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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】高圧ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20220802BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20220802BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20220802BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220802BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20220802BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20220802BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F16K31/06 310F
H01M8/0606
H01M8/04 J
H01M8/04858
H01M8/04746
H01M8/04 N
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018003019
(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公開番号】P2019124235
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 一志
(72)【発明者】
【氏名】岩口 貴嗣
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭夫
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-142090(JP,A)
【文献】特開2017-078468(JP,A)
【文献】特開2008-196599(JP,A)
【文献】特開2008-196596(JP,A)
【文献】特開2008-071669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
F16K 31/06
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスを供給する高圧ガス供給システムであって、
前記高圧ガスを貯蔵するタンクと、
前記タンクから供給される前記高圧ガスを送る供給流路と、
前記供給流路に設けられ、ソレノイドによるプランジャの吸引に応じて前記供給流路の開閉を切り替える電磁弁と、
前記ソレノイドに供給する電流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記高圧ガスの供給を実行するとき、前記電磁弁を挟んだ一方の側と他方の側との差圧について予め設定された第1差圧に抗して前記電磁弁を開弁させる第1電流を前記ソレノイドに設定時間供給させたのち、前記第1差圧より大きい第2差圧に抗して前記電磁弁を開弁させる第2電流を前記ソレノイドに供給させ、
前記設定時間は、前記第1電流が前記電磁弁に供給されてから前記電磁弁が開弁するまでに要する時間以上の長さの時間であり、
前記第1差圧は、前記タンクに前記高圧ガスが充填されてから、2回目以降の前記電磁弁の開弁時に想定される前記差圧の最大値に基づき決定され、
前記第2差圧は、前記タンクに前記高圧ガスが充填されてから、前記電磁弁が未だ開弁されていない状況において想定される前記差圧の最大値に基づき決定されている、高圧ガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧ガス供給システムには、高圧ガスを貯蔵するタンクと、タンクから供給される高圧ガスを送る供給流路と、供給流路に設けられてソレノイドによるプランジャの吸引に応じて供給流路の開閉を切り替える電磁弁と、を備えたものがある。ソレノイドは供給される電流の大きさに応じてプランジャを吸引する。電磁弁が開弁する際には、プランジャがソレノイドに吸引されて電磁弁の内部に衝突することにより音が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-71669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の燃料電池システムは、上述の高圧ガス供給システムを含んだものである。このような燃料電池システムでは、電磁弁の開弁を常に保証しようとした場合、以下のような態様が考えられる。すなわち、電磁弁を挟んだ一方の側と他方の側との差圧が想定される比較的大きな値である場合、例えば、タンクに高圧ガスが充填されてから電磁弁が未だ開弁されていないような場合であっても、電磁弁の開弁が常に保証されるよう、高圧ガスの供給が実行されるたびに、かかる差圧に抗して開弁可能な比較的大きな電流をソレノイドに供給させる態様が考えられる。