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特許7115817大型土嚢を用いた補強土壁及び大型土嚢を用いた土留め方法
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  • 特許-大型土嚢を用いた補強土壁及び大型土嚢を用いた土留め方法 図1
  • 特許-大型土嚢を用いた補強土壁及び大型土嚢を用いた土留め方法 図2
  • 特許-大型土嚢を用いた補強土壁及び大型土嚢を用いた土留め方法 図3
  • 特許-大型土嚢を用いた補強土壁及び大型土嚢を用いた土留め方法 図4
  • 特許-大型土嚢を用いた補強土壁及び大型土嚢を用いた土留め方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】大型土嚢を用いた補強土壁及び大型土嚢を用いた土留め方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20220802BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20220802BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20220802BHJP
   E02B 3/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
E02D17/18 A
E02D17/20 106
E02D17/20 103Z
E02D5/80 Z
E02B3/04 301
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017023355
(22)【出願日】2017-02-10
(65)【公開番号】P2018127865
(43)【公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-02-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】桐山 和也
(72)【発明者】
【氏名】長沼 明彦
(72)【発明者】
【氏名】武藤 裕久
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-094443(JP,A)
【文献】特開2010-077639(JP,A)
【文献】特開平07-127066(JP,A)
【文献】特開2015-169020(JP,A)
【文献】特開2003-082666(JP,A)
【文献】特開2016-075047(JP,A)
【文献】特開平11-323943(JP,A)
【文献】特開2002-294724(JP,A)
【文献】特開2015-001084(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/80
E02D 17/18-17/20
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の大型土嚢と、
地山と前記大型土嚢との間に形成される盛土と、
前記大型土嚢の表面を覆うように前記大型土嚢の前に配置された状態で前記大型土嚢を支える支圧板と、
先端側が前記盛土に挿入されて基端側が前記支圧板に固定される軸材と、
前記支圧板と前記大型土嚢との隙間を固化して埋める裏込材と、
を備え、
前記大型土嚢と前記盛土と前記裏込材とのうち少なくとも前記盛土には、基端側を前記支圧板に固定される前記軸材の先端側を挿通させる挿入穴が掘削され、
前記挿入穴内には、前記軸材が挿入された状態でセメントミルク又はモルタルで構成される充填材が充填され、
前記裏込材は、前記充填材を構成する前記セメントミルク又は前記モルタルとは成分が異なるセメントベントナイトで構成されることを特徴とする大型土嚢を用いた補強土壁。
【請求項2】
複数の大型土嚢と、
地山と前記大型土嚢との間に形成される盛土と、
前記大型土嚢の表面を覆うように前記大型土嚢の前に配置された状態で前記大型土嚢を支える支圧板と、
前記大型土嚢を貫通し、先端側が前記盛土に挿入された状態において基端側が前記支圧板に固定される軸材と、
前記支圧板と前記大型土嚢との隙間を埋める裏込材と、
を備え、
