(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20220802BHJP
E04B 1/343 20060101ALI20220802BHJP
E04F 11/032 20060101ALI20220802BHJP
E04B 1/346 20060101ALI20220802BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04B1/343 102
E04F11/032
E04B1/346
E04H9/02 351
(21)【出願番号】P 2020038860
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】520079681
【氏名又は名称】有限会社起産
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松家 壮弌
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-303561(JP,A)
【文献】特表平11-502910(JP,A)
【文献】特開2001-193246(JP,A)
【文献】特開2019-023390(JP,A)
【文献】特開2007-297898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02,9/14
E04B 1/343,1/346
E04F 11/032
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視が円形又は円形に近い多角形の建物であって、
水道管などの配管が内部に収納され、建物の中心部に設けられた円筒形の中央柱部と、
トラス構造の金属製の床梁が、前記中央柱部又は前記中央柱部の近傍から径方向外側に延設され、前記床梁が周方向に所定の間隔で複数設けられた床部と、
前記中央柱部の周囲に設けられた螺旋階段と、
前記螺旋階段の周囲に、前記中央柱部を中心として、周方向に所定の間隔で、前記床部の前記床梁に立設された複数の支柱部と、
前記床部より下方に設けられた上下動駆動部とを有し、
前記螺旋階段は、前記中央柱部と前記支柱部の間に配置され、前記中央柱部と前記支柱部に接続された複数の踏み板を備え、
前記上下動駆動部により、前記床部を直接又は間接に、地杭に対して上下動するように構成されている
ことを特徴とする建物。
【請求項2】
前記床部よりも下方に配置され、前記上下動駆動部により上下動可能な中空の中間部材と、
前記床部と前記中間部材の間に設けられたスラストベアリング部と、
前記中間部材に対して、前記床部、前記中央柱部、前記螺旋階段、及び前記支柱部を一体として、前記中央柱部を回転中心として回転させる回転駆動部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記中央柱部の下端部が、前記中間部材内に配置された状態で、前記中央柱部と前記中間部材との間に介装されたスプリングを備えた免震機構部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の建物。
【請求項4】
前記上下動駆動部は、上下動可能なピストンロッドを備えた油圧シリンダと、前記油圧シリンダを駆動する油圧ポンプとを有する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
大雨などで、住宅などの建物が浸水する虞がある。
例えば、水害時に浮上する建物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、建物を昇降する昇降装置を備えた建物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-148126号公報
【文献】特表平11-502910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の建物では、床構造の下に浮体を取り付けることを要する。
また、特許文献2に記載の建物は、建物を支持する剛性の連続した(切れ目のない)平坦なベース構造体、ベース構造体を昇降自在な昇降機構、建物を収容するための地下格納庫、地下格納庫を閉鎖する閉鎖手段を要し、複雑な構造である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る建物は、少なくとも以下の構成を具備する。
