(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】逐次比較レジスタ型AD変換器におけるオフセット較正方法、及び逐次比較レジスタ型アナログデジタル変換器
(51)【国際特許分類】
H03M 1/10 20060101AFI20220802BHJP
H03M 1/38 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H03M1/10 A
H03M1/38
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017234086
(22)【出願日】2017-12-06
【審査請求日】2020-11-04
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508223789
【氏名又は名称】スティヒティング・イメック・ネーデルラント
【氏名又は名称原語表記】Stichting IMEC Nederland
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ディン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】リィ・ハンユエ
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル・ハルペ
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-165103(JP,A)
【文献】特開2009-164914(JP,A)
【文献】特開2012-253683(JP,A)
【文献】特開2016-152625(JP,A)
【文献】米国特許第06124818(US,A)
【文献】米国特許第09219492(US,B1)
【文献】特表2014-512111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/10
H03M 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力信号(V
IN)を、m個の最上位ビット(B
MSB)及びn個の最下位ビット(B
LSB)によって形成されるデジタル信号(C
OUT)に変換するように構成される逐次比較レジスタ型アナログデジタル変換器(SAR ADC)(200;800)におけるオフセット較正方法であって、
前記SAR ADCは、第1段のADC(210;810)と、第2段のADC(220;820)とを備え、
前記オフセット較正方法は、
a)前記第1段のADC(210;810)が、前記アナログ入力信号(V
IN)に対応するデジタル信号(C
OUT)の最上位ビット(B
MSB)を決定
し、前記デジタル信号(C
OUT
)の最下位ビット(B
LSB
)に対応する残余信号(V
RES
)を出力するステップ
と、
b)2つの入力端子及び利得係数を有する差動利得モジュール(230;830)が、前記第1段のADC(210;810)から出力される残差信号(V
RES)を増幅するステップであって、前記n個の最下位ビット(B
LSB)の最上位ビットは、前記利得係数を乗じたm個の最下位ビット(B
MSB)の最下位ビットに等しいステップと、
c)前記第2段のADC(220;820)が、
増幅された残余信号(V
AMP
)を受信し、増幅された残余信号(V
AMP
)から前記アナログ入力信号(V
IN)に対応するデジタル信号(C
OUT)の最下位ビット(B
LSB)を決定するステップと、
d)前記アナログ入力信号(V
IN)から決定されたバイナリコードが、バイナリトリガコードと一致するか否かを検出するステップと
、
e)メモリモジュール(242;842)から、前記バイナリトリガコードに関連付けられ、かつ前記差動利得モジュール(230;830)の入力端子を交差する、予め設定されたバイナリ較正コードを検索するステップと、
f)前記バイナリ較正コードを用いて、前記アナログ入力信号(V
IN)と、前記バイナリ較正コードの最初のmビットを表すアナログ信号(V
*
MSB)との間の差を計算することにより、前記第1段のADC(210;810)における較正残差信号(V
*
RES)を決定するステップと、
g)前記差動利得モジュール(230;830)が、すべての最下位ビット(B
LSB)が前記第2段のADC(220;820)によって決定されるまで、前記較正残差信号(V
*
RES)を一時的に記憶するステップと、
h)ステップg)の後に、前記差動利得モジュール(230;830)が、前記較正残差信号(V
*
RES)を増幅して、増幅された較正残差信号(V
*
AMP)を形成
して比較器(226;826)に出力するステップと、
i)
前記比較器(226;826)が、前記バイナリ較正コードを用いて、
前記前記差動利得モジュール(230;830)により形成された、増幅された較正残差信号(V
*
AMP)を、前記バイナリ較正コードの最後のnビットを表す別のアナログ信号(V
*
LSB)と比較することにより、較正ビット(B
*
LSB)を決定するステップと、
j)前記デジタル信号(C
OUT)の最下位ビットが、前記第2段のADC(220;820)におけるオフセット誤差の存在を示す較正ビット(B
*
LSB)と同じであるか否かを決定するステップと、
k)前記差動利得モジュール(230;830)内の少なくとも1つの可変容量モジュール(231b;831b)を調整することにより、オフセット誤差の存在が決定された場合に、オフセット較正を実行するステップとを含む、逐次比較レジスタ型アナログデジタル変換器(SAR ADC)(200;800)におけるオフセット較正方法。
【請求項2】
アナログ入力信号(V
IN)を、m個の最上位ビット(B
MSB)及びn個の最下位ビット(B
LSB)によって形成されるデジタル信号(C
OUT)に変換するように構成された逐次比較レジスタ型アナログデジタル変換器(SAR ADC)(200;800)であって、
前記SAR ADC(200;800)は、
前記アナログ入力信号(V
IN)に対応するデジタル信号(C
OUT)の最上位ビット(B
MSB)を決定し、前記デジタル信号(C
OUT)の最下位ビット(B
LSB)に対応する残余信号(V
RES)を出力するように構成された第1段のADC(210;810)と、
2つの入力端子を有し、前記第1段のADC(210;810)から出力された残余信号(V
RES)を受信し、前記残余信号(V
RES)を利得係数で増幅し、増幅された残余信号(V
AMP)を出力するように構成される差動利得モジュール(230;830)であって、前記n個の最下位ビット(B
LSB)の最上位ビットが、前記利得係数を乗じたm個の最下位ビット(B
MSB)の最下位ビットに等しい、差動利得モジュール(230;830)と、
増幅された残余信号(V
AMP)を受信し、増幅された残余信号(V
AMP)から
前記アナログ入力信号(V
IN)に対応するデジタル信号(C
OUT)の最下位ビット(B
LSB)を決定するように構成された第2段のADC(220;820)と、
制御モジュール(240;840)とを備え、
前記制御モジュール(240;840)は、
前記第1段のADC(210;810)、前記差動利得モジュール(230;830)、及び前記第2段のADC(220;820)を制御し、
前記
アナログ入力信号(V
IN)に対応するデジタル出力信号(C
OUT)を出力し、
バイナリトリガコードを格納し、
前記アナログ入力信号(V
IN)から決定されたバイナリコードが前記バイナリトリガコードと一致するか否かを検出し、
前記バイナリトリガコードに関連付けられて予め設定されたバイナリ較正コードを検索し、前記差動利得モジュール(230;830)の入力端子を交差させるように構成され、
前記制御モジュール(240;840)は、
前記アナログ入力信号(V
IN)と、前記バイナリ較正コードの最初のmビットを表すアナログ信号(V
*
MSB)との間の差を計算することによって、較正残差信号(V
*
RES)を決定するように構成された残差生成モジュール(219;819)をさらに備える第1段のADC(210;810)に、前記バイナリ較正コードを提供し、
すべての最下位ビット(B
LSB)が前記第2段のADC(220;820)によって決定されるまで、前記較正残差信号(V
*
RES)を一時的に格納した後、前記較正残差信号(V
*
RES)を増幅して、増幅された較正残差信号(V
*
AMP)を形成するように構成される差動利得モジュール(230;830)に、制御信号を供給し、
増幅された較正残差信号(V
*
AMP)を、前記バイナリ較正コードの最後のnビットを表す別のアナログ信号(V
*
LSB)と比較することによって、較正ビット(B
*
LSB)を決定するように構成された比較器(226;826)をさらに備える第2段のADC(220;820)に、前記バイナリ較正コードを提供し、
前記デジタル信号(C
OUT)の最下位ビットが、前記第2段のADC(220;820)におけるオフセット誤差の存在を示す較正ビット(B
*
LSB)と同じであるか否かを決定し、
