(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】撮像装置および撮像方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/36 20060101AFI20220802BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20220802BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20220802BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220802BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B21/06
G01B11/30 A
H04N5/225 600
H04N5/225 400
H04N5/225 100
H04N5/225 300
H04N5/232 030
(21)【出願番号】P 2017138724
(22)【出願日】2017-07-18
【審査請求日】2020-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100140534
【氏名又は名称】木内 敬二
(72)【発明者】
【氏名】沼田 光徳
(72)【発明者】
【氏名】小澤 謙
(72)【発明者】
【氏名】石川 明夫
(72)【発明者】
【氏名】金 洸秀
(72)【発明者】
【氏名】パク サンボン
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-539469(JP,A)
【文献】特開平10-326587(JP,A)
【文献】特開2014-109766(JP,A)
【文献】特開2007-033381(JP,A)
【文献】特開2012-150140(JP,A)
【文献】辻内順平・村田和美,光学情報処理,日本,株式会社朝倉書店,1974年06月25日,128-130
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/36
G02B 21/06
G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を出力する照明光源と、
照明光学系の試料共役位置に
設置され前記照明光を試料側に透過させる第1回折格子と、
結像光学系の試料共役位置に
設置され前記照明光が試料で反射又は透過された光を透過させる第2回折格子と、
前記試料を所定の搬送方向に移動させるステージと、
前記試料で反射
又は透過された光を前記第2回折格子を介して受光し、前記ステージによる前記試料の移動に同期して時間遅延積分方式で撮像する撮像部と
を備え
、
前記第1回折格子と前記第2回折格子は、固定され、光学的に等価であり、
前記第1回折格子と前記第2回折格子が前記搬送方向に並べられた複数種類の格子パターンであって、前記搬送方向に対して異なる角度で傾斜して繰り返される複数種類の格子パターンを有する
撮像装置。
【請求項2】
前記第1回折格子および前記第2回折格子が前記搬送方向に対して傾斜した格子パターンを有する
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1回折格子と前記第2回折格子が前記照明光学系および前記結像光学系の開口数と前記照明光の波長とで決まる解像限界程度の周期を持つ格子パターンを有する
請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第2回折格子と前記撮像部
の間には、レンズが設けられ、
前記撮像部は、前記試料で反射又は透過された光を前記第2回折格子を介した後に、前記レンズを介して受光する
請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
照明光を出力する照明光源と、
結像光学系の試料共役位置に
設置され前記照明光を試料側に透過させるとともに前記照明光が試料で反射された光を透過させる回折格子と、
前記試料を所定の搬送方向に移動させるステージと、
前記試料で反射された光を前記回折格子を介して受光し、前記ステージによる前記試料の移動に同期して時間遅延積分方式で撮像する撮像部と
を備え
、
前記回折格子は、固定され、光学的に等価であり、
前記回折格子が前記搬送方向に並べられた複数種類の格子パターンであって、前記搬送方向に対して異なる角度で傾斜して繰り返される複数種類の格子パターンを有する
