(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】環状オレフィン系樹脂基材を含む積層体、及び環状オレフィン系樹脂基材を含む積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20220802BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220802BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20220802BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220802BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20220802BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/00 A
B05D7/02
B05D7/24 301T
B05D3/06 Z
B05D3/10 E
B05D7/24 303B
B05D7/24 303E
(21)【出願番号】P 2018030150
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591163650
【氏名又は名称】日本化工塗料株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】清水 大介
(72)【発明者】
【氏名】大久保 賢優
(72)【発明者】
【氏名】荻野 晋一
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-127102(JP,A)
【文献】特開2014-025061(JP,A)
【文献】特開2012-066481(JP,A)
【文献】特開2004-017410(JP,A)
【文献】特開2008-305757(JP,A)
【文献】特開2016-212146(JP,A)
【文献】特開2002-275392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 7/02
B05D 7/24
B05D 3/06
B05D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂基材(I)上に、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)、及び無機物質層(III)が順次積層されてなる積層体であって、
前記活性エネルギー線硬化型組成物が、平均一次粒子径が1~100nmの範囲内であるシリカ微粒子(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含み、前記シリカ微粒子(A)の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準として、30~85質量%であ
り、
前記環状オレフィン系樹脂基材(I)が、易接着処理をしていないものであり、
前記光重合開始剤(C)は、ベンゾフェノン系開始剤及び/又はチオキサントン系開始剤(c1)、並びに、ベンゾイン系、α-ヒドロキシアセトフェノン系及びアシルフォスフィンオサイド系から選ばれる少なくとも1種(c2)からなる群から選択され、c1/c2の質量比率が100/0~70/30の範囲内である、積層体。
【請求項2】
前記シリカ微粒子(A)が、不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子を含むものである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記重合性不飽和化合物(B)が、ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)を含有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)の膜厚が、0.5~8μmの範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記c1/c2の質量比率が99/1~70/30の範囲内である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記ベンゾフェノン系開始剤及び/又はチオキサントン系開始剤(c1)が、ベンゾフェノン及び/又はメチルベンゾフェノンを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
積層体の製造方法であって、
易接着処理をしていない環状オレフィン系樹脂基材(I)上に、活性エネルギー線硬化型組成物を塗装して、活性エネルギー線硬化型組成物による被膜層を形成する工程と、
前記活性エネルギー線硬化型組成物による被膜層に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)を形成する工程と、
前記硬化被膜層(II)上に、乾式成膜工法によって無機物質層(III)を少なくとも1層形成する工程と、
を含み、
前記活性エネルギー線硬化型組成物が、平均一次粒子径が1~100nmの範囲内であるシリカ微粒子(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含み、前記シリカ微粒子(A)の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準として、30~85質量%であ
り、
前記光重合開始剤(C)は、ベンゾフェノン系開始剤及び/又はチオキサントン系開始剤(c1)、並びに、ベンゾイン系、α-ヒドロキシアセトフェノン系及びアシルフォスフィンオサイド系から選ばれる少なくとも1種(c2)からなる群から選択され、c1/c2の質量比率が100/0~70/30の範囲内である、
積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂基材を含む積層体に関するものであり、より具体的には、環状オレフィン樹脂基材上に、同基材に対して優れた密着性を有し、かつ、耐擦傷性等の特性を付与することができる活性エネルギー線硬化型組成物の硬化被膜層と、無機物質層とが順次積層されてなる積層体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環状オレフィン系樹脂フィルムは、その高透明性や低吸湿性等の機能性から、携帯電話、スマートフォン、液晶ディスプレイ等の光学部材として使用される機会が多くなっている。環状オレフィン系樹脂フィルムは、表面硬度が比較的低いために傷が付き易い。そのため、該フィルム表面にはハードコート層が設けられている。しかしながら、環状オレフィン系樹脂フィルムとハードコート層との密着性が必ずしも十分ではなかった。そのため、ハードコート層を形成する前に環状オレフィン系樹脂フィルム表面に対して予めコロナ放電処理、プラズマ処理やオゾン処理、易接着プライマー組成物を塗布する等の易接着処理工程が必要であった(特許文献1)。
【0003】
また、特許文献2において、特定の分子量範囲のポリエーテルジオール、芳香族基を有しないポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応生成物である特定の分子量範囲のウレタン(メタ)アクリレート、特定のジ(メタ)アクリレート、2個のフェニル骨格を有し1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1個のメタクリロイル基を有する化合物を含有する活性エネルギー線硬化型光学材料用組成物が提案されているが、該組成物から得られたハードコート層は、塗膜硬度、耐擦傷性及び環状オレフィン系樹脂フィルムに対する密着性が十分ではない場合があった。
【0004】
さらに、特許文献3において、環状オレフィン系樹脂からなる層、並びに、ジフェニルスルフィド系化合物、ベンゾフェノン系化合物及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む硬化性組成物からなる層、からなる積層体が提案されているが、塗膜硬度、耐擦傷性及び層間密着性が十分ではない場合があった。
【0005】