建物は、平面視が円形又は円形に近い多角形に形成され、
水道管などの配管が内部に収納され、建物の中心部に設けられた円筒形の中央柱部と、
トラス構造の金属製の床梁が、前記中央柱部又は前記中央柱部の近傍から径方向外側に延設され、前記床梁が周方向に所定の間隔で複数設けられた床部と、
前記中央柱部の周囲に設けられた螺旋階段と、
前記螺旋階段の周囲に、前記中央柱部を中心として、周方向に所定の間隔で、前記床部の前記床梁に立設された複数の支柱部と、
前記床部より下方に設けられた上下動駆動部とを有し、
前記螺旋階段は、前記中央柱部と前記支柱部の間に配置され、前記中央柱部と前記支柱部に接続された複数の踏み板を備え、
前記上下動駆動部により、前記床部を直接又は間接に、地杭に対して上下動するように構成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係る建物としての住宅の一例を示す全体概念図であり、詳細には(a)は住宅の一例を示す正面図、(b)は住宅の骨組みの一例を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る建物としての住宅の鉄骨構造の一例を示す概念図であり、詳細には(a)は2階部分の鉄骨梁の構造の一例を示す平面図、(b)は1階部分の鉄骨梁の構造の一例を示す平面図である。
【
図3】住宅の一例を説明するための概念図であり、詳細には(a)は住宅の床部や中央柱部等が上昇した状態の一例を示す側面概念図、(b)は地杭の配置の一例を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る建物としての住宅の螺旋階段を有する階段室の一例を説明するための図であり、詳細には(a)は階段室の側面概念図、(b)は支柱部の配置の一例を示す平面図、(c)は2階より上部の踊り場の一例を示す平面図、(d)は螺旋階段を説明するための図である。
【
図5】住宅の1階部分、2階部分の一例を説明するための図であり、詳細には(a)は住宅の2階部分の一例を示す平面図、(b)は住宅の1階部分の一例を示す平面図である。
【
図6】住宅の上下動駆動部の一例を説明するための図であり、詳細には(a)はピストンロッドが下方位置にある油圧シリンダの一例を示す側面図、(b)はピストンロッドが上方位置にある油圧シリンダの一例を示す側面図、(c)はピストンロッドと案内棒(ガイド部材)の一例を示す平面図である。
【
図7】住宅の上下動駆動部、回転機構部、免震機構部等の一例を示す図であり、詳細には、(a)は上下動駆動部、回転機構部、免震機構部等の一例を示す側面図、(b)は回転機構部の一例を示す平面図、(c)は免震機構部の一例を示す平面図、(d)昇降架台(中空の中間部材)の一例を示す平面図は、(e)は地杭用架台の一例を示す平面図である。
【0007】
本発明の実施形態に係る建物は、平面視が円形又は円形に近い多角形に形成されている。この建物は、例えば、水道管などの配管が内部に収納され、建物の中心部に設けられた円筒形の中央柱部と、トラス構造の金属製の床梁が、中央柱部又は中央柱部の近傍から径方向外側に延設され、床梁が周方向に所定の間隔で複数設けられた床部と、中央柱部の周囲に設けられた螺旋階段と、螺旋階段の周囲に、中央柱部を中心として、周方向に所定の間隔で、床部の床梁に立設された複数の支柱部と、床部より下方に設けられた上下動駆動部とを有する。螺旋階段は、中央柱部と支柱部の間に配置され、中央柱部と支柱部に接続された複数の踏み板を備える。この建物は、上下動駆動部により、床部を直接又は間接に、地杭に対して上下動するように構成されている。
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態は図示の内容を含むが、これのみに限定されるものではない。尚、以後の各図の説明で、既に説明した部位と共通する部分は同一符号を付して重複説明を一部省略する。
【0009】
本発明の実施形態では、建物として住宅を説明するが、この実施形態に限られるものではなく、例えば、店舗(飲食店、スナック、オフィスなど)の建物に適用してもよい。
図1は本発明の実施形態に係る建物としての住宅100の一例を示す全体概念図であり、詳細には
図1(a)は住宅の一例を示す正面図、
図1(b)は住宅の骨組みの一例を示す平面図である。
図2は住宅100の鉄骨構造の一例を示す概念図であり、詳細には
図2(a)は2階部分の鉄骨梁の構造の一例を示す平面図、
図2(b)は1階部分の鉄骨梁の構造の一例を示す平面図である。