撮像装置。
【請求項6】
照明光を出力する照明光源と、
照明光学系の試料共役位置に
設置され前記照明光を試料側に透過させる第1回折格子と、
結像光学系の試料共役位置に
設置され前記照明光が試料で反射された光を透過させる第2回折格子と、
前記試料を所定の搬送方向に移動させるステージと
を用い、
撮像部によって、前記試料で反射された光を前記第2回折格子を介して受光し、前記ステージによる前記試料の移動に同期して時間遅延積分方式で撮像
し、
前記第1回折格子と前記第2回折格子は、固定され、光学的に等価であり、
前記第1回折格子と前記第2回折格子が前記搬送方向に並べられた複数種類の格子パターンであって、前記搬送方向に対して異なる角度で傾斜して繰り返される複数種類の格子パターンを有する
撮像方法。
【請求項7】
照明光を出力する照明光源と、
結像光学系の試料共役位置に
設置され前記照明光を試料側に透過させるとともに前記照明光が試料で反射された光を透過させる回折格子と、
前記試料を所定の搬送方向に移動させるステージと
を用い、
撮像部によって、前記試料で反射された光を前記回折格子を介して受光し、前記ステージによる前記試料の移動に同期して時間遅延積分方式で撮像
し、
前記回折格子は、固定され、光学的に等価であり、
前記回折格子が前記搬送方向に並べられた複数種類の格子パターンであって、前記搬送方向に対して異なる角度で傾斜して繰り返される複数種類の格子パターンを有する
撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、光学式半導体検査装置が検出すべき欠陥サイズも微細になっている。欠陥サイズが微細になることで、欠陥信号は非常に微小になり検出が困難になっている。光学式半導体検査装置において、光学解像度を向上させることが、欠陥信号の強調に有効である。
【0003】
光学解像度は一般的に、使用する光の短波長化と対物レンズの大NA(Numerical Aperture;開口数)化によって向上する。短波長化について、既存の光学式半導体検査装置においては、現状260nm付近の深紫外線領域が使用されている。さらに場合によっては400nm付近の紫外線領域までの広い波長帯域を同時に使用できるようにする必要がある。
【0004】
光学系においては、十分な透過率を広波長帯域において確保するのは非常に困難である。光源においては、深紫外領域を含む広波長帯域を持ち、且つ十分な輝度を有する光源を確保するのは非常に困難である。NAについては、現状例えば0.9近い高NAの対物レンズが使用されている。高解像度を保つためには収差を極限まで抑える必要があり。高NAで上記のような広波長帯域にわたって収差を抑えることは非常に困難である。上記の理由により短波長化・高NA化は限界に近く、大幅な解像度の向上は望めない。
【0005】
短波長化・高NA化以外の光学的な高解像度化手法として、構造化照明法(Structured Illumination Microscope:SIM)がある(例えば特許文献1)。この手法は、周期的な縞模様を試料上に照明した際に発生するモアレ(Moire)干渉効果を利用する。試料パターンの高周波成分はモアレ干渉効果により照明パターンの周波数分低周波側にシフトする。本来光学系で解像できない、カットオフ周波数以上の周波数をカットオフ周波数以下にシフトさせることで解像可能にする技術である。位相の異なる縞模様の照明による複数の撮像画像から、モアレ干渉成分を分離・周波数空間内で再配置し像再生を行う。また、複数方向の縞模様について同様に行うことで、全方向について分解能を向上することが可能である。具体的な手法を下記に示す。
【0006】
(1)回折格子を照明系の観察試料共役位置に設置し周期的な縞模様を試料上に照明する。(2)複数方向、複数位相の照明による画像を取得する。(3)画像処理により像再生する。(4)画像処理により複数方向・位相の画像を合成する。
【0007】
