(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】肺高血圧症を処置する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/43 20060101AFI20220802BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220802BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220802BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20220802BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20220802BHJP
C07K 14/00 20060101ALN20220802BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
A61K38/43 ZNA
A61P9/12
A61P11/00
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/00
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2020512784
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 US2018032308
(87)【国際公開番号】W WO2018209227
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519402166
【氏名又は名称】マーシャル ユニバーシティー リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MARSHALL UNIVERSITY RESEARCH CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One John Marshall Drive, Huntington, West Virginia 25755-8100, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ズージェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジャイェン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール,サンドリーヌ,ヴイ.
(72)【発明者】
【氏名】シャピロ,ジョゼフ,アイ.
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0056446(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193168(US,A1)
【文献】Arterioscler Thromb. Vasc. Biol., 2012, Vol.32, pp.1354-1365, Supplement Material
【文献】Int. J. Mol. Sci., 2018, Vol.19, #2489
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00 - 45/08
A61K 38/00 - 38/58
A61P 1/00 - 43/00
C07K 1/00 - 19/00
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Na/K ATPアーゼ/Src受容体複合体のポリペプチドアンタゴニストを含
み、該ポリペプチドアンタゴニストが配列番号1の配列またはその機能的断片を含む、肺高血圧症を処置するための組成物。
【請求項2】
ポリペプチドアンタゴニストが配列番号2~4からなる群から選択されるアミノ酸配列によりコードされる細胞浸透ポリペプチドをさらに含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリペプチドアンタゴニストが配列番号5の配列またはその機能的断
片を含む、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局部投与、耳内投与、直腸投与、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、硝子体内投与、結膜下投与、前房内投与、眼内投与またはそれらの組み合わせ投与のための請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ヒトに投与するための請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
肺動脈加速時間を低減する請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
右心室肥大の量を低減する請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
右心室壁厚を低減する請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
肺血管壁厚の量を低減する請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
被投与対象者の肺におけ
る叢状病変の量を低減する請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
被投与対象者の肺血管におけるコラーゲン沈着の量を低減する請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
肺血管中膜または外膜のコラーゲン沈着の量を低減する請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
右心室線維症の量を低減する請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
被投与対象者におけるIL-6の量を低減する請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
肺高血圧症が肺動脈性肺高血圧症である、請求項1~
14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
Na/K ATPアーゼ/Src受容体複合体のポリペプチドアンタゴニストを含
み、該ポリペプチドアンタゴニストが配列番号1の配列またはその機能的断片を含む、肺動脈性肺高血圧症を処置するための組成物。
【請求項17】
ポリペプチドアンタゴニストが配列番号5の配列またはその機能的断
片を含む、請求項
16に記載の組成物。
【請求項18】
Na/K ATPアーゼ/Src受容体複合体のポリペプチドアンタゴニストを含
み、該ポリペプチドアンタゴニストが配列番号1の配列またはその機能的断片を含む、肺血管壁厚を低減するための組成物。
【請求項19】
ポリペプチドアンタゴニストが配列番号5の配列またはその機能的断
片を含む、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
肺動脈性肺高血圧症を有する対象に投与するための請求項
18または
19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年5月11日に出願した米国仮特許出願第62/504,947号からの優先権を主張し、その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
ここに開示する主題は、全般的に、肺高血圧症を処置する組成物および方法に関する。特に、ここに開示する主題のある実施形態は、ポリペプチド、ならびにポリペプチドを用いて肺動脈性肺高血圧症および関連する血管壁肥厚を含む肺高血圧症を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
Na/K-ATPアーゼ酵素は、ほとんどの真核細胞で広く発現され、Na+をくみ出し、K+を細胞に取り込むことにより膜横断イオン勾配の維持を助けている。Na/K-ATPアーゼは、一方がα1サブユニットのCD2とSrc SH2との間にあり、他方が第三サイトゾルドメイン(CD3)とSrc キナーゼドメインとを含む、少なくとも2つの結合モチーフによりSrcと直接相互作用する。このNa/K-ATPアーゼおよびSrc複合体の形成は、プロテインキナーゼカスケードを引き起こすウアバインの受容体として働く。特に、Na/K-ATPアーゼとのウアバインの結合は、後者の相互作用を妨げ、次いで、ERKカスケード、PLC/PKC経路およびROS生成を含む異なる経路の組立ておよび活性化をもたらす。 さらに、この相互作用は、Srcを不活性状態に保つ。つまり、Na/K-ATPアーゼは、内因性のSrcの負の調節因子として機能する。ともに参照により本明細書に組み込まれる国際公開WO2008/054792およびWO2010/071767も参照されたい。
【0004】
Srcファミリーキナーゼは、52~62kDaの膜結合非受容体チロシンキナーゼであり、これらは、様々な細胞外リガンドに応答していくつかのチロシンリン酸化関連シグナル伝達経路に参加する。Srcは、例えば、少なくとも3つのタンパク質相互作用ドメインを含む。SH3ドメインは、ポリプロリンモチーフに結合し、SH2ドメインは、リン酸化チロシン残基と相互作用する。キナーゼドメインは、ヌクレオチドと反応し、基質をリン酸化する。SH3またはSH2ドメインとのタンパク質リガンドの結合は、Srcを活性化し得る。 Srcのキナーゼドメインと結合するタンパク質は、Src活性も調節できることが報告された。