前記大型土嚢と前記盛土と前記裏込材とのうち少なくとも前記大型土嚢と前記盛土には、基端側を前記支圧板に固定される前記軸材を挿通させる挿入穴が掘削され、
前記挿入穴内には、前記軸材が挿入された状態でセメントミルク又はモルタルで構成される充填材が充填され、
前記裏込材は、前記充填材を構成する前記セメントミルク又は前記モルタルとは成分が異なるセメントベントナイトで構成されることを特徴とする大型土嚢を用いた補強土壁。
【請求項3】
前記大型土嚢から前記盛土の中に延びる盛土補強材を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の大型土嚢を用いた補強土壁。
【請求項4】
前記軸材は、先端が水平面に対して下向きに配置され、前記軸材の前記大型土嚢前面からの長さをL1とし、前記盛土補強材の前記大型土嚢前面からの長さをL2とし、前記軸材の水平に対する傾斜角度をαとすると、L1×cosα≧L2である
ことを特徴とする請求項3に記載の大型土嚢を用いた補強土壁。
【請求項5】
前記裏込材は、前記支圧板と前記大型土嚢との間に配置するときには流動体で
あり、
前記支圧板と前記大型土嚢との隙間を埋めた状態で固化する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の大型土嚢を用いた補強土壁。
【請求項6】
前記大型土嚢は、底部が水平面に対して下向きに傾斜するように配置される
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の大型土嚢を用いた補強土壁。
【請求項7】
地山の前に複数の大型土嚢を置くことと、
前記大型土嚢と前記地山の間に盛土をすることと、
前記大型土嚢の表面を覆うように前記大型土嚢の前に支圧板を配置することと、
前記支圧板と前記大型土嚢との隙間を固化する裏込材で埋めることと、
軸材を挿入可能な挿入穴を前記大型土嚢と前記盛土と前記裏込材とのうち少なくとも前記盛土に掘削することと、
前記軸材の先端側を前記挿入穴に挿入することと、
前記軸材の基端側を前記支圧板に固定することと、
前記挿入穴内に前記軸材を挿入した状態でセメントミルク又はモルタルで構成される充填材を充填することと、
を含み、
前記裏込材は、前記充填材を構成する前記セメントミルク又は前記モルタルとは成分が異なるセメントベントナイトで構成されることを特徴とする大型土嚢を用いた土留め方法。
【請求項8】
地山の前に複数の大型土嚢を置くことと、
前記大型土嚢と前記地山の間に盛土をすることと、
を有する一次工程と、
前記大型土嚢の表面を覆うように前記大型土嚢の前に支圧板を配置することと、
前記支圧板と前記大型土嚢との隙間を裏込材で埋めることと、
軸材を挿入可能な挿入穴を前記大型土嚢と前記盛土と前記裏込材とのうち少なくとも前記大型土嚢と前記盛土に掘削することと、
前記軸材の先端側を前記挿入穴に挿入することと、
先端側が前記挿入穴に挿入された状態にある前記軸材の基端側を前記支圧板に固定することと、
前記挿入穴内に前記軸材を挿入した状態でセメントミルク又はモルタルで構成される充填材を充填することと、を有する二次工程と、
を含み、
前記裏込材は、前記充填材を構成する前記セメントミルク又は前記モルタルとは成分が異なるセメントベントナイトで構成されることを特徴とする大型土嚢を用いた土留め方法。
【請求項9】
前記大型土嚢を、底部が水平面に対して下向きに傾斜するように置く
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の大型土嚢を用いた土留め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型土嚢を用いた補強土壁及び大型土嚢を用いた土留め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害復旧のために仮設された大型土嚢を利用した本設構造物の一例として、積層された大型土嚢により構成される仮設土構造物の側面を砂利等で覆って緩衝層を形成し、さらに緩衝層の表面を擁壁で覆う本設土構造物がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5913701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大型土嚢と擁壁の間に砂利等からなる粒体層を設けると、擁壁の固有周期と地震動の周期とのずれに起因して擁壁が前傾したときに、砂利等が下方に崩落して粒体層の上部が空洞になる。