一方、プラスチック基材上に無機物質層を形成して、機械的、電気的、光学的、あるいは化学的な機能を付与することが従来行われており、この場合に、プラスチック基材と無機物質層との十分な層間密着性を確保するために、硬化性樹脂組成物による樹脂硬化層を介在させた積層構造とすることが提案されている。例えば、特許文献4においては、プラスチック板状に活性エネルギー線硬化性プライマー組成物の硬化膜が形成され、その上に無機物質層が形成されてなる、窓用表面改質プラスチック板が記載されている。しかし、基材が環状オレフィン系樹脂である場合は、基材と樹脂硬化層との層間密着性、及び/又は樹脂硬化層と無機物質層との層間密着性が十分ではない場合があり、さらに得られた積層体特性、例えば耐摩擦性や透明性等の面でも、なお十分ではない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2008-518280号公報
【文献】特開2008-249972号公報
【文献】特開2015-127102号公報
【文献】特開平4-202240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、環状オレフィン樹脂基材上に硬化性樹脂組成物の硬化被膜層と無機物質層とが順次積層されてなる積層体であって、環状オレフィン樹脂基材上と樹脂組成物の硬化被膜層との層間密着性に優れる積層体を提供することであり、さらには、樹脂組成物の硬化被膜層と無機物質層との層間密着性にも優れる積層体を提供することである。また、本発明のさらなる目的は、透明性や対擦傷性、硬度、耐カール性等の面でも優れた特性を示し得る積層体を提供することである。さらに本発明は、そのような積層体の製造方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況の下、本発明者らは鋭意研究した結果、環状オレフィン系樹脂基材上に硬化被膜を形成するための硬化性樹脂組成物として、特定の組成を有する活性エネルギー線硬化型組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
本発明は、以下の項に示す態様を含むものである:
項1
環状オレフィン系樹脂基材(I)上に、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)、及び無機物質層(III)が順次積層されてなる積層体であって、
前記活性エネルギー線硬化型組成物が、平均一次粒子径が1~100nmの範囲内であるシリカ微粒子(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含み、前記シリカ微粒子(A)の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準として、30~85質量%である、積層体。
項2
前記シリカ微粒子(A)が、不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子を含むものである、請求項1に記載の積層体。
項3
前記重合性不飽和化合物(B)が、ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)を含有する、請求項1又は2に記載の積層体。
項4
前記、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)の膜厚が、0.5~8μmの範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
項5
前記環状オレフィン系樹脂基材(I)が、易接着処理をしていないものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
項6
積層体の製造方法であって、
易接着処理をしていない環状オレフィン系樹脂基材(I)上に、活性エネルギー線硬化型組成物を塗装して、活性エネルギー線硬化型組成物による被膜層を形成する工程と、
前記活性エネルギー線硬化型組成物による被膜層に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)を形成する工程と、
前記硬化被膜層(II)上に、乾式成膜工法によって無機物質層(III)を少なくとも1層形成する工程と、
を含み、前記活性エネルギー線硬化型組成物が、平均一次粒子径が1~100nmの範囲内であるシリカ微粒子(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含み、前記シリカ微粒子(A)の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準として、30~85質量%である、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環状オレフィン樹脂基材上に樹脂組成物の硬化被膜層と無機物質層とが順次積層されてなる積層体であって、十分な層間密着性を有し、さらには透明性や耐擦傷性、硬度、耐カール性等の面でも優れた特性を示し得る積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層体は、環状オレフィン樹脂基材上に、特定の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化被膜層を形成し、さらにその上に無機物質層を積層させた構造を有するものである。
【0012】
<環状オレフィン系樹脂基材(I)>
本発明に係る積層体は、環状オレフィン系樹脂を基材とするものである。前記基材としては各種環状オレフィン樹脂成形品を用いることができるが、特に環状オレフィン樹脂フィルムが好ましい。
【0013】
前記環状オレフィン樹脂フィルムとしては、環状オレフィンを重合したものであれば、単独重合体であっても、共重合体であっても特に制限なく用いることができる。環状オレフィン樹脂フィルムの市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」;JSR株式会社製の「ARTON」;ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「アペル」、グンゼ株式会社製の「Fフィルム」等が挙げられる。
【0014】
また、環状オレフィン樹脂フィルムの表面は、通常、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化被膜との密着性を向上させるため、サンドブラスト法、溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、電気的処理(コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理)、クロム酸処理、オゾン・紫外線・電子線照射処理、酸化処理、プライマー組成物による塗装処理等の易接着処理をすることが一般的であるが、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、これらの易接着処理をせずとも環状オレフィン樹脂フィルムに対して高い密着性を有する。
前記環状オレフィン樹脂フィルムの厚さは、50~200μmの範囲が好ましく、80~150μmの範囲がより好ましく、90~130μmの範囲がさらに好ましい。フィルム基材の厚さを当該範囲とすることで、環状オレフィン樹脂フィルムの片面に、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物によるハードコート層を設けた場合にもカールを抑制しやすくなる。
【0015】
<硬化被膜層(II)>
本発明に係る積層体は、環状オレフィン系樹脂基材(I)上に、特定の組成を有する活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)を備えたものである。環状オレフィン系樹脂基材(I)と無機物質層(III)との間に前記硬化被膜層(II)を配置した積層構造とすることにより、環状オレフィン樹脂基材(I)と硬化被膜層(II)との層間密着性のみならず、硬化被膜層(II)と無機物質層(III)との間でも十分な層間密着性を有し、さらには耐摩擦性や透明性等の面でも優れた特性を示し得る積層体を提供することができる。以下、硬化被膜層(II)を形成する活性エネルギー線硬化型組成物につき説明する。
【0016】
<<活性エネルギー線硬化型組成物>>
本発明において用いられる活性エネルギー線硬化型組成物は、平均一次粒子径が1~100nmの範囲内であるシリカ微粒子(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含む。
【0017】
シリカ粒子(A)
