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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
A61B5/055 382
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017248769
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019111261
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智宏
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/080301(WO,A1)
【文献】特開2012-000306(JP,A)
【文献】特開2013-230386(JP,A)
【文献】特開2006-026076(JP,A)
【文献】特開2017-023397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の周期的変位を特定するナビゲータエコーを取得するナビゲーション計測、及び、前記検査対象の画像を取得するための本計測を実行する計測部と、
前記計測部が、少なくとも前記周期的変位の一周期に亘り前記ナビゲーション計測を行った後、前記本計測を所定単位で繰り返し、時間的に隣接する2つの前記所定単位の計測の間に1乃至複数のナビゲータエコーを取得するナビゲーション計測を行うように、前記計測部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ナビゲーション計測で前記周期的変位の一周期に亘って取得したナビゲータエコーを用いて、前記周期的変位における基準位置及び基準変位幅を決定するとともに、前記所定単位の計測の直後に取得したナビゲータエコーと、前記基準位置及び基準変位幅とを用いて、当該所定単位の計測の継続又は非継続を判定する判定部を備え、
前記計測部は、前記判定部が前記所定単位の計測を継続と判定したときに、前記所定単位の計測を繰り返し、前記判定部が前記所定単位の計測を非継続と判定したときに、直前の所定単位の計測で取得したデータを廃棄して、前記ナビゲーション計測を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記計測部は、前記所定単位の計測の間のナビゲーション計測では少なくとも2つのナビゲータエコーを取得し、前記判定部は、前記少なくとも2つのナビゲータエコーから変位及び変位幅を検出し、当該検出した変位及び変位幅と前記基準位置及び基準変位幅とを比較し、前記所定単位の計測の継続又は非継続を判定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記計測部は、前記所定単位の計測の間のナビゲーション計測で1つのナビゲータエコーを取得し、前記判定部は、当該1つのナビゲータエコーから検出した変位と直前のナビゲーション計測で得たナビゲータエコーから検出した変位とを用いて、前記所定単位の計測の継続又は非継続を判定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記計測部は、前記判定部が前記所定単位の計測を非継続と判定したときに、前記周期的変位の一周期に亘って前記ナビゲーション計測を行い、
前記判定部は、最新のナビゲーション計測で前記周期的変位の一周期に亘って取得したナビゲータエコーを用いて、当該周期的変位における基準位置及び基準変位幅を決定し、直前に決定した基準位置及び基準変位を更新することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記計測部は、前記判定部において、検出した変位幅のみが基準変位幅を満たすと判定されたときに、その判定に用いたナビゲータエコーから検出した位置と、その直前に行われた前記周期的変位の一周期に亘るナビゲーション計測の前に行われた判定に用いた基準位置とを用いて算出した、前記周期的変位のシフト量を用いて、前記本計測の条件を変更することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記計測部は、前記ナビゲーション計測において、2方向以上の変位を取得することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、前記ナビゲーション計測により特定した検査対象の変位を表示装置に表示させる表示制御部をさらに備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記表示装置に表示された前記検査対象の変位を用いたユーザによる基準位置及び基準変位幅の指定を受け付けるインターフェース部をさらに備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する磁気共鳴イメージング(MRI)装置に関し、特に被検体の体動を検出するナビゲータ信号を取得し、撮像を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置を用いた撮像では、核磁気共鳴周波数の高周波磁場によって励起された被検体組織から発生する核磁気共鳴信号(エコー)を計測し、画像化する。この際、互いに直交する複数の方向に傾斜磁場パルスを印加することにより、核磁気共鳴信号に位置情報を付与する。撮像中に被検体に呼吸動等の体動があると、それによって傾斜磁場の位置もずれることになり、画質の劣化や結果画像の位置ずれを生じる。
