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▶ アラセ・アイザワ・アエロスパシアル合同会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】無人航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
B64C39/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022080510
(22)【出願日】2022-05-16
【審査請求日】2022-06-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521197184
【氏名又は名称】アラセ・アイザワ・アエロスパシアル合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒瀬 国男
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201793017(CN,U)
【文献】国際公開第2018/084261(WO,A1)
【文献】特表2018-516197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体から対角線方向に水平に突き出る4本のプロペラシャフトと、折りたたみ機構を有する2枚のブレードからなる4基のプロペラを備え、エンジンの回転がギアで前記プロペラに伝達される無人航空機であって、
前記4基のプロペラは、いずれも前記プロペラシャフトの先端から同じ高さにあって、隣接する前記プロペラと回転範囲がオーバラップし、取付け角度が隣接する前記プロペラと90°ずれており、回転方向が隣接する前記プロペラと互いに逆であることを特徴とする無人航空機。
【請求項2】
前記折りたたみ機構は、ノブと、スプリングと、ピンと、前記ピンを囲むゴムダンパーと、からなり、前記ノブを引いて、前記ピンと前記ブレードとの係合を外すと、回動軸を中心に前記ブレードが回動可能となることを特徴とする請求項1に記載の無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機に関し、より詳しくは、プロペラが折りたたみ可能で、プロペラが隣接するプロペラと同じ高さにあって、回転範囲がオーバラップして回転できる無人航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
無人航空機は、例えば飛行場までトラックに積載して運搬される。2トントラックの荷台は、例として長さが3.1m、幅が1.6m、高さが0.4mであり、これに搭載できる機体寸法が望ましい。一方機体に水平に回転する長さ1.8mのプロペラを4基設けて重ならないように配置すると、機体全体の縦×横の寸法が3.6m□の長さになり、2トントラックの荷台には積載できない。プロペラを折り曲げ可能にするとプロペラが半分の長さ0.9mにでき、縦×横の寸法が1.8m□の長さになるが、このようにしても、幅が1.6mの荷台には積載できない。
【0003】
そこで、プロペラ間の回転範囲をオーバラップさせて、縦×横の寸法をさらに小さくすることが考えられる。プロペラのオーバラップは、プロペラのぶつかりを避けるため、プロペラ間で高低差を付ける。隣接するプロペラを0.5m程度オーバラップさせた場合、縦×横の寸法は1.0m□(=1.8m-0.5m×2)の長さにでき、2トントラックの荷台に積載できる。
【0004】
プロペラに高低差を設けることは、プロペラを個別にモーター駆動する場合には有効である。プロペラのぶつかりをなくせるからである。一方、プロペラに高低差を設けることは、機体の均一な揚力と機体の安定性からは好ましくない。プロペラがエンジンからギアで駆動される場合、各プロペラを一定の関係で回転させることができるので、各プロペラを同じ高さに配置してもプロペラ間のぶつかりが起きないようにできる。特許文献1には、エンジンが搭載され、プロペラがギアで駆動される無人航空機が示される。プロペラを折りたたむことや、オーバラップして配置することは示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-100241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、揚力が均一で、機体全体の寸法を小さくできる無人航空機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による無人航空機は、機体から対角線方向に水平に突き出る4本のプロペラシャフトと、折りたたみ機構を有する2枚のブレードからなる4基のプロペラを備え、エンジンの回転がギアで前記プロペラに伝達される無人航空機であって、前記プロペラは、いずれも前記プロペラシャフトの先端から同じ高さにあって、隣接する前記プロペラと回転範囲がオーバラップし、取付け角度が隣接する前記プロペラと90°ずれており、回転方向が隣接する前記プロペラと互いに逆であることを特徴とする。
【0008】
