(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】キャスターおよび運搬台車
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20220802BHJP
B62B 5/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B60B33/00 501D
B62B5/04 A
(21)【出願番号】P 2021003887
(22)【出願日】2021-01-14
(62)【分割の表示】P 2019114355の分割
【原出願日】2015-05-28
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】P 2014178449
(32)【優先日】2014-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597144484
【氏名又は名称】ジー・オー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】千田 豊治
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0212834(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0005868(US,A1)
【文献】特開2004-243943(JP,A)
【文献】特開2006-082600(JP,A)
【文献】実開昭50-067563(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
B62B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、
前記車輪を
車軸を介して回転自在に支持するフォーク部材と、
前記フォーク部材に対して固定されると共に一対の側壁と該一対の側壁を連結する連結板とを有するペダル保持部材と、
前記ペダル保持部材に対して揺動可能に支持され、前記車輪に直接的または間接的にブレーキを掛けると共に一対の側壁と該一対の側壁を連結する連結板とを有するブレーキペダルと、を備え
、
前記車輪の進行方向を前とし、反対方向を後とすると、
前記ブレーキペダルの前記連結板は、ブレーキが解除された状態では後側に向かうにしたがって下側に傾斜し、ブレーキが掛けられた状態では後側に向かうにしたがってブレーキが解除された状態よりも更に下側になるように傾斜しており、平面視において前記車輪と重なるように位置することを特徴とするキャスター。
【請求項2】
前記ブレーキペダルの前記側壁は、前記車軸の軸線に沿って見たときに、ブレーキが解除された状態およびブレーキが掛けられた状態の何れでも前記車輪と重なるように位置することを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
【請求項3】
前記ブレーキペダルの前記側壁の下面は、ブレーキが解除された状態において、前記車軸の軸線に沿って見たときに、最下端から前側に向かうにしたがって上側に傾斜し、前記最下端から後側に向かうにしたがって上側に傾斜しており、前記最下端から前記ブレーキペダルの前記側壁の後端までの前後方向の長さが、前記車輪の後端の外形線から前記車輪の後側に位置する前記最下端までの前後方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載のキャスター。
【請求項4】
前記車輪の外周面を押圧することによってブレーキを掛ける板バネと、
前記ペダル保持部材の前記一対の側壁の第1孔と、前記ブレーキペダルの前記一対の側壁の第1孔とを挿通する第1の軸部材と、
前記第1の軸部材よりも下側に位置すると共に、前記ペダル保持部材の前記一対の側壁の略前後方向に長い第2孔と、前記ブレーキペダルの前記一対の側壁の第2孔とを挿通する第2の軸部材と、を備え、
前記第1の軸部材および前記第2の軸部材は、ブレーキが解除された状態およびブレーキが掛けられた状態の何れでも平面視において前記車輪と重なるように位置し、
前記ブレーキペダルは、前記第1の軸部材を中心にして前記ペダル保持部材に対して上下方向に揺動可能であり、
前記ブレーキペダルが下側に向かって揺動することにより前記第2の軸部材が前記ペダル保持部材の前記第2孔内を前側に移動して、前記板バネに形成された突出部の頂点を乗り越え、前記板バネが前記車輪の側に向かって押し込まれることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のキャスター。
【請求項5】
前記第1の軸部材および前記第2の軸部材よりも前側に位置すると共に、前記ペダル保持部材の前記一対の側壁の第3孔と、前記フォーク部材が有する一対の側壁の軸孔とを挿通する第3の軸部材を備え、
前記第3の軸部材の中心軸線は、前記第1の軸部材の中心軸線の位置より下側であって、前記第2の軸部材の中心軸線の位置よりも上側であることを特徴とする請求項4に記載のキャスター。
【請求項6】
前記第3の軸部材は、前記板バネに形成された支持孔を挿通することを特徴とする請求項5に記載のキャスター。
【請求項7】
前記フォーク部材は、前記フォーク部材の前記一対の側壁を前記車輪の上側で連結させた天板を有し、
前記板バネの一端部は、前記天板に接しており、
前記板バネの他端部は、前記第2の軸部材に接することを特徴とする請求項6に記載のキャスター。
【請求項8】
前記ペダル保持部材の前記一対の側壁の第1孔と、前記ブレーキペダルの前記一対の側壁の第1孔とを挿通する第1の軸部材と、
前記第1の軸部材よりも下側に位置し、前記ペダル保持部材の前記一対の側壁の略前後方向に長い第2孔と、前記ブレーキペダルの前記一対の側壁の第2孔とを挿通する第2の軸部材と、
前記第1の軸部材および前記第2の軸部材よりも前側に位置すると共に、前記ペダル保持部材の前記一対の側壁の第3孔と、前記フォーク部材が有する一対の側壁の軸孔とを挿通する第3の軸部材と、を備え、
前記第3の軸部材の中心軸線は、前記第1の軸部材の中心軸線の位置より下側であって、前記第2の軸部材の中心軸線の位置よりも上側であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のキャスター。
【請求項9】