上記手法では、同じ観察対象の画像を複数条件で取得し、画像処理による像再生・合成を行うことから、撮像時間が画像取得条件分かかってしまう。このため、上記手法を半導体検査装置に用いた場合、検査時間が長くなるということが課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撮像時間を長くすることなく光学解像度を向上させることができる撮像装置および撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、照明光を出力する照明光源と、照明光学系の試料共役位置に設けられ前記照明光を試料側に透過させる第1回折格子と、結像光学系の試料共役位置に設けられ前記照明光が試料で反射又は透過された光を透過させる第2回折格子と、前記試料を所定の搬送方向に移動させるステージと、前記試料で反射された光を前記第2回折格子を介して受光し、前記ステージによる前記試料の移動に同期して時間遅延積分方式で撮像する撮像部とを備える撮像装置である。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記撮像装置であって、前記第1回折格子と前記第2回折格子が光学的に等価である。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記撮像装置であって、前記第1回折格子と前記第2回折格子が前記搬送方向に並べられた複数種類の格子パターンを有する。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記撮像装置であって、前記第1回折格子および前記第2回折格子が前記搬送方向に対して傾斜した格子パターンを有する。
【0014】
また、本発明の一態様は、上記撮像装置であって、前記第1回折格子と前記第2回折格子が前記照明光学系および前記結像光学系の開口数と前記照明光の波長とで決まる解像限界程度の周期を持つ格子パターンを有する。
【0015】
また、本発明の一態様は、上記撮像装置であって、前記第2回折格子と前記撮像部が近接して設けられている。
【0016】
また、本発明の一態様は、照明光を出力する照明光源と、結像光学系の試料共役位置に設けられ前記照明光を試料側に透過させるとともに前記照明光が試料で反射された光を透過させる回折格子と、前記試料を所定の搬送方向に移動させるステージと、前記試料で反射された光を前記回折格子を介して受光し、前記ステージによる前記試料の移動に同期して時間遅延積分方式で撮像する撮像部とを備える撮像装置である。
【0017】
また、本発明の一態様は、照明光を出力する照明光源と、照明光学系の試料共役位置に設けられ前記照明光を試料側に透過させる第1回折格子と、結像光学系の試料共役位置に設けられ前記照明光が試料で反射された光を透過させる第2回折格子と、前記試料を所定の搬送方向に移動させるステージとを用い、撮像部によって、前記試料で反射された光を前記第2回折格子を介して受光し、前記ステージによる前記試料の移動に同期して時間遅延積分方式で撮像する撮像方法である。
【0018】
また、本発明の一態様は、照明光を出力する照明光源と、結像光学系の試料共役位置に設けられ前記照明光を試料側に透過させるとともに前記照明光が試料で反射された光を透過させる回折格子と、前記試料を所定の搬送方向に移動させるステージとを用い、撮像部によって、前記試料で反射された光を前記回折格子を介して受光し、前記ステージによる前記試料の移動に同期して時間遅延積分方式で撮像する撮像方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、撮像時間を長くすることなく光学解像度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る撮像装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す撮像装置1の動作例を説明するための説明図である。
【
図3】
図1に示す撮像装置1の動作例を説明するための説明図である。
【
図4】
図1に示す回折格子12の構成例を示す模式図である。
【
図5】
図1に示す撮像装置1の構成例を説明するための説明図である。
【
図6】
図1に示す撮像装置1の構成例を説明するための説明図である。
【
図7】
図1に示す撮像装置1の構成例を説明するための説明図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る撮像装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る撮像装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施形態の変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明による撮像装置の実施形態について説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置1の概略構成を側面からみた状態で示す模式図である。
