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▶ アイエスエー ファーマシューティカルズ ビー.ヴイ.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ペプチドワクチン製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20220802BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220802BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220802BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220802BHJP
   A61J 1/20 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61K38/02
A61K39/12 ZNA
A61K39/39
A61P31/12
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/34
A61K9/107
A61J1/20 314C
A61K39/00
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019518137
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2017064882
(87)【国際公開番号】W WO2017220463
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】16175215.9
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514084004
【氏名又は名称】アイエスエー ファーマシューティカルズ ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】ISA Pharmaceuticals B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ミュルデル, グウェン エフェリーネ
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507484(JP,A)
【文献】特表2010-530362(JP,A)
【文献】Anti-cancer Drugs, 1999, Vol.10, pp.879-887
【文献】LUWEI ZHAO,STABILIZATION OF EPTIFIBATIDE BY COSOLVENTS,INTERNATIONAL JOURNAL OF PHARMACEUTICS,2001年05月,VOL:218, NR:1-2,PAGE(S):43 - 56,http://dx.doi.org/10.1016/S0378-5173(01)00618-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00 - 38/58
A61K 47/00 - 47/69
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥されたペプチドを再構築するための組成物であって、
0~80%v/vの、0.05~0.25M濃度の有機酸を含む水溶液と、5~10%v/vのプロピレングリコール(CAS番号57-55-6)と、10~20%v/vの低級アルコールと、5~10%v/vの非イオン性親水性界面活性剤と、を含むか、又はこれらからなる組成物であり、
前記有機酸が、1~4のpKaを有する有機酸であり、
前記低級アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びペンタノールからなる群より選択され、
前記非イオン性親水性界面活性剤が、
a.モノグリセリド、ジグリセリド若しくはトリグリセリドであるか、及び/又は
b.9~14のHLB値を有するものである、組成物。
【請求項2】
前記有機酸がクエン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機酸が0.05~0.1Mの濃度で水溶液中に存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記低級アルコールがエタノールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記非イオン性親水性界面活性剤が、エトキシル化ヒマシ油又はエトキシル化トリグリセリドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記非イオン性親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35(CAS番号61791-12-6)である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
75%v/vの、0.1M濃度のクエン酸を含む水溶液と、6.25%v/vのプロピレングリコール(CAS番号57-55-6)と、12.5%v/vのエタノールと、6.25%v/vのポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35(CAS番号61791-12-6)と、を含むか、又はこれらからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物と、ペプチドとを含む、医薬組成物。
【請求項9】
前記ペプチドが、15~100アミノ酸長のペプチドである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
油性アジュバントをさらに含む、請求項8又は9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
少なくとも3つの異なるペプチドを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ペプチドが、少なくとも1つのタンパク質抗原に由来する、請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
以下の特性の両方を満たすペプチドを含まない、請求項8~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
a.塩基性アミノ酸残基のパーセンテージが酸性アミノ酸残基のパーセンテージと等しい。
b.疎水性アミノ酸残基のパーセンテージが48%以上である。
【請求項14】
前記ペプチドが、HPV免疫原性領域E6及び/又はE7内の連続配列を含むか、又は該連続配列からなる、請求項8~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記ペプチドが、配列番号20~104によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択される連続アミノ酸配列を含むエピトープを含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ペプチドが、配列番号1~5から選択される配列を含むか若しくは該配列からなるペプチドの少なくとも2、3、4若しくは5個;配列番号1~6によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択される連続アミノ酸配列を含むか若しくは該配列からなるペプチドの少なくとも2、3、4、5若しくは6個;又は配列番号7~13によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択される連続アミノ酸配列を含むか若しくは該配列からなるペプチドの少なくとも2、3、4、5、6若しくは7個を有するペプチドのミックスである、請求項8~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
40~60%v/vの、1~2mg/mLのペプチドを含む再構築組成物と40~60%v/vのモンタニドISA51VGとを含むか又はこれらからなり、
前記ペプチドが、配列番号1~5、配列番号1~6又は配列番号7~13によって表される異なるペプチドの混合物である、請求項8~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記ペプチドが、配列番号1~5によって表される5つの異なるペプチドの混合物又は配列番号7~13によって表される7つの異なるペプチドの混合物からなる、請求項8~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記ペプチドが、
a.配列番号109~146からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又は該配列からなる、
b.配列番号148~167によって定義されるアミノ酸配列からなる群から選択されるペプチドを含むか若しくは該ペプチドからなるか、又は配列番号148~167から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個の異なるペプチドのミックスである、
c.配列番号168~169から選択されるThエピトープを含む、
d.配列番号191~211によって定義されるアミノ酸配列からなる群から選択されるペプチドを含むか若しくは該ペプチドからなり、又は配列番号191~211から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20若しくは21個の異なるペプチドのミックスである、或いは、
e.配列番号213~232によって定義されるアミノ酸配列からなる群から選択されるペプチドを含むか若しくは該ペプチドからなり、又は配列番号213~232から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個の異なるペプチドのミックスである、
請求項8~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
薬剤として使用するための、請求項8~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記薬剤が、前記ペプチドの少なくとも1つのエピトープに対してT細胞応答を誘導するためのワクチンである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
乾燥されたペプチドを再構築するための方法であって、
a)乾燥されたペプチドを含むバイアルを用意するステップと、
b)前記ペプチドを解凍するステップと、
c)請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を、前記ペプチドを含む前記バイアルに添加するステップと、
d)混合するステップと、
e)透明溶液が得られるまで渦流するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
医薬組成物を調製するための方法であって、
(i)請求項22に記載の方法によって得ることができる再構築されたペプチドを、第1のシリンジに収集するステップと、
(ii)ステップ(i)の前記第1のシリンジを、油性アジュバントを含む第2のシリンジに、コネクタを使用して接続するステップと、
(iii)前記第1のシリンジの内容物を、前記第2のシリンジへ押し出し、そして逆方向に押し出すステップと、
(iv)ステップ(iii)を合計で10~50回、10~50秒で、繰り返すステップと、
を含む、方法。
【請求項24】
乾燥されたペプチドを含む第1のバイアルと、
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を含む第2のバイアルと、を備えるキット。
【請求項25】
油性アジュバントを含む第3のバイアル更に備える、請求項24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、医学及び免疫学の分野にある。本発明は、特に、ワクチン接種用のペプチドを再構築するための新規組成物に関する。この組成物は、特に、油性アジュバントをさらに含む、薬学的なペプチドベースのワクチンを調製するために適切である。
【0002】
[発明の背景]
臨床結果は、治療的ワクチン接種の成功の時代が到来したことを示している。HPVによって引き起こされる前悪性病変について、病変の退縮が示され、長期生存の臨床的有用性が確立されている。最適なワクチンプラットフォームの中には、合成長鎖ペプチドに基づくワクチンがある。ペプチドワクチン又はペプチドベースのワクチンが、持続的感染及び癌の処置のために、好ましくはウイルス抗原、癌抗原及び/又はネオ抗原を発現する細胞を取り除くための免疫系を標的とする処置のために開発されている。有効な細胞免疫応答(CD4及びCD8T細胞応答)を誘発することができるペプチドベースのワクチンが、抗原発現細胞を取り除くことができる抗原特異的細胞障害性T細胞を標的とすることは当技術分野で理解されている。一般的に選択される抗原には、変異配列、選択された癌精巣抗原及びウイルス抗原が含まれる(総説について、Melief et al., 2016 Journal of Clinical Investigation, Vol 125(9)pages 3401-3412を参照)。
【0003】
ペプチドベースのワクチンの難題の1つは、物理的に及び化学的に安定な注射溶液を提供することである。このことは特に、複数のペプチドと油性アジュバントとを含むペプチドベースのワクチンエマルジョンについて難題である。注射ワクチン溶液は、典型的には、患者への投与の約1~3時間前に、乾燥された、多くは凍結乾燥されたペプチドを出発材料として使用して、現場で調製される。したがって、乾燥されたペプチドを迅速に再構築することができる適切な再構築組成物であって、そのペプチドがその後、油性アジュバントと容易に混合され、患者に投与される前に室温で少なくとも2~3時間保存するために物理的及び化学的に安定であるエマルジョンを生じることが可能な再構築組成物が必要とされている。
【0004】
[発明の詳細な説明]
再構築組成物
ワクチン接種用のペプチドを再構築するための新規組成物が提供される。この再構築組成物は、有機酸を含む約60~80%v/vの水溶液と、約5~10%v/vのプロピレングリコール(CAS番号57-55-6)と、約10~20%v/vの低級アルコールと、約5~10%v/vの非イオン性親水性界面活性剤とを含むか、又はこれらからなる。
【0005】
有機酸は、カルボン酸などの弱有機酸であることが好ましい。弱有機酸は、-2~12のpK(対数酸解離定数)を有する有機酸として本明細書で理解される。弱有機酸は、1~10、又は2~5、さらには3~4のpKを有することが好ましい。弱有機酸は、限定されないが、シュウ酸(エタン二酸)、クエン酸(2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン二酸)、炭酸(ヒドロキシメタン酸)、安息香酸(ベンゼンカルボン酸又はフェニルメタン酸)、ギ酸(メタン酸)、乳酸(2-ヒドロキシプロパン酸)、酢酸(エタン酸)、酪酸(ブタン酸)、吉草酸(ペンタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、プロピオン酸(プロパン酸)からなる群から選択される任意のカルボン酸であり得る。有機酸は、クエン酸であることが最も好ましい。
【0006】
有機酸は、約0.008~0.25M、又は約0.01~0.2M、又は0.05~0.1Mの濃度で水溶液中に存在し得る。上記水溶液を60~80%、又は65~75%、又は67~72%、又は約70%含む本発明の再構築組成物は、好ましくは、上記有機酸の得られる濃度が0.05~0.2M、0.006~0.16M、0.008~0.12M、0.03~0.08M、又は好ましくは0.04~0.6Mの範囲である。
【0007】
低級アルコールは、低級アルキル又は低級置換アルキル基の飽和炭素原子に結合されたヒドロキシル官能基を有する有機化合物として本明細書で理解され、ここで低級アルキル又は低級置換アルキル基は最大で6個の炭素原子を有するものであり、好ましくはCH-(CH-OH(式中、n=1、2、3、4又は5)の構造を有する。低級アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びペンタノールからなる群から選択されることが好ましく、低級アルコールがエタノールであることが最も好ましい。
【0008】
非イオン性親水性界面活性剤は、親水性-親油性バランス(HLB)値が9~14であることが好ましく、12~14であることがより好ましい。この界面活性剤は、ソルビタンのエトキシル化脂肪酸モノ(特に、5エトキシル基)、ジ-又はトリ-(特に、20エトキシル基)エステル(脂肪酸は、オレエート(例えば、エトキシル化ソルビタンモノオレエート、例えばツイーン(Tween)81(登録商標)及び/又はエトキシル化ソルビタントリオレエート、例えばツイーン85(登録商標))、パルミテート、ステアレート(例えば、エトキシル化ソルビタントリステアレート、例えばツイーン65(登録商標))、イソステアレート、ラウレート及びそれらの組合せ;エトキシル化脂肪アルコール(特に5~10エトキシル基)(例えば、ブリッジ(Brij)76(登録商標)、ブリッジ56(登録商標)、ブリッジ96(登録商標))、エトキシル化脂肪酸(特に5~10エトキシル基)(例えば、シムルゾル(Simulsol)2599(登録商標)、Myrj45(登録商標))、エトキシル化ヒマシ油(特に、25~35エトキシル基)(例えば、アルラトーン(Arlatone)650(登録商標)、アルラトーンG(登録商標)、クレモフォール(Cremophor)EL(登録商標))及びそれらの組合せであり得るが、それらに限定されない。
【0009】
本発明の組成物の一実施形態では、非イオン性親水性界面活性剤は、
a.モノ-、ジ-若しくはトリグリセリド、好ましくは、エトキシル化トリグリセリドである、及び/又は
b.9~14の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する。
【0010】
HLB値は、式HLB=20(1-I/I)を使用して計算され、式中、Iは、上記界面活性剤又は界面活性剤の混合物のけん化インデックス又はけん化価を表し、Iは、上記界面活性剤又は界面活性剤の上記混合物の酸インデックス又は酸価を表す。これらの2つのインデックス、けん化価及び酸価は、欧州薬局方(第8.8版、それぞれ第2.5.6章及び第2.5.1章)に記載された方法によって決定される。
【0011】
好ましい実施形態では、非イオン性親水性界面活性剤は、エトキシル化ヒマシ油、より特には、ポリオキシル35硬化ヒマシ油、又はヒマシ油を酸化エチレンと1:35のモル比で反応させることによって得られるポリオキシエチル化トリグリセリドの混合物であるポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35(CAS番号61791-12-6)(例えばクレモフォールEL(登録商標))である。
