(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】酢の刺激抑制方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/68 20060101AFI20220802BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220802BHJP
【FI】
A23L2/00 D
A23L2/38 R
(21)【出願番号】P 2017198882
(22)【出願日】2017-10-12
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2016201285
(32)【優先日】2016-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 ひろみ
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-176356(JP,A)
【文献】特開2005-137362(JP,A)
【文献】特開2014-080518(JP,A)
【文献】特開2015-128421(JP,A)
【文献】国際公開第00/041579(WO,A1)
【文献】特開2005-295826(JP,A)
【文献】特開2008-245539(JP,A)
【文献】ジャパンフードサイエンス,2007年2月,p.36-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C12J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢を含有する飲料に多糖類を添加して、前記飲料の粘度を5mPa・s以上200mPa・s以下とすることを特徴とする、酢の刺激感抑制方法であって、
前記多糖類がウェランガム
、λカラギナン、ιカラギナン、及びプルランからなる群から選択される一種または二種以上であり、
前記多糖類の添加量が少なくとも0.2質量%であ
り、
前記飲料にタウリンが含まれない、酢の刺激感抑制方法。
【請求項2】
酢を含有する飲料に多糖類
、及び(a)DE値が5以上40以下の澱粉分解物又は(b)DE値が5未満の馬鈴薯由来澱粉分解物を添加して、前記飲料の粘度を5mPa・s以上200mPa・s以下とすることを特徴とする、酢の刺激感抑制方法であって、
前記多糖類がウェランガム、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、λカラギナン、ιカラギナン、及びプルランからなる群から選択される一種または二種以上であり、
前記多糖類の添加量が少なくとも0.2質量%であ
り、
前記飲料にタウリンが含まれない、酢の刺激感抑制方法。
【請求項3】
酢の刺激感が抑制された、酢を含有する飲料であって、
前記飲料が多糖類を含有し、
前記飲料の粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下であり、
前記多糖類がウェランガム
、λカラギナン、ιカラギナン、及びプルランからなる群から選択される一種または二種以上であり、
前記多糖類の含有量が少なくとも0.2質量%であ
り、
前記飲料にタウリンが含まれない、飲料。
【請求項4】
酢の刺激感が抑制された、酢を含有する飲料であって、
前記飲料が多糖類
、及び(a)DE値が5以上40以下の澱粉分解物又は(b)DE値が5未満の馬鈴薯由来澱粉分解物を含有し、
前記飲料の粘度が5mPa・s以上200mPa・s以下であり、
前記多糖類がウェランガム、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、λカラギナン、ιカラギナン、及びプルランからなる群から選択される一種または二種以上であり、
前記多糖類の含有量が少なくとも0.2質量%であ
り、
前記飲料にタウリンが含まれない、飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢を含有する飲料に関し、詳細には、酢を含有する飲料を飲用した際に喉に感じるイガイガとした不快な刺激感を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酢には、食欲増進、減塩、疲労回復、防腐や静菌といった効果があることが知られている。そのため、従来の調味目的の使用のみならず、近年の健康嗜好の高まりから、酢を飲料として摂取できるよう開発された商品が多数販売されている。
ところが、酢には強い酸味や喉に感じるイガイガとした不快な刺激感がある。調味目的の少量では問題とならなかったが、飲料として口に含み飲み込むとき、これらの刺激によってむせる、咳き込むといった事態が生じ、酢を含有する飲料は飲みにくいという印象を与える場合が少なくない。