そうすると、擁壁の上部が空洞の方に折れて、本設土構造物が崩壊するおそれがある。本発明の課題は、大型土嚢を用いて築造される本設構造物の耐震性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する補強土壁は、複数の大型土嚢と、地山と前記大型土嚢との間に形成される盛土と、前記大型土嚢を支える支圧板と、先端側が前記盛土に挿入されて基端側が前記支圧板に固定される軸材と、前記支圧板と前記大型土嚢との隙間を埋める裏込材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、大型土嚢を用いて築造される本設構造物の耐震性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】大型土嚢を用いた補強土壁の第1実施形態を示す全体構成図。
図2】支圧板と軸材との固定部分の断面図。
図3】大型土嚢を用いた補強土壁の第2実施形態を示す全体構成図。
図4】大型土嚢を用いた補強土壁の第1変更例を示す全体構成図。
図5】大型土嚢を用いた補強土壁の第2変更例を示す全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
まず、大型土嚢を用いた補強土壁の実施形態について説明する。
図1に示すように、補強土壁11は、複数の大型土嚢21と、地山22と大型土嚢21との間に形成される盛土23と、大型土嚢21を支える支圧板12と、支圧板12を支える軸材13と、支圧板12と大型土嚢21との隙間を埋める裏込材14と、を備える。軸材13は、先端側が盛土23に挿入されて基端側が支圧板12に固定される。軸材13は、盛土23を貫通して地山22まで挿入してもよい。地山22は、段切りしておくことが好ましい。
【0009】
大型土嚢21と盛土23とは、仮設構造物20を構成する。「大型土嚢」は、例えば標準的な土嚢寸法が高さ13cm×幅35cm×長さ45cm程度であるのに対して、1m程度の容量の土嚢袋に中詰め材を充填したものをいう。仮設構造物20は、例えば災害時などに応急的に仮設するのに適している。仮設構造物20は、予め計画された本設構造物の築造工程の一部として築造することもできる。
【0010】
大型土嚢21は、例えば袋状または筒状に形成された土嚢袋に土砂等の中詰め材を充填して構成される。大型土嚢21は、上下に複数の段を形成するように階段状に積層すると、仮設構造物20が安定する。最下段の大型土嚢21の下には、砕石または改良土による根固め部25を埋設することが好ましい。
【0011】
大型土嚢21を階段状に積層する場合、複数の大型土嚢21が横方向に並んで形成する段ごとに、大型土嚢21から盛土23の中に延びる盛土補強材24を敷設することが好ましい。奥行き方向(図1では左右方向)に並ぶ大型土嚢21の数は、段ごとに、任意に変更することができる。盛土補強材24を敷設すると、盛土補強材24と盛土23との間に生じる支圧抵抗力及び摩擦抵抗力によって、仮設構造物20の耐震性が増す。盛土補強材24は、段ごとの敷設に限らず、補強を要する任意の位置に敷設することができる。
【0012】
盛土補強材24は、例えば、鋼材、繊維またはプラスチックからなり、面状、網状または帯状に形成される。盛土補強材24は、実質的に水平に敷設することが好ましい。盛土補強材24は、大型土嚢21の下に敷いてもよいし、横に並ぶ2つの大型土嚢21の側面の間に挟んでもよい。あるいは、大型土嚢21の中心に連通孔を設け、その連通孔に棒状の盛土補強材24を通してもよい。盛土補強材24は、異なる形状のものを組み合わせて用いることもできる。
【0013】
盛土補強材24が棒状をなす場合には、その延設方向に延びる板状部材(図示略)を取り付けたり、延設方向と交差する方向に延びる板状部材(図示略)を取り付けたりしてもよい。この構成によれば、盛土補強材24の支圧抵抗力及び摩擦抵抗力を高めることができる。
【0014】
支圧板12は、例えば、鋼材、繊維強化プラスチックまたは超高強度繊維補強コンクリートで構成される。支圧板12は、必ずしも大型土嚢21の表面全体を覆う必要はない。ただし、支圧板12による大型土嚢21の被覆割合が高くなると、仮設構造物20の変形を抑制する効果が高くなる。
【0015】
