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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20220802BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220802BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20220802BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/86
A61K8/92
A61Q1/14
A61Q19/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021572944
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2021022300
(87)【国際公開番号】W WO2021251485
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2020101968
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021001168
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520209668
【氏名又は名称】株式会社Merry Plus
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】杜▲ヤオ▼
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特許第6945256(JP,B1)
【文献】特開2005-68083(JP,A)
【文献】特開2006-28229(JP,A)
【文献】特開2018-16613(JP,A)
【文献】特開2014-12656(JP,A)
【文献】特開2018-95560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(G)を含有することを特徴とする洗浄組成物。
(A)脂肪酸の糖エステル
(B)アミノ酸系界面活性剤及びタウリン系界面活性剤から選択される少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤
(C)HLB値が13以下の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸トリエステル
(D)HLB値が11以上の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステル
(E)常温において、液体又はペースト(非固体)の形態を有する油
(F)ポリオール
(G)水を含有し、
前記成分(C)と前記成分(D)の質量の総量に対する前記成分(E)の質量の比率(E)/((C)+(D))が10~100であり、
前記洗浄組成物の総質量に対して、前記成分(E)は40質量%~90質量%の範囲であり、
前記成分(C)と前記成分(D)の含有質量割合(C)/(D)が0.1~10であり、
前記成分(A)の質量に対する前記成分(C)と前記成分(D)の質量の総量の比率((C)+(D))/(A)が0.02~4である、ことを特徴とする洗浄組成物。
【請求項2】
前記成分(C)のHLB値が7~13であり、
前記成分(D)のHLB値が11~16である、ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
前記成分(C)は、トリラウリン酸ポリグリセリル-10であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄組成物。
【請求項4】
前記成分(D)は、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-4、カプリン酸ポリグリセリル-6、カプリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-5、ステアリン酸ポリグリセリル-5、カプリン酸ポリグリセリル-5、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-5、オレイン酸ポリグリセリル-5、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、及びオレイン酸ポリグリセリル-6の少なくとも1つから選択される、ことを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載の洗浄組成物。
【請求項5】
前記成分(C)は、トリラウリン酸ポリグリセリル-10であり、前記成分(D)は、ラウリン酸ポリグリセリル-10である、ことを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載の洗浄組成物。
【請求項6】
前記成分(A)の質量に対する前記成分(C)と成分(D)の質量の総量の比率((C)+(D))/(A)が0.1~2である、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の洗浄組成物。
【請求項7】
前記洗浄組成物の総質量に対して、前記成分(A)は0.1質量%~5質量%の範囲、前記成分(B)は0.05質量%~5質量%の範囲、前記成分(C)は、0.01質量%~5質量%の範囲、前記成分(D)は、0.01質量%~5質量%の範囲、前記成分(E)は50質量%~85質量%の範囲、前記成分(F)は0.1質量%~15質量%の範囲、前記成分(G)は0.1質量%~15質量%の範囲である、ことを特徴とする請求項1乃至6何れか一項に記載の洗浄組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として皮膚に用いられる洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メイクアップ化粧料や皮膚汚れなどの油性汚れを落とすために、油剤や界面活性剤などを主成分として構成されたクレンジング化粧料(洗浄組成物)が使用されている。このクレンジング化粧料は、通常皮膚に塗布後、水で洗い流すか、ティッシュ等でふき取って使用される。