前記差動利得モジュール(230;830)内の少なくとも1つの可変容量モジュール(231b;831b)を調整することによってオフセット誤差の存在が決定された場合に、オフセット誤差の較正を開始するように構成される、逐次比較レジスタ型アナログデジタル変換器(SAR ADC)(200;800)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逐次近似レジスタ型アナログデジタル変換器(SARADC)におけるオフセット較正方法に関する。本発明はまた、逐次比較レジスタ型アナログデジタル変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログデジタル変換器(ADC)は一般に知られており、アナログフロントエンドと後続のデジタル処理ブロックとの間のインターフェースとして使用されている。現代の無線通信システムは、通常、高分解能(すなわち、12~14ビット)の低電力を必要とする。十分に高い電力効率を提供するために、本質的に電力効率が高いので、SARADCが使用される。SARADCの欠点は、DACキャパシタのミスマッチと比較器のノイズのためにわずか8~12ビットの分解能に制限されていることである。
【0003】
近年、解像度を高めることができる2段パイプラインSARADCが提案されている。2段パイプラインSARADCは、2つの独立した中分解能SARADCと段間残差増幅器で構成されている。このパイプライン構造は第2段のノイズ要件を緩和するが、段間増幅器には低ノイズで正確な利得条件を課す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2段SARADCに関する既知の問題は、一般に高分解能ADCを有する場合、最高の性能を達成するために較正が必要である。具体的には、
(1)各段のDACは互いに較正する必要がある。
(2)増幅器は、較正する必要があるオフセットを有することができる。
(3)各段のADCの比較器をオフセットすることができる。
(4)増幅器は、較正する必要がある利得誤差を有することができる。
しかしながら、既知の較正プロセスでは、SARADCの通常の動作を停止させる必要がある。このように、SARADCは入力信号を連続的に変換することができない。別の利点は、既知の較正プロセスが、環境影響による経時変化を考慮していないことである。
【0005】
本開示の目的は、SARADCの通常動作を中断しない、逐次近似レジスタ型アナログデジタル変換器(SARADC)におけるオフセット較正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の概要
前記目的は少なくとも1つのADCを備えたSARADCにおける以下のオフセット較正方法によって達成され、前記方法は、
a)アナログ入力信号に対応するデジタル信号のビット数を決定するステップと、
b)前記アナログ入力信号(VIN)から決定されたバイナリコードが少なくとも1つのトリガコードと一致するか否かを検出するステップと、
c)少なくとも1つのトリガコードに対応する少なくとも1つの設定コードを使用して較正ビットを決定するステップと、
d)較正ビットに関してデジタル信号のビットを解析するステップと、
e)オフセット誤差の存在が解析から決定されたときに、オフセット誤差を較正するステップとを含む。
【0007】
較正ビットの決定には、ADCにおいて1つの追加の比較しか必要としないので、通常の動作と比較して、SARADCの正常動作に大きな影響はない。具体的には、通常の操作を中断する必要はなく、ただ1つの追加の比較ステップがある。さらに、オフセット誤差があるか否かを判断し、そのようなエラーがあるときに較正することはまた、SARADCの通常の動作に影響を与えるプロセスではない。このように、較正はバックグラウンドで行うことができ、従って頻繁に行うことができ、それによって、環境効果による経時変化を考慮に入れる。
【0008】
一実施形態では、ステップd)は、デジタル信号のビットが較正ビットと同じである場合に、オフセット誤差の存在を決定することを含む。
【0009】
第1の実施形態では、ステップc)は、アナログ入力信号を、少なくとも1つの設定コードの一部を表す別のアナログ信号と比較することによって、較正ビットを決定するステップを含む。
【0010】
この第1の実施形態では、較正ビットは、入力信号から直接的に決定され、まず入力信号を処理するADCのオフセット誤差を補正するために使用することができる。特に、ADCが1つしかない場合には、この方法を使用してそこで比較器オフセットを較正することができる。
【0011】
第1の実施形態の一実施形態では、ステップd)は、ビットの値を決定し、前記値が「0」の値を有するときに下方較正を示し、前記値が「1」の値を有するときに上方較正を示すステップを含む。
【0012】
第1の実施形態の一実施形態では、ステップe)は、少なくとも1つのADCにおけるオフセット誤差の存在が検出されたときに、前記少なくとも1つのADCの少なくとも1つの可変容量モジュールを調整することによって前記少なくとも1つのADCを較正するステップを含む。
【0013】
第2の実施形態では、前記少なくとも1つのADCは、第1段のADC及び第2段のADCを備え、前記ステップa)は、
a1)第1段のADCが、アナログ入力信号に対応するデジタル信号の最上位ビットの数を決定するステップと、
a2)利得モジュールが、第1段のADCから出力された残差信号を増幅するステップと、
a3)第2段のADCが、アナログ入力信号に対応するデジタル信号の最下位ビットの数を決定するステップとを含み、
前記ステップc)は、少なくとも1つのトリガコードに対応する少なくとも1つの設定コードを使用して第1段のADCにおいて較正残差信号を決定するステップを含む。
【0014】
この第2の実施形態では、較正ビットは、第2段のADCにおいて決定される。従って、利得モジュール及び第2段のADCによって生成されるオフセット誤差を同時に補正することができる。
【0015】
第2の実施形態の一実施形態では、アナログ入力信号と少なくとも1つの設定コードの一部を表すアナログ信号との間の差を計算することによって、較正残差信号が決定される。
【0016】
第2の実施形態の一実施形態では、ステップc)はさらに、増幅された較正残差信号を、少なくとも1つの設定コードの一部を表す別のアナログ信号と比較することによって、較正ビットを決定するステップを含む。
【0017】
第2の実施形態の一実施形態では、ステップc)はさらに、デジタル信号の最下位ビットが決定されるまで、較正残差信号を利得モジュールに一時的に記憶するステップを含む。
【0018】
第2の実施形態の一実施形態では、ステップe)はさらに、最下位ビットの値を決定し、前記値が「1」の値を有するときに下方較正を示し、前記値が「0」の値を有するときに上方較正を示すステップを含む。
【0019】
第2の実施形態の一実施形態では、ステップe)は、第2段のADCにおけるオフセット誤差の存在が検出されたときに、利得モジュールの少なくとも1つの可変静電容量モジュールを調整することによって、第2段のADCを較正するステップを含む。
【0020】
本開示の別の目的は、逐次比較レジスタ型アナログデジタル変換器(SARADC)を提供することであり、このことはSARADCの通常の動作を中断することなく利得誤差較正を受けることができる。
【0021】
この目的は、以下のSARADCによって達成される。前記SARADCは、
アナログ入力信号に対応するデジタル信号のビット数を決定するように構成された少なくとも1つのADCと、
制御モジュールとを備え、
前記制御モジュールは、
少なくとも1つのADCを制御し、
入力アナログ信号に対応するデジタル出力信号を出力し、
少なくとも1つのトリガコードを格納し、
アナログ入力信号から決定されたバイナリコードが少なくとも1つのトリガコードと一致するか否かを検出し、
前記少なくとも1つのトリガコードに対応する少なくとも1つの設定コードを、較正ビットを決定するようにさらに構成された少なくとも1つのADCに提供し、
前記較正ビットに関して前記デジタル信号のビットを解析し、
解析からオフセット誤差の存在が決定されたときにオフセット誤差の較正を開始するように構成される。
【0022】
このSARADCは、既に上述した方法と同じ利点を有する。
【0023】
一実施形態では、制御モジュールはさらに、前記少なくとも1つのADCにおけるオフセット誤差の存在を示すビットと前記較正ビットが同じであるか否かを決定するように構成された差分計算モジュールを備える。
【0024】
第1の実施形態では、少なくとも1つのADCは、アナログ入力信号を、少なくとも1つの設定コードの一部を表す別のアナログ信号と比較することによって、較正ビットを決定するように構成された比較器を備える。
【0025】
この第1の実施形態は、既に上述した方法の第1の実施形態と同じ利点を有する。
【0026】
第1の実施形態の一実施形態では、制御モジュールは、ビットの値を決定し、前記値が「0」の値を有するときに下方較正を示し、前記値が「1」の値を有するときに上方較正を示すように構成されたオフセット較正モジュールを備える。
【0027】
第1の実施形態の一実施形態では、前記制御モジュールはさらに、オフセット誤差の存在を示す信号を、前記信号に応じて調整されるように構成された少なくとも1つの可変キャパシタモジュールを備えた少なくとも1つのADCに送信するように構成される。
【0028】
第2の実施形態では、前記少なくとも1つのADCは、第1段のADC及び第2段のADCを備え、
前記第1段のADCは、前記アナログ入力信号に対応する前記デジタル信号の最上位ビットの数を決定し、デジタル信号の最下位ビット数に対応する残差信号を出力するように構成され、
