(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】スロープを備える台秤
(51)【国際特許分類】
G01G 19/02 20060101AFI20220802BHJP
G01G 19/44 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G01G19/02 Z
G01G19/44 Z
(21)【出願番号】P 2019001045
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-080626(JP,A)
【文献】特開2002-019524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/00-19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量機構を有する計量台本体と、前記計量台本体の側面に回動可能に取り付けられるスロープとを備える台秤であって、
前記計量台本体と前記スロープの間にはエラストマーで構成される、前記スロープの回動に伴う衝撃吸収のための弾性部材が介在し、
前記スロープの前記計量台本体に取付けられる側面には、前記スロープの該回動軸方向に沿った溝が形成され、
前記弾性部材の前記スロープと対向する対向面には、前記溝に係合する凸部が形成されている、
ことを特徴とする台秤。
【請求項2】
前記スロープの前記計量台本体に取付けられる側面の下端には、前記弾性部材の前記スロープとの対向面と当接する下面凸部が下方に向かって形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の台秤。
【請求項3】
前記スロープの前記計量台本体に取付けられる側面の上端には、前記計量台本体に向かって延出し、前記スロープの上面を延長して前記弾性部材の上面を覆う上面凸部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の台秤。
【請求項4】
前記弾性部材は前記計量台本体の前記側面にネジ固定され、
前記ネジは、該上面が前記弾性部材の前記スロープとの対向面から前記計量台本体側に所定量オフセットされた位置となるように配置される、
ことを特徴とする
請求項3に記載の台秤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は主に車椅子体重計などのスロープを備える大型の台秤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用体重計などの大型の台秤は、車椅子を使用しなければならない歩行困難者でも容易に体重の測定ができるように、車椅子に乗ったまま計量台に乗り上げることができるスロープを設けている。
【0003】
例えば特許文献1では、回動して計量台に折りたためる導入路(スロープ)が設けられており、通常状態でスロープが地面に接触しない程度にバネで上方向に付勢している。車椅子がスロープにかかるとバネが伸びてスロープが床面に接触して、車椅子は無理なく載置台に載ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、スロープはバネにより上方向に付勢されているため、車椅子がスロープを登り載置台まで移動してスロープから離れると、伸びたバネの元に戻ろうとする力によって、スロープは上方へ向かって勢いよく跳ね上がって被計量者のいる載置台まで回動するため、安全性に問題があり、さらに上に伸びた反動により今度は再び下方へ戻って床面を強く打ちつけ、大きな音を発生してしまう問題もあった。
【0006】
本発明はこれを鑑みてなされたものであり、その目的は、静粛性を持ち安全に動作するスロープを備えた台秤の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明のある態様の台秤では、計量機構を有する大型の平板型計量台本体と、前記計量台本体の側面に回動可能に取り付けられるスロープとを備える台秤であって、前記計量台本体と前記スロープの間にはエラストマーで構成される弾性部材が介在するよう構成した。エラストマーの弾性部材を介在させることで、付勢させずともスロープを持ち上げることができるため、スロープの安全性が向上し、かつ上下方向の回動の反動が和らげる緩衝材としても働くため、床の打ち付けによる騒音の発生を抑制することができる。
【0008】
またある態様では、前記スロープの前記計量台本体に取付けられる側面には、前記スロープの該回動軸方向に沿った溝が形成され、前記弾性部材の前記スロープと対向する対向面には、前記溝に係合する凸部が形成されているよう構成した。この構成により、上下の両方の回動の衝撃が吸収され安全性が高い。
【0009】
またある態様では、前記スロープの前記計量台本体に取付けられる側面の下端には、前記弾性部材の前記スロープとの対向面と当接する下面凸部が下方に向かって形成されているよう構成した。下方回動時のスロープと弾性部材の接触面積が増加し、回動衝撃の吸収性能が向上する。
【0010】
またある態様では、前記スロープの前記計量台本体に取付けられる側面の上端には、前記計量台本体に向かって延出し、前記スロープの上面を延長して前記弾性部材の上面を覆う上面凸部部が形成されているよう構成した。下方回動から復帰する付勢を発生すると共に付勢の反力や衝撃を分散して受け、耐久性が向上する。
【0011】