【0012】
本発明の再構築組成物は、約0.1Mのクエン酸を水中に含む約75%v/vの水溶液と、約6.25%v/vのプロピレングリコール(CAS番号57-55-6)と、約12.5%v/vのエタノールと、約6.25%v/vのポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35(CAS番号61791-12-6)とを含むか、又はこれらからなることが好ましい。別言すると、再構築組成物は、水中に、約0.075Mのクエン酸と、約6.25%v/vのプロピレングリコール(CAS番号57-55-6)と、約12.5%v/vのエタノールと、約6.25%v/vのポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35(CAS番号61791-12-6)とを含むか、又はこれらからなる。
【0013】
約0.1Mのクエン酸を水中に含む約75%v/vの水溶液と、約6.25%v/vのプロピレングリコール(CAS番号57-55-6)と、約12.5%v/vのエタノールと、約6.25%v/vのポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35(CAS番号61791-12-6)と、20μg/mLのCpG ODN1826とを含むか、又はこれらからなる再構築組成物、或いは、水中に、約0.075Mのクエン酸と、約6.25%v/vのプロピレングリコール(CAS番号57-55-6)と、約12.5%v/vのエタノールと、約6.25%v/vのポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35(CAS番号61791-12-6)と、20μg/mLのCpG ODN1826とを含むか、又はこれらからなる再構築組成物も好ましい。
【0014】
再構築組成物は、下記の医薬組成物において、本明細書で定義される保存されたペプチド、つまり、好ましくは15~100のアミノ酸長を有する保存されたペプチドを再構築するために特に適している。上記で定義された長さのペプチドの再構築の場合に安定な溶液を形成することが難しいことは、当技術分野で理解されており、特に異なるペプチド、つまり異なるアミノ酸配列を有するペプチドであり、したがって様々な化学的特性を有し、物理的に異なる挙動をする場合、それが難しいことが理解されている。結果的に、1つの同じ溶液中でそれらを再構築することは困難である。その上、これらのペプチドのうちの1つ又は複数がシステインを含む場合に、SS架橋を形成する傾向に対処することが必要となる。分子内ジスルフィド結合は、免疫原性とするためにワクチンペプチドで必要な場合はあるものの、分子間ジスルフィド架橋の形成は、不安定な溶液に至ることから望ましくない。
【0015】
本発明者らは、次に,再構築されたペプチドの免疫原性を損なうことなく、分子間ジスルフィド架橋の量が最少化された、非常に安定な再構築ペプチド組成物を形成するために、本発明の再構築組成物が特に適していることを同定した。したがって、本発明の再構築組成物は、本明細書でさらに定義される再構築されるペプチドの分子間ジスルフィド形成を、これらのペプチドの免疫原性を損なうことなく、抑制する。
【0016】
本発明の再構築組成物は、対象、つまり哺乳動物種又はヒトへの非経口投与のために適切な滅菌及び/又は医薬等級又は臨床等級の組成物であることが好ましい。本発明の再構築組成物は、適正製造基準(GMP)を使用して製造され、欧州医薬品庁及び食品医薬品局の両方で定義されるようにGMP品質を有することが好ましい。本発明の再構築組成物は、バイアル中にパッケージされていてもよい。また本発明は、本明細書でさらに定義される一回医薬投薬単位又は複数回医薬投薬単位を再構築するために適切な再構築組成物の体積、つまり2、3、4、5、6、7、8、9、10又はより多くの医薬投薬単位を再構築するために適切な体積を含むバイアルを提供する。上記バイアルは、再構築組成物が、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、又は1年、さらには2年安定である温度で保存することが好ましい。上記温度は、-25~25℃、又は-23~-18℃、又は0~10℃、又は2~8℃、又は18~23℃であることが好ましい。
【0017】
バイアル中に存在する本発明の再構築組成物の体積は、最大で50mL、好ましくは0.1~10mL、好ましくは1~10mL、例えば0.5、1、2、3、4、5若しくは10mL又はその間の任意の値であることが好ましい。バイアルは、任意の形状を有し得る容器として本明細書で理解される。任意選択で、バイアルは、シリンジとして本明細書で理解される。
【0018】
医薬組成物
本発明の再構築組成物は、薬剤又は医薬組成物の調製のためにペプチドを再構築するために特に適している。そのような医薬組成物は、ワクチン、好ましくはペプチドワクチンであり得る。「ワクチン」は、持続的感染及び/又は異形成及び/又は形成異常及び/又は新生物に関連する状態などの疾患の予防及び/又は処置のための免疫を生成するための、抗原性化合物を含む組成物、任意選択でさらに免疫刺激化合物で補完された組成物として、本明細書で理解される。「ペプチドベースのワクチン」又は「ペプチドワクチン」(これらの用語は本明細書で互換的に使用される)は、ペプチドが、有効成分、つまり抗原性化合物を構成しているワクチンとして本明細書で理解される。そのようなペプチドは、合成長鎖ペプチドであることが好ましい。CD4+及び/又はCD8+T細胞応答を誘導することができるヒト白血球抗原(HLA)エピトープを含むことがより好ましい。
【0019】
そのように、本発明の再構築組成物で再構築されたペプチドを含む医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物は、ワクチン、好ましくはペプチドベースのワクチンであることが好ましい。そのようなペプチドベースのワクチンは、持続的感染、前癌性状態及び癌を処置するため、好ましくは、ウイルス抗原、腫瘍関連抗原、癌精巣抗原及び/又は腫瘍特異的抗原など、発癌性若しくは非発癌性ウイルス抗原及び/又はDNA変異から生じるネオ抗原などを発現する感染細胞、前癌性細胞及び/又は癌細胞を取り除くために細胞性免疫系を活性化するために使用され得る。
【0020】
医薬組成物は、対象、好ましくはヒト又は動物対象への投与用であることが好ましく、したがって、それに適切であるように製剤化されることが好ましい。投与は、非経口投与、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、真皮内、皮内、及び/又は腫瘍内投与、つまり注射による投与であることが好ましい。
【0021】
本発明者らは、再構築されたペプチドを含む再構築組成物が、油性アジュバントと混合するために特に適しており、化学的及び物理的に安定なペプチド-ワクチン溶液が得られることを見い出した。
【0022】
「化学的に安定」とは、ペプチド溶液及び/又はペプチド-ワクチン組成物の文脈において本明細書で参照され、許容されない程度まで、例えば分子内又は分子間ジスルフィド架橋の形成による、化学的な劣化又は分解がない、つまり、溶液及び/又は組成物中の劣化、分解及び/又は反応していないペプチドの量が、室温で少なくとも約0.5、1、1.5、2又は少なくとも3時間、溶液又は組成物を保存した後に、その元の量と比較して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらには100%である、ペプチドを含む溶液又は組成物として本明細書で理解される。化学的安定性は、当技術分野で公知の任意の適切な技術を使用して、例えば、本明細書で例示されるようなUPLC/MSを使用して、評価することができる。UPLC/MSを使用するとき、溶液/組成物は、室温で少なくとも約0.5、1、1.5、2又は少なくとも3時間保存した後に現れる新たなピークの総面積%が、同じ条件下で測定するとき、その元の溶液と比較して最大で20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又は0%である場合に、化学的に安定であるとして定義される。ここで新たなピークは、同じ条件下で測定するときの、元の溶液のUPLCクロマトグラムでは同定されていなかった、保存溶液のUPLCクロマトグラムのピークと理解される(本明細書では、「元の溶液」は、調製直後の新たに調製された溶液として理解される)。室温で3時間保存後に現れる新たなピークの総面積%は、同じ条件下で測定するときの、その元の溶液と比較して、最大で20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又は0%、好ましくは最大で10%、であることが好ましい。
【0023】
「物理的に安定」は、ペプチド溶液及び/又はペプチド-ワクチン組成物の文脈において本明細書で参照され、沈殿又は再分散しないペプチドを含む溶液又は組成物として本明細書で理解される。物理的安定性は、当技術分野で公知の任意の適切な技術を使用して、例えば、目視検査によって、又は本明細書で例示されるようなマルバーン・マスターサイザー(Malvern Mastersizer)を使用して、平均粒径がD(0.5)で表される、粒度分布によって、評価することができる。本明細書で例示されるように、マルバーン・マスターサイザーを使用して物理的安定性を評価するとき、溶液/組成物は、室温で少なくとも約0.5、1、1.5、2又は少なくとも3時間保存後の平均D(0.5)が、その元の溶液(つまり、調製直後の新たに調製された溶液)と比較して、増加が最大で50%、40%、30%、20%、10%又は5%である場合に、物理的に安定であるとして定義される。溶液/組成物は、室温で3時間保存後の平均D(0.5)が、その元の溶液と比較して、増加が最大で50%、40%、30%、20%、10%又は5%、好ましくは最大で20%である場合に、物理的に安定であるとして定義されることが好ましい。
【0024】
本発明の医薬組成物は、アジュバントをさらに含むことが好ましい。「アジュバント」という用語は、免疫増強作用を有し、対象に投与されたときに抗原性物質に対して免疫学的応答を強化、誘導、誘発及び/又は調節するために抗原性物質に添加され又は共に製剤化される物質を指すために本明細書で使用される。油性アジュバントは、エマルジョン(例えば、油中水型又は水中油型エマルジョン)を形成するために使用することができ、免疫応答を増強及び指示することが当技術分野で理解されている。治療ワクチン中にそのようなアジュバントが存在することは非常に有益である。したがって、本発明はまた、本発明の再構築組成物と、再構築されたペプチドと、油性アジュバントとを含むか、又はこれらからなる医薬組成物又は薬剤を提供し、より特に、本発明は、約40~60%v/vの本発明の再構築組成物中の約0.5~10mg/mLペプチドと約40~60%v/vの油性アジュバントとを含む医薬組成物を提供する。
【0025】
油性アジュバントは、当技術分野で公知の任意の鉱油性又は非鉱油性アジュバントであり得る。油性アジュバントは、鉱油性アジュバントであることが好ましい。油性アジュバントの非限定的な例としては、生物系油のアジュバント(植物油/魚油等に基づくもの)、スクアレン系アジュバント(例えば、MF59)、Syntexアジュバント製剤(SAF;Lidgate, Deborah M, Preparation of The Syntex Adjuvant Formulation(SAF、SAF-m及びSAF-1)、In: Vaccine Adjuvants, Volume 42 of The series Methods in MolecularMedicine(商標)p229-237, ISSN1543-1894)、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、落花生油に基づくアジュバント(例えば、アジュバント65)、リポバント(Lipovant)(Byars, N.E., Allison, A.C., 1990. Immunologic adjuvants: generalproperties, advantages, and limitations. In: Zola, H.(Ed.), Laboratory Methodsin Immunology. p39-51)、ASO4(A. Tagliabue, R. RappuoliVaccine adjuvants: the dream becomes real Hum. Vaccine, 4(5), 2008, p347-349)、高度に精製されたマンニッドモノオレエートと乳化された精製スクアレン及びスクアレンに基づくモンタニド(Montanide)アジュバント(例えば、モンタニドISA25VG、28VG、35VG、50V、50V2、51VG、61VG、70VG、70MVG、71VG、720VG、760VG、763AVG、775VG、780VG、201VG、206VG、207VG)が挙げられる。油性アジュバントは、鉱油性アジュバントであることが好ましい。油性アジュバントは、Drakeol VRとマンニッドモノオレエートとの混合物であるモンタニドISA51VG(Seppic)であることが、より好ましい。
【0026】
医薬組成物は、医薬投薬単位を構成するペプチドの量を含むか、又はこれらからなることが好ましい。医薬投薬単位は、所与の時間点で対象に適用される有効成分の量(つまり、ペプチドベースのワクチンにおけるペプチドの総量)として本明細書で定義される。医薬投薬単位は、一回体積、つまりシングルショットで対象に適用されてもよく、又は、好ましくは身体の異なる位置、例えば左右の手足に適用される2、3、4、5又はより多くの別個の体積又はショットで、対象に適用されてもよい。一回の医薬投薬単位を別個の体積で適用する理由は、複数ある場合があり、例えば、負の副作用の回避、抗原の競合の回避、及び/又は組成物の分析上の考慮などがある。別個の体積の医薬投薬は、組成が異なってもよく、つまり、異なる種類又は組成の有効成分及び/又はアジュバントを含んでもよいことが、本明細書で理解されるべきである。本発明の利点の1つは、本発明の再構築組成物が、異なるペプチド混合物の再構築及びそれに続く油性アジュバントを使用した乳化に適しているということであるので、全医薬投薬単位内の全ての有効成分(抗原性ペプチド)について、単一の再構築組成物が使用されると理解されるべきである。単一の再構築組成物、及び好ましくは単一の油性アジュバントは、再構築及び乳化の人為的失敗の可能性を最少化する。
【0027】
合計医薬投薬量又は実質的に同じ時間点で適用される複数のショットの場合はその一部の量を含んでいる一回の注射の体積又はショット(つまり、ある時間点で1箇所に適用される体積)は、100μL~2mL又は100μL~1mLであり得る。一回注射体積は、100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1mL、1.1mL、1.2mL、1.3mL、1.4mL、1.5mL、1.6mL、1.7mL、1.8mL、1.9mL、2mL、3mL又はその間の任意の値であり得る。
【0028】
医薬投薬単位は、有効量又は有効量の一部であり得る。「有効量」は、疾患(例えば、慢性感染、前癌性状態及び/又は癌)の症状を、未処置の患者と比較して予防及び/又は減少するために必要な有効成分の量又は用量として本明細書で理解される。疾患又は状態の予防及び/又は治療的処置のために本発明を実施するために使用される活性化合物(複数可)の有効量は、投与様式、対象の年齢、体重、及び全体的健康状態に応じて変動する。最終的には、担当の医師又は獣医師が、適切な量及び投与計画を決定する。そのような量は「有効」量と呼ばれる。この有効量は、処置される対象に有効な細胞性T細胞応答、より好ましくは有効な全身性細胞性T細胞応答を誘導することができる量であり得る。
【0029】
所与の時間点で対象に適用される医薬投薬単位又はペプチドの総量は、一回又は特定の時間点での複数回の注射のいずれかで、0.1μg~20mgの範囲のペプチドの量、例えば、約0.1μg、0.5μg、1μg、5μg、10μg、15μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mg、15mg若しくは約20mg、又はその間の任意の量のペプチドを含むことが好ましい。医薬投薬単位の好ましい範囲は、0.1μg~20mg、1μg~10mg、10μg~5mg、0.5mg~2mg、0.5mg~10mg、又は1mg~5mg又は2~4mgである。
【0030】
医薬組成物は、約1~2mg/mLのペプチドを含む約40~60%v/vの上記で定義された再構築組成物と、約40~60%v/vの油性アジュバントとを含むか、又はこれらからなることが好ましい。医薬組成物は、約40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、56%、57%、58%、59%又は60%v/vの油性アジュバントを含み得るか又は油性アジュバントからなり得る。医薬組成物は、約1~2mg/mLのペプチドを含む約50%v/vの上記で定義された再構築組成物中と、約50%v/vの油性アジュバント、好ましくはモンタニドISA51VG(Seppic)とを含むか、又はこれらからなることが好ましい。別言すると、医薬組成物は、水中に、約1~2mg/mLのペプチドと、0.038Mのクエン酸と、約3.13%v/vのプロピレングリコール(CAS番号57-55-6)と、約6.25%v/vのエタノールと、約3.13%v/vのポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35(CAS番号61791-12-6)と、約50%の油性アジュバント、好ましくはモンタニドISA51VG(Seppic)とを含むか、又はこれらからなることが好ましい。
【0031】