第2段のADCは、増幅された残差信号を受信し、増幅された残差信号から入力アナログ信号に対応するデジタル信号の最下位ビットの数を決定するように構成され、
前記SARADCはさらに、第1段のADCから出力される残差信号を受信し、前記残差信号を増幅し、前記増幅された残差信号を出力するように構成された利得モジュールを備え、
前記制御モジュールはさらに、第1段のADC、利得モジュール、及び第2段のADCを制御し、前記少なくとも1つのトリガコードに対応する前記少なくとも1つの設定コードを、較正残差信号を決定するようにさらに構成された第1段のADCに供給するように構成される。
【0029】
この第2の実施形態は、すでに上述した方法の第2の実施形態と同じ利点を有する。
【0030】
第2の実施形態の一実施形態では、第1段のADCは、アナログ入力信号と少なくとも1つの設定コードの一部を表すアナログ信号との間の差を計算することによって、較正残差信号を決定するように構成された剰余生成モジュールを備える。
【0031】
第2の実施形態の一実施形態では、第2段のADCは、増幅された較正残差信号を、少なくとも1つの設定コードの一部を表す別のアナログ信号と比較することによって、較正ビットを決定するように構成された比較器を備える。
【0032】
第2の実施形態の一実施形態では、前記利得モジュールは、第1の増幅器、第2の増幅器、第1の増幅器と第2の増幅器との間の第1のスイッチ、及び第2の増幅器の後段の第2のスイッチを備え、
前記制御モジュールは、第1のスイッチの後に較正残差信号をキャパシタに一時的に格納するように第1のスイッチ及び第2のスイッチを制御することで、第2段のADCがデジタル信号の最下位ビットを決定するまで繰り返す。
【0033】
第2の実施形態の一実施形態では、前記制御モジュールは、最下位ビットの値を決定し、前記値が1の値を有するときに下方較正を示し、前記値が0の値を有するときに上方較正を示すように構成されたオフセット較正モジュールを備える。
【0034】
第2の実施形態の一実施形態では、前記制御モジュールはさらに、第2段のADCのオフセット誤差の存在を示す信号を、前記信号に応じて調整されるように構成された少なくとも1つの可変キャパシタモジュールを備えた利得モジュールに送るように構成される。
【0035】
本開示は、以下の説明及び添付の図面によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】従来の2段パイプライン逐次比較レジスタ(SAR)型アナログデジタル変換器(ADC)のブロック図を示す。
【
図2A】本開示にかかる2段パイプラインSARADCのブロック図を示す。
【
図2B】
図2Aの2段パイプラインSARADCの制御モジュールのブロック図を示す。
【
図2C】
図2Aの2段パイプラインSARADCの第1のSARADCのブロック図を示す。
【
図2D】
図2Aの2段パイプラインSARADCの利得モジュールのブロック図を示す。
【
図2E】
図2Aの2段パイプラインSARADCの第2のSARADCのブロック図を示す。
【
図3】通常動作中の
図2Aの2段パイプラインSARADCのタイミング図を示す。
【
図4】DACミスマッチの較正、増幅器利得の較正、又は第2の比較器のオフセット較正中の、
図2Aの2段パイプラインSARADCのタイミング図を示す。
【
図5】第1の比較器のオフセット較正中の
図2Aの2段パイプラインSARADCのタイミング図を示す。
【
図6A】増幅器と、第2の比較器のオフセット較正を伴う本開示にかかる2段パイプラインSARADCのブロック図を示す。
【
図6B】
図6Aの2段パイプラインSARADCの制御モジュールのブロック図を示す。
【
図6C】
図6Aの2段パイプラインSARADCの第1のSARADCのブロック図を示す。
【
図6D】
図6Aの2段パイプラインSARADCの利得モジュールのブロック図を示す。
【
図6E】
図6Aの2段パイプラインSARADCの第2のSARADCのブロック図を示す。
【
図7A】第1の比較器オフセット較正を用いる本開示にかかる、2段パイプラインSARADCのブロック図を示す。
【
図7B】
図7Aの2段パイプラインSARADCの制御モジュールのブロック図を示す。
【
図7C】
図7Aの2段パイプラインSARADCの第1のSARADCのブロック図を示す。
【
図7D】
図7Aの2段パイプラインSARADCの第2のSARADCのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示の説明
本開示は、特定の実施形態に関して、及び特定の図面を参照して説明されるが、本開示はそれに限定されず、請求項によってのみ限定される。記載された図面は概略的なものに過ぎず、限定的ではない。図面において、要素のいくつかのサイズは、説明のために誇張されており、縮尺通りに描かれていない場合がある。寸法及び相対的な寸法は、本開示の実施のための実際の縮小に必ずしも対応していない。
【0038】
さらに、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも逐次的又は時間的な順序を説明するためではない。これらの用語は、適切な状況下で交換可能であり、本開示の実施形態は、本明細書に記載又は例示されている以外の順序で動作することができる。
【0039】
さらに、説明及び特許請求の範囲における上部、下部、上、下などの用語は、説明目的で使用され、必ずしも相対的な位置を説明するためではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能である。本明細書に記載された開示の実施形態は、本明細書に記載又は図示されている以外の向きで動作することができる。
【0040】
さらに、様々な実施形態は、「好ましい」と呼ばれるが、例示的な方法として解釈されるべきである。この開示は、本開示の範囲を限定するものではなく実装されてもよい。
【0041】
図1は、従来の2段パイプライン逐次近似レジスタ(SAR)型アナログデジタル変換器(ADC)100のブロック図を示す。2段パイプラインSARADC100は、第1のSARADC110と、第2のSARADC120と、第1のSARADC110の出力信号を増幅する利得モジュール130と、2段パイプラインSARADC100を制御する制御モジュール140とを備える。
図1では、フルラインは、第1のSARADC110がその動作を終了するまで送信される信号を示すために使用され、破線は、第1のSARADC110がその動作を終了した後、第2のSARADC120がその動作を終了するまでの送信される信号を示すために使用され、一点鎖線は、第2のSARADC120がその動作を終了した後に送信される信号を示すために使用される。
【0042】
動作中、アナログ入力信号VINは、複数の最上位ビット(Most Significant Bits:MSB)を決定する第1のSARADC110に入力される。複数のMSBは、アナログ入力信号VINを、入力信号VINをサンプリングする第1の追跡及び保持モジュール112に供給することで決定される。制御モジュール140は、デジタルコードCMSBを第1のデジタルアナログ変換器(DAC)114に入力し、第1のデジタルアナログ変換器(DAC)114はデジタルコードCMSBを対応するアナログ信号VMSBに変換する。第1の比較器116は、入力信号VINとアナログ信号VMSBとを比較して、2つの信号のうちのどちらが大きいかを決定する。比較結果に応じて、第1の比較器116はバイナリ値BMSBを出力する。
【0043】
バイナリ値BMSBが「1」であるとき、入力信号VINはアナログ信号VMSBより大きい。同様に、バイナリ値BMSBが「0」の場合、入力信号VINはアナログ信号VMSBより小さい。バイナリ検索アルゴリズムを使用して、制御モジュール140は、入力信号VINに対応するデジタル信号のMSBが決定されるまで、デジタルコードCMSBを変更する。
【0044】
少なくとも1つのクロック信号(
図1には図示せず)は、2段パイプラインSARADC100のタイミングを制御して、アナログ入力信号V
INに対応するデジタル信号のMSB及びLSBの決定の反復を提供するために設けられることが容易に理解されるであろう。
【0045】
例えば、一実施形態では、制御モジュール140は、デジタルコードCMSBを「1000」として初期化する。バイナリ値BMSBに応じて、次の反復において、制御モジュール140は、デジタルコードCMSBを、バイナリ値BMSBが「1」であるときに「1100」にセットし、バイナリ値BMSBが「0」であるときに「0100」にセットする。この実施形態では、4回の反復が実行されて、入力信号VINに対応する4個のMSBを決定する。
【0046】
当業者であれば、任意の数のMSBが、あらかじめ設定された回数の反復を使用することで、第1のSARADC110によって決定され得ることが明らかである。
【0047】
MSBが第1のSARADC110によって決定された後、すなわち、予め設定された反復回数が実行された後、第1のSARADC110は、入力信号VINと、デジタルコードCMSBに対応するアナログ信号VMSBとの差を表すアナログ残差信号VRESを出力する。このアナログ信号VRESは、入力信号VINのLSB(Least Significant Bits)に関する情報を含む。信号VRESは、当該信号を増幅するために利得モジュール130を介して送信される。