【0003】
クレンジング化粧料として様々な剤型のものが市販されている。その内、水中油型のクレンジング化粧料は使用感が良好だが、洗浄効果が低いという欠点を有する。一方、油中水型やオイルのクレンジング化粧料は洗浄効果が高いが、べたつきや水で落としにくく使用感にまだ改善の余地が残されている。
【0004】
近年、洗浄効果と使用感を両立するべくD相乳化を応用した乳化型クレンジング化粧料が開発されている。乳化型クレンジング化粧料は、肌をマッサージする際に摩擦が小さく肌に優しく、また、洗い流す際に水と馴染みやすい特性から洗い上がりのさっぱり感が得られるなどの特徴がある。
【0005】
通常、D相乳化を応用した乳化型クレンジング製品は、界面活性剤、ポリオールや水を混合してなる相に油を添加することによって調製されるため、高度なメイクアップ除去に貢献する油を大量含有することができる。例えば、油剤60~80質量%と、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル1~2質量%と、脂肪酸0.5~2質量%とを含有する乳化組成物である乳化形態の皮膚外用剤が開示されている(例えば特許文献1参照)。また、脂肪酸の糖エステルと、陰イオン性界面活性剤と、HLB値が12以下のポリオキシアルキレン化ポリオール脂肪酸エステルと、油と、ポリオールと、水とを含む洗浄組成物も開示されている(例えば特許文献2参照)。また、D相乳化ではないが、一般の水中油型クレンジング製品として、HLB値が10から17のポリグリセリン脂肪酸エステルを2種類以上含み、かつ、非イオン界面活性剤を少なくとも1種類以上含むクレンジング化粧料も開示されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-169198号公報
【文献】特開2018-95560号公報
【文献】特開2018-16613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、洗浄組成物においては、クレンジング効果や満足のいく使用感のみではなく、高温及び低温での保存安定性、後肌の心地よさ、肌への優しさ、見た目の高級感(透明感)などの付加価値も同時に要求されており、そのため未だに改良の余地があることは疑いようのない事実である。
【0008】
また、上記特許文献1に係る皮膚外用剤は、脂肪酸が入っているため、製造工程の最後に中和する必要があり、通常のD相乳化より工程がより煩雑である。また、使用感のうち重要な指標であって具体的には肌上でなじませるとやがて指滑りが軽くなる感触である転相感や水での洗い流しやすさについて未だ問題がある。さらに、上記特許文献2に係る洗浄組成物は、転相感は良いものの、使用中の水での洗い流しやすさや、使用後のべたつき(乾いた肌の油膜残留感)については未だ問題がある。
【0009】
また、上記特許文献3などに示すように、乳化剤や界面活性剤として複数の種類のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する化粧料が実際に多く販売されている。しかしながら、従来の洗浄剤ではそのどれもが未だに油分が多いことによる油膜残留感が有ったり、逆に油分が少ないために洗浄力が劣ったりするという問題を抱えている。例えば、上記特許文献3はポリグリセリン脂肪酸エステルと非イオン界面活性剤の他に、アルキル基の炭素数が10から30の(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーと、炭素数12から20の高級アルコールなどをさらに配合しないと安定的な組成が得られない。このため、クレンジング力の低さを解消するために多くしなければいけない内相の油分量を50%以上安定的に含有させることが困難であり、ウォータープルーフマスカラといった密着性が高いメイクに対するクレンジング力に未だに改善する余地がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、油を大量に含有しながらも、界面活性剤の量を最小限に抑え、クレンジング効果に優れ、転相感を有しながら水洗時に洗い流しやすく、特に使用後に肌の油膜残留感(使用後のべたつき)を抑制し、且つ保存安定性にも優れた洗浄組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、(A)脂肪酸の糖エステル、(B)アミノ酸系界面活性剤及びタウリン系界面活性剤から選択される少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤、(C)HLB値が13以下の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸トリエステル、(D)HLB値が11以上の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステル、(E)常温において、液体又はペースト(非固体)の形態を有する油、(F)ポリオール、(G)水を含有し、前記成分(C)と前記成分(D)の質量の総量に対する前記成分(E)の質量の比率(E)/((C)+(D))が10~100であり、前記洗浄組成物の総質量に対して、前記成分(E)は40質量%~90質量%の範囲であり、前記成分(C)と前記成分(D)の含有質量割合(C)/(D)が0.1~10であり、前記成分(A)の質量に対する前記成分(C)と前記成分(D)の質量の総量の比率((C)+(D))/(A)が0.02~4であることを特徴とする洗浄組成物である。
【0013】
また、この洗浄組成物において、前記成分(C)のHLB値が7~13であり、前記成分(D)のHLB値が11~16であることが好ましい。