前記折りたたみ機構は、ノブと、スプリングと、ピンと、前記ピンを囲むゴムダンパーと、からなり、前記ノブを引いて前記ピンと前記ブレードとの係合を外すと、回動軸を中心に前記ブレードが回動可能となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による無人航空機によれば、(1)4基のプロペラをいずれも同じ高さにしたので、揚力を均一にできる。(2)プロペラの回転範囲をオーバラップさせたので、また、プロペラに折りたたみ機構を設けたので、機体全体の寸法を小さくできる。小型トラックに積載でき、一般道路を走行しての運搬ができる。(3)プロペラを同じ高さにし、プロペラの回転範囲をオーバラップさせても、(ア)プロペラがギア駆動で、(イ)プロペラの取付け角度を隣接するプロペラと90°ずらし、(ウ)プロペラの回転方向が隣接するプロペラと逆にしたので、プロペラがぶつからずに回転できる。
【0010】
折りたたみ機構がノブと、スプリングと、ピンと、ピンを囲むゴムダンパーと、からなるとしたので、手動でノブを引いて、ピンとブレードとの係合を外すと、回動軸を中心にブレードを回動できる。これによりプロペラを折りたたむことができる。ピンにゴムダンパーを設けたので、ピンにかかるプロペラの回転開始時の荷重を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による無人航空機のプロペラが回転中の平面図である。
図2】本発明による無人航空機のプロペラが停止中の平面図である。
図3図2で、プロペラが折りたたまれた状態の平面図である。
図4】4基のプロペラを駆動するメインベベルギアの平面図である。
図5】第1プロペラと第3プロペラの内部構造図である。
図6】第2プロペラと第4プロペラの内部構造図である。
図7】ブレードの折りたたみ機構を示す図5のA部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の無人航空機を詳しく説明する。
【実施例
【0013】
図1は、本発明による無人航空機100のプロペラが回転中の平面図である。無人航空機100は、機体5の周囲に4基のプロペラ6を備える。時計回りで第1プロペラ1、第2プロペラ2、第3プロペラ3、及び第4プロペラ4を備える。プロペラ6は、対角線線方向に水平に配置された第1プロペラシャフト21、第2プロペラシャフト22、第3プロペラシャフト23、及び第4プロペラシャフト24の先端に設けられた縦軸に、水平に回転するように設けられる。プロペラ6の回転範囲は互いにオーバラップして配置される。第1プロペラ1の回転範囲は、左の第4プロペラ4と前の第2プロペラ2とオーバラップしている。第2プロペラ2の回転範囲は、後の第1プロペラ1と左の第3プロペラ3とオーバラップしている。第3プロペラ3の回転範囲は、右の第2プロペラ2と後の第4プロペラ4とオーバラップしている。第4プロペラ4の回転範囲は、前の第3プロペラ3と右の第1プロペラ1とオーバラップしている。プロペラ6は、4基とも同じ高さに配置される。
【0014】
図2は、本発明による無人航空機のプロペラが停止中の平面図である。プロペラ6は、ブレード6a、6aからなる2枚羽根である。プロペラが停止する場合、第1プロペラ1と第3プロペラ3が左右方向を向き、第2プロペラ2と第4プロペラ4が前後方向を向くように停止する。本実施例では、プロペラ6は、エンジンのクランク軸に設けられたクラッチの後側のドライブシャフト12(後述)で回転されるので、必ずしも停止位置は一定ではないが、プロペラ6を手動で回すことにより所定の位置にできる。これに限らず、駆動モーターで所定の位置までドライブシャフト12を回すとしてもよい。プロペラ6は、ぶつからないように、取付け角度が隣接するプロペラ6と90°ずれて取り付けられる。
【0015】
図2に示すように、プロペラ6は、第1プロペラ1と第3プロペラ3が左右方向を向き、第2プロペラ2と第4プロペラ4が前後方向を向くように取り付けられる。本実施例では、第1プロペラ1と第3プロペラ3が右回転、第2プロペラ2と第4プロペラ4が左回転である。第1プロペラ1~第4プロペラ4の回転は、(右回転、左回転、右回転、左回転)と交互になる。このため、プロペラ6がオーバラップする領域で、ブレード6aがぶつからないようにできる。例として、図1では、オーバラップ領域にある左方向を向いた第1プロペラ1のブレード6aが右回転して、後方向に動くと、前方向を向いた第4プロペラ4のブレード6aが、オーバラップ領域に入って来るので、第1プロペラ1のブレード6aと第4プロペラ4のブレード6aがぶつかることはない。
【0016】
図3は、図2のプロペラ6が折りたたまれた状態の平面図である。プロペラ6は、エンジン停止後、図2に示すように、左右方向と前後方向に突出するので、これを折りたたむことで、機体5の全体寸法を小さくできる。ブレード6は斜めにねじれているので、図3では第1プロペラ1のブレード6aと、第2プロペラ2のブレード6aが重なって描かれているが、ぶつかってはいない。プロペラ6の折りたたみは、ブレード6a、6aの根元に設けた折り畳み機構13(後述)で行なっている。
【0017】
図4は、4基のプロペラ6を駆動するメインベベルギア7の平面図である。本実施例では、エンジンは水平エンジンで、クランク軸が垂直方向を向いている。クランク軸にクラッチを介して連結されるドライブシャフト12も垂直方向を向いている。このドライブシャフト12にメインベベルギア7が取り付けられる。メインベベルギア7には、第1サブベベルギア8、第2サブベベルギア9、第3サブベベルギア10、及び第4サブベベルギア11が歯合し、第1プロペラシャフト21、第2プロペラシャフト22、第3プロペラシャフト23、及び第4プロペラシャフト24にエンジンの回転を伝達している。メインベベルギア7が平面視で右回転とすると、第1サブベベルギア8、第2サブベベルギア9、第3サブベベルギア10、及び第4サブベベルギア11は、一方の端面側から見て、いずれも左回転となる。