図1に示す撮像装置1は、ウェハー等の試料50の画像を撮像する装置であり、例えば光学式半導体検査装置の構成要素として用いることができる。
【0023】
図1に示す撮像装置1は、照明光源10と、リレーレンズ11と、回折格子12と、リレーレンズ13と、ビームスプリッタ14と、対物レンズ15と、リレーレンズ16と、回折格子17と、リレーレンズ18と、TDI(Time Delay Integrate;時間遅延積分方式)カメラ等のTDI撮像部19と、ステージ30を備える。
図1に示す撮像装置1では、照明光源10と、リレーレンズ11と、回折格子12と、リレーレンズ13が、照明光学系を構成する。照明光学系は、照明光源10が出力した照明光41を、ビームスプリッタ14および対物レンズ15を介して試料50に照射する。また、ビームスプリッタ14と、リレーレンズ16と、回折格子17と、リレーレンズ18と、TDI撮像部19が、結像光学系を構成する。結像光学系は、対物レンズ15で集光された試料50からの反射光42を、TDI撮像部19の撮像面191に結像する。回折格子12は、照明光学系において試料共役位置に設けられている。また、回折格子17は、結像光学系において試料共役位置に設けられている。また、撮像時に、ステージ30は、試料50を搭載し、スキャン方向に所定の一定速度で移動する。なお、回折格子12と回折格子17は、透過型の回折格子であり、互いに同一構造であるか、または少なくとも光学的に等価な構造を有する。なお、照明光源10、ステージ30やTDI撮像部19は図示していないコンピュータ等を有する制御部によって制御される。
【0024】
図1に示す撮像装置1において、照明光源10から射出された照明光41はリレーレンズ11を通り、照明側試料共役面に設置されている回折格子12へと導かれる。回折格子12を透過した照明光41はリレーレンズ13を透過し、ビームスプリッタ14で反射され、対物レンズ15を透過して試料50を照明する。このとき、照明光41は、回折格子12の格子パターンに応じた強度分布を有する。試料50からの反射光42は対物レンズ15とビームスプリッタ14とリレーレンズ16を通り、結像側試料共役面に設置されている回折格子17へと導かれる。回折格子17を透過した反射光42はリレーレンズ18を通過し、TDI撮像部19の撮像面191に入射し、TDI撮像部19によって試料50の画像が撮像される。
【0025】
ここで
図2を参照してTDI撮像部19の構成および動作について説明する。
図2は、TDI撮像部19の動作例を説明するための説明図である。ただし、TDI撮像部19の基本的な動作を説明するため、
図2に示す例は、
図1に示す撮像装置1が回折格子12と回折格子17を有していない場合の動作例としている。TDI撮像部19は、水平方向に配列された複数(水平画素数という)のCCD(Charge-Coupled Device;電荷結合素子)画素190からなる列を、垂直方向に複数段(TDI段数という)並べた構成を有している。TDI撮像部19は、各画素190に蓄積した電荷を1ライン単位で垂直方向に順次転送することで蓄積した電荷をTDI段数分積分する。この転送方向(垂直方向)をステージ30のスキャン方向(移動方向)に一致させ、電荷の転送タイミングをステージ30の移動に同期させることで、反射光42をTDI段数分繰り返し露光することができる。このステージ30の移動に同期させたTDI撮像部19の電荷の転送方式を、時間遅延積分方式と呼ぶ。なお、
図2では、説明のため、撮像面191の水平画素数を4、TDI段数を6としているが、水平画素数とTDI段数は例えば数百ないし数千以上とすることができる。
【0026】
図2に示すように、ステージ30の移動に伴い、撮像面191へ結像する画像が画像70、71、72および73と変化した場合、TDI撮像部19から次のような撮像結果を得ることができる。すなわち、TDI撮像部19がステージ30の移動に同期させて、一定間隔で画素190に蓄積した電荷を、スキャン方向の次の画素190に転送して、順次積分すると、右端の列の各画素190にはTDI段数分の電荷が蓄積される。このように、電荷の転送をスキャン方向の水平画素数分繰り返し、かつ、電荷の転送を試料50のステージ30に移動と同期させることで、試料50をスキャンしながらスキャン方向のTDI段数分だけ露光を積算した画像74が得られる。
【0027】
次に、
図3を参照して、