【0003】
この問題に対し、圧力センサなどで呼吸動をモニターし、呼吸周期と同期を取りながら撮像する手法(呼吸同期計測)や、画像を取得するためのエコーとは別に、ナビゲータエコーと呼ばれる核磁気共鳴信号を呼吸動変位が大きな部位、例えば横隔膜や腹壁、から取得し、ナビゲータエコーにより呼吸動変位を検出し、呼吸ゲーティングを行ったり、取得した画像を補正する手法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2など)。ナビゲータエコー法は、体動を検出するためのセンサなどを不要とし、任意部位の体動をモニターできるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-185300号公報
【文献】特開2015-2834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
呼吸同期計測は、モニターした体動位置をもとに、呼吸動の安定した期間に撮像のための計測を行うため、データ取得効率が低く、被検体の呼吸状態の変化に起因する画質劣化が生じやすい。ナビゲータエコー法では呼吸状態変化に起因する画質劣化の抑制は可能であるが、予め設定した呼吸動の安定期に相当するゲートウィンドウ内に入った時点でデータを取得するものであるため、データ取得率の低さは解決できていない。
【0006】
本発明は体動、特に呼吸動やその変化に起因する画質劣化を抑制するとともにデータ取得率を向上する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のMRI装置は、画像データを取得する計測を複数に分けて行い、分割された計測の間に極めて短いナビゲータエコーの取得を行って、画像データ取得を継続しうるか否かを判定する。
【0008】
すなわち、本発明のMRI装置は、検査対象の周期的変位を特定するナビゲータエコーを取得するナビゲーション計測、及び、前記検査対象の画像を取得するための本計測を実行する計測部と、前記計測部が、少なくとも前記周期的変位の一周期に亘り前記ナビゲーション計測を行った後、前記本計測を所定単位で繰り返し、時間的に隣接する2つの前記所定単位の計測の間に1乃至複数のナビゲータエコーを取得するナビゲーション計測を行うように、前記計測部の動作を制御する制御部と、を備える。制御部は、前記ナビゲーション計測で前記周期的変位の一周期に亘って取得したナビゲータエコーを用いて、前記周期的変位における基準位置及び基準変位幅を決定するとともに、前記所定単位の計測の直後に取得したナビゲータエコーと、前記基準位置及び基準変位幅とを用いて、当該所定単位の計測の継続又は非継続を判定する判定部を備え、前記計測部は、前記判定部が前記所定単位の計測を継続と判定したときに、前記所定単位の計測を繰り返し、前記判定部が前記所定単位の計測を非継続と判定したときに、前記ナビゲーション計測を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定単位で本計測を繰り返す際に、所定単位の計測と計測との間でナビゲータエコーを計測するとともに、取得したナビゲータエコーから求めた変位と本計測前に決定した基準位置/基準変位幅に基づいて、さらに所定単位の計測を継続するか否かを判定するので、呼吸状態変化に対応することができ、しかもロスタイムなく最大限計測を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のMRI装置の実施形態を示す機能ブロック図。
図2図1のMRI装置の、主として計測部を示す構成を示す図。
図3】本計測における撮像部位、及びナビゲーション計測を行う部位を示す図。
図4】呼吸変位を示す図。
図5】第一実施形態のMRI装置による撮像手順を示すフロー図。
図6】周期的変位における基準位置の決定を説明する図で、(A)は呼吸動と変位の領域を示す図、(B)は領域毎のナビゲータエコー点数を示すヒストグラム。
図7】呼吸変位の表示画面とGUIの一例を示す図。
図8】第一実施形態による撮像の具体例を示す図。
図9】第二実施形態のMRI装置による撮像手順を示すフロー図。
図10】第二実施形態による撮像の具体例を示す図。
図11】基準位置更新のためのGUIの例を示す図。
図12】第二実施形態の変形例1を説明する図。