【0005】
Na+/K+-ATPアーゼが、SrcおよびSrcファミリーキナーゼと相互作用して、機能的受容体を形成することもさらに認識されている。この受容体とのウアバインの結合は、Srcを活性化し、このことが、次いで、様々なエフェクターをリン酸化して、Ras/Raf/ERK1/2およびホスホリパーゼC/プロテインキナーゼCカスケードを含む様々な経路の組立ておよび活性化をもたらし、細胞内Ca2+および細胞性ROS生成を増加させる。これらのシグナル伝達経路の活性化は、最終的に、心臓および腎臓機能の変化、細胞増殖の刺激および組織線維化、虚血/再灌流損傷に対する組織の保護、癌細胞成長の阻害などを導く。多くの既知のSrcおよびSrcファミリーキナーゼ阻害薬は、ATP結合についてこれらのキナーゼと競合するATPアナログとして開発されたが、このようなSrc阻害薬は、経路特異性を欠く。この点で「pNaKtide」と呼ばれるポリペプチド(配列番号5)によるNKA/Src活性化の阻止は、ROS増幅ループの形成を効果的になくし、病的ROSシグナル伝達の阻害をもたらすことが以前に観察された。pNaKtideは、肥満症におけるROSストレスおよびシグナル伝達も低減し、尿毒症性心筋症の動物モデルにおける左室肥大および線維症の阻止および後退においても効果があった。
【0006】
25 mmHgを超える安静時平均肺動脈圧または30 mmHgを超える運動時血圧と定義される肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、肺血管リモデリングおよび狭窄が右心室の機能障害および不全を進行性に導く致命的な疾患である。PAHは、右心不全および死を結果的に導く内皮細胞増殖、肺血管リモデリング、遠位血管の退縮および肺抵抗の増加を特徴とする。PAHの推定罹患率は、1百万あたり10から52件の範囲である。最新の登録によると、PAH患者の3年および5年生存率は、それぞれ51~71%および48~58%であったことが示されている。PAHにおける特徴的な肺血管病変は、中膜肥大、内膜増殖性および線維性変化、外膜肥厚、複合病変ならびに血栓性病変を含む。異常血管リモデリングおよび肺血管狭窄は、肺循環および右心室後負荷における耐性の上昇をもたらし、代償的機構として右心室肥大の発展を導く。心拍出は最初維持されるが、持続的な耐性の増加とともに、進行性収縮不全が生じ、代償不全、拡張および右心室不全を導く。さらに、PAHの病的状態の下で、ROSの増加は、肺脈管構造における有害なリモデリングの病理学的基礎である内皮細胞および平滑筋細胞増殖および炎症に対して重要である。PAH患者の生存は、右心室機能と密接に関連し、細胞肥大および心筋線維症の進展も、ROSおよび脂質過酸化の過剰な発生と関連している。
【0007】
PAHの管理が相当進んだにも関わらず、様々な療法の限界および複雑さのためにPAHの処置における新規なモダリティが必要になってきている。主に、4つのモダリティがPAHについて現在承認されている:カルシウムチャネル遮断、プロスタサイクリンアナログ、エンドセリン経路アンタゴニスおよび一酸化窒素経路剤である。カルシウムチャネル遮断薬は、血管細胞へのカルシウムの流入を阻害して、平滑筋の弛緩および血管拡張を導く。これは、有用な療法であり得るが、血管拡張性応答を有する6~7%のPAH患者のためだけである。カルシウムチャネル遮断薬は、非応答者において禁忌である。なぜなら、これは、罹患率および死亡率を増加させる可能性があるからである。肺血管床に対する強力な血管拡張作用、抗増殖性、抗血栓性および抗炎症性活性を有する内皮細胞により生成される内因性物質であるプロスタサイクリン(PGI2)は、PAHにおいて妨げられている。
【0008】
合成プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリンアナログは、よって、PAHの治療剤として設計された。加えて、エンドセリン-1(ET-1)経路がPAHにかかわっている。特に、ET-1は、肺脈管構造においてその受容体ET-A(血管平滑筋細胞)と結合することにより、血管狭窄および増殖を促進する。PAHにおいて、ET-1、ET-AおよびET-B(内皮ET-1受容体)はアップレギュレートされ、よって、エンドセリン受容体アンタゴニスト(ERA)は、PAH療法として開発された。PAHにおいて、肺脈管構造における一酸化窒素(NO)バイオアベイラビリティは減少する。NOは、内皮細胞により生成され、平滑筋細胞において可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を活性化して、環状グアノシン一リン酸(cGMP)を触媒し、これが、血管拡張、血小板凝集の阻害および平滑筋細胞増殖を導く。ホスホジエステラーゼ(PDE)は、cGMPを不活性化する酵素である。PDE-5は、肺において豊富に発現されるアイソザイムであり、PAHにおいてアップレギュレートされることが知られている。PDE-5阻害薬は、cGMPレベルを保ち、肺動脈平滑筋細胞弛緩と、おそらく血管平滑筋細胞の成長阻害とを含む内因性NOの効果を促進するので、このクラスの薬物療法がPAHの処置において利益をもたらすこととなる。
【0009】
現時点で、肺動脈性肺高血圧症の治療法はないが、プロスタノイド、エンドセリン受容体アンタゴニストおよびホスホジエステラーゼ5型阻害薬を含む現在承認されている処置オプションは、生存を改善することが示されている。合成PGI2であるエポプロステノールは、1995年にUSFDAより承認された最初のPAH標的療法であった。現在まで、これは、PAHにおける死亡率を低減させることが証明された唯一の処置である。しかし、臨床的有用性にもかかわらず、短い半減期(3~5分)、冷却用の氷嚢を必要とする再構成後の安定性の欠如およびこの薬物の連続的で不断のIV投与により、その使用は厄介なものとされた。エポプロステノールに関する最も重篤な有害事象は、部位感染、敗血症およびカテーテル関連静脈血栓のようなトンネル型留置カテーテルに関与する。ポンプがうまく作動しないかまたは注入が妨げられると、致命的な反跳PAHの危険性の可能性もある。全てのPGI2剤について同様の一般的な副作用は、頭痛、潮紅、顎痛および下痢を含む。より長い半減期/安定性を有する他のプロスタノイドアナログならびにSC、IV、経口および吸入を含む複数の投与経路を可能にする製剤は、承認され、単剤療法または併用処置として血行動態、症状、クオリティ・オブ・ライフおよび/または6分間歩行距離に対して正の影響を与えている。同様に、プロスタサイクリン受容体の高度選択的アゴニストは、PAHの処置についてプロスタサイクリンアナログの経口代替物として評価項目に正の影響を与えているが、バックグラウンド処置にかかわらず死亡率を減少させなかった。
【0010】
2001年以来二重または選択的ERAも開発され、改善されている。概して、これらは、PAH患者における運動能力の持続的な改善ならびに臨床悪化および死亡のリスクが低いことが証明されている。いくつかについて、全ての通常のエストロプロゲステロン性(estroprogestative)避妊薬ならびにシクロスポリン、シンバスタチン、ワルファリンおよびリファンピンのような通常用いられる薬物を含む薬物相互作用についての懸念がまだ存在する。重要なことに、ボセンタンを含むERAの全ては、HIVおよびAIDSを処置するために用いる多くの抗レトロウイルス療法との薬物相互作用の可能性を有する。これらは、催奇性でもあり、妊娠は、公式に禁忌とされている。
【0011】
現在、2つのPDE-5iおよび1つの可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬が、PAHの処置についてUS FDAにより承認されている。概して、これらは、WHO機能的分類クラスおよび臨床的悪化までの時間に対して好ましい効果を有する。薬物間相互作用と、全身性血管拡張効果による低血圧症(ならびに頭痛、潮紅、鼻閉、消化不良および筋肉痛)の危険性とが、主な危険性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
明らかに、肺高血圧症患者の治療においてまだ満たされていないニーズが存在する。よって、肺高血圧症を処置する組成物および方法に対するニーズがまだ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
ここに開示する主題は、上で同定したニーズのいくつかまたは全てに合致し、この書面で提供される情報を研究することにより、当業者にとって明らかになる。
【0014】
この概要は、ここに開示する主題のいくつかの実施形態について記載し、多くの場合、これらの実施形態の変形および入れ替えを列挙する。この概要は、多くの変動した実施形態の単なる例示である。ある実施形態の1つ以上の代表的な特徴への言及は、同様に例示的である。このような実施形態は、言及する特徴とともにまたはなしで典型的に存在できる。同様に、これらの特徴は、この概要に列挙するかしないかにかかわらず、ここに開示する主題の他の実施形態に適用できる。過剰な反復を避けるために、この概要では、このような特徴の全ての可能な組み合わせを列挙または示唆しない。
【0015】