【0015】
また、この洗浄組成物において、前記成分(C)は、リラウリン酸ポリグリセリル-10であることが好ましい。
【0016】
また、この洗浄組成物において、前記成分(D)は、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-4、カプリン酸ポリグリセリル-6、カプリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-5、ステアリン酸ポリグリセリル-5、カプリン酸ポリグリセリル-5、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-5、オレイン酸ポリグリセリル-5、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、及びオレイン酸ポリグリセリル-6の少なくとも1つから選択されることが好ましい。
【0018】
また、この洗浄組成物において、前記成分(C)は、トリラウリン酸ポリグリセリル-10であり、前記成分(D)は、ラウリン酸ポリグリセリル-10であることが好ましい。また、この洗浄組成物において、前記成分(C)は、トリラウリン酸ポリグリセリル-10であり、前記成分(D)は、ラウリン酸ポリグリセリル-4であることが好ましい。また、この洗浄組成物において、前記成分(C)は、トリラウリン酸ポリグリセリル-10であり、前記成分(D)は、カプリン酸ポリグリセリル-6であることが好ましい。
【0020】
また、この洗浄組成物において、前記成分(A)の質量に対する前記成分(C)と成分(D)の質量の総量の比率((C)+(D))/(A)が好ましくは0.1~2であることが好ましい。
【0021】
また、この洗浄組成物において、前記洗浄組成物の総質量に対して、前記成分(A)は0.1質量%~5質量%の範囲、前記成分(B)は0.05質量%~5質量%の範囲、前記成分(C)は、0.01質量%~5質量%の範囲、前記成分(D)は、0.01質量%~5質量%の範囲、前記成分(E)は50質量%~85質量%の範囲、前記成分(F)は0.1質量%~15質量%の範囲、前記成分(G)は0.1質量%~15質量%の範囲であることが好ましい。
【0022】
また、この洗浄組成物は、皮膚用クレンジング化粧料であることが好ましい。また、顔、身体、手足、頭髪などの何れかにそのまま塗布し、塗擦しながら汚れを馴染ませた後、ふき取り又は水洗することにより使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る洗浄組成物は、(A)脂肪酸の糖エステル、(B)アミノ酸系界面活性剤及びタウリン系界面活性剤から選択される少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤、(C)HLB値が13以下の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステル、(D)HLB値が11以上の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステル、(E)常温において、液体又はペースト(非固体)の形態を有する油、(F)ポリオール、(G)水を含有し、前記成分(C)と成分(D)の質量の総量に対する前記成分(E)の質量の比率(E)/((C)+(D))が10~100であり、前記成分(C)と成分(D)の含有質量割合(C)/(D)が0.1~10であり、前記成分(A)の質量に対する前記成分(C)と成分(D)の質量の総量の比率((C)+(D))/(A)が0.02~4である。この構成により、本発明に係る洗浄組成物は、クレンジング効果に優れ、転相感を有しながら水洗時に洗い流しやすく、特に使用後に肌の油膜残留感(使用後のべたつき)を抑制し、且つ保存安定性にも優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[成分(A)脂肪酸の糖エステル]
成分(A)の脂肪酸の糖エステルは、少なくとも1つの糖残基及び少なくとも1つの脂肪酸残基を含む。成分(A)は、糖類と直鎖状及び分枝状、飽和及び不飽和脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物から選択することができる。この脂肪酸は、例えば、飽和C10~C24脂肪酸、好ましくはC10~C18脂肪酸、より好ましくはC12~C16脂肪酸から選択することができる。エステルは、モノ、ジ、トリ、テトラエステル及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0025】
成分(A)である脂肪酸の糖エステルの例示としては、ラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ベヘニン酸スクロース、オレイン酸スクロース、テトライソステアリン酸スクロース、ヘキサイソステアリン酸スクロース、ヘキサ(オレイン酸/パルミチン酸/ステアリン酸)スクロース、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
市販品としては、「Hostapon CT Pate(登録商標)」、「Hostapon LT-SF(登録商標)」、「Nikkol CMT-30-T(登録商標)」、「Nikkol SMT(登録商標)」、「Nikkol PMT(登録商標)」(以上、日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0027】
成分(A)の量は、転相感や使用感、保存安定性を向上させる観点から、洗浄組成物の総質量に対して0.01質量%から20質量%、好ましくは0.1質量%から5質量%の範囲である。
【0028】
[成分(B)アミノ酸系界面活性剤及びタウリン系界面活性剤から選択される少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤]