【0003】
このような酢を含有する飲料の飲みにくさ(酢に由来する酸味や刺激感)を低減する方法として、例えば、食酢に含まれるβダマセノンの含有量及びフェネチルアルコール1部に対するβダマセノンの含有量比を特定範囲になるように調製せしめた食酢(特許文献1)、パッションフルーツ搾汁を混合した黒麹もろみ酢からなる健康飲料に、フコイダン、カラギナンを混合した健康飲料(特許文献2)、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸とグルタミンを含む、有機酸の酸味緩和組成物(特許文献3)、黒酢を含有する黒酢飲料にカルシウムを配合することを特徴とする黒酢飲料の後味改善方法(特許文献4)、水と黒酢の容量比を10:1とした水と黒酢から成る黒酢液に、少量の黒糖と生姜を加えたことを特徴とする黒酢飲料(特許文献5)、紅麹黒酢と梅果汁を含む紅麹黒酢ドリンク(特許文献6)、酸味を有する飲食品を調整する際に、所定量のホエイ等を配合することを特徴とする、酸味を有する飲食品の風味改善方法(特許文献7)、βグルカンを含有することを特徴とする、食酢飲料(特許文献8)、塩基性アミノ酸またはその塩を、酢を含有する飲食品に添加することを特徴とする、酢を含有する飲食品の酢かど抑制方法(特許文献9)、大麦黒酢とお茶を含有してなることを特徴とする黒酢飲料(特許文献10)、飲用時の食酢飲料中にナリンジンを含有させたことを特徴とする食酢飲料(特許文献11)、茶材に酒類及び酸発酵乳を混和し、熟成して得られる熟成茶材から得られた水抽出物を含有することを特徴とする食酢(特許文献12)、黒酢1重量部に対して、トレハロースを0.005~1重量部含有し、黒酢由来の味クセがマスキングされたことを特徴とする黒酢含有飲料(特許文献13)、γ-ノナラクトンを添加することを特徴とする食酢または食酢含有飲食品の酸味抑制方法(特許文献14)、水溶性ヘミセルロースを含むことを特徴とする食用酢安定剤(特許文献15)、四種類の醸造酢に褐藻類である昆布のエキスを加えた配合酢に添加物を加え、希釈水で希釈した飲料食品(特許文献16)、高甘味度甘味料および黒酢を含有することを特徴とする低カロリー黒酢飲料(特許文献17)等の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-104335号公報
【文献】特開2014-209896号公報
【文献】特開2011-254804号公報
【文献】特開2011-55793号公報
【文献】特開2010-57470号公報
【文献】特開2009-240216号公報
【文献】特開2009-65842号公報
【文献】特開2008-245539号公報
【文献】特開2008-73007号公報
【文献】特開2007-143470号公報
【文献】特開2006-94817号公報
【文献】特開2003-24042号公報
【文献】特開2005-269951号公報
【文献】特開2014-227054号公報
【文献】特開2005-295826号公報
【文献】特開平10-28567号公報
【文献】特開2002-335924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、風味等を有する成分によって食酢の酸味や不快な刺激感を感じにくくするものであり、添加する成分の風味が飲料全体に影響を与える可能性があった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するものである。即ち、飲料の風味に影響を与えず、酢が有する酸味や不快な刺激感を効果的に抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について検討を重ね、酢を含有する飲料が一定の粘度を有するよう多糖類を添加し調製することにより、酢を含有する飲料の風味に影響を与えずに、酢に由来する酸味や不快な刺激感を効果的に抑制できるとの知見を得て、特願2016-201285号として特許出願を行った。その後、更なる検討の結果、より広い粘度範囲を有する酢を含有する飲料に対する効果を確認し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下の態様を有する酢を含有する飲料の不快な刺激感を抑制する方法に関する;
項1
酢を含有する飲料に多糖類を添加して、前記飲料の粘度を5mPa・s以上200mPa・s以下とすることを特徴とする、酢の刺激感抑制方法。
項2
さらに、トレハロース又は次のa若しくはbの澱粉分解物を添加する項1に記載の酢の刺激感抑制方法。
a DE値が5以上40以下の澱粉分解物