本発明に用いるシリカ粒子(A)は、平均一次粒子径が1~100nmの範囲内であり、具体的には、乾式シリカ、湿式シリカ、シリカゲル、カルシウムイオン交換シリカ微粒子、コロイダルシリカ等を挙げることができる。
シリカ粒子(A)の平均一次粒子径は、1~100nmであり、中でも硬化被膜の耐擦傷性の点からは、平均一次粒子径が比較的大きいものを用いることが有利であるが、耐擦傷性と硬化被膜の透明性の両立の観点から、5nm~100nmの範囲内が好ましい。
平均一次粒子径が1nm未満であると、シリカ粒子(A)を他の有機材料と混合して使用した場合に被膜の耐擦傷性及び基材との密着性等の改良効果が小さくなるときがある。平均一次粒子径が100nmを超えるものであると、上記材料の透明性が損なわれる場合がある。
【0018】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡により観察される粒子によって測定することができる。あるいは、特定の粒子径が表示された市販品を用いてもよい。本発明においては、シリカ粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡で撮影し、無作為に引いた直線上にある粒子20個を一次粒子として観察し、画像解析により最大径の数平均径として測定値を算出して得られた値である。この時、シリカ粒子が円形でない場合には、同一面積の円相当の直径を求め、これをシリカ粒子の直径とした。
【0019】
前記シリカ粒子(A)は、表面が有機物により変性されていないものでもよいが、透明性と耐擦傷性のバランスの観点から、粒子表面を有機物で変性した有機物変性シリカ粒子を含むもの、中でも不飽和基を有する有機物変性シリカを含むものが好ましい。ここでの表面の有機物変性とは、シリカ粒子表面に、有機化合物又は有機基を物理的又は化学的(好ましくは、化学的)に導入した複合体の形態となることを意味する。導入される有機化合物又は有機基としては、当該分野で公知のものが挙げられるが、活性エネルギー線硬化により得られる被膜の透明性を維持しつつ、シリカ粒子含有率を向上させ耐擦傷性に優れる被膜得ることができる点から、不飽和基を有することが好ましい。
【0020】
前記、不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味し、後述する重合性不飽和化合物(B)と反応しうるものである。ラジカル重合しうる不飽和基としては、炭素-炭素間二重結合をもつ官能基であり(重合性二重結合ともいう)、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基等を挙げることができ、本発明においては、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0021】
シリカ粒子(A)は分散媒に分散した状態であっても良く、分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール等の多価アルコール系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒等が挙げられる。上記分散媒としては、水及び/又は炭素数3以下の低級アルコール系溶媒が好ましい。
【0022】
コロイダルシリカの市販品としては、メタノールシリカゾル(平均粒子径10~15nm)、MA-ST-M(平均粒子径20~25nm)、IPA-ST(平均粒子径10~15nm)、IPA-ST-L(平均粒子径40~50nm)、IPA-ST-ZL(平均粒子径70~100nm)、MEK-ST-40(平均粒子径10~15nm)、MEK-ST-L(平均粒子径40~50nm)、MEK-ST-ZL(平均粒子径70~100nm)、DMAC-ST(平均粒子径10~15nm)、NPC-ST-30(平均粒子径10~15nm)、PGM-ST(平均粒子径10~15nm)、EAC-ST(平均粒子径10~15nm)、IPA-ST-UP(平均粒子径9~15nm)、ST-UP(平均粒子径40~100nm)、ST-OUP(平均粒子径40~100nm)、ST-20L(平均粒子径40~50nm)、ST-30(平均粒子径10~15nm)、MEK-ST-40(平均粒子径10~15nm)、ST-O-40(平均粒子径20~25nm)、ST-N-40(平均粒子径20~25nm)、ST-C(平均粒子径10~15nm)、ST-NS(平均粒子径8~11nm)、ST-O(平均粒子径10~15nm)、ST-50(平均粒子径20~25nm)、ST-OL(平均粒子径40~50nm)、MEK-AC-2140Z(平均粒子径10~15nm)、PGM-AC-2140Y(平均粒子径10~15nm)、MEK-AC-4130Y(平均粒子径40~50nm)、MEK-AC-5140Z(平均粒子径70~100nm)(いずれも商品名、日産化学工業社製)等が挙げられる。
【0023】
また、シリカ粒子(A)の総含有量は、耐擦傷性、耐カール性及び付着性の点から、前記活性エネルギー線硬化型組成物中の全硬化被膜形成成分に対して、30質量%以上であり、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上が特に好ましい。また、透明性の点から、85質量%以下であり、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。本発明において用いられる活性エネルギー線硬化型組成物から得られる被膜は、シリカ粒子(A)の含有率が高くても、透明性に非常に優れ、かつ、基材との密着性及び耐擦傷性にも優れる。
【0024】
重合性不飽和化合物(B)
重合性不飽和化合物(B)は、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する化合物である。前記重合性不飽和基はラジカル重合しうる不飽和基であって、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等を挙げることができる。これらの重合性不飽和基のうち、反応性に優れる観点から、アクリロイル基及びメタクリロイル基が好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
【0025】
また、前記重合性不飽和化合物(B)としては、分子内にエステル結合、ウレタン結合、尿素結合及びチオウレタン結合等を有していても良く、特に、耐擦傷性やカール性の観点から、ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)を好適に用いることができ、前記ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)の例としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において特に好適に用いられるウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、不飽和基当量が110以上600未満、重量平均分子量が600~6,000の範囲内のものであることが好ましい。前記ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に少なくとも1個のウレタン結合と少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であり、該(メタ)アクリロイル基のうち、反応性に優れる観点から、アクリロイル基が特に好ましい。
【0027】
本明細書において、不飽和基を有する化合物の分子量をM、その分子量あたりに含まれる不飽和基の数をσとすると、不飽和基当量はM/σで表される値である。
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、被膜外観、被膜の硬度及び可とう性の観点から600~6,000の範囲内であることが好ましく、1,000~5,800の範囲内であることが特に好適である。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC-8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0029】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、
(1)ポリイソシアネート化合物と水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させる、