成分(B)におけるアミノ酸系界面活性剤は、アミノ酸又はその誘導体をベースとする陰イオン性界面活性剤である。典型的には、アミノ酸系界面活性剤は、少なくとも1つのアミノ部分及び少なくとも1つのカルボン酸部分(カルボキシレートの形態である)を含む陰イオン性界面活性剤である。アミノ酸系界面活性剤は、2つ以上のアミノ部分及び/又は2つ以上のカルボン酸部分(カルボキシレートの形態である)を有してよい。
【0029】
アミノ酸系界面活性剤は、好ましくは、アミノ酸誘導体から選択することができる。アミノ酸誘導体は、より好ましくは、アミノ酸及びN-アシル化アミノ酸の塩、例えばアミノ酸及びN-アシル化アミノ酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えばアミノ酸及びN-アシル化アミノ酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩から選択することができる。
【0030】
アミノ酸誘導体のN-アシル部分を形成するアシル基は、C1~C30アシル基、好ましくはC6~C28アシル基、より好ましくはC12~C24アシル基でよい。
【0031】
アミノ酸系界面活性剤は、さらにより好ましくは、グルタミン酸塩、N-アシル化グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、N-アシル化アスパラギン酸塩、及びこれらの塩からなる群から選択することができる。
【0032】
市販品としては、「Acylglutamate CT-12(登録商標)」(味の素株式会社製)、「Asparack(登録商標)」(三菱化学株式会社製)が挙げられる。
【0033】
成分(B)におけるタウリン系界面活性剤は、少なくとも1つのタウリン部分を含む陰イオン性界面活性剤である。タウリン系界面活性剤は、好ましくはアシルタウリン、より好ましくはアシルメチルタウリン(すなわち、N-アシル-N-メチルタウリン)である。
【0034】
タウリン系界面活性剤は、タウリン、カプロイルタウリン、ラウロイルタウリン、ミリストイルタウリン、パルミトイルタウリン、ステアロイルタウリン、オレオイルタウリン、ココイルタウリン、メチルタウリン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン、パーム核油脂肪酸メチルタウリン、水添パーム核油脂肪酸メチルタウリン、牛脂脂肪酸メチルタウリン、水添牛脂脂肪酸メチルタウリン、カプロイルメチルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ミリストイルメチルタウリン、パルミトイルメチルタウリン、ステアロイルメチルタウリン、オレオイルメチルタウリン、ココイルメチルタウリン、メチルタウリンココイルメチルタウリン、及びそれらの塩からなる群から選択することができる。
【0035】
市販品としては、「Hostapon CT Pate(登録商標)」、「Hostapon LT-SF(登録商標)」(以上、Clariant社製)等が挙げられる。
【0036】
成分(B)は、保存安定性、転相感を有しながら水洗時に洗い流しやすくする観点から、洗浄組成物の総質量に対して、0.001質量%から20質量%、好ましくは0.01質量%から10質量%、より好ましくは0.05質量%から5質量%の範囲であってよい。
【0037】
[成分(C)HLB値が13以下の、好ましくは7~13の、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステル]
一般的にポリグリセリン脂肪酸エステルは、疎水基である脂肪酸の種類や親水基であるグリセリンの重合度を変えることで様々なHLBのものが利用できるため、化粧品用乳化剤や界面活性剤として汎用されている。
【0038】
本実施例において成分(C)の例示としては、ジカプリン酸ポリグリセリル-6(HLB10.2)、ジミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB12.3)、ジラウリン酸ポリグリセリル-5(HLB8.5)、ジステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB11.1)、セスキオレイン酸ポリグリセリル-2(HLB5.3)、ジオレイン酸ポリグリセリル-10 (HLB11.9)、ジステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB11.1)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB11.1)、及びジオレイン酸ポリグリセリル-5(HLB11.9)(以上、太陽化学株式会社製)の少なくとも1つから選択される。
【0039】
より具体的には、ジカプリン酸ポリグリセリル-6(HLB10.2)が好ましい。市販品としては、「SUNSOFT Q-102H-C」(太陽化学株式会社製)等が挙げられる。このジカプリン酸ポリグリセリル-6は、一般的に油分として化粧品によく配合され、肌や髪の水分を保湿し、肌や髪の表面を柔らかくする油溶性の成分である。また、優れた界面活性剤(乳化剤)としての機能も有する。
【0040】
成分(C)は、クレンジング力、転相感や油膜残留感の観点から、組成物の総質量に対して、0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%の範囲である。
【0041】
なお、本実施の形態の説明において、HLB(Hydrophillic-Lipophillic Balance:親水性・親油性バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であって、グリフィン(Griffin)の式(J, Soc, Cosmet, Chem., 1,311(1949); 5,249(1953))により計算されるものである。2種以上の非イオン界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLB値(以下、混合HLBと記す)は、各非イオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて加重平均したものであり、次式で求められる。