図13】第二の実施形態の変形例2を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のMRI装置の一実施形態を、図1を参照して説明する。図示するように、本実施形態のMRI装置は、核磁気共鳴(MR)信号を計測する計測部100と、計測部100の動作を制御する制御部200と、計測部100が計測したMR信号を用いて画像再構成等の演算を行う信号処理部300と、を備える。さらにMRI装置は、ユーザが制御部200や信号処理部300に指令や処理に必要なデータ等を入力したり、処理結果を表示したりするための入出力装置(ディスプレイ351や入力デバイス352)を備えたユーザーインターフェース(インターフェース部)350を備えることができる。
【0012】
計測部100の構成は、一般的なMRI装置と同様であり、例えば図2に示すように、被検体101の周囲に静磁場を発生する磁石102と、磁石102が発生する傾斜磁場空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル103と、被検体の所定の領域に高周波磁場を発生する高周波コイル(RFコイル)104と、被検体101が発生するMR信号を検出するRFプローブ105を備えている。傾斜磁場コイル103は、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源109からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイル104はRF送信部110の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFプローブ105の信号は、信号検出部106で検出され、信号処理部300に渡される。
【0013】
信号処理部300は、MR信号に対しフーリエ変換を施して画像データを作成する画像再構成部310、MR信号や作成した画像について補正処理や画像間演算等を行う画像処理部320等を備える。
【0014】
制御部200は、計測部100及び信号処理部300の動作を制御する。計測部100の制御は、高周波磁場パルス及び傾斜磁場パルスの強度及び印加タイミング、MR信号の受信時間(A/D時間)などを定めたパルスシーケンスに従って行われ、傾斜磁場電源109、RF送信部110、信号検出部106の駆動を制御する。パルスシーケンスは、撮像の目的や方法によって異なる種々のものがあり、予めプログラムされてメモリ等に格納されており、検査プロトコルに従って、或いはユーザが撮像条件とともに指定することで、選択され、実行される。
【0015】
本実施形態のMRI装置では、ナビゲータエコーを計測(ナビゲーション計測)するシーケンスと、被検体101の画像を取得するための計測(本計測)のパルスシーケンスとを実行する。その際、制御部200は、計測したナビゲータエコーから算出される被検体101の所定部位の変位を用いて、本計測の継続・非継続を制御する。このため制御部200は、図1に示したように、計測制御部210、基準位置/基準変位幅決定部220、判定部230などの機能部を備える。
【0016】
制御部200はCPUとメモリとで構成することができ、上述した機能の一部または全部をCPUに搭載したプログラムによって実現することができる。ただし一部の機能をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programable Gate Array)などのハードウェアで代替することも可能である。また信号処理部300の一部の機能(例えば画像再構成や補正計算等)を制御部200と同一のCPUで実現することも可能である。
【0017】
次に、本実施形態のMRI装置による撮像について、周期的変位が呼吸動である場合を例に説明する。
【0018】
図3は、被検体の胸部を示す図であり、実線四角で囲った領域が撮像対象となる領域(スラブ)501である。この例では、被検体の体軸方向に沿って、横隔膜502を含むようにナビゲーション計測領域503を設定する。撮像領域501及びナビゲーション計測領域503の設定は、例えば、低分解能で撮像した被検体の広領域の画像(スカウト画像)上で、ユーザーインターフェース350を介してユーザが設定することができる。
【0019】
撮像に用いるパルスシーケンスは、特に限定されないが、所定の幅を持った撮像領域501から画像再構成に必要なエコー信号を取得するために、1ないし複数のエコー信号を収集するステップを繰り返す。ナビゲーション計測は、二次元励起RFパルスを用いて、或いは、RFパルスと複数方向の傾斜磁場パルスを組み合わせて、所望の柱状の領域(ナビゲーション計測領域)を励起し、ナビゲーション計測領域503からエコー信号(ナビゲータエコー)を計測する。ナビゲータエコーを画像再構成部310において一次元フーリエ変換することによりプロファイルが得られ、柱状の領域に存在する解剖学的に特徴的な位置、例えば横隔膜の位置を検出することができる。
【0020】
横隔膜の変位は、図4に示すように、周期的な呼吸動の吸期において比較的変位の安定した期間405が存在する。本実施形態の撮像では、変位が安定した期間を最大限利用して画像データ取得のための撮像(本計測)を行う。それ以外の時間はナビゲーション計測を行い、安定期間405から外れたこと及び安定期間405に入ったことを速やかに検出する。このため本計測は、所定の単位で繰り返し、1回の計測の間において少なくとも1のナビゲータエコーを取得するナビゲーション計測を行い、継続的な変位のモニタリングを行う。