本発明の医薬組成物は、1つ又は複数のさらなる免疫応答刺激化合物又はアジュバントを含んでもよい。本発明による薬剤は、1つ又は複数の合成アジュバントを追加的に含み得ることが有利である。そのようなさらなる免疫応答刺激化合物又はアジュバントは、(i)ペプチドの再構築、及び任意選択で上記に定義される油性アジュバントとの乳化後に、本発明による医薬組成物と混合されてもよく、(ii)上記で定義される本発明の再構築組成物の一部であってもよく、(iii)再構築されるペプチド(複数可)と物理的に結合していてもよく、又は(iv)処置される対象、哺乳動物若しくはヒトに、別個に投与されてもよい。本明細書において、免疫応答刺激化合物は、本発明による薬剤と混合されるときはアジュバントとして示され、別個に投与されるときは、免疫調節剤又は免疫調節因子という本明細書で互換的に使用される用語で示されると解釈されるべきである。Toll様受容体を介して作用する、及び/又はRIG-I(レチノイン酸誘導性遺伝子1)タンパク質を介して作用する、及び/又はエンドセリン受容体を介して作用することが既知のアジュバントが特に好ましい。先天性免疫系を活性化することが可能な免疫修飾化合物は、TLR1~10を含むToll様受容体(TLR)を介して特に良く活性化することができる。TLR受容体を活性化することができる化合物並びにその修飾体及び誘導体は、当技術分野において文書でよく示されている。TLR1は、細菌リポタンパク質及びそのアセチル化形態によって活性化することができ、TLR2は、加えて、グラム陽性細菌の糖脂質LPS、LPA、LTA、線毛、外膜タンパク質、細菌又は宿主由来の熱ショックタンパク質、及びマイコバクテリアのリポアラビノマンナンによって活性化することができる。TLR3は、dsRNA、特にウイルス起源のdsRNAによって、又は、化合物ポリ(I:C)によって活性化することができる。TLR4は、グラム陰性LPS、LTA、宿主又は細菌起源の熱ショックタンパク質、ウイルスコート又はエンベロープタンパク質、タキソール又はその誘導体、ヒアルロナン含有オリゴ糖及びフィブロネクチンによって活性化することができる。TLR5は、細菌の鞭毛又はフラジェリンで活性化することができる。TLR6は、マイコバクテリアリポタンパク質及びB群連鎖球菌熱不安定可溶性因子(GBS-F)又はブドウ球菌モジュリンによって活性化することができる。TLR7は、イミキモド、レシキモド、及びイミキモド若しくはレシキモドの誘導体(例えば、3M-052)などのイミダゾキノリンによって活性化することができる。TLR9は、非メチル化CpG DNA又はクロマチン-IgG複合体によって活性化することができる。特に、TLR3、TLR7及びTLR9は、ウイルス感染に対する先天性免疫応答の媒介において重要な役割を果たし、これらの受容体を活性化することができる化合物は、本発明の組成物又は医薬において特に好ましい。特に好ましいアジュバントには、dsRNA、ポリ(I:C)、ポリI:CLC、TLR3及びTLR9受容体を誘発する非メチル化CpG DNA、IC31、TLR9アゴニスト、IMSAVAC、TLR4アゴニスト、モンタニドISA-51、モンタニドISA720(Seppic(フランス)製のアジュバント)を含むがこれらに限定されない、合成により製造された化合物が挙げられる。RIG-Iタンパク質は、TLR3のように、ds-RNAによって活性化されることが公知である(Kato et al., (2005) Immunity, 1: 19-28)。特に好ましいTLRリガンドは、pam3cys及び/又はその誘導体、好ましくはpam3cysリポペプチド又はそのバリアント若しくは誘導体、好ましくは、例えば、国際公開第2013/051936号に記載されているもの、より好ましくはU-Pam12又はU-Pam14又はAMPLIVANT(登録商標)である。さらに好ましいアジュバントは、環状ジヌクレオチド(CDN)、ムラミルジペプチド(MDP)及びポリ-ICLCである。好ましい実施形態では、本発明のアジュバントは、非天然アジュバント、例えば、国際公開第2013/051936号に記載されるpam3cysリポペプチド誘導体、ポリ-ICLC、イミキモド、レシキモド又はその誘導体などのイミダゾキノリン、非天然配列を有するCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)、及びムラミルジペプチド(MDP)又は非天然アミノ酸を含む破傷風トキソイドペプチドなどのペプチドベースのアジュバントである。アジュバントは、1018ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イムファクト(ImuFact)EV1P321、ISパッチ(IS Patch)、ISS、イスコマトリックス(ISCOMATRIX)、ジュヴイミューン(JuvImmune)、リポバック(LipoVac)、MF59、モノホスホリル脂質A、モンタニドIMS1312、モンタニドISA206、モンタニドISA50V、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクター系、PLGA微粒子、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、Pam3Cys-GDPKHPKSF、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、AquilaのQS21スティミュロン(stimulon)、バディメザン(vadimezan)、AsA404(DMXAA)、STING(IFN遺伝子の刺激因子)アゴニスト(例えば、c-ジ-GMP VacciGrade(商標))、PCI、NKT(ナチュラルキラーT細胞)アゴニスト(例えば、α-ガラクトシルセラミド又はα-GalCer、RNAdjuvant(登録商標)(Curevac)、レチノイン酸誘導タンパク質Iリガンド(例えば、3pRNA又は5’-三リン酸RNA)からなる群から選択されることがさらに好ましい。
【0032】
上記のように、アジュバントは、再構築されるペプチド(複数可)に物理的に結合していてもよい。アジュバントと共刺激化合物又は本明細書で下記に定義する抗原性ペプチドに対する官能基との物理的結合は、抗原を内在化、代謝及び提示する抗原提示細胞、特に樹状細胞への標的化を改善することによって、またそのような細胞を同時に刺激して様々な共刺激分子の発現を上方制御し、それにより細胞を誘導及び増強する効率的なT細胞応答とすることによって、増強された免疫応答を提供する。別の好ましい免疫修飾化合物は、エンドセリン受容体の阻害剤、例えばBQ-788(Buckanovich RJ et al., (2008) Nature Medicine 14:28; Ishikawa K, (1994)PNAS 91: 4892)及び/又はその誘導体である。BQ-788は、N-cis-2,6-ジメチルピペリジノカルボニル-L-γ-メチルロイシル-D-1-メトキシカルボニルトリプトファニル-D-ノルロイシンである。別の好ましい免疫応答刺激化合物又はアジュバントは、インターフェロンα(IFNα)、より好ましくはペグ化インターフェロンαである。さらに、国際公開第99/61065号及び国際公開第03/084999号に示されるような抗原提示細胞(共)刺激分子を本発明のペプチド及び組成物と組み合わせて使用することが好ましい。特に、4-1BB及び/又はCD40リガンド、アゴニスト抗体、OX40リガンド、CD27リガンド又はそれらの機能的フラグメント及び誘導体並びに同様のアゴニスト活性を有する合成化合物の使用が、対象における最適な免疫応答のマウンティングをさらに刺激するために、本発明のペプチドと別個に又は組み合わせて、処置される対象に、好ましく投与される。
【0033】
本発明の再構築組成物で再構築されるペプチド及び/又は本発明の医薬組成物内に含まれるペプチドは、約15~約100個のアミノ酸の長さを有することが好ましい。再構築されるペプチドは、15~100アミノ酸長、又は15~95アミノ酸長、15~90アミノ酸長、15~85アミノ酸長、15~70アミノ酸長、15~65アミノ酸長、15~60アミノ酸長、15~55アミノ酸長、15~50アミノ酸長、15~45アミノ酸長、15~40アミノ酸長、17~39アミノ酸長、19~43アミノ酸長、22~40アミノ酸長、22~45アミノ酸長、又は28~40アミノ酸長、若しくは30~39アミノ酸長であることが好ましい。再構築されるペプチドは、最大で100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、又は30アミノ酸であることが好ましい。再構築されるペプチドは、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45個のアミノ酸であることが好ましい。再構築されるペプチドは、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45個のアミノ酸で且つ100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、又は30アミノ酸以下であり、又はこれらの下限及び上限の任意の組合せであることが好ましい。
【0034】
本発明の再構築組成物で再構築されるペプチド及び/又は本発明の医薬組成物内に含まれるペプチドは、タンパク質抗原由来のペプチドであり得る。「タンパク質抗原」は、宿主の動物又はヒトで免疫応答を誘導することができる抗原領域を含むタンパク質又はポリペプチドとして本明細書で理解される。感染細胞、前癌性細胞及び/又は癌細胞によって特異的に発現されるタンパク質抗原は、治療用ワクチンの適切な標的である。そのようなタンパク質抗原は、ウイルス又は非ウイルス抗原であってもよい。予防的及び治療的ワクチンのための標的であるウイルス抗原の例は、エプスタイン・バー(Epstein Bar)ウイルス誘導リンパ腫のウイルス(EBV)、ヒトTリンパ球向性ウイルスI、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)、C型肝炎ウイルス(HVC)、KSV及びメルケル細胞癌ウイルス由来の抗原である。ウイルスタンパク質抗原の非限定的な例は、EBV由来のタンパク質抗原、例えば、LMP1又は後期膜タンパク質1(例えば、UniProtKB P03230)及びLMP2又は後期膜タンパク質2(例えば、UniProtKB P13285);ヒトTリンパ球向性ウイルスI由来のタンパク質抗原、例えば、Taxタンパク質(例えば、UniProtKB P14079;P0C213;P03409);HBV、例えば、遺伝子型A、B、C又はD由来のタンパク質抗原、例えば、タンパク質HBsAg(例えば、UniProtKB Q773S4)、X-タンパク質(例えば、UniProtKB Q8V1H6)、ラージエンベロープタンパク質(例えば、UniProtKB P03138)及びカプシドタンパク質(例えば、UniProtKB P03147);HCV由来のタンパク質抗原、例えば、ゲノムポリタンパク質(例えば、UniProtKB P26663;Q99IB8;A3EZI9)及びHCVタンパク質(例えば、UniProtKB Q99398);HPV由来のタンパク質抗原、例えば、発癌遺伝子型6、11、16又は18、例えば、E6発癌性タンパク質(例えば、UniProtKB P03126;P06463)及びE7発癌性タンパク質(例えば、UniProtKB P03129;P06788)、KSHV由来のタンパク質抗原、例えば、タンパク質ORF36(例えば、UniProtKB F5HGH5)、コア遺伝子UL42ファミリータンパク質(例えば、UniProtKB Q77ZG5)、ビリオン放出タンパク質UL31ホモログ(例えば、UniProtKB F5H982)、トリプレックスキャプシドタンパク質VP19Cホモログ(例えば、UniProtKB F5H8Y5)、ウイルス性マクロファージ炎症性タンパク質2(例えば、UniProtKB Q98157)、mRNA輸送因子ICP27ホモログ(例えば、UniProtKB Q2HR75)、ORF52(例えば、UniProtKB F5HBL8)、ウイルスIRF4様タンパク質(例えば、UniProtKB Q2HR73)、Bcl-2(例えば、UniProtKB Q76RI8)、ラージテグメントタンパク質deneddylase(例えば、UniProtKB Q2HR64)、V-サイクリン(例えば、UniProtKB O40946)、VIRF-1(例えば、UniProtKB F5HF68)及びE3ユビキチン-タンパク質リガーゼMIR1(例えば、UniProtKB P90495)及び抗原タンパク質メルケル細胞癌ウイルス、例えば、ラージTタンパク質(例えば、UniProtKB E2IPT4;K4P159)、例えば、スモールTタンパク質(例えば、UniProtKB B6DVX0;B6DVX6)である。
【0035】
予防的及び治療的ワクチンの適切な標的である非ウイルス抗原は、腫瘍特異的抗原及び/又は腫瘍関連抗原であってもよい。腫瘍特異的抗原は、他の任意の細胞でなく腫瘍細胞によって専ら発現される抗原であり、多くは変異したタンパク質であり、例えば、KrasG12D及び変異体P53、又はDNA突然変異及び誤動作のDNA修復メカニズムによって追って発生するネオ抗原である。腫瘍関連抗原は、腫瘍及び正常細胞の両方に存在する内在性抗原であるが、その発現又は細胞局在が異常調節されている抗原であり、例えば、HER-2/neu受容体である。治療用ワクチンの標的であり得るそのような非ウイルス抗原の非限定的な例は、Her-2/neu(又はErbB-2、ヒト上皮増殖因子受容体2(例えば、UniProtKB P04626);WT-1又はウィルムス腫瘍タンパク質(例えば、UniProtKB P19544);NY-ESO-1又は癌/精巣抗原1(例えば、UniProtKB P78358);MAGE-A3又はメラノーマ関連抗原-A3(例えば、UniProtKB P43357);BAGE又はBメラノーマ抗原(例えば、UniProtKB Q13072);CEA又は癌胎児性抗原(例えば、UniProtKB Q13984);AFP又はα-フェトタンパク質(例えば、UniProtKB P02771);XAGE-1B又はX抗原ファミリーメンバー1(例えば、UniProtKB Q9HD64);サバイビン又はBIRC5、バキュロウイルスIAPリピート含有タンパク質5(例えば、UniProtKB O15392);P53(例えば、UniProtKB P04637);h-TERT又はテロメラーゼ逆転写酵素(例えば、UniProtKB O14746);メソテリン(例えば、UniProtKB H3BR90);PRAME又は腫瘍において優先的に発現されるメラノーマ抗原(例えば、UniProtKB P78395);MUC-1又はムチン-1(例えば、UniProtKB P15941);Mart-1/Melan-A又はT細胞1によって認識されるメラノーマ抗原(例えば、UniProtKB Q16655);GP-100又はメラノサイトタンパク質PMEL(例えば、UniProtKB P40967);チロシナーゼ(例えば、UniProtKB U3M8N0);チロシナーゼ関連タンパク質-1(例えば、UniProtKB P17643);チロシナーゼ関連タンパク質-2(例えば、UniProtKB O75767);PAP又はPAPOLA、ポリ(A)ポリメラーゼα(例えば、UniProtKB P51003);PSA又は前立腺特異的膜抗原(例えば、UniProtKB P07288);PSMA又は前立腺特異的膜抗原又はグルタミン酸カルボキシペプチダーゼ2(例えば、UniProtKB Q04609)である。
【0036】
ペプチド-ワクチンのための好ましい腫瘍特異的抗原標的は、ウイルス癌遺伝子及びネオ抗原である。「ネオ抗原」は、ゲノムがコードされたタンパク質のアミノ酸配列を変化させる腫瘍特異的変異(複数可)から生じる腫瘍抗原として本明細書で理解される。ネオ抗原は、個々の患者の癌(又は新生物又は腫瘍)に特有に存在する全て又はほぼ全ての変異ネオ抗原を解明する全ゲノム配列決定によって同定し得る。この変異ネオ抗原のコレクションは、患者の癌の処置のためのパーソナライズされた癌ワクチンの開発のための抗原の供給源として使用するための、変異ネオエピトープの特定の最適化されたサブセットを同定するために分析され得る。そのようなネオ抗原を同定するための方法は、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2014/168874号に記載されている。
【0037】
抗原タンパク質に「由来」するペプチドは、抗原タンパク質から選択される連続するアミノ酸配列であって、1つ又は複数のアミノ酸の欠失又は置換によって、N-及び/又はC-末端で追加のアミノ酸又は官能基での延長によって、修飾されていてもよく、バイオアベイラビリティ、T細胞への標的化を改善し得る、又はアジュバント若しくは(共)刺激機能を提供する免疫調節物質を含む若しくは放出し得る、連続アミノ酸配列を含むものものとして、本明細書で理解される。
【0038】
医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、天然にない長さの合成の結果として、又はペプチドが由来するタンパク質抗原に由来しない追加のアミノ酸を含む結果として、並びに/又は修飾アミノ酸及び/若しくは非天然アミノ酸及び/若しくはフッ素化基、フルオロカーボン基、ヒトToll様受容体リガンド及び/若しくはアゴニスト、オリゴヌクレオチド結合体、PSA、糖鎖又はグリカン、pam3cys及び/若しくはその誘導体、好ましくは国際公開第2013/051936号に記載されているもの、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)、環状ジヌクレオチド(CDN)、DCパルスカセット、破傷風毒素由来ペプチド、ヒトHMGB1由来ペプチドなどの共有結合的に連結される官能基を、上記に示されるようにペプチド内に又はペプチドへの付加のいずれかで含む結果として、非天然配列を含むか、又は非天然配列からなるものでもよい。本発明のペプチドは、2-アミノイソ酪酸(Abu、システインの同配体)を含んでもよい。本発明のペプチドのシステインが、Abuで置換されていてもよい。
【0039】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、単離されたペプチドであることが好ましく、ここで「単離された」は、ペプチドが精製される程度を反映するものではないが、ペプチドが天然の環境から取り出されている(つまり、ヒトの操作を受けている)ことを示し、組換え的に産生されたペプチド又は合成的に製造されたペプチドであり得る。
【0040】
比較的短いペプチドの使用は、およそ100個のアミノ酸、つまり95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105個のアミノ酸より大きい天然タンパク質では成り立たず又は経済的でないin vitroで効率的に合成可能であることから、医療目的のために非常に好ましい。ペプチドの化学合成は日常的に行われており、種々の適切な方法が当業者に知られている。またペプチドの化学合成は、標準化が困難で大規模な精製及び品質管理手段が必要になる組換えによる完全なタンパク質の産生に関連する問題を克服する。ヒト白血球抗原(HLA)クラスI及びクラスIIエピトープの長さを超える長さを有するペプチド(例えば、本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドに関して本明細書で説明された長さを有するもの)は、国際公開第02/070006号に説明されるようなプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)、特に、樹状細胞(DC)によって取り込まれるために十分な大きさであり、含有されているHLAクラスI提示及びHLAクラスII提示エピトープの細胞表面提示が行われる前にDCでプロセシングされることから、ワクチン成分として使用するために、特に有利である。それゆえ、非抗原提示細胞上の最小限のHLAクラスI提示エピトープの全身提示によるT細胞寛容の不都合な誘導(Toesら、Proc Natl Acad Sci(1996)USA 93(15):7855及びToesら、Immunol(1996)156(10):3911)は、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI及びクラスIIエピトープの長さを超えるペプチドを適用することによって(Zwavelingら、J.Immunol.(2002)169:350~358)に示されるように)予防される。全長タンパク質を用いた治療ワクチン接種は、本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドに関して本明細書で説明した長さを有するペプチドを用いたワクチン接種と比較して、あまり強力でない可能性が高い(Rosaliaら、Eur.J.Immunol(2013)43:2554~2565)。