【0048】
動作中に、利得モジュール130からの増幅された信号VAMPは、複数のLSBを決定する第2のSARADC120に入力される。具体的には、増幅された信号VAMPを、増幅された信号VAMPをサンプリングする第2の追跡及び保持モジュール122に供給することで複数のLSBが決定される。制御モジュール140は、デジタルコードCLSBを第2のDAC124に入力し、第2のDAC124はデジタルコードCLSBを対応するアナログ信号VLSBに変換する。第2の比較器126は、増幅された信号VAMPとアナログ信号VLSBとを比較して、2つの信号のどちらが大きいかを決定する。比較結果に応じて、第2の比較器126はバイナリ値BLSBを出力する。
【0049】
バイナリ値BLSBが「1」であるとき、増幅信号VAMPはアナログ信号VLSBより大きい。同様に、バイナリ値BLSBが「0」の場合、入力信号VAMPはアナログ信号VLSBより小さい。バイナリ検索アルゴリズムを用いて、制御モジュール140は、入力信号VINに対応するデジタル信号のLSBが決定されるまで、デジタルコードCLSBを変更する。
【0050】
第2のSARADC120が予め設定された反復回数を終了した後、制御モジュール140は、入力信号VINに対応するデジタルコードCOUTを出力する。COUTは、第1のSARADC110によって決定されたMSBに関する情報と、及び第2のSARADC120によって決定されたLSBに関する情報とを組み合わせることで、制御モジュールによって決定される。
【0051】
図2Aは、以下を修正するバックグラウンド較正を有する2段パイプラインSARADC200のブロック図を示す。
(1)SARADC210,220間のDACミスマッチ誤差;
(2)利得モジュール230のプロセス、電圧及び温度(PVT)変動に起因する増幅器利得誤差;及び
(3)比較器216,226のオフセット誤差。
【0052】
図2Aでは、フルラインは、2段パイプラインSARADC200の通常動作中に発生する信号を示すために使用される一方、点線は、バックグラウンド較正のために実行されていた、又は実行された余分なステップに関連している、送信される信号を示すために使用される。
【0053】
2段パイプラインSARADC200の通常の動作は、
図1に示す従来の2段パイプラインSARADC100と同一のである。具体的には、入力信号V
INが第1のSARADC210に入力され、第1のSARADC210は上記のように多数のMSBを反復的に決定する。第1のSARADC210は、残差信号V
RES=V
IN-V
MSBを出力し、残差信号V
RESは利得モジュール230で増幅され、増幅された信号V
AMPは第2のSARADC220に入力される。第2のSARADC220は、増幅された信号V
AMPに基づいて入力信号V
INのLSBを決定する。MSBとLSBの両方が制御モジュール240に格納され、ここで、それらが結合され、制御モジュール240は、入力信号V
INに対応するデジタルコードC
OUTを出力する。
【0054】
一実施形態では、第1のSARADC210は、7ビットデジタルコードCMSBを使用し、7つの比較を行って、入力信号VINに対応するデジタル信号の7ビットを決定し、第2のSARADC220は8ビットデジタルコードCLSBを使用し、従って8つの比較を実行する。しかしながら、第2のSARADC220は、2段パイプラインSARADC200の冗長性のために、入力信号VINの7ビットだけを決定する。このように、この実施形態では、入力信号VINに対応する14ビットデジタル信号を決定するために合計15個の比較が実行される。これにより、第1のSARADC210のLSBが利得モジュール230によって第2のSARADC220のMSBに直接リンクされるので、段間冗長性が生じ、すなわち次式を得る。
【0055】
Gain*LSB1st=MSB2nd (1)
【0056】
この実施形態のタイミング図は、変換プロセスの2サイクルにわたって
図3に示されている。外部クロック信号(制御モジュール240のタイミングモジュール(図示せず)によって生成される)は、変換プロセスを開始する。
【0057】
第1の比較器クロック信号は、第1のSARADC210の第1の比較器(
図2Aには図示せず)の動作を制御する。第1の比較器は7つの動作サイクルを有することは明らかである。第1の比較器がその動作を終了した後、利得モジュール230が起動される。
【0058】
以下に説明するように、利得モジュール230は2段増幅器を備える。このように、第1の増幅器クロック信号は、2段増幅器の第1の増幅器がアクティブであるときを示す(すなわち、第1の増幅器クロック信号のハイからローへの遷移と、ローからハイへの遷移との間の期間を示す)。
【0059】
同様に、第2の増幅器クロック信号は、2段増幅器の第2の増幅器がアクティブであることを示す(すなわち、第2の増幅器制御(又はクロック信号)のハイからローへの遷移と、ローからハイへの遷移との間の期間を示す)。
【0060】
第2の比較器クロック信号は、第2のSARADC220の第2の比較器(
図2Aには図示せず)の動作を制御する。第2の比較器は、第2の増幅器クロック信号によって示される第2の増幅器がアクティブであると同時に8つの動作サイクルを有することは明らかなである。
【0061】
各SARADC210,220はまた、2段パイプラインSARADC200が使用されるアーキテクチャに応じて別の数の比較を実行してもよいことは理解されるであろう。しかしながら、直接にリンクする段間の冗長性が維持されていなければならず、第1のSARADC210のLSBは、第2のSARADC220のMSBに直接リンクされることが重要である。
【0062】
図2Aに戻ると、本開示の2段パイプラインSARADC200では、制御モジュール240は、MSBが第2のSARADC220によって決定された後に、検出ステップを実行する。具体的には、制御モジュール240は、第1のSARADC210のMSB及び第2のSARADC220のLSBのMSBを含むバイナリコードが、プリセットバイナリコードと一致するか否かを決定する。以下ではC
DET(図示せず)と呼ばれるこのコードが実際にプリセットされたバイナリコードと一致する場合、以下で説明するように、較正プロセスがトリガされる。一方、このコードがあらかじめ設定されたバイナリコードと一致しない場合は、較正プロセスがトリガされず、2段パイプラインSARADC200の標準動作が、アナログ入力信号V
IN全体がデジタル信号に変換されるまで、もしくは、又はコードC
DETがプリセットバイナリコードと一致するまで、継続される。
【0063】
図2Bは、
図2Aの2段パイプラインSARADC200の制御モジュール240のブロック図を示す。制御モジュール240は、インターフェースモジュール241を備え、インターフェースモジュール241は、様々な入力信号を受信し、様々な出力信号を2段パイプラインSARADC200の他のモジュールに送信するために使用される。
【0064】
制御モジュール240は、メモリモジュール242を備え、メモリモジュール242は、入力信号VINの逐次近似の間において、各SARADC210,220によって検出されたバイナリコードを格納することができる。さらに、メモリモジュール242はまた、後述するように較正プロセスをトリガする適切なプリセットバイナリコードを格納してもよい。
【0065】
制御モジュール240はまた、検出モジュール243を備える。検出モジュール243は、コードCDETがメモリモジュール242に記憶されているプリセットバイナリコードと一致するか否かを検出する。プリセットバイナリコードが検出された場合、この検出は関連する較正モジュールに伝達され、すなわち、関連する較正モジュールは、DACミスマッチ較正モジュール244、増幅器利得較正モジュール245、及びオフセット較正モジュール246のうちの1つである。
【0066】
さらに、制御モジュール240は、2つのビット値の間の差を決定する差分計算モジュール247を備える。差分計算モジュール247は、後述するように較正に使用される。
【0067】
当業者であれば、制御モジュール240は、他のモジュールとの間で信号を送受信し、かつ/又は他のモジュールから信号を受信するために、異なるモジュール間に適切な内部接続(図示せず)をさらに備えることは明らかである。
【0068】
図2Cは、本開示の2段パイプラインSARADC200の第1のSARADC210のブロック図を示す。
図1に示す従来のSARADC110のように、第1のSARADC210は、アナログ入力信号V
INのm個のMSBを決定するために使用され、追跡及び保持モジュール212と、第1のDAC214と、第1の比較器216とを備える。追跡及び保持モジュール212は、入力信号V
INをサンプリングして、第1の比較器オフセット補正モジュール218(その動作は以下に説明される)を介して第1の比較器216に供給する。
【0069】
第1のDAC214は、m個のキャパシタ214a,214b,…,214mを備え、各キャパシタは、決定されるm個のMSBのビットに関連する。第1のDAC214で受信されたデジタルコードCMSBに応じて、キャパシタ214a,214b,…,214mの1つ以上がスイッチオンされ、デジタルコードCMSBをアナログ信号VMSBに変換する。
【0070】
