症促進性サイトカイン減少につながった(36、37)。さらに、APAP-ALIでは壊死性物質の除去が遅れ得るが、それは、内在性KCが最初の損傷中にも失われ、その結果、肝臓の自然免疫能が低下するからである(8)。貪食細胞の養子移植を介したこの自然免疫能の補充は、全身性炎症を軽減し、ALFへの進行を予防するために、死にかけている細胞から、または腸由来病原体から放出される炎症シグナルを制限し得る。肝損傷に対するマクロファージ療法の安全性に関する潜在的な懸念の1つは、移植されたマクロファージ自体が炎症促進性になり、炎症および損傷を増悪させる可能性があることであるが、本発明者らは、選択的活性化表現型へと培養中に一旦刺激されると、移植されたAAMが少なくとも20時間にわたりインビボでそれらの抗炎症性の表現型を保持したことを見出した(図7F)。
【0106】
APAP-ALI後の肝再生は損傷の消散における重要な特性である。本発明者らは、APAPから36時間後、増殖細胞数が8倍増加したことを見出し、このことから、AAM療法が再生反応を加速させることが示唆される。これにより、AAMが肝損傷の様々な原因を処置するのに有用であり得ることが明らかとなる。
【0107】
二重染色から、増殖細胞が肝細胞(Hnf4a陽性)および内皮(CD31陽性)起源のものであったことが明らかになった。小葉中心性肝細胞は、これらのCYP2E1陽性細胞が、最終的に細胞死を引き起こす、APAPの毒性代謝産物であるN-アセチル-p-ベンゾ-キノンイミン(NAPQI)を生成するので、主な損傷部位である。しかし、肝類洞内皮細胞がAPAP-ALI中に撹乱されるようになることも知られている(38、39)。実質および血管系の両方の再生は、おそらく肝臓のAAM介在性修復中の重要な機序である。
【0108】
理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、AAMがそれらの高度に食作用性の表現型ゆえに壊死物質を除去するという仮説を立てる。食作用能の低下を示すCAMもまた、AAMよりも程度は低いが、炎症を部分的に軽減し、増殖を刺激した。移植されたBMDMが治療セクレトームを提供し、炎症を軽減するかまたはインシトゥで肝臓再生を促進するための栄養因子を送達することが可能である。
【0109】
肝臓中の移植されたBMDMの寿命は一過性であると思われる。以前の研究から、移植されたBMDMが、直接肝門脈注射を介して線維性肝臓において移植後少なくとも7日間にわたり検出可能であることが示されている(18)。本発明者らのグループはまた、健常マウスで3週間を超えずにMRIを介してBMDMを検出するためにSPIONも使用した。(データは示さない)。これらの細胞の一過性の性質は、肝臓がその正常な生理的状態に戻ることを可能にする数週間にわたって移植細胞を自然に除去できるようにするのに有益であり得る。治療域は移植後の最初の48時間以内に存在すると思われるので、この療法の一過性の性質も懸念事項ではない。それでもなお、必要に応じて複数回のBMDM投与を比較するため、または塞栓症のリスクを低下させるためにBMDMの持続注入を提供するために、この細胞に基づく治療の薬物動態を最適化し得る。
【0110】
APAP中毒は、圧倒的に迅速にALFにつながり得る医学的緊急事態である。これは、細胞採取、増殖、特徴評価および再注入のための時間を見込む処置前後の数週間および数か月にわたりに患者を監視し得る肝線維症などの他の肝疾患とは対照的である。ALIを伴う緊急臨床状況の場合には、AAMを集中治療室で直ちに投与し得るように既存のマクロファージバンクを設定し得る。幹細胞分野における大きな進歩から、最近、主要同等物(primary equivalent)の生物学および機能を再現するヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来のマクロファージが記載された(40~42)。これらの細胞由来のAAMは生細胞療法に相当し得ると想定される。
【0111】
まとめると、本発明者らは、定められた因子によりBMDMを高度に食作用性の表現型に極性化することによって、これらの細胞が、細胞増殖を刺激し、全身性炎症を軽減し、肝損傷における壊死性病変を改善する(例えばAPAP-ALIの再生期間中)ための細胞療法となり得ることを示した。AAMは、応用の可能性がある、肝組織修復を促進するための有望な細胞療法に相当し得る。
【0112】
実施例2:マウス胚性幹細胞由来マクロファージ(ESDM)
【0113】
キーポイント:
・ESDMは、肝損傷マウスモデルにおける線維症を軽減し、BMDM療法に伴いみられる特性である細胆管反応を刺激した。
・ESDMは組織常在マクロファージと幾分類似しており、これはおそらくそれらの発生起源を反映する。
・ESDMは、リポソームクロドロネートを用いてマクロファージを枯渇させたマウスのクッパー細胞区画を再配置させた。
・食作用を定量するために新しいライブ細胞イメージング技術が開発され、これを用いて、本発明者らは、胚性幹細胞由来および骨髄由来マクロファージの食作用指標の違いを実証する。
【0114】
本発明者らは、マクロファージの純粋な集団がインビトロで大規模にマウスESCから産生され得ること、およびこれらの細胞が、肝線維症のマウスモデルにおいてインビボで修復能を有することを実証する。ESC由来マクロファージは、食作用活性において、および重要な機能的マーカーの発現においてそれらの骨髄由来の対応物と区別され得、これは、PSC由来マクロファージがクッパー細胞およびランゲルハンス細胞を含む組織常在マクロファージに発生学的な面で関連することを示唆する最近の研究を裏付ける(Buchrieser, J., James, W. & Moore, M. D. Human Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Macrophages Share Ontogeny with MYB-Independent Tissue- Resident Macrophages. Stem Cell Reports 8, 334-345)。本発明者らは、ESC由来マクロファージが、マクロファージ枯渇肝臓のクッパー細胞区画を効率的に再配置可能であり、したがって組織修復における組織常在マクロファージの役割を研究するための有効なストラテジーを提供することを示す。
【0115】
結果
【0116】
胚性幹細胞由来および骨髄由来マクロファージの比較
【0117】