【0041】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、それぞれが、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI及びクラスII提示エピトープの長さを超える、本明細書で長鎖ペプチドとも称される約15~約100アミノ酸長のペプチドであり、それ自体で又は混合物のいずれかで、治療的に有効で患者において高いパーセンテージで治癒を誘発するCD4+及びCD8+T細胞応答組合せを誘導するペプチドであることが好ましい。本発明の長鎖ペプチドは、本明細書で合成長鎖ペプチド(SLP)と称される合成ペプチドであることが好ましい。
【0042】
「CTLエピトープ」は、プロテアソーム媒介性タンパク質分解切断によってタンパク質源から放出され、その後に抗原提示細胞(APC)、好ましくはヒト抗原提示細胞の細胞表面にHLAクラスI分子によって提示される、ポリペプチド抗原の線状断片として本明細書で理解される。本発明のCTLエピトープは、CD8T細胞応答を活性化できることが好ましい。CTLエピトープは、典型的に、少なくとも8個から最大12個まで、又は例外的に13又は14個のアミノ酸を含む。CTLエピトープは、8~14個のアミノ酸からなり、つまり、少なくとも8個から最大14個のアミノ酸の長さを有することが好ましい。
【0043】
「Th細胞エピトープ」は、HLAクラスII分子によって認識される線形ペプチド断片であると本明細書で理解される。Th細胞エピトープは、CD4T細胞応答を誘導することができる。HLAクラスII拘束性CD4ヘルパーT細胞(Th細胞)エピトープは、典型的に15から最大20個又は例外的にさらに多くのアミノ酸を含む。HLAクラスII拘束性ヘルパーT細胞エピトープは、10~20個又は10~15個のアミノ酸を含むことが好ましい。
【0044】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドのTh細胞エピトープは、CD4メモリーヘルパーT及び/又はCD4エフェクターヘルパーT応答の活性化、つまりCD45RO陽性CD4ヘルパーT細胞の活性化が可能であることが最も好ましい。このことは、DCのCD40トリガーを介してシグナルを「殺すためのライセンス」によって(Lanzavecchia(1998)Nature、393:413)、より強固なCD8エフェクター及びメモリ細胞障害性T細胞応答を導く。別の状況では、活性化CD4ヘルパーT細胞は、免疫系の非HLA拘束性キラー細胞を活性化し得る。
【0045】
本発明の文脈において、「タンパク質抗原由来の最大で100個の連続アミノ酸を含むペプチド」は、タンパク質抗原に由来し、本明細書で定義されるペプチドに存在する連続アミノ酸の数が、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、又は30アミノ酸以下であることを意味する。本発明の文脈において、「タンパク質抗原由来の少なくとも15個の連続アミノ酸を含むペプチド」は、タンパク質抗原に由来し、本明細書で定義されるペプチドに存在する連続アミノ酸の数が、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45個又はより多くのアミノ酸であることを意味する。本発明の文脈において、「タンパク質抗原由来の15~100個の連続アミノ酸を含むペプチド」は、タンパク質抗原に由来し、本明細書で定義されるペプチドに存在する連続アミノ酸の数が、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45個のアミノ酸、且つ100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、又は30アミノ酸以下であることを意味する。より好ましくは、再構築されるペプチド内に含まれるタンパク質抗原由来の連続アミノ酸配列の長さは、15~100個のアミノ酸、又は好ましくは15~95個のアミノ酸、又は15~90個のアミノ酸、又は15~85個のアミノ酸、又は15~70個のアミノ酸、又は15~25個のアミノ酸、又は15~60個のアミノ酸、又は15~55個のアミノ酸、又は15~50個のアミノ酸であることがより好ましく、15~45個のアミノ酸であることがさらにより好ましく、15~40個のアミノ酸であることがさらにより好ましく、17~39個であることがさらにより好ましく、19~43個のアミノ酸であることがさらにより好ましく、22~40個のアミノ酸であることがさらにより好ましく、28~40個であることがさらにより好ましく、30~39個のアミノ酸であることがさらにより好ましい。
【0046】
本発明による医薬組成物は、以下の特性
a.塩基性アミノ酸残基のパーセンテージが酸性アミノ酸残基のパーセンテージと等しい、及び
b.疎水性アミノ酸残基のパーセンテージが48%以上である
の両方を満たすペプチドを含まないことが好ましい。
【0047】
この実施形態の目的について、アミノ酸残基は、以下の通り、「酸性」、「塩基性」、「疎水性」又は「中性」として分類される:
【0048】
【表1】
【0049】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、好ましくは抗原性ペプチドである。「抗原性ペプチド」は、(高度に)免疫原性であり、対象、好ましくはヒト又は動物対象へワクチン組成物として投与されたときに強力な抗原指向性CD4+ヘルパーT及びCD8+細胞障害性T細胞応答の組合せを誘導することができるものとして、本明細書で理解される。ペプチドは、免疫原性であることが予測されるものでもよく、及び/又はin vitro又はex vivoアッセイを使用して、若しくは免疫原性を確立するために当技術分野で認識されているin vivo試験を行うことによって、免疫原性であることが証明されるものでもよい。ペプチドは、好ましくは
免疫系の活性化若しくは誘導、及び/又はエリスポットアッセイによって若しくはCD4+若しくはCD8+T細胞のテトラマー染色によって確立される末梢血若しくは組織中の抗原特異的活性化CD4+及び/若しくはCD8+T細胞の増加、又は処置の少なくとも1週間後のフローサイトメトリーにおけるCD4+及びCD8+T細胞の細胞内サイトカイン染色によって確立されるこれらのT細胞により産生されるサイトカインの増加;並びに/或いは
抗原関連感染の増殖の阻害、又は抗原発現細胞の検出可能な減少、又は抗原発現細胞の細胞生存率の減少;並びに/或いは
抗原発現細胞の細胞死の誘導又は細胞死の増加の誘導;並びに/或いは
抗原発現細胞の増加の阻害又は予防
によって検出できるように、対象における抗原関連疾患又は状態の予防、部分的クリアランス及び/又は処置、又は完全クリアランスに有効に使用することができることが好ましい。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明のワクチン組成物は、ペプチドの上記組合せであって、処置されるヒト対象の集団において優性であるHLA対立遺伝子によってコードされるHLAクラスI分子の少なくとも70%、80%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%を包含するペプチドの組合せを含む。HLA対立遺伝子は、処置されるヒト対象の集団で優性である。本発明によるペプチドにおける好ましいHLAクラスIエピトープは、HLA-A0101;HLA-A0201;HLA-A0206;HLA-A0301;HLA-A1101;HLAA2301;HLA-A2402;HLA-A2501;HLA-A2601;HLA-A2902;HLA-A3001;HLAA3002;HLA-A3101;HLA-A3201;HLA-A3303;HLA-A6801;HLA-A6802;HLAA7401;HLA-B0702;HLA-B0801;HLA-B1301;HLA-B1302;HLA-B1402;HLAB1501;HLA-B1502;HLA-B1525;HLA-B1801;HLA-B2702;HLA-B2705;HLAB3501;HLA-B3503;HLA-B3701;HLA-B3801;HLA-B3901;HLA-B4001;HLAB4002;HLA-B4402;HLA-B4403;HLA-B4601;HLA-B4801;HLA-B4901;HLAB5001;HLA-B5101;HLA-B5201;HLA-B5301;HLA-B5501;HLA-B5601;HLAB5701;HLA-B5801及びHLA-B5802に結合することができるエピトープである。好ましい実施形態では、本発明のペプチドは、処置されるヒト対象の集団において優性であるHLA対立遺伝子によってコードされるHLAクラスI分子の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%を包含し、ここで「HLAクラスI分子を包含する」とは、上記HLAクラスI分子への結合親和性、好ましくは中間の結合親和性、より好ましくは高い結合親和性を示すCTLエピトープを含むものとして本明細書において理解される。本発明のペプチドは、HLA-A0101;HLA-A0201;HLA-A0206;HLA-A0301;HLA-A1101;HLA-A2301;HLA-A2402;HLA-A2501;HLA-A2601;HLA-A2902;HLA-A3001;HLA-A3002;HLA-A3101;HLA-A3201;HLA-A3303;HLA-A6801;HLA-A6802;HLA-A7401;HLA-B0702;HLA-B0801;HLA-B1301;HLA-B1302;HLA-B1402;HLA-B1501;HLA-B1502;HLA-B1525;HLA-B1801;HLA-B2702;HLA-B2705;HLA-B3501;HLA-B3503;HLA-B3701;HLA-B3801;HLA-B3901;HLA-B4001;HLA-B4002;HLA-B4402;HLA-B4403;HLA-B4601;HLA-B4801;HLA-B4901;HLA-B5001;HLA-B5101;HLA-B5201;HLA-B5301;HLA-B5501;HLA-B5601;HLA-B5701;HLA-B5801及びHLA-B5802からなるHLAクラスI分子の群の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%を包含することが好ましい。
【0051】
再構築組成物は、単一の種類のペプチド(つまり、全てが実質的に同じ又は同じアミノ酸配列を有するペプチド)を再構築するために、又は異なるアミノ酸配列を有する異なるペプチドの混合物のために使用することができる。本発明の医薬組成物は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32個、最大で33個の異なるペプチドを含むことが好ましい。「異なるペプチド」は、その全長にわたって決定される配列同一性が、好ましくは60%、50%、40%未満、又は好ましくは30%未満の異なるアミノ酸配列を有するものとして本明細書で理解される。本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる異なるペプチドは、これらのペプチドが誘導されるタンパク質抗原の全アミノ酸配列と一緒に重複している、本明細書で上記に定義した長さを有するペプチドであり得る。しかしながら、一部の場合には、タンパク質抗原の全長にわたる重複(合成)長鎖ペプチドの完全なセットで免疫化することは実現不可能であり、選択がなされる必要がある。ワクチンにおけるペプチドの数を絞り込むために、最も免疫原性の長鎖ペプチドであって、患者の最も高いパーセンテージによって認識されるペプチドを選択し、組み込むことが好ましい。
【0052】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドの少なくとも1つは、分子間ジスルフィド架橋が可能な少なくとも1つのシステイン残基を有してもよく、又は分子内及び分子間ジスルフィド架橋を形成することができる少なくとも2つのシステイン残基を有してもよい。本発明によるワクチン組成物は、ペプチドの組合せであって、本明細書で上記に定義した処置されるヒト対象の集団において優性であるHLA対立遺伝子によってコードされるHLAクラスI分子の少なくとも70%、80%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%を包含するペプチドの上記組合せを含むことが好ましい。
【0053】
本発明の再構築組成物における再構築されるペプチドの量は、好ましくは、医薬投薬単位及び/又は本明細書で上記に定義した一回単位で注射される量である。
【0054】
乾燥されたペプチドは、さらなる成分を含まないペプチドであってもよいが、トリフルオロ酢酸(TFA)などの緩衝成分、ナトリウム、カリウム又はリン酸塩のような塩(例えば、NaCl、KCl及びNaPO)を含むものでもよい。さらなる成分の量は、再構築される乾燥ペプチドの総重量の好ましくは30%未満であり、より好ましくは25%未満である。乾燥された、再構築されるペプチドは、限定されないが、ローター蒸発、凍結乾燥(フリーズドライ)、及び噴霧乾燥などのプロセスによって取得できるような物理的に乾燥された状態であってもよい。
【0055】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドが誘導される好ましいタンパク質抗原は、本明細書で以下に定義される。
【0056】
HPV由来ペプチド
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、初期HPV抗原タンパク質E2、E6又はE7から誘導されるペプチド(のミックス)であり得る。連続アミノ酸配列は、高リスクHPV血清型、例えば血清型16、18、31、33又は45由来のHPV E6及びE7タンパク質の全長アミノ酸配列から選択されることが好ましく、HPV E6及びE7血清型16、18、31又は33のアミノ酸配列から選択されることがより好ましく、血清型16又は18のアミノ酸配列から選択されることが最も好ましく、中でも16のアミノ酸配列が最も好ましい。HPV血清型16 E2(UniProtKB-P03120)、E6(UniProtKB-P03126)及びE7(UniProtKB-P03129)タンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号14~16に示されている。HPV血清型18E2(UniProtKB-P06790)、E6(UniProtKB-P06463)及びE7(UniProtKB-P06788)タンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号17~19に示されている。
【0057】
本発明の医薬組成物で再構築され及び/又はそれに含まれ、HPV E6及びE7タンパク質から誘導される好ましいペプチド及びペプチドミックスは、国際公開第00/75336号で定義される通りである。好ましいペプチドは、配列番号20~26のいずれか1つによって表される免疫原性領域内の連続配列を含むか、又は該連続配列からなるペプチドである。
【0058】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる1つ又は複数のペプチドは、配列番号27~67によって表される群から選択されるCTLエピトープを含むことが好ましい。
【0059】
本発明の医薬組成物で再構築され及び/又はそれに含まれ、HPV E2、E6及びE7タンパク質から誘導される好ましいペプチド及びペプチドミックスは、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2002/070006号及び国際公開第2002/090382号で定義される通りである。好ましいペプチドは、HPV免疫原性領域E2(31~120);E2(151~195);E2(271~365);E6(81~158);E7(31~77)、好ましくはHPV16血清型のそれらの免疫原性領域であって、それぞれ配列番号68~72によって定義される領域内の連続配列を含むか、又は該連続配列からなるペプチドである。
【0060】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる1つ又は複数のペプチドは、DR1/E2 351~365、DR2/E2 316~330、DR2/E2 346~355、DR4/E2 51~70、E2 61~76、DQ6/E2 311~325、DR15/E7 50~62、DR3/E7 43~77、DQ2/E7 35~50及びDR1/E6 127~142(それぞれ配列番号73~82によって本明細書で表される)から選択されるThエピトープを含むことが好ましい。
【0061】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、子宮頸部腫瘍性病変に浸潤するT細胞によって、又は子宮頸部腫瘍性病変から排出され、骨盤領域のリンパ節に存在する若しくはそれから単離されるT細胞によって認識される少なくとも1つのT細胞エピトープを含むことが好ましい。T細胞エピトープは、転移性腫瘍細胞を含む流入領域リンパ節に存在する又はそれから単離されたものであることが好ましい。そのようなエピトープは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2008/147187号、米国特許出願公開第2006/0182762号、国際公開第2006/013336号、国際公開第2009/148230号、国際公開第2009/148229号、国際公開第2002/044384号に開示されている。
【0062】
さらに、本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる好ましいペプチドでは、連続アミノ酸配列は、子宮頸部腫瘍性病変に浸潤するT細胞によって又は流入領域リンパ節からのT細胞によって認識されるT細胞エピトープであることが証明されている配列番号83~104によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択される連続アミノ酸配列からなる群から選択されるエピトープを含む。
【0063】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドに含まれる好ましいクラスII CD4Th細胞エピトープは、配列番号83~99によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択される連続アミノ酸配列からなる群から選択される。
【0064】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドに含まれる好ましいクラスI CD8CTL細胞エピトープは、配列番号85、82、100~104によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択される連続アミノ酸配列からなる群から選択される。