【0021】
以下、計測制御部210による計測制御の具体例を説明する。
<第一実施形態>
本実施形態では、基準位置/基準変位幅決定部220が、ナビゲーション計測で呼吸変位の一周期に亘って取得したナビゲータエコーを用いて、呼吸変位における基準位置及び基準変位幅を決定するとともに、判定部230が、所定単位の本計測の直後に取得したナビゲータエコーと、基準位置及び基準変位幅とを用いて、当該所定単位の計測の継続又は非継続を判定する。また計測部100は、判定部230が所定単位の計測を継続と判定したときに、所定単位の計測を繰り返し、判定部が所定単位の計測を非継続と判定したときに、ナビゲーション計測を行うとともに直前の所定単位の計測で取得したデータを廃棄する。
【0022】
以下、本実施形態のMRI装置の動作を、図5のフローを参照して説明する。
撮像が開始されると、計測制御部210はナビゲーション計測を行うよう計測部100を制御し、ナビゲータエコーを取得する(S101)。ナビゲーション計測は、少なくとも被検体の呼吸動の一周期以上の間行い、その間に取得したナビゲータエコーから被検体の特定部位の変位(位置の変化)を検出し、位置の変化が予め定めた変位幅内であって、その持続時間が最長となる区間を求め、その区間における特定部位の変位を基準変位とする。そして、その基準変位の幅すなわち予め定めた変位幅を基準変位幅とし、基準変位における所定の位置を基準位置とする(S102)。所定の位置としては、基準変位における位置の平均値、最大値或いは最小値などを採用できる。基準位置と基準変位幅は、判定部230が本計測を開始或いは継続するか否か、直前の計測のデータを保存するか否かを判定する基準として用いられる。
【0023】
さらにナビゲーション計測を実行し(S103)、ナビゲータエコーから特定した特定部位(例えば横隔膜)の位置が基準を満たす場合(S104)、本計測を開始する(S105)。基準変位に達していない場合には、S103のナビゲーション計測が継続される。
【0024】
本計測は、例えば、1ないし複数の画像を再構成するのに必要な全データを複数に分けて収集する。すなわち、1回の計測では、全データのうち一部のデータを収集し、計測を繰り返すことで全データを収集する。
【0025】
本計測の繰り返しにおいて、1回の計測と次回の計測との間にナビゲーション計測(S106)を行い、その際取得したナビゲータエコーと本計測(S105)の直前に取得したナビゲータエコーとを比較し、取得したナビゲータエコーから検出した位置(検出位置)が基準変位内であって且つ2以上のナビゲータエコーから求められる変位の幅が基準変位幅以内か否かを判定する(S107)。
【0026】
判定ステップS108で、検出位置が基準変位ではない、或いは変位幅が基準変位幅を超える場合には、直前の本計測のデータを破棄し(S108、S109)、判定条件が「YES」となるまでナビゲーション計測(S106)を繰り返す。
【0027】
判定ステップS108で、ナビゲーション計測(S106)で検出した位置が基準変位内であって且つ隣接する2以上のナビゲータエコーから求められる変位幅が基準変位幅以内であると判定された場合には、パルスシーケンスの繰り返し回数のカウンタをインクリメントし、次回の計測を行う(S105)。
【0028】
このように所定の単位に分割された本計測とナビゲーション計測とを交互に実行し、ナビゲーション計測(S106)の後に、被検体の変位及び変位幅が基準を満たさないと判定された場合には、次の本計測を停止して、基準を満たすまでナビゲーション計測(S106)のみを実行する。最終的に、予定した数の計測の繰り返しが終了した時点で撮像を終了する(S110)。
【0029】
次に上述した処理の具体的な内容を説明する。
[基準位置/基準変位幅の決定:S101、S102]
まず図5に示すステップS101、S102では、少なくとも1周期の間、連続してナビゲーション計測を行い、その後に変位と変位幅を判断する基準となる基準変位及び基準変位幅を基準位置/基準変位幅決定部220が決定する。基準変位と基準変位幅の決定方法の一例を、図6を参照して説明する。図6(A)は、ナビゲータエコーによって検出した周期動の変位(呼吸変位)を表し、その下側にナビゲーション計測のタイミングを示している。横軸は時間である。1回のナビゲーション計測では、横隔膜を含む領域(図3:ナビゲーション計測領域503)を励起し、当該領域から発生したナビゲータエコーを取得し、エコー信号をフーリエ変換することにより横隔膜の位置情報を得る。1回のナビゲーション計測で取得するナビゲータエコーは1つでよい。
【0030】