(2)ポリイソシアネート化合物とポリオールとを反応させて得られるポリウレタンポリオールにイソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを反応させる、
等の方法により製造される反応生成物が挙げられる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造に使用されるポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ジイソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらのジイソシアネートの2量体又は3量体(ビウレット付加物又はイソシアヌレート環タイプ付加物等)等が挙げられる。
【0031】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造に使用される水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、及び、これらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン等を付加して得られるアルキレンオキサイド変性又はラクトン変性の化合物等や、これらの化合物にポリイソシアネートを付加した化合物等を挙げることができる。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造に使用されるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0033】
上記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばイソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、さらにヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の活性水素含有重合性モノマーにヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物を付加してなる不飽和化合物等が挙げられる。
【0034】
また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販品を使用することもできる。例えば、日本合成化学工業株式会社製紫光シリーズのUV-1700B、UV-6300B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7610B、UV-7620EA、UV-7630B、UV-7640B、UV-7650Bや根上工業株式会社製アートレジンシリーズのUN-3320HA、UN-3320HC、UN-3320HS、UN-904、UN-906S、UN-901T、UN-905、UN-952、ダイセル・オルネクス株式会社製EBECRYLシリーズのEBECRYL4666、EBECRYL4680、EBECRYL8210、EBECRYL1290、EBECRYL8254、KRMシリーズのKRM8528、KRM8200、KRM8200AE、KRM8904を挙げることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
本発明で重合性不飽和化合物(B)として用いられる、ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)以外の重合性不飽和化合物(b2)としては、その化学構造中に重合性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物であって、本願課題である密着性を阻害しない限りその種類としては特に限定されず、単官能重合性不飽和化合物、多官能重合性不飽和化合物が挙げられる。
【0036】
単官能重合性不飽和化合物としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。また、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5-カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性不飽和化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド化合物;N-(2-メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア、ヒドロキシエチルエチレンウレア(メタ)アクリレート等のアルコキシル化ウレア(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
多官能重合性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(エステル結合を分子内に少なくとも2つ以上有する重合性不飽和化合物;ポリエステル(メタ)アクリレートと呼ぶことがある)等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデンカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、水素化ヘキサフルオロビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;チオール化合物とイソシアナト(メタ)アクリレートとを反応させた(ポリ)チオウレタン(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これら重合性不飽和化合物は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0038】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型組成物が、重合性不飽和化合物(B)として、ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)を含有する場合、その含有率は、耐カール性、密着性、耐擦傷性、透明性及び耐候性等を考慮する場合には、活性エネルギー線硬化型組成物中の全硬化被膜形成成分に対して15質量%以上であることが好ましい。
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型組成物が、ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)以外の重合性不飽和化合物(b2)を含有する場合、その含有率は、耐カール性を考慮する場合には、活性エネルギー線硬化型組成物中の全硬化被膜形成成分に対して40質量%未満であることが好ましい。
すなわち、ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)及びその他の重合性不飽和化合物(b2)を、100/0~0/100、耐カール性の点から、15/85~70/30の範囲内で適宜調整することができる。
最も好ましくは、本発明で用いる活性エネルギー線硬化型組成物に含まれる全硬化被膜形成成分に対して、シリカ粒子(A)、ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)及び光重合開始剤(C)の合計質量が、80質量%以上であることが好ましい。
ここで、本明細書において、本発明で用いる活性エネルギー線硬化型組成物中の全硬化被膜形成成分とは、該組成物から、水、有機溶媒等の溶媒を除いた残渣(固形分)の合計質量を意味する。
【0039】
光重合開始剤(C)
光重合開始剤(C)は、活性エネルギー線を吸収して、フリーラジカル(中間体の形態でも)を発生する化合物であり、2種以上の化合物の混合物であってもよい。光重合開始剤(C)としては、光化学的に活性化可能な化合物(たとえばベンゾイン)、発色団と共開始剤(たとえばベンゾフェノン及び第三級アミン)との組合せ及びこれらの混合物、増感剤と、共開始剤との(たとえばチオキサントンと第三級アミン)又は発色団との(たとえばチオキサントンとアミノケトン)の組合せ、H2O2と鉄(II)塩との組合せ等のレドックス系、染料及びホウ酸塩及び/又はアミン等の電子輸送ペアー等を挙げることができる。
【0040】