本発明者らは自身が公表した方法を使用して胚性幹細胞(ESC)からマクロファージを作製し(Zhuang, L. et al. Pure populations of murine macrophages from cultured embryonic stem cells. Application to studies of chemotaxis and apoptotic cell clearance. J Immunol Methods 385, 1-14, doi:10.1016/j.jim.2012.06.008 (2012))、それらの表現型および機能を、初代マクロファージの代表的な起源である古典的な骨髄由来マクロファージ(BMDM)と直接比較した。簡潔に述べると、ESCをCSF-1およびIL-3の存在下で増殖させて胚様体(EB)を形成させた。EBは組織培養プラスチックに接着し、非接着性マクロファージ前駆細胞を培地に放出する。これらの細胞を採取し、CSF-1のみの存在下で未処理のペトリ皿に播種する。それらはプラスチックに付着し、単層を形成するマクロファージを生じさせる。胚性幹細胞由来マクロファージ(ESDM)およびBMDMは同等の形態を有したが、ESDMはBMDMよりも僅かにサイズが大きいと思われた(図16A~C)。フローサイトメトリー分析から、90%を超えるESDMがマクロファージマーカー、F4/80およびCD11bについて二重陽性であったこと、および分化過程(第10日~20日)の間の異なる時点に由来する細胞が同等レベルの細胞表面マーカー発現を示したことが明らかになった(図16E、F)。比較すると、BMDMの集団では二重陽性F4/80およびCD11b細胞のパーセンテージが僅かに低く、このことから、このプロトコールで作製されたBMDMはESDMよりも不均一であったことが示された(図16D、F)。
【0118】
ESDMおよびBMDMの食作用活性を比較するために、本発明者らは、完全に自動化され、したがってイメージングおよび分析からの操作者によるバイアスがない、Operetta High-Contentイメージングシステム(Perkin Elmer)を使用して、新たなライブイメージングアッセイを開発した。このアッセイにおいて、酸性の細胞内環境内でのみ蛍光を発するpH感受性pHrodo(商標)Bioparticlesを使用した(Thermo Fisher Scientific)。このアッセイにより、本発明者らは、生体粒子の量ならびに取り込み速度をリアルタイムで定量化することが可能となった。Deep Red Plasma Membrane染色剤およびNucBlue Live ReadyProbes試薬で細胞を染色し、pHrodo(商標)生体粒子とともに温置し、Operetta High-Content Systemを用いて2.5時間にわたり5分ごとに画像化した(図16G、H)。蛍光を発する細胞数の増加が両細胞タイプにおいて経時的に観察されたが、ESDMの食作用速度はBMDMよりも有意に低かった(図16I)。フローサイトメトリーを用いた本発明者らの以前の研究から、BMDMとESDMとの間で食作用活性に有意差がなかったことが示されたが、一方でこの高感度のリアルタイムストラテジーによって微妙な差が明らかになった。
【0119】
それらをそれぞれLPSおよびIFNγまたはIL-4で処理することによって、M1またはM2様表現型となるようにESDMおよびBMDMをインビトロで刺激した。BMDMおよびESDMの両方からのLPS/IFNγ刺激時の一酸化窒素(NO)産生の有意な増加があったが、ESDMの活性化レベルはBMDMほど高くなかった(図17A)。これは、ESDMにおけるM1関連遺伝子、iNosおよびCd86の発現レベルがより低いことによって確認された(図17B、C)。対照的に、IL4に対するESDMの反応は、M2関連遺伝子、Arg1およびFizz1の発現増加によって評価されるように、BMDMよりも有意に高かった(図17D、E)。Tweak、Mmp12およびMmp13などの組織再生のマーカーは、BMDMと比較してESDMにおいてより低く、一方Mmp9はより高いレベルで発現された(図17F~I)。
【0120】
本発明者らは、M1およびM2極性化ESDMおよびBMDMの食作用活性を比較するために自身らの新たなイメージングストラテジーを使用した。LPS-IFNγ刺激によって、両細胞タイプで食作用速度が低下し、IL4によって上昇したが、ESDMはそれらの刺激を受けた培養において、BMDMの同等の培養と比較して食作用速度がより低かった(図17J、K)。
【0121】
まとめると、これらのデータから、ESDMの表現型をBMDMと同等の方法で改変し得るが、極性化に対するそれらの反応の程度には僅かな違いがあることが実証される。
【0122】
肝線維症のマウスモデルにおける有効な細胞療法としてのESDM
【0123】
本発明者らは、次に、ESDMが肝損傷のマウスモデルにおいて治療効果を有し得るか否かを試験した。マウスを四塩化炭素CClで週に2回、4週間にわたり処置し、その割合を無作為に選択して、第2週の始めに静脈内に10または20x10個の何れかのESDMを投与した。ESDM注射の21日後にマウスを屠殺し、肝臓を免疫組織化学用に処理した(図18A)。
【0124】
BMDM療法は線維症を改善することが以前に示されていたので、本発明者らは、肝コラーゲンに対するPicro Sirius Red(PSR)染色を用いてESDMが肝線維症にも効果があるか否かを評価した。より少ない数(10x10個)のESDMを使用した場合、線維症のレベルに有意な効果はなく(図18B~D)、一方で、2倍という多数のESDMを注射した場合、PSR染色の有意な減少が観察された(図18E~G)。筋線維芽細胞数の減少は線維症の消散中の重要な事象であり、本発明者らはまた、より高用量のESDMで処置したマウスにおいてαSMA陽性筋線維芽細胞数が有意に少ないことにも注目した(図18K~M)。健常で損傷がない肝臓も染色し、分析した。
【0125】
本発明者らは、対照損傷肝臓と比較して、ESDMを注射されたCCl損傷肝臓において、PanCK染色によってマークされる有意に多数の肝臓細管細胞を観察した(図19A~F)。以前にBMDMで観察された効果を再現するESDMの両用量を投与された動物において、より多数のPanCK陽性細胞が明らかになった(Bird, T. G. et al. Bone marrow injection stimulates hepatic ductular reactions in the absence of injury via macrophage-mediated TWEAK signaling. Proc Natl Acad Sci U S A 110, 6542-6547, doi:10.1073/pnas.1302168110 (2013))。
【0126】
結論として、この研究から、ESDMが大規模に作製され得、それらが筋線維芽細胞の密度およびその結果としてのコラーゲン沈着を減少させることによって肝損傷の影響を変化させる可能性があることが実証される。これらの実験で使用されるESDMの細胞数は、以前の研究においてBMDMに対して使用されたものより10倍多かった。
【0127】
ESDMは組織常在マクロファージと同等の表現型を有するか?
