(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】天井材設置部材
(51)【国際特許分類】
E04B 9/30 20060101AFI20220802BHJP
E04B 9/02 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
E04B9/30 Z
E04B9/02 300
(21)【出願番号】P 2018034202
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】折野 大河
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-007292(JP,A)
【文献】特開2007-297829(JP,A)
【文献】実開昭53-057641(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/02
E04B 9/30
E04B 1/70
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井材端部の上下面を挟み込む、略コ字状の挟み込み部を有する
長尺状の第1部材と、
前記第1部材と分離可能に連結され、
野縁に固定部材により固定される長尺状の第2部材からなり、
前記第1部材と前記第2部材は連結された状態で前記天井材が張られる天井に取り付けられ、
前記挟み込み部は、前記第1部材と前記第2部材を連結した状態では、前記天井材端部と前記第2部材との間に存在することで前記天井材端部から離れないように拘束され、
前記第1部材と前記第2部材を分離すると、前記挟み込み部は前記天井材端部から離れる方向に移動可能となることで、前記第1部材を前記天井材端部から外せるようにしたことを特徴とする天井材設置部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁よりも外に向かって張り出した軒、キャンティバルコニー、玄関ポーチ等外壁のオーバーハング部下の天井に設置する見切り材や通気材などの天井材設置部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のように、軒天見切りを容易にかつ安定的に設置できるようにするため、軒天材の上下面を挟み込む構成にする場合がある。
【0003】
また、特許文献2のように、軒天通気部材を容易に取り外すことを意図し、軒天材を挟み込まない構成にする場合がある。また、特許文献3によれば、軒天材の受け金具を見切り材の先端にかけることで、安定的に見切りを設置でき、また軒天材を外すことなく見切り材を外すことができるが、受け金具と見切り材は別々に施工する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-42299号公報
【文献】特開2005-256444号公報
【文献】特開2007-297829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、軒天設置部材により軒天材の上下面を挟み込む構成にすることは、次の点で好適である。(1)安定して設置でき、軒天材と軒天設置部材との隙間を生じ難くすることができるので防水性向上に繋がり、また意匠が良好である。(2)比較的熱膨張性が大きい樹脂、アルミは寒い時期に施工した場合、夏期の熱延びが大きくなるが、軒天材を挟み込む構成にすることにより軒天設置部材の剛性が高まり、熱伸びの影響が外観に生じ難い。(3)防耐火対応にする場合、軒天設置部材は融点が高く、かつ加工性に優れるスチール、ステンレスにすることが好適である。建築基準法に基づく準耐火試験では、加熱時間に応じて最高で842℃~945℃の加熱条件になる。高温になる程、熱延びは大きくなり、これに伴いスチール、ステンレスの変形が大きくなるが、軒天材を挟み込む構成にすることで、軒天材との間の隙間が生じ難くすることができ、小屋裏内部の温度上昇を軽減できる。しかしながら軒天材を挟み込む構成にすると、軒天材を外さないと軒天設置部材の交換がし難く、保守が大がかりとなる。すなわち軒裏部分は、雨に洗い流され難く、汚れが付着し易い。海辺では、錆の発生の懸念がある。美観、機能を保持し、また建物の長寿命化を図るため、容易に交換できるようにすることが好ましい。特許文献2は、取り外しの点で好適である一方、上述した諸点につき不利となる。