図3(a)は住宅100の床部12や中央柱部10等が上昇した状態の一例を示す側面概念図であり、
図3(b)は地杭の配置の一例を示す平面図である。
図4は住宅100の螺旋階段を有する階段室の一例を説明するための図である。詳細には
図4(a)は階段室の側面概念図、
図4(b)は支柱部の配置の一例を示す平面図、
図4(c)は2階より上部の踊り場の一例を示す平面図、
図4(d)は螺旋階段を説明するための図である。
【0010】
住宅100(建物)は、
図1(a)、
図1(b)に示すように、外観が平面視で円形又は円形に近い多角形に形成されている。詳細には、
図1に示す住宅100は、平面視で直径が約10mの円形に形成されている。
住宅100は鉄骨1による骨組みである鉄骨構造を有し、詳細には住宅100の中心に中央柱部10が立設されており、中央柱部10から放射状に鉄骨1が配置され、側面に外壁2が設けられ、上部に略円錐形状や半球形状(ドーム状)の屋根3が設けられている。
【0011】
本実施形態では、住宅100は、1階部分(1F)、2階部分(2F)を有する。詳細には、
図2,3,4に示すように、住宅100の中心に中央柱部10が立設され、トラス構造の金属製(鉄骨1等)の床梁121が中央柱部10から放射状に配置されている。
【0012】
中央柱部10は、円筒形に形成されており、内部に例えば水道管、排水管、ガス配管、吸気ダクト、排気ダクト、ヒーター用配管、電気配線や通信配線等の配管が内部に収納されており、住宅100が上下動又は中央柱部10を回転中心として0~360°回転した場合であっても配管が機能するように構成されている。つまり、水道管などは、住宅外部から中央柱部10を通って1階部分又は2階部分それぞれへ配設される。
【0013】
また、中央柱部10の周囲に、螺旋階段15が1階部分(1F)から2階部分(2F)、さらに2階部分(2F)よりも上方に設けられた踊り場まで設けられている。
螺旋階段15の周囲には、周方向に所定の間隔で、床部12の床梁121に立設された複数、本実施形態では16本の支柱部17が立設されている。また、本実施形態では、支柱部17は、1階部分(1F)の床部12の床梁121から、2階部分(2F)の床部12の床梁121に設けられ、さらに、2階部分(2F)の床部12の床梁121から天井又は天井近傍まで設けられている。
螺旋階段15は、中央柱部10と支柱部17の間に配置され、中央柱部10と支柱部17に接続された複数の踏み板151を備える。詳細には、中央柱部10、踏み板151、支柱部17は、溶接等により接続されている。
【0014】
また、支柱部17は、1階部分(1F)に設けられたリング状の鉄骨部材171、2階部分(2F)に設けられたリング状の鉄骨部材172、天井付近に設けられたリング状の鉄骨部材174、2階部分(2F)と天井の間に設けられた踊り場(3F)に配置されたリング状の鉄骨部材173にそれぞれ接続されていることが好ましい(
図2,3を参照)。
【0015】
また、上述した中央柱部10と、螺旋階段15、支柱部17により高強度の階段室150が形成される。
なお、階段室150へ1階部分(1F)、2階部分(2F)から階段室150への出入口には、支柱部17が設けられていない。
【0016】
また、1階部分(1F)及び2階部分(2F)の床部12のトラス構造の床梁121の端部(外周側の端部)には、外周柱部18が複数(本実施形態では16本)立設されている。
また、外周柱部18は、例えば1階部分(1F)に設けられたリング状の鉄骨部材181、2階部分(2F)に設けられたリング状の鉄骨部材182にそれぞれ接続されていることが好ましい。
【0017】
図3に示すように、住宅100の外周の床部の下方には、複数の地杭80s(外側地杭)が設けられている。この地杭80s(外側地杭)は、住宅100の外周部の下方に、中央柱部10を中心とする円上に、周方向に等間隔に設けられている。
図3に示す例では、8本の地杭80sが地面に設けられている。また、地杭80sは、地面GLから所定の高さ、例えば40~50cm程度突出するように設けられている。地杭80の先端部には、ゴム等の緩衝部材が設けられている。
また、住宅100の階段室150の下方には、階段室150と同じ直径の円上に、複数の地杭80(内側地杭)が、床部12の床梁121と対応する位置に設けられている。
図3に示す例では4本の地杭80(内側地杭)が設けられている。この地杭80(内側地杭)には、後述するように油圧シリンダ等の上下動駆動部が設けられている。
【0018】
図5(a)は住宅100の2階部分(2F)の一例を示す平面図であり、