ここに開示する主題は、肺高血圧症を処置する組成物および方法を含む。特に、ここに開示する主題のある実施形態は、ポリペプチド、ならびに肺動脈性肺高血圧症および関連する血管壁肥厚を含む肺高血圧症を処置するためにポリペプチドを用いる方法を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、Na/K ATPアーゼ/Src受容体複合体のポリペプチドアンタゴニストを、それを必要とする対象に投与することを含む肺高血圧症を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドアンタゴニストは、配列番号1の配列またはその機能的断片および/もしくは機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドアンタゴニストは、配列番号2~4からなる群から選択されるアミノ酸配列によりコードされる細胞浸透ポリペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞浸透ペプチドを含むこのようなポリペプチドアンタゴニストは、配列番号5の配列またはその機能的断片および/もしくは機能的バリアントを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、ここに開示する主題に従うポリペプチドアンタゴニストの投与は、肺高血圧症の根底にある原因および/または症状の1つ以上を低減または処置する。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドアンタゴニストの投与は、肺動脈加速時間を低減し、右心室肥大の量を低減し、右心室壁厚を低減し、肺血管壁厚の量を低減し、対象の肺における叢状病変の量を低減し、肺血管におけるコラーゲン沈着の量を低減し、肺血管中膜または外膜におけるコラーゲン沈着の量を低減し、右心室線維症の量を低減し、かつ/あるいは対象におけるIL-6の量を低減する。
【0018】
いくつかの実施形態において、ここに開示する主題に従って処置される肺高血圧症は、それにより、ある実施形態において、Na/K ATPアーゼ/Src受容体複合体のポリペプチドアンタゴニストを、それを必要とする対象に投与することを含む、肺動脈性肺高血圧症を処置する方法が提供されるような肺動脈性肺高血圧症である。
【0019】
いくつかの実施形態において、肺血管壁厚を低減する方法がさらに提供される。いくつかの実施形態において、Na/K ATPアーゼ/Src受容体複合体のポリペプチドアンタゴニストを、それを必要とする対象に投与することを含む、肺血管壁厚を低減する方法が提供される。いくつかの実施形態において、このような対象は、肺動脈性肺高血圧症を有する。
【0020】
ここに開示する主題のさらなる特徴および利点は、この書面の記載、図面および非限定的な実施例を詳細に理解すれば、当業者に明らかになる。
【0021】
配列表の簡単な説明
以下は、ここに添付し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表の簡単な説明である。
配列番号1は、ここに開示する主題に従うポリペプチドの実施形態をコードするアミノ酸配列である(NaKtide、SATWLALSRIAGLCNRAVFQ)。
配列番号2は、TAT 細胞浸透ペプチドをコードするアミノ酸配列である(GRKKRRQRRRPPQ)。
配列番号3は、ペネトラチン(AP)細胞浸透ペプチドをコードするアミノ酸配列である(RQIKIWFQNRRMKWK K)。
配列番号4は、Na/K-ATPアーゼのα1サブユニットのN末端ポリリジンドメインをコードするアミノ酸配列である(A1N、KKGKKGKK)。
配列番号5は、ここに開示する主題に従う別のポリペプチドの実施形態をコードするアミノ酸配列である(pNaKtide、GRKKRRQRRRPPQSATWLALSRIAGLCNRAVFQ)。
配列番号6は、IL-6発現を分析するためのフォワードプライマーである(TTC TCT CCG CAA GAG ACT TCC)。
配列番号7は、IL-6発現を分析するためのリバースプライマーである(TGT GGG TGG TAT CCT CTG TGA)。
配列番号8は、β-アクチン発現を分析するためのフォワードプライマーである(AGA TCA AGA TCA TTG CTC CT)。
配列番号9は、β-アクチン発現を分析するためのリバースプライマーである(ACG CAG CTC AGT AAC AGT CC)。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】pNaKtideが、肺動脈性肺高血圧症(PAH)および右心室(RV)肥大を減少することを示すグラフを含み、(
図1A)肺動脈加速時間(PAAT);(
図1B)Fultonインデックス;(
図1C)心エコーにより評価したRV厚;(
図1D)右心室収縮期圧(RVSP)の代表的なトレース;および(
図1E)RVSPを含む。値は、平均±SEMである。**、***および****は、示した群に対するp<0.01、p<0.001およびp<0.0001である。群あたりn=4~14。
【
図1B】pNaKtideが、肺動脈性肺高血圧症(PAH)および右心室(RV)肥大を減少することを示すグラフを含み、(
図1A)肺動脈加速時間(PAAT);(
図1B)Fultonインデックス;(
図1C)心エコーにより評価したRV厚;(
図1D)右心室収縮期圧(RVSP)の代表的なトレース;および(
図1E)RVSPを含む。値は、平均±SEMである。**、***および****は、示した群に対するp<0.01、p<0.001およびp<0.0001である。群あたりn=4~14。
【
図1C】pNaKtideが、肺動脈性肺高血圧症(PAH)および右心室(RV)肥大を減少することを示すグラフを含み、(
図1A)肺動脈加速時間(PAAT);(
図1B)Fultonインデックス;(
図1C)心エコーにより評価したRV厚;(
図1D)右心室収縮期圧(RVSP)の代表的なトレース;および(
図1E)RVSPを含む。値は、平均±SEMである。**、***および****は、示した群に対するp<0.01、p<0.001およびp<0.0001である。群あたりn=4~14。
【
図1D】pNaKtideが、肺動脈性肺高血圧症(PAH)および右心室(RV)肥大を減少することを示すグラフを含み、(
図1A)肺動脈加速時間(PAAT);(
図1B)Fultonインデックス;(
図1C)心エコーにより評価したRV厚;(
図1D)右心室収縮期圧(RVSP)の代表的なトレース;および(
図1E)RVSPを含む。値は、平均±SEMである。**、***および****は、示した群に対するp<0.01、p<0.001およびp<0.0001である。群あたりn=4~14。
【
図1E】pNaKtideが、肺動脈性肺高血圧症(PAH)および右心室(RV)肥大を減少することを示すグラフを含み、(
図1A)肺動脈加速時間(PAAT);(
図1B)Fultonインデックス;(
図1C)心エコーにより評価したRV厚;(
図1D)右心室収縮期圧(RVSP)の代表的なトレース;および(
図1E)RVSPを含む。値は、平均±SEMである。**、***および****は、示した群に対するp<0.01、p<0.001およびp<0.0001である。群あたりn=4~14。
【
図2】肺を単離し、加圧灌流し、固定し、5μm切片に切断する実験において、pNaKtideが用量依存的な様式でPAHにおける肺血管リモデリングを減少することを示す画像を含み、画像は、酸素正常状態、HxSuおよび異なる用量のpNaKtide群での処置からの代表的な平滑筋アクチン(SMA)およびフォン・ウィルブランド因子(vWF)で染色した肺動脈を示す。
【
図3A】pNaKtideが、叢状病変(PL)を低用量にて減少することを示す画像およびグラフであり、(
図3A)HxSuおよびpNaKtideでの処置のH&E染色切片における代表的なPLを示す画像;および(
図3B)PLの数を示すグラフを含む。値は、平均±SEMであり、*および**は、示した群に対するp<0.05およびp<0.01を示す。群あたりn=4~8。バー=100μm。
【
図3B】pNaKtideが、叢状病変(PL)を低用量にて減少することを示す画像およびグラフであり、(
図3A)HxSuおよびpNaKtideでの処置のH&E染色切片における代表的なPLを示す画像;および(
図3B)PLの数を示すグラフを含む。値は、平均±SEMであり、*および**は、示した群に対するp<0.05およびp<0.01を示す。群あたりn=4~8。バー=100μm。
【
図4】pNaKtideが、HxSuラットにおいてコラーゲン沈着を低減することを示す画像を含み、酸素正常状態、HxSuおよびpNaKtide群での処置の代表的なピクロシリウスレッド(PSR)染色画像を示す。
【
図5A】pNaKtideが、HxSuラットにおいてコラーゲン沈着を低減することを示す画像およびグラフを含み、(
図5A)PSR染色した右心室におけるコラーゲンの蓄積の代表的な画像;および(
図5B)心臓線維化の定量のグラフを含む。各群についてn=4。***、p<0.001賦形剤対対照;###、p<0.001 pNaKtide対賦形剤。バー=100μm。
【
図5B】pNaKtideが、HxSuラットにおいてコラーゲン沈着を低減することを示す画像およびグラフを含み、(
図5A)PSR染色した右心室におけるコラーゲンの蓄積の代表的な画像;および(
図5B)心臓線維化の定量のグラフを含む。各群についてn=4。***、p<0.001賦形剤対対照;###、p<0.001 pNaKtide対賦形剤。バー=100μm。
【
図6】pNaKtideが、HxSuラットモデルにおけるIL-6 mRNAレベルを減少させることを示すグラフであり、遺伝子発現における量的な変化は、定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(ΔΔCt法)により分析し、対照(酸素正常状態)における平均発現に1の倍数変化を割り当て、それに対して関連する試料を比較した。値は、平均±SEMであり、*は、P<0.05を示し、群あたりn=4~6。
【
図7A】pNaKtideが、肺におけるHxSu誘導タンパク質カルボニル化を減弱することを示す画像およびグラフを含み、(
図7A)肺ホモジネートにおけるタンパク質カルボニル化の代表的なウェスタンブロットの画像;および(