よって、このような燃料電池システムでは、タンクに高圧ガスが充填されてから2回目以降の開弁において差圧が比較的小さな値であるにもかかわらず、該電流がソレノイドに供給される。しかし、プランジャが電磁弁の内部に衝突する音は供給される電流の大きさに伴って大きくなることから、タンクに高圧ガスが充填されてから初回の開弁時と同様の大きさの衝突音が、2回目以降の開弁時にも発生するという問題が生じる。このような問題を解決するために、高圧ガス供給システムにおいて、電磁弁の開弁を保証しつつ、タンクに高圧ガスが充填されてから2回目以降の電磁弁の開弁時に発生する衝突音を抑制できる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
[形態1]高圧ガスを供給する高圧ガス供給システムであって、前記高圧ガスを貯蔵するタンクと、前記タンクから供給される前記高圧ガスを送る供給流路と、前記供給流路に設けられ、ソレノイドによるプランジャの吸引に応じて前記供給流路の開閉を切り替える電磁弁と、前記ソレノイドに供給する電流を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記高圧ガスの供給を実行するとき、前記電磁弁を挟んだ一方の側と他方の側との差圧について予め設定された第1差圧に抗して前記電磁弁を開弁させる第1電流を前記ソレノイドに設定時間供給させたのち、前記第1差圧より大きい第2差圧に抗して前記電磁弁を開弁させる第2電流を前記ソレノイドに供給させ、前記設定時間は、前記第1電流が前記電磁弁に供給されてから前記電磁弁が開弁するまでに要する時間以上の長さの時間であり、前記第1差圧は、前記タンクに前記高圧ガスが充填されてから、2回目以降の前記電磁弁の開弁時に想定される前記差圧の最大値に基づき決定され、前記第2差圧は、前記タンクに前記高圧ガスが充填されてから、前記電磁弁が未だ開弁されていない状況において想定される前記差圧の最大値に基づき決定されている、高圧ガス供給システム。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、高圧ガス供給システムが提供される。この高圧ガス供給システムは、高圧ガスを供給する高圧ガス供給システムであって、前記高圧ガスを貯蔵するタンクと、前記タンクから供給される前記高圧ガスを送る供給流路と、前記供給流路に設けられ、ソレノイドによるプランジャの吸引に応じて前記供給流路の開閉を切り替える電磁弁と、前記ソレノイドに供給する電流を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記高圧ガスの供給を実行するとき、前記電磁弁を挟んだ一方の側と他方の側との差圧について予め設定された第1差圧に抗して前記電磁弁を開弁させる第1電流を前記ソレノイドに設定時間供給させたのち、前記第1差圧より大きい第2差圧に抗して前記電磁弁を開弁させる第2電流を前記ソレノイドに供給させる。このような形態とすれば、タンクに高圧ガスが充填されてから2回目以降に電磁弁が開弁する際、第1電流を設定時間供給することによって電磁弁が開弁できる場合には、かかる第1電流の供給を行わずに常に第2電流のみを供給して電磁弁を開弁させる構成と比べて、電磁弁の開弁時に発生する衝突音を抑制できる。また、第1電流の供給によって電磁弁が開弁できない場合には、第2電流を供給することによって電磁弁を開弁させるため、電磁弁の開弁を保証することができる。よって、上記形態によれば、電磁弁の開弁を保証しつつ、タンクに高圧ガスが充填されてから2回目以降の電磁弁の開弁時に発生する衝突音を抑制できる。
【0007】
本発明は、高圧ガス供給システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、高圧ガス供給システムを含む燃料電池システム、その燃料電池システムを搭載した移動体などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の高圧ガス供給システムの構成を示した説明図である。
図2】電磁弁の詳細構成を示す説明図である。
図3】制御部が実行する開弁処理を示すフローである。
図4】ソレノイドに供給される電流の変動を示した説明図である。
図5】ソレノイドに供給される電流の変動を示した説明図である。
図6】ソレノイドに供給される電流の変動を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.装置構成:
図1は、本発明の第1実施形態の高圧ガス供給システム10の構成を示した説明図である。高圧ガス供給システム10は、高圧ガスである水素ガスを燃料電池スタック200に供給する。高圧ガス供給システム10は、レセプタクル100と、充填流路110と、逆止弁120と、タンク130と、供給流路140と、電磁弁150と、減圧弁160と、インジェクタ170と、燃料電池スタック200と、制御部300と、を備える。