光重合開始剤(C)として具体的には、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα-ジケトン化合物;ベンゾイン等のアシロイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル化合物;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン-4-スルホン酸等のチオキサントン化合物;ベンゾフェノン、o-メチルベンゾイルベンゾエート、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;ミヒラーケトン化合物;アセトフェノン、2-(4-トルエンスルホニルオキシ)-2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、α,α’-ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2’-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノン、2-メチル〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、α-イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α’-ジクロル-4-フェノキシアセトフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等のアセトフェノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;アントラキノン、1,4-ナフトキノン等のキノン;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)-s-トリアジン等のハロゲン化合物;ジ-t-ブチルパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。
【0041】
光重合開始剤(C)の市販品としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)-127、イルガキュア-184、イルガキュア-261、イルガキュア-369、イルガキュア-500、イルガキュア-651、イルガキュア-754、イルガキュア-819、イルガキュア-907、イルガキュア-CGI-1700、イルガキュア-2959、イルガキュア-TPO、ダロキュア(Darocur)-1173(以上、BASF社製、商品名);カヤキュアー(KAYACURE)-MBP、カヤキュアー-DETX-S、カヤキュアー-DMBI、カヤキュアー-EPA、カヤキュアー-OA(以上、日本化薬社製、商品名);ビキュア(VICURE)-10、ビキュア-55(以上、ストウファー社(STAUFFER Co.,LTD.)製、商品名);トリゴナル(Trigonal)P1(アクゾ社(AKZO Co.,LTD.)製、商品名);サンドレイ(SANDORAY)1000(サンドズ社(SANDOZ Co.,LTD.)製、商品名);ディープ(DEAP)(アプジョン社(APJOHN Co.,LTD.)製、商品名);カンタキュア(QUANTACURE)-PDO、カンタキュア-ITX、カンタキュア-EPD(以上、ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製、商品名)、ESACURE KIP 150、ESACURE ONE(LAMBERTI社製、商品名)等を挙げることができる。
上記光重合開始剤(C)は、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
これらの光重合開始剤(C)のうち特に好ましいものとしては、ベンゾフェノン系開始剤及び/又はチオキサントン系開始剤(c1)、並びに、ベンゾイン系、α-ヒドロキシアセトフェノン系及びアシルフォスフィンオサイド系から選ばれる少なくとも1種(c2)、を挙げることができる。また、開始剤(c1)と(c2)は組み合わせても好適に使用することができ、両者を組み合わせる場合は、c1/c2の質量比率で100/0~99/1の範囲で用いることが好適であり、99/1~70/30の範囲がさらに好適である。これらの開始剤を含有することにより、活性エネルギー線硬化型組成物から得られる被膜は、環状オレフィン系樹脂基材との密着性及び耐擦傷性の面で特に優れたものとなる。
【0043】
好適なベンゾフェノン系開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
好適なチオキサントン系開始剤としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンが挙げられる。
【0044】
好適なベンゾイン系開始剤としては、ベンゾイン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾインメチルエーテル(2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、ベンゾインエチルエーテル(2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、ベンゾインイソプロピルエーテル(2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン)、ベンゾインイソブチルエーテル(2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノン)等のベンゾイン誘導体が挙げられる。
好適なα-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンが、また好適なアシルフォスフィンオキサイド系開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、SpeedCure XKm(商品名:Lambson社製)が、それぞれ例示される。
【0045】
また、本発明で用いる活性エネルギー線硬化型組成物における光重合開始剤(C)の固形分含有量は、硬化性、被膜硬度及び基材との密着性確保の観点から、シリカ粒子(A)及び重合性不飽和化合物(B)の合計固形分100質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部の範囲内であり、より好ましくは1~15質量部の範囲内である。
活性エネルギー線の積算照射量が200mJ/cm2以下である場合には、前記光重合開始剤(C)の固形分含有量は、シリカ粒子(A)及び重合性不飽和化合物(B)の合計固形分100質量部に対して、10~30質量部の範囲内が好ましい。
【0046】
その他の成分
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型組成物は、さらに必要に応じて各種添加剤を配合してもよく、所望により溶媒で希釈してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レオロジーコントロール剤、表面調整剤(シリコン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、ビニル系表面調整剤等)、界面活性剤、樹脂粒子、易滑剤、脱泡剤、離型剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤等が使用できる。本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、耐光性が求められる用途に関しては、さらに紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有していても良い。
【0047】
紫外線吸収剤
上記紫外線吸収剤としては、従来から公知の有機系紫外線吸収剤及び無機系紫外線吸収剤が使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤及びその他(ヒドロキシフェニルトリアジン系、シュウ酸アニリド、シアノアクリレート等)の化合物等が挙げられる。無機系紫外線吸収剤としては、例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化鉄等が挙げられる。また、上記紫外線吸収剤は、重合性不飽和基を有するものであっても良い。前記紫外線吸収剤を含有する場合、該紫外線吸収剤の含有量は、全硬化被膜形成成分に対して、0.01~10質量%、好ましくは0.05~9質量%の範囲内であることが好適である。
【0048】
光安定剤