混合HLB値=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
(HLBxは、界面活性剤XのHLB値を示す。Wxは、HLBxの値を有する界面活性剤Xの質量(g)を示す。)
【0042】
成分(C)において、ポリグリセリン脂肪酸ジエステルの代わりに、3つの脂肪酸とポリグリセリンから成るエステルである、ポリグリセリン脂肪酸トリエステルも使用することができる。ポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、2~10個、好ましくは5~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有していることが好ましい。また、本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、好ましくは炭素数6~18個、さらに好ましくは炭素数10~14個の、飽和又は不飽和の酸のトリエステルであり、炭素数6~18個、さらに好ましくは炭素数10~14個のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有することが好ましい。具体的には、例えば、トリラウリン酸ポリグリセリル-10、トリラウリン酸ポリグリセリル-6、トリミリスチン酸ポリグリセリル-5、トリオレイン酸ポリグリセリル-5の少なくとも1つから選ぶことができる。
【0043】
[成分(D)HLB値が11以上の、好ましくは11~16の、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステル]
成分(D)は、エステル結合を1つ有するポリグリセリン脂肪酸エステルであり、例えば、カプリン酸ポリグリセリル-6(HLB14.6)、カプリン酸ポリグリセリル-10(HLB17.3)、ミリスチン酸ポリグリセリル-5(HLB15.4)、ステアリン酸ポリグリセリル-5(HLB15.0)、カプリン酸ポリグリセリル-5(HLB13.0)(以上、太陽化学株式会社製)や、これらの組み合わせが考え得る。その他のエステルとして、ミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB16.7)、オレイン酸ポリグリセリル-10(HLB15.9)、ステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB17.5)、ラウリン酸ポリグリセリル-5(HLB15.8)、オレイン酸ポリグリセリル-5(HLB14.9)、ラウリン酸ポリグリセリル-10(HLB15.5)、ミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB15.7)、ステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB15.1)、イソステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB13.7)、及びオレイン酸ポリグリセリル-6(HLB11.6)(以上、太陽化学株式会社製)も含まれる。
【0044】
より具体的には、ラウリン酸ポリグリセリル-10 (HLB15.5)、市販品としては「SUNSOFT M-12J」(太陽化学株式会社製)、ラウリン酸ポリグリセリル-4 (HLB11.0)、市販品としては「TEGO CARE PL 4」(EVONIK社製)が好ましい。
【0045】
成分(D)は、転相感や洗い流しやすさ、及び保存安定性の観点から、組成物の総質量に対して、組成物の総質量に対して、その量は好ましくは0.001質量%から10質量%、より好ましくは0.01質量%から5質量%の範囲である。
【0046】
[成分(E)油]
成分(E)はいわゆる化粧品用の油剤として用いることが可能であれば良く、水とは任意の割合で混合せず、且つ、1気圧25℃の常温下に於いて、液体又はペースト(非固体) の形態を有する成分である。これらの油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。成分(E)は、例えば、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、エーテル油、植物油、動物油、脂肪族アルコール及びこれらの混合物であってもよい。炭化水素油の例としては、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、ワセリン、ポリデセン、水添ポリイソブテン、ナフタレン 、イソエイコサン、デセン/ブテンコポリマーなどである。シリコーン油の例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シクロヘキサシロキサンなどである。エステル油の例としては、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、オクタン酸セチル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ラウリン酸エチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリルなどである。エーテル油の例としては、ジカプリリルエーテルなどである。植物油の例としては、例えば、アマニ油、ツバキ油、オリーブ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナッツ油などである。動物油の例としては、卵黄油、牛脂、豚脂、羊脂、ミンク油、サメ肝油、ラノリンなどである。脂肪族アルコールの例としては、オクタノール、ラウリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコールなどである。なお、クレンジング化粧料に用いることができる油分(合成油や自然由来の油)は既に多くの文献(例えば特許文献1や特許文献2)において開示されており、本実施の形態に係る成分(E)の油にこれらの周知の油分の何れかを適用できることは言うまでもない。