前記車輪の外周面を押圧することによってブレーキを掛ける板バネを備え、
前記板バネは、前記第3の軸部材が挿通される支持孔が形成されていることを特徴とする請求項8に記載のキャスター。
【請求項10】
前記ブレーキペダルは、使用者により上下の揺動が操作される操作部を有し、
前記操作部は、ブレーキが解除された状態では、下面が後端に向かうにしたがって上側に傾斜していることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載のキャスター。
【請求項11】
前記ブレーキペダルは、前記ペダル保持部材の前記一対の側壁の間に位置することを特徴とする請求項1
ないし10の何れか1項に記載のキャスター。
【請求項12】
前記ブレーキペダルの前記連結板の一部は、前記ペダル保持部材の前記一対の側壁および前記ペダル保持部材の前記連結板に囲まれて位置することを特徴とする請求項1
ないし11の何れか1項に記載のキャスター。
【請求項13】
前記ブレーキペダルの前記連結板は、
ブレーキが解除された状態では前記ペダル保持部材の前記連結板と略平行に位置し、ブレーキが掛けられた状態では前記ペダル保持部材の前記連結板との間で角度を有するように位置することを特徴とする請求項1ないし
12の何れか1項に記載のキャスター。
【請求項14】
前記ブレーキペダルの前記連結板は、
ブレーキが解除された状態では前記ペダル保持部材の前記連結板と重なるように位置し、ブレーキが掛けられた状態では前記ペダル保持部材の前記連結板と離れるように位置することを特徴とする請求項1ないし
13の何れか1項に記載のキャスター。
【請求項15】
物品を載置する台車本体と、
前記台車本体の下面に取り付けられる請求項1ないし
14の何れか1項に記載のキャスターと、を備えることを特徴とする運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスターおよび運搬台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運搬台車などに用いられるキャスターのなかには、ブレーキ付キャスターがある。特許文献1の運搬台車に用いられるブレーキ付キャスターは、ヨーク、車輪、ブレーキシュー、ブレーキペダルを有している。ブレーキ付キャスターは使用者が足で操作し易いようにブレーキペダルが車輪の外形を超えて延出している。使用者がブレーキペダルを足で踏み込むことで、ブレーキペダルが押し下げられ、ブレーキシューが車輪を押圧することで車輪が固定される。一方、使用者がブレーキペダルを足で押し上げることで、ブレーキシューによる車輪の押圧が解除されて、車輪が自由に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、キャスターの強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のキャスターは、車輪と、前記車輪を車軸を介して回転自在に支持するフォーク部材と、前記フォーク部材に対して固定されると共に一対の側壁と該一対の側壁を連結する連結板とを有するペダル保持部材と、前記ペダル保持部材に対して揺動可能に支持され、前記車輪に直接的または間接的にブレーキを掛けると共に一対の側壁と該一対の側壁を連結する連結板とを有するブレーキペダルと、を備え、前記車輪の進行方向を前とし、反対方向を後とすると、前記ブレーキペダルの前記連結板は、ブレーキが解除された状態では後側に向かうにしたがって下側に傾斜し、ブレーキが掛けられた状態では後側に向かうにしたがってブレーキが解除された状態よりも更に下側になるように傾斜しており、平面視において前記車輪と重なるように位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キャスターの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】ブレーキが解除された状態のキャスターの断面図である。
【
図6】ブレーキが掛けられた状態のキャスターの断面図である。
【
図7】キャスターと取付板との結合構造を上側から見た分解斜視図である。
【
図8】キャスターと取付板との結合構造を下側から見た分解斜視図である。
【
図9】取付板に補強部材を重ね合わせた状態を下側から見た図である。
【
図10】キャスターと取付板との結合構造を示す一部断面図である。
【
図11】フォークリフトで運搬台車を搬送するまでの状態を示す側面図である。
【
図12】フォークリフトで運搬台車を搬送するまでの状態を示す側面図である。
【
図13】第2の実施形態のカバー部の構成を示す斜視図である。
【
図14】第2の実施形態の運搬台車の平面図である。
【
図15】第2の実施形態の運搬台車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るキャスターおよび運搬台車について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は運搬台車1の底面図である。
図2は運搬台車1の平面図である。
図3は運搬台車1の側面図である。各図では、運搬台車1の進行方向を前後方向として、前側をFr、後側をRr、右側をR、左側をLで示している。したがって、
図3の側面図は、運搬台車1の進行方向に対して直交する方向から見た図である。なお、本実施形態の運搬台車1は、前側に限られず、前後左右を含め任意の方向に走行することができる。
【0010】
運搬台車1は、台車本体10、キャスター20などを備えている。
まず、台車本体10について説明する。
台車本体10は、鉄製またはアルミニウム合金製の複数の角状の枠部材としてのパイプ11により構成されるフレーム部12と、フレーム部12の上部に結合され被載物である物品を載置するためのベース13とを有している。パイプ11およびベース13は、例えばアルマイト処理が施され、表面全体がシルバー等の金属色である。
図1に示すように、フレーム部12は、パイプ11を前後左右方向に付き合わせて接合し格子状に形成される。ここでは、前後方向に長尺な4本のパイプ11aと、左右方向にやや短尺なパイプ11bと、左右方向に短尺なパイプ11cとを接合することで、前後方向に3列、左右方向に4列の複数の矩形状の空間14が形成される。フレーム部12の4つ角部には、コーナ部材15によってパイプ11aとパイプ11bとが接合される。コーナ部材15は、例えば押出し成形により形成されたアルミニウム合金製であって、上下方向に手押棒Cが挿入される挿入孔15aが形成される。