上記光安定剤としては、特に限定されず、従来公知のものを広く使用することができるが、好ましくはヒンダードピペリジン化合物が挙げられる。ヒンダードピペリジン化合物は、一分子中に少なくとも一個のヒンダードピペリジン基を有する化合物である。
ヒンダードピペリジン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル){[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル}ブチルマロネート等のモノマータイプのもの;ポリ{[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノール]}等のオリゴマータイプのもの;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとコハク酸とのポリエステル化物等のポリエステル結合タイプのもの等が挙げられるが、これらに限ったものではない。光安定剤としては、また、公知の重合性光安定剤も使用することが可能である。
【0049】
上記光安定剤の市販品としては、例えば、TINUVIN123、TINUVIN 152、TINUVIN292(商品名、BASF社製)、HOSTAVIN3050、HOSTAVIN3052、HOSTAVIN3058(商品名、クラリアント社製)、アデカスタブLA-82(商品名、株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記光安定剤を含有する場合、その含有量は、全硬化被膜形成成分に対して、0.01~10質量%、好ましくは0.05~9質量%の範囲内であることが好適である。
【0050】
前記溶媒は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の溶液粘度を適宜調整し、特に薄膜コーティングを行う際に膜厚を調整することができるため適宜選択することが好ましい。ここで使用できる有機溶媒としては、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を溶解又は分散せしめうるものであれば、特に制限されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0051】
活性エネルギー線硬化型組成物の調製方法
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型組成物は、以上に述べたシリカ粒子(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を必須として主成分として含むものであり、さらに必要に応じて使用される添加成分を溶媒中に混合し、溶解又は分散せしめることができる。
【0052】
<無機物質層(III)>
本発明における無機物質層(III)としては、乾式成膜工法で形成されたものであれば特に制限されるものではなく、積層体に付与しようとする特性に応じて選択可能であり、例えば、Si、Ti、Zn、Al、Ga、In、Ce、Bi、Sb、B、Zr、Sn、及びTa等の元素を有する少なくとも1種以上の各種金属又は金属酸化物、窒化物及び硫化物等を主成分とする層が挙げられる。また、例えば、高硬度で絶縁性に優れたダイヤモンドライクカーボン(以下DLC)膜層も挙げられる。DLC膜は、炭素間のSP3結合を主体としたアモルファス構造の炭素膜で、非常に硬く、低摩擦係数、耐摩耗性、耐食性、ガスバリア性を有し、絶縁性に優れたダイヤモンド状炭素膜である。
【0053】
本発明における無機物質層(III)としては、少なくとも1層以上であればよく、複層でも構わない。無機物質層(III)が複層である場合、それらの積層順や無機物質層(III)の種類も特に限定されない。また、無機物質層(III)としては、紫外線吸収層や機能性層等の種々の機能層であっても良い。
【0054】
これらの中でも、最表層の無機物質層(III)は、高い硬度、硬化被膜層との層間密着性、積層膜の透明性及び優れた耐化学安定性を備えた表面層が得られる観点から金属酸化物、特に酸化珪素化合物からなる層であることが、特に好ましい。
【0055】
無機物質層(III)の一層をDLC層とする場合には、前記性能を有している点から、上記金属酸化物層を積層した上に、最表層として積層することが好ましい。
【0056】
本発明における無機物質層(III)の積層方法は、乾式成膜工法であれば特に限定されず、例えば、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー法、イオンビームデポジション、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理気相成長法(以下、「PVD」ともいう)や、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、エピタキシャルCVD、アトミックレイヤーCVD、catCVD等の化学気相成長法(以下、「CVD」ともいう)等の乾式成膜工法があるが、特にこの中でも成膜温度や成膜速度の点からプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)が好ましい。ここでいう、乾式成膜工法とは材料表面を気相又は融解状態を用いて処理することで、一般にドライプロセスと呼ばれることもある。
【0057】
無機物質層(III)として、酸化珪素層をプラズマCVDで形成する際には、原料として有機珪素化合物を好適に使用できる。具体的な例としては、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、テトラメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、テトラメチルシラン、ヘキサメチルトリシロキサン、テトラクロロシラン、トリクロロメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン等を挙げることができる。
【0058】
また、DLC層をプラズマCVDで形成する際には、原料として炭化水素系化合物を用いる。具体的な例としては、トルエン、アセチレン、メタン、ヘキサン等が挙げられる。
無機物質層(III)をプラズマCVD法で形成する際に、原料の有機珪素化合物や炭化水素系化合物のほかに、分解ガスとして、水素ガス、メタンガス、オゾンガス、酸素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、二酸化窒素ガス、一酸化二窒素ガス、等を用いる。この中でも、酸素ガス、オゾンガス、二酸化窒素ガス、一酸化二窒素ガス、二酸化ガス、一酸化ガス等のいずれか又は2種以上の組合せ等を好適に用いることができる。
【0059】
このように、種々の金属原料を含む原料と、分解ガスを適宜選択することで、様々な無機物質層(III)を形成することができ、無機物質層(III)を形成するための原料等は、1種又は2種以上併用しても構わない。
【0060】
また、無機物質層(III)の厚みは10nm以上であることが、耐擦傷性の点から好ましく、十分な耐摩耗性を保持するうえで、20nm以上であることがより好ましい。無機物質層(III)の一層あたりの厚みの上限は特に限定されないが、好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下である。無機物質層(III)の厚みが10nm未満では、十分な耐擦傷性を発現させることができないことがある。無機物質層(III)の厚みを調整するには、例えば、プラズマCVD等の装置の設定条件において、処理時間等を調整すればよい。また、無機物質層は複数層であっても良い。
【0061】
本発明による積層体は、上記のようにして積層した無機物質層が無機物であることから、有機物被膜にない優れた外観、耐候性、耐擦傷性等の特性を有しており、また活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)との層間密着性に優れ、耐候性、耐水性及び耐擦傷性に非常に優れたものであることができる。
<積層体の製造方法>
本発明に係る積層体は、環状オレフィン系樹脂基材(I)上に、活性エネルギー線硬化型組成物を塗装して活性エネルギー線硬化型組成物による被膜層を形成する工程と、前記活性エネルギー線硬化型組成物による被膜層に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)を形成する工程と、前記硬化被膜層(II)上に、乾式成膜工法によって無機物質層(III)を少なくとも1層形成する工程と、を含む方法により製造することができる。ここで活性エネルギー線硬化型組成物は、平均一次粒子径が1~100nmの範囲内であるシリカ微粒子(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含み、前記シリカ微粒子(A)の含有量は、前記活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準として、30~85質量%である。