【0010】
レセプタクル100は、水素ガスの充填口である。レセプタクル100には、燃料ガスの充填時に、水素ステーションの水素供給装置から延びるノズルが装着される。
【0011】
充填流路110は、レセプタクル100から充填される水素ガスをタンク130に向けて送る。逆止弁120は、充填流路110に設けられている。逆止弁120は、タンク130に充填された水素ガスがレセプタクル100の側へ逆流することを防止する。タンク130は、燃料電池スタック200の発電に用いられる水素ガスを貯蔵する。
【0012】
供給流路140は、タンク130から燃料電池スタック200までを接続し、タンク130から供給される水素ガスを燃料電池スタック200に送る。供給流路140aは、供給流路140のうち後述する電磁弁150からタンク130の側を示す。供給流路140bは、供給流路140のうち電磁弁150から燃料電池スタック200の側を示す。
【0013】
電磁弁150は、供給流路140に設けられている。図2は、電磁弁150の詳細構成を示す説明図である。電磁弁150は、コア152と、ソレノイド154と、スプリング156と、プランジャ158と、を備える。図2に示された電磁弁150は、ソレノイド154によるプランジャ158の吸引に応じて供給流路140の開閉を切り替える。
【0014】
ソレノイド154に電力が供給されていない場合、プランジャ158は、コア152から離れる方向に向かって、スプリング156から付勢されている状態である。また、プランジャ158は、スプリング156に加えて、供給流路140aと供給流路140bとの差圧によっても、コア152から離れる方向に向かって付勢されている。
【0015】
ソレノイド154に電力が供給される場合、プランジャ158は、ソレノイド154に吸引されて、コア152に近づく方向に向かって移動しようとする。このとき、ソレノイド154による吸引力が、上述のスプリング156および差圧による付勢力を上回った場合には、プランジャ158は、コア152に向けて移動することによって、電磁弁150が開弁される。そして、プランジャ158がコア152と接触する位置まで移動したとき、プランジャ158とコア152とが衝突して音が発生する。供給される電流の大きさが大きいほどソレノイド154による吸引力は上昇することから、プランジャ158がコア152に衝突する音は、供給される電流の大きさが大きいほど大きくなる。
【0016】
図1に示す減圧弁160は、供給流路140のうち電磁弁150から燃料電池スタック200の側に設けられている。減圧弁160は、タンク130から供給された水素ガスの圧力を所定の圧力に減圧して下流に供給する。
【0017】
インジェクタ170は、供給流路140のうち減圧弁160から燃料電池スタック200の側に設けられている。インジェクタ170は、燃料電池スタック200への水素ガスの供給量を調整する。
【0018】
燃料電池スタック200は、単セルを複数積層させたスタック構造を有している。各単セルは、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に、それぞれアノードおよびカソードを接合してなる膜電極接合体を、セパレータによって挟持することにより構成されている。燃料電池スタック200は、水素ガスおよび空気の供給を受けて、水素と酸素との電気化学反応によって発電する。
【0019】
制御部300は、高圧ガス供給システム10の各部の動作を制御する。制御部300は、ソレノイド154に供給する電流を制御する。
【0020】
A2.開弁処理:
図3は、制御部300が実行する開弁処理を示すフローである。開弁処理は、燃料電池スタック200による発電が開始されるときに実行される処理である。
【0021】
図3に示すように、開弁処理が開始されると、制御部300は、第1差圧に抗して電磁弁150を開弁させる第1電流をソレノイド154に第1設定時間供給する(ステップS110)。ここでいう第1差圧とは、電磁弁150を挟んだ一方の側である供給流路140aと他方の側である供給流路140bとの差圧について予め設定された差圧のことである。本実施形態では、第1差圧は、10MPaである。この第1差圧の値は、タンク130に水素ガスが充填されてから2回目以降の開弁時に、供給流路140aと供給流路140bとの間の差圧において想定される最大値に基づいて決定される。したがって、第1電力は、10MPaの差圧に抗して電磁弁150を開弁させることができる電力である。また、第1設定時間とは、電磁弁150に第1電流が供給されてから開弁するまでに要する時間以上の長さの時間のことである。第1差圧および第1設定時間は、予め実験等により特定しておいてもよい。
【0022】
制御部300は、第2差圧に抗して電磁弁150を開弁させる第2電流をソレノイド154に第2設定時間供給する(ステップS120)。第2差圧は、第1差圧より大きい差圧である。本実施形態では、第2差圧は、70MPaである。したがって、第2電流は、70MPaの差圧に抗して電磁弁150を開弁させることができる電力である。70MPaという値は、タンク130に水素ガスが充填されてから電磁弁150が未だ開弁されていない状況において想定される差圧の最大値である。また、第2設定時間とは、電磁弁150に第2電流が供給されてから開弁するまでに要する時間以上の長さの時間のことである。第2差圧および第2設定時間は、予め実験等により特定しておいてもよい。