通常動作時には、第1の比較器216は、VINとVMSBとの比較に基づいてバイナリ値BMSBを出力する。MSBが決定された後、第1のSARADC210の残差生成モジュール219は、残差信号VRES=VIN-VMSBを生成し、残差信号VRESは第1のSARADC210から出力される。
【0071】
図2Aに関して上述したように、検出モジュール243が、コードC
DETがDACミスマッチ較正に関連するプリセットバイナリコードと一致することを検出するとき、検出モジュール243は、DACミスマッチ較正モジュール244に較正が行われることを示す信号を送る。次に、DACミスマッチ較正モジュール244は、特定のデジタル較正コードC
*
MSBを第1のDAC214に送り、アナログ較正信号V
*
MSBを生成する。
【0072】
第1のSARADC210がMSBの決定を終了した後、コードC
DETが決定されるだけなので、信号V
RESは既に第1のSARADC210から出力されている。しかしながら、DACミスマッチ較正がトリガされると、DACミスマッチ較正モジュール244は、第1のSARADC210における追加のステップをトリガする。この追加のステップは、較正残差信号を計算し、すなわち、V
*
RES=V
IN-V
*
MSBを計算し、これは、入力信号V
INとアナログ較正信号V
*
MSBとの間の差である。この計算の出力は、
図2Cに点線で示され、これは、通常の動作中には発生しない付加的な動作である。較正残差信号V
*
RESの出力後、第1のSARADC210は再び入力信号V
INのサンプリングを開始し、次の通常動作サイクルを開始する。
【0073】
DACミスマッチ較正中の2段パイプラインSARADCのタイミング図を
図4に示します。
図3に示すように、外部クロック信号は制御モジュールにより発生され、第1の比較器クロック信号は、第1のSARADC210の第1の比較器216の動作を制御し、第1の増幅器クロック信号は、2段増幅器の第1の増幅器がアクティブであるときを示し、第2の増幅器クロック信号は、2段増幅器の第2の増幅器がアクティブであることを示し、第2の比較器クロック信号は、第2のSARADC220における第2の比較器の動作を制御する。
【0074】
図4から、DACミスマッチ較正の間に、第1及び第2の増幅器クロック信号が変更されることが明らかである。具体的には、コードC
DETが決定された後に第1の増幅器がリセットされ、すなわち、第2のSARADC220のLSBのMSBが決定された後である。
【0075】
図2Dは、本開示の2段パイプラインSARADC200の利得モジュール230のブロック図を示す。上記のように、利得モジュール230は、2段増幅器の形態であり、第1の増幅器232と第2の増幅器236とを備える。増幅器232,236の間には、回路を開閉することができる第1のスイッチ234がある。キャパシタC
Sは、第1のスイッチ234の後段に配置され、閉じたときにアナログ信号を記憶することができるように配置される。
【0076】
第2の増幅器232の後に、利得モジュール230は、回路を開閉することができる第2のスイッチ238を備える。第2のスイッチ238が閉じられると、増幅された信号VAMPが利得モジュール230から出力される。利得モジュール230はまた、オフセット補正モジュール231を備え、その動作を以下に説明する。
【0077】
図3から、通常動作時には、第1及び第2のスイッチ234及び238は、信号V
RESが中断されることなく利得モジュール230内で増幅され、V
AMPがLSBを決定することができる第2のSARADC220に出力されるように、第1及び第2の増幅器クロック信号のそれぞれに従って閉じられることができることは明らかである。
【0078】
しかしながら、DACミスマッチ較正プロセスの間に、第2のSARADC220が入力信号V
INのLSBの決定を終了する前に、較正残差信号V
*
RESは既に決定されている。このため、第2のSARADC220がV
RESに対応する増幅された信号V
AMPのビットを決定できることを確実にするために、そのビットは入力信号V
INのLSBに対応し、較正残差信号V
*
RESに対応する増幅された較正信号V
*
AMPは、第2のSARADC220がLSBの決定を終了する前に、利得モジュール230から出力され得ない。較正残差信号V
*
RESを受信してから増幅された較正信号V
*
AMPを出力するまでのレイテンシを達成するために、
図2Dに示す2段増幅器が有利である。
【0079】
図4に示すように、V
RESが第1のSARADC210によって決定された後、第1の増幅器232はアクティブになり、信号V
RESを増幅し、直ちにV
AMPを生成する第2の増幅器236に通す。このように、第1及び第2のスイッチ234及び238の両方が閉じられる。しかしながら、第1のSARADC210が較正残差信号V
*
RESを決定しているとき、第1のスイッチ234が開き、第1の増幅器232がリセットされる。第1のSARADC210が較正残差信号V
*
RESを出力すると、第1のスイッチ234は再び閉じられ、第1の増幅器232は較正残差信号V
*
RESを増幅する。この中間増幅された信号は、その後、蓄積キャパシタC
S上に記憶され、第1のスイッチ234は再び閉じられる。このように、第1のSARADC210は、蓄積キャパシタC
Sに蓄積された中間増幅信号に影響を与えることなく、次のサイクルの通常のサンプリング動作を継続することができる。第2のSARADC220が最後の比較を終了すると、すなわち、入力信号V
INのすべてのLSBを決定した後、第2のスイッチ238を開くことによって第2の増幅器236がリセットされる。リセットされた後、第2の増幅器236は、蓄積キャパシタC
Sに蓄積された中間増幅信号を増幅し、増幅された較正信号V
*
AMPを第2のSARADC220に出力する。以下に説明するように、第2のSARADC220は、余分な比較を実行する。
【0080】
図2Eは、本開示の2段パイプラインSARADC200の第2のSARADC220のブロック図を示す。
図1に示す従来のSARADC120のように、第2のSARADC220は、アナログ入力信号V
INの複数n個のLSBを決定するために使用され、追跡及び保持モジュール222と、第2のDAC224と、第2の比較器226とを備える。
【0081】
追跡及び保持モジュール222は、入力信号VAMPをサンプリングして第2の比較器226に供給する。第2のDAC224は、n個のキャパシタ224a,224b,…,224nを備え、各キャパシタは、決定されるべきn個のLSBのビットに関連する。第2のDAC224で受信されるデジタルコードCLSBに依存して、キャパシタ224a,224b,…,224nのうちの1つ以上がスイッチオンされ、デジタルコードCLSBをアナログ信号VLSBに変換する。通常動作時には、第2の比較器226は、VAMPとVLSBの比較に基づいてバイナリ値BLSBを出力する。
【0082】
上記のように、検出モジュール243が、コードC
DETがDACミスマッチ較正に関連するプリセットバイナリコードと一致することを検出するとき、検出モジュール243は、「開始」信号を用いて
図2Aの点線で示されるように較正が行われることを示す信号をDACミスマッチ較正モジュール244に送る。
【0083】
上記のように、第1のSARADC210は、利得モジュール230によって較正信号V*
AMPに増幅された較正残差信号V*
RESを出力し、当該増幅された較正残差信号V*
RESは、入力信号VINに対応するデジタル信号のLSBを決定することが終了した後、第2のSARADC220に入力される。次に、DACミスマッチ較正モジュール244は、特定のデジタル較正コードC*
LSBを第2のDAC224に送り、アナログ較正信号V*
LSBを生成する。さらに、第2のSARADC220において追加の比較サイクルがトリガされる。次いで、この追加のサイクルは、入力信号、すなわち増幅された残差信号V*
AMPを、アナログ較正信号V*
LSBと比較する。この比較の出力は、B*
LSBで示される較正ビットであり、制御モジュール240に送られる。
【0084】
次に、差分計算モジュール247は、COUTの最後のビットと較正ビットB*
LSBとの差を計算する。この比較の結果に応じて、第1のDAC214のキャパシタ214a,214b,…,214mの容量値は、第1のSARADC210の第1のDACと第2のSARADC220の第2のDACとの間のキャパシタミスマッチに対応するように変更される。
【0085】
この種の較正の利点は、それはバックグラウンドで実行することができ、すなわち、2段パイプラインSARADC200の通常動作が中断されない。第2のSARDAC220には1つの追加の比較サイクルしか存在しないが、
図3及び
図4のタイミング図に示すように、2段パイプラインSARADC200の合計タイミングに大きな影響はない。
【0086】
DACミスマッチ較正は、正しいプリセットバイナリコードCDETの選択に基づいている。既に上述したように、第1のSARADC210の残差信号は次式で与えられる。
VRES=VIN-VMSB、及び
V*
RES=VIN-V*
MSB
【0087】
さらに、同様の式が第2のSARADC220の残差信号に適用される。
VRES2=Gain*VRES-VLSB、及び
V*
RES2=Gain*V*
RES-V*
LSB
これらの式を組み合わせると、次式を得る。
【0088】