図7B)肺ホモジネートにおけるタンパク質カルボニル化の定量データを示すグラフを含む。値は、平均±SEMであり、*および**は、P<0.05およびP<0.01を示し、群あたりn=3~5。
【
図7B】pNaKtideが、肺におけるHxSu誘導タンパク質カルボニル化を減弱することを示す画像およびグラフを含み、(
図7A)肺ホモジネートにおけるタンパク質カルボニル化の代表的なウェスタンブロットの画像;および(
図7B)肺ホモジネートにおけるタンパク質カルボニル化の定量データを示すグラフを含む。値は、平均±SEMであり、*および**は、P<0.05およびP<0.01を示し、群あたりn=3~5。
【
図8A】cCBMヘテロ接合性マウスにおけるRV肥大およびPHを示すグラフを含み、(
図8A)mCBMマウスにおけるRV/LV+S重量比を示すグラフ(ここで、中隔(S)を含む右心室および左心室は、年齢および性別が一致した6か月齢のマウスから結合組織なしで解剖して秤量した);(
図8B)mCBMヘテロ接合性マウスにおけるRV/体重の増加を示すグラフ;(
図8C)代表的なRVSPトレース;および(
図8D)mCBMヘテロ接合性マウスにおけるRVSPの増加(RVSPは、年齢および性別が一致した6か月齢のマウスで測定した)を含む。データは、平均±SEMで表す。*P<0.01、**P<0.01。mCBM WT対ヘテロ接合性(n=6~8)。
【
図8B】cCBMヘテロ接合性マウスにおけるRV肥大およびPHを示すグラフを含み、(
図8A)mCBMマウスにおけるRV/LV+S重量比を示すグラフ(ここで、中隔(S)を含む右心室および左心室は、年齢および性別が一致した6か月齢のマウスから結合組織なしで解剖して秤量した);(
図8B)mCBMヘテロ接合性マウスにおけるRV/体重の増加を示すグラフ;(
図8C)代表的なRVSPトレース;および(
図8D)mCBMヘテロ接合性マウスにおけるRVSPの増加(RVSPは、年齢および性別が一致した6か月齢のマウスで測定した)を含む。データは、平均±SEMで表す。*P<0.01、**P<0.01。mCBM WT対ヘテロ接合性(n=6~8)。
【
図8C】cCBMヘテロ接合性マウスにおけるRV肥大およびPHを示すグラフを含み、(
図8A)mCBMマウスにおけるRV/LV+S重量比を示すグラフ(ここで、中隔(S)を含む右心室および左心室は、年齢および性別が一致した6か月齢のマウスから結合組織なしで解剖して秤量した);(
図8B)mCBMヘテロ接合性マウスにおけるRV/体重の増加を示すグラフ;(
図8C)代表的なRVSPトレース;および(
図8D)mCBMヘテロ接合性マウスにおけるRVSPの増加(RVSPは、年齢および性別が一致した6か月齢のマウスで測定した)を含む。データは、平均±SEMで表す。*P<0.01、**P<0.01。mCBM WT対ヘテロ接合性(n=6~8)。
【
図8D】cCBMヘテロ接合性マウスにおけるRV肥大およびPHを示すグラフを含み、(
図8A)mCBMマウスにおけるRV/LV+S重量比を示すグラフ(ここで、中隔(S)を含む右心室および左心室は、年齢および性別が一致した6か月齢のマウスから結合組織なしで解剖して秤量した);(
図8B)mCBMヘテロ接合性マウスにおけるRV/体重の増加を示すグラフ;(
図8C)代表的なRVSPトレース;および(
図8D)mCBMヘテロ接合性マウスにおけるRVSPの増加(RVSPは、年齢および性別が一致した6か月齢のマウスで測定した)を含む。データは、平均±SEMで表す。*P<0.01、**P<0.01。mCBM WT対ヘテロ接合性(n=6~8)。
【
図9A】Hetマウスにおける肺動脈筋性化を示すグラフおよび画像を含み、ここで、wtおよびhetマウスからの左肺を、10%ホルマリンで膨張させ、組織学的評価のために処理し、次いで、抗vWFおよび抗α-SMAで染色した。図面は、(
図9A)wtおよびhetマウスにおける肺血管の代表的な免疫組織学的画像;(
図9B)小血管(30~70μm)で評価した肺動脈筋性化の尺度であるα-SMA染色の程度を示す画像およびグラフ(ここで、血管は、非筋性化(α-SMA染色なし)、部分的筋性化または完全筋性化(平滑筋の厚く破壊されていない壁)を割り当てられ、それぞれのパーセント分布を、群あたり算出した)を含む。血管は、動物あたり各肺切片の15の視野(倍率20×)で計数した。データは、平均±SEMであり、群あたりn=4~6。*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001。尺度バー:50μm。
【
図9B】Hetマウスにおける肺動脈筋性化を示すグラフおよび画像を含み、ここで、wtおよびhetマウスからの左肺を、10%ホルマリンで膨張させ、組織学的評価のために処理し、次いで、抗vWFおよび抗α-SMAで染色した。図面は、(
図9A)wtおよびhetマウスにおける肺血管の代表的な免疫組織学的画像;(
図9B)小血管(30~70μm)で評価した肺動脈筋性化の尺度であるα-SMA染色の程度を示す画像およびグラフ(ここで、血管は、非筋性化(α-SMA染色なし)、部分的筋性化または完全筋性化(平滑筋の厚く破壊されていない壁)を割り当てられ、それぞれのパーセント分布を、群あたり算出した)を含む。血管は、動物あたり各肺切片の15の視野(倍率20×)で計数した。データは、平均±SEMであり、群あたりn=4~6。*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001。尺度バー:50μm。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここに開示する主題の1つ以上の実施形態の詳細を、本書面に記載する。この書面に記載する実施形態およびその他の実施形態への変更は、この書面で提供する情報を詳細に理解した後に当業者に明らかである。この書面で提供する情報、および特に記載する例示的実施形態の具体的な詳細は、明確な理解のためにまず提供され、そこから不要な限定は理解されない。
【0024】
ここに開示する主題の様々な詳細は、本明細書に記載する主題の範囲を逸脱せずに変更できることが理解される。さらに、本明細書の記載は、説明のためのみであり、限定を目的としない。
【0025】
さらに、本明細書で用いる用語は、当業者により十分に理解されると考えるが、ここに開示する主題の説明を容易にするために定義を記載する。そうでないと定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術的および科学的用語は、ここに開示する主題が属する技術の当業者により通常理解されるものと同じ意味である。本明細書に記載するものと同様または等価な多くの方法、装置および材料を、ここに開示する主題の実施および試験において用いることができるが、代表的な方法、装置および材料を以下に記載する。
【0026】
さらに、長く存在する特許法の申し合わせに従って、用語「a」、「an」および「the」は、特許請求の範囲を含む本出願において用いる場合、「1つ以上」のことをいう。よって、例えば「ポリペプチド」への言及は、このようなポリペプチドの複数を含む、などである。そうでないと示さない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いる材料の量、反応条件のような特性を表す全ての数字は、用語「約」により全ての場合に修飾されていると理解される。したがって、そうでないと記載しない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、ここに開示する主題により得ようとする所望の特性に依存して変動できる近似値である。
【0027】
本明細書で用いる場合、用語「約」は、値または質量、重量、時間、容量、濃度もしくはパーセンテージの量に言及する場合、特定する量からあるいくつかの実施形態において±20%、あるいくつかの実施形態において±10%、あるいくつかの実施形態において±5%、あるいくつかの実施形態において±1%、あるいくつかの実施形態において±0.5%、およびあるいくつかの実施形態において±0.1%の変動を包含することを意味する。これは、このような変動は、開示する方法を行うために適切であるからである。本明細書で開示するいくつかの値があり、各値は、値そのものに加えて、その特定の値の「約」としても本明細書に開示されることも理解される。例えば、「10」の値が開示されている場合、「約10」も開示されている。2つの特定の単位の間のそれぞれの単位も開示されていると理解される。例えば、10および15が開示されているならば、11、12、13および14も開示されている。
【0028】
ここに開示する主題は、肺動脈性肺高血圧症を処置する組成物および方法を含む。用語「肺高血圧症」は、本明細書において、対象の肺の血管における圧力の増加のことをいい、これらの血管および対象の心臓の右側に影響するもののことをいう。このような肺高血圧症は、肺高血圧症の原因に基づいていくつかの群に分類でき、肺動脈性肺高血圧症、左側心臓疾患を原因とする肺高血圧症、肺疾患を原因とする肺高血圧症、血餅を原因とする肺高血圧症およびその他の状態を原因とする肺高血圧症を含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、しかし、ここに開示する主題に従って処置される肺高血圧症は、肺動脈性肺高血圧症である。この点で、用語「肺動脈性肺高血圧症」は、本明細書で用いる場合、世界肺高血圧症学界により定義されるI型肺高血圧症として典型的に分類されるもののことをいい、特発性および遺伝性PAH、ならびに結合組織疾患(強皮症、狼瘡など)関連PAH、薬物または毒素、HIV感染、門脈圧亢進症、先天性心疾患および住血吸虫症により誘導されるPAHを含む。
【0030】