軸材13は、例えば、鋼材または繊維強化プラスチックなどで構成される。支圧板12が正面視にて長方形の場合などには、1つの支圧板12の長手方向に複数の軸材13を配置してもよい。軸材13は、築造された仮設構造物20に対して所定の密度で挿入すればよく、必ずしも全てが大型土嚢21を貫通する必要はない。そのため、一部の軸材13が、隣接する2つの大型土嚢21の間に挿入されることがあってもよい。一例として、仮設構造物20の表面において2mに1つ程度の軸材13を設置するとよい。
【0016】
軸材13を仮設構造物20に挿入するときには、有底の挿入穴15を掘削しておき、その挿入穴15に軸材13と充填材16を入れるとよい。充填材16は、例えばセメントミルクまたはモルタル等である。この場合、挿入穴15に軸材13を支えるスペーサー(図示略)を入れて、軸材13が挿入穴15の中心付近に配置されるようにしてもよい。
【0017】
軸材13は、先端が水平面に対して下向きになるように配置するとよい。この場合、軸材13の大型土嚢21前面からの長さをL1とし、盛土補強材24の大型土嚢21前面からの長さをL2とし、軸材13の水平に対する傾斜角度をαとすると、L1×cosα≧L2であることが好ましい。盛土補強材24を実質的に水平に敷設し、軸材13を盛土補強材24と同等またはそれ以上に深く盛土23に挿入することによって、本設構造物の安定性を高めることができる。
【0018】
裏込材14は、例えばセメントベントナイトなど、支圧板12と大型土嚢21との間に配置するときには流動体であり、支圧板12と大型土嚢21との隙間を埋めた状態で固化するものであることが好ましい。配置時に裏込材14が流動することによって、支圧板12と大型土嚢21の間を隙間なく埋めることができる。裏込材14が固化すると、支圧板12は大型土嚢21に対して定着し、変位が抑制される。裏込材14は、例えば弾性変形可能なゴム板などに変更すると、設置時間を短縮することができる。
【0019】
図2に示すように、支圧板12には、軸材13を挿通可能な貫通孔12aと、内底部に貫通孔12aが開口する凹部12bとを設け、凹部12bに軸材13の基端を配置するとよい。そうすると、軸材13が支圧板12の表面から突出しない。支圧板12に凹部12bを設けない場合には、支圧板12の表面から軸材13及び固定部材17が突出してもよい。
【0020】
軸材13の基端にねじ部13aを設けると、ねじ部13aに固定部材17としてのナットを螺合させることができる。凹部12b内における貫通孔12aの開口との間に座金18をかませて固定部材17であるナットを締めると、軸材13が支圧板12と固定される。軸材13と支圧板12の固定方法は螺合に限らず、例えば嵌合または溶接など、他の方法で両者を固定してもよい。仮設構造物20に挿入された軸材13が支圧板12に固定されると、支圧板12は仮設構造物20と一体化する。これにより、支圧板12は大型土嚢21を支える状態になる。
【0021】
凹部12bは、固定部材17を隠すようにカバー(図示略)を嵌めたり、固定部材17を隠すようにモルタル等で埋めたりすると、軸材13と支圧板12との固定部分を保護することができるとともに、美観に優れる。
【0022】
次に、大型土嚢21を用いた土留め方法の一実施形態について説明する。
まず、土嚢設置工程として、地山22の前に複数の大型土嚢21を置く。次に、盛土工程として、大型土嚢21と地山22の間に盛土23を形成する。土嚢設置工程と盛土工程は、複数の大型土嚢21を横並びにした段ごとに、交互に行うとよい。また、補強工程として、段ごとに盛土補強材24を敷設するとよい。例えば、一段目の土嚢設置工程と盛土工程と補強工程とを行った後、一段目の上で、二段目の土嚢設置工程と盛土工程と補強工程とを行い、以降、段ごとに土嚢設置工程と盛土工程と補強工程とを繰り返す。これらの工程により、階段状の仮設構造物20が築造される。
【0023】
災害対策等として仮設構造物20が応急的に仮設された場合、以降の工程は、所定期間の経過後、本設構造物の築造工事として行われる。仮設構造物20の築造に係る土嚢設置工程、盛土工程及び補強工程を一次工程とし、本設構造物の築造に係る工程を二次工程とすると、二次工程には、配置工程、裏込工程、挿入工程及び固定工程が含まれる。予め計画された本設構造物の築造工程の一部として、階段状の仮設構造物20を下段から築造していく場合には、下段の二次工程と上段の一次工程とを平行して行ってもよい。