V*
RES2-VRES
=Gain*(VMSB-V*
MSB)-(V*
LSB-VLSB)
(2)
【0089】
増幅器の利得が理想的であると仮定すると、すなわち、方程式(1)が有効であると仮定することによって、これにより、次の式が導かれる。
【0090】
V*
RES2-VRES
=(MSB2nd/LSB1st)*(VMSB-V*
MSB)-(V*
LSB-VLSB)
(3)
【0091】
プリセットコードCDETの値、及びそれに応答してバイナリ較正コードC*
MSB及びC*
LSBが設定される値に応じて、式(3)の符号は既知である。
【0092】
一実施形態では、第1のDACの第1のキャパシタ214aを較正して第2のDACの第1のキャパシタ224aと良好に一致させるときに、次式を得る。
プリセットコードCDET=1000000 0XXXXXXX
ここで、Xは、第2のSARADC220によってまだ決定されていないバイナリ値を示す。この実施形態では、第1のSARADC210は、7ビットデジタルコードCMSBを使用して7つの比較を行って、入力信号VINに対応するデジタル信号の7ビットを決定する一方、第2のSARADC220は、8ビットデジタルコードCLSBを使用して、従って8つの比較を実行する。上記のように、段間の冗長性のために、第1のSARADC210のLSBは、第2のSARADC220のMSBに直接リンクされる。この特定コードCDETが入力信号VINの変換中に遭遇すると、検出モジュール243は、DACミスマッチ較正モジュール244を起動し、C*
MSB=0111111を第1のDACに入力する。この較正コードに基づいて、較正残差信号V*
RESが生成される。第2のSARADC220が入力信号VINに対応するデジタルコードの最後のLSBを決定した後、DACミスマッチ較正モジュール244は、較正コードC*
LSB=1YYYYYYYを第2のDACに入力し、ここで、Yは、第2のSARADC220によって決定されたバイナリ値を示す。これらのバイナリコードに基づいて、理想的には、利得誤差とオフセット誤差が正しく較正されていると仮定すると、次式を得る。
VMSB-V*
MSB=LSB1st、及び
V*
LSB-VLSB=MSB2nd
このことは、V*
RES2-VRES=0であることを示す。
【0093】
このため、VRES2とV*
RES2の符号は同一のでなければならず、COUTとB*
LSBの最後のビットに反映されるのは、まさにこれらの符号である。このため、これらのビットの差が非ゼロである場合、第1のDACの第1のキャパシタ214aと第2のDACの第1のキャパシタ224aとの間にDAC較正ミスマッチが存在する。
【0094】
誤差が検出された後、すなわち、最後の2ビット、すなわちC
OUT及びB
*
LSBの最後のビットが「01」又は「10」のいずれかを形成する場合、誤差を修正する必要がある。この補正は、第1のDACの第1のキャパシタ214aの容量を調整することによって行われる。具体的には、ビットが「01」を形成する場合、第1のキャパシタ214aに補正信号を送って静電容量を減少させる一方、ビットが「10」を形成する場合、第1のキャパシタ214aに補正信号を送り、容量を増加させる。この信号は、
図2Aの点線で示され、「補正」と呼ばれる。
【0095】
同様の方法で、他のプリセットされたバイナリコードが第1のDACの他のキャパシタに使用され、その結果、これらの特定のキャパシタに対して同一の容量調整が行われる。具体的には、
CDET=0100000 0XXXXXXX、及び
C*
DET=0011111 1YYYYYYY
である。ここで、C*
DETは、第1のDACの第2のキャパシタ214bのための、CDETに対する事前に設定された較正応答コードである。第1のDACの第3のキャパシタ214cのために、
CDET=0110000 0XXXXXXX、及び
C*
DET=0101111 1YYYYYYY
である。
第1のDACの第4のキャパシタ214dのために、
CDET=0111000 0XXXXXXX、及び
C*
DET=0110111 1YYYYYYY
である。
第1のDACの第5のキャパシタ214eのために、
CDET=0111100 0XXXXXXX、及び
C*
DET=0111011 1YYYYYYY
などである。
ここで、Xは、第2のSARADC220によってまだ決定されていないバイナリ値を示し、Yは第2のSARADC220によって決定されたバイナリ値を示す。
【0096】
これらのプリセットコードは、それぞれのSARADCで決定される他のビット数に対して発生されることができることが理解されるであろう。
【0097】
本開示の2段パイプラインSARADC200は、PVT変動に起因する増幅器利得の変化を補正するために使用することもできる。上述した増幅器利得較正とDACミスマッチ較正の主な違いは、プリセットバイナリコードCDET及びC*
DETであり、補正が第2のSARADCモジュール220の第2のDACで実行されることである。具体的には、第1のDACと第2のDACとの間にキャパシタミスマッチがないと仮定すると、式(2)は以下の式となる。
【0098】
V*
RES2-VRES=MSB2nd-Gain*LSB1st
(4)
【0099】
利得が正しく較正されている場合は0になる。しかしながら、利得が正確に較正されない場合、式(4)の符号は利得誤差の方向を示す。従来通り、VRES2とV*
RES2の符号はCOUTとB*
LSBの最後のビットに反映され、これらのビットの差が非ゼロである場合、利得較正誤差が存在する。
【0100】
利得較正のために、プリセットコードは次式で表される。
CDET=1001000 1XXXXXXX、及び
C*
DET=1001001 0YYYYYYY。
ここで、Xは、第2のSARADC220によってまだ決定されていないバイナリ値を示し、Yは第2のSARADC220によって決定されたバイナリ値を示す。これらのコードの場合において、利得誤差がなければ同一のアナログ値が得られることが予想される。
しかしながら、他のプリセットコードも可能であり、例えば、
CDET=ZZZZZ01 1XXXXXXX、及び
C*
DET=ZZZZZ10 0YYYYYYY
である。ここで、Xは、第2のSARADC220によってまだ決定されていないバイナリ値を示し、Yは、第2のSARADC220によって決定されたバイナリ値を示し、Zは未指定の2進数を示す。CDETとC*
DETの選択における唯一の他の制限は、それらがDACミスマッチ較正をトリガするプリセットバイナリコードと一致してはならないことである。
【0101】
このため、プリセット利得較正コードが検出されると、検出モジュール243は、増幅器利得較正モジュール245を起動する。次に、このモジュールは、検出されたコードCDETに対応する較正コードC*
DETを決定し、較正コードC*
DETをインターフェースモジュール241に送り、インターフェースモジュール241は、第1のSARADC210、第2のSARADC220、及び利得モジュール230への「開始」信号と共に第1及び第2のDACのそれぞれに送る。
【0102】
DACミスマッチ較正と同様の方法で、較正ビットB
*
LSBが第2のSARADC220から出力され、制御モジュール240に送られる。差分計算モジュール247は、差分を計算し、誤りがあるか否かを検出する。誤差が検出された後、すなわち、最後の2ビット、すなわち、C
OUT及びB
*
LSBの最後のビットが「01」又は「10」を形成したときに、誤差を修正する必要がある。この補正は、第2のDAC224のキャパシタ224a,224b,…,224nの容量値を調整することによって行われる。具体的には、ビットが「01」を形成する場合、容量を増加させるために補正信号が送られ、ビットが「10」を形成する場合には、静電容量を減少させるために補正信号が送られる。この信号は、
図2Aの点線で示され、「補正」と呼ばれる。
【0103】
本開示の2段パイプラインSARADC200は、第1の比較器216、利得モジュール230、及び第2の比較器226のうちの少なくとも1つのオフセットのために、誤りを訂正するために使用することもできる。第1の比較器216、利得モジュール230、及び第2の比較器226のオフセットをそれぞれV1,V2,V3とすると、最終残差VRES2上のオフセットは次式で表される。
【0104】
V1+V2-V3/Gain
【0105】
ここで、Gainは増幅器の利得を示す。このオフセット値が冗長度より大きい場合、2段パイプラインSARADC200が間違ったデジタルコードを出力することが予想される。従って、第2のSARADC220の残差は次式で表される。
VRES2=Gain*(VIN+V2)-VLSB-V3
【0106】
本開示の一実施形態では、利得モジュール230と第2の比較器226による累積オフセット誤差が同時に補正され、DACミスマッチ較正及び利得較正と同様の方法で実行される。このオフセット較正のために、プリセットコードは任意のバイナリ値をとることができるが、DACミスマッチ較正又は利得誤差較正のいずれかに使用されるプリセットコードのいずれとも一致しないプリセットバイナリコードが選択される。
【0107】
プリセットオフセット較正コードCDETが検出された場合、検出モジュール243は、オフセット較正モジュール246に信号を送信し、オフセット較正モジュールは対応する較正コードC*