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型組成物によれば、高濃度にシリカ微粒子を含有し、層中に緻密にシリカ微粒子が充填されているにもかかわらず、透明性の低下及びワレなどの不具合を発生させることなく、無機物質層(III)及び環状オレフィン樹脂系基材(I)の双方に対して密着性に優れた硬化被膜を得ることができ、しかも、易接着処理をしていない環状オレフィン系樹脂基材を用いても、優れた層間密着性を有する積層構造を形成することができる。
【0062】
塗装工程
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を塗装する方法は、特に限定されるものではない。例えば、スプレー、回転霧化塗装機、浸漬塗装、ダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等により塗装することができる。塗装の際、静電印加を行ってもよい。
【0063】
塗装膜厚
塗装膜厚は、硬化膜厚で通常0.5~100μm、好ましくは0.5~8μmの範囲内、さらに好ましくは1~7.8μmの範囲内とすることができる。本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、特に10μm以下の薄膜において、基材との十分な密着性、透明性及び耐擦傷性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0064】
本発明において硬化被膜層(II)を形成するにあたっては、基材上に、活性エネルギー線硬化型組成物を塗装して、セッティング及び/又は予備加熱を施した後、活性エネルギー線を照射してもよい。この、セッティング及び/又は予備加熱を施す工程は、塗装直後の被膜中の揮発分を減少させ又は揮発分を除去するために行なわれ、エアブロー、IR炉等で行うことができる。セッティングは、通常、塗装された被塗物をほこりのない雰囲気に室温で30秒~600秒放置することにより行うことができる。予備加熱(プレヒート)は、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で、40~110℃、好ましくは50~100℃の温度で30秒~30分間加熱することにより行うことができる。また、エアブローを行う場合には、通常、被塗物の塗装面に常温又は25℃~80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。予備加熱時間は、好ましくは、30秒~600秒行うことができる。また、加熱と後述する活性エネルギー線照射とを併せて行う際には、光線の照射源からの熱(例えばランプが発する熱)を熱源としてもよい。さらに、加熱の後に光照射を行う際には、被塗物が熱を帯びた状態(余熱を持った状態)で光照射を行なってもよい。
【0065】
活性エネルギー線照射
上記基材に塗布された被膜は、活性エネルギー線を照射することにより重合させ、硬化被膜とすることができる。照射される活性エネルギー線としては、公知のものを使用することができる。具体的には、紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線レーザー、可視光レーザー、紫外線レーザー等)、マイクロ波、電子ビーム、電磁波等を挙げることができる。これらの活性エネルギー線のうち、経済性の観点から、紫外線を好適に使用することができる。
【0066】
活性エネルギー線の照射源としては、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、無電極ランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)、太陽光等を使用することができる。また、パルス発光型の活性エネルギー線照射装置も使用することができる。
また、活性エネルギー線の照射は、全領域及び/又は一部を、例えば、マスクを介して行っても、レーザービームを用いて行ってもよい。その手段によって特定の領域だけの被膜の硬化を行うことも可能である。
活性エネルギー線の照射量は、照射源によって異なるが、活性エネルギー線硬化型組成物の重合を行なうことができる範囲であればよく、例えば、高圧水銀灯を使用した場合、積算照射量で100~500mJ/cm2、特に200~500mJ/cm2の範囲内が好ましい。
無機物質層(III)の形成
無機物質層(III)の形成は、上記<無機物質層(III)>において説明したとおり、乾式成膜工法で形成することができる。
【0067】
本発明に係る積層体は、環状オレフィン樹脂基材上に特定の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化被膜層と無機物質層とが順次積層されてなる積層構造を有することから、十分な層間密着性を有し、さらには耐摩擦性や透明性等の面でも優れた特性を示すことができる。また、積層した無機物質層により、有機物被膜にない優れた外観、耐候性、耐擦傷性等の諸特性を付与することができる。
【実施例】
【0068】
以下、製造例、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらにより限定されるものではない。各例において、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0069】
(製造例1)活性エネルギー線硬化型組成物No.1
シリカ微粒子No.1(*1)を150部(固形分60部)、重合性不飽和化合物No.1を40部(固形分40部)(*5)、光重合開始剤としてDETX(*10)を6.0部、DAROCURE 1173(*14)を固形分で0.8部、BYK-354(*15)(商品名、アクリル系表面調整剤)を固形分で0.10部、紫外線吸収剤としてTINUVIN 1130(*16)を固形分で0.20部、及び光安定剤としてHOSTAVIN 3052(*17)を固形分で0.20部配合し、酢酸エチルで固形分含有率40%まで希釈し攪拌し、活性エネルギー線硬化型組成物No.1を製造した。表1-1に各成分の配合量を固形分質量比で示した。また、表中のシリカ粒子含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準とした質量%である。
【0070】
(製造例2~28)活性エネルギー線硬化型組成物No.2~28
製造例1において、各成分の配合を表1-1~1-3に示すものとする以外は製造例1と同様にして、製造例2~28の固形分含有率40%の活性エネルギー線硬化型組成物No.2~28を得た。表1-1~1-3に示す各組成物の配合は、各成分の固形分質量比である。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
表1-1~表1-3中における(*1)~(*17)は下記を意味する。
(*1)シリカ微粒子No.1:MEK-ST-40、商品名、日産化学社製、MEK-ST40、商品名、日産化学社製、コロイダルシリカ、平均一次粒子径13nm、メチルエチルケトン分散液、固形分含有率40質量%
(*2)シリカ微粒子No.2:下記製造方法にて得られた不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子分散液、平均一次粒子径23nm、固形分40質量%;<シリカ微粒子No.2の製造方法>還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコにコロイダルシリカ(スノーテックスST-O-40;商品名、分散媒;水、シリカ濃度;40質量%、平均一次粒子径;23nm、日産化学工業社製)を250部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを10部、p-メトキシフェノールを0.2部及びイソプロパノールを143部配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶媒を置換した。続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げて4級アンモニウム塩を0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶媒を置換し、不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子No.2を得た。得られたシリカ微粒子No.2の平均一次粒子径は23nm、該シリカ微粒子No.2の分散液の固形分含有率は40質量%であった。