インビトロでESCに由来する造血細胞は、発生中の卵黄嚢における造血の原始波(primitive wave)と関係がある血液細胞とより関連があると考えられる(Zambidis, ET, Peault, B, Park, TS, Bunz, F & Civin, CI 2005, ‘Hematopoietic differentiation of human embryonic stem cells progresses through sequential hematoendothelial, primitive, and definitive stages resembling human yolk sac development’ Blood, vol 106, no. 3, pp. 860-870. DOI: 10.1182/blood-2004-11-4522)。組織常在マクロファージは、造血幹細胞(HSC)が胚において出現するかなり前の造血の原始波(primitive wave)に由来し、重要なHSC転写因子であるMybの非存在下で発生することが知られている(Schulz, C. et al. A lineage of myeloid cells independent of Myb and hematopoietic stem cells. Science 336, 86-90, doi:10.1126/science.1219179 (2012))。本発明者らがマウスESDMとBMDMとの間で観察した微妙な違いは、それらの培養条件よりもむしろそれらの起源に関連し得ると本発明者らは考えた。本発明者らは、MybおよびCcr2がBMDMと比較してESDMにおいてより低いレベルで発現されるのに対して、Pu.1がより高かったことを実証することによってこれを確認した(図20A~C)。したがって、ESDMが循環単球由来細胞よりも組織常在マクロファージに近い場合、本発明者らは、内在性常在マクロファージをリポソームクロドロネートで除去した後の肝臓のクッパー細胞区画を再配置することにおいてそれらがより効率的であるという仮説を立てた。
【0128】
本発明者らは、最初に、リポソームクロドロネート処理によって実際に常在マクロファージ集団が除去されたことを確認し、外来マクロファージの添加に最適な時期を決定するために様々な時点で組織を分析した。リポソームクロドロネート処理の48時間後に肝臓切片でF4/80マクロファージは観察されず、このことから、この時点までに完全な枯渇が起こったことが示される。内在性循環マクロファージが組織を再配置し始める、処置の72時間後に、数個のF4/80マクロファージが明らかであった(図20P)。
【0129】
ESDMおよびBMDMをCFSE細胞追跡色素(Molecular probes,Life Technologies)で標識し、リポソームクロドロネート処理の48時間後に細胞5x10個を静脈内注射した(図20D)。肝臓、肺、腎臓および心臓組織を24時間後に採取し、抗FITC抗体(これはCFSEを含むフルオレセインの全ての誘導体を検出する)を用いた免疫染色を使用して、注射されたCFSE染色細胞を検出した(図20E~H、R)。BMDMまたはESDMの何れかを投与されたリポソームクロドロネート処理マウスに由来する肝臓切片において、CFSE細胞が検出された。画像の定量から、BMDMと比較してESDMを注射されたマウスの肝臓において有意により多くのCSFE細胞があったことが実証された(図20M)。この結果は、CSFE細胞を同定するためのDABに基づく検出方法の定量化によって確認された(図20I~L、N)。幾分かのBMDMおよびESDMも肺組織において検出されたが、クロドロネート処置動物の腎臓および心臓において生着した細胞は殆どなかった。(図20R)。
【0130】
これらのデータから、ESDMがBMDMよりもクッパー細胞区画を再配置させる能力が高いことが示される。
【0131】
血清分析を実施して、マウスの肝機能において実施した処置の効果を評価した(図20O、P)。アルカリホスファターゼ(ALP)レベルは、PBS対照マウスと比較して、リポソームクロドロネート処置マウスにおいて有意に上昇し、このことから肝損傷が示された。ESDMを投与されたマウスにおいて、対照と比較してALPレベルが有意に低下し、このことから、ESDMが幾分かの修復効果を有したことが示された。ESDMレシピエントマウスの血清アルブミンレベルもまた健常対照と同等であった。
【0132】
次に、本発明者らは、培養した胚性幹細胞由来のマクロファージが初代マクロファージの治療効果を再現して、アセトアミノフェン誘発性肝損傷を改善し得るか否かを調べた。本発明者らは、16時間での単回i.v.注射(細胞5x10個)を介して、アセトアミノフェン誘発性肝損傷モデルにおけるマウスESDMの治療効果を試験した。本発明者らは、血清化学マーカーにおいて有意差を認めなかったが(図21)、本発明者らは、H+E染色によって評価されるように壊死領域の有意な縮小を認めた(図24)。BMDMと同様に、ESDMは、IL-4/IL-13を用いて一晩極性化させた後、選択的活性化のマーカー(Ym-1、Fizz、MR、Arg-1)に対する遺伝子発現において非常にダイナミックな切り替えを示し、このことから、これらのシグナル伝達経路がこれらの細胞においてインタクトであることが確認された(図22)。さらに、極性化ESDMは、肝損傷モデルにおけるこれらの細胞の提案された治療機序であるアポトーシス物質の貪食性摂取の能力があることが示された:本発明者らは、極性化ESDMがインビトロで蛍光標識アポトーシス胸腺細胞を容易に貪食し得ることを実証する(図23)。最後に、本発明者らは、細胞追跡を介して、BMDMと同様にESDMがi.v.注射後すぐに肝臓および脾臓に集合することを示す(図25)。結果から、ESDMが急性肝損傷のモデルにおいて初代BMDMと類似の治療能を有することが示される。
【0133】
考察
【0134】