【0024】
配置工程では、大型土嚢21の前に支圧板12を配置する。大型土嚢21が階段状に積層されている場合、段ごとに複数の支圧板12を横に並べていくとよい。
裏込工程では、支圧板12と大型土嚢21との隙間を裏込材14で埋める。裏込材14が配置時に流動体である場合、支圧板12と大型土嚢21との隙間を型枠で囲っておき、その型枠の中に裏込材14を流入し、裏込材14の固化後に型枠を外すとよい。
【0025】
挿入工程では、軸材13の先端側を盛土23に挿入する。挿入穴15を掘削する場合、支圧板12の貫通孔12aを通して掘削を行った後、挿入穴15に軸材13と充填材16を入れるとよい。このように、支圧板12を配置した後に貫通孔12aを通して掘削を行うと、貫通孔12aと軸材13の位置がずれにくい。
【0026】
裏込工程は、配置工程の後、挿入穴15を掘削する前に行ってもよいし、掘削した挿入穴15に軸材13と充填材16を入れた後に行ってもよい。挿入穴15を掘削する前に裏込材14を配置した場合、裏込材14及び大型土嚢21を貫通するように挿入穴15を掘削するとよい。
【0027】
固定工程では、軸材13の基端側を支圧板12に固定する。例えば、軸材13の基端にねじ部13aが設けられている場合、貫通孔12aの開口との間に座金18をかませて、ねじ部13aに螺合したナット(固定部材17)を締める。固定工程は、裏込工程で裏込材14が固化した後に行うとよい。
【0028】
次に、本実施形態の補強土壁11及び土留め方法の作用について説明する。
軸材13は大型土嚢21を貫通して盛土23まで挿入されるので、地震動等により支圧板12が変位しそうになると、軸材13には、大型土嚢21及び盛土23との間に支圧抵抗力及び摩擦抵抗力が作用する。これにより、支圧板12の変位が抑制されるので、本設構造物の崩壊が避けられる。
【0029】
このように、地震動等により支圧板12に作用する外力は、軸材13を通じて大型土嚢21及び盛土23に分散して伝達される。そのため、補強土壁11は、仮設構造物20の前面に設置した擁壁によって土圧を直接支える場合と比較して、本設構造物の耐震性が高い。
【0030】
本実施形態の補強土壁11及び土留め方法によれば、以下の効果を得られる。
(1-1)支圧板12は、軸材13によって仮設構造物20と一体化されるので、地震動が作用しても変位しにくい。したがって、大型土嚢21を用いて築造される本設構造物の耐震性を高めることができる。
【0031】
(1-2)応急的に仮設される大型土嚢21を撤去することなく本設構造物を築造できる。
(1-3)縦横に並ぶ支圧板12同士が離れているので、仮設構造物20の表面形状に係わらず、大型土嚢21を前側から支えることができる。例えば、大型土嚢21が形成する段の高さや奥行きが段ごとに異なっても、その段に応じて支圧板12を配置することができる。
【0032】
(第2実施形態)
図3に示すように、本実施形態の補強土壁11は、縦横にそれぞれ複数並ぶ支圧板12が仮設構造物20の表面全体を覆って本設構造物の壁面を構成している。支圧板12と軸材13との固定方法は、図2に示す第1実施形態と同様である。
【0033】
複数の支圧板12が縦横にそれぞれ並んで一の壁面を構成する場合、最下段の支圧板12の下にコンクリート26の基礎を埋設するとよい。最上段の支圧板12の上に、コンクリート26の天端を設置することもできる。支圧板12の表面を化粧面とすると、美観を高めることができる。
【0034】
第2実施形態の土留め方法では、裏込工程において、複数段の大型土嚢21に対応する支圧板12を縦横に並べた後、縦横にそれぞれ並ぶ複数の支圧板12と仮設構造物20との隙間を充填するように、流動状の裏込材14を入れてもよい。このようにすれば、裏込工程の作業効率がよい。このように形成された裏込材14は、複数の支圧板12にまたがって固化するので、複数の支圧板12が一体となって仮設構造物20に定着する。
【0035】
本実施形態の補強土壁11及び土留め方法によれば、上記(1-1),(1-2)の効果に加えて、以下の効果を得られる。
(2-1)支圧板12が仮設構造物20の表面全体を覆うので、仮設構造物20の変形を抑制する効果が高い。
【0036】
(2-2)大型土嚢21が外部に露出しないので、例えば土嚢袋が破れて中詰め材が流出するなど、仮設構造物20の劣化が生じにくい。