【0065】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる好ましいペプチドは、配列番号1~13によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択される連続アミノ酸配列を含むか、又は該配列からなる。
【0066】
本発明のワクチン組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる好ましいペプチドのミックスは、配列番号1~5から選択される配列を含むか若しくは該配列からなるペプチドの少なくとも1、2、3、4若しくは5個;配列番号1~6によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択される連続アミノ酸配列を含むか若しくは該配列からなるペプチドの少なくとも1、2、3、4、5若しくは6個;又は配列番号7~13によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択される連続アミノ酸配列を含むか若しくは該配列からなるペプチドの少なくとも1、2、3、4、5、6若しくは7個を有するペプチドのミックスである。医薬組成物は、配列番号1~5、配列番号1~6、又は配列番号7~13を有するペプチドの混合物を含むことが好ましい。混合物中の異なるペプチドは、実質的に等しい比率で医薬組成物中に存在していることが好ましい。
【0067】
HBV由来ペプチド
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、例えば、配列番号105~108によって本明細書で表される、HBV-Aタンパク質、HBVポリメラーゼ(UniProtKB-P03159)、HBVコアタンパク質(UniProtKB-P0C625)、HBV Xタンパク質、及びHBVラージ表面タンパク質(UniProtKB-P03141)に由来する、様々な遺伝子型から誘導されるペプチド(のミックス)であり得る。好ましいペプチド、ペプチドミックス、及びこれらのペプチド内に存在するエピトープは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2015/187009号、国際公開第2014/102540号、国際公開第93/03753号、国際公開第95/03777号、米国特許出願公開第2010/0068228号、米国特許出願公開第2009/0311283号に開示されている。
【0068】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる1つ又は複数のペプチドは、配列番号109~146からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又は該配列からなることが好ましい。
【0069】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、配列番号109、113、118、121、122、126、129、132、133、134、135、138及び142からなる群から選択される、より好ましくは、配列番号109、113、118、121、122、126、129、132、133、135、138及び142からなる群から選択される、さらにより好ましくは、配列番号113、118、121、122、126、129、132、133、134、135及び142からなる群から選択される、さらにより好ましくは配列番号113、118、121、122、126、129、132、133、135及び142からなる群から選択される、さらにより好ましくは配列番号118、121、129、132、133及び142からなる群から選択される、最も好ましくは配列番号133、142及び121の群から選択されるペプチドを含むか又は該ペプチドからなることが好ましい。本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる1つ又は複数のペプチドは、配列番号109、118、121、122、126、129、132~135からなる群から選択されるペプチドを含むか又は該ペプチドからなることが好ましい。本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる1つ又は複数のペプチドは、配列番号122、129及び133からなる群から選択されるペプチドを含むか又は該ペプチドからなることが好ましい。
【0070】
本発明のワクチン組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドの好ましいミックスは、配列番号109~146からなる群から選択される、より好ましくは配列番号109、113、118、121、122、126、129、132、133、134、135、138及び142からなる群から選択される、より好ましくは配列番号109、113、118、121、122、126、129、132、133、135、138及び142からなる群から選択される、さらにより好ましくは配列番号113、118、121、122、126、129、132、133、134、135及び142からなる群から選択される、さらにより好ましくは配列番号113、118、121、122、126、129、132、133、135及び142からなる群から選択される、さらにより好ましくは配列番号118、121、129、132、133及び142からなる群から選択される、最も好ましくは配列番号133、142及び121の群から選択されるペプチドを含むか又は該ペプチドからなるペプチドの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32個、最大で33個の異なるペプチドのミックスである。配列番号109、118、121、122、126、129、132~135からなる群から選択される、より好ましくは配列番号121、129及び133からなる群から選択されるペプチドを含むか又は該ペプチドからなるペプチドの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32個、最大で33個の異なるペプチドを含む組成物がさらに好ましい。本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるさらに好ましいミックスは、配列番号121のペプチドと配列番号139、140、133、139、142、118、129の少なくとも1つを含むか、又はそれからなるペプチドとの組合せを含むか、又は該組合せからなるペプチドを含むミックス;及び配列番号133のペプチドと配列番号139、140、63、139、142、118、129の少なくとも1つを含むか、又はそれからなるペプチドとの組合せを含むか、又は該組合せからなるペプチドを含むミックスである。混合物中の異なるペプチドは、実質的に等しい比率で医薬組成物中に存在していることが好ましい。
【0071】
PRAME由来ペプチド
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、配列番号147によって本明細書で表されるPRAME(UniProtKB-P78395)から誘導されるペプチド(のミックス)であり得る。好ましいペプチド、ペプチドミックス、及びこれらのペプチド内に存在するエピトープは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2008/118017号に開示されている。再構築されるペプチドのうちの1つ又は複数は、配列番号148~167によって定義されるアミノ酸配列からなる群から選択されるペプチドを含むか、又は該ペプチドからなることが好ましい。本発明のワクチン組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドの好ましいミックスは、配列番号148~167から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の異なるペプチドのミックスである。
【0072】
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれる1つ又は複数のペプチドは、配列番号168~169から選択されるThエピトープを含むことが好ましい。
【0073】
P53由来ペプチド
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、配列番号190によって本明細書で表されるP53(例えば、UniProtKB P04637)から誘導されるペプチド(のミックス)であり得る。好ましいペプチド、ペプチドミックス、及びこれらのペプチド内に存在するエピトープは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2008/147186号に開示されている。再構築されるペプチドのうちの1つ又は複数は、配列番号191~211によって定義されるアミノ酸配列からなる群から選択されるペプチド、より好ましくは配列番号191~204によって定義されるアミノ酸配列からなる群から選択されるペプチドを含むか、又は該ペプチドからなることが好ましい。
【0074】
本発明のワクチン組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドの好ましいミックスは、配列番号191~211から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の異なるペプチドのミックスである。
【0075】
PSMA由来ペプチド
本発明の医薬組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドは、配列番号212によって本明細書で表されるPSMA(例えば、UniProtKB Q04609)から誘導されるペプチド(のミックス)であり得る。好ましいペプチド、ペプチドミックス、及びこれらのペプチド内に存在するエピトープは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2013/006050号に開示されている。再構築されるペプチドのうちの1つ又は複数は、配列番号213~232によって定義されるアミノ酸配列からなる群から選択されるペプチドを含むか、又は該ペプチドからなることが好ましい。
【0076】
本発明のワクチン組成物で再構築される及び/又はそれに含まれるペプチドの好ましいミックスは、配列番号213~232から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の異なるペプチドのミックスである。
【0077】
本明細書で定義される特定の抗原タンパク質、ペプチド及びエピトープのいずれかと実質的同一性を示す抗原タンパク質、ペプチド及びエピトープも、好ましい抗原タンパク質、再構築されるペプチド及びこれらのペプチド内のエピトープの中に含まれる。配列同一性は、配列の比較によって決定される、2つ以上のアミノ酸配列(ポリペプチド又はタンパク質)間の関係によって、本明細書で定義される。当技術分野において、「同一性」は、そのような配列の文字列間の一致によって決定されるアミノ酸配列間の配列類縁性の程度も意味する。配列同一性は、2つの配列の長さに応じて、グローバル又はローカルアラインメントアルゴリズムを使用して、2つのペプチド配列のアラインメントによって決定することができる。同等の長さの配列は、全体の長さにわたって最適に配列を整列させるグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を使用して整列させることが好ましく、一方で、実質的に異なる長さの配列は、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を使用して整列させることが好ましい。次いで、配列は、それらが(デフォルトパラメータを使用して、例えば、プログラムGAP又はBESTFITにより最適に整列される場合に)少なくともある特定の最小パーセンテージの配列同一性(下記に定義される)を共有するとき、「実質的に同一」として参照され得る。GAPは、2つの配列を、それらの全体の長さ(全長)にわたって一致の数を最大にし、ギャップの数を最少化して整列させるように、Needleman及びWunschのグローバルアラインメントアルゴリズムを使用する。グローバルアラインメントは、2つの配列が同等の長さを有する場合に配列同一性を決定するために使用することが適切である。一般に、GAPデフォルトパラメータは、ギャップ生成ペナルティー=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)及びギャップ伸長ペナルティー=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)で使用される。タンパク質について、デフォルトスコアリングマトリックスはBlosum62である(Henikoff&Henikoff, 1992, PNAS 89, 915-919)。配列同一性パーセンテージのための配列アラインメント及びスコアは、Accelrys Inc., 9685 Scranton Road, San Diego, CA 92121-3752 USAから入手可能なGCG Wisconsin Package、バージョン10.3などのコンピュータープログラムを使用して、或いは、プログラム「needle」(グローバルのNeedleman Wunschアルゴリズムを使用)又は「water」(ローカルのSmith Watermanアルゴリズムを使用)などのオープンソースソフトウェアを、EmbossWINバージョン2.10.0で、上記GAPと同じパラメータを用いて、又はデフォルト設定(「needle」及び「water」の両方について、デフォルトギャップオープニングペナルティーは10.0であり、デフォルトギャップ伸長ペナルティーは0.5である:デフォルトスコアリングマトリックスは、タンパク質についてBlossum62である)を用いて使用することにより、決定してもよい。配列が、実質的に異なる全長を有するとき、ローカルアラインメント、例えばSmith Watermanアルゴリズムを使用するアラインメントが好ましい。
【0078】
代替的に、同一性パーセンテージは、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを使用して、公的データベースに対して検索を行うことによって、決定し得る。したがって、本発明のタンパク質配列は、例えば、他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するために、公的データベースに対する検索を実施するための「クエリー配列」としてさらに使用することができる。そのような検索は、Altschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10のBLASTp及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTタンパク質検索を、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施してもよい。比較のためのギャップアラインメントを得るために、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402に記載されるギャップBLASTを利用してもよい。BLAST及びギャップBLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラム(例えば、BLASTx及びBLASTp)のデフォルトパラメータを使用することができる。米国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照のこと。
【0079】
本明細書で定義されるその関連抗原タンパク質、ペプチド又はエピトープに実質的な同一性を示す抗原タンパク質、ペプチド又はエピトープは、上記特定の配列の全長に基づいて(つまりその全長にわたって又は全体として)、本明細書で参照される特定の配列のいずれか1つに少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有すると本明細書で理解される。
【0080】
医学的用途
持続的又は慢性感染、前癌性障害及び/又は癌を予防又は処置するための方法が提供される。別言すると、薬剤として使用するための、好ましくは持続的又は慢性感染、前癌性障害及び/又は癌の予防又は処置のための、本明細書で上記に定義した本発明の医薬組成物が提供される。そのような方法又は使用は、そのような予防及び/又は処置を必要とする対象に、本発明の医薬組成物を投与するステップを含む。予防及び/又は処置を必要とする対象は、患者を指すこともあり、動物、例えば哺乳動物、例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ若しくはネコを含むがこれらに限定されない哺乳動物を指すこともある。
【0081】
本明細書で上記に定義した医薬投薬単位が提供されることが好ましい。また本明細書で上記に示されるように、この医薬投薬単位は、シングルショットで1回与えられてもよく、又は複数の体積として異なる位置に投与されてもよい。例えば、医薬投薬単位を、2つのショットに分割し、処置される対象の2本の脚又は腕の1本にそれぞれ投与してもよい。2つのショットは、同じ又は異なるペプチドミックスを含み得る。例えば、第1のショットが、配列番号1~5又は配列番号1~6を含み、第2のショットが配列番号7~13を含んでもよく、ここで両方のショットは、1つ又は実質的に1つの時間点で投与される。ここで実質的に1つの時間点とは、最大で約15分以内、好ましくは最大で2分以内と理解される。
【0082】
単一又は複数のショットの投与は、1回で実施してもよく、又は、その後に繰り返してもよく、例えば、限定されないが、毎日、隔週、毎週、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、毎月、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、1年に1回、2年に1回、5年に1回、又は10年に1回、繰り返してもよい。
【0083】
医薬組成物は、本明細書で上記に定義した有効量で投与されることが好ましい。本発明の医薬組成物は、静脈内、皮下、又は筋肉内投与用であることが好ましいが、他の投与経路、例えば、粘膜投与又は真皮内及び/若しくは皮内投与又は腫瘍内投与の、例えば注射による、投与経路も想定され得る。本発明の医薬組成物は、単独投与によって投与され得る。代替的に、投与は、必要に応じて繰り返してもよく、及び/又は異なるペプチド又はペプチドミックスを含む別個のペプチド又はペプチドミックス又は組成物を順次投与してもよく、ここで順次は、時間的及び/又は位置的であり得る。
【0084】
医薬組成物は、ペプチドに含まれる少なくとも1つのエピトープに対してT細胞応答を誘導するためのワクチン組成物であることが好ましい。ワクチンは、対象における疾患又は状態、例えば持続的感染、癌(新生物)又は前癌性障害、好ましくは