本発明者らは、マクロファージ貪食能を評価するためのライブイメージングアッセイを開発した。これにより、本発明者らが、最終的に貪食された粒子数だけでなく、マクロファージが粒子を貪食した速度も監視することが可能となった。本発明者らは、未刺激ESDMが、BMDMほど速く、またはBMDMほど多くの生体粒子を貪食しなかったことを見出した。さらに、M2様表現型に向けて刺激を受けたESDMおよびBMDMは、それらのM1刺激同等物よりも多くの生体粒子を貪食した。
【0135】
ESDMは肝線維症のマウスモデルにおける線維症退縮を促進する
【0136】
20x10個のESDMを移植した場合、肝線維症の量は有意に減少し、αSMA+筋線維芽細胞数はESDM送達後に対照の50%に減少した。10x10個のESDMを移植した場合、線維症または筋線維芽細胞数に有意な変化は観察されず、このことから、この抗線維化効果が用量依存的であったことが示された。興味深いことに、BMDMと同様に、高用量および低用量の両方のESDMが、PanCK+前駆体の有意な増加によって実証されるように、細胆管反応を刺激した。これらのデータから、ESDM療法が、PanCK+細管細胞の増殖を誘導することによって損傷肝臓組織の再生を促進し得、高用量では線維症を改善し得ることが実証される。本発明者らの知る限りでは、これは肝損傷のモデルにおけるESDMの治療効果を実証する最初の研究である。
【0137】
ESDMは、BMDMよりも、クッパー細胞枯渇肝臓の再配置において効率的である
【0138】
本発明者らは、ESDMがBMDMよりも低レベルのMybおよびCcr2を発現し、高レベルのPu.1を発現することを見出し、このことから、組織常在マクロファージプロファイルが示される。したがって、本発明者らは、この実験においてESDMがBMDMよりも効率的であるか否かを試験するために、クッパー細胞枯渇肝臓におけるインビボでのESDMおよびBMDMの再配置能力を評価した。BMDMレシピエントと比較して、ESDMレシピエントでは、有意に多数のCFSE+移植細胞が検出された。これらの結果から、クッパー細胞区画を部分的に再配置させることによってマウスにおけるリポソームクロドロネート処置の効果を逆転させることにおいて、ESDMがBMDMよりも効率的であることが示された。これは、ESDMの表現型がBMDMよりも組織常在マクロファージと近いという事実、またはそれらがマクロファージ枯渇組織に遊走する能力が増強されているという事実の何れかによるものであり得る。
【0139】
材料および方法
【0140】
マウスESCの維持および分化:以前に記載のような10%ウシ胎児血清(FCS)(Lonza)、2mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)、4mM L-グルタミン(Gibco)、1%非必須アミノ酸(Gibco)および0.1mM β-メルカプトエタノール(Sigma)および100U/mL白血病抑制因子(LIF)を追加したGlasgow Minimum Essential Medium(Gibco)中でマウス胚性幹細胞(ESC)株E14IVを維持した(Jackson, M., Taylor, A. H., Jones, E. A. & Forrester, L. M. The culture of mouse embryonic stem cells and formation of embryoid bodies. Methods Mol Biol 633, 1-18, doi:10.1007/978-1-59745-019-5_1 (2010))。15%L929馴化培地および1ng/mL組み換えIL-3(Stem Cell Technologies)を追加した同じ培地(LIFなし)(本明細書中で分化培地と呼ぶ)を前述のようにマクロファージ作製のために使用した(Zhangら)。簡潔に説明すると、6x10個のESCを分化培地中で懸濁状態で培養し、胚様体(EB)を形成させた。第8日に、ゼラチン化組織培養皿上にEBを播種し、次いで未接着細胞を1日おきに(第10~20日)これらの培養物から回収し、次いでIL-3なしの分化培地中で未処理細菌学用ペトリ皿上に播種した。これらの単球様細胞は、プラスチックペトリ皿に接着して単層を形成し、成熟して、胚性幹細胞由来マクロファージ(ESDM)になった。
【0141】
骨髄由来マクロファージ:骨髄をマウス大腿骨および脛骨から流し出し、10%FCS、15%L929馴化培地および1%Pen/Strep入りのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma)中で超低接着性の25cmフラスコ(Corning)において7日間(第4日に培地交換)培養し、次いで全ての接着細胞および非接着細胞を回収することによって骨髄由来マクロファージ(BMDM)を収集した。
【0142】
サイトスピンおよび迅速ロマノフスキー染色:200μL PBS中で1x10個のマクロファージを採取し、計数し、再懸濁することにより、マクロファージのサイトスピンを調製した。それらをThermo Shandon Cytospin4中で300gで3分間細胞遠心分離し、風乾させた。迅速ロマノフスキー染色パック(TCS Biosciences)を使用して、製造者の説明書に従って細胞を固定および染色した。スライドを水中で短時間すすぎ、風乾し、Mowiol(Sigma)を用いて標本にした。
【0143】
マクロファージの極性化:接着性ESDMおよびBMDMは、48時間にわたり、それぞれ、LPS(0.1μg/mL)(Sigma L4391-1mg)およびIFNγ(10U/mL)またはIL-4(20ng/mL)で処理することによって、M1またはM2様表現型の形をとるようにインビトロで刺激した。製造者の説明書に従って、培養上清中のNOレベルを測定するためにGriess Reagent System(Promega)を使用した。
【0144】