【0011】
複数の空間14のうち、前側かつ左右方向両側の空間14の下部および後側かつ左右両側の空間14の下部には、キャスター20を取り付けるための取付板40がそれぞれ取り付けられている。各取付板40は、コーナ部材15に近接する角を切り欠いた形状であり、空間14を下方から閉塞するようにブラインドリベット16を介してパイプ11a、パイプ11b、パイプ11cに固定される。
図2に示すように、ベース13は、取付板40が取り付けられなかった空間14全体を上方から閉塞するようにしてフレーム部12にブラインドリベット、ネジあるいは溶接などにて結合される。
【0012】
次に、キャスター20について説明する。キャスター20は、ベース13に載置された物品の荷重を支持しながら走行面を走行する。また、キャスター20は、旋回軸Oに対して旋回可能である。
本実施形態では、キャスター20が少なくとも台車本体10の下面の4隅に配置されるので、運搬台車1を走行させるときに台車本体10が傾くことなく安定した状態で走行させることができる。
【0013】
本実施形態のキャスター20は、使用者の操作に応じてブレーキを掛けたり、ブレーキを解除したりすることができる、いわゆるブレーキ付キャスターである。なお、運搬台車1では、4つのキャスター20の全てをブレーキ付キャスターにしてもよく、何れ1つ~3つをブレーキ付キャスターにしてもよい。
【0014】
ここでは、ブレーキ付キャスターの詳細について
図4を参照して説明する。
図4は、キャスター20の分解斜視図である。
本実施形態のキャスター20は、車輪21、支持部25、ブレーキペダル35などを有している。
車輪21は、物品が載置された台車本体10を円滑に走行できる耐荷重に設定される。車輪21は、内部にベアリングが内蔵されたホイール部22と、ホイール部22の外周に嵌め込まれたタイヤ部23とを有する。
【0015】
支持部25は、車軸24を介して車輪21を回転自在に支持する。支持部25は、車輪21を支持すると共に、取付板40を介して台車本体10に取り付けられるフォーク部材26と、ブレーキペダル35を揺動自在に支持するペダル保持部材31とを有する。
フォーク部材26は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。フォーク部材26は、例えばニッケルめっきが施され、表面全体がシルバー等の金属色である。フォーク部材26は、車輪21の両側にそれぞれ位置する一対の側壁26aと、一対の側壁26aを車輪21の上側で連結させた円形の天板26bとで一体的に形成される。一対の側壁26aにはそれぞれ車軸24が挿通される車軸孔26cと、ペダル保持部材31を支持するための軸孔26dが形成される。天板26bは後述するベアリングを介して上皿部材27と下皿部材28とにより挟持されている。
【0016】
図5は、キャスター20の断面図である。
図5に示すように、天板26bの中央にはキャスター20の旋回軸Oと同軸状に挿通孔26eが形成される、また、天板26bの上面には複数のベアリング29、下面には複数のベアリング30を安定して配置できるように旋回軸Oを中心に環状の収容溝が形成される。
上皿部材27は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。上皿部材27は、天板26bよりもやや大きな円形に形成され、中央には旋回軸Oと同軸状に挿通孔27aが形成される。また、上皿部材27は、下面にベアリング29を安定して配置するために環状の収容溝27bが形成される。このように、環状の収容溝27bを形成することによって、逆に上皿部材27の上面には旋回軸Oを中心とした環状に沿って、断面視で円弧状の突出部27cが形成される。また、上皿部材27は、突出部27cから挿通孔27aに向かうにしたがって、下側に傾斜する傾斜部27dが形成される。また、上皿部材27の外周縁部27eは、断面視で円弧状に形成された後に垂下して形成される。
【0017】
下皿部材28は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。下皿部材28は、天板26bよりも小さな円形に形成され、中央には旋回軸Oと同軸状に挿通孔28aが形成される。また、下皿部材28は、上面にベアリング30を安定して配置するために環状の収容溝28bが形成される。
ここで、上皿部材27と下皿部材28とは、挿通孔27aおよび挿通孔28aの近辺で両者が相対的に回転しないように一体的に結合されている。したがって、天板26b、すなわちフォーク部材26は、上皿部材27および下皿部材28に対して、ベアリング29,30を介して旋回軸Oを中心に旋回可能である。
【0018】
図4に戻り、ペダル保持部材31は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。ペダル保持部材31は、例えばニッケルめっきが施され、表面全体がシルバー等の金属色である。ペダル保持部材31は、車輪21の両側にそれぞれ位置する一対の側壁31aと、一対の側壁31aを上側で連結した連結板31bとで一体的に形成される。一対の側壁31aは、連結板31bから二股状の第1支持部31cと第2支持部31dとが異なる方向に向かって延出して形成される。第1支持部31cの先端側には、フォーク部材26の車軸孔26cと連通し、車軸24が挿通される軸孔31eが形成される。一方、第2支持部31dの先端側には、フォーク部材26の軸孔26dと連通し、軸部材32が挿通される軸孔31fが形成される。
また、側壁31aの上部であって、連結板31bに近接した位置には、ブレーキペダル35を揺動可能に支持するための支持孔31gが形成される。また、側壁31aの支持孔31gの下側には、略前後方向に長い長孔31hが形成される。
ペダル保持部材31が車軸24および軸部材32を介してフォーク部材26により支持された状態では、連結板31bは後部に向かうにしたがって下側に傾斜する。本実施形態では連結板31bの傾斜角度が略45度である。
【0019】
また、ペダル保持部材31は、軸孔31fを挿通する軸部材32を介して付勢部材としての板バネ33を支持している。板バネ33は、例えばステンレス鋼板をプレス成形することによって形成される。板バネ33は、軸部材32が挿通される支持孔33aと、支持孔33aからそれぞれ異なる方向に延出する一端部33bおよび他端部33cとが形成される。他端部33cの先端側には、一部が上方向に突出する突出部33dが板幅方向に沿って形成される。