【0018】
図5は、第1プロペラ1と第3プロペラ3の内部構造図である。どちらも同じ構造を有する。図5に示すように、第1プロペラシャフト21の回転は、2つのベベルギア25、26で逆回転となるように変換されて縦軸30に伝達される。そして縦軸30の回転が、第1プロペラ1のブレード6a、6aに伝達される。第1プロペラシャフト21の一端の第1サブベベルギア8は左回転(図4参照)なので、図5で第1プロペラシャフト21の他端のベベルギア25は左側から見て右回転となり、縦軸30のベベルギア26は下側から見て左回転となる。結果、第1プロペラ1は、平面視(上側から見て)で右回転となる。
【0019】
同様に、図5に示すように、第3プロペラシャフト23の回転は、2つのベベルギア25、26で逆回転に変換されて縦軸30に伝達される。そして縦軸30の回転が、第3プロペラ3のブレード6a、6aに伝達される。第3プロペラシャフト23の一端の第3サブベベルギア10は左回転(図4参照)なので、図5で第3プロペラシャフト23の他端のベベルギア25は左側から見て右回転となり、縦軸30のベベルギア26は下側から見て左回転となる。結果、第3プロペラ3は、平面視(上側から見て)で右回転となる。
【0020】
図6は、第2プロペラ2と第4プロペラ4の内部構造図である。どちらも同じ構造を有する。第2プロペラシャフト22の回転は、2つのベベルギア27、28で順回転に変換されて縦軸30に伝達される。そして縦軸30の回転が第2プロペラ2のブレード6a、6aに伝達される。第2プロペラシャフト22の一端の第2サブベベルギア9は左回転(図4参照)なので、図6で第2プロペラシャフト22の他端のベベルギア27は右回転となり、縦軸30のベベルギア28は下側から見て右回転となる。結果、第2プロペラ2は、平面視(上側から見て)で左回転となる。
【0021】
図6に示すように、第4プロペラシャフト24の回転は、2つのベベルギア27、28で順回転に変換されて縦軸30に伝達される。そして縦軸30の回転が、第4プロペラ4のブレード6a、6aに伝達される。第4プロペラシャフト24の一端の第4サブベベルギア10は左回転(図4参照)なので、図6で第4プロペラシャフト24の他端のベベルギア27は右回転となり、縦軸30のベベルギア28は下側から見て右回転となる。結果、第4プロペラ4は、平面視(上側から見て)で左回転となる。図5図6に示すように、縦軸30は同じ長さなので、第1プロペラ1、第2プロペラ2、第3プロペラ3及び第4プロペラ4は、プロペラシャフトの先端から、同じ高さにある。
【0022】
図7は、ブレード6aの折りたたみ機構13を示す図5のA部詳細図である。A部は図5に示す。図5に示すようにブレード6aの根元には、折りたたみ機構13が設けられる。折りたたみ機構13は、ピン13aと、ピン13aを囲むゴムダンパー13bと、スプリング13cと、ノブ13dと、からなる。手動でノブを引くと、ピン13aとブレード6aとの係合が外れ、回動軸14を中心にしてブレード6aを回動することができる。すなわちブレード6aを水平に90°回動させることができる。なお、ピン13aにゴムダンパー13bを設けたので、ピン13aにかかるプロペラの回転開始時の荷重を緩和できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、プロペラを折りたたみ可能とし、プロペラの回転範囲を隣接するプロペラとオーバラップさせ、プロペラを互いに逆方向に回転させることで、揚力が均一でかつ機体全体の寸法を小さくできる無人航空機として好適である。
【符号の説明】
【0024】
1 第1プロペラ
2 第2プロペラ
3 第3プロペラ
4 第4プロペラ
5 機体
6 プロペラ
6a、6b ブレード
7 メインベベルギア
8 第1サブベベルギア
9 第2サブベベルギア
10 第3サブベベルギア
11 第4サブベベルギア
12 ドライブシャフト
13 折りたたみ機構
13a ピン
13b ゴムダンパー
13c スプリング
13d ノブ
14 回動軸
15 プロペラホルダー
21 第1プロペラシャフト
22 第2プロペラシャフト
23 第3プロペラシャフト
24 第4プロペラシャフト
25、26 ベベルギア
27、28 ベベルギア
30 縦軸
100 無人航空機
【要約】
【課題】揚力が均一で機体全体の寸法を小さくできる無人航空機を提供する。
【解決手段】本発明による無人航空機は、機体から対角線方向に水平に突き出る4本のプロペラシャフトと、折りたたみ機構を有する2枚のブレードからなる4基のプロペラを備え、エンジンの回転がギアでプロペラに伝達される無人航空機であって、プロペラは、いずれも前記プロペラシャフトの先端から同じ高さにあって、隣接するプロペラと回転範囲がオーバラップし、取付け角度が隣接するプロペラと90°ずれており、回転方向が隣接するプロペラと互いに逆であることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7