図1に示す撮像装置1が回折格子12と回折格子17を有している場合のTDI撮像部19の動作例について説明する。この場合、撮像面191には、例えば回折格子12によって発生した暗部121(網掛け部)と明部122の繰り返しからなる回折格子縞が投射される。回折格子12は試料共役位置に固定されているため、ステージ30の移動に伴って、撮像面191へ結像する画像は画像75、76、77および78と変化するが、暗部121と明部122の繰り返しからなる回折格子縞は移動しない。すなわち、照明光学系の試料共役位置(照明側試料共役面)に回折格子12を設置し回折格子パターンの照明を行った場合、回折格子12は固定のため、TDI撮像部19は、試料50に対して、回折格子パターンの位相が0°、132°、265°および38°のようにシフトした画像を積算した画像79を撮像する。
【0028】
また、
図4に示すように、回折格子12には、スキャン方向に並べられた格子の方向が異なる複数種類の格子パターン12-1~12-nを配置することができる。格子パターン12-1~12-nは、他の格子パターンとともに1つの基材に一体的に形成されていてもよいし、別々の基材に形成されていてもよい。格子パターン12-1~12-nは、スキャン方向に対して異なる角度で傾斜した繰り返しパターンを含む。なお、格子パターン12-1~12-nは、例えば、照明光学系および結像光学系に配置されたレンズのNA(開口数)と照明光41の波長とで決まる解像限界(回折限界や分解能ともいう)程度の周期のパターンを持つ。各格子パターン12-1~12-nの傾斜角に応じて白抜きの矢印で示した方向に解像度が向上する。回折格子12がスキャン方向に並べられた複数種類の格子パターン12-1~12-nを有する場合、TDI撮像部19は、方向の異なる格子パターンと、試料50の画像を同時に積算することができる。TDI撮像部19は、回折格子12上のすべての方位・位相の格子パターンからの画像を1つの積算された画像として出力することができる。これにより、TDI撮像部19は、自動的に、一度のスキャンで必要な複数の格子パターンを通した試料50の画像を取得することができる。また、TDI撮像部19を用いることで、画像処理を施すことなく複数の格子パターンを通した試料50の画像を合成することができる。
【0029】
また、
図1に示すように、本実施形態では、結像光学系の試料共役位置(結像側試料共役面)にも、回折格子12と同じ構造(あるいは光学的に等価な構造)を有する回折格子17が設置されている。したがって、回折格子17の格子パターンを、照明側の回折格子12の格子パターンと一致するように調整することで、TDI撮像部19の撮像画像において、像再生は光学的に自動で行われる。ここで、像再生とは、モアレ干渉の元になった照明系格子パターン12と同じ周波数・位相の格子パターン17と再度干渉させれば、モアレ干渉によって対物レンズを通過できるようになった超解像((0005)で説明)としての周波数成分が元の周波数成分に復帰することである。また、照明系格子だけでは残留するモアレ干渉成分の除去も同時に実現される(非特許文献「W. Lukosz, M.Marchand,” Optischen Abbildung Unter Uberschreitung der Beugungsbedingten Auflosungsgrenze”,J.Opt.ica Acta 10(1963) 241-255」参照)。したがって、TDI撮像部19が撮像した画像において、画像処理を施すことなく像再生をすることができる。
【0030】
以上のように、本実施形態の撮像装置1は、照明光を出力する照明光源10と、照明光学系の試料共役位置に設けられ照明光41を試料側に透過させる回折格子12(第1回折格子)と、結像光学系の試料共役位置に設けられ照明光41が試料で反射された反射光42(光)を透過させる回折格子17(第2回折格子)と、試料50を所定のスキャン方向(搬送方向)に移動させるステージ30と、試料50で反射された反射光42を回折格子17を介して受光し、ステージ30による試料50の移動に同期してTDI方式(時間遅延積分方式)で撮像するTDI撮像部19(撮像部)とを備える。本実施形態の撮像装置1によれば、撮像時間を長くすることなく光学解像度を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態の撮像装置1において、回折格子12と回折格子17は照明光学系および結像光学系のNA(開口数)と照明光41の波長とで決まる解像限界程度の周期を持つ格子パターンを有するものとすることができる。また、回折格子12と回折格子17は光学的に等価である。また、回折格子12と回折格子17は、スキャン方向(搬送方向)に並べられた複数種類の格子パターンを有するものとすることができる。また、回折格子12および回折格子17はスキャン方向に対して傾斜した格子パターンを有するものとすることができる。