ここに開示する主題のいくつかの実施形態において、肺高血圧症を処置するために有用なポリペプチドを利用するかまたはそれを含む方法および組成物が提供される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、Na/K-ATPアーゼおよびSrc複合体の受容体機能を低減または阻害するポリペプチドである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、Na/K-ATPアーゼおよびSrc複合体の受容体機能についてのアンタゴニストである。用語「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」は、そのサイズまたは機能にかかわらず、タンパク質アミノ酸のポリマーのことをいうために本明細書において交換可能に用いられる。用語「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、遺伝子生成物、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片、任意のプロテアーゼ由来ペプチド(断片)ならびにアミノ酸のポリマーのその他の等価物、バリアントおよびアナログのことをいうためにも交換可能に用いられる。
【0031】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列(NaKtide)またはその断片および/もしくはバリアントで構成される。用語「ポリペプチド断片」または「断片」は、このような参照ポリペプチドに関して用いられる場合、参照ポリペプチド自体と比較してアミノ酸残基が欠失しているが、残りのアミノ酸配列が、通常、参照ポリペプチド中の対応する位置と同一であるポリペプチドのことをいう。このような欠失は、参照ポリペプチドのアミノ末端、参照ポリペプチドのカルボキシ末端またはそれらの両方で生じてよい。ポリペプチド断片は、「機能的断片」も含むことができ、この場合、断片は、参照ポリペプチドの活性のいくらかまたは全てを保持している。
【0032】
用語「バリアント」は、本明細書で用いる場合、参照ポリペプチドから1つ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸配列のことをいう。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドから1つ以上のアミノ酸置換により異なることがある。例えば、NaKtideポリペプチドバリアントは、配列番号1のNaKtideポリペプチドから、1つ以上のアミノ酸置換、すなわち変異により異なることができる。この点で、2つ以上の変異の組み合わせを含むポリペプチドバリアントは、それぞれ、二重変異体、三重変異体などと呼ぶことができる。ある変異は、ポリペプチドの機能の顕著な変化をもたらし得るが、他の変異は、ポリペプチドの機能においてほとんどまたは全く顕著な変化をもたらさないことが認識される。
【0033】
いくつかの実施形態において、本ポリペプチドは、配列番号1のNaKtideポリペプチドと少なくとも75%の相同性を有するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1のNaKtideポリペプチドと少なくとも85%の相同性を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1のNaKtideポリペプチドと少なくとも90%の相同性を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1のNaKtideポリペプチドと少なくとも95%の相同性を有する。
【0034】
「パーセント同一性」または「パーセント相同性」は、本明細書において参照配列に対してアミノ酸配列または核酸配列について記載するために用いる場合、KarlinおよびAltschulにより記載される式を用いて決定できる。このような式は、AltschulらによるBLAST(basic local alignment search tool)プログラムに組み込まれている。
【0035】
本ポリペプチドの実施形態は、1つ以上のリーダー配列をさらに含むことができ、いくつかの実施形態において、リーダー配列は、それらに限定されないが、細胞浸透ペプチド(CPP)を含む。用語「細胞浸透ペプチド」(CPP)は、本明細書において、細胞で見いだされる原形質膜を横切って分子カーゴの輸送の促進ができるかまたはそれを助ける短いペプチドのことを全般的にいうために用いる。いくつかの場合では、分子カーゴは、本明細書で記載するポリペプチドのような別のポリペプチドを含む。もちろん、細胞浸透ペプチドは、共有結合および/または非共有結合を含む任意の数の手段により分子カーゴ(例えばポリペプチド)と結合できる。いくつかの場合では、しかし、このような細胞浸透ペプチドは、しばしば、比較的高濃度のリジンおよびアルギニンのような正荷電アミノ酸を含み、荷電(極性)および非荷電アミノ酸の交互のパターンを含む配列を有する。
【0036】
ここに開示する主題のいくつかの実施形態において、例示的なリーダー配列または細胞浸透ペプチドは、トランス活性化転写活性化因子(TAT)細胞浸透ペプチドを含むことができ、これは、配列番号2の配列で表される。TAT配列をNaKtideに付加すると、pNaKtideが作製される。別の例示的なリーダー配列は、ペネトラチン(AP)を含み、これは、配列番号3の配列で表される。なお別の例示的なリーダー配列は、Na/K-ATPアーゼのα1サブユニットのN末端ポリリジンドメイン(A1N)をコードするアミノ酸配列を含み、これは、配列番号4の配列で表される。当業者は他の細胞浸透ペプチドを含む他のリーダー配列も、本開示のポリペプチドとともに用い得ることを認識する。いくつかの実施形態において、配列番号1のNaKtide配列と結合した細胞浸透ペプチドのようなリーダー配列を含むポリペプチドは、本明細書において、pNaKtideという(例えば配列番号5;GRKKRRQRRRPPQSATWLALSRIAGLCNRAVFQ、これは、配列番号1のNaKtide配列と融合した配列番号2のTAT細胞浸透ペプチドを含む)。
【0037】
ここに開示する主題は、本明細書に記載するポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物をさらに含み、それを利用する。実際に、本明細書におけるある実施形態に言及する場合、用語「ポリペプチド」および/または「組成物」は、ポリペプチドを含む医薬組成物に言及するために本明細書において交換可能に用いることができる。
【0038】
用語「薬学的に許容される担体」は、本明細書で用いる場合、滅菌水性もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、および使用直前の滅菌注射用溶液もしくは分散液への再構成のための滅菌粉末のことをいう。適度な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材の使用により、分散液の場合に必要な粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤の使用により維持できる。これらの組成物は、補助剤、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤も含むことができる。微生物の作用は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることにより、確実に防止できる。等張化剤、例えば糖類、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましいこともある。
【0039】
注射用医薬形の吸収の延長は、吸収を遅らせるモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような剤を含むことにより、もたらすことができる。注射用デポー形は、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルソエステル)およびポリ(無水物)のような生物分解性ポリマー中で薬物のマイクロカプセルマトリクスを形成することにより作製される。ポリペプチドと生物分解性ポリマーとの比率、および用いる特定の生物分解性ポリマーの性質に依存して、ポリペプチド放出の速度を制御できる。デポー注射用製剤は、ポリペプチドを、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕捉することによっても調製できる。注射用製剤は、例えば細菌保持フィルタを通しての濾過により、または使用直前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体中に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形の滅菌剤を組み込むことにより滅菌できる。適切な不活性担体は、ラクトースのような糖類を含むことができる。
【0040】
適切な製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、殺菌性抗生物質および意図するレシピエントの体液と製剤を等張にする溶質を含むことができる水性または非水性滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液をさらに含むことができる。
【0041】
組成物は、油性または水性賦形剤中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形をとることもでき、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、ポリペプチドは、適切な賦形剤、例えば滅菌パイロジェンフリー水での使用前の構成のための粉末の形であり得る。