図5(b)は住宅100の1階部分(1F)の一例を示す平面図である。
本実施形態では、
図5(b)に示すように、住宅100の1階部分(1F)に階段室150、玄関1FA、複数の部屋1FB,1FC,1FD等が形成されており、それぞれの部屋にキッチン、リビング、寝室等が適宜割り当てられている。
図5(a)に示す例では、2階部分(2F)に、円弧状の廊下2FRや、複数の部屋2FA,2FB,2FC等が設けられている。また、住宅100は、廊下2FRの近傍に、吹き抜け部2FFが設けられている。
なお、住宅100の1階部分(1F)や2階部分(2F)の各部屋は上記実施形態に限られるものではなく、任意の構成であってもよい。
【0019】
<回転機構、免震機構>
図6は住宅の上下動駆動部30の一例を説明するための図である。詳細には、
図6(a)はピストンロッド31が下方位置にある油圧シリンダ32の一例を示す側面図であり、
図6(b)はピストンロッド31が上方位置にある油圧シリンダ32の一例を示す側面図であり、
図6(c)はピストンロッド31と案内棒33(ガイド部材)の一例を示す平面図である。
【0020】
図7は住宅100の上下動駆動部30、回転駆動部60を備えた回転機構部、免震機構部70等の一例を示す図である。詳細には、
図7(a)は上下動駆動部、回転駆動部を備えた回転機構部、免震機構部等の一例を示す側面図であり、
図7(b)は回転機構部の一例を示す平面図であり、
図7(c)は免震機構部の一例を示す平面図であり、
図7(d)は昇降架台(中空の中間部材)の一例を示す平面図であり、
図7(e)は地杭用架台の一例を示す平面図である。
【0021】
図6,7に示す例では、例えば住宅の階段室の下方に位置する地杭80に、上下動駆動部30が設けられており、この上下動駆動部30は、上下動可能なピストンロッド31を備えた油圧シリンダ32を有する。また、本実施形態では、ピストンロッド31の動きに追従して上下動する案内棒33(補強用部材)が、ピストンロッド31の周囲に複数本、詳細には
図6,7に示す例では、2本設けられている。
また、油圧シリンダ32を駆動する油圧ポンプOPは、後述する筒状部材71に設けられており(
図7(a)を参照)、油圧ポンプOPから各油圧シリンダ32にパイプPを介して接続されている。また、4本の油圧シリンダ32は、油圧ポンプOPの駆動により、各油圧シリンダ32のピストンロッド31が同期して上下動可能に構成されている。
【0022】
ピストンロッド31の先端が下方位置にある場合、その先端は地面GLから約40~50cm程度の高さとなるように設定されており、その位置から約2~5m程度上昇可能に設定されている。
【0023】
図7(a),
図7(e)に示すように、4本の油圧シリンダ32の間には、補強部材として鉄骨からなる地杭用架台35が設けられている。また、地杭用架台35上には、ゴムなどの弾性体からなる緩衝部材37(ゴムクッション等)が設けられている。地杭用架台35としては例えば溝形鋼(Cチャンネル)等を採用することができ、溝形鋼のウェブが上面となるように配置することが好ましい。
【0024】
また、
図7(d),
図7(a)に示すように、ピストンロッド31の先端の上に、鉄骨からなる昇降架台39が配置されている。昇降架台39としては例えば溝形鋼(Cチャンネル)等を採用することができ、溝形鋼のウェブが下面となるように配置することが好ましい。
【0025】
図7(a)に示すように、1階部分の床部12よりも下方で、ピストンロッド31上の昇降架台39の上に、中空の円形状の中間部材40が設けられている。
また、1階部分の床部12と、中間部材40の間には、スラストベアリング部55が設けられている。詳細には、スラストベアリング部55は、例えば転動体551(球体やコロ等)と、転動体551をガイドする溝が円形状に形成されたガイド部552などを有する。
図7(a)、
図7(c)に示す例では、中間部材40の上面に平坦面40fが形成されており、平坦面40f上に球体等の転動体551が転動可能となる。
つまり、スラストベアリング部55よりも上方の床部12、中央柱部10、螺旋階段、及び支柱部17が一体として、中央柱部10を回転中心として回転可能に構成されている。
【0026】
回転駆動部60は、中間部材40に対して、床部12、中央柱部10、螺旋階段15、及び支柱部17を一体として、中央柱部10を回転中心として回転させる。
例えば