【0047】
成分(E)の量が、クレンジング効果や転相感(容易に肌上になじむなど)、水洗時における流しやすさの観点から、組成物の総質量に対して、40質量%~90質量%、好ましくは50質量%~85質量%の範囲である。
【0048】
[成分(F)ポリオール]
成分(F)のポリオールとは、多価アルコールのことであり、2個以上のヒドロキシ基(OH基)をもった脂肪族化合物をいう。ヒドロキシ基を2個もったものをグリコール又はジオールdiolという。グリコールの代表的なものはエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールである。このほかにエチレンあるいはプロピレングリコールをエーテル化した形のジエチレングリコールやジプロピレングリコール、さらにポリエチレングリコールなどがある。ヒドロキシ基が3個入った代表的なものはグリセリン(グリセロール)であり、4個もっているものにペンタエリスリトールがある。
【0049】
成分(F)のポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基、好ましくは2~5つのヒドロキシ基を含む、C2~C12ポリオール、好ましくはC2~C9ポリオールとなり得る。
【0050】
ポリオールは、天然のポリオールでも合成のポリオールでもよい。ポリオールは、直鎖状、分枝状又は環状の分子構造を有し得る。
【0051】
ポリオールは、グリセリン又はグリセロール及びその誘導体、並びにグリコール及びその誘導体から選択することができる。ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,5-ペンタンジオールからなる群から選択することができる。
【0052】
ポリオールは、グリセリン及びグリコールから選択されることが好ましく、より好ましくはポリオールはグリセリンである。
【0053】
成分(F)の量は、使用感、保存安定性を付与する観点から、組成物の総質量に対して、0.001質量%~40質量%、好ましくは0.01質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~15質量%の範囲である。
【0054】
[成分(G)水]
成分(G)である水は、本発明の洗浄組成物においてD相を構成し、系を維持するために必須の成分である。本発明の洗浄組成物中における成分(G)の含有量は、保存安定性を向上させ、使用後にさっぱりとした感触が得られる観点から、0.001質量%~25質量%、好ましくは 0.01質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~15質量%の範囲である。
【0055】
〔その他の任意成分〕
本発明の洗浄組成物には、以上述べた各種成分に加え、通常用いられる他の成分を、目的に応じて適宜配合することができる。例えば、防腐剤としてフェノキシエタノール、酸化防止剤としてトコフェノールを用いることもできる。その他、キレート剤、保湿剤、美白剤、血行促進剤、抗炎症剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、感触向上剤、着色剤、香料、動植物抽出物等が挙げられる。
【0056】
〔配合割合に関して〕
一般的に水洗時に流しやすく、洗浄剤として向いている界面活性剤はHLBが高めのもので(例えばHLB11-15)、これらの界面活性剤は水溶性が高く、油を水の中に乳化させる能力も高いからである。そこで、例えば、上述の上記特許文献2の組成物の洗い流し性を改善するためにHLBが高めの界面活性剤をいくつか併用してみたところ、何れも処方が不安定になった。
【0057】
また、本発明者らは、流しやすさを改善すべくいろいろと鋭意に検討を重ねた。発明者らの有する基礎組成を用いて、他の種類の界面活性剤ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルを用いて検討もした。例えば、上記特許文献2に示される成分(C)の界面活性剤の代わりに、洗い流しやすさを改善するためにPEG-8 Stearate(HLB11)単独を用いた実験では、処方が不安定である。同種類で違うHLBの界面活性剤の混合を用いた実験では、処方が安定であるが、転相感が得られなかった。
【0058】
そこで、本発明者らは、種類の異なる界面活性剤の混合について検討した。例えば、PEG-100 Stearate(HLB18.8)とGlyceryl Stearate(HLB3.2)の混合物を用いた実験では、処方が安定であるが、転相感が得られなかった。
【0059】
さらに、本発明者らは、洗い流した後、特に乾いた肌の油膜残留感(使用後のべたつき)を改善すべくいろいろと鋭意に検討を重ねた。ジエステル或いはトリエステルが極端に少ないと、洗い流した後に油膜(べたつき)を感じ易いことが分かった。そこで、本発明者らが鋭意検討を行った結果、上記特許文献2に示される成分(C)の界面活性剤の代わりに、(C)HLB値が13以下の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステル、(D)HLB値が11以上の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステルの割合を設計して用いることで、クレンジング化粧品としての品質・性能を大きく改善し、処方が経時安定し、満足いく転相感とべたつきのない後肌を両立させた組成が得られることを見出した。
【0060】