本計測に適した、呼吸変位が安定した期間を求めるために、図6(A)に示すように、周期動の変位を複数の領域61~67に分けて、1周期の間に計測したナビゲータエコーの点数を領域毎にカウントする。領域毎のナビゲータエコーの点数は、例えば図6(B)に示すように、呼吸動が安定した期間に相当する領域では大きくなり、呼吸動の変化が大きい領域では小さくなる。ナビゲータエコーの計測とカウントを複数の周期にわたって連続していくことで、図6(B)のグラフ(ヒストグラム)は変化するが、最終的に点数が最大となる呼吸変位を、呼吸変位の安定した期間の変位(基準変位)として選択する。図6(B)に示す例では、領域61が最も点数が多く、領域61を基準変位とする。そしてこの領域の変位の最小値601を基準位置とする。同時に、点数をカウントする際に用いた領域の幅を安定性の基準(基準変位幅)とする。例えば、領域61~67が変位5mm相当であれば、安定性の基準も5mmとなる。
【0031】
上述した基準変位の決定は、自動的に行うことも可能であるが、例えば、ナビゲータエコーにより検出した変位を、図6(A)に示すグラフのような形で、ディスプレイ410に表示し、ユーザがグラフ上で本計測に使用する期間と領域の幅を指定し、この指定を基準位置/基準変位幅決定部220が受け付けて、安定期間における変位(基準変位)を決定してもよい。周期動の変化を示すグラフは、例えば、ナビゲータエコーから得たプロジェクションデータのピクセルをそのまま画像として表示することにより、特定部位の変化をグラフのように表示させることができる。
【0032】
波形を表示したユーザーインターフェースの一例を図7に示す。呼吸変位が時系列に表示されるウインドウ70内に基準を2本線701で表示する。ユーザは線701の位置をマウスドラッグやキーボード入力などで変更し、変位の基準を任意に指定可能である。加えて、2本線の間隔を同様に変更し、安定性の基準も任意に指定可能である。このような波形或いはグラフと図6(B)のヒストグラムは、撮像の間、常にモニターし保持しておき、必要に応じて或いは常にディスプレイに表示させておいてもよい。このような波形表示画面をユーザーインターフェースに表示しておくことにより、撮像の進行状態を把握することができ、また予期しない体動による変位のシフトなどを知ることができる。
【0033】
[基準の判定:S103、S104]
基準位置/基準変位幅が決定された後もナビゲーション計測を継続し(S103)、ナビゲータエコー計測後に得られる変位の情報(位置及び変位幅)は、判定部230に与えられる。ここで変位幅は、時間的に隣接するナビゲーション計測によって得た基準位置の差である。
【0034】
判定部230は基準位置/基準変位幅決定部220が決定した基準位置及び基準変位幅と、ナビゲーション計測によって検出された位置及び変位幅とを比較し(S104)、検出された位置が基準を満たすか否かを判定する。具体的には、2つのナビゲーション計測で検出された位置が、基準変位内(基準位置が基準変位の最小値である場合、基準位置以上であって基準位置+基準変位幅以下)であって且つ変位幅が基準変位幅以内であるかを判定する。判定の結果、基準を満たす場合に、判定部230は計測制御部210に指令を送り、計測部100による本計測を開始する(S105)。検出位置が基準位置を満たしていても、ナビゲータエコー間の変位幅が基準変位幅を満たさない場合には、体動変位が安定していないとみなし、本計測は開始しない。検出位置及び変位幅が条件を満たさない場合には、ナビゲーション計測(S103)を継続し、ナビゲータエコーを計測するごとにステップS104の判定を行う。
【0035】
[本計測とナビゲーション計測:S105~S108]
本計測の撮像シーケンス(S105)では、TR毎に位相エンコードを変化させながら、所定のパルスシーケンスを繰り返し、画像再構成に必要なデータを収集する。ここで全データを複数回の計測で分けて収集し、1回の計測では全データの一部である所定数のデータを収集する。1回の計測で収集するデータ数は、本計測に用いるパルスシーケンスによっても異なるが、1回の計測時間が、呼吸動の一周期の中で撮像に割り当てられた時間(上述した特定部位の変位が予め定めた範囲内となる最長区間の長さ)より少ない時間とする。例えば、最長区間内で1回の計測を2ないし複数回繰り返すことが可能なデータ数とする。1回の計測で取得するデータ数は、例えば、ユーザが設定する計測パラメータの一つとして、ユーザが選択/指定するようにしてもよい。
【0036】
計測制御部210は、ナビゲーション計測を1回の計測が終了するごとに行う(S106)。この計測と計測の間に挿入されるナビゲーション計測で計測するナビゲータエコーの数は、変位幅の情報が得られればよく、当該ナビゲーション計測内で位置及び変位幅の情報を得る場合には2エコーとする。また変位幅の算出に前回のナビゲーション計測で得た最終の変位を利用する場合には1つのナビゲータエコーでもよい。すなわち、2エコーが得られる場合には、これらナビゲータエコー取得時の横隔膜の位置と、その変位の差である変位幅が得られる。
【0037】
判定部230は、ナビゲーション計測(S106)により検出された位置と変位幅が、基準を満たすか否かを判定し、満たす場合には、計測制御部210に指令を送り、計測制御部210により、直前の計測で得たデータを保存するとともに本計測を継続する。一方、判定部230が基準を満たさないと判定した場合、すなわち検出位置が基準変位内から外れた場合或いは検出変位幅が基準変位幅を超えた場合には(S107)、呼吸変位が安定期間から外れたと判断し、本計測は非継続とし、ナビゲーション計測を行う。