フローサイトメトリー:細胞を採取し、計数し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する100μL PBS中で細胞1x10個を再懸濁した。プレコンジュゲート(pre-conjugated)抗体をそれらの最適濃度で添加し、氷上で20分間温置した。続いて細胞を2mL PBS(1%BSA含有)中で洗浄し、400gで5分間遠心分離した。1%BSA入りの200μL PBS中で細胞ペレットを再懸濁した。殆どの実験において、DAPIまたは7-AADなどの生/死細胞判別染色剤で細胞を染色した。以下の抗マウス抗体を使用した:抗F4/80APC(BioLegend)、抗CD11b Alexafluor488(BioLegend)。以下の抗ヒト抗体を使用した:抗CD93 PE(eBioscience)、抗25F9APC(eBioscience)、抗CD11bAlexafluor 488(BioLegend)。
【0145】
定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR):ABI7500Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を用いてqRT-PCRを行い、SDSソフトウェアバージョン1.4(Applied Biosystems)を用いて分析した。Universal ProbeLibrarySystem Assay Design Center(Roche)で設計されたUPLアッセイとともに、Taqman Fast Universal PCR Master Mix(2x)(Applied Biosystems)を使用した(表1)。GAPDHとともにΔΔCt法を使用して、cDNAレベルを正規化し、各実験の「対照」試料を遺伝子発現の相対的変化を計算するための標準物質として使用した。データは全て、標準物質の発現レベルに対する倍単位の変化として提示する。
【0146】
表1:プライマー配列
【表1】
【0147】
ライブイメージングによる食作用アッセイ:イメージングの3日前に、1x10個のマクロファージを組織培養グレードの96ウェルプレート(CellCarrier,PerkinElmer)に播種した。細胞をPBSで洗浄し、100μLのNucBlue Live ReadyProbes Reagent(Molecular Probes)(PBS1mLあたり2滴)を各ウェルに添加し、37℃で20分間温置した。細胞をPBSで洗浄し、製造者の説明書に従い、100μL/ウェルのCellMask(商標)Deep Red Plasma membrane Stain(Molecular Probes)で処理し、さらに30分間温置した。CellMask(商標)試薬を吸引し、100μLのPBSを各ウェルに添加した。1バイアルのpHrodo(商標)Green Zymosan A BioParticles Conjugate(Molecular Probes)を2mLの0.5mg/mL PBS中で再懸濁し、十分にボルテックス処理し、短時間超音波処理し、次いでさらにPBS中で1:5希釈した。イメージングの直前に、100μLのpHrodo(商標)BioParticlesをそれぞれに添加した。イメージングは、Operetta High-Content Imaging System(Perkin Elmer)において5分間隔で、40xの拡大率で行い、Harmony High-Content ImagingおよびAnalysis Software(Perkin Elmer)で画像を解析した。各実験を3回実施し、3回の技術的反復を含んだ。
【0148】
肝線維症モデル:8~10週齢の129/SVマウス(Harlan Laboratories)において、4週間にわたる週に2回の2μL/g CCl(1:3のCCl:オリーブ油)の腹腔内注射によって肝損傷を誘発した。第2週の始めにマウスを無作為に選択してESDMまたは対照食塩水(1群あたりn=5)の静脈内注射を行い、21日後にマウスを処分した。肝臓に対して食塩水で灌流を行い、摘出し、ホルマリン中で固定し、免疫組織化学用に処理した。
【0149】
リポソームクロドロネートが介在するクッパー細胞枯渇:リポソームクロドロネート(5mg/mL)は、clodronateliposomes.orgから購入した。クロドロネート懸濁液を37℃にし、注射前に十分に混合した。200μLのリポソームクロドロネートまたは対照PBS(各群n=5)を尾静脈に注射した。
【0150】
免疫組織化学:組織をパラフィン中に包埋し、4μmのスライスに切って、スライドガラス上に載せ、記載のようにαSMA、PanCK、CFSEおよびF4/80の検出のために免疫組織化学を実施した(Thomas, J. A. et al. Macrophage therapy for murine liver fibrosis recruits host effector cells improving fibrosis, regeneration, and function. Hepatology 53, 2003-2015, doi:10.1002/hep.24315 (2011); Russo, F. P. et al. The bone marrow functionally contributes to liver fibrosis. Gastroenterology 130, 1807-1821, doi:10.1053/j.gastro.2006.01.036 (2006)) (表2)。PSR染色のために、切片を脱ワックス処理し、再水和した。切片をヘマトキシリン中で8分間、続いてPicro Sirius Red中で1時間処理した。続いてスライドを酸性水で洗浄し、脱水し、標本にした。
【0151】
表2:抗体のリスト
【表2】
【0152】
PSRおよびαSMA染色の定量化のために、40xの画像(Nikon Eclipse E600顕微鏡)を並べ、画像解析ソフトウェアImageJを用いて陽性染色の定量を行った。PanCK染色の定量のために、記載されているように試料あたり20か所の非重複視野から陽性細胞を計数した(Thomas J. A. et al. Macrophage therapy for murine liver fibrosis recruits host effector cells improving fibrosis, regeneration, and function. Hepatology 53, 2003-2015, doi:10.1002/hep.24315 (2011))。