【0075】
(*3)シリカ微粒子No.3:MEK-ST-ZL、商品名、日産化学社製、コロイダルシリカ、平均一次粒子径85nm、メチルエチルケトン分散液、固形分含有率30質、
(*4)シリカ微粒子No.4:前記<シリカ微粒子No.2の製造方法>において、コロイダルシリカをスノーテックスMP-2040(商品名、分散媒;水、シリカ濃度;40質量%、平均一次粒子径;200nm、日産化学工業社製)にする以外は同様にして不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子分散液、平均一次粒子径200nm、固形分40質量%を得た。
(*5)重合性不飽和化合物No.1:KARAYAD-DPHA、商品名、日本化薬株式会社製、平均重合性不飽和基数6個、分子量524、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、
(*6)重合性不飽和化合物No.2:EBECRYL 884、商品名、ダイセル・オルネクス株式会社性、平均重合性不飽和基数3個、重量平均分子量1,250、多価アルコールとアクリル酸のエステル化物(ポリエステルアクリレート)、
(*7)重合性不飽和化合物No.3:アロニックス M-325、商品名、東亞合成社製、平均重合性不飽和基数3個、重量平均分子量538、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチルイソシアヌレート、ウレタンアクリレート
(*8)重合性不飽和化合物No.4:ウレタンアクリレート、平均重合性不飽和基数9個、重量平均分子量3,700、
(*9)重合性不飽和化合物No.5:ウレタンアクリレート、平均重合性不飽和基数10個、重量平均分子量4,900、
(*10)DETX:光重合開始剤(a1)、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、チオキサントン系開始剤、
【0076】
(*11)IRGACURE 651:光重合開始剤(a2)、商品名、BASF社製、ベンゾイン系開始剤、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン
(*12)IRGACURE TPO:光重合開始剤(a2)、商品名、BASF社製、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド。
(*13)IRGACURE 184:光重合開始剤(a2)、商品名、BASF社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、
(*14)DAROCURE 1173:光重合開始剤(a2)、商品名、BASF社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、
(*15)BYK-354:BYK-354:商品名、ビックケミー・ジャパン社製、アクリル系表面調整剤、固形分含有率51質量%
(*16)TINUVINE 1130:商品名、BASF社製、紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系、固形分含有率88質量%、
(*17)HOSTAVINE 3052:商品名、クラリアントジャパン社製、ヒンダードピペリジン系光安定剤。
【0077】
<積層体の製造方法>
(実施例及び比較例)
基材1(環状オレフィン樹脂基材:COP基材(I)表中COPと表記)に、易接着処理せずそのまま前記活性エネルギー線硬化型組成物No.1をバーコーターで硬化後の膜厚が4μmとなる条件で塗装し、100℃で30秒プレヒートして溶媒を除去した後、紫外線照射装置で、紫外線(ピークトップ波長365nm)を照度150mW/cm2で積算照射量500mJ/cm2となる条件で照射し、被膜を硬化させて硬化被膜層(II)を作製した。次いでその上に、表2-1に示す無機物質層(III)を膜厚が1.5μmとなるようプラズマCVD装置を用いて積層させた(実施例1)。同様にして、表2-1~表2-3、及び表3に示す実施例2~31、比較例1~4の試験積層体を得た。得られた各試験積層体について、下記評価試験に供した。評価結果を表2-1~表2-3及び表3に示す。
【0078】
基材1は下記のものを使用した。
基材1:A4サイズの厚さ100μmの環状オレフィン樹脂基材〔「ゼオノアフィルム、ZF16-100」商品名、日本ゼオン(株)社製、ヘーズ値0.1%未満、全光線透過率92%以上、鉛筆硬度HB〕。
また、前記基材1にかえて、基材2(ポリエチレンテレフタレート樹脂基材:PET基材、表中PETと表記)にして、非易接着処理面に塗装したものを参考例1として、易接着処理面に塗装したものを参考例2として、各々積層体を作製した。得られた各積層体を試験板として、実施例1と同じく各種試験に供した。
基材2は下記のものを使用した。
基材2:A4サイズの厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム(「コスモシャインA4100」商品名、東洋紡(株)社製、ヘーズ値0.9%、全光線透過率92.0%」)。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
試験項目1.透明性
JIS K7361-1(1997)に準拠して、各得られた積層体の全光線透過率を無機層(III)側から測定を行った。また、JIS K7136(2000)に準拠して、同様に積層体のヘーズ値を無機層(III)側から測定を行った。下記基準にて評価を行った。全光線透過率は91.0%以上、ヘーズ値は5%以下であれば透明性が良好である。
<全光線透過率>
3:91%以上、
2:90%以上91%未満
1:90%未満、
<ヘーズ値>
3:0.5%未満
2:0.5%以上5%未満
1:5%以上
【0084】
試験項目2.付着性
各試験板の無機層(III)面にJIS K 5600-5-6(1990)に準じて1mm×1mmのゴバン目100個を素地に到達するまで作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後のゴバン目被膜の残存状態と剥離界面を調べ、下記基準で付着性を評価した。
5:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けなし、
4:残存個数/全体個数=95~100個/100個で縁欠けあり、
3:残存個数/全体個数=90~95個未満/100個で、縁欠けあり、
2:残存個数/全体個数=80~90個未満/100個縁欠けあり、
1:残存個数/全体個数=79個以下/100個縁欠けあり。
【0085】
試験項目3.鉛筆硬度
JIS K 5600-5-4に準拠し、各積層体の無機層(III)面に、該面に対して角度45度、荷重750gで、次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、キズ跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価する。鉛筆硬度F以上を良好とする。
【0086】
試験項目4.耐擦傷性
スチールウール法:各試験板の無機層(III)面に、市販のスチールウール(#0000)を荷重1000gで50往復擦り、積層体表面を目視で観察し下記の基準に従って評価した。耐擦傷性がよいため、傷の個数で評価した。
5:ワレ、剥がれがない、若しくは傷がまったくない、
4:ワレ、剥がれがない、若しくは傷の数が5個未満である、
3:ワレ、剥がれがない、若しくは傷が5個以上10個未満認められるが実用上問題ない
2:ワレ、剥がれがない、若しくは傷が10個以上20個未満認められる、
1:ワレ、剥がれ、若しくは著しい傷等が認められる。
【0087】
試験項目5.耐カール性
各積層体の中央部分を10cm角に切り出して試験サンプルとした。評価は4隅の反りを定規で計測し、その4点の合計を試験サンプルにおけるカール値とした。
4:5mm未満、
3:5mm以上20mm未満、
2:20mm以上50mm未満、
1:50mm以上。