【0038】
[直前のデータの破棄:S108、S109]
判定部230は、横隔膜の位置及び変位幅の判定において基準を満たさないと判定した場合、直前の計測のデータを破棄するか否かを決定する(S108)。例えば、1回の計測の前後で取得した2つのナビゲータエコーから位置と変位幅を検出した場合、変位幅が基準変位幅を超えているときは、2つのナビゲータエコー取得の間すなわち計測の間に横隔膜位置が基準変位幅を超えて変化しているので、その計測で得たデータは信頼性が低い。したがって、この場合は計測データを破棄する。一方、1回の計測に2つのナビゲータエコーを取得し、横隔膜の位置及び変位幅を判定した場合、本計測直後の1つ目のナビゲータの位置は基準変位内であるが、変位幅が基準変位幅を超える場合には、直前の本計測のデータは呼吸動の安定期に取得されたデータとみなすことができ、データは破棄されない。またすでに直前の計測のデータが破棄されている場合にもデータの破棄は不要と判定される。データの破棄が不要と判定された場合には、ナビゲーション計測に戻る。なお図5のフローでは省略しているが、データの破棄が不要と判定された場合において、予定回数の計測が終了している場合には、計測を終了する。また判定処理S108を省略し、横隔膜の位置及び変位幅の判定において基準を満たさないと判定された場合、常に直前のデータを破棄することとしてもよい。
【0039】
判定部230が「データの破棄」と判定した場合には、計測部100は、直前の計測のデータを破棄する(S109)。これにより、計測制御部210は、カウンタをひとつ前に戻し(「n=n-1」とし)、計測部100によるナビゲーション計測(S106)を行う。
【0040】
[本計測の継続と終了:S110]
本計測を非継続として、ナビゲーション計測(S107)が開始されると、検出した位置と変位幅が基準を満たすまでナビゲーション計測を継続する。基準を満たし、且つ予定回数の計測が終了している場合には、撮像を終了する。予定回数の計測が終了していない場合には、計測制御部210は、カウンタをインクリメントし、次の計測を開始する。
【0041】
本実施形態による撮像の具体例を図8に示す。図8は呼吸変位と実行シーケンスとの関係を示す図である。図示するように呼吸変位80が安定期間に入る直前までナビゲーション計測801を実行し、基準を満たした時点802で1回目の計測803を実行する。1回目の計測終了後ナビゲーション計測を行い、基準を満たすか否かの判定804を行う。この例では、ナビゲーション計測では2つのナビゲータエコーを計測し、これらから求めた位置が基準変位内であるか及びこれらの位置の差が基準変位幅以内であるかを判定し、基準を満たしているため、2回目の計測805を実行する。2回目の計測終了時点で、同様のナビゲーション計測と判定806を行い、3回目の計測807を実行する。3回目の計測終了時点で、同様のナビゲーション計測と判定808を行うが、ここでは基準位置が基準変位から外れているため、直前の計測すなわち3回目の計測807のデータは破棄する。また4回目の計測を行うことなく、ナビゲーション計測809を継続する。連続してナビゲーション計測を行って呼吸変位をモニターし、再度、呼吸変位が基準を満たすと判定(810)されると、本計測(811)を開始する。以下、同様である。
【0042】
以上、説明したように本実施形態によれば、計測と計測との間に短時間のナビゲーション計測を挿入し、計測ごとにその継続と非継続を判断するとともに、非継続の場合に、直前の計測のデータを破棄することより、本計測の時間を最大限確保しながら、体動の影響を排除した信頼性の高い画像を得ることができる。
また本実施形態によれば、ナビゲーション計測で得た変位の波形をユーザーインターフェース350に表示しておくことで、撮像の進行状況や変位の様子を確認することができる。またこのユーザーインターフェース350を介して計測パラメータの設定/変更、基準位置や基準変位幅の設定や変更などを行うことができる。
【0043】
<第一実施形態の変形例1>
第一実施形態では、計測と計測との間に必ずナビゲーション計測を行うものとしたが、予め得た安定期間の情報を用いて計測間のナビゲーション計測を一部省略することも可能である。
【0044】
すなわち、本変形例では、撮像の最初に1周期以上を計測する際に、呼吸変位と時間との関係を1周期以上保存しておき、この関係に基づき、安定期間405(図4)を予測し、計測と計測との間に行われるナビゲーション計測の回数をできるだけ低減する。再度、図4及び図8を参照して、本変形例を説明する。
【0045】
図4に示したように、予め取得した呼吸変位と時間との関係から、タイミング401でモニターした呼吸変位から次に安定期間405が始まるタイミング402までの時間(404の期間)が推定できる。また安定期間405が終了するまでの時間(安定期間の長さ)も推定できる。そこで、図8のタイミング802で行った判定の結果で本計測開始可能と判定された後、安定期間が終了すると推定される時間まで継続して本計測を行い、その時間が経過した時点でナビゲーション計測を行い、そのときの変位が基準を満たすか否かの判定を行う。