【0032】
本実施形態の撮像装置1は、TDI撮像部19を使用し、照明系と結像系の試料共役位置に回折格子12と回折格子17を設置することで、構造化照明を実現する。すなわち、本実施形態の撮像装置1は、照明系・結像系の各試料共役位置(試料共役面)に任意のパターンとピッチの回折格子を設置し、TDI撮像部19を用いて、2枚の回折格子12および17を通過した光を積算・画像化する。また、回折格子12および17は光学系の波長・NAできまる解像度程度の周期をもつパターンとすることができる。また、視野内のスキャン方向に方向の異なる格子パターン(あるいは回折格子)を並べ、TDI撮像部19で積算することで、複数方向の回折格子パターンの画像を1度のスキャンで積算し1枚の画像として出力する。なお、結像光学系のリレーレンズは対物レンズのNAと結像系試料共役位置までの中間倍率で決まる結像系試料共役面直前のNA以上のできるだけ大きなNAを持たせることが望ましい。
【0033】
本実施形態の撮像装置1によれば、回折格子のピッチを対物レンズの解像限界ピッチとしたときに、従来の光学系に対して最大2倍のNAに相当する解像度向上効果が得られる。また、従来の構造化照明に対して、1度の画像取得で複数方向・位相の画像を取得することが可能で、像再生・合成が画像処理ではなく光学的に自動的に行われる。そのため撮像速度や検査速度を低下させない。
【0034】
次に、
図5を参照して、回折格子12の格子パターンの傾斜角度について説明する。
図5は、回折格子12の格子パターンの傾斜角度とTDI撮像部19における積算光量との関係を模式的に示す図である。
図5(a)は、TDI積算方向と回折格子縞の暗部121と明部122の方向(以下、回折格子縞の方向という)とのなす角θが0°の場合を示す。
図5(b)は、TDI積算方向と回折格子縞の方向とのなす角θが(A・tanθ<B)の場合を示す。ここで、AはTDI積算方向の撮像面191の幅であり、Bは回折格子縞の暗部121の幅である。そして、
図5(c)は、TDI積算方向と回折格子縞の方向とのなす角θが(A・tanθ>B)の場合を示す。
【0035】
図5に示すように、TDI積算方向と回折格子縞の方向とのなす角θによって、撮像面191上に生じる不感領域(撮像中、暗部121と常に重なっている領域)192の大きさが変化する。
図5(a)に示すθ=0°の場合が不感領域192が最大であり、積算光量は矩形波状に変化する。
図5(b)に示すθ=A・tanθ<Bの場合は不感領域192が存在し、積算光量は台形状に変化する。そして、5(c)に示すθ=A・tanθ>Bの場合は不感領域192が存在せず、積算光量はのこぎり波状に変化する。
【0036】
図5に示すように、なす角θがA・tanθ<Bの場合は積算する際に受光できない場所が生じる。このため、回折格子縞の傾斜角(なす角)θはA・tanθ>Bを満たす値に設定されることが望ましい。
【0037】
次に、
図6を参照して、TDI撮像部19の画素190のサイズについて説明する。
図6は、横軸を
図2および
図3に示す垂直方向または水平方向として、上から順に、試料50上の形状の変化と、撮像面191上に結像した光学像と、TDI撮像部19が撮像した画像(1)および(2)の画素毎の画素値を示す。
図6に示すように、試料50上の撮像対象の形状がパターン周期Lの直方体状の形状であり、周期Lが結像光学系の解像度限界以上であったとすると、光学像は例えば2つの山形の像となる。これに対し、撮像画像(1)は画素サイズ≧Lの場合で、画素サイズが試料パターンの間隔以上のとき、光学的に解像しても撮像画像では解像しない。一方、撮像画像(2)は画素サイズ≦L/2の場合で、画素サイズが試料のパターン周期の1/2以下であるとき、撮像画像でも解像する。すなわち、画素サイズは、光学系の解像限界の1/2以下にすることが望ましい。
【0038】
また、
図7は、
図6に示すパターン周期Lと顕微鏡の撮像面で観察できる光学像のコントラストの関係を示す図である。通常顕微鏡に対し、構造化照明顕微鏡では、解像限界がパターン周期で約1/2となる。したがって、構造化照明顕微鏡での画素サイズは、向上した解像限界のパターンサイズの1/2以下の画素サイズの使用が望ましい。
【0039】