b DE値が5未満の馬鈴薯由来澱粉分解物
項3
酢を含有する飲料に多糖類及びトレハロース又は次のa若しくはbの澱粉分解物を添加して、前記飲料の粘度を5mPa・s未満とすることを特徴とする酢の刺激感抑制方法。
a DE値が5以上40以下の澱粉分解物
b DE値が5未満の馬鈴薯由来澱粉分解物
項4
多糖類がウェランガム、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、λカラギナン、ιカラギナン、及びプルランからなる群から選択される一種または二種以上である項1~3のいずれかに記載の酢を含有する飲料の刺激感抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本来の風味に影響を与えることなく、酢の酸味や不快な喉への刺激感を抑制し、むせたり咳き込んだりすることなく飲用できる酢を含有する飲料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味するものとする。
【0011】
本発明における酢とは、3~5%程度の酢酸を主成分とする酸味の有る液体調味料を指し、農林水産省が定めた「食酢品質表示基準(平成23年8月31日消費者庁告示第8号)」の食酢を意味する。また、本末名における酢の原料や製造方法に限定されず、醸造酢、合成酢、穀物酢、果実酢、米酢、米黒酢、大麦黒酢、リンゴ酢、ぶどう酢の他、もろみ酢なども含まれる。
【0012】
本発明における酢を含有する飲料とは、上記のような酢を添加した飲料である。また、これらの酢を添加して調製されるぽん酢、三杯酢やすし酢のような加工酢も含まれるものとする。該飲料への酢の添加量は任意に設定することが可能であり、酢による爽快感を味わうことのできる目安として、酢を含有する飲料の酸度を0.5%~1.5%とすることが例示でき、酸度1.0%程度に設定することが好ましい。酸度の調節は、添加する酢の種類や添加量によって適宜調整することができる。
【0013】
具体的な飲料への酢の添加量は、4~25%を例示することができる。酢の添加量が4%未満となれば、酢の風味を感じることができるものの爽快感や刺激感が弱くなり、本発明の課題が生じないこととなる。また、酢の種類によっては添加量を25%より高くすることも可能である。例えば、酢の中にはリンゴ酢のように水等で薄めることなくそのまま飲用できるものもあることから、調製する飲料に応じて添加する酢の種類や添加量は任意とすることができる。更には、リンゴ酢のような刺激感の弱いものに、さらに酢酸や粉末酢酸等を併用することもできる。
【0014】
本発明における酢を含有する飲料は、特定の粘度範囲となるように多糖類を添加することによって調製することを特徴とする。
【0015】
具体的には、酢を含有する飲料の粘度を5mPa・s以上200mPa・s以下とする場合、多糖類、さらにはトレハロース又は後述する特定のDE値を有する澱粉分解物を添加することによって粘度の調整を行う。この場合、さらに好ましい粘度範囲は10~150mPa・sである。また、酢を含有する飲料の粘度を5mPa・s未満とする場合、多糖類、さらにはトレハロース又は後述する特定のDE値を有する澱粉分解物を添加することによって粘度の調整を行う。
尚、本発明における粘度とは、E型粘度計にて測定した20℃におけるずり速度50s-1における2分後の粘度をいう。
【0016】
本発明にかかる多糖類は、ウェランガム、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、λカラギナン、ιカラギナン、及びプルランからなる群より選択される一種又は二種以上を添加するものである。
これらの多糖類はいずれも食品添加物として使用されており、市販されている製品を用いることができる。具体的には、次のような製品が挙げられる。
【0017】
・ウェランガム
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 ビストップ(登録商標)W
・キサンタンガム
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 サンエース(登録商標)C
・グァーガム
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 ビストップ(登録商標)D-2029
・ローカストビーンガム
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 ビストップ(登録商標)D-2050
・λカラギナン
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 カラギニン CSL-2(F)