またさらに、その成分(C)と成分(D)の含有質量割合(C)/(D)(すなわちジエステルまたはトリエステルに対するモノエステルの質量割合)は0.1~10であるときに、重要な物性である粘度がクレンジング化粧料として最適となり、転相感が満たされ、たれ落ちも無く、クレンジング効果、洗い流しのさっぱりとした使用感、経時安定性が最適となることを見出し、本願発明に到ったものである。また、成分(C)及び成分(D)と、成分(A)との含有質量割合((C)+(D))/(A)は0.02~4、好ましくは0.1~2であることも見出した。このことから分かるように、単にHLB値を調整するためにクレンジング化粧料分野では周知であるHLB値の異なるポリグリセリン脂肪酸エステルを混合したのではない。本発明者らは、特に成分(C)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステル及び成分(D)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルを上記割合で配合することで、優れたクレンジング化粧料になることを見出した。
【0061】
特に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、油分、水、ポリオールを用いたクレンジング化粧料(洗浄組成物)に対して、転送感や洗浄力を高めるために成分(E)常温で非固形の油を多く含有させたとしても油膜残留感をなくすための成分(C)と成分(D)の質量の総量に対する成分(E)の質量の比率を見だした。すなわち、成分(E)/((C)+(D))が4~4000であり、より好ましくは10~100であるときに、クレンジング化粧品としての洗浄力、満足いく転相感とべたつきのない後肌を両立させることを見出した。
【0062】
〔製造工程〕
本発明の洗浄組成物は、所定の成分を適宜混合することによって製造することができ、混合する順序によらず、全成分を均一に混合・分散することにより製造することができる。より具体的には、本実施例においては、表1の「I」欄と「II」欄に示す成分をそれぞれ75度に加温し、「I」欄の成分を攪拌してD相を形成させた後、これに「II欄の成分を攪拌下、徐々に加え、攪拌冷却して以下の実施例を得た。成分の量の数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0063】
(実施例)
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。実施例及び比較例において行った試験方法を以下に示す。
【0064】
<評価試験結果1>
【表1】
【0065】
<評価試験結果2>
【表2】
【0066】
<評価試験結果3>
【表3】

(注1)ジカプリン酸ポリグリセリル-6 (HLB10.2): SUNSOFT Q-102H-C (太陽化学株式会社)
(注2)ジミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB12.3): SUNSOFT Q-142Y-C (太陽化学株式会社)
(注3)ラウリン酸ポリグリセリル-10 (HLB15.5): SUNSOFT M-12J (太陽化学株式会社)、またはDERMOFEEL G 10 L(EVONIK社)
(注4)ラウリン酸ポリグリセリル-4 (HLB11.0): TEGO CARE PL 4 (EVONIK社)
(注5)ステアリン酸PEG-8 (HLB11.0): CITHROL 4MS (CRODA社)
(注6)ステアリン酸グリセリル (HLB4.0): CUTINA GMS V (COGNIS社)
(注7)ステアリン酸PEG-100 (HLB18.8): MYRJ 59 P (CRODA社)
(注8)イソステアリン酸PEG-20グリセリル: EMALEX GWIS-320EX (日本エマルジョン株式会社)
(注9)トリラウリン酸ポリグリセリル-10 (HLB10.4): SUNSOFT Q-123Y-C (太陽化学株式会社)
【0067】
特に、本願に係る洗浄組成物の実施例との比較に際して、比較例11は成分(C)ポリグリセリン脂肪酸ジエステルの割合が、成分(D)ポリグリセリン脂肪酸モノエステルに比較して非常に少ない場合、比較例12は成分(D)ポリグリセリン脂肪酸モノエステルの割合が、成分(C) ポリグリセリン脂肪酸ジエステルに比較して非常に少ない場合、比較例13は成分(C)及び(D)が共に少ない場合の結果を示す。また、比較例14は成分(A)脂肪酸の糖エステルを使用しない場合、比較例15は成分(E)油を少なくして成分(G)水を多くした場合の結果を示す。
【0068】
[洗浄効果1の評価]
次の処方のファンデーションを肌に重ね塗りし、2時間経過後、実施例又は比較例のクレンジング化粧料を用いて洗顔を行い、洗浄後の化粧料除去効果を専門パネラー5名により試験した。評価基準は以下の通りである。
○…5名中4名以上が、ファンデーション除去効果が高いと認めた。
△…5名中2名以上4名未満が、ファンデーション除去効果が高いと認めた。
×…5名中2名未満が、ファンデーション除去効果が高いと認めた。
【0069】
ファンデーション処方 (質量%)
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 14.0
(2)オクタメチルシクロテトラシロキサン 24.0
(3)シリコーン化プルラン 15.0
(4)イソステアリン酸 1.0
(5)酸化チタン 5.0
(6)オクチルメトキシシンナメート 5.0
(7)デキストリン脂肪酸被覆粉末 25.0
(8)アルコール 残部
【0070】
[洗浄効果2の評価]
マスカラ(ウォータープルーフタイプ)をまつ毛に塗布し、2時間放置した後、塗布した目元部分に実施例又は比較例のクレンジング化粧料を用いて、剤がいきわたるように30回円形状に塗布し、その後少し水を加え、乳化させ、水道水で洗い流した。マスカラの落ち具合を目視により観察した結果を以下の評価基準に従って評価した。
○…マスカラの80パーセント以上が落ちた
△…マスカラの50パーセント以上、80パーセント未満が落ちた
×…マスカラの50パーセント未満が落ちた
【0071】
[転相感の評価]
専門パネラー5名が、それぞれ各組成物を0.1g取り、それを自分の手の甲に円形に塗布した。パネラーは、テクスチャー変化が起こるまでに必要とされた摩擦回数を計数することによってそれを評価した。摩擦回数は、その平均に基づいて、以下の3つのカテゴリーに分類した。