【0020】
ブレーキペダル35は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。ブレーキペダル35は、例えばニッケルめっきが施され、表面全体がシルバー等の金属色である。ブレーキペダル35は、ペダル本体35aと、ペダル本体35aから一体で延出する操作部としての操作片35bとを有する。ペダル本体35aは、車輪21の両側にそれぞれ位置する一対の側壁35cと、一対の側壁35cを上部で連結した連結板35dとで一体的に形成される。進行方向でキャスター20を見た場合に、ブレーキペダル35は車輪21と重なり合う位置に配置される。また、一対の側壁35c間の距離は、ペダル保持部材31の一対の側壁31a間の距離よりも狭く形成されている。したがって、ブレーキペダル35は連結板35dをペダル保持部材31の連結板31bと重なるようにして、ペダル保持部材31内に位置させることができる。また、側壁35cの前部かつ上部には、ペダル保持部材31の支持孔31gと連通し、軸部材36が挿通される揺動孔35eが形成される。したがって、ブレーキペダル35は軸部材36を中心にしてペダル保持部材31に対して上下に揺動可能である。また、側壁35cの揺動孔35eの下側には、ペダル保持部材31の長孔31hと連通し、軸部材37が挿通される軸孔35fが形成される。ブレーキペダル35が上下に揺動する場合には軸部材37も連動してペダル保持部材31の長孔31h内を移動する。なお、軸部材37は、板バネ33の他端部33cの上面に常に接している。
【0021】
操作片35bは、略板状であって、使用者の足などでブレーキペダル35の上下の揺動が操作される。操作片35bは、ペダル本体35aの連結板35dの後部から斜めに延出して形成される。操作片35bは、連結板35dの板幅と略同一の板幅の矩形状に形成される。本実施形態の操作片35bは、フォークを運搬台車1の下方に差し込んだり上昇させたりするとき、フォークが操作片35bに接触しても、キャスター20が変形したり破損したりしてしまうことを防止できるようになっている。操作片35bの作用については後述する。
【0022】
図3に示すように、キャスター20が取付板40を介して台車本体10に取り付けられた状態では、キャスター20は旋回軸Oを中心に旋回する。特に、旋回軸Oは、キャスター20の車軸24に対して偏芯した位置に設定されているので、進行方向である前側に対して車輪21が後側になるように旋回する。このとき、後側のキャスター20は台車本体10に対して、キャスター20のブレーキペダル35のうち少なくとも操作片35bの一部が台車本体10の後端部、具体的には後側のパイプ11bよりも外側(後側)に位置する。したがって、使用者はブレーキペダル35の操作片35bを容易に視認できると共に足で操作することができる。
なお、進行方向を180度反転させた場合には逆に車輪21が前側になるように旋回する。したがって、前側のキャスター20は、ブレーキペダル35のうち少なくとも操作片35bの一部が前側のパイプ11bよりも外側(前側)に位置する。
【0023】
次に、上述したように構成されるキャスター20において、ブレーキを解除している状態からブレーキを掛ける状態までの各部材の動作について説明する。
図5は、ブレーキを解除した状態を示すキャスター20の断面図である。
図5に示すように、ブレーキを解除した状態では、ブレーキペダル35は軸部材36を中心として上昇した位置にある。ここでは、板バネ33の一端部33bが天板26bに対して接し、他端部33cが板バネ33自身の付勢力によって軸部材37のみに接している。すなわち、
図5の状態は、車輪21は何れの部材にも接触していないために、車輪21が自由に回転できる、ブレーキが解除された状態である。なお、ブレーキペダル35は、ペダル本体35aがペダル保持部材31に重なり合う位置で各部材間の摩擦力などによって保持されている。
【0024】
図5の状態から、使用者が足でブレーキペダル35の操作片35bを下側に踏み込むように操作することで、ブレーキペダル35は板バネ33の付勢および各部材間の摩擦力に抗して軸部材36を中心に下側に向かって揺動する。このとき、ブレーキペダル35の移動に伴って軸部材37は板バネ33の突出部33dに向かって長孔31h内を移動する。
【0025】
図6は、ブレーキを掛けた状態を示すキャスター20の断面図である。
図6に示すように、使用者が操作片35bを下限まで踏み込むことで、ブレーキペダル35に伴って移動する軸部材37は、板バネ33の突出部33dの頂点を乗り越える。したがって、板バネ33は軸部材37によって車輪21側に向かって押し込まれるために、板バネ33の下面がタイヤ部23の外周面を強固に押圧する。すなわち、
図6の状態は、車輪21の外周面が板バネ33によって押圧されているために、車輪21が回転できない、ブレーキが掛けられた状態である。
なお、
図6の状態から、使用者が足などでブレーキペダル35の操作片35bを上側に押し上げるような操作をすることで、再び
図5の状態に戻すことができ、ブレーキを解除することができる。
【0026】
次に、キャスター20を取付板40に結合する結合構造について説明する。本実施形態の運搬台車1は、車輪21が障害物に衝突するなどしてキャスター20に力が付加された場合にキャスター20の変形および破損を防ぐことができるように構成されている。
図7は、キャスター20と取付板40との結合構造を上側から見た分解斜視図である。ここでは、1箇所のキャスター20と取付板40との結合構造を説明するが、他の箇所の結合構造も同様である。
運搬台車1は、キャスター20、取付板40、補強部材50、座金部材42、ボルト44、ナット46などを有する。
図7に示すキャスター20は、既に組み立てられたものである。
【0027】
取付板40は、例えば板状のアルミニウム合金をプレス成形することによって形成される。なお、取付板40の略中央には、旋回軸Oと同軸状にボルト44が挿通される挿通孔40aが形成される。挿通孔40aは、ボルト44が挿通されたときにボルト44の頭部44aが取付板40の上面(表面)40bから上側に突出しないように上面40bから円錐状に段落ちした位置に形成される。