・ιカラギナン
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 カラギニン CSI-1(F)
・プルラン
株式会社林原 プルラン
【0018】
これら多糖類を、酢を含有する飲料へ添加する方法は特に制限されず、ウェランガム等の多糖類を予め水溶液として調製し、又は粉末状の多糖類を他の原材料と混合して飲料に添加すればよい。これら本願発明に係る酢を含有する飲料を調製する際に、特段の製造条件や製造設備を必要としないため、産業上の利点も有しているといえる。
【0019】
上記多糖類によって、酢を含有する飲料の粘度を5mPa・s以上200mPa・s以下の範囲となるように調整することで、本願発明の効果である酢に由来する喉への刺激感が抑えられる。酢を含有する飲料の粘度を5mPa・s未満とする場合、多糖類のみを添加しただけでは喉への刺激を抑制する効果が不十分である。この場合、多糖類に加え、トレハロース又は特定のDE値を有する澱粉分解物を併用することによって、酢を含有する飲料の粘度を5mPa・s未満に調整した場合であっても、十分な刺激を抑制する効果が発揮される。一方、酢を含有する飲料の粘度を200mPa・sより高くすると、口当たりや喉ごしが重くなり、酢のさわやかな風味を楽しむことができなくなる。また、粘度が高いため製造時に困難が生じるため、好ましくない。
【0020】
飲料への酢の添加量を多くする、又は酸度を上げることによって、酢の酸味や喉への不快な刺激感は増大するが、そのような場合であっても、本発明によれば多糖類の添加量を増やすことにより、飲料の風味に影響を与えることなく酢の不快な刺激感を抑制することが可能である。一例として、飲料の酸度を2倍に上げる場合、多糖類としてキサンタンガムを用いたとき、飲料の粘度を2.5倍程度上昇するようにキサンタンガムを添加すればよい。また、多糖類としてグァーガムを用いたときは、粘度を4倍程度に調節することによって、飲料の風味に影響を与えることなく、酢による喉への不快な刺激感を抑制することができる。或いは、後述するトレハロース又は特定のDE値を有する澱粉分解物を多糖類と併用することで、飲料の粘度の上昇を伴わずに喉への不快な刺激感を抑制することができる。
【0021】
本発明では、上記ウェランガム等の多糖類を酢を含有する飲料に添加し、さらにトレハロース又は特定のDE値を有する澱粉分解物を添加することによる、該飲料を飲み込む際に生じる喉への不快な刺激感を抑制する方法に関する。かかる方法によれば、酢を含有する飲料の粘度の上昇を抑えながらも、飲料の風味に影響を与えずに喉への不快な刺激感を抑制することが可能となる。
【0022】
本発明で使用するトレハロースは、グルコースが1,1-グリコシド結合してできた二糖の一種であり、ショ糖の約45%の甘味を持つことが知られている。
また、澱粉分解物とは、澱粉を酸や酵素で加水分解して得られた、各種の中間生成物の総称であって、本発明ではDE値が5以上40以下の澱粉分解物と、DE値が5未満の馬鈴薯由来の澱粉分解物をいう。上述の「特定のDE値を有する澱粉分解物」とは、これらを指す。ここでDE値とは、澱粉分解物の固形分に対する直接還元糖(グルコースとして表示)の割合に100を掛けた数字を表し、0に近いほど澱粉に近く、100に近いほどグルコースに近い。DE値は各種澱粉分解物を分類する指標として用いられる。
【0023】
上記澱粉分解物の原料として利用できる澱粉としては、とうもろこし、キャッサバ、馬鈴薯、甘藷や小麦等から適宜選択して使用できるが、DE値5未満の澱粉分解物を得る場合は馬鈴薯由来の澱粉を使用する。馬鈴薯に由来する澱粉以外では、DE値5未満に調製した澱粉分解物では本発明の効果が十分に得られないためである。
【0024】
トレハロース又は特定のDE値を有する澱粉分解物の添加量は、併用する多糖類の種類や添加量に応じて、酢を含有する飲料の粘度を5mPa・s以上200mPa・s以下あるいは、5mPa・s未満となるように適宜調節すれば良い。これらの添加量の例としては、トレハロースを使用する場合は飲料に対し1~15%、好ましくは1~10%、澱粉分解物であれば飲料に対し1~15%、好ましくは1~10%の範囲を挙げることができる。
【0025】
トレハロース又は特定のDE値を有する澱粉分解物の酢を含有する飲料へ添加する時期等については、ウェランガム等の多糖類と同様に他の原料の一つとして従来の酢を含有する飲料の製造手順内であれば特に制限されることはない。
【0026】
また、本発明の効果を妨げない範囲において、アラビアガム、タマリンドシードガム、カードラン、ジェランガムや発酵セルロースといった飲食品製造に使用される多糖類を併用することができる。