【0023】
供給流路140aと供給流路140bとの差圧が第1差圧以下である場合、ステップS110において、第1電流がソレノイド154に供給されることによって、電磁弁150は開弁される。このとき、電磁弁150の開弁時に発生する衝突音は、第2電流がソレノイド154に供給されることによって電磁弁150が開弁するときの衝突音と比べて小さい。
【0024】
供給流路140aにおける圧力と供給流路140bにおける圧力との差圧が第1差圧より大きく第2差圧以下である場合、ステップS120において、第2電流がソレノイド154に供給されることによって、電磁弁150は開弁される。
【0025】
制御部300は、第1電流より小さい第3電流をソレノイド154に供給する(ステップS130)。第3電流は、電磁弁150が開弁した状態を維持するために供給される電流である。第3電流は、第1電流および第2電流より小さい。その後、制御部300は、開弁処理を終了する。
【0026】
図4は、第1実施形態の開弁処理においてソレノイド154に供給される電流の変動を示した説明図である。図4においては、横軸に時間を表し、縦軸に電流値を表す。
【0027】
タイミングt0において、開弁処理が開始されると、図3で説明した開弁処理のステップS110が実行されることにより、ソレノイド154への第1電流の供給が開始される。縦軸におけるX2は、第1電流を示す。タイミングt1において、供給される電流値が第1電流の値に到達すると、タイミングt1からタイミングt2までの間、第1電流の供給が継続される。タイミングt1からタイミングt2までの間の時間は、第1設定時間にあたる。
【0028】
タイミングt2において、図3で説明した開弁処理のステップS120が実行されることにより、ソレノイド154への第2電流の供給が開始される。縦軸におけるX1は、第2電流を示す。タイミングt3において、供給される電流値が第2電流の値に到達すると、タイミングt3からタイミングt4までの間、第2電流の供給が継続される。タイミングt3からタイミングt4までの間の時間は、第2設定時間にあたる。
【0029】
タイミングt4において、図3で説明した開弁処理のステップS130が実行されることにより、ソレノイド154への第3電流の供給が開始される。縦軸におけるX3は、第3電流を示す。タイミングt3において、供給される電流値が第3電流の値に到達すると、タイミングt5以降、第3電流の供給が継続される。
【0030】
B.比較例:
図5は、比較例の高圧ガス供給システムの開弁処理において、ソレノイド154に供給される電流の変動を示した説明図である。図5における横軸および縦軸は、図4における横軸および縦軸と同様である。比較例の高圧ガス供給システムでは、開弁処理の処理内容が第1実施形態と異なる。比較例の開弁処理は、第1実施形態の開弁処理(ステップS110~ステップS130)に対して、ステップS110を省いたものである。
【0031】
タイミングt0において、開弁処理が開始されると、比較例における開弁処理のステップS120が実行されることにより、ソレノイド154への第2電流の供給が開始される。縦軸におけるX1は、第2電流を示す。タイミングt1において、供給される電流値が第2電流の値に到達すると、タイミングt1からタイミングt2までの間、第2電流の供給が継続される。タイミングt1からタイミングt2までの間、第2電流の供給が継続されることにより、比較例の高圧ガス供給システムにおける電磁弁150は開弁される。
【0032】
タイミングt2において、比較例における開弁処理のステップS130が実行されることにより、ソレノイド154への第3電流の供給が開始される。縦軸におけるX3は、第3電流を示す。タイミングt3において、供給される電流値が第3電流の値に到達すると、タイミングt3以降、第3電流の供給が継続される。
【0033】
以上説明した比較例では、開弁処理が行われるたびに、第2電流の供給によって電磁弁150を開弁させる。したがって、このような高圧ガス供給システムでは、タンク130に水素ガスが充填されてから2回目以降の開弁においても、第2電流の供給によって電磁弁150を開弁させる。よって、タンク130に水素ガスが充填されてから初回の開弁時と同様の大きさの衝突音が、2回目以降の開弁時にも発生する可能性が高い。
【0034】