DETをインターフェース241に送る。次いで、インターフェース241は、このコード対応コードを「開始」信号とともに第1のSARADC210、第2のSARADC220、及び利得モジュール230に送る。
【0108】
オフセット較正では、C
MSBとC
LSBのDACコードをそれぞれC
*
MSBとC
*
LSBに変更するだけでなく、利得モジュール230のオフセット補正モジュール231にも信号が送られる。具体的には、この信号はオフセット補正モジュール231の交差モジュール231aに送られる(
図2D参照)。この信号を受信すると、交差モジュール231aは入力を切り替える。
【0109】
一実施形態では、2段パイプラインSARADC200は差動回路として実現される。この実施形態では、交差モジュール231aは単に正の信号と負の信号と交差し、これらの信号をオフセット補正モジュール231に入力する。
【0110】
代替実施形態では、2段パイプラインSARADC200は、非差動回路として実現される。この実施形態では、交差モジュール231aは入力信号と交差し、オフセット補正モジュールに供給される基準信号と共にオフセット補正モジュール231に入力される。
【0111】
到来する信号を横切るのに続いて、第1及び第2のDACもまた反転される。言い換えると、較正コードC*
DETはCDETの論理逆数である。従って、第2のSARDAC220の残差は次式で表される。
V*
RES2
=Gain*(-VIN+V2)-V*
LSB-V3
これにより、次式が導かれる。
【0112】
V*
RES2+VRES=2*Gain*(V2-V3/Gain)
(5)
【0113】
DACミスマッチ較正と同様の方法で、較正ビットB
*
LSBが第2のSARADC220から出力され、制御モジュール240に送られる。そして、差分計算モジュール247は、式(5)の符号に対応する差分を計算し、誤差があるか否かを検出する。誤差が検出された後、すなわち、C
OUT及びB
*
LSBの最後の2ビットが「00」又は「11」のいずれかを形成する場合、誤差を修正する必要がある。この修正は、
図2Dに示すように、利得モジュール230のオフセット補正モジュール231の第2の可変キャパシタモジュール231bを調整することによって(「第2」という用語は、回路の第2の部分、すなわち、この場合は利得モジュール230を指す)実行される。具体的には、ビットが「00」を形成する場合、容量を増加させるために補正信号が送られる一方、ビットが「11」を形成する場合、静電容量を減少させるために補正信号が送られる。この信号は、
図2Aの点線で示され、「補正」と呼ばれる。
【0114】
誤差が現在2ビットによって検出された理由、すなわち、COUTとB*
LSBの最後のビットは同一のである理由は、信号を交差させることによって、利得モジュール230又は第2の比較器226のいずれにもオフセット誤差がない場合、両方のビットは互いに反対であるためである。このため、そうでない場合は、すなわち、両方のビットが等しい場合、利得モジュール230及び第2の比較器226の少なくとも一方にオフセット誤差が存在する。
【0115】
補正信号は、第1の増幅器232及び第2の増幅器236の前段であって、第2のADC段220の第2の比較器226の前段において配置された可変キャパシタモジュール231bに送られるので、オフセット信号のこれらの可能なソースのすべてを同時に補正するために同一の信号を使用できる。
【0116】
上記のように、第1の比較器216のオフセット誤差も較正することができる。原則として、利得モジュール230及び第2の比較器226におけるオフセットを較正するのと同一の技術が使用され、本開示にかかる2段パイプラインSARADC200のタイミングは、上記の較正プロセスに関して異なる。
【0117】
図2Cに示すように、第1のSARADC210は、交差モジュール218a及び第1の可変キャパシタモジュール218bを備える(「第1の」という用語は、回路の第1の部分、すなわち、この場合は第1のSARADC210を指す)第1の比較器オフセット補正モジュール218を備える。
【0118】
利得モジュール230及び第2の比較器226におけるオフセットを較正することに関しては、交差モジュール218aは、較正がトリガされたときに入力信号を切り替える。このことは、ここでも、2段パイプラインSARADC200が差動回路又は到来信号であり、非差動回路に対する基準である場合には、正の信号及び負の信号であることができる。従来通り、プリセットバイナリコードCDETの必要もなく、他の較正方法のためのプリセットコードのいずれとも一致しないプリセットバイナリコードを割り当てることが勧められる。信号を交差させると、第1のDAC214も反転され、すなわち、較正コードC*
DETはコードCDETのバイナリ逆数となる。
【0119】
この較正では、較正残差信号V*
RESは生成されず、第1のSARADC210には1つの追加の比較サイクルしか存在しない。従って、他の較正方法に関して上述した、利得モジュール230における複雑なタイミングの必要もない。
【0120】
この較正方法における2段パイプラインSARADC200のタイミング図を
図5に示す。第1の比較器216によって実行される余分な比較は1つだけである一方、残りのタイミングは通常の動作(
図3参照)と同一のであることが明らかである。追加の比較の結果は、1つの較正ビットB
*
MSB(
図2Aに点線で示す)を得て差分計算モジュール247に送られる。
【0121】
そして、差分計算モジュール247は、誤差があるか否かを検出する。誤差が検出された後、すなわち、最後の2ビットすなわちC
OUT及びB
*
MSBにおけるMSBの最後のビットが「00」又は「11」のいずれかを形成した後、誤差を修正する必要がある。この補正は、第1のSARADC210のオフセット補正モジュール218の第1の可変キャパシタモジュール218bを調整することによって行われる。具体的には、ビットが「00」を形成する場合、静電容量を減少させるために補正信号が送られる一方、ビットが「11」を形成する場合、容量を増加させるために補正信号が送られる。この信号は、
図2Aの点線で示され、「補正」と呼ばれる。
【0122】
バックグラウンドDACミスマッチ較正、バックグラウンド利得誤差較正、及びバックグラウンド比較器オフセット誤差較正について、別々に、より詳細に説明する。各タイプのバックグラウンド較正は、単独で、又は1つ又は複数の他のタイプのバックグラウンド較正と組み合わせて使用することができることが容易に理解されるであろう。
【0123】
図2A~
図2Eに関して先に説明した要素又は構成要素は、同じ最後の2桁を有するが、「8」(
図6A~6E)及び「9」(
図7A~7E)が先行する符号を有する。
【0124】
図6Aは、本開示による2段パイプラインSARADC800のブロック図を示す。2段パイプラインSARADC800は、増幅器と第2の比較器オフセット較正のみを備える。2段パイプラインSARADC800は、第1のSARADC810と、第2のSARADC820と、利得モジュール830と、制御モジュール840とを備える。2段パイプラインSARADC800の通常の動作は、上述した2段パイプラインSARADC200の通常動作と同じであり、同じタイミング図(
図3を参照)を適用することができる。さらに、オフセット誤差較正中の2段パイプラインSARADC800の動作も、2段パイプラインSARADC200に関して説明したものと同じである。このため、同じタイミング図(
図4参照)が適用される。2段パイプラインSARADC800と2段パイプラインSARADC200の主な違いは、2段パイプラインSARADC800は、モジュール数が少なく、モジュール間の接続数が少ないことである。
【0125】
具体的には、オフセット誤差較正の間、入力信号VINは、第1のSARADC810に送られ、第1のSARADC810は入力信号のMSBを生成し、残差信号VRESを出力する。さらに、第1のSARADC810は較正コードC*
MSBも受信し、それに基づいて較正残差信号V*
RESが計算される。利得モジュール830は、これら残留信号VRES及びV*
RESの両方を増幅し、増幅された信号VAMP及びV*
AMPの両方を第2のSARADC820に出力する。増幅された信号に基づいて、第2のSARADC820は、入力信号VINに対応するデジタル信号のLSBを決定する。第1のLSBを決定した後、制御モジュール840は、較正コードC*
MSBを含む較正コードC*
DETを決定し、すべてのLSBが決定された後に、較正コードC*
LSBもまた計算される。較正コードC*
LSB及び増幅された較正残留信号V*
AMPを受信すると、第2のSARADC820は、利得モジュール830又は第2の比較器826のいずれかにオフセット誤差が存在するか否かを決定するために制御モジュールで使用される較正ビットB*
LSBを計算する。そのようなオフセット誤差がある場合、制御モジュール840はまた、利得モジュール830に送信される「補正」信号を提供する。
【0126】
図6Bに示すように、制御モジュール840は、インターフェースモジュール841、メモリモジュール842、検出モジュール843、オフセット較正モジュール846、及び差分計算モジュール847を備える。これらのモジュールは、2段パイプラインSARADC200のオフセット誤差較正に関して既に説明したのと同じ機能を果たす。しかしながら、メモリモジュール842はいまオフセット誤差較正をトリガするコードC