その他、従来酢を含有する飲料を製造する際に使用される各種原料、例えば調味料、酸化防止剤、香料、着色料、甘味料、保存料のほか、アルコール類を添加することも可能である。
【0027】
以下の実施例にて本発明をさらに詳細に説明しその効果を証明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。処方中、「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標を、「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であることを示す。
【0028】
実験例1
次の処方に基づき、酢を含有する飲料を調製した。使用した多糖類とその添加量については、表1に示す。得られた飲料に関し、E型粘度計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社 20℃ずり速度50s-1における2分後の粘度)で粘度を測定し、試飲した際の喉への刺激感について官能評価を行った。これらの結果も表1に示す。
【0029】
尚、喉への刺激感の評価は、飲料を5ml試飲し、その際の喉への刺激を下記の4段階で評価した。
評価方法:
飲料の風味への影響と喉への刺激感の抑制について、ブランク(多糖類無添加)を基準とした官能評価
× 風味に影響が生じる、及び/又は刺激感の抑制効果が認められない(ブランクと同等)
△ 風味に影響はなく、ブランクに比べ刺激感がわずかに抑制されている
○ 風味に影響はなく、ブランクに比べ刺激感がかなり抑制されている
◎ 風味に影響はなく、刺激感が抑制され不快感がない
【0030】
<処方>
りんご酢(醸造酢、酸度5.0%) 8
グラニュー糖 10
粉末酢酸(サンスゲン※*) 1.5
多糖類 表1参照
イオン交換水にて全量 100 %
【0031】
<調製方法>
上記処方に従い、表1に記載する配合の実施例1~30、又は比較例1~9の多糖類を80℃のイオン交換水に撹拌しながら添加し、80℃10分間加熱溶解後、20℃まで冷却した。次いで、りんご酢、グラニュー糖、粉末酢酸を添加し、10分間常温撹拌して酢を含有する飲料を調製した。尚、該飲料の酸度は1.0%であった。
【0032】
【0033】
<結果>
表1の結果より、ウェランガム、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、λカラギナン、ιカラギナン、プルランをそれぞれ用いて酢を含有する飲料の粘度を5mPa・s以上に調製した飲料については、飲料の風味には影響を与えることなく、喉への不快な刺激感が抑えられていることがわかった。また、大豆多糖類を添加した飲料(比較例3~9)では、大豆多糖類の風味が飲料に影響を及ぼし、飲料として非常に飲みづらいものとなってしまっていた。
【0034】
実験例2
次の処方に基づき酢を含有する飲料を調製(酸度1.5%)し、多糖類の有無で効果の比較を行った。
<処方>
りんご酢(酸度5%) 12
グラニュー糖 9
粉末酢酸(サンスゲン※*) 2.25
多糖類(キサンタンガム) 0.5
イオン交換水にて全量 100 %
【0035】
<調製方法>
多糖類を80℃のイオン交換水に撹拌しながら添加し、80℃10分間加熱溶解後、りんご酢、グラニュー糖、粉末酢酸を添加し、10分間常温撹拌して酢を含有する飲料を調製した。多糖類無添加の飲料を比較例10、多糖類添加の飲料を実施例31とする。両飲料の酸度は1.5%であった。
【0036】
<結果>
両飲料の粘度を実験例1と同じ基準・方法で行い、その評価結果と併せて表2に示す。
【0037】
【0038】
<評価>
表2の結果より、飲料の酸度が1.5%と高めであっても、本発明による多糖類を添加した酢を含有する飲料(実施例31)では、酢の刺激感が効果的に抑制されることがわかった。
【0039】
実験例3
表3の処方に基づき、粘度が5mPa・s未満の酢を含有する飲料を実験例1と同様の手順で調製し、かかる飲料の刺激感抑制効果の評価を行った。該飲料については酸度1.0%のものと0.6%のものを調製し、それぞれ評価を行った。酸度1.0%の飲料に関する結果を表3に、酸度0.6%の飲料に関する結果を実験例4として表4に示す。
【0040】
【0041】
<評価>
表3の評価結果より、比較例11~17の飲料は、粘度がいずれも5mPa・s未満の値となっており、多糖類のみを添加しただけでは酢の刺激感を抑制することはできなかった。
一方、同様に粘度が5mPa・s未満の飲料である実施例32~38では、多糖類と澱粉分解物(とうもろこし由来 DE値40)を併用することによって酢の刺激感が抑制されていることが明らかとなった。
【0042】
実験例4