またある態様では、前記弾性部材は前記計量台本体の前記側面にネジ固定され、前記ネジは、該上面が前記弾性部材の前記スロープとの対向面から前記計量台本体側に所定量オフセットされた位置となるように配置されるよう構成した。弾性部材を固定するネジをこのように配置することで、スロープの過度な回動を防止し、弾性部材に過度な負荷がかかりそのクッション性が損なわれることを防止した。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、静粛性を持ち安全に動作するスロープを備えた台秤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る台秤である体重計であり、(A)が使用状態、(B)が収容状態を示す。
【
図5】同計量台の分解斜視図であり、弾性部材の取付状態を示す説明図である。
【
図6】
図5のVI-VI線に沿った断面図であり、スロープの回動および弾性部材の働きを説明する説明図である。
【
図7】
図5のVII-VII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る台秤である体重計1であり、(A)が使用状態、(B)が収容状態を示す。
図2~
図5はそれぞれ体重計1を構成する計量台10の平面図、斜視図、正面図、分解斜視図である。
図6及び
図7はそれぞれ
図5のVI-VI線、VII-VII線に沿った断面図である。なお、
図2~
図7では、計量台10の構造を説明するためにカバー11は省略している。
【0016】
図1に示すように、体重計1は計量台10とスタンド2を備える。スタンド2は、計量台10を収容及び搬送が可能で、計量台10を収容した状態においても、計量台10を収容しない単独の状態においても、他者による支えを必要とせず、自立可能である。
【0017】
スタンド2は、上下方向に揺動可能に支持された表示部4を備える。体重計1を使用の際、表示部4は、床面に設置された計量台10とケーブル3で接続されて計量結果を表示する(
図1(A)参照)。体重計1を搬送の際は、ケーブル3が外され、計量台10が倒立してスタンド2に納まり、表示部4が計量台10に係合して、計量台10を固定する(
図1(B)参照)。計量台10と表示部4とは、ケーブル3の代わりにBluetooth(登録商標)等の無線により接続されるよう構成しても良い。
【0018】
計量台10は、計量台本体15、スロープ19、載置台16を備える。計量台本体15は扁平直方体をなし、内部に計量機構を備える。計量機構は、例えば特開平10-232161号などに詳しく、従来周知の構成である。載置台16は計量台本体15の上面を覆っており、載置台16に載置された荷重が計測される。
【0019】
計量台10は車椅子体重計などの医療用の大型の薄型秤であり、車椅子に乗ったまま直接載置台10に乗り上げたり、足を高く上げることなく直接載置台10に載って測定できるように、対向する左右の二辺に設置状態で床面に連なる緩勾配のスロープ19を備える。載置台16に載った被計量者の体重を車椅子ごと計量し、車椅子の重量を差し引いて被計量者の体重を求めることができる。
【0020】
計量台10は前後の対向する二辺をカバー11で覆われ、カバー11の分だけ前後の辺が載置台16よりも少し高くなっている。カバー11により被計量者の進入路が案内される。カバー11により進入路の側辺を高くすることで、被計量者が誤って進入路からはみ出して計量台10から転倒することを防止している。
【0021】
進入路の傾斜面であるスロープ19の上面には、乗り上がった車椅子が滑らないように、車椅子の進行方向に直交して、多数のすべり止めの浅い溝が所定間隔に並んで形成されている。
【0022】
スロープ19は、計量台本体15の側面に固定されたL字ブラケット14に取付けられたヒンジ13を介して、計量台本体15の左右の辺と平行な軸A(
図3参照)を回転軸として、計量台本体15の左右の側面に回動可能に支持される。
【0023】
スロープ19が取り付けられる計量台本体15の左右の側面には、弾性部材17が側面に沿ってネジ18で固定されている(
図5参照)。スロープ19は、計量台本体15の側面に弾性部材17を挟んで取付けられ、弾性部材17の介在によりスロープ19の自由端は持ち上げられ、スロープ19に荷重のかからない通常状態で、床面に接地せず僅かに床面から離間している。これは、スロープ19が床面に接地して、載置台16にかかる荷重が内部の計量機構だけでなく床面にもかかって分散してしまい計量誤差が生じることを防止するためである。
【0024】
弾性部材17は例えばシリコンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等の常温で非常に大きな弾性を有する高分子材料の樹脂材料であるエラストマーから構成される。弾性部材17にかかる荷重は被計量者の体重のみならず車椅子の重量まで含まれることから、耐荷重性や耐久性の高い部材が好ましい。弾性部材17によりスロープ19の回動の衝撃が吸収され、スロープ19はゆっくりと回動する。
【0025】
脚9が計量台本体15の底面の四隅にそれぞれ備えられ、スロープ19を含む計量台10の荷重、及び載置台16に載置された荷重の全てを支える。計量台本体15の内部に配置された補助部材12により、平板状の載置台16は支持されている。
【0026】
弾性部材17及びスロープ19の構成について
図6(ネジ18が存在する位置での断面図)を用いて詳しく説明する。