免疫系の活性化若しくは誘導、及び/又はエリスポットアッセイによって若しくはCD4+若しくはCD8+T細胞のテトラマー染色によって確立される末梢血若しくは組織中の抗原特異的活性化CD4+及び/若しくはCD8+T細胞の増加、又は処置の少なくとも1週間後のフローサイトメトリーにおけるCD4+及びCD8+T細胞の細胞内サイトカイン染色によって確立されるこれらのT細胞により産生されるサイトカインの増加;並びに/或いは
抗原関連感染の増殖の阻害、又は抗原発現細胞の検出可能な減少、又は抗原発現細胞の細胞生存率の減少;並びに/或いは
抗原発現細胞の細胞死の誘導又は細胞死の増加の誘導;並びに/或いは
抗原発現細胞の増加の阻害又は予防
によって検出される疾患又は状態に関連する抗原の予防、部分的クリアランス及び/又は処置、又は完全クリアランスのためのワクチンであることが好ましい。
【0085】
本発明の方法を介して予防及び/又は処置される癌の例には、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)、外陰上皮内腫瘍(VIN)、膣上皮内新生物(VaIN)、肛門上皮内新生物(AIN)、陰茎上皮内新生物(penal intraepithelial neoplasia)(PIN)、子宮頸部、外陰部、膣、肛門、陰茎、気道トラック及び頭頸部の癌、肝臓癌、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキン病)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、並びに固形腫瘍、例えば肉腫及び癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、多発性骨髄腫、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫(oligodenroglioma)、シュワン腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の方法は、別個の処置として又は本発明の医薬組成物に加えて提供され得る併用療法の一部であってもよい。本発明の方法は、チェックポイント制御ブロッカー、選択されたTNF受容体ファミリーメンバー(例えば、CD40、4-1BB/CD137、OX-40/CD134、及びCD27)を標的とするモノクローナル抗体(mAb)、免疫抑制性サイトカイン(例えば、IL-10、TGF-β及びIL-6)及び/又はγCサイトカイン(例えば、IL-7、IL-15及びIL-21又はIL-2)、IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)阻害剤、サリドマイド及び/又はその誘導体、さらなる免疫調節剤(例えば、免疫抑制性Treg及び/又はMDSCを枯渇することが既知の化合物)、標準の治療的処置、例えば、化学療法、放射線療法、外科手術、IFN-αコンディショニング、抗ウイルス療法、抗菌療法、紫外線療法、抗炎症療法などと組み合わせてもよい。前癌性障害又は癌の処置又は予防の場合には、ペプチドベースのワクチンは、放射線療法及び/又は化学療法、例えばカルボプラチン、パクリタキセル、CarboTaxol(カルボプラチン、パクリタキセルの組合せ)及び/又はシスプラチンなどの処置と組み合わせてもよい。例えば、本発明の方法は、化学療法が3週間ごとに1回適用される化学療法投与計画の一部であり得る。本発明の医薬組成物の第1の医薬投薬単位は、化学療法の第2又は第3サイクル後に2週間、投与されることが好ましい。
【0087】
再構築のための方法
乾燥された、好ましくは凍結乾燥された、ペプチドを再構築するための方法であって、
a)乾燥された、好ましくは凍結乾燥された、ペプチドを含むバイアルを用意するステップと、
b)上記ペプチドを、好ましくは約5~30分、解凍するステップと、
c)本発明の再構築組成物を、上記ペプチドを含む上記バイアルに、好ましくは上記バイアルを渦流させることなく、添加するステップと、
d)好ましくは約0.5~5分、混合するステップと、
e)透明溶液が得られるまで、好ましくは約1~3分、渦流するステップと、
を含む方法も提供される。
【0088】
ステップb)~e)は、室温で実施することが好ましい。
【0089】
医薬組成物を調製するための方法であって、
(i)上記で定義された、乾燥されたペプチドを再構築するための方法によって得ることができる再構築されたペプチドを、第1のシリンジに収集するステップと、
(ii)ステップ(i)の上記第1のシリンジを、油性アジュバントを含む第2のシリンジに、コネクタを使用して接続するステップと、
(iii)上記第1のシリンジの内容物を、上記第2のシリンジへ押し出し、そして逆方向に押し出すステップと、
(iv)ステップ(iii)を合計で約10~50回、約10~50秒で、繰り返すステップと、
を含む方法がさらに提供される。
【0090】
ステップ(i)~(iv)は、室温で実施することが好ましい。
【0091】
乾燥されたペプチドを再構築するための方法のステップe)で得られる透明溶液は、出発材料、つまり医薬組成物を調製するための方法のステップ(i)で「再構築されたペプチド」として使用することができる再構築されたペプチドを含む再構築組成物として、本明細書で理解される。
【0092】
乾燥されたペプチドを再構築するための方法におけるステップa)の出発材料として使用される、バイアル中の乾燥された、好ましくは凍結乾燥された、ペプチドは、本発明の医薬組成物で再構築されるペプチド及び/又は本発明の医薬組成物に含まれるペプチドとして本明細書で上記に定義したペプチドであることが好ましい。上記バイアルは、予防及び/又は処置のための方法における、好ましくは本明細書で定義される処置及び/又は予防方法における、一回体積として、つまり一回の医薬投薬単位として又は実質的に同じ時間点で対象の身体の異なる位置に複数注射する場合はその一部として注射される量でペプチドを含むことが好ましい。或いは、ステップa)のバイアルにおける乾燥されたペプチドの量は、上記方法の一回体積としての注射の量を超えている。例えば、バイアル内のペプチドの量は、一回体積としての注射の量の2倍であり得る。後者の場合に、方法又は処置又は予防における注射のための医薬組成物の一回体積でまとめるために、再構築された体積の量の半分を、医薬組成物、例えば本発明の医薬組成物を調製するための方法における油性アジュバントのある量と混合してもよく、又は、代替的に、再構築された体積の総量を、注射のための医薬組成物の二倍体積でまとめるために、油性アジュバントのある量と混合してもよい。
【0093】
ペプチドを再構築するための方法のステップb)におけるペプチドは、室温で、約5~30分又は10~30分、例えば5、10、15、20、25、又は30分、又はそれらの間の任意の値で解凍されることが好ましい。
【0094】
ペプチドを再構築するための方法におけるステップd)の混合は、実質的にバイアルを渦流(swirling)又は撹拌することなく、好ましくは室温で約0.5~2分、例えば0.5、1、1.5、又は2分行うことが好ましい。別言すると、ステップd)のペプチドは、再構築組成物を放置したまま、混合されることが好ましい。
【0095】
ペプチドを再構築するための方法のステップe)における渦流は、透明溶液が得られるまで渦流することにより実施される。示されるように、この渦流は、好ましくは約1~3分実施される。しかしながら、一部のペプチドのために、より長い又は短い渦流時間が要求される。しかしながら、透明溶液は、好ましくは、20分以内に取得可能になるべきである。それゆえ、渦流は、1~20分、1~10分、1~5分又は1~3分の範囲、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20分、又はそれらの間の任意の値で行われ、好ましくは、目視検査で透明溶液が得られるまで行い得る。
【0096】
ペプチドを再構築するための方法のステップc)の再構築組成物、及び医薬組成物を調製するための方法のステップ(ii)の油性アジュバントは、本明細書で先に定義される通りである。ステップc)の再構築組成物の量は、約0.5~2mLの範囲、好ましくは1mLであることが好ましい。ステップ(i)で再構築されたペプチドの量は、ステップe)後に得られる再構築されたペプチドの総量、つまりステップe)後に得られる透明溶液内の再構築されたペプチドの総量であることが好ましい。しかしながら、上記で例示されるように、任意選択で、より少ない量が使用される。この再構築組成物の体積は、ステップ(ii)~(iv)の油性アジュバントと、再構築組成物:油性アジュバントの比率が約2:1~約1:2の範囲、例えば2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.1:1、1:1、1:1.9、1:1.8、1:1.7、1:1.6、1:1.5、1:1.4、1:1.3、1:1.2、又は1:1.1、好ましくは1:1で混合されることが好ましい。
【0097】
(ii)のコネクタは、T字型コネクタ及びI字型コネクタが挙げられるがこれらに限定されない、2つのシリンジの間で流体が交換されるように2つのシリンジを接続するための、当技術分野で適切な任意のコネクタであり得る。繰り返し(iv)は、約10~50回、例えば、限定されないが、10、15、20、25、30、45、50回又はそれらの間の任意の値であり得る。
【0098】
キットオブパーツ
さらに、
1.乾燥された、好ましくは凍結乾燥された、ペプチドを含む第1のバイアルであり、好ましくは、ペプチドが、本明細書で上記に定義したペプチドである、第1のバイアルと、
2.本発明の再構築組成物を含む、第2のバイアルと、任意選択で、
3.好ましくは本明細書で上記に定義した油性アジュバントを含む第3のバイアルと、
を備えるキットオブパーツが提供される。
【0099】
全ての成分、つまり、乾燥されたペプチド、再構築組成物及び油性アジュバントは、滅菌及び/又は医薬等級又は臨床等級であることが好ましい。これらの成分は、適正製造基準(GMP)を使用して製造され、欧州医薬品庁及び食品医薬品局の両方で定義されるようにGMP品質を有することが好ましい。
【0100】
第1のバイアルは、再構築組成物が、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、又は1年、又はさらには2年安定である温度で保存することが好ましい。上記温度は、-25~25℃、又は-23~-18℃、又は0~10℃、又は2~8℃、又は18~23℃であることが好ましい。第2のバイアルは、再構築組成物が、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、又は1年、又はさらには2年安定である温度で保存することが好ましい。上記温度は、-25~25℃、又は-23~-18℃、又は0~10℃、又は2~8℃、又は18~23℃であることが好ましい。第3のバイアルは、再構築組成物が、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、又は1年、又はさらには2年安定である温度で保存することが好ましい。上記温度は、-25~25℃、又は-23~-18℃、又は0~10℃、又は2~8℃、又は18~23℃であることが好ましい。第1、第2及び第3のバイアルは、同じ温度で保存されることが好ましい。
【0101】
任意選択で、上記キットオブパーツは、本明細書で上記に定義した乾燥されたペプチドを再構築するための方法、保存条件、本明細書で上記に定義した医薬組成物を調製するための方法を記載したマニュアル、並びに/又は、第1、第2及び/若しくは第3のバイアルを保存するためのマニュアルをさらに備える。さらに、キットオブパーツは、調製された医薬組成物を投与するためのマニュアルを備えてもよい。第1、第2及び/又は第3のバイアルの体積は、最大で50mL、好ましくは0.1~10mL、好ましくは1~10mL、例えば0.5、1、2、3、4、5、又は10mL、又はそれらの間の任意の値であることが好ましい。バイアルは、任意の形状を有し得る容器として、本明細書で理解される。任意選択で、バイアルはシリンジとして本明細書で理解される。任意選択で、第1のバイアルは、再構築組成物にペプチドと接触させてそれを溶解させる(dissolute)ための第2のバイアルと、能動処理プロセスによりコネクタを介して接続してもよい。任意選択で、第2のバイアルは、次いで、ペプチドを含む再構築組成物を油性アジュバントと混合させるための第3のバイアルと接続してもよい。任意選択で、キットオブパーツは、1つ又は複数のコネクタ、例えばT字型コネクタ及び/又は注射ユニット、例えば針をさらに含む。第1のファイルにおけるペプチドの量、第2のファイルにおける再構築組成物の量、及び/又は第3のファイルにおける油性アジュバントの量は、本明細書で先に定義したペプチドを再構築するための方法及び/又は医薬組成物を調製するための方法で定義した通りであることが好ましい。
【0102】
本明細書及び特許請求の範囲において、動詞「を含む」及びその結合語は、その語に続く項目が非限定的な観念で含まれ、詳細に言及されていない項目が排除されないことを意味する。加えて、不定冠詞「a」又は「an」による要素への参照は、文脈が明確に1つ及び要素のうちの1つのみであることを要求していない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0103】
「約」又は「およそ」という語は、数値と関連して使用されるとき(例えば、約10)、好ましくは、所与の値(10)の0.1%多い又は少ない値であり得ることを意味する。
【0104】
本明細書で提供される配列情報は、誤って同定された塩基の算入を必要とするように狭く解釈されるべきではない。当業者は、そのような誤って同定された塩基を同定することができ、そのような誤りを訂正する方法も知っている。
【0105】
本明細書で引用される全ての特許及び文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1】溶解及び室温で保存後2時間の3つの異なる溶媒混合物中のDP-6P(配列番号1~6によって表されるSLPを含む)のUPLCクロマトグラム。A)0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLと、クレモフォールELとの混合物に溶解させたDP-6P(2.40mgの総ペプチド);B)20%v/v DMSO/水に溶解させたDP-6P(2.40mgの総ペプチド);C)10mM DTTを含む20%v/v DMSO/水に溶解させたDP-6P(2.40mgの総ペプチド)。
図2】2つの異なる溶媒混合物中の、溶解後2つの時間点(t=0及びt=2h)のDP-6P(配列番号1~6によって表されるSLPを含む)のUPLCクロマトグラム。溶媒混合物は両方とも、プロピレングリコールと、エタノールと、水と、安定化剤又は還元剤とを含有している。A)600μLの水と、267μLのプロピレングリコールと、133μLのエタノールと、1mg/mLのアスコルビン酸との混合物に溶解させたt=0のDP-6P(2.40mgの総ペプチド);B)600μLのWFIと、267μLのプロピレングリコールと、133μLのエタノールと、1mg/mLのアスコルビン酸との混合物に溶解させたt=2hのDP-6P(2.40mgの総ペプチド);C)0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールELとの混合物に溶解させたt=0のDP-6P(2.40mgの総ペプチド);D)0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールELとの混合物に溶解させたt=2hのDP-6P(2.40mgの総ペプチド)。
図3】2つの異なる溶媒混合物中のDP-6P(配列番号1~6によって表されるSLPを含む)のUPLCクロマトグラム。全ての溶媒混合物は、1mLあたり、0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、ツイーン20又はクレモフォールEL(62.5μL)のいずれかとを含む。A)ツイーン20を含む溶媒混合物に溶解させたt=0のDP-6P(2.40mgの総ペプチド);B)ツイーン20を含む溶媒混合物に溶解させたt=2hのDP-6P(2.40mgの総ペプチド);C)クレモフォールELを含む溶媒混合物に溶解させたt=0のDP-6P(2.40mgの総ペプチド);D)クレモフォールELを含む溶媒混合物に溶解させたt=2hのDP-6P(2.40mgの総ペプチド)。
図4】再構築及びモンタニドISA51VGとの乳化後のDP-6P(配列番号1~6によって表されるSLPを含む)及びDP-7P(配列番号7~13によって表されるSLPを含む)のUPLCクロマトグラム。再構築のための溶媒混合物は、1mLあたり、0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、クレモフォールEL(62.5μL)とを含む。分析前に、過剰の溶媒混合物を添加し、遠心分離で相分離させることによって、ペプチドをエマルジョンから抽出した。A)クレモフォールELを含む1mLの溶媒混合物に溶解させたt=0(ワクチン調製及び抽出の直後)のDP-6P(2.4mgの総ペプチド);B)クレモフォールELを含む1mLの溶媒混合物に溶解させたt=2h(ワクチン生成物を2時間保存し、抽出した後)のDP-6P(2.4mgの総ペプチド);C)クレモフォールELを含む1mLの溶媒混合物に溶解させたt=0(ワクチン調製及び抽出の直後)のDP-7P(2.8mgの総ペプチド);D)クレモフォールELを含む1mLの溶媒混合物に溶解させたt=2h(ワクチン生成物を2時間保存し、抽出した後)のDP-7P(2.8mgの総ペプチド)。
図5】2つの異なるクエン酸濃度を使用するDP-6Pエマルジョン間の粒径分布比較(オーバーレイ)。0.05M又は0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールELとを含む混合物に溶解させ、続けて1mLのモンタニドISA51VGと乳化させたDP-6P(2.40mgの総ペプチド)。
図6】DP-6Pエマルジョン(配列番号1~6によって表されるSLPを含む)間の粒径分布比較(オーバーレイ)。DP-6P(2.40mgの総ペプチド)を、0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールELとを含む混合物に溶解させ、続けて1mLのモンタニドISA51VGと乳化させた。A)乳化方法のロバスト性を示す、t=0の3つの独立した(反復)調製物(調製物1、調製物2、及び調製物3)。B)乳化方法のロバスト性と、室温で少なくとも2時間のエマルジョンの使用中の物理的安定性との両方を示す、t=0(調製物1t0h及び調製物1t2h)並びにt=2h(調製物2t0h及び調製物2t2h)の2つの独立した(反復)調製物。
図7】TC-1腫瘍実験についてのタイムライン。