表3と同様の組成で酸度が0.6%となるよう調製した酢を含有する飲料を調製し、実験例3と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0043】
【0044】
<評価>
表4の評価結果より、比較例18~24の飲料は、粘度がいずれも5mPa・s未満の値となっており、多糖類のみを添加しただけでは酢の刺激感を抑制することはできなかった。
一方、同様に粘度が5mPa・s未満の飲料である実施例39~45では、多糖類と澱粉分解物(キャッサバ由来 DE値18)を併用することによって酢の刺激感が抑制されていることが明らかとなった。
【0045】
実験例2乃至4より、飲料の酸度に関わらず、低粘度(粘度5mPa・s未満)であっても多糖類と澱粉分解物を併用することにより、本発明の効果である酢の刺激感を抑制できることが明らかとなった。
【0046】
実験例5
実験例1の処方に、次の表5に記載の多糖類を添加し、2種の多糖類を添加した際の効果を確認した(実施例46~60)。調製方法、粘度の測定及び喉への刺激感の評価については、実験例1と同様に行った。尚、該飲料の酸度は1.0%であった。
【0047】
【0048】
<結果>
表5の結果より、2種の多糖類を添加した場合であっても、粘度が5mPa・s以上に調製された酢を含有する飲料であれば、効果的に喉への不快な刺激感を抑えられることが明らかとなった。
【0049】
実験例6
次の処方に基づき酢を含有する飲料を調製し、澱粉分解物(とうもろこし由来 DE値40)(表6)またはトレハロース(表7)を、多糖類と併用した際の効果を実験例1と同様に確認した(実施例61~75。実施例10、20、14、24、5については実験例1の結果を引用)。尚、該飲料の酸度は1.0%であった。
【0050】
<処方>
りんご酢(醸造酢、酸度5.0%) 8
グラニュー糖 10
粉末酢酸(サンスゲン※*) 1.5
多糖類 表6、7参照
澱粉分解物又はトレハロース 表6、7参照
イオン交換水にて全量 100 %
【0051】
【0052】
【0053】
<結果>
表6および表7の結果より、多糖類のみを添加した場合よりも、澱粉分解物又はトレハロースを併用することによって、飲料の風味や粘度に大きな影響を与えることなく、効果的に喉への不快な刺激感を抑制できることが明らかとなった。
【0054】
実験例7
次の処方に基づき酢を含有する飲料を調製し、DE値の異なる澱粉分解物を多糖類(キサンタンガム)と併用した際の効果を、実験例1と同様に確認した(実施例76~80、比較例25)。結果を表8に示す。尚、該飲料の酸度は1.0%であった。
【0055】
<処方>
りんご酢(醸造酢、酸度5.0%) 8
グラニュー糖 10
粉末酢酸(サンスゲン※*) 1.5
キサンタンガム 0.2
澱粉分解物 表8参照
イオン交換水にて全量 100 %
【0056】
【0057】
<結果>
表8の結果より、DE値が5~40の澱粉分解物を多糖類(キサンタンガム)と併用し調製された酢を含有する飲料であれば、飲料の風味や粘度には大きな影響を与えず、効果的に喉への不快な刺激感を抑えられることが明らかとなった。一方、DE値が4の澱粉分解物(とうもろこし由来)を添加した比較例25では、十分に酢の刺激感を抑制できていなかった。
【0058】
実験例8
表9に記載の処方に基づき酸度1.0%の酢を含有する飲料を調製し、DE値が4の澱粉分解物(馬鈴薯由来)を併用した際の効果を確認した。該飲料の調製手順、評価については実験例1と同様とした。結果を表9に示す。
【0059】
【0060】
<評価基準>
評価点数 :喉への刺激感 1(イガイガする) ~ 5(イガイガしない)
パネラー数 :3名 (男性 2名、女性 1名、平均年齢 30.3歳)
【0061】
<結果>
表9の結果より、多糖類無添加では酢の刺激感は抑制できず、キサンタンガムを添加することで抑制できた(実施例81)。そして、さらにDE値が4の澱粉分解物(馬鈴薯由来)を添加すると、刺激感の抑制効果が高まるとの結果が得られた(実施例82)。同様にグァーガムによる評価においても、DE値が4の澱粉分解物(馬鈴薯由来)が無添加のものよりも添加した飲料で刺激感が抑制され、さらにその添加量が増すことによって、刺激感の抑制効果が高まることが明らかとなった(実施例85~88)。
【0062】
実験例9
実験例4の実施例41の処方において、澱粉分解物の代わりにトレハロース10%を添加して、同様の手順で酢を含有する飲料を調製した。かかる飲料についても実験例4と同様の評価を行った。
その結果、粘度は4.0mPa・sであり、評価結果は「○」となった。この実験結果より、粘度が5mPa・s未満とした酢を含有する飲料において、DE値が4の澱粉分解物(馬鈴薯由来)だけでなくトレハロースを使用した場合であっても、酢の刺激感を抑制できることが明らかとなった。