【0006】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、意匠性、防水性、コスト性、防耐火性が優れるとともに、簡単な構成で交換が容易な天井材設置部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明に係る天井材設置部材は、天井材端部の上下面を挟み込む、略コ字状の挟み込み部を有する長尺状の第1部材と、前記第1部材と分離可能に連結され、野縁に固定部材により固定される長尺状の第2部材からなり、 前記第1部材と前記第2部材は連結された状態で前記天井材が張られる天井に取り付けられ、前記挟み込み部は、前記第1部材と前記第2部材を連結した状態では、前記天井材端部と前記第2部材との間に存在することで前記天井材端部から離れないように拘束され、前記第1部材と前記第2部材を分離すると、前記挟み込み部は前記天井材端部から離れる方向に移動可能となることで、前記第1部材を前記天井材端部から外せるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、意匠性、防水性、コスト性、防耐火性が優れるとともに、簡単な構成で交換が容易な天井材設置部材を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る天井材設置部材としての軒天設置部材を軒に設置した構造を示す断面説明図である。
【
図2】(a)は、軒天設置部材の第2部材を野縁から取り外した様子を示す断面説明図である。(b)は、軒天設置部材の第1部材の挟み込み部を軒天井板の端部から取り外した様子を示す断面説明図である。
【
図3】軒天設置部材の第1部材と第2部材を連結した様子を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図により本発明に係る天井材設置部材としての軒天設置部材の一実施形態を具体的に説明する。
【0011】
本発明に係る天井材設置部材は、建物の外壁よりも外に向かって張り出した「軒」、「キャンティバルコニー」、「玄関ポーチ」等外壁のオーバーハング部下に設けられる天井に天井材を設置する天井材設置部材であり、その一例として、軒天材が張られる軒に軒天材を設置する軒天設置部材1の一例について説明する。
【0012】
図1~
図3に示すように、本発明に係る天井材設置部材としての軒天設置部材1は、天井材としての軒天材4の端部4a(天井材端部)の上下面を挟み込む、略コ字状の挟み込み部2aを有する第1部材2と、第1部材2と分離可能に連結される第2部材3からなり、第1部材2と第2部材3は連結された状態で軒天材4(天井材)が張られる軒(天井)に取り付けられ、挟み込み部2aは、第1部材2と第2部材3を連結した状態では、軒天材4(天井材)の端部4aと第2部材3との間に存在することで、軒天材4(天井材)の端部4aから離れないように拘束され、第1部材2と第2部材3を分離すると、挟み込み部2aは、軒天材4(天井材)の端部4aから離れる方向に移動可能となることで、第1部材2を軒天材4(天井材)の端部4aから外せるように構成される。
【0013】
図1に示すように、第1部材2と第2部材3のそれぞれに設けられた固定片2b,3b(固定部)が野縁5の下面5aに固定される。第1部材2の固定片2bには、固定片2bをバーリング加工により固定片2bを貫通するバーリング孔2b1が設けられる。バーリング孔2b1の円筒状の内壁面には、タッピングにより雌ネジが形成される。第2部材3の固定片3bには、第1部材2の固定片2bのバーリング孔2b1に対応する位置に貫通孔3b1が設けられている。
図3に示すように、第2部材3の固定片3bの下方から貫通孔3b1に小ネジ6(連結部材)を挿通し、第1部材2の固定片2bのバーリング孔2b1の円筒状の内壁面に形成された雌ネジに螺合締結することで、第1部材2と第2部材3とが分離可能に連結される。
【0014】
第1部材2と第2部材3の固定片2b,3bには、それぞれ他の貫通孔2b2,3b2が設けられている。
図3に示すように、第2部材3の固定片3bの下方から貫通孔3b2及び第1部材2の固定片2bに設けられた貫通孔2b2に固定ビス7(固定部材)を挿通し、野縁5の下面5aに固定することができる。
【0015】
<第1部材>
図1及び