図7(b)に示す例では、回転駆動部60は、後述する筒状部材71に、回転駆動用モータM(駆動モータMともいう)が固定されており、回転駆動用モータMの回転軸に設けられた歯車Mhが、中央柱部10の下端よりも上方位置の外側面に設けられた大径の歯車10h(例えば
図7(a),
図7(b)を参照)に噛合するように配置されており、回転駆動用モータMの回転駆動により、床部12、中央柱部10、螺旋階段15、及び支柱部17が一体として、中央柱部10を回転中心として回転させるように構成されている。
また、回転駆動用モータMの回転軸に設けられた歯車Mhから、中央柱部10に設けられた歯車10hへの回転力の伝達は、動力伝達機構(不図示)を介して行われてもよい。動力伝達機構は、回転力を伝達できればよく、例えば歯車、ベルト、リンク、チェーン等を挙げることができる。
【0027】
また、
図7(c)、
図7(a)に示すように、住宅は、免震機構部70を有し、詳細には、免震機構部70は、中央柱部10の下端部が、中間部材40内に配置された状態で、中央柱部10と中間部材40との間に介装されたスプリング72(振動減衰部材)を有する。
図7(c)、
図7(a)に示す例では、中央柱部10の下端部に筒状部材71が遊嵌されており、この筒状部材71と、中空の中間部材40の間にスプリング72が複数、本実施形態では8本放射状に設けられている。
つまり、地震などが発生した時や回転時であっても、住宅は上記免震機構部70を備えているので、床部12、中央柱部10、螺旋階段15、及び支柱部17を含む構造部分の振動を低減することができる。
【0028】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る建物としての住宅100は、平面視が円形又は円形に近い多角形の住宅である。
この住宅100は、水道管などの配管が内部に収納され、住宅100の中心部に設けられた円筒形の中央柱部10と、トラス構造の金属製の床梁121が、中央柱部10又は中央柱部10の近傍から径方向外側に延設され、床梁121が周方向に所定の間隔で複数設けられた床部12と、中央柱部10の周囲に設けられた螺旋階段15と、螺旋階段15の周囲に、中央柱部10を中心として、周方向に所定の間隔で、床部12の床梁121に立設された複数の支柱部17等を有する。螺旋階段15は、中央柱部10と支柱部17の間に配置され、中央柱部10と支柱部17に接続された複数の踏み板151を備える。
つまり、中央柱部10と、螺旋階段15、支柱部17により、高強度の階段室が形成されている。
また、住宅100は、床部12より下方に設けられた上下動駆動部30を有する。この住宅100は、上下動駆動部30により、床部12を直接又は間接に、地面等に設けられた地杭(80,80s)に対して上下動するように構成されている。
この上下動駆動部30は、例えば床部12を上下動可能なピストンロッド31を備えた油圧シリンダ32と、油圧シリンダ32を駆動する油圧ポンプOP等を有する。
【0029】
住宅100は、例えば大雨などで住宅内への浸水の虞があるとき、詳細には、操作ボタンなどの操作部(不図示)の操作や水位検知部により規定水位以上を検知した場合に、上下動駆動部30により、トラス構造の床梁121で構成された床部12、中央柱部10、螺旋階段15、及び支柱部17等が一体的に、約1~10m、好ましくは約2~5m、最適には2m程度、上昇することができる。
すなわち、簡単な構成で、住宅内への浸水を低減する、高強度の住宅100を提供することができる。
また、上下動駆動部30が床部12を上下動するピストンロッド31を備えた油圧シリンダ32と油圧ポンプOPを有するので、簡単な構成で、床部12を昇降可能な住宅100を提供することができる。
また、本発明の実施形態に係る建物としての住宅100は、平面視円形又は円形に近い多角形であり、例えば、台風や大風であっても、風により建物へ加わる力を小さくすることができる。
また、住宅100(建物)は、中央柱部10と、螺旋階段15、支柱部17により、高強度の階段室が形成されており、トラス構造の金属製の床梁121が、中央柱部10又は中央柱部10の近傍から径方向外側に建物の外周部まで延設されているので、非常に高強度であり、階段室の下方からの上下動駆動部30による上下動に対して充分耐え得る強固な構造となっている。
【0030】
また、本発明の実施形態に係る住宅100は、床部12よりも下方に配置され、上下動駆動部30により上下動可能な中空の中間部材40と、床部12と中間部材40との間に設けられたスラストベアリング部55と、中間部材40に対して、床部12、中央柱部10、螺旋階段15、及び支柱部17を一体として、中央柱部10を回転中心として回転させる回転駆動部60とを有する。