図8は、取付板40および補強部材50の結合構造を下側から見た分解斜視図である。取付板40を下側から見ると、挿通孔40aは逆に取付板40の下面(裏面)40cから円錐状に膨出した位置に形成される。
また、
図8に示すように、取付板40には、旋回軸Oを中心とした環状リブ40dが形成される。環状リブ40dは取付板40の下面40cから膨出する。また、取付板40には、環状リブ40dを囲むように複数の矩形状リブ40eが形成される。矩形状リブ40eは、矩形の外形に沿って下面40cから凹ませることで形成される。すなわち、矩形状リブ40e内の領域は、下面40cと同一高さの平坦面である。矩形状リブ40eは、旋回軸Oを中心とした円周方向に沿って等間隔の位置であって、前後左右および前後左右のそれぞれ中間の計8箇所に形成される。ここで、複数の矩形状リブ40eのうち、左右の矩形状リブ40e内には補強部材50を所定の位置に位置決めするために、位置決め部としての突起40fが形成される。環状リブ40dおよび矩形状リブ40eが形成することで取付板40の剛性を向上させることができる。
なお、取付板40の周囲には、ブラインドリベット16を挿入して取付板40を台車本体10に取り付けるための複数の固定孔40gが形成される。
【0028】
補強部材50は、例えば板状のアルミニウム合金をプレス成形することによって形成される。本実施形態の補強部材50は、キャスター20を取付板40に結合したときに、キャスター20と取付板40との間に配置され、キャスター20の上面、すなわち上皿部材27の上面と、取付板40の下面40cとの何れにも接触する。
【0029】
具体的には、補強部材50は旋回軸Oを中心とした円形状の開口部50aが穿設された環状に形成される。開口部50aの内径は、上皿部材27の外径よりも小さく、上皿部材27の円環状の突出部27cの直径よりも大きい。
また、補強部材50は、上皿部材27の上面に接触する下側凸部50bと、取付板40の下面40cに接触する上側凸部50cとが形成される。下側凸部50bは下側に向かって膨出するリブ状であり、旋回軸Oを中心とした円周方向に沿って等間隔の位置に計8箇所形成される。また、上側凸部50cは上側に向かって膨出するリブ状であり、旋回軸Oを中心として円周方向に沿って等間隔の位置に計8箇所形成される。したがって、補強部材50を平面視で見たときに、下側凸部50bと上側凸部50cとは環状に沿って交互に形成される。
【0030】
各下側凸部50bは、それぞれの中央に最も下側に向かって膨出された膨出部50dを有する。すなわち、下側凸部50bの下面は、開口部50aから膨出部50dに向かうにしたがって下側に傾斜し、膨出部50dを超えると上側に傾斜している。
各上側凸部50cは、それぞれの中央に環状に沿った凹部50eが形成される(
図7を参照)。凹部50eは、補強部材50の上側凸部50cと取付板40の下面40cとを平面同士で接触させるために、環状リブ40dとの干渉を避けるためのものである。
また、補強部材50のうち左右の端部には、取付板40の突起40fに係合する被位置決め部としての切欠50fが形成される。
【0031】
図9は、取付板40を下面40cから見た図であって、取付板40に補強部材50を重ね合わせた状態を示している。
図9では、理解を容易にするために補強部材50のうち上側凸部50cをドットで着色している。
図9に示すように補強部材50を取付板40に重ね合わせた状態では、8つの上側凸部50cが前後左右および前後左右のそれぞれ中間に位置している。下側凸部50bと上側凸部50cとは交互に形成されていることから、各上側凸部50cに隣接する両側には下側凸部50bが位置している。取付板40と補強部材50とは、取付板40の突起40fと補強部材50の切欠50fとが係合することによって位置決めされる。このとき、各上側凸部50cの上面のうち凹部50eよりも外周側は、それぞれ取付板40の矩形状リブ40e内に当接される。ここで、取付板40の矩形状リブ40e内は平坦面であることから、補強部材50と取付板40とはガタつくことなく重なり合う。
【0032】
なお、補強部材50は取付板40やフォーク部材26の板厚よりも薄い板厚の鋼板を用いて形成することで取付板40やフォーク部材26よりも強度が低く設定されている。
【0033】
図7に戻り、座金部材42は、例えば板状のアルミニウム合金をプレス成形することによって形成される。座金部材42は、ボルト44の頭部44aと、取付板40との間に配置され、ボルト44が上下方向に直立するようにボルト44の頭部44aを保持する。座金部材42は、旋回軸Oと同軸状にボルト44が挿通される挿通孔42aが形成される。挿通孔42aは、ボルト44が挿通されたときにボルト44の頭部44aが取付板40の上面40bから上側に突出しないように円錐状に段落ちした位置に形成される。
なお、座金部材42は、外径が補強部材50の開口部50aの内径と略同一の寸法に設定されているために、プレス成形で補強部材50の開口部50aを打ち抜いた円形の材料を用いて製造することができる。したがって、材料を有効に利用することで座金部材42および補強部材50を安価に製造することができる。
【0034】
キャスター20を取付板40に結合するには、ボルト44を座金部材42の挿通孔42a、取付板40の挿通孔40a、補強部材50の開口部50a、上皿部材27の挿通孔27a、天板26bの挿通孔26e、下皿部材28の挿通孔28aの順に挿通させ、フォーク部材26内でナット46を螺合させることで固定する。
図10は、キャスター20と取付板40との結合構造を示す一部断面図である。
図10に示すように、補強部材50は、取付板40とキャスター20との間に位置し、取付板40の下面40cとキャスター20の上面とに接触した状態で配置される。具体的には、補強部材50の上側凸部50cの上面は、取付板40の下面40cに接触する。このとき、上側凸部50cに形成された凹部50eにより、取付板40の環状リブ40dとの干渉を避けることができる。一方、補強部材50の下側凸部50bでは、下側凸部50bの下面のうち、開口部50aから膨出部50dまでに亘る傾斜部分が、上皿部材27の上面のうち外周側および外周縁部27eに接触する。なお、上皿部材27の上面のうち突出部27cおよび挿通孔27a近辺は、補強部材50が介在することなく取付板40の下面40cに直接、接触する。すなわち、補強部材50は、取付板40の下面40cと上皿部材27の上面との間に生じる隙間を埋めるように配置される。
【0035】
以上のように構成されるキャスター20および運搬台車1の作用について説明する。