図8】(A)モンタニドと1:1で乳化させた40%v/v DMSO/WFIのみ(DMSO)、(B)モンタニドと1:1で乳化させた再構築(Rec.)組成物(0.1Mのクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと62.5μLのクレモフォールEL)のみ(Rec.組成物)、(C)モンタニドと1:1で乳化させた40%v/v DMSO/WFI中に溶解させた配列番号6によって表されるSLP及びCpG ODN1826(DMSO+SLP)、又は(D)モンタニドと1:1で乳化させた再構築(Rec.)組成物(0.1Mのクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールEL)中に溶解させた配列番号6によって表されるSLP及びCpG ODN1826(Rec.組成物+SLP)のいずれかでワクチン接種したマウスにおけるTC-1腫瘍の伸長。
図9】TC-1腫瘍でチャレンジし、次いでモンタニドと1:1で乳化させた40%v/v DMSO/WFIのみ(DMSO)でワクチン接種した第1群のマウス、TC-1腫瘍でチャレンジし、次いでモンタニドと1:1で乳化させた再構築組成物(0.1Mのクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールEL)のみ(Rec.組成物)でワクチン接種した第2群のマウス、TC-1腫瘍でチャレンジし、次いでモンタニドと1:1で乳化させた40%v/v DMSO/WFI中に溶解させた配列番号6によって表されるSLP及びCpG ODN1826(DMSO+SLP)でワクチン接種した第3群のマウス、並びにTC-1腫瘍でチャレンジし、次いでモンタニドと1:1で乳化させた再構築組成物(0.1Mのクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールEL)中に溶解させた配列番号6によって表されるSLP及びCpG ODN1826(Rec.組成物+SLP)でワクチン接種した第4群のマウスの、カプラン・マイヤープロット(生存)(A)及び誘導されたD-RAYNIVTF(テトラマー)陽性CD8T細胞のパーセンテージ(B)。アスタリスクは有意差を示す(対応のないt検定、p=0.022);nsは有意ではない差を示す(p=0.21)。
図10】P53 DP-5P(配列番号191、193、194、201及び203によって表されるSLPを含む)のUPLCクロマトグラム。P53 DP-5Pを、1mLあたり、0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、クレモフォールEL(62.5μL)とを含む溶媒混合物で再構築した。分析前に、過剰の溶媒混合物を添加し、遠心分離で相分離させることによって、ペプチドを最終生成エマルジョンから抽出した。A)クレモフォールELを含む1mLの溶媒混合物に溶解させたt=0(ワクチン調製及び抽出の直後)のP53 DP-5P(2.0mgの総ペプチド);B)クレモフォールELを含む1mLの溶媒混合物に溶解させたt=2h(ワクチン生成物を2時間保存し、抽出した後)のP53 DP-5P(2.0mgの総ペプチド)。
【実施例
【0107】
実施例1
序論
この試験の目的は、ペプチド薬剤生成物HPV-DP-6P及びHPV-DP-7Pの溶解、その後のモンタニドISA51VGとの乳化を含む、マルチペプチドHPVワクチン生成物の適切な再構築方法を見つけることであった。以前の研究で、DMSO/WFI製剤中では、1つ又は複数のシステイン残基を含有するペプチドがジスルフィドを形成する傾向が強いことが示されている。薬剤生成物の化学的安定性を改善し、ペプチドのジスルフィド形成を防止するために、新たなDMSO不含再構築溶液が、両方の薬剤生成物を再構築するために開発された。この新たな再構築溶液は、薬剤生成物を溶解し、モンタニドISA51VGと安定なエマルジョンを生じることができるべきである。ジスルフィド形成は最小限にされるべきである。
【0108】
この試験は、4レベルの分析で構成されている。
1.薬剤生成物を再構築するために適切な溶媒組合せのための、目視によってペプチドの溶解をモニタリングする、スクリーニング。
2.モンタニドとの薬剤生成物エマルジョンのエマルジョン安定性のモニタリング。安定性は、目視によって及びエマルジョン液滴の粒径の分析によって評価する。
3.レベル1及び2に成功した溶媒で再構築した後の薬剤生成物の化学的安定性の分析。
4.レベル1、2及び3に成功した溶媒を使用した再構築及び乳化後の薬剤生成物の化学的安定性の分析。この目的のため、ペプチドを溶解し、モンタニドISA51VGと乳化し、次いでエマルジョンから抽出して、ペプチド組成物を分析する。
【0109】
材料
次の凍結乾燥されたペプチド組成物を使用した:配列番号1~5によって本明細書で表される、1バイアルあたり正味重量0.40mgの各ペプチドを等しく混合したペプチド(1バイアルあたりのタンパク質の総量は2.00mg)と、1バイアルあたり0.56mgのTFAとを含むDP-5P;配列番号1~6によって本明細書で表される、1バイアルあたり正味重量0.40mgの各ペプチドを等しく混合したペプチド(1バイアルあたりのタンパク質の総量は2.40mg)と、1バイアルあたり0.67mgのTFAとを含むDP-6P;及び配列番号7~13によって本明細書で表される、1バイアルあたり正味重量0.40mgの各ペプチドを等しく混合したペプチド(1バイアルあたりのタンパク質の総量は2.80mg)と、1バイアルあたり0.96mgのTFAとを含むDP-7P。
【0110】
次の化学物質を使用した:クレモフォールEL(Sigma Aldrich、Kolliphor EL、C5135);プロピレングリコール又はPG(≧99.5%、Sigma Aldrich、W294004)エタノール又はEtOH(無水、VWR Emprove(登録商標)Ph Eur、BP、USP. Article# 1.00986.1000);クエン酸又はCA(≧99%、Sigma Aldrich C1909);ミリQ(Milli Q)水(EQP-063より);滅菌モンタニドISA51VG(SEPPIC、バッチ#14V011)。
【0111】
次の機器を使用した:シリンジ押出装置(Discofix-3 T字型コネクタ、B. Braun);DMSO耐性シリンジ(2mL NORM-JECT Luer Lock、Henke Sass Wolf);Waters UPLC/MSシステム;マルバーン・マスターサイザー2000;Protein Simple MFI5200フローセル。
【0112】
方法
溶解
有機溶媒及び水性溶媒を混合して再構築組成物を調製した後、凍結乾燥された薬剤生成物に加えた。1mLの様々な再構築組成物を薬剤生成物に加え、溶液を数回渦流させる一方、混合物を5分間、放置した。物理的安定性を、目視検査で評価した。化学的安定性を、UPLC/MSを使用して評価した(下記の薬剤生成物溶液の化学的安定性を参照)。
【0113】
モンタニドを用いた乳化
視覚的に透明な薬剤生成物溶液が得られた溶媒の組合せを、モンタニドISA51VGとの乳化実験に使用した。特に明記しない限り、表1のプロトコルに従って再構築及び乳化を実施した。示されている場合、シリンジA及びBの内容物の混合は、別々に実施した。表3の手順におけるこれらの適応は、表4及び表5における結果の項目に示される。
【0114】
【表2】
【0115】
エマルジョン安定性を試験するためのレーザー回折実験
エマルジョン安定性を、目視と、マルバーン・マスターサイザー2000を使用した粒径分布分析との両方によってモニタリングした。
粒径分析について、所望のレベルのオブスキュレーションを得るために、水を用いて又は0.01Mクエン酸水溶液を用いて、エマルジョンの希釈を行った。モンタニドを、再構築されたDPを含む再構築組成物と、1750rpmの速度で撹拌機を使用して混合し、1.46の屈折率を適用した。粒径分布を、体積基準分布でのD(0.5)及びD(0.9)で表した。
【0116】
エマルジョン安定性を試験するためのマイクロフローイメージング(MFI)
エマルジョン安定性を評価するための粒径分析のための第2の技術として、マイクロフローイメージングを使用した。分析の前に、エマルジョンの1滴を10mLの0.01Mクエン酸水溶液に加え、均質になるまで混合し、次いでこの溶液を水で1:100希釈することによって、エマルジョンの希釈液を調製した。試料を、1回の単独のランで0.68分の期間に対して又は100万個の粒子あたり0.20mLのパージ体積で測定した。結果を円相当径(ECD)で表す。
【0117】
薬剤生成物溶液の化学的安定性
完全な溶解及び>2時間のエマルジョン安定性を示す試料について、薬剤生成物溶液(追加の希釈なし)の化学的安定性を、Waters Acquityカラム(BEH130型、C18、1.7μm、2.1×150mm)を使用してWatersTQD質量分析計に結合されたWaters Acquity UPLCシステムでUPLC/MSによりモニタリングした。データ処理は、Masslynx4.1ソフトウェアで行った。UV検出は220nmで実施し、移動相は、0.3mL/分の流量で、水中0.05%TFA及び1%のACN(緩衝液A)及びACN中0.05%TFA(緩衝液B)であった。カラム温度は65℃であり、オートサンプラー温度は5℃であった。5μLの注入容積を使用し、表2の勾配プロファイルを適用した。
UV検出は、勾配の全長の間で行い、質量分析は、ポジティブモードで2~30分行った。
薬剤生成物溶液の化学的安定性を分析するため、試料を、少なくとも溶解後2時間まで、様々な時間点で分析した。
【0118】
【表3】
【0119】
HPV-DP-6P及びHPV-DP-7Pワクチンエマルジョンの使用中の化学的安定性
完全な溶解、>2時間のエマルジョン安定性、及び>2時間の薬剤生成物溶液(追加の希釈なし)の化学的安定性を示す試料について、モンタニドISA51VGを用いたワクチンエマルジョンの使用中の化学的安定性をUPLC/MSでモニタリングした。再構築された及び乳化された薬剤生成物の化学的安定性を分析するため、試料を少なくとも溶解後2時間まで、様々な時間点で分析した。UPLC/MS分析は、薬剤生成物溶液の化学的安定性について上記した方法に従って、ワクチンエマルジョンからペプチドを抽出するための追加の試料調製ステップを使用して実施した。乳化生成物の試料を調製するために、以下のステップを適用した。
【0120】
300μLの再構築溶液を取り、これを15mLのGreiner管に加える;
100μLのヘプタンを加える;
200μLの薬剤生成物エマルジョンを加える。溶液をピペッティングして3回上下する;
混合物を30秒間ボルテックスする:
混合物を5分間4400rpmで遠心分離して二相系を得る;
20~200μLのピペットで、100μLの試料を最下層から取り、総回収UPLCバイアルに移す;
薬剤生成物溶液の化学的安定性について記載した方法に従ってUPLC/UV/MSで分析する。
【0121】
結果
再構築及び乳化のための溶媒スクリーニング
凍結乾燥されたペプチドを再構築し、モンタニドと化学的及び物理的に安定なエマルジョンを形成するために適した水性及び有機画分の両方を含む再構築組成物を定義するために、溶媒をスクリーニングした。下記の全ての実験は、DP-6Pを用いて実施した。実験は、DP-5P及びDP-7Pを使用して確認したが、データは非常に匹敵していたため、DP-6Pに関するデータのみを示している。このスクリーニングで、再構築されたタンパク質及びエマルジョンの物理的安定性は、目視検査によって評価した。
【0122】
有機画分として、多種多様な有機溶媒を試験した。WFI(注射用水)と混合したとき、DP-6Pを完全に溶解することができる唯一の単独の有機溶媒は、NMPであった(表3)。しかしながら、再構築組成物としてNMP/WFIを使用するとき、モンタニドとの安定なエマルジョンは得られなかった。WFIの代わりに生理食塩水を使用した場合はわずかにエマルジョン安定性が改善したが、≧2hの安定性を有するエマルジョンは、再現可能な方法では依然として得ることができなかった。
【0123】
【表4】
【0124】
再構築における有機溶媒混合物
単独の有機溶媒では、WFIと組み合わせてDP-6Pの完全な溶解をもたらす溶媒は同定されなかった。したがって、プロピレングリコールと他の溶媒との組合せを、再構築組成物における有機画分としてスクリーニングした。物理的安定性は、目視検査で評価した。化学的安定性は、UPLC/MSを用いて評価した。
【0125】
DP-6Pの完全な溶解は依然として観察されなかったが、DP-6Pの溶解について同定された最も随意な溶媒の組合せは、エタノール、プロピレングリコール、及び乳化剤としてのクレモフォールELとWFIとの混合物であった(図1)。
【0126】
ジスルフィド形成を制限しながら溶解プロセスをさらに改善するために、溶媒混合物(エタノールと、プロピレングリコールと、クレモフォールELと、WFIとの混合物)及びペプチド溶液へのいくつかの抗酸化剤及び還元剤の添加の効果を評価した。化学的安定性は、ジスルフィド形成の程度をモニタリングするためのUPLC/MSで分析した。DTT(ペプチドに対して35モル当量)又はアスコルビン酸(WFI中の0.1~1%溶液)の添加は、ジスルフィド形成の減少をもたらさなかったが、0.05~0.1Mのクエン酸水溶液の溶媒混合物への添加は、薬剤生成物の溶解後2時間でDP-6Pの溶解の改善とジスルフィドあたり≦1%の面積%値の限定されたジスルフィド形成をもたらした。pH3及び0.05~0.1Mの濃度でのクエン酸緩衝液は、ペプチドの溶解が乏しいため、乳化に使用できなかった(データ示さず)。図2は、0.1Mのクエン酸水溶液とプロピレングリコールとエタノールとクレモフォールELとの混合物と対比して1mg/mLのアスコルビン酸水溶液とプロピレングリコールとエタノールとの混合物で再構築されたDPの時間(t=0及びt=2h)での化学的安定性を示す。
【0127】
再構築後及びそれに続く乳化後の再構築組成物の試験
乳化剤としてクレモフォールELは、ワクチン製剤においてあまり好ましくないが、その理由は、より高い用量で副作用が報告されているためである。しかしながら、クレモフォールELの代替としての、ツイーン80、シクロデキストリン及びトリトンX(Triton X)の溶解及び乳化特性は不十分であった(データ示さず)。目視検査では、有望な結果が、プロピレングリコールとエタノールとWFI中のクエン酸と2%のツイーン20との組合せで得られた。表4にまとめられた乳化実験の結果は、クレモフォールEL又はツイーン20のいずれかと組み合わされたプロピレングリコール及びエタノールを含むエマルジョンが、最も安定なエマルジョンを生じることを示している。しかしながら、DP-6P及びDP-7Pの両方の溶液における化学的安定性は、クレモフォールELに代えてツイーン20を存在させることで顕著に悪化し、つまり、薬剤生成物の溶解後2時間でジスルフィドあたり5%を超える面積%値であった(DP-6PのUPLCクロマトグラムについて図3を参照;DP-5P及びDP-7Pについての結果は非常に類似していた(データ示さず)。
【0128】
まとめると、表4及び図3に示されるデータから、生成物の物理的及び化学的安定性の両方に基づいて、モンタニドとのDP-6Pエマルジョンのための乳化剤として、クレモフォールELが好ましいと結論づけることができる。
【0129】
溶液中の薬剤生成物の化学的安定性について得られた結果が、ワクチンエマルジョンにおける薬剤生成物の使用中の化学的安定性に変換できることを実証するために、DP-6P及びDP-7Pワクチンエマルジョンの使用中の安定性を試験し、結果を図4A、B、C及びDに示す。これらの結果は、乳化ステップ後に、ワクチン調製物における薬剤生成物の化学的安定性が保持されていることを確認する。
【0130】
【表5】
【0131】
乳化におけるロバスト性のための微調整
ペプチド溶解性及びエマルジョン安定性
PG/EtOH/クレモフォールELの比率を変化させ、2つの異なる濃度のクエン酸溶液を試験し、異なる乳化方法を適用し、混合物の有機成分対水性成分の比率を変化させる一連の実験を実施した。全体的に、有機溶媒及び水性溶媒を混合して1mLの再構築組成物を調製した後、それを凍結乾燥された薬剤生成物に加えた。次いで、表5及び6に示す異なる混合ステップ及び/又はコネクタを使用して、1mLのモンタニドを、1mLのペプチド水溶液に加えることによって、エマルジョンを調製した。
【0132】
【表6】
【0133】
より詳細なペプチドエマルジョン安定性:レーザー回折によるPSD分析
5つの異なる再構築組成物について、粒径に対する異なる乳化方法の影響を、マルバーン・マスターサイザー2000を使用したレーザー回折法で分析した。全ての試料について、有機溶媒及び水性溶媒を混合して1mLの再構築組成物を調製した後、それらを凍結乾燥された薬剤生成物に加えた。次いで、1mLのモンタニドを、1mLのペプチド水溶液に添加することによって、エマルジョンを調製した。有機相及び水相の混合は3つの異なる方法で行った:
T字型コネクタプロセスを使用して、表6に示す混合サイクルを行う、
I字型コネクタを使用して、表6に示す混合サイクルを行う;又は
1mLのモンタニドを、再構築組成物中にペプチド溶液を含有するバイアルに加え、混合物を30秒間ボルテックスする。
【0134】
結果の概要を表6に示す。D(0.5)の近似値を示している(体積基準分布)。
【0135】
【表7】
【0136】
表5及び表6の両方から、異なる混合方法及び/又は異なる使用コネクタの種類の間でエマルジョン安定性の差異が観察されなかったことが分かる。しかしながら、コネクタの使用に代えて混合物をボルテックスすることは、非常に大きな粒径を有し、安定性が不利なエマルジョンを生じた。全体的に、粒径が小さいエマルジョンほど、より安定であった。
【0137】
さらに、エマルジョン安定性は、再構築組成物の総体積における有機画分(混合物)のパーセンテージを増加させることによって改善した。しかしながら、ここで試験した有機含有量のうちの最高体積(300~400μL)で、薬剤生成物の溶解性の減少が生じた。したがって、最適な有機含有量は、再構築組成物1mLあたり200~300μL(約250μL)であった。さらに、クエン酸(0.05又は0.1M)溶液の濃度の変化はエマルジョン安定性に影響を与えていないようであったが、0.1Mのクエン酸溶液を使用したとき、DP-6Pの溶解がわずかに良好であった。
【0138】
マイクロフローイメージングを使用する粒径分析
エマルジョンの安定性及び粒径に対するクエン酸濃度の影響をより詳細に研究するために、追加の粒径分析実験を、1mLのモンタニドと乳化した後に最小の粒径を生じた溶媒、つまり有機相:水相の比率が1:3であって有機相がPG、EtOH及びクレモフォールELをPG:EtOH:クレモフォールELの比率1:2:1で含む再構築組成物(表6)、を使用して比較した。水相におけるクエン酸のモル量を変化させる(0.05及び0.1Mクエン酸、つまり再構築組成物中のクエン酸の最終濃度がそれぞれ0.038及び0.075Mクエン酸)直接比較により実験を行った。DP-6Pを、1mLのそのような再構築組成物に溶解し、次いで、T字型コネクタプロセスを使用し、50回の高速混合サイクルを行って、1mLのモンタニドと乳化した。これらの実験では、薬剤生成物の溶解並びに粒径及びエマルジョン安定性の両方を分析した。読み出しとして、不規則性を視覚的に試験できるように、カメラで粒子を視覚化するためにMFI5200を使用したマイクロフローイメージング(MFI)を行った。0.05M及び0.1Mクエン酸のクエン酸再構築組成物のPSD比較を図5に示す。