【0042】
製剤は、例えば密閉アンプルおよびバイアル中の単位用量または多重用量容器中にあり得、使用直前に滅菌液体担体の添加のみを必要とする冷凍または凍結乾燥(freeze-dried (lyophilized))状態で貯蔵できる。
【0043】
経口投与のために、組成物は、結合剤(例えばアルファ化メイズデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えばラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシム)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えばバレイショデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に許容される補形剤を用いて従来の方法により調製される例えば錠剤またはカプセル剤の形をとることができる。錠剤は、当該技術において既知の方法により被覆され得る。
【0044】
経口投与用の液体調製物は、例えば液剤、シロップ剤もしくは懸濁剤の形をとることができるか、または使用前に水もしくはその他の適切な賦形剤を用いる構成のための乾燥製品であり得る。このような液体調製物は、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添加食用油脂)、乳化剤(例えばレシチンまたはアラビアゴム)、非水性賦形剤(例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画植物油)および保存剤(例えばメチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)のような薬学的に許容される添加剤を用いて従来の技術により調製できる。調製物は、適切であれば、緩衝剤の塩、香味剤、着色剤および甘味剤も含むことができる。経口投与用の調製物は、活性化合物の制御放出を与えるように適切に処方できる。頬側投与のために、組成物は、従来の様式で処方された錠剤またはロゼンジの形をとることができる。
【0045】
組成物は、移植または注射のための調製物として処方することもできる。よって、例えば、化合物は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば許容できる油中のエマルジョン)またはイオン交換樹脂とともに、あるいは難溶性誘導体(例えば難溶性の塩)として処方できる。化合物は、直腸組成物、クリームもしくはローション剤または経皮貼付剤において処方することもできる。
【0046】
本明細書に記載するように、ここに開示する主題は、ここに開示する主題のポリペプチド(例えば配列番号5のポリペプチド)を用いて肺動脈性肺高血圧症を含む肺高血圧症を処置する方法をさらに含む。いくつかの実施形態において、ここに開示するポリペプチドの1つを、それを必要とする対象に投与することを含む肺高血圧症を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態において、このようなポリペプチドの投与は、Na/K-ATPアーゼおよびSrc複合体の受容体機能を阻害または低減することにより、肺高血圧症を処置する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、Na/K-ATPアーゼおよびSrc複合体のアンタゴニストとしてふるまうことにより、受容体機能を阻害または低減する。
【0047】
用語「低減する」、「低減」、「阻害する」、「阻害」およびその文法的変形は、全ての場合において全ての標的生物学的活性を完全に不活化する能力に必ずしも言及しない。むしろ、当業者は、これらの用語が、標的の生物学的活性を減少させること、例えばリガンドが標的の部位に結合する、標的の生化学的経路中のタンパク質が遮断される、非天然物が標的と複合体を形成するなどの場合に生じることができることを理解する。生物学的活性のこのような減少は、対照に対して決定でき、ここで、対照は、阻害薬が投与されない環境を表すことができる。例えば、いくつかの実施形態において、対照に対する活性の減少は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%減少であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する増加および/または減少は、肺高血圧症を有し、ここに開示するポリペプチドの1つで処置されていない対照の対象に対してであり得る。他の実施形態において、本明細書に記載する増加および/または減少は、処置を必要とするが、特定の治療レジメンをまだ開始していない対象において得られるベースラインに対してであり得る。
【0048】
用語「処置」または「処置する」は、本明細書で用いる場合、疾患、病的状態または障害を治癒、改善、安定化または防止する意図のある対象の医療的管理のことをいう。この用語は、動的処置、つまり疾患、病的状態または障害の改善に特に向けられた処置を含み、原因的処置、つまり関連する疾患、病的状態または障害の原因を除くことに向けられた処置も含む。さらに、この用語は、待機処置、つまり疾患、病的状態または障害を治癒するよりむしろ症状の緩和のために設計された処置、予防的処置、つまり関連する疾患、病的状態または障害の発展を最小限にするかまたは部分的もしくは完全に阻害するために向けられた処置、および支持処置、つまり関連する疾患、病的状態または障害の改善に向けられた別の治療を補うために用いられる処置を含む。
【0049】
肺高血圧症の処置は、いくつかの異なる様式で測定および定量できる。例えば、いくつかの実施形態において、肺動脈性肺高血圧症の処置は、なかでも、前毛細管性肺高血圧症(平均肺動脈圧上昇≧25 mmHg、正常肺動脈楔入圧≦15 mmHg)および肺血管抵抗(PVR)>3 Wood単位、右心室のリモデリング、右心不全、右心室収縮期圧、血管内皮機能不全、肺動脈壁肥大、またはそれらの組み合わせにより測定および定量できる。あるいはまたはさらに、肺動脈性肺高血圧症の処置は、6分間歩行距離、悪化までの時間、死亡の発生、肺移植の必要性、心房中隔裂開術の必要性により評価できる。肺動脈性肺高血圧症の処置は、ここに開示するポリペプチドの1つでの処置の前の対象の内皮細胞増殖、肺血管リモデリング、遠位血管の退縮および肺抵抗測定の減少も特徴とすることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、ここに開示する主題に従うポリペプチドアンタゴニストの投与は、肺高血圧症の1つ以上の根底にある原因および/または症状を低減または処置する。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドアンタゴニストの投与は、肺動脈加速時間を低減し、右心室肥大の量を低減し、右心室壁厚を低減し、肺血管壁厚の量を低減し、対象の肺における叢状病変の量を低減し、肺血管におけるコラーゲン沈着の量を低減し、肺血管中膜または外膜におけるコラーゲン沈着の量を低減し、右心室線維症の量を低減し、かつ/あるいは対象におけるIL-6の量を低減する。いくつかの実施形態において、ここに開示する主題のポリペプチドアンタゴニストを投与することを含む、肺血管壁厚を低減する方法が提供される。このような上記の低減の測定は、当業者に知られる日常的な手順を用いて行うことができる。
【0051】
本明細書で開示する治療組成物(例えば配列番号5のポリペプチド)の投与のために、マウス動物モデルに投与された用量に基づいてヒト投与量を外挿する従来の方法を、マウス投与量をヒト投与量に変換するための変換係数を用いて行うことができる。ヒト1kgあたりの用量=マウス1kgあたりの用量/12 (Freireichら、(1966) Cancer Chemother Rep. 50: 219~244)。薬物用量は、体表面積1平方メートルあたりのミリグラムとしても示すことができる。なぜなら、体重よりもむしろこの方法は、ある代謝および排泄機能と良好な相関を達成するからである。さらに、体表面積は、Freireichら(Freireichら、(1966) Cancer Chemother Rep. 50:219~244)により記載されるように、成人および小児ならびに異なる種の動物における薬物投与量についての共通の分母として用いることができる。簡単に、任意の与えられた種におけるmg/kg用量を等価なmg/sq m用量で表すために、用量に適切なkm係数を乗じる。ヒト成人では、100 mg/kgは、100 mg/kg×37 kg/sq m=3700 mg/m2に等しい。
【0052】
ここに開示する主題の方法に従って治療組成物を投与する適切な方法は、それらに限定されないが、全身投与、非経口投与(血管内、筋内および/または動脈内投与を含む)、経口送達、頬側送達、直腸送達、皮下投与、腹腔内投与、吸入、気管内設備、外科的移植、経皮送達、局所注射、鼻内送達、および超高速注射/衝突を含む。適切であれば、連続注入は、標的部位での薬物蓄積を増強できる(例えば米国特許第6,180,082号を参照されたい)。いくつかの実施形態において、組成物の投与は、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局部投与、耳内投与、直腸投与、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、硝子体内投与、結膜下投与、前房内投与、眼球内投与またはそれらの組み合わせによる。
【0053】