【0153】
統計学的解析:GraphPad Prismソフトウェアバージョン6.0cを用いて統計学的解析を行った。データは全て、平均+平均の標準誤差(SEM)として表す。0.05未満のp値は統計学的に有意であると見なした(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。以下の統計学的解析を用いた:対応のないスチューデントのt検定およびANOVA。
【0154】
マウス胚性幹細胞由来マクロファージ:本質的に以前に記載のように(Zhuangら、2012)、純粋なmESDMS集団をマウスE14マウス胚性幹細胞株(Handymanら、1989)から分化させた。簡潔に説明すると、組み換えIL-3(1μg/mL)を含有するGMEMおよびm-CSF(15%v/v)を含有するL929馴化培地とともにESCを8日間培養して、非接着性マクロファージ前駆細胞を得た。その後6~10日間、m-CSF(15%v/v)を含有するL929馴化培地のみを含有するGMEM中でマクロファージ前駆体を成熟させた。超低接着性フラスコ(Corning)からmESDMを採取し、計数し、組み換えマウスIL-4(20ng/mL)、IL-13(20ng/mL)およびCSF1(20ng/mL)を含有するGMEM中で24時間極性化させた。アセトアミノフェン(APAP)誘発性肝損傷(5x10個、i.v.)を有するマウスに注射する前に、極性化ESDMを採取し、計数し、CFSEで染色した。
【0155】
APAP誘発性肝損傷:APAP投与前に、マウスを14時間絶食させた。マウスには、温生理食塩水中のAPAP(350mg/kg、i.p.)または生理食塩水のみの単回注射の何れかを投与した。CFSE染色ESDMをダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中で再懸濁し、APAP投与の16時間後に、尾静脈を介してマウスに投与した(細胞5x10個、100μL)。処分の1時間前に、マウスにPBS中の1mg(i.p.)の5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU、Sigma Aldrich)を適用して、増殖細胞を標識した。マウスを処分し、心臓穿刺により全血を採取した。凝血後、遠心分離(14,000g、4℃)を介して血清を回収した。肝臓組織を採取し、ホルマリン中で固定するか(20時間)またはドライアイス上で凍結し、分析前に-80℃で保存した。
【0156】
壊死の定量:肝臓組織の4ミクロン切片を回転式ミクロトームで切り、Surgipath Superior Adhesive Slides(Leica Biosystems)上で回収し、45℃にて一晩乾燥させた。Shandon Varistain Gemini ES Automated Slide Stainer(ThermoScientific)上でヘマトキシリンおよびエオシンで切片を染色し、Shandon ClearVue Coverslipper(ThermoScientific)を用いて標本にした。壊死の定量のために、電動ステージおよびOlympus BX51顕微鏡を使用してDotslide VS-ASWソフトウェア(Olympus)で単独画像を作成するためにスライドをスキャンし、Olympus PlanApo 2XレンズおよびOlympus XC10カメラを使用して画像を取得した。FIJIにおいてTrainable WEKA Segmentationプラグインを使用して画像を解析した。壊死組織および生存組織を識別する別個の分類子を決定し、各画像中の全組織に適用した。
【0157】
遺伝子発現分析:インビトロで超低接着性プラスチック上で適切なESDMサイトカイン誘導性極性化を確認するために、ESDMを24ウェルプラスチックプレートまたは24ウェル超低接着プレートにおいて細胞2.5x105個/ウェルで播種した。細胞を完全培地(20ng/mLのCSF1を含有するDMEM:F12培地)中で一晩接着させた。培地を除去し、極性化を推進するために、24時間にわたり適切なサイトカインを含む、および含まないDMEM:F12培地で置き換えた(n=3;上記方法を参照)。製造者の説明書に従ってRNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用して、細胞からRNAを回収した。Nanodrop ND-1000(Thermo Scientific)を用いて分光光度によりRNAを定量し、ゲノムDNA除去段階を含むQuantitect Reverse Transcriptionキット(Qiagen)を用いて逆転写を行った。Roche Lightcycler 480II(Roche,Basel,Switzerland)上、384ウェル方式でQuantiTect SYBR Green PCRキット(Qiagen)を用いて遺伝子発現を定量した。以下の遺伝子Ym1、Fizz、Mr、Arg1用に設計された市販のQuantitectプライマー(Qiagen)を用いて遺伝子発現を測定した。ハウスキーピング遺伝子として18S rRNAを用いて、ナイーブESDMに対して、2-ΔΔCT法を用いて相対的発現を決定した。
【0158】
食作用アッセイ:AAMをアポトーシス胸腺細胞(以前のように3~5週齢のC57BL6マウスから採取し、1μMヒドロコルチゾンで処理した初代胸腺細胞)とともに温置した(30)。製造者の説明書に従い、CMTMR(Invitrogen)を用いてアポトーシス胸腺細胞を標識した(31)。37℃または4℃で1:5の比率で30分間、1時間または2時間、BMDMに標識アポトーシス細胞を負荷した。細胞を洗浄し、抗CD11b BV650(クローンM1/70;Ebioscience)および抗Ly6C V450(クローンHK1.4;Ebioscience)で染色した後、フローサイトメトリーにより食作用を確認した。Ly6C+細胞のパーセンテージは、37℃でCD11b+CMTMR+細胞のゲートにおいて計算した。CMTMRに対する平均蛍光強度(MFI)は、同じ条件で同じゲートにおいて計算した。データはLSRII Fortessa(BD Biosciences)で取得した。