(2-3)貫通孔12aを有する支圧板12を隙間なく並べることによって、大型土嚢21の配置にかかわらず、所定の密度で軸材13を配置することができる。
【0037】
(2-4)裏込材14で支圧板12と大型土嚢21との隙間を埋めることによって、段差のある仮設構造物20の前面に、複数の支圧板12からなる斜面を形成することができる。
【0038】
上記実施形態は、以下に示す変更例のように変更してもよい。上記実施形態に含まれる構成と下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
【0039】
図4に示す第1変更例及び図5に示す第2変更例のように、大型土嚢21は、底部が水平面に対して下向きに傾斜するように配置してもよい。この構成によれば、大型土嚢21の背面土圧に対する抵抗力が高くなるので、仮設構造物20の安定性が高くなる。この場合、軸材13は、大型土嚢21と実質的に同じ角度で挿入してもよいし、大型土嚢21と軸材13とで水平に対する傾斜角度が異なってもよい。盛土補強材24を敷設する場合、大型土嚢21に沿う部分は大型土嚢21に沿って傾斜させ、盛土23中では実質的に水平に敷設すると、段毎に形成する盛土23の造成が容易である。
【0040】
図5に示す第2変更例のように、大型土嚢21と軸材13とが実質的に同じ傾斜角度で配置されている場合、軸材13は隣り合う大型土嚢21の間に挿入されてもよい。
以下に、上述した実施形態から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
【0041】
[思想1]
複数の大型土嚢と、
地山と前記大型土嚢との間に形成される盛土と、
前記大型土嚢を支える支圧板と、
先端側が前記盛土に挿入されて基端側が前記支圧板に固定される軸材と、
前記支圧板と前記大型土嚢との隙間を埋める裏込材と、
を備えることを特徴とする大型土嚢を用いた補強土壁。
【0042】
この構成によれば、支圧板は軸材によって大型土嚢及び盛土と一体化されるので、地震動が作用しても支圧板が変位しにくい。したがって、大型土嚢を用いて築造される本設構造物の耐震性を高めることができる。
【0043】
[思想2]
前記大型土嚢から前記盛土の中に延びる盛土補強材を備える
ことを特徴とする[思想1]に記載の大型土嚢を用いた補強土壁。
【0044】
この構成によれば、盛土補強材と盛土との間に生じる支圧抵抗力及び摩擦抵抗力によって、仮設構造物20の耐震性が増す。
[思想3]
前記軸材は、先端が水平面に対して下向きに配置され、前記軸材の前記大型土嚢前面からの長さをL1とし、前記盛土補強材の前記大型土嚢前面からの長さをL2とし、前記軸材の水平に対する傾斜角度をαとすると、L1×cosα≧L2である
ことを特徴とする[思想2]に記載の大型土嚢を用いた補強土壁。
【0045】
この構成によれば、軸材を盛土補強材と同等またはそれ以上に深く盛土に挿入することによって、本設構造物の安定性を高めることができる。
[思想4]
前記裏込材は、前記支圧板と前記大型土嚢との間に配置するときには流動体であり、
前記支圧板と前記大型土嚢との隙間を埋めた状態で固化する
ことを特徴とする[思想1]から[思想3]のうちいずれか1つに記載の大型土嚢を用いた補強土壁。
【0046】
この構成によれば、配置時に裏込材が流動することによって、支圧板と大型土嚢の間を隙間なく埋めることができる。裏込材が固化すると、支圧板と大型土嚢が一体化され、支圧板の変位が抑制される。したがって、本設構造物の耐震性を高めることができる。
【0047】
[思想5]
地山の前に複数の大型土嚢を置くことと、
前記大型土嚢と前記地山の間に盛土をすることと、
前記大型土嚢の前に支圧板を配置することと、
前記支圧板と前記大型土嚢との隙間を裏込材で埋めることと、
軸材の先端側を前記盛土に挿入することと、
前記軸材の基端側を前記支圧板に固定することと、
を含むことを特徴とする大型土嚢を用いた土留め方法。
【0048】
この構成によれば、上記補強土壁と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
11…補強土壁、12…支圧板、12a…貫通孔、12b…凹部、13…軸材、13a…ねじ部、14…裏込材、15…挿入穴、16…充填材、17…固定部材、18…座金、20…仮設構造物、21…大型土嚢、22…地山、23…盛土、24…盛土補強材、25…根固め部、26…コンクリート。
図1
図2
図3
図4
図5