【0046】
この時点の判定結果が、例えば、図8の判定806と同じであれば、直前の計測805のデータを保存し、本計測を継続する。判定結果が図8の判定808と同じであれば、直前の計測807のデータを破棄し、ナビゲーション計測を継続し、変位をモニターする。
なお判定806において、変位は基準変位を満たしていても、変位の移動方向(すなわち変位幅がプラスかマイナスか)が逆のタイミングもありえる。このような場合、2つ以上のナビゲータエコーでモニターとした変位を比較することで、変位の方向を判定することができる。
【0047】
本変形例によれば、第一実施形態の安定期間で行ったナビゲーション計測の一部、図8の例では判定804、806とそのためのナビゲーション計測、或いは全部を省略することができ、画像データ取得効率を最大限に向上することができる。
【0048】
<第一実施形態の変形例2>
第一実施形態では、ナビゲータエコーにより一方向の変位を検出する場合を説明したが、本変形例では、複数方向の変位を検出する。
例えば、呼吸に伴う腹壁の変位は、被検体の前後方向及び横方向(体軸及び前後方向と直交する方向)にも生じる。それに伴い、撮像対象臓器の位置も2次元的に変化する可能性がある。本変形例では、複数方向の変位を検出可能なナビゲータエコーを用いて2次元的な変位をモニターする。
【0049】
複数方向の変位を検出する手法としては、ナビゲーション領域の方向が異なる2以上のナビゲータエコーを用いる、或いはナビゲーション計測において位相エンコードを用い、2次元方向の情報を得る、などの手法がある。前者の場合には、X方向の変位とY方向の変位が得られるので、それらを合成することで、2次元的な変位をモニターすることができる。また後者の場合、位相エンコードが例えば16ステップ程度の低分解能画像を得る。この画像の特定部位、例えば腹壁の所定の位置を追跡することで、2次元的な変位を得ることができる。
【0050】
本変形例によれば、複数方向のナビゲータエコーを用いることにより、より高い精度で体動アーチファクトをなくすことができる。
なお以上説明した第一実施形態の変形例1、2は、第一実施形態のみならず、以下に説明する各本実施形態にも適宜、適用することができる。
【0051】
<第二実施形態>
第一実施形態では、一連の計測の間に、被検者の呼吸変位がシフトしない、すなわち基準位置がシフトしないことを前提としているが、本実施形態は、撮像の間に生じる呼吸変位のシフトに対応する制御を行うことが特徴である。
【0052】
本実施形態の処理を、第一実施形態と異なる点を中心に、図9及び図10を参照して説明する。なお図10において、図8と同じ要素は同じ符号で示し、説明は省略する。
本実施形態においても、検査開始後、所定の時間、ナビゲーション計測を行い、基準位置と変位幅を決定すること(S201)、さらに基準を満たすまで連続的にナビゲーション計測を行い(S202)、基準を満たしたと判定したならば(S202)、画像データ取得のための計測と、各計測間でナビゲータエコーを用いた判定処理を行うこと(S204~S206)、は第一の実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態では、判定処理(S206)において基準を満たさないと判定した場合、必要に応じて直前の計測データを破棄するとともに、ナビゲーション計測を継続し、シフトが発生したか否かを判定する(S208)。具体的には、図10に示すように、ナビゲーション計測909中に一定期間、例えば1呼吸周期以上、基準を満たすことがない場合には、シフトが発生したと判定し、ナビゲータエコーを用いて基準位置を再度決定する(S209)。基準位置の決定方法は、第一実施形態と同様であり、1呼吸周期以上のナビゲーション計測909を行うとともに、図6(A)のグラフや図6(B)のヒストグラムをディスプレイ351に表示させる。呼吸変位を複数の領域に分割し、各領域におけるナビゲータエコーの点数の多い領域を基準変位とし、当該領域の位置(下限値)を基準位置と決定する。基準変位幅は、最初に設定した変位幅を用いるが、新たに設定することも可能である。これら決定はユーザーインターフェース350を介して行うことができる。基準更新のGUIの一例を図11に示す。呼吸変位が時系列に表示されるウインドウ70に示した状態からウインドウ71の状態にシフトした場合、ユーザはウインドウ内に2本線で表示されている基準を位置701から位置711に変更する。変更はマウスドラッグやキーボード入力などの入力デバイス352で行う。
【0054】
基準位置/基準変位幅決定部220は、以前の基準位置を新たに決定した基準位置で更新する。なお図10では、呼吸変位が下側にシフトした例を示しているが、呼吸変位が上側にシフトした場合にも、1呼吸周期以上、基準を満たさない(基準変位に到達しない)ことになるので、同様である。
こうして基準の更新が完了したら、新たな基準を用いて全画像データの収集が完了するまで、判定処理(S206)と画像データ取得(S204、S206)とを繰り返す。