まず、ブレーキペダル35の操作片35bの作用について説明する。
図3に示すように、運搬台車1をフォークリフトで搬送する場合、運搬台車1の下方であって前後のキャスター20の間にフォークリフトの2本のフォーク60を差し込み上昇させることで、運搬台車1の下面を支持しながら搬送する。
このとき、2本のフォーク60を運搬台車1に差し込む位置や、上昇させる位置がキャスター20に近接している場合には、ブレーキペダル35がフォーク60によって押し上げられ、ブレーキペダル35やフォーク部材26などが変形したり破損したりする虞がある。
【0036】
本実施形態では、キャスター20のブレーキペダル35がフォーク60によって押し上げられてもキャスター20が変形したり破損したりしてしまうことを防止する。
図11は、上昇しているフォーク60がブレーキペダル35の操作片35bに接触したときの状態を示す側面図である。ここで、操作片35bの下面は、先端に向かうにしたがって上方向に傾斜している。したがって、フォーク60によりブレーキペダル35を上昇させる力は、傾斜する操作片35bによって運搬台車1を車輪21の進行方向に移動させる力に変換される。なお、操作片35bの傾斜角度αは、上昇される力を進行方向への力へと効率よく変換できるように、例えば10度以上50度以下に設定されていることが好ましく、ここでは略30度に設定されている。
図12は、フォーク60を更に上昇させたときの状態を示す側面図である。運搬台車1は傾斜する操作片35bによって変換された力により進行方向に移動する。したがって、フォーク60を更に上昇させてもブレーキペダル35はフォーク60と接触する位置から移動しているために、キャスター20が変形したり破損したりすることが防止される。すなわち、キャスター20を破損させることなく運搬台車1をフォークリフトで搬送することができる。
【0037】
また、フォーク60を上昇させたときに接触するのは操作片35bに限られずペダル本体35aの場合もある。そのため、本実施形態では、ペダル本体35aのうち一対の側壁35cの後部の下面が、操作片35bの傾斜に連続し、操作片35bの傾斜角度と略同一角度に傾斜している。したがって、ペダル本体35aがフォーク60に押し上げられても操作片35bに接触したときと同様に運搬台車1が進行方向に移動することから、キャスター20が変形したり破損したりすることが防止される。
ここでは、
図11に示すように、車輪21の後端の外形線から後側に露出されたペダル本体35aの下面のうち、操作片35bの傾斜角度と略同一角度に傾斜した下面の前後長さL1が操作片35bの傾斜角度と異なる角度に傾斜した下面の前後長さL2よりも長く形成される。したがって、上昇しているフォーク60が操作片35bあるいは操作片35bの傾斜角度と略同一角度に傾斜したペダル本体35aの下面に接触させ易くすることができる。
【0038】
また、本実施形態では、フォーク60を上昇させてペダル本体35aに接触したときに、運搬台車1が進行方向に移動する前に、ペダル本体35aおよびペダル保持部材31が変形しない構造になっている。具体的には、ブレーキペダル35は連結板35dがペダル保持部材31の連結板31bに重なり合うようにして、ペダル保持部材31内に位置している。したがって、ブレーキペダル35に押し上げられる力が作用しても、比較的に広面積に形成されたペダル保持部材31の連結板31bに力を伝達することから、ブレーキペダル35の変形が防止される。また、ペダル保持部材31は、一対の側壁31aが車軸位置で支持される第1支持部31cと、車軸位置よりも上側の位置で支持される第2支持部31dによってフォーク部材26に強固に固定される。したがって、ブレーキペダル35を介してペダル保持部材31に押し上げられる力が作用しても、フォーク部材26に強固に固定されたペダル保持部材31自身で力を受けることから、ペダル保持部材31の変形が防止される。すなわち、運搬台車1が進行方向に移動する前に、ペダル本体35aおよびペダル保持部材31が変形することを防止することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、
図6に示すように、ブレーキを掛けた状態では、操作片35bは略水平であり、先端に向かうにしたがって僅かに水平よりも上方向に傾斜している。このように、操作片35bを略水平にすることで、フォーク60を上昇させたときに、操作片35bの下面と接触させ、ブレーキペダル35を上昇させ易くすることができる。ブレーキペダル35が上昇してブレーキが解除された状態では、操作片35bの下面は先端に向かうにしたがって上方向に傾斜しているために、
図11から
図12に示すように、運搬台車1を進行方向に移動でき、キャスター20が変形したり破損したりすることが防止される。
【0040】
次に、運搬台車1の補強部材50の作用について説明する。
図10に示すように、進行方向の前側にある障害物Bにキャスター20の車輪21が衝突する場合を想定する。車輪21が障害物Bに衝突すると、キャスター20にはボルト44を中心として矢印A方向に回転しようとするモーメントが発生する。ここで、補強部材50を配置しない場合には、取付板40の下面40cとキャスター20の上面との間、より具体的には取付板40の下面40cと、上皿部材27の上面のうち突出部27cを超え外周縁部27eに到るまでの部分との間に隙間が存在する。したがって、キャスター20はボルト44を中心とした矢印A方向への回転が隙間の分だけ許容されるために、フォーク部材26が塑性変形してしまう虞がある。
【0041】
一方、本実施形態のように、取付板40の下面40cとキャスター20の上面との間に生じる隙間を埋めるように補強部材50を配置することで、キャスター20に生じたボルト44を中心とするモーメントを補強部材50を介して取付板40で受けることができる。すなわち、障害物Bに衝突することでキャスター20に生じるモーメントは、まず上皿部材27の上面のうち突出部27cを超えて外周縁部27eに到るまでの部分から、補強部材50の下側凸部50bに伝達される。ここでは、車輪21の前側で衝突することから補強部材50の後部に形成された2つの下側凸部50bに主に力が伝達される。すなわち、補強部材50の後部には左右に離間して下側凸部50bが配置されていることから、キャスター20に生じるモーメントを下側凸部50bで確実に受けることができる。
【0042】