【0159】
ESDM局在化に対する免疫組織化学:肝臓および脾臓組織の4ミクロン切片を回転式ミクロトームで切り、Superfrost Plus接着性スライド(Thermo Fisher)上で回収し、45℃で一晩乾燥させた。スライドをキシレン中で脱ワックス処理し、アルコール(100%~70%)に通して再水和した。抗原回復は、クエン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中で15分間煮沸することによって行った。内在性ペルオキシダーゼ活性は、室温で15分間Bloxall(Vector)とともに温置することによって遮断した。スライドをPBS中ですすいだ。内在性アビジンおよびビオチン結合部位を、それぞれ室温で15分間、アビジンブロック(Invitrogen)およびビオチンブロック(Invitrogen)とともに温置することによって遮断した。各段階の後、スライドをPBS中ですすいだ。非特異的結合は、室温で1時間、Protein block(Spring Bioscience)で遮断した。抗体希釈剤(Invitrogen)中で200分の1に希釈した一次抗FITC抗体(Invitrogen、CAT#71-1900)とともにスライドを温置した。一次抗体のタンパク質濃度と一致するように、アイソタイプ対照抗体(Vector、1-1000)を抗体希釈剤中で希釈した。スライドを4℃で一晩温置した。スライドをPBS中ですすいだ。抗体希釈剤中で1:500に希釈した二次ビオチン化ヤギ抗ウサギ抗体(Vector、BA-1000)とともにスライドを温置し、室温で1時間温置した。スライドをPBS中ですすいだ。スライドをVector RTU ABC試薬(Vector)とともに室温で30分間温置してDAB検出を行った。スライドをPBS中ですすぎ、次に暗所で室温にて5分間DAB試薬(Dako)とともに温置した。スライドをPBS中ですすいだ。スライドをハリスヘマトキシリンで対比染色し、次いでスコットのタップウォーター(Scott’s tap water)に短時間入れた。スライドをアルコール(70%~100%)に通して脱水し、キシレン中で清浄化した。スライドをPertex封入剤中で封入し、QImaging Retiga 2000Rカメラを備えたNikon Eclipse E600顕微鏡を用いて画像化した。
【0160】
実施例3:ヒトiPSC由来マクロファージ
【0161】
ヒトiPSC細胞のマクロファージへの分化
【0162】
本発明者らの研究をヒト研究に拡張するため、van Wilgenburgらによって公開された研究に基づいてヒト人工多能性幹細胞(iPSC)からマクロファージを作製するためにフィーダーおよび血清不含プロトコールを最適化した(Efficient, long term production of monocyte-derived macrophages from human pluripotent stem cells under partly-defined and fully-defined conditions. PLoS One 8, e71098, doi:10.1371/journal.pone.0071098 (2013))。ヒト人工多能性幹細胞株、SFCi55は社内で作製し、多能性であり、正常な核型を有することが確認された(Yang, C-T., Ma, R., Axton, R., Jackson, M., Taylor, H., Fidanza, A., Marenah, L., Frayne, J., Mountford, J & Forrester, L.M. (2016). Activation of KLF1 Enhances the Differentiation and Maturation of Red Blood Cells from Human Pluripotent Stem Cells. Stem Cells 10.1002/stem.2562)。それらは、StemProサプリメント(Invitrogen)、1.8%BSA(Invitrogen)、0.1mM β-メルカプトエタノール(Invitrogen)および20ng/mLのヒト塩基性FGF(Invitrogen)とともにGlutamax(Invitrogen)をDMEM/F12に追加することによって調製したStemPro培地中で維持した。iPSCをマクロファージに分化させるための方法は、van Wilgenburgらから適応させた。第0日に、使用済み培地を6ウェルプレートの1つのコンフルエントウェルから除去し、サイトカインミックス1(50ng/mL BMP4、50ng/mL VEGFおよび20ng/mL SCF)を追加した2mL StemPro(ThermoFisher)と交換した。細胞をEZPassage(商標)ツールを用いて切り、パスツールピペットで穏やかに除去した。それらを超低接着性6ウェルプレート(Corning)の2つのウェルに等分し、サイトカインミックス1入りの2mL X-VIVO(商標)15培地を各ウェルに添加した。胚様体(EB)を形成させるために、(第2日にサイトカインを補給しながら)3日間懸濁状態で細胞を培養した。第4日に、EBを持ち上げ、サイトカインミックス2(100ng/mL M-CSF、25ng/mL IL-3、2mM Glutamax、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、0.055M β-メルカプトエタノール)を追加したX-VIVO(商標)15培地中、ゼラチン被覆組織培養グレード6ウェルプレートに移した。各ウェルにおよそ30個のEBを播種した。プロトコールの残りの期間、この培地中でEBを維持し、使用済み培地を3~4日ごとに新鮮培地と交換した。約2週間後、EBは培養上清中にマクロファージ前駆体を産生し、これを回収し、サイトカインミックス3(100ng/mL M-CSF、2mM Glutamax、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を追加したX-VIVO(商標)15培地中、10cm細菌学用皿培地に移し、5~7日間成熟させてiPSC由来マクロファージ(iPSC-DM)にした。マクロファージ前駆細胞は、およそ2か月間、週に2回、回収し得た。