DET及びC
*
DETのみを記憶する。コードC
DET及びC
*
DETは、オフセット誤差較正について上述したものと同じコードとすることができる。しかしながら、オフセット誤差較正のみが行われるので、コードC
DET及びC
*
DETは、利得エラー又はDACミスマッチ較正のいずれかを引き起こすプリセットバイナリコードと一致しないという制限を満たす必要がない。これらのコードは2段パイプラインSARADC800で使用されないため、利得誤差もDACミスマッチ較正もないためである。
【0127】
図8Cは、第1のSARADC810の詳細を示す。この第1のSARADC810は、第1のSARADC710と同一である。第1のSARADC210との主な違いは、第1の比較器オフセット較正モジュール218は、2段パイプラインSARADC800内に第1の比較器オフセット較正がないので存在しないことである。第1のSARADC810は、トラックホールドモジュール812と、キャパシタ814a,814b,…,814mを有する第1のDAC814と、第1の比較器816と、残差生成モジュール819とを備える。特に、DACミスマッチ較正がないので、キャパシタ814a,814b,…,814mはこの実施形態では調整可能である必要はない。従って、入力される「補正」信号も存在しない。さらに、これらのモジュールは、2段パイプラインSARADC200のオフセット誤差較正に関して既に説明したのと同じ機能を果たす。
【0128】
図6Dは、利得モジュール830の詳細を示す。この利得モジュール830は、利得モジュール230と同一である。利得モジュール830は、オフセット補正モジュール831と、第1の増幅器832と、第2の増幅器836と、第1のスイッチ834と、キャパシタC
Sと、第2のスイッチ838とを備える。利得モジュール230に関して説明したように、これらのモジュールは、それらが残差信号を増幅する点で同じ機能を果たし、キャパシタCsに一時的に信号を記憶することができる。これにより、第2のSARADC820は、較正ビットB
*
LSBを決定するために追加の比較を実行する前に、入力信号に対応するデジタル信号のLSBの決定を終了することができる。
【0129】
さらに、オフセット補正モジュール831は、交差モジュール831aと第2の可変容量モジュール831bとを備える。これらのモジュールは、入力信号をそれ自体(差動回路)又は基準信号(非差動回路)と交差させ、第2の可変容量モジュール831bは、増幅器832,836及び第2の比較器826の両方からのオフセット誤差を補正するために使用される、という点で、同じ機能を実行する。
【0130】
図6Eは、第2のSARADC820を示す。このSARADC820は、第2のSARADC620と同一である。第2のSARADC820は、トラックアンドホールドモジュール822と、第2のDAC824と、第2の比較器826とを備える。2のDAC824のキャパシタ824a、…、824nは、この実施形態では利得誤差較正がないので調整可能である必要はない。
【0131】
図7Aは、本開示による2段パイプラインSARADC900のブロック図を示す。2段パイプラインSARADC900は、第1の比較器オフセット較正のみを備える。2段パイプラインSARADC900は、第1のSARADC910と、第2のSARADC920と、利得モジュール930と、制御モジュール940とを備える。2段パイプラインSARADC900の通常動作は、
図2Aに関して上述した2段パイプラインSARADC200の通常動作と同じであり、同じタイミング図を有する(
図3参照)。
【0132】
さらに、第1の比較器オフセット誤差較正の間の2段パイプラインSARADC800の動作もまた、2段パイプラインSARADC200に関して説明したものと同じである。従って、同じタイミング図(
図5を参照)が適用される。
【0133】
具体的には、第1の比較器オフセット誤差較正中に、入力信号VINは、第1のSARADC910に送られ、第1のSARADC910は入力信号に対応するデジタル信号のMSBを生成し、残差信号VRESを出力する。さらに、第1のSARADC910は較正コードC*
MSBも受信し、これに基づいて較正ビットB*
LSBを決定するために較正比較が実行される。較正残差信号V*
RESを計算する必要はない。最後のMSB及び較正ビットB*
LSBに基づいて、制御モジュール940は、第1の比較器にオフセット誤差があるか否かを決定し、第1のSARADC910に送信される補正信号を提供する。さらに、利得モジュール930は残留信号を増幅し、増幅された信号VAMPを第2のSARADC920に出力する。増幅された信号に基づいて、第2のSARADC920は、入力信号VINの複数のLSBを決定する。プリセットされたバイナリコードCDETは、第1の比較器のオフセット誤差較正のために、単にMSBを表すものとみなすことができ、すなわち、第1のLSBに関する情報はない。
【0134】
図7Bに示すように、制御モジュール940は、インターフェースモジュール941、メモリモジュール942、検出モジュール943、オフセット較正モジュール946、及び差分計算モジュール947を備える。これらのモジュールは、2段パイプラインSARADC200の第1比較器オフセット誤差較正に関して既に説明したのと同じ機能を実行する。しかしながら、メモリモジュール842はいま、第1の比較器オフセット誤差較正をトリガするコードC
DET及びC
*
DETのみを記憶する。コードC
DET及びC
*
DETは、第1の比較器オフセット誤差較正について上述したのと同じコードとすることができる。しかしながら、第1比較器オフセット誤差較正のみが実行されるので、コードC
DET及びC
*
DETは、利得エラー又はDACミスマッチ較正のいずれかを引き起こすプリセットされたバイナリコードと一致しないという制限を満たす必要はない。このことは、これらのコードが2段パイプラインSARADC900で使用されないので、利得誤差もDACミスマッチ較正もないためである。
【0135】
さらに、上記のように、第1のキャパシタオフセット誤差較正については、あらかじめ設定されたバイナリコードが何であるべきかに関する具体的な要件はない。このため、一実施形態では、第1の比較器オフセット誤差は、2段パイプラインSARADC900の各反復の間に較正される。これは、各繰り返しで余分な比較が行われるため、わずかに遅い2段パイプラインSARADC900につながるが、さらに、較正コードC*
DETを記憶する必要もなく、このことは、上述のようにコードCDETのバイナリ逆数であるからである。
【0136】
図9Cは、第1のSARADC910の詳細を示す。この第1のSARADC910は、第1のSARADC210とは異なり、較正残差信号V
*
RESが生成されない。従って、アナログ較正信号V
*
MSBも生成されない。第1のSARADC910は、トラックアンドホールドモジュール912と、キャパシタ914a、914b、…、914mを有する第1のDAC914と、第1の比較器916と、残差生成モジュール919とを備える。特に、DACミスマッチ較正がないので、キャパシタ914a、914b、…、914mはこの実施形態では調整可能である必要はない。従って、入力される「補正」信号も存在しない。さらに、これらのモジュールは、2段パイプラインSARADC200の第1比較器オフセット誤差較正に関して既に説明したのと同じ機能を実行する。
【0137】
利得モジュール930の詳細は示されていないが、多くの異なるタイプの増幅器を使用することができる。更なる残留信号を記憶することができる2段増幅器を設ける必要はなく、なぜなら、第2のSARADC920は、較正ビットB*
LSBを決定するために余分な比較を行う必要がないからである。
【0138】
図7Dは、第2のSARADC920を示す。第2のSARADC920は、トラックアンドホールドモジュール922と、第2のDAC924と、第2の比較器926とを備える。さらに、第2のDAC924のキャパシタ924a、924b、…、924nは、この実施形態では利得誤差較正がないので調整可能である必要はない。従って、また、「補正」信号入力もない。さらに、較正コードC
*
LSBの入力も較正ビットB
*
LSBの出力も存在せず、これらは第1の比較器のオフセット誤差較正では必要ではないからである。
【0139】
さらに、第1の比較器916におけるオフセット誤差を較正するために使用される較正方法は、上述した2段パイプラインSARADC900以外の回路においても使用することができることが理解されるであろう。例えば、SARADCの動作を中断することなく比較器のオフセットを補正するために、通常のSARADC回路でも使用できる。
【0140】
さらに、第1の比較器オフセット較正方法は、第2の比較器926に個別に適用することもできることが理解されよう。このことは、利得モジュール930による補正されていないオフセット誤差をもたらす可能性があるが、さらに、これは、増幅された信号を補正するために可変キャパシタを使用しなければならないことにつながり、上述したように非増幅信号を補正するよりも困難である。本開示の態様は特定の実施形態に関して記載されているが、これらの態様は他の形態で実施されてもよいことは容易に理解されるであろう。
【0141】
特定の実施形態に関して本開示の態様を説明したが、これらの態様は他の形態で実施されてもよいことは容易に理解されるであろう。