投与経路にかかわらず、ここに開示する主題の組成物は、所望の応答を達成するために有効な量で典型的に投与される。よって、用語「有効量」は、本明細書において、測定可能な生物学的応答(例えば肺高血圧症の減少)を生じるのに十分な量の治療組成物(例えば配列番号5のポリペプチドと薬学的賦形剤、担体または補形剤)のことをいうために用いられる。本発明の治療組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、特定の対象および/または用途について所望の治療応答を達成するために効果的な活性化合物の量を投与するように変動できる。もちろん、任意の特定の場合の有効量は、治療組成物の活性、製剤、投与経路、他の薬物もしくは処置との組み合わせ、処置される状態の重篤度ならびに処置される対象の身体的状態および以前の病歴を含む様々な因子に依存する。好ましくは、最小限の用量を投与し、用量を用量制限毒性がないように最低有効量まで上昇させる。治療有効量の決定および調整、ならびにそのような調整をいつどのようにして行うかの評価は、当業者に知られている。
【0054】
製剤および用量に関するさらなる手引きについて、米国特許第5,326,902、5,234,933号、PCT国際公開WO 93/25521、Berkowら、(1997) The Merck Manual of Medical Information、Home編、Merck Research Laboratories、Whitehouse Station、New Jersey、Goodmanら、(1996) Goodman & Gilman's the Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、McGraw-Hill Health Professions Division、New York、Ebadi、(1998) CRC Desk Reference of Clinical pharmacology. CRC Press、Boca Raton、Florida、Katzung、(2001) Basic & Clinical pharmacology、第8版、Lange Medical Books/McGraw-Hill Medical Pub. Division、New York、Remingtonら、(1975) Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、Mack Pub. Co.、Easton、PennsylvaniaおよびSpeightら、(1997) Avery's Drug Treatment: A Guide to the Properties、Choice、Therapeutic Use and Economic Value of Drugs in Disease Management、第4版、Adis International、Auckland/ Philadelphia、Duchら、(1998) Toxicol. Lett. 100~101:255~263を参照されたい。
【0055】
本方法は、広範な対象に対して行うことができる。実際に、用語「対象」は、本明細書で用いる場合、特に限定されない。用語「対象」は、脊椎動物、例えば哺乳動物を含み、用語「対象」は、ヒトおよび動物対象を含むことができる。よって、本明細書で開示する方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット、げっ歯類などであり得る。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。よって、男性または女性の成体および新生の対象、ならびに胎児をカバーすることを意図する。
【0056】
ここに開示する主題の実施は、そうでないと示さない限り、当該技術の熟練の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の通常の技術を用いることができる。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual (1989)、第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、16および17章、米国特許第4,683,195号、DNA Cloning、IおよびII巻、Glover編、1985、Oligonuclaotide Synthesis、M. J. Gait編、1984、Nucleic Acid Hybridization、D. HamesおよびS. J. Higgins編、1984、Transcription and Translation、B. D. HamesおよびS. J. Higgins編、1984、Culture Of Animal Cells、R. I. Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987、Immobilized Cells And Enzymes、IRL Press、1986、Perbal (1984)、A Practical Guide To Molecular Cloning; See Methods In Enzymology (Academic Press, Inc.、N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells、J. H. MillerおよびM. P. Calos編、Cold Spring Harbor Laboratory、1987、Methods In Enzymology、154および155巻、Wuら編、Academic Press Inc., N.Y.、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (MayerおよびWalker編、Academic Press、London、1987、Handbook Of Experimental Immunology、I~IV巻、D. M. WeirおよびC. C. Blackwell編、1986を参照されたい。
【0057】
ここに開示する主題を、以下の具体的であるが非限定的な実施例によりさらに説明する。実施例は、ここに開示する主題に関連する開発および実験の過程の様々な時点で集められたデータの代表であるデータの編纂を含み得る。
【実施例】
【0058】
材料および方法
Sugen5416/低酸素(HxSu)誘導PAHのラットモデルおよびpNaktide処置。8週齢で300~330gの体重の成体雄性Sprague-Dawleyラットに、以前に記載されたように、Sugen 5416を毎週皮下注射し、低酸素チャンバに最大4週間収容した。動物は、1、10および25 mg/kgの用量で毎週腹腔内注射によりpNaKtideまたは賦形剤(通常の生理食塩水)処置を受けた。
【0059】
心エコー評価。4週目にて、経胸壁心エコーを、2%イソフルランで麻酔をかけたラットに対して超音波により行った。右心室壁厚、肺動脈加速時間(PAAT)、心拍出(CO)およびHRを、記載されたようにして得た。
【0060】
右心室収縮期圧測定。心エコー後、動物に、ケタミン/キシラジンカクテルを用いて麻酔をかけた。右外頸静脈を露出させ、周囲の結合組織から単離した。微小血圧計カテーテル(Millar圧力カテーテル、1.0 F)を静脈に挿入し、右心室まで押して前進させた。圧力トレースをソフトウェアでモニタリングして、カテーテルの位置を確認し、RV圧を同定した。圧力測定は、2分間記録した。圧力データは、LabChart Pro. 8.0で分析した。
【0061】
右心室肥大測定。心エコー後、ラットを安楽死させ、心臓を単離し、生理食塩水ですすぎ、解剖して、左心室(LV)プラス中隔(S)から右心室(RV)を分離した。RV重量のLV+S重量に対する比率(RV/LV+S)であるFultonインデックスを決定して、RV肥大の尺度とした。
【0062】
組織学および免疫組織学的分析。肺を採集し、記載されたようにして処理した。簡単に、肺を、10%ホルマリンを用いて20 cm H2O圧にて膨張させ、10%ホルマリンで一晩固定した。左葉をブロックし、パラフィンに包埋した。全ての切片を5μmに切断した。肺門を通る代表的なヘマトキシリンおよびエオシン染色(H&E)肺切片に符号を付して、10~150μmの範囲において肺動脈のリモデリングについて盲検的に評価した。各細動脈の血管壁厚を、Image Jを用いて測定し、1)式(Ed-Id)/Ed×100(式中、Edは、外径であり、Idは、内径である)による血管径のパーセンテージ、2)式(面積ext - 面積int)/面積ext(式中、面積extおよび面積intは、中膜の外側および内側の境界内の面積である)による血管面積のパーセンテージでそれぞれ表した。動物あたり10回と20回の間の測定を行い、平均を算出した。小肺血管の筋性化を示すために、免疫組織学的(IHC)染色を、以前に記載されたようにして、抗α-平滑筋アクチン(SMA)抗体および抗マウス フォン・ウィルブランド因子(vWF)抗体を用いる切片の二重免疫染色により行った。HxSuラットにおける叢状病変は、血管の外側に突出し(動脈瘤様)、血管腔内で形成される病変と定義した。叢状病変(PL)の数は、動物あたり肺門を通るH&E染色肺切片中で20×の倍率にて20の無作為な画像において計数した。
【0063】
ピクロシリウスレッド染色および定量。ピクロシリウスレッド(PSR)染色は、以前に記載されたようにして、5μmパラフィン切片において行った。切片を、次いで、互いに平行および直交の向きにした分析器および偏光器を用いて一連の画像にした。顕微鏡条件(ランプ明度、集光装置の開度、対物レンズ、ズーム、露光時間およびゲインパラメータ)は、全ての試料の画像撮影中維持した。繊維状構造を表す直交の向きの偏光器を通過する光(すなわち、黒色背景からの残存光を除外する)だけを含める最小閾値は、各実験について、適切な対照切片で設定した。閾値は、各実験内で全ての条件にわたって全ての画像について維持した。閾値で分けた光に覆われた移動した領域の面積を算出し、条件あたり少なくとも10切片/血管を一緒に平均した(NIH ImageJソフトウェア)。