【0055】
このように本実施形態によれば、適宜基準を更新することで、呼吸変位のシフト発生時も呼吸動の安定した期間を最大限活用した計測が可能となる。また基準を満たすか否かを判定するために、基準位置と基準変位幅の両方を用いることで、基準変位がどの方向にシフトしても、シフトを確定することができる。
【0056】
<第二実施形態の変形例1>
本変形例は、判定部230において、呼吸変位にシフトが生じているか否かを判定することは、第二実施形態と同様であるが、本変形例では呼吸変位のシフト分を求め、取得済みのデータシフトが生じた後に実行する本撮像において、呼吸変位のシフト分に応じて撮像スライス位置をシフトすることが特徴である。
【0057】
このため本変形例では、図12に示すように、安定期間の計測後にナビゲーション計測を連続実行しているときに、判定812において、安定性のみ(基準変位幅のみ)基準を満たすと判定された場合、それ以前の判定804、806等で判定に用いた基準変位と、判定812における呼吸変位とを比較し、その差をシフト量として、シフト後の撮像におけるスライス位置をシフト量に併せてシフトさせる。スライス位置のシフトは、例えば、本計測時にRF送信部110を制御して、励起用RFパルスの中心周波数を変化させることで調整することができる。或いはRFパルスとともに印加するスライス傾斜磁場のオフセット量を変化させてもよい。
【0058】
シフト分に応じた照射周波数変更量は以下のように算出可能である。磁場中心を基準位置とした場合、あるスライス位置Zにおける照射周波数F(Z)は、中心周波数F0、磁気回転比γ、スライス選択傾斜磁場Gs、位置Zから式(1)で与えられる。式(1)を用いて、ナビゲータエコーで計測したシフト量Zに応じたF(Z)を算出し、撮像シーケンスに反映する。
F(Z) = F0 + γ×(Gs×Z) (1)
基準位置にオフセットがある場合は、式(1)のF0を、中心周波数と異なる値(オフセットを含む周波数F1)に置き換えればよい。
【0059】
またシフトが生じた場合、図6(B)に示すようなヒストグラム(変位とエコー点数との関係を示すヒストグラム)の横軸も変化するので、シフト後の判定812等は、ヒストグラムで点数が最大となる変位を基準変位として基準を満たすか否かの判定を行う。
【0060】
第二実施形態では、呼吸変位にシフトが生じた場合、基準位置と基準変位幅を更新するために1呼吸周期以上のデータ取得が必要であり、またユーザが基準位置を設定する場合には、そのための処理時間が必要であったが、本変形例によれば、基準更新のためのデータ取得による時間のロスが発生しないため、より効率的な画像データ取得が可能となる。
【0061】
<第二実施形態の変形例2>
本変形例は、変位がシフトした場合に、基準位置と基準変位幅を更新して本計測及びナビゲーション計測を継続するモード(第二実施形態)と、変位がシフトした場合に、本計測のスライス位置をシフトするモード(変形例1)をユーザが選択可能にしたことが特徴である。
【0062】
図13にユーザに提示される画面例を示す。この画面例では、撮像中に呼吸変位を示すグラフ表示部1301と、実行シーケンスのタイミングを示す処理表示部1302と、1回の計測の時間すなわちデータ取得期間を表示する時間表示部1303と、ユーザによるモードの選択を受け付けるモード選択部1304と、が設けられている。モード選択部1304は、基準を更新するモードと、スライス位置をシフトするモードのいずれか一方の選択を受け付けるように構成されており、チェックマークや輝度変更などによって、いずれが選択されたかを示すようになっている。
【0063】
ユーザは、例えば、計測時間をできるだけ短縮したい場合には、スライスシフトモードを選択しておくことで、シフトがある度に基準位置の変更を行う必要がなく、円滑な撮像を行うことができる。また基準位置更新モードを選択した場合には、精度の高い基準位置決定ができるため、より画質の良好な画像を得ることができる。
本変形例によれば、ユーザに選択の自由度を与えることができ、画質或いは計測時間の優先性をユーザが選択した撮像が可能となる。
【0064】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の各実施形態及び変形例は、技術的に矛盾しない限り適宜組み合わせることも可能であり、また必須ではない要素の追加や省略も本発明に包含される。
【符号の説明】
【0065】
40:呼吸変位、41~47:変位の領域、80:呼吸変位、100:計測部、102磁石、103:傾斜磁場コイル、104:高周波コイル(RFコイル)、105:RFプローブ、送信部:106、109:傾斜磁場電源、RF検出部:110、200:制御部、210:計測制御部、220:基準位置/基準変位幅決定部、230:判定部、300:信号処理部、310:画像再構成部、320:画像処理部、350:ユーザーインターフェース、351:ディスプレイ、352:入力デバイス、405:安定期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13