【0139】
図5に見られるように、クエン酸溶液の濃度は、エマルジョンのPSDに影響を与えない。しかしながら、薬剤生成物の溶解は、0.1Mクエン酸を使用したときの方がわずかに良かった。図6は、DP-6Pエマルジョンの3つの独立した調製物(図6、パネルA)又は調製後の2つの異なる時間点で分析した2つの独立した調製物(図6、パネルB)のMFIの結果を示し、ここで薬剤生成物は、同じ溶媒の組合せ(750μLの0.05Mクエン酸+250μLの1:2:1のPG/EtOH/クレモフォールEL)を使用して再構築されたものである。非常にロバストなPSD結果が得られた。さらに、エマルジョンは全て少なくとも2時間安定であった。
【0140】
DP-6P及びDP-7Pに対する好ましい再構築溶媒及び乳化方法の適用
750μLのクエン酸溶液+250μLの1:2:1のPG/EtOH/クレモフォールELが、DP-6Pエマルジョンに対してロバストなPSD結果を示し、0.1Mクエン酸の使用が薬剤生成物の最も良好な溶解をもたらしたことから、この溶媒の組合せを、DP-6P及びDP-7Pエマルジョンの調製について広範に試験した。
【0141】
DP-6P及びDP-7Pエマルジョンを、表1の手順に従って調製した。簡単に述べると、1mLの再構築組成物(750μLの0.1Mクエン酸+250μLの1:2:1のPG/EtOH/クレモフォールEL)を凍結乾燥された薬剤生成物に加え、得られた溶液を、T字型コネクタを使用し、50回の高速混合サイクルを適用して、1mLのモンタニドと混合した。MFI分析のためのPSD値をECD(円相当径)で示し、個数基準分布を示す。MFI、レーザー回折は補完的技術であることに留意すべきである。したがって、レーザー回折によって得られる平均粒径値とMFIによって得られる平均粒径値との直接比較は行うことができない。
【0142】
【表8】
【0143】
【表9】
【0144】
表7及び8は、750μLの0.1Mクエン酸+250μLの1:2:1のPG/EtOH/クレモフォールEL(つまり、0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールEL)を含む再構築組成物を使用して、DP-6P及びDP-7Pエマルジョンの両方について、少なくとも3時間安定なエマルジョンを調製することができることを示している。
【0145】
実施例2
導入
CpG1826と組み合わせたSLPワクチン接種の治療的有効性は、HPV16の発癌性E6及びE7タンパク質を発現する樹立されたTC-1腫瘍を保持するマウスにおいて以前に実証されている(Zwaveling et al., J. Immunol. (2002) 169: 350-358)。SLPが、実施例1で同定された最適な製剤(750μLの0.1Mクエン酸+250μLの1:2:1のPG/EtOH/クレモフォールEL)で機能性を保持しているかを評価するために、DMSO/WFI又は新規再構築組成物のいずれかで再構築されたD拘束性CTLエピトープRAHYNIVTF(配列番号67によって本明細書で表される)を保有するSLPを用いて、TC-1腫瘍を担持するマウスに、治療的にワクチン接種した。全てのワクチンをその後にモンタニドと乳化した。腫瘍伸長を、75日間モニタリングした。ワクチン誘導T細胞応答のピークで、RAHYNIVTF特異的CD8T細胞のパーセンテージ及び表現型を血液中で決定した。DMSO/WFI及び新規再構築組成物で再構築されたSLPは、TC-1腫瘍退縮の誘導において同様の効力を示した。新規溶液で再構築されたSLPでワクチン接種したマウスは、血液中のRAHYNIVTF特異的CD8T細胞のパーセンテージがより高かった。
【0146】
材料
【0147】
【表10】
【0148】
方法
ワクチン調製
以下のマウスの群を試験に含めた。
【0149】
第1群:(n=5)モンタニドISA VG51と1:1で乳化した40%v/v DMSO/WFI
第2群:(n=5)モンタニドISA VG51と1:1で乳化した再構築組成物(1mLあたり、0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールEL)
第3群:(n=10)モンタニドISA VG51と1:1で乳化した40%v/v DMSO/WFIに溶解させたSLP GQAEPDRAHYNIVTFCCKCDSTLRLCVQSTHVDIR及び20μgのCpG ODN1826/マウス。
第4群:(n=10)モンタニドISA VG51と1:1で乳化した再構築組成物(1mLあたり、0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、62.5μLのプロピレングリコールと、125μLのエタノールと、62.5μLのクレモフォールEL)に溶解させたSLP GQAEPDRAHYNIVTFCCKCDSTLRLCVQSTHVDIR(配列番号6)及び20μgのCpG ODN1826/マウス。
【0150】
第1群のマウスのために、400μLのDMSOと600μLのWFIとを混合し、続いて渦流することによって、溶液を調製した。溶液を、2mLのLuer-Lockシリンジ(シリンジA)に取った。別の2mLのLuer-Lockシリンジ(シリンジB)に、1mLのモンタニドISA VG51を取り、その後、両方のシリンジを、T字型コネクタに接続した。内容物を前後に広く混合させることによって、エマルジョンを作製した。混合後、シリンジを取り外し、25G針を、エマルジョンを含むシリンジに配置した。マウス毎に100μLを左脇腹の皮下に注射した。
【0151】
第2群のワクチンは、DMSO及びWFIに代えて、再構築組成物(0.1Mクエン酸を含む750μLの水と、250μLの1:2:1のPG/EtOH/クレモフォールEL、つまり、水中に、0.075Mのクエン酸と、6.25%v/vのプロピレングリコール(CAS番号57-55-6)と、12.5%v/vのエタノールと、6.25%v/vのポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート35(CAS番号61791-12-6))を使用することで異なる以外は、同一の様式で調製した。第3群のワクチンは、最初に、配列番号6(GQAEPDRAHYNIVTFCCKCDSTLRLCVQSTHVDIR)によって本明細書で表される1.5mgのSLPを含有するバイアルの内容物を、400μLのDMSOに溶解することによって調製した。SLPは、Fmoc固相ペプチド合成(Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis, A Practical Approach, W. C. Chan,P.D. White Eds, Oxford Univ. Press 2000)を介して製造した。次いで、520μLのWFI及び80μLのCpG ODN1826(ストック5mg/ml)を、DMSO中のペプチドに加えた。この溶液を2mLのLuer-Lockシリンジに取った後、モンタニドISA VG51と乳化することによって、第1群と同様のワクチン調製プロトコルに従った。第4群についてのワクチン調製は、第1のステップで1.5mgのSLP配列番号6を含むバイアルの内容物を920μLの再構築組成物に溶解させ、80μLのCpG ODN1826を加えたこと(ストック5mg/ml)で異なる以外は、第3群のプロトコルと同一であった。
【0152】
治療用ワクチン接種
HPV16の発癌性E6及びE7タンパク質を発現するTC-1腫瘍細胞を、400μg/mlのジェネティシンを補充した完全IMDM培養培地で培養した。0日目に、TC-1細胞を、トリプシンを使用して採集し、PBS/0.1%BSAで3回洗浄した。採集直後に、100,000個のTC-1細胞を、40匹の雌C57BL/6マウスの右脇腹に皮下注射した。8日目に、全てのマウスの左脇腹に、ワクチン調製の項目に記載したように、ワクチンを皮下接種した。全てのマウスの腫瘍の大きさを、腫瘍チャレンジ後75日目まで、カリパスを使用して、1週間に少なくとも2回モニタリングした。図7に示すように試験を行った。
【0153】
血液中のT細胞応答の強度の測定
ワクチン接種後9日目に、血液を、全てのマウスの尾静脈から採取した。血液試料を96ウェル培養プレートに移し、1600rpmで5分間遠心分離した。赤血球を、橙色の着色が観察されるまで、溶解緩衝液中に血液細胞ペレットを懸濁することによって溶解した。その後、細胞をFACS緩衝液において洗浄し、上記の材料の項目で述べた蛍光抗体D-RAHYNIVTF-APCテトラマー及び7-AADで染色した。氷上で30分インキュベーションした後、細胞を洗浄し、ライデン大学医療センター(リウマチ学部門)のBD LSRIIフローサイトメーターで分析した。
【0154】
結果
ワクチン接種群間で類似の腫瘍伸長
少なくとも週二回、腫瘍の大きさをモニタリングすることによって、それぞれの個々のマウスについて増殖曲線を作成することができた。図8に、腫瘍の伸長を種々の群について示す。腫瘍退縮は、SLP6及びCpG1826でワクチン接種した全てのマウスで観察される。DMSO/WFIとモンタニド又は再構築組成物とモンタニドのいずれかでビヒクルのみを受けた対照群では、腫瘍は急速に増殖する。自然変動のほかには、両方のSLP-ワクチン接種群の間で明確な差異は観察されなかった。ワクチン接種群間で差異がないことを示すカプラン・マイヤー生存プロットについて図9Aを参照。
【0155】
ワクチン誘導テトラマー陽性CD8T細胞
図9Bは、誘導されたD-RAYNIVTF(テトラマー)陽性CD8T細胞のパーセンテージを示す。第4群(Rec.組成物+SLP)におけるマウスは、増強されたテトラマー陽性CD8T細胞応答を示し、特定のマウスCD8T細胞のプライミングにおいて、再構築組成物で製剤化されたSLP及びCpGが、DMSO/WFIとモンタニドのエマルジョンで製剤化されたSLP及びCpGより有効であることを示唆している。群あたりの平均パーセンテージ及び標準偏差について表9を参照。
【0156】
対応のないt検定を使用して有意差を決定し、第3群と第4群との間のp=0.022のp値を得た。
【0157】
KLRG1及びCD62Lの発現は、SLP6でワクチン接種後の、良好な抗腫瘍発現プロファイルを示す。
【0158】
Van Duikerenらによる研究(J Immunol, 2012; 189(7):3397-403)は、有効な抗腫瘍応答の誘導と相関するパラメータを特定することを目的としている。そのようなバイオマーカーを同定することによって、腫瘍モデルの予後値を有する非腫瘍担持マウスにおいて、異なるワクチン組成物を試験することができる。著者は、一方でKLRG1の発現とCD62L発現欠如との相関関係を見い出し、他方で効果的な抗腫瘍免疫応答を見い出した。ワクチン接種後9日目のワクチン接種マウスの血液中のKLRG1-及びCD62L-発現D-RAHYNIVTFCD8T細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーを使用して決定した。RAHYNIVTF特異的KLRG1CD62LCD8T細胞のパーセンテージの差異は、第3群と第4群との間で観察されない。ビヒクルのみでワクチン接種したマウスの群(第1群及び第2群)では、KLRG1及びCD62Lの発現を確実に試験できるような十分なRAHYNIVTF特異的CD8T細胞は検出されなかった。群あたりの平均パーセンテージ及び標準偏差について表10を参照。
【0159】
【表11】
【0160】
考察
DMSO/WFI又は再構築組成物のいずれかに溶解させたSLP6でワクチン接種したマウスの群の間で全体的な腫瘍の伸長の差異は観察されなかった。DMSO/WFIに溶解させたSLPでワクチン接種したマウスの群と比較して、再構築組成物に溶解させたSLPでワクチン接種したマウスの群における特定のCD8T細胞の誘導増強が観察された。
【0161】
モンタニドのアジュバント特性は、抗原提示細胞の成熟を促進する抗原デポーの形成並びに局所炎症及び細胞死の誘導に起因している。再構築組成物に溶解させたSLPでワクチン接種したマウスの群におけるテトラマーCD8T細胞の誘導増強は、この溶液とモンタニドとの組合せが、抗原放出特性又は抗原提示細胞の局所刺激に有益なエマルジョンを構成していることを示唆する。KLRG1発現及びCD62Lの非存在の好ましいプロファイルは、SLPでワクチン接種したマウス群の両方で同様であった。データは、本発明の再構築組成物で再構築されたSLPが、使用された元の再構築組成物(DMSO/WFI)と比較して、その免疫原性能力を維持していることを実証している。
【0162】
実施例3
材料
以下の凍結乾燥されたペプチド組成物を使用した:
P53 DP5P:配列番号191、193、194、201及び203によって本明細書で表されるペプチドを含む。
【0163】
次の化学物質を使用した:クレモフォールEL(Sigma Aldrich. Kolliphor EL);プロピレングリコール(≧99.5%、Sigma Aldrich);エタノール(無水、VWR Emprove(登録商標)Ph Eur. BP.USP);クエン酸(≧99%、Sigma Aldrich);ミリQ水;滅菌モンタニドISA51VG(SEPPIC.)
次の機器を使用した:シリンジ押出装置(Discofix-3 T字型コネクタ。B. Braun);DMSO耐性シリンジ(2mL NORM-JECT Luer Lock. Henke Sass Wolf);Waters UPLC/MSシステムEQP-004;Protein Simple MFI5200
【0164】
方法
ワクチンエマルジョン及びプラセボエマルジョンの調製を表1に記載されるように実施した。
【0165】
化学的安定性の分析は、実施例1で、ワクチンエマルジョンからのペプチドの抽出を含め、HPV-DP-6P及びHPV-DP-7Pワクチンエマルジョンの使用中の化学的安定性の分析のための方法を説明している項目に記載されているように、UPLC-MSによって実施した。
【0166】
粒径分析は、マイクロフローイメージングによって実施した。分析の前に、10μLのエマルジョンを10mLの再構築溶液に加え、均質になるまで混合し、次いでこの溶液を再構築溶液で1:500希釈することによって、ワクチンエマルジョンの希釈液を調製した。
【0167】
MFI5200の分析設定:
方法:DS500.2
試料体積:1mL
パージ体積:0.20mL
分析:0.68分又は1.000.000個の粒子
連続ラン:1
結果は円相当径(ECD)で表し、個数基準分布を示す。≧15μmの粒径は、エマルジョン粒子ではなくアーティファクトであることが既知であるので、結果から除外した。
【0168】
結果
再構築された薬剤生成物の純度
異なる時間点での薬剤生成物の純度を以下のように計算した。
純度(%)=100%-不純物の合計≧0.05%面積
P53-DP-5Pワクチン生成物の使用中の純度の概要を(エラー!参照元が見つかりません)に示す。
【0169】
【表12】
【0170】
(エラー!参照元が見つかりません)から分かるように、薬剤生成物の純度はゆっくりと低下するが、ワクチン調製後2時間、依然として≧90.0%である。t=0及びt=2hでのワクチンのUPLC分析の例示的なクロマトグラムを図10に示す。
【0171】
主ピーク及び面積≧1.0%の面積を有する不純物の同定を、質量分析法を用いて実施した。面積≧1.0%の面積を有する全ての関連物質を、ペプチド配列の分子質量を用いた尺度m/z値及びそれらの既知及び予測される修飾を比較することによって報告し、同定する。P53-DP-5Pの3時間までの使用中の保存について関連物質の結果の概要を表12に示す。
【0172】
【表13】
【0173】
エマルジョンからの薬剤生成物の回収
P53-DP-5Pに存在する、エマルジョンからの5つの個々のペプチドの回収を、乳化及び非乳化試料のシグナルの比較によって検証した。結果の概要を(エラー!参照元が見つかりません)に示す。
【0174】
【表14】
【0175】
物理的安定性
物理的安定性を、MFIを用いた粒径分析によって分析した。結果を円相当径(ECD)で示す。個数基準分布から計算された平均粒径値を表14に示す。
【0176】
【表15】
【0177】
結論
溶解は、P53抗原(P53 DP-5P)から誘導される5つのSLPを含む混合物について首尾よく実施された。
【0178】
ワクチン生成物の化学的及び物理的な使用中の安定性の両方を試験した。表11に要約されるP53 DP-5Pについての関連物質の分析及び純度の計算は、ワクチン調製後2時間、薬剤生成物の純度が≧90.0%であることを示す。≧1%のピーク面積%を有する1つの関連物質のみを観察した。MS同定は、このピークが、配列番号203で示されるペプチドの分子内ジスルフィドであることを示した。
【0179】
P53 DP-5Pワクチン生成物の物理的安定性を、MFIでその粒径をモニタリングすることによって試験した。粒径分析の結果を表14にまとめる。その結果は、ワクチン調製後3時間まで粒径が変化していないことを示している。さらに、全てのワクチン生成物を安定性試験の間、目視検査によってモニタリングしたが、相分離はどの時間点でも観察されなかった。
【0180】
実施例4
材料及び方法
以下の凍結乾燥されたペプチド組成物を使用した:
配列番号153、155、156、160及び166によって示されるペプチドを含むPRAME DP5P:
5つのPRAME由来ペプチドのセットを、UPLC保持時間、アミノ酸組成の変動、及び目視検査によって決定される再構築溶液の溶解性に基づいて選択した。
【0181】
使用した他の材料及び方法は、実施例3と同様であった。
【0182】
結果
再構築された薬剤生成物の純度
異なる時間点での薬剤生成物の純度を以下のように計算した。
純度(%)=100%-不純物の合計≧0.05%面積
PRAME-DP-5Pワクチン生成物の使用中の純度の概要を表15に示す。凍結乾燥されたPRAME-DP-5Pの純度が既に90%未満であることに留意すべきである。それにもかかわらず、長期間での純度の減少が非常に限られていることは、この再構築された薬剤生成物の良好な化学的安定性を示している。
【0183】
【表16】
【0184】
長期間で純度の低下が低いことは、化学的安定性が高いことを示す。PRAME-DP-5Pにおいて面積≧1.0%の面積を有する不純物が、再構築前に混合物中に既に存在していた。この安定性試験でこれらの不純物の顕著な増加は観察されなかったことから、不純物の同定は実施しなかった。PRAME-DP-5Pの3時間までの使用中の保存について関連物質の結果の概要を表16に示す。
【0185】
【表17】
【0186】
エマルジョンからの薬剤生成物の回収
エマルジョンからのPRAME-DP-5Pに存在する5つの個々のペプチドの回収を、乳化及び非乳化試料シグナルの比較によって検証した。結果の概要を表17に示す。
【0187】
【表18】
【0188】
結論
PRAME DP-5Pの純度は、完全に満足というわけではない(<90%)が、再構築ワクチン生成物の純度の低下は非常に限定されており(純度T=0 82.9%、T=3h 82.2%)、本明細書に記載の組成物の利点が確認される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
【配列表】
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