これに対して、第1実施形態の高圧ガス供給システム10は、開弁処理において、電磁弁150に対して、第1電流を第1設定時間供給してから、第2電流を第2設定時間供給する。したがって、第1電流の供給によって電磁弁150を開弁させることができる場合には、第2電流を供給して電磁弁150を開弁させるときの衝突音に比べて、小さい衝突音しか発生しないことから、電磁弁150の開弁時に発生する衝突音を抑制できる。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、タンク130に水素ガスが充填されてから2回目以降に電磁弁150が開弁する際、第1電流を設定時間供給することによって電磁弁が開弁できる場合には、かかる第1電流の供給を行わずに常に第2電流のみを供給して電磁弁を開弁させる構成と比べて、電磁弁150の開弁時に発生する衝突音を抑制できる。また、第1電流の供給によって電磁弁150が開弁できない場合には、第2電流を供給することによって電磁弁150を開弁させるため、電磁弁150の開弁を保証することができる。よって、第1実施形態によれば、電磁弁150の開弁を保証しつつ、タンク130に水素ガスが充填されてから2回目以降の電磁弁150の開弁時に発生する衝突音を抑制できる。
【0036】
C.第2実施形態:
図6は、第2実施形態の高圧ガス供給システムの開弁処理においてソレノイド154に供給される電流の変動を示した説明図である。図6においては、横軸に時間を表し、左側の縦軸に電流値を表す。図6の右側の縦軸には、対応した電流値によって開弁させることができる差圧を示す。第2実施形態の高圧ガス供給システムの構成は、第1実施形態の高圧ガス供給システム10の装置構成と同じである。第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。第2実施形態の高圧ガス供給システムでは、制御部300が実行する開弁処理の処理内容が異なる。
【0037】
第1実施形態の制御部300が実行する開弁処理では、第1電流および第2電流という2種類の電流をソレノイド154に供給してから第3電流をソレノイド154に供給するのに対して、第2実施形態の制御部300が実行する開弁処理では、第1電流および第2電流を含んだ複数の互いに大きさの異なる電流をソレノイド154に供給してから第3電流をソレノイド154に供給する。図6に示すように、具体的には、第2実施形態の高圧ガス供給システムでは、9種類の電流をソレノイド154に供給してから第3電流をソレノイド154に供給する。9種類の電流は、それぞれの電流が電磁弁150に供給されてから開弁するまでに要する時間以上の長さの時間だけ、継続して電磁弁150に供給される。
【0038】
縦軸におけるX2は、第1電流を示すとともに、縦軸におけるP2は、第1差圧を示す。縦軸におけるX1は、第2電流を示すとともに、縦軸におけるP1は、第2差圧を示す。第1差圧P2の値は、タンク130に水素ガスが充填されてから2回目以降の開弁時に、供給流路140aと供給流路140bとの間の差圧において想定される最大値に基づいて決定されるが、第2実施形態の高圧ガス供給システムでは、2回目以降の開弁時に供給流路140aと供給流路140bとの間の差圧が第1差圧P2より高くなる場合、もしくは、2回目以降の開弁時に第1差圧P2より低くなる場合といった想定される差圧とは異なる差圧の状況に対しても対応できるよう設計された開弁処理が実行される。
【0039】
例えば、2回目以降の開弁時に、供給流路140aと供給流路140bとの間の差圧が第1差圧P2より高い差圧P2a(図6に図示)になっていたとしても、第2実施形態の高圧ガス供給システムでは、差圧P2aに抗して電磁弁150を開弁させる電流X2a(図6に図示)がソレノイド154に供給されるため、電磁弁150を開弁させることができる。第2実施形態の高圧ガス供給システムでは、多くの種類の電流が多段階的にソレノイド154に供給されるため、多くの種類の差圧に抗して電磁弁150を開弁させる機会が設けられることから、タンク130に高圧ガスが充填されてから2回目以降の電磁弁150の開弁時に発生する衝突音を一層抑制できる。
【0040】
また、タンク130に水素ガスが充填されてから初回の開弁時に、供給流路140aと供給流路140bとの間の差圧が第2差圧P1より高い差圧P1a(図6に図示)になっていたとしても、第2実施形態の高圧ガス供給システムでは、差圧P1aに抗して電磁弁150を開弁させる電流X1a(図6に図示)がソレノイド154に供給されるため、電磁弁150を開弁させることができる。
【0041】
D.他の実施形態:
上述した第1実施形態では、図2で示す電磁弁150を備えていたが、本発明はこれに限られない。例えば、電磁弁150は、ソレノイド154によるプランジャ158の吸引に応じて供給流路140の開閉を切り替える弁である限り、任意の型の電磁弁であってもよい。
【0042】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…高圧ガス供給システム
100…レセプタクル
110…充填流路
120…逆止弁
130…タンク
140…供給流路
140a…供給流路
140b…供給流路
150…電磁弁
152…コア
154…ソレノイド
156…スプリング
158…プランジャ
160…減圧弁
170…インジェクタ
200…燃料電池スタック
300…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6