【0064】
定量RT-PCR分析。トータルRNAを、破砕した全肺から、Qiagen RNeasyミニキットを製造者の使用説明(Qiagen、Crawley、UK)に従って用いて、精製した。500ナノグラムのトータルRNAを、QuantiTect逆転写(Qiagen)を用いてcDNAに転写した。定量リアルタイムRT-PCRを、TaqManユニバーサルPCRマスターミックス、No AmpErase UNG (パーツNo. 4324018)および以下の遺伝子発現アッセイ: IL-6 (フォワード: 5'-TTC TCT CCG CAA GAG ACT TCC-3' (配列番号6); リバース: 5'-TGF GGG TGG TAT CCT CTG TGA-3' (配列番号7))およびβ-アクチン(フォワード: 5'-AGA TCA AGA TCA TTG CTC CT-3' (配列番号8);リバース: 5'-ACG CAG CTC AGT AAC AGT CC-3' (配列番号9))を用いて、配列決定システムABI Prism 7700 (Applied Biosystems、Warrington、UK)を用いて行った。試料は、1点につき3重の試料で行った。各試料中の遺伝子発現のレベルは、比較Ct法を用いて決定した。
【0065】
タンパク質カルボニル化の評価。肺組織ホモジネートを、RIPA緩衝液を用いて調製した。各試料からの等量のトータルタンパク質(15μg)を、6% SDS (最終濃度)で変性させ、1×DNPH (10×DNPHストック溶液から蒸留水を用いてその都度希釈した、100%トリフルオロ酢酸中100mM)で誘導体化して、DNPヒドラゾン誘導体を形成し、次いで、中和緩衝液(2M Tris中で30%のグリセロール)を用いて中和した。この後に、タンパク質カルボニル化アッセイのためのウェスタンブロッティングを行った。膜ポンソー S染色を、タンパク質カルボニル化のローディング制御のために用いた。カルボニル化レベルを定量するために、各レーンからのタンパク質バンドの光学シグナル密度を定量した。対照試料のシグナル密度値を、ポンソー S染色をローディング対象として1.0に規格化した。
【0066】
α1 Na/K-ATPアーゼの変異カベオリン結合モチーフを発現するマウスの作製。以前に開発された方策を用いて、上記のCBM変異α1を発現するノックインマウス系統を作製した。具体的に、α1アイソフォーム遺伝子のエキソン4中の4-bp変異によりF97AおよびF100A置換を導入した。さらに、Pyu IIおよびNhe I制限酵素部位を、標的アレルの同定が簡単になるように、2つのサイレント変異として導入した。CBM変異マウスは、Cre/LoxP遺伝子ターゲティング方策を用いて作製した。
【0067】
全てのデータは、GraphPad Prism Software, Inc. (La Jolla、CA、USA)を用いてプロットし、平均±平均の標準誤差(SEM)として表した。対照および処置試料からの結果は、分散分析を用いて比較した後に、Neumann-Keuls多重比較検定を行った。全ての分析は、95%信頼区間を用いて完了した。データは、p<0.05の場合に有意とみなした。
【0068】
実施例1:pNaKtideは、HxSuラットにおいてPAHおよびRV肥大を減少させる。
HxSuラットモデルにおけるPAHの進展を評価するために、平均PAPおよび肺血管抵抗と逆相関するPAATを、経胸壁心エコーにより2%イソフルランで麻酔をかけたラットで決定した。HxSu群において、PAATは、酸素正常状態群と比較して有意に悪化した。pNaKtide (25 mg/kg/週)での処置は、PAATを有意に後退させた(
図1A)。
【0069】
RV肥大の進行は、Fultonインデックスおよび心エコーにより測定した。Fultonインデックス(RV/LV+S)は、HxSuラット(0.55±0.04)において酸素正常状態ラット(0.20±0.01)と比較して有意に増加し、pNaKtideでの処置で低減した(0.36±0.004) (
図1B)。同様に、心エコーにより評価したRV厚は、HxSuラット(1.65±0.07 mm)において、酸素正常状態ラット(1.12±0.03 mm)と比較して有意に増加し、pNaKtideでの処置で減少した(1.37±0.11 mm) (
図1C)。
【0070】
HxSuに曝露されたラットは、酸素正常状態群と比較して、有意に高い右心室収縮期圧(RVSP)を発生した(122.6±3.9対18.7±0.3 mmHg)。pNaKtide(25 mg/kg/週)での処置は、RVSPを有意に減少させた(49.7±0.5 mmHg) (
図1D~1E)。
【0071】
実施例2:pNaKtideは、PAHにおいて用量依存的な様式で肺血管リモデリングを減少させる。
HxSuラットは、対照ラットと比較して重篤な血管壁肥厚を発生した。肺末端細動脈の代表的な画像を
図2に示す。pNaKtideの腹腔内注射は、1~25mg/kgにて中膜肥厚を用量依存的に低減した。
【0072】
実施例3:pNaKtide処置の叢状病変(PL)に対する効果
臍を通るH&E染色肺切片の合計20の無作為な視野を、各動物において20×の倍率で観察した。酸素正常状態ラットにおいてPLは見いだされなかった。HxSuラットにおけるPLの数は、13.80±4.23であった。pNaKtideでの処置は、最低用量(2.16±1.081mg/kg/週)でさえPLの数を有意に低減した(
図3B)。代表的なPLを
図3Aに示す。
【0073】
実施例4:pNaKtide処置のコラーゲン沈着に対する効果。
ピクロシリウスレッド染色は、HxSu群から、酸素正常状態群と比較して、血管の中膜および外膜ならびに肺実質(組織)においてコラーゲン沈着の増加を示した。pNaKtide(25 mg/kg/週)での処置は、HxSu群と比較してコラーゲン沈着を減弱させた(
図4)。慢性低酸素およびSu5416は、コラーゲンの蓄積により示される重篤なRV線維症を引き起こした。pNaKtideでの処置は、線維症を正常化した(
図5A~5B)。
【0074】
実施例5:pNaKtideは、HxSuラットモデルにおいてIL-6 mRNAレベルを減少させる。
肺におけるIL-6 mRNAレベルが、HxSu群において酸素正常状態群よりもかなり高かったことがさらに見出された。HxSuは、肺においてIL-6 mRNAレベルの4倍の増加を導いた。pNaKtide(25 mg/kg/週)での処置は、HxSu群と比較してIL-6 mRNAレベルを40%減少させた(
図6)。
【0075】
実施例6:pNaKtideは、肺においてHxSu誘導タンパク質カルボニル化を減弱した。
タンパク質酸化を評価するために、タンパク質カルボニル化をHxSuラットにおいて試験した。HxSuは、酸素正常状態群と比較して、広範囲のタンパク質のカルボニル化を有意に誘導した(
図7A)。pNaKtide(25 mg/kg/週)での処置は、カルボニル化を正常レベルまで低減した(
図7B)。
【0076】
実施例7:α1 NaKATPアーゼのカベオリン結合モチーフ(CBM)の変異は、PAHおよび右心室肥大を引き起こす。
Na/K-ATPアーゼ媒介シグナル伝達は、カベオリン-1とのその相互作用を必要とすることが観察されている。Na/K-ATPアーゼのα1サブユニットのN末端で保存されたカベオリン結合モチーフ(CBM)が、カベオリン-1との相互作用およびシグナル伝達のために必要であるが、イオンポンプ機能を示すためには必要でないこともさらに証明されている。さらに、ホモ接合性遺伝子型(Na/K-ATPアーゼα1遺伝子の両方のアレル上にノックインしたCBM変異(F97AおよびF100A)を有する)は、胚性致死をもたらすが、ヘテロ接合性遺伝子型(mCBM Het)は、目に見える表現型を示さない。pNaKtideの可能性のあるオフターゲット効果に対処し、α1 Na/K-ATPアーゼがPAHについての重要な制御機構であることの遺伝子的証拠を示すために、CBM Hetマウスの肺脈管構造および右心をさらに研究した。
【0077】
mCBMヘテロ接合性(Het)マウスのFultonインデックス(0.26±0.01、n=6)は、cCBM WTマウスのものと比較して有意に増加した(0.22±0.01、n=8;P<0.01) (
図8A)。mCBMヘテロ接合性マウスのRV/体重比率(0.77±0.04、n=6)も、mCBM WTマウスのものと比較して上昇した(0.65±0.03、n=8;P<0.05) (
図8B)。右心室収縮期圧(RVSP)を用いて、肺動脈収縮期圧を推定した。mCBMヘテロ接合性マウスのRVSPは、WTマウスと比較して有意に増加したRVSPを有した(32.25±1.61 mmHg対24.41±2.63 mmHg) (
図8C~8D)。
【0078】
実施例9:mCBM Hetマウスは、自発的肺血管筋性化を発生する。
肺小血管の大多数は、wtマウスにおいて筋性化されておらず(89.1%)、残りは部分的(8.9%)または完全筋性化(2%)を示す。CBM hetマウスは、より多くの部分的(19.6%)および完全筋性化血管(5.6%)と、低減された非筋性化血管(78.1%)を示した(
図9A~9B)。
【0079】
本明細書で言及した全ての出版物、特許および特許出願は、以下のリストで述べる参考文献を含む各個別の出版物、特許または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度で参照により本明細書に組み込まれる。
参考文献
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【0080】
ここに開示する主題の様々な詳細を、ここに開示する主題の範囲を逸脱することなく変更できることが理解される。さらに、上記の記載は、説明のためだけであり、限定を目的としない。
【配列表】