図3に示すように、第1部材2の固定片2bから下方に向かって折り曲げられた換気片2c(換気部)が設けられている。換気片2cには、換気片2cを貫通する複数の換気穴2c1が設けられている。更に、換気片2cから軒天材4に向かって折り曲げられた底片2d(底部)が設けられている。更に、底片2dから野縁5に向かって上方に折り曲げられた起立片2e(起立部)が設けられている。更に、起立片2eから軒天材4の下面4cに平行に折り曲げられた下面対向片2f(下面対向部)が設けられている。更に、下面対向片2fから軒天材4の小口面4dに平行に折り曲げられた小口対向片2g(小口対向部)が設けられている。小口対向片2gには、小口対向片2gの一部を切り欠いて軒天材4の上面4bに平行に折り曲げられた上面対向片2g1(上面対向部)が設けられている。軒天材4の端部4aは、下面対向片2fと小口対向片2gと上面対向片2g1とにより形成される略コ字状の挟み込み部2a内に嵌入されて納まる。
【0016】
更に、小口対向片2gから鼻隠し下地材8に向かって折り曲げられた水返し片2h(水返し部)が設けられている。水返し片2hは、外部から換気片2cの換気穴2c1を介して、雨水が軒裏空間9内に吹き込むのを軽減する。また、水返し片2hは、外部から換気片2cの換気穴2c1を介して、火熱が軒裏空間9内に吹き込むのを軽減し、軒裏空間9内部の温度上昇を軽減する。また、水返し片2hは、外部から換気片2cの換気穴2c1を介して、軒裏空間9内部を見え難くする。
【0017】
軒天下地である野縁5は、一般に軒の幅方向に間隔を置いて設置される。小口対向片2gと水返し片2hの野縁5と取り合う箇所には、野縁5の外形に対応する切欠き部2iが設けられている。前記、上面対向片2g1は野縁5が存在しない位置に設けることで、軒天材4にスムーズに挿入かつ取り外しができる。尚、変形例として、小口対向片2gの一部を切り欠いて軒天材4の上面4bに平行に折り曲げられた上面対向片2g1の代わりに、小口対向片2gの全体を軒天材4の小口面4dの上端部から軒天材4の上面4bに平行に折り曲げて上面対向片とすることもできる。そして、軒天材4の端部4aを下面対向片2fと小口対向片2gと上面対向片とにより形成される略コ字状の挟み込み部内に嵌入し挟み込むことにより軒天材4の端部4aを第1部材2に支持するようにしても良い。この場合は、水返し片2hは、省略される。
【0018】
<第2部材>
第2部材3の固定片3bから下方に向かって折り曲げられた垂下片3c(垂下部)が設けられている。更に、垂下片3cから鼻隠し材10に向かって折り曲げられた底片3d(底部)が設けられている。更に、底片3dから上方に向かって折り曲げられた換気片3e(換気部)が設けられている。換気片3eには、換気片3eを貫通する複数の換気穴3e1が設けられている。更に、換気片3eから鼻隠し材10に向かって折り曲げられ、鼻隠し材10に当接する位置で折り返され、鼻隠し下地材8の下面8aに当接する折り返し片3fが設けられている。折り返し片3fの先端部には、下方に向かって折り曲げられた水返し片3g(水返し部)が設けられている。水返し片3fは、外部から換気片3eの換気穴3e1を介して、雨水が軒裏空間9内に吹き込むのを軽減する。尚、変形例として、折り返し片3fの先端部に設けられた水返し片3gを省略することもできる。
【0019】
第1部材2の換気片2cに設けられた換気穴2c1と、第2部材3の換気片3eに設けられた換気穴3e1とは、抜き加工、ブリッジ加工、ルーバー加工等により形成することができる。ブリッジ加工とは、穴を開けたいところにブリッジ状のリブが通っているものである。ルーバー加工とは、穴を開けたいところにルーバー(出窓)状の笠が設けられているものである。また、第1、第2部材2,3において垂下する各片は、目隠し・水返し機能を有する。
【0020】
<軒天設置部材の取り付け>
軒天設置部材1を野縁5に取り付ける場合には、先ず、
図3に示すように、第2部材3の固定片3bの上に第1部材2の固定片2bを重ねた状態で、固定片3bの下方から小ネジ6用の貫通孔3b1内に小ネジ6を挿通し、固定片2bに設けられたバーリング孔2b1の円筒状の内壁面に形成された雌ネジに小ネジ6を螺合締結して第1部材2と第2部材3とを一体化する。その後、第1部材2の挟み込み部2aに軒天材4の端部4aを挿入して嵌合させて挟み込んだ状態で、軒天設置部材1の第1部材2の固定片2bと軒天材4とを野縁5の下面5aに当接すると共に、第2部材3の折り返し片3fを鼻隠し下地材8の下面8aに当接する。そして、第2部材3の固定片3bの下方から固定ビス7用の貫通孔3b2と、第1部材2の固定片2bの固定ビス7用の貫通孔2b2に固定ビス7を挿通し、野縁5の下面5aにビス止めする。
【0021】
<軒天設置部材の取り外し>
軒天設置部材1を野縁5から取り外す場合には、
図2(a)に示すように、固定ビス7を取り外した後、第1部材2と第2部材3の固定片2b,3bを連結していた小ネジ6を取り外す。この状態で第2部材3を下方に向かって取り外すことができる。