【0027】
スロープ19はアルミニウム材等の金属材の押出し成形品であり、前後の端部に切断面を有する。即ち前後方向に長く形成され、長手方向(前後方向)に直交する縦断面形状は長手方向のどの位置においても同一となっている。
【0028】
ネジ18はスロープ19と対向し、弾性部材17を固定した状態で、その頭部上面18aは弾性部材17のスロープ19との対向面17bから計量台本体15側に所定量オフセットされた位置となる。金属製のネジ18がスロープ19に接触すると、金属製のネジ18がスロープ19のそれ以上の回動を阻止するため、頭部上面18aが対向面17bと面一では弾性部材17のクッション性を利用できないことから、ネジ18は頭部上面18aが計量台本体15側に入り込んだ位置となるように構成されている。スロープ19の自由端が床面に当接した状態では下面凸部19aとネジ18の頭部上面18aとは接触しないが、さらにスロープ19が下方へ回動して所定角以上に下方回動すると、下面凸部19aがネジ18の頭部上面18aに当接するようにネジ18は位置を調整されている。ネジ18がスロープ19の過度な下方回動を阻止し、過度な回動により弾性部材17に高負荷がかけられてその緩衝性が損なわれるのを防止している。
【0029】
計量台本体15と対向するスロープ19の側面19dの下面側には、下方に向かって伸びる下面凸部19aが形成されている。弾性部材17のスロープ19との対向面17bに、下面凸部19aは当接する。下面凸部19aにより、スロープ19は弾性部材17との接触面積が増加し、スロープ19の下方回転時に弾性部材17のクッション性を効率よく利用できる。
【0030】
スロープ19の側面19dの上面側には、側面19dから計量台本体15へ向かって延出する上面凸部19cが形成され、弾性部材17の上面17cを覆っている。スロープ上方回動時に下面凸部19aが上面17cと当接するため、上方回動時の衝撃の吸収能力が向上する。また上面凸部19cによってスロープ19の上面が計量台本体15に向かって延長されるため、スロープ19と計量台本体15間にある隙間が埋められ、被計量者のスロープ19から載置台16への移動がスムーズとなる。
【0031】
また側面19dには、スロープ19の回動軸に沿って溝19bが形成されている。対向面17bには、溝19bに係合する凸部17aが突設されており、凸部17aが溝19bに入り込んだ状態でスロープ19は支持される。溝19bにより、上方向と下方向の両方向におけるスロープ19回動の衝撃を弾性部材17で和らげることができる。
【0032】
スロープ19の回動と弾性部材17の働きについて
図7(ネジ18が存在しない位置での断面図)を用いて詳しく説明する。
図7では、(A)が通常状態、(B)が通常状態から下方へ回動した状態、(C)が通常状態から上方へ回動した状態をそれぞれ示す。
【0033】
図7(A)に示すように、スロープ19に荷重のかかっていない通常状態では、スロープ19と計量台本体15の間に介装された弾性部材17により、スロープ19の自由端は持ち上げられ、床面から離間している。
【0034】
例えば車椅子に乗った被計量者が載置台16に車椅子で乗り上げようとして、スロープ19の自由端に車椅子の車輪がかかると、車輪はそのままスロープ19を下方へ押し下げる。溝19bの下面が凸部17aの下面に、下面凸部19aが対向面17bにそれぞれ当接して、弾性部材17がスロープ19の下方回動の衝撃を吸収し、ゆっくりとスロープ19が下方へ回動する。スロープ19の自由端が床面に接地して停止し床面と連なると、車椅子は容易に載置台16に進むことができる(
図7(B)参照)。
【0035】
車椅子が載置台16まで移動して、スロープ19上面にかかる荷重が除去されると、スロープ19は、反動少なく静かに通常状態に戻る。
【0036】
計量後に計量台10をスタンド2に収納しようとして、計量台10を倒立状態にするためにスロープ19と床面との間に手を入れて持ち上げようとすると、今度はスロープ19に対して上方向に回動させようとする力が働く。上面凸部19cの下面を含めた溝19bの内面が弾性部材17の上面17cや凸部17aの側面に当接し、弾性部材17がスロープ19の上方回動の衝撃を吸収してそのままスロープ19を支持する(
図7(C)参照)。計量台10はそのままの状態で持ち上げられて倒立したままスタンド2に収められる。
【0037】
スロープと計量台の間にバネ等を介装させてスロープを上方向へ付勢させて支持すると、スロープにかかる荷重が除去された後、バネの元に戻ろうとする力によって強く跳ね返り計量台まで回動してしまうことがあるなど安全性や騒音の問題があった。本実施形態では、弾性部材17をスロープ19と計量台本体15の間に介在させてスロープ19を支持し、弾性部材17とスロープ19を上記形状にして、弾性部材17の複数面でスロープ19を支持することで、上下方向の両方の回動の衝撃を緩衝させることができ、スロープ19は上下どちらの方向にもゆっくり動作し安全性が高い。またスロープを付勢せずに支持するため、反動を減少させることができ、意図せぬスロープの打ち付けも抑制され静かに動作し静粛性が高い。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 体重計
10 計量台
15 計量台本体
17 弾性部材
17a 凸部
17b 対向面
17c 上面
18 ネジ
18a 頭部上面
19 スロープ
19a 下面凸部
19b 溝
19c 下面凸部
19d 側面
A 回転軸