下側凸部50bに伝達された力は補強部材50内を伝搬して、2つの下側凸部50bの間に形成された上側凸部50cを主として、2つの下側凸部50bの左右に形成された2つの上側凸部50cなどを介して取付板40の下面40cに伝達される。このように、障害物Bに衝突することでキャスター20に生じるモーメントは、補強部材50を介して強度に優れた取付板40に伝達されることから、フォーク部材26の塑性変形を防止でき、キャスター20および運搬台車1の強度を向上させることができる。
なお、補強部材50の下側凸部50bおよび上側凸部50cは、補強部材50の環状に沿って交互に形成されていることから、障害物Bが車輪21の前側で衝突する場合に限られず、旋回軸Oに対して何れの方向から力が付加されても、フォーク部材26の塑性変形を防止することができる。
【0043】
次に、キャスター20を障害物Bに過度に衝突したり過度に力が付加されたりした場合を想定する。この場合には、取付板40やフォーク部材26よりも強度が低く設定されている補強部材50が塑性変形する。具体的には、補強部材50の下側凸部50bおよび上側凸部50cが、上下方向につぶれるように塑性変形し、取付板40やフォーク部材26の塑性変形を回避できる。この場合には、ボルト44からナット46を取り外し、補強部材50のみを交換すればよい。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一あるいは略同一の構成は、同一符号を付して、その説明を適宜、省略する。第2の実施形態は、第1の実施形態の操作片35bの少なくとも一部をカバー部70で覆い、カバー部70を操作部として機能させたものである。
図13は、カバー部70の周辺の構成を示す斜視図である。
図13に示すように、操作片35bは、ペダル本体35aの連結板35dの後部から一体で延出して形成される。操作片35bは、連結板35dの板幅よりもやや幅狭な板幅の矩形状に形成される。
操作片35bと、ペダル本体35aとの境界には、幅方向に離れて複数(ここでは2つ)のリブ35gが形成される。リブ35gは、ペダル本体35aと操作片35bとの間で屈曲された状態を維持できるように剛性を高めている。
【0045】
操作片35bは、カバー部70が装着される。カバー部70は、合成樹脂製であって、使用者が一目で認識できるように色が施されている。具体的には、カバー部70は、ブレーキペダル35と異なる色、すなわちペダル本体35aおよび操作片35bと異なる色に着色されている。ここでは、カバー部70は、例えば赤、緑、青等、色の三原色であってもよく、オレンジ色等であってもよい。なお、
図13では、理解を容易にするためにカバー部70をグレーで着色している。
【0046】
カバー部70は、略板状であって、第1カバー部材71と、第2カバー部材75とを有する。
第1カバー部材71は、主に操作片35bの上面と両側面とを覆う。第1カバー部材71は、前後方向に開口する断面略コ字状であって、内部に第2カバー部材75の一部および操作片35bが挿入される空間を有する。第1カバー部材71は、内側面に段状の係止部72が形成される。また、第1カバー部材71は、上面が略平坦面であり、平坦面上に滑り止め用の突条73が幅方向に沿って複数、形成されると共に、前端にリブ35gを覆うリブ覆部74が形成される。
第2カバー部材75は、主に操作片35bの下面を覆う。第2カバー部材75は、略板状であって、前端の両側に係止部72に係止される爪状の被係止部76が形成される。被係止部76は、隣接して形成された切欠き部77によって内側に撓み可能である。また、第2カバー部材75は、後端に第1カバー部材71の開口を閉塞する蓋部78を有する。更に、第2カバー部材75は、下面が略平坦面であり、平坦面上に滑り止め用の突条79が幅方向に沿って複数、形成される(
図15を参照)。
【0047】
操作片35bにカバー部70を装着する場合、第1カバー部材71の空間内に操作片35bをペダル本体35aに突き当たるまで挿入する。この状態では、操作片35bの上面および側面が第1カバー部材71によって覆われ、リブ35gがリブ覆部74によって覆われる。
次に、第1カバー部材71の空間内に第2カバー部材75を第1カバー部材71の後端の開口から挿入する。このとき、第2カバー部材75の被係止部76は第1カバー部材71の内側面によって押圧され内側に撓みながら挿入され、係止部72に到達することで撓みが解放され、係止部72に係止する。この状態では、操作片35bの下面が第2カバー部材75によって覆われる。本実施形態の操作片35bは、第1カバー部材71および第2カバー部材75によって全領域が覆われる。カバー部70は操作片35bに装着された状態では、進行方向でキャスター20を見た場合に、車輪21と重なり合う位置に配置される。なお、カバー部70は、操作片35bとの間の摩擦により、操作片35bから抜け出ることが防止される。
【0048】
図14に示すように平面視で見て、進行方向に対する後側のキャスター20は、ブレーキペダル35のカバー部70が、台車本体10の後端部、具体的には後側のパイプ11bよりも外側に位置する。更に、カバー部70には色が施されていることから、ブレーキペダル35の視認性を向上させることができる。特に、カバー部70は台車本体10のパイプ11bの色、または/および、ベース13の色と異なる色であることから、ブレーキペダル35の視認性がより向上する。したがって、例えば運搬台車1が自重により動き出したとしても、使用者は即座にブレーキペダル35を認識でき、ブレーキペダル35を迅速に操作することができる。
【0049】
また、カバー部70は、ブレーキペダル35の操作片35bの少なくとも一部を覆うように装着することから、ブレーキペダル35全体をパイプ11bの色と異なる色にする必要がなく、カバー部70のみをパイプ11bの色と異なる色に施せばよい。したがって、カバー部70に容易に色を施すことができる。なお、カバー部70は全てが後側のパイプ11bよりも外側に位置する必要はなく、少なくとも一部が後側のパイプ11bよりも外側に位置すれば、使用者の視認性を向上させることができる。
また、カバー部70は、使用者により操作される部材であるために、摩耗したり破損したりする場合がある。このような場合であっても、カバー部70がブレーキペダル35に対して別体であることから、カバー部70を容易に交換することができる。
【0050】
また、