回転駆動部60は、例えば中間部材40に支持されている筒状部材71に設けられた駆動モータMと、その駆動モータからの回転力を中央柱部10又は床部12に伝える動力伝達機構(例えばギヤ、チェーンの一方又は両方等)を有する。本実施形態では、中央柱部10の下端部又は下端部近傍の外側面に外歯歯車等が設けられており、駆動モータMからの回転力が動力伝達機構、外歯歯車を介して中央柱部10に伝達され、中央柱部10、床部12、螺旋階段15、及び支柱部17を一体として、中央柱部10を回転中心として回転するように構成されている。
すなわち、簡単な構成で、住宅100の中央柱部10、床部12、螺旋階段15、及び支柱部17を一体として、例えば0~360°のうち所定の角度だけ回転することができる住宅100を提供することができる。
また、住宅100(建物)は、平面視円形又は円形に近い多角形に形成されているので、例えば窓からの直射日光が強い場合に回転させることで、屋内の日当たりを適宜調整することができる。
また、住宅100(建物)が平面視円形又は円形に近い多角形であるので、回転時に、住宅100(建物)の近くの構造物、例えば庭の立木や石などに接触することなく、回転することができる。
また、この建物としての住宅100は、上昇した位置では回転しないことが好ましく、下方位置で回転自在である。例えば、この建物(住宅100)は、建物の上下方向の位置を検出する位置検出部と、建物が上方位置では回転せずに、下方位置でのみ回転するように制御する制御部(コンピュータ)などを有することが好ましい。
なお、駆動モータMの回転方向や回転速度、回転時間等は、操作部(不図示)の操作により設定するか、もしくは、予め回転方向や回転速度、回転時間、動作時刻などが設定された設定情報(記憶部に記憶されている)に基づいて、CPU等の制御部(不図示)により回転駆動部60を制御してもよい。
なお、回転駆動部60の駆動モータは、中間部材40や地杭や地面等に設けられていてもよい。
【0031】
また、本発明の実施形態に係る住宅100は、中央柱部10の下端が、中空の中間部材40内に配置された状態で、中央柱部10と中間部材40との間に介装されたスプリング72を備えた免震機構部70を有する。
詳細には、免震機構部70は、中央柱部10が遊嵌された筒状部材71と、中間部材40と筒状部材71の間に介装されたスプリング72を有する。
例えば中間部材40と筒状部材71の間には、筒状部材71を中心として八方それぞれスプリング72が延在している。なお、中間部材40と筒状部材71の間にスプリング72それぞれと対になるダンパが設けられていてもよい。
すなわち、簡単な構成で、免震機構部70を備えた住宅100を提供することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、上述の各図で示した実施形態は、その目的、構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【0033】
上述したように、本発明の実施形態では建物として住宅を説明したが、この実施形態に限られるものではなく、例えば、店舗(飲食店、スナック、オフィスなど)の建物に適用してもよい。
また、上下動駆動部は、電動モータの駆動により上下動するロッドにより、建物の床部を直接又は間接に、地杭に対して上下動するように構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、建物の平面視が円形状又は円形に近い多角形であったが、平面視矩形状であってもよい。
【0034】
また、例えば平面視円形又は円形に近い多角形の住宅(建物)の屋根に、例えば水や温水を散布するスプリンクラー(360°回転自在)を設けてもよい。このスプリンクラーにより例えば略円形状の屋根の雪やホコリ等を容易に除去することができる。
また、住宅(建物)の外周部の下部に周方向に沿って鉄板等の部材を設けることで、床下への小動物等の侵入を容易に防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…中央柱部
12…床部
15…螺旋階段
17…支柱部
30…上下動駆動部(油圧シリンダ又は駆動モータ等)
40…中間部材(中空の中間部材)
50…スラストベアリング部
60…回転駆動部
80…地杭(内側地杭)
80s…地杭(外側地杭)
100…住宅(建物)
121…床梁
151…踏み板
M…駆動モータ(回転駆動用モータ)