【0163】
生成されたヒトiPSC由来マクロファージ(iPSC-DM)は、成熟マクロファージ特異的細胞表面マーカー25F9およびCD11bの両方を発現し(図18B)、単球マーカーCD93を発現しなかった(図26A)。iPSC由来マクロファージはまた、CD45、CD169、CD163、CD14、CD43、CD206、CD115、CD86、CXCR1、CCR2、CCR5およびCCR8も発現する(図27および28)。ごく一部のiPSCには、低レベルのVCAMおよびCD15がある(図27F、G)。iPSCDMはHLA-DRを発現しない(図28D)。ヒトiPSC-DMは刺激に反応した:M1関連遺伝子CD40およびCD80はLPS-IFNγによって活性化されると上方制御され、一方でM2関連遺伝子TGM2およびMRC1遺伝子発現はIL4に反応して上昇した(図26C~F)。
【0164】
本発明者らは、自身らのライブイメージング食作用アッセイにおいて、ナイーブおよび極性化ヒトiPSC-DMをヒト単球由来マクロファージ(MDM)と比較した。ヒトiPSC-DMは、ヒトMDMと同じ傾向を辿り、「ナイーブ」およびIL-4処理マクロファージは、LPS-IFNγ処理マクロファージよりも食作用性が強いことが分かった(図26G、H)。しかし、マウスESDMにおける本発明者らの観察を連想させるように、ヒトiPSC-DMは、それらの「ナイーブ」ならびに極性化状態においてヒトMDMよりも貪食が少なく、このことから、それらが有する表現型はより炎症性が低いことが示される。
【0165】
それぞれマウスBMDMおよびヒトMDMと直接比較した場合、それらは食作用が少なく、抗炎症性表現型に偏っていたことが分かった。
【0166】
実施例3-パラセタモール(APAP)誘発性急性肝損傷(APAP-ALI)をマウスに注射した後の選択的活性化マクロファージの転写プロファイルの決定。
【0167】
方法:
【0168】
FACS(FACS ARIA II、BD Biosciences)を介した選別後に溶解緩衝液(Qiagen)に直接回収したことを除き、上記のようにCFSE染色AAMを健常マウスおよびAPAP中毒マウスの消化肝臓から回収した。細胞収量は、4.3x10~5.6x10個の範囲であった。製造者の説明書に従って、QIAshredder(Qiagen)カラムを用いて溶解物をホモジナイズ処理した。RNeasy Micro Kit(Qiagen)を用いて全RNAを得て、その後、RTPreAMP cDNA Synthesis Kit(Qiagen)を用いて予備増幅を行った。Roche Lightcycler 480 II PCR装置(384ウェル方式、Roche)を備えたカタログ化RTプロファイラーPCRアレイ(077ZG、Qiagen)を用いて増幅cDNAをアッセイした。GeneGlobeオンラインポータル(Qiagen)を用いてデータを分析した。試料は全て、データ品質管理基準に合格した。Cカットオフは35に設定した。正規化は、Actb、GusbおよびHsp90ab1の算術平均を用いて行った。ボルケーノプロットは倍単位の変化(2^-ΔCt)対p値(n=3回反復のスチューデントのt検定に基づいて計算)をプロットすることによって作成した。処置群および対照群は、それぞれAPAP処置マウスおよびPBS処置マウスからのAAMであった。
【0169】
結果
【0170】
以下の遺伝子を分析した:C3, C3ar1, C4b, Ccl1, Ccl11, Ccl12, Ccl17, Ccl19, Ccl2, Ccl20, Ccl22, Ccl24, Ccl25, Ccl3, Ccl4, Ccl5, Ccl7, Ccl8, Ccr1, Ccr2, Ccr3, Ccr4, Ccr7, Cd14, Cd40, Cd40lg, Cebpb, Crp, Csf1, Cxcl1, Cxcl10, Cxcl11, Cxcl2, Cxcl3, Cxcl5, Cxcl9, Cxcr1, Cxcr2, Cxcr4, Fasl, Fos, Ifng, Il10, Il10rb, Il17a, Il18, Il1a, Il1b, Il1r1, Il1rap, Il1rn, Il22, Il23a, Il23r, Il5, Il6, Il6ra, Il7, Il9, Itgb2, Kng1, Lta, Ltb, Ly96, Myd88, Nfkb1, Nos2, Nr3c1, Ptgs2, Ripk2, Sele, Tirap, Tlr1, Tlr2, Tlr3, Tlr4, Tlr5, Tlr6, Tlr7, Tlr9, Tnf, Tnfsf14, Tollip, Actb, B2m, Gapdh, Gusb, Hsp90ab1および Hsp90ab1。
【0171】
図29から分かり得るように、AAMは一般に、それらの抗炎症表現型を保持し、分析した95%の遺伝子は、APAP処置マウスとPBS処置マウスとの間で変化はなかった。したがって、結果から、AAMが炎症促進性環境においてそれらのM2表現型を保持することが示された。
【0172】
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図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
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【配列表】
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