図15に示すように、カバー部70の下面は、第1の実施形態の操作片35bと同様、先端に向かうにしたがって上方向に傾斜している。したがって、上昇しているフォーク60がブレーキペダル35のカバー部70に接触した場合、フォーク60によりブレーキペダル35を上昇させる力は、傾斜するカバー部70によって運搬台車1を車輪21の進行方向に移動させる力に変換される。なお、カバー部70の下面の傾斜角度αは、上昇される力を進行方向への力へと効率よく変換できるように、例えば10度以上50度以下に設定されていることが好ましく、ここでは略30度に設定されている。なお、
図15の拡大図に示すように、カバー部70の下面に形成された複数の突条79の各頂点を繋げることで形成される仮想面Fの傾斜角度βは、傾斜角度αと同様に、例えば10度以上50度以下に設定されていることが好ましく、ここでは略30度に設定されている。本実施形態では、傾斜角度αと傾斜角度βとが同一角度である。
【0051】
このように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、上昇しているフォーク60がブレーキペダル35のカバー部70に接触した場合であっても、フォーク60によりブレーキペダル35を上昇させる力は、傾斜するカバー部70によって運搬台車1を車輪21の進行方向に移動させる力に変換される。したがって、キャスター20が変形したり破損したりしてしまうことを防止することができる。
【0052】
以上、本発明を上述した実施形態により説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更などが可能である。例えば、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせてもよい。
上述した実施形態では、台車本体10の下面に4つのキャスター20を配置する場合について説明したが、この場合に限られない。キャスター20の数は、運搬台車1の用途などに応じて自由に変更することができる。例えば、平面視で4つのキャスター20により囲まれた領域の内側、外側および領域線上の少なくとも何れかの位置に一つ以上のキャスター20を追加してもよい。例えば、領域の内側であって左右方向における中央に、前後に離して2つのキャスターを追加してもよい。また、例えば、右側に配置された前後の2つのキャスター20の間に一つ追加し、左側に配置された前後の2つのキャスター20の間に一つ追加し、計2つのキャスターを追加してもよい。何れの例であっても、追加する2つキャスターと、取付板40との間には補強部材50を配置することが好ましい。一方、追加する2つのキャスターは、ブレーキペダル35やペダル保持部材31がないブレーキなしキャスターであることが好ましい。
【0053】
上述した実施形態では、支持部25をフォーク部材26とペダル保持部材31とで別体で構成する場合について説明した。このように別体で構成することで、ブレーキなしキャスターのフォーク部材26を共通させることができる。ただし、この場合に限られず、フォーク部材26とペダル保持部材31とが一体であってもよい。
【0054】
上述した実施形態では、ブレーキペダル35が軸部材37および板バネ33を介して間接的に車輪21を押圧してブレーキを掛ける場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、軸部材37および板バネ33を省略して、ブレーキペダル35が直接、車輪21の外周面などを押圧することで、ブレーキを掛けるようにしてもよい。また、ブレーキペダル35が車輪21と一体で回転する部材に対して、直接的または間接的に、干渉することで、ブレーキを掛けるようにしてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、キャスター20が結合された取付板40を台車本体10に取り付ける場合について説明したが、この場合に限らない。例えば、台車本体10の下面を平坦面にすることでキャスター20を台車本体10の下面に直接取り付け、取付板40を省略してもよい。この場合、取付板40に形成された挿通孔40a、環状リブ40dなどは台車本体10に直接形成することで、補強部材50を台車本体10の下面とキャスター20の上面との何れにも接触した状態に配置することができる。
【0056】
上述した実施形態では、補強部材50は、上側凸部50cと下側凸部50bとが環状に沿って交互に形成される場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、車輪21は前側の障害物Bに衝突し、キャスター20にはボルト44を中心として後側に回転しようとするモーメントが発生する機会が多い。したがって、補強部材50は後部の上側凸部50cと、この上側凸部50cの両側に下側凸部50bとを少なくとも形成すればよい。この場合には、補強部材50は環状に形成しなくてもよい。
【0057】
上述した実施形態では、カバー部70は、第1カバー部材71と第2カバー部材75とにより構成される場合について説明したが、この場合に限られない。すなわち、カバー部70は、操作片35bの少なくとも一部を覆うことができればよく、その構成は限定されない。ただし、カバー部70は、視認性を向上させるために、操作片35bの上面が覆われていることが好ましい。なお、カバー部70は、より滑り止めの効果が得られるようにゴム製であってもよい。
【0058】
上述した実施形態では、カバー部70は、第1カバー部材71と第2カバー部材75との2つの部材から構成される場合について説明したが、この場合に限られない。すなわち、カバー部70は、1つの部材から構成されていてもよい。例えば、第1カバー部材71と第2カバー部材75とを一部(連結部)で連結された状態で一体で射出成形し、連結部をヒンジ部として回転させることで操作片35bを上下から覆うことで、カバー部70を操作片35bに装着してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1:運搬台車 10:台車本体 20:キャスター 21:車輪 25:支持部 26:フォーク部材 27:上皿部材 27e:外周縁部 28:下皿部材 31:ペダル保持部材 33:板バネ 35:ブレーキペダル 35a:ペダル本体 35b:操作片 40:取付板 40c:下面 44:ボルト(締結部材) 46:ナット(締結部材) 50:補強部材 50b:下側凸部 50c:上側凸部 50f:切欠 70:カバー部