図2(b)に示すように、第2部材3を取り外した後は、第1部材2を
図2(b)の左側に引き抜くスペースができている。これにより第1部材2を
図2(b)の左側に引き抜くことで、第1部材2の挟み込み部2aを軒天材4の端部4aから取り外すことができる。軒天設置部材1の第1部材2と第2部材3とが分離する構成であるため軒天材4を取り外すことなく軒天設置部材1の交換ができる。
【0022】
<軒天設置部材の再取り付け>
交換する軒天設置部材1を再度、野縁5に取り付ける場合には、
図2(b)に示すように、野縁5の下面5aに支持されている軒天材4の端部4aに第1部材2の挟み込み部2aを嵌合して挟み込んだ状態で、
図2(a)に示すように、第2部材3を上方に向かって挿入する。そして、第1部材2の固定片2bの下に第2部材3の固定片3bを重ねた状態で第2部材3の固定片3bの下方から固定ビス7用の貫通孔3b2と、第1部材2の固定片2bの固定ビス7用の貫通孔2b2に固定ビス7を挿通し、野縁5の下面5aに第1部材2と第2部材3とをビス止めするか、小ネジ6により第1部材2と第2部材3の固定片2b,3bを締結して、第1部材2と第2部材3が連結される。
【0023】
軒天設置部材1の第1部材2の挟み込み部2aにより軒天材4の端部4aをくわえ込む構成であるため軒天材4と軒天設置部材1との隙間が生じ難い。これにより防水性能が向上する。また、意匠性が良好である。また、火熱の影響により各部材が熱膨張しても隙間が生じ難い。これにより軒裏空間9内部の温度上昇を軽減することができる。また、軒天材4の端部4aをくわえ込む構成であっても軒天設置部材1を容易に交換できる。尚、図中、11は屋根、12はたるきである。
【0024】
また、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、第1部材、第2部材の形状、連結部分など、適宜設計変更できるものである。本実施形態では第1部材と第2部材とに固定片を設け、これらを重ねて連結部分を設けたが、例えば第2部材を延長し、第1部材の底部、起立部に連結部分を設ける構成としても良く、逆に第1部材を延長し、第2部材の底部、起立部に連結することでも良い。また第1部材、第2部材の両方から換気できるような構成について例示したが、一方の換気を省略し、あるいは両方の換気を省略しても良い。前記実施形態では、第1部材2の板厚が薄い場合に、第1部材2の固定片2bをバーリング加工により固定片2bを貫通するバーリング孔2b1を設けた一例であるが、第1部材2の板厚が厚い場合には、バーリング孔2b1の代わりに、第1部材2の固定片2bをタップ加工しても良い。また、第1部材2の固定片2bにナットをかしめることでも良い。
【0025】
尚、
図1~
図3では、鼻隠し側に設けられた軒天設置部材1の一例について説明したが、特許文献1のように、建物の壁側に設けられる軒天設置部材1、及び特許文献2のように軒の中間に設ける軒天設置部材1にも同様な構成で適用することができる。すなわち、第2部材は、前者の場合は、第1部材と壁面との空隙を覆える形状にし、後者の場合は第1部材と第1部材側とは反対側に設置された軒天材端部との空隙を覆える形状にし、第2部材を外した時に第1部材が軒天材を挟み込んだ側から離れる方向に移動できるような構成にすることで、同様の作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の活用例として、建物の外壁よりも外に向かって張り出した軒、キャンティバルコニー、玄関ポーチ等外壁のオーバーハング部下の天井に設置する見切り材や通気材などの天井材設置部材に適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…軒天設置部材(天井材設置部材)
2…第1部材
2a…挟み込み部
2b…固定片
2b1…バーリング孔
2b2…固定ビス7用の貫通孔
2c…換気片
2c1…換気穴
2d…底片
2e…起立片
2f…下面対向片
2g…小口対向片
2g1…上面対向片
2h…水返し片
2i…切欠き部
3…第2部材
3a…挟み込み部
3b…固定片
3b1…小ネジ6用の貫通孔
3b2…固定ビス7用の貫通孔
3c…垂下片
3d…底片
3e…換気片
3e1…換気穴
3f…折り返し片
3g…水返し片
4…軒天材(天井材)
4a…端部
4b…上面
4c…下面
4d…小口面
5…野縁
5a…下面
6…小ネジ
7…固定ビス
8…鼻隠し下地材
9…軒裏空間
10…鼻隠し材
11…屋根
12…たるき