○…15回未満
△…15~30回
×…30回超
【0072】
[洗い流しやすさの評価]
専門パネラー5名が、各洗浄剤組成物を0.1g手の甲に剤がいきわたるように15回円形状に塗布し、その後少し水を加え、乳化させ、水道水(すすぎ水の水量1000mL/1分、水温25~30℃)で15秒間すすぎ、すすぎ初めから15秒後の手のぬるつきのなさを評価した。評価基準は以下の通りである。
〇…5名中4名以上が、洗い流しやすいと認めた。
△…5名中2名以上4名未満が、洗い流しやすいと認めた。
×…5名中2名未満が、洗い流しやすいと認めた。
【0073】
[保存安定性の評価]
洗浄組成物を、透明なガラス製瓶に満たし、それを50℃の温度条件下で1ヵ月間保持した。次いで、各瓶の様相を、変化の程度(色、におい、pH、粘度、及びエマルジョン状態)について検査し、次の基準によって評価した。
○…変化はなかった
△…分離は生じなかったが、少し変化があった
×…分離が生じた
【0074】
[油膜残留感のなさの評価]
上記の洗浄効果の評価の後、洗浄後の乾いた肌において油膜残留感のなさについて専門パネラー5名に以下の評価基準により評価をしてもらった。
〇…5名中4名以上が、油膜残留を感じないと認めた。
△…5名中2名以上4名未満が、油膜残留を感じないと認めた。
×…5名中2名未満が、油膜残留を感じないと認めた。
【0075】
上記の表1及び表2に示す実施例より明らかなように、本発明の洗浄組成物(D相乳化を応用した乳化型クレンジング化粧料)は、洗浄効果、転相感(塗布時の伸び、メイクと馴染みの速さ)、洗い流しやすさ、油膜残留感のなさ、及び保存安定性の全ての項目において優れた性能を示した。
【0076】
一方、表1の比較例1,3,4,5, 6に示すように、成分(C)及び成分(D)の少なくとも一方が欠如することにより、洗浄効果、転相感、洗い流しやすさ、油膜残留感のなさ、及び保存安定性の全ての条件を満たすことがないことが判明した。また表1の比較例2に示すように、成分(B)を含有しない場合には、保存安定性に欠けるという結果となった。
【0077】
さらに、表2の比較例8~10に示すように、成分(C)または成分(D)に代えて、別の界面活性剤を配合した場合には、洗浄効果、転相感、洗い流しやすさ、油膜残留感のなさ、及び保存安定性の全てを満たす洗浄組成物とならず、本発明の目的を達成できなかった。
【0078】
またさらに、表2の比較例11~12に示すように、成分(C)及び(D)の質量割合が0.1~10の範囲外となるときには洗い流しやすさ、油膜残留感などに問題が生じた。また、表3の比較例14に示すように成分(A)が欠けている場合には洗い流しやすさ、保存安定性、油膜残留感での問題が生じた。さらに、表3の比較例15に示すように成分(E)の油が少なく成分(G)の水分が多く、成分(C)と成分(D)の質量の総量に対する成分(E)の質量の比率が10~100の範囲外である場合には洗浄効果、保存安定性に問題が生じた。また、比較例7、13に示すように、成分(A)の質量に対する成分(C)と成分(D)の質量の総量の比率0.02~4.0の範囲外となる場合には、転相感、保存安定性、洗い流しやすさ、油膜残留感での問題が生じた。
【0079】
以上の説明より、本実施の形態に係る洗浄組成物は、(A)脂肪酸の糖エステル、(B)アミノ酸系界面活性剤及びタウリン系界面活性剤から選択される少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤、(C)HLB値が13以下の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステル、(D)HLB値が11以上の少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステル、(E)常温において、液体又はペースト(非固体)の形態を有する油、(F)ポリオール、(G)水を含有する。より好ましくは、成分(C)のHLB値が7~13であり、成分(D)のHLB値が11~16である。より好ましくは、成分(C)と成分(D)の含有質量割合(C)/(D)が0.1~10である。より好ましくは、成分(A)の質量に対する成分(C)と成分(D)の質量の総量の比率((C)+(D))/(A)が0.02~4である。より好ましくは、成分(C)と成分(D)の質量の総量に対する前記成分(E)の質量の比率(E)/((C)+(D))が10~100である。
【0080】
通常、クレンジング用化粧品において油性成分の含有量を増やすと洗い流し後の油膜残留感(べたつき)が非常な問題となる。本願発明では、ポリグリセリン脂肪酸エステル、油、水及びポリオールを用いたクレンジング化粧料の条件を相違工夫することで、最適なポリグリセリン脂肪酸エステルの組み合わせを見だした。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルに対する油、他の有効な界面活性剤の組み合わせや割合を見だした。この結果、本実施例に係る洗浄組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、多量の油、水及びポリオールを用いたクレンジング化粧料であるにも関わらず、クレンジング効果に優れ、転相感を有しながら水洗時に洗い流しやすく、特に使用後に肌の油膜残留感が抑制され、且つ保存安定性にも優れたものとなる。そして、本実施の形態に係る洗浄組成物は、皮膚用クレンジング化粧料として好適に利用でき、好ましくは顔、身体、手足、頭髪などの何れかにそのまま(起泡させずに)塗布し、塗擦しながら汚れを馴染ませた後、ふき取り又は水洗することにより、使用することができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。また、本発明の洗浄組成物としては、使い勝手が良く、また転相して液状となる変化がより明確に感じられることから、クリーム状又はゲル状であることが好ましい。