なお、本発明の実施形態の構成は、上記のものに限定されない。例えば、撮像装置1において、リレーレンズの枚数を増やしたり、表示装置や記憶装置、あるいは試料50上の欠陥パターンを認識する画像処理装置等を設けたりすることができる。
【0040】
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態に係る撮像装置1aの概略構成を側面からみた状態で示す模式図である。
図8において、
図1に示す第1実施形態の構成と同一の構成には同一の参照符号を付けて説明を適宜省略する。
図8に示す撮像装置1aは、
図1に示す第1実施形態の撮像装置1と比較して、次の点が異なる。すなわち、
図8に示す撮像装置1aでは、回折格子17(第2回折格子)とTDI撮像部19が、試料共役位置において、近接して設けられている。また、
図8に示す撮像装置1aでは、
図1に示すリレーレンズ18が省略されている。
図8に示す撮像装置1aでは、TDI撮像部19が、試料共役位置において、結像した試料50を撮像する。他の構成および動作は、
図1に示す第1実施形態の撮像装置1と同様である。
【0041】
本実施形態の撮像装置1aによれば、第1実施形態の撮像装置1と同様に、従来の光学系に対して最大2倍のNAに相当する解像度向上効果が得られる。また、従来の構造化照明に対して、1度の画像取得で複数方向・位相の画像を取得することが可能で、像再生・合成が画像処理ではなく光学的に自動的に行われる。そのため撮像速度や検査速度を低下させない。
【0042】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る撮像装置1bの概略構成を側面からみた状態で示す模式図である。
図9において、
図1に示す第1実施形態の構成と同一の構成には同一の参照符号を付けて説明を適宜省略する。
図9に示す撮像装置1bは、
図1に示す第1実施形態の撮像装置1と比較して、次の点が異なる。すなわち、
図9に示す撮像装置1bでは、回折格子17(第2回折格子)とリレーレンズ13とリレーレンズ16が省略されるともに、リレーレンズ20が新たに設けられている。また、
図9に示す撮像装置1bでは、回折格子12が、ビームスプリッタ14とリレーレンズ20の間の試料共役位置に設けられている。リレーレンズ20は、反射光42を試料共役位置に結像させる。第3実施形態では、照明系・結像系の試料共役位置を同一位置となるような光学系にし、照明側・結像側の回折格子12を合わせて1枚としている。この場合、照明側・結像側の回折格子の位置合わせを行う必要がなくなる。
【0043】
本実施形態の撮像装置1bによれば、第1実施形態の撮像装置1と同様に、従来の光学系に対して最大2倍のNAに相当する解像度向上効果が得られる。また、従来の構造化照明に対して、1度の画像取得で複数方向・位相の画像を取得することが可能で、像再生・合成が画像処理ではなく光学的に自動的に行われる。そのため撮像速度や検査速度を低下させない。
【0044】
<変形例>
次に、
図10を参照して、上述した回折格子12や回折格子17が有する格子パターンの変形例について説明する。上記説明では、回折格子12の格子パターンが、例えば
図4に示すライン・アンド・スペースの周期的構造を有しているとした。しかし、回折格子12や回折格子17が有する格子パターンは、ライン・アンド・スペースに限定されない。回折格子12や回折格子17が有する格子パターンは、例えば
図10(a)に示す複数の三角格子91からなる格子パターンであってもよい。この場合、三角格子91の各辺の垂直方向に解像度を向上させることができる。すなわち、
図10(b)に示すような3種類のライン・アンド・スペースの周期的構造を有する格子パターン92、93および94と同等の解像度向上効果が得られる。なお、格子パターンは、三角格子に限らず、例えば、複数の楕円格子からなる格子パターンなどでもよい。
【0045】
以上のとおり、本発明に係るいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることができ、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態およびその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1、1a、1b 撮像装置
10 照明光源
11、13、16、18、20 リレーレンズ
12、17 回折格子
14 ビームスプリッタ
19 TDI撮像部
15 対物レンズ
30 ステージ
